特許第6239801号(P6239801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239801
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】動物捕獲用罠
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/34 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A01M23/34
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-130232(P2017-130232)
(22)【出願日】2017年7月3日
【審査請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507186654
【氏名又は名称】有限会社 林商会
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】林 盛次
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−092974(JP,A)
【文献】 特許第6006447(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0259875(US,A1)
【文献】 実開昭56−021980(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3161292(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3179310(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
獣類の脚部を緊縛する複数の括り輪が形成された捕獲ワイヤと、
前記括り輪がそれぞれ巻き掛けられる複数の筒状体と、
前記捕獲ワイヤを引き上げて前記括り輪を縮径させる駆動手段と、
前記括り輪に進入した前記脚部を検知して前記駆動手段を作動させる検知手段と、を有し、
前記駆動手段は、複数の前記括り輪を前記筒状体から外して前記脚部が進入している前記括り輪を縮径させ
前記捕獲ワイヤは、分岐した複数の枝ワイヤを有し、
前記枝ワイヤにそれぞれ前記括り輪が形成されていることを特徴とする動物捕獲用罠。
【請求項2】
前記枝ワイヤの先端近傍が挿通されて前記括り輪を形成する一対のワイヤ孔が形成された括り金具を有し、
前記括り金具は、一対の前記ワイヤ孔の間において前記括り輪の外径側に突出するよう曲折されていることを特徴とする請求項に記載の動物捕獲用罠。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記捕獲ワイヤを引き上げる動力源としての弾性体と、前記弾性体を蓄勢した状態で保持する係止手段と、を有し、
前記検知手段は、前記脚部を検知して前記係止手段による前記弾性体の係止を解除することを特徴とする請求項1または請求項に記載の動物捕獲用罠。
【請求項4】
複数の前記筒状体は、並列且つ列状に配設されて互いに連結固定されており、
前記検知手段は、前記獣類に踏まれることにより前記係止手段を引っ張って前記弾性体の係止を解除する検知ワイヤであり、
前記検知ワイヤは、列状に連結固定された複数の前記筒状体の筒内を径方向に貫通するよう前記筒状体に挿通されていることを特徴とする請求項に記載の動物捕獲用罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物捕獲用罠に関し、詳しくは、猪や鹿等を捕獲するために用いられる括り罠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、猪や鹿等の獣類を捕獲するための動物捕獲用罠として、環状にセットされる括り輪を有し、括り輪に入った獣類の脚部を、ばね等の復元力を利用して締め上げて捕獲する括り罠が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、開閉可能に形成されて開いた状態に付勢された、く字状のアーム本体と、このアーム本体のそれぞれの先端部に両端部が取付けられた捕獲ロープと、外周囲に捕獲ロープが巻廻しされる踏抜筒と、この踏抜筒を収納する筒受と、を有する捕獲罠が開示されている。同文献の捕獲罠では、土中に埋められた筒受内の踏抜筒が動物に踏まれることにより、捕獲ロープが踏抜筒から外れて、踏抜筒を踏んだ動物の脚部が捕獲される。
【0004】
また例えば、特許文献2には、踏板機構を有する円盤体と、円盤体の外周面を囲繞して円盤体の踏板としての降下にともない野生動物の足を緊締作動するワイヤ輪と、ワイヤ輪を形成するワイヤの一端に形成されたリングに挿通されたワイヤ延出端部と、ワイヤ延出端部に連結され上昇作動するワイヤ作動体と、よりなる野生動物の捕獲用罠が開示されている。また、同文献には、円盤体を遊嵌する一対の筒本体が連結されたダブル支持フレームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−92974号公報
【特許文献2】特許第6006447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の動物捕獲用罠は、捕獲効率を向上させるために改善すべき点があった。
【0007】
具体的には、この種の括り罠は、括り輪が獣類の通り道等に設置され、その設置された括り輪の中に捕獲対象の獣類が足を入れることにより作動して獣類を捕獲するものである。換言すれば、括り輪の中に獣類が足を入れなければ、獣類を捕獲することができない。
【0008】
そこで、捕獲効率を上げるためには、括り輪による捕獲面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、捕獲面積を大きくするために括り輪の内径を大きくすると、括り輪の中に誤って人が足を踏み入れ、それによって罠が作動して、人体に危害を及ぼす恐れがある。
【0009】
また、括り輪の内径が大きくなると、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(以下「鳥獣法」と言う。)によって括り罠による捕獲が規制されている熊等の捕獲対象ではない獣類が捕獲されてしまう恐れもある。
【0010】
そのため、鳥獣法では、括り輪の大きさが規制されており、具体的には、括り輪の内径は12cmを超えてはならないとされている。よって、捕獲効率を向上させるために、括り輪の内径を大きくするという方法は採用できない。
【0011】
また、括り輪の捕獲面積を大きくする他の方法として、設置される動物捕獲用罠の数を増やして括り輪の数を増やすことが考えられる。その際、例えば、特許文献2に開示されているように、2つの筒本体が連結されたダブル支持フレームを備えた捕獲用罠を使用することも可能である。
【0012】
その際、従来技術の動物捕獲用罠は、一カ所に複数設置されたとしても、それぞれの括り輪に対してばね等を含む作動体が個別に取り付けられているので、それぞれ独立して作動することになる。即ち、一つの動物捕獲用罠が作動しても、周囲に設置された他の動物捕獲用罠は、未作動のままである。
【0013】
そのため、複数の動物捕獲用罠に複数頭の獣類が掛かってしまう恐れがあり、その場合、捕獲ロープ同士が絡まって動物捕獲用罠が破損してしまうことや、捕獲された獣類を不要に傷つけてしまう等の恐れがあった。
また、周囲に未作動の括り罠が残っていることは、狩猟者が捕獲された獣類を捕らえる際に誤作動等によって人体に危害を及ぼす恐れもあり好ましくない。
【0014】
また、従来技術の動物捕獲用罠は、1つの括り輪に対して、1つの作動体を必要とするので、複数設置される場合には、設置数に対応する個数の作動体が必要になる。そのため、動物捕獲用罠の全体を構成する部品の数が多くなり、コストが高くなるという問題点もある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、安全で捕獲効率が高く生産性に優れる動物捕獲用罠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の動物捕獲用罠は、獣類の脚部を緊縛する複数の括り輪が形成された捕獲ワイヤと、前記括り輪がそれぞれ巻き掛けられる複数の筒状体と、前記捕獲ワイヤを引き上げて前記括り輪を縮径させる駆動手段と、前記括り輪に進入した前記脚部を検知して前記駆動手段を作動させる検知手段と、を有し、前記駆動手段は、複数の前記括り輪を前記筒状体から外して前記脚部が進入している前記括り輪を縮径させ、前記捕獲ワイヤは、分岐した複数の枝ワイヤを有し、前記枝ワイヤにそれぞれ前記括り輪が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の動物捕獲用罠によれば、獣類の脚部を緊縛する複数の括り輪が形成された捕獲ワイヤと、括り輪がそれぞれ巻き掛けられる複数の筒状体と、捕獲ワイヤを引き上げて括り輪を縮径させる駆動手段と、括り輪に進入した獣類の脚部を検知して駆動手段を作動させる検知手段と、を有し、駆動手段は、複数の括り輪を筒状体から外して獣類の脚部が進入している括り輪を縮径させる。このように複数の括り輪が形成されることにより、括り輪による総捕獲面積を増やすことができるので、捕獲効率を向上させることができる。
【0018】
また、複数の括り輪が形成されることにより、総捕獲面積を大きくするために括り輪の内径を大きくする必要がないので、捕獲対象外の獣類が捕獲されてしまうことや、括り輪に人が足を踏み入れて動物捕獲用罠が作動してしまう等の危険も回避できる。
【0019】
また、1つの駆動手段によって複数の括り輪がまとめて引き上げられるので、獣類を捕獲するために一旦作動した後は、動物捕獲用罠は括り輪がセットされた状態で未作動のまま残されることがない。そのため、未作動の括り輪によって複数の獣類が捕獲されてしまう恐れがなく、また、捕獲された獣類を捕らえる際の狩猟者の安全も確保される。
【0020】
また、1つの駆動手段によって複数の括り輪をまとめて引き上げる構成により、駆動手段の数を減らすことができ、これにより、動物捕獲用罠を構成する部品の数が少なくなり、生産性が高められるという効果も期待できる。
【0021】
また、本発明の動物捕獲用罠によれば、捕獲ワイヤは、分岐した複数の枝ワイヤを有し、枝ワイヤにそれぞれ括り輪が形成されても良い。これにより、複数の括り輪が形成されることにより安全性を確保しつつ捕獲効率を高める構成において、捕獲ワイヤの質量が増加することを抑えることができる。よって、動物捕獲用罠の作動速度を高めて捕獲効率を高めることができると共に、駆動装置の小型化を図ることができる。
【0022】
また、本発明の動物捕獲用罠によれば、枝ワイヤの先端近傍が挿通されて括り輪を形成する一対のワイヤ孔が形成された括り金具を有し、括り金具は、一対のワイヤ孔の間において括り輪の外径側に突出するよう曲折されていても良い。これにより、括り輪が最小に縮められた際であっても、括り金具の外径側に突出するよう曲折された箇所に空間が確保され、括り輪による過度な締め付けが防止される。即ち、括り金具は、括り輪を形成するための金具であると共に締め付け防止金具としても機能する。
【0023】
また、本発明の動物捕獲用罠によれば、駆動手段は、捕獲ワイヤを引き上げる動力源としての弾性体と、弾性体を蓄勢した状態で保持する係止手段と、を有し、検知手段は、獣類の脚部を検知して係止手段による弾性体の係止を解除しても良い。これにより、電力等の動力を利用することなく、弾性体の復元力を利用して捕獲ワイヤを引き上げることができる。
【0024】
また、本発明の動物捕獲用罠によれば、複数の筒状体は、並列且つ列状に配設されて互いに連結固定されており、検知手段は、獣類に踏まれることにより係止手段を引っ張って弾性体の係止を解除する検知ワイヤであり、検知ワイヤは、列状に連結固定された複数の筒状体の筒内を径方向に貫通するよう筒状体に挿通されていても良い。これにより、電気的な検知センサ等を利用することなく、簡単な構成で、何れかの筒状体に進入した獣類の脚部を検知して駆動手段の動力源としての弾性体を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の概略を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の(A)捕獲ワイヤ、(B)捕獲ワイヤの他の例、を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の(A)括り金具の透視図、(B)括り輪が開いた状態を示す捕獲ワイヤの平面図、(C)括り輪が縮小された状態を示す捕獲ワイヤの平面図、である。
図4】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の(A)筒状体ユニット、(B)筒状体、の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の捕獲ワイヤの括り輪が筒状体にセットされた状態を示す(A)平面図、(B)正面図、である。
図6】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の駆動装置の概略を示す正面図である。
図7】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の係止ピン近傍を示す正面図である。
図8】本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠の(A)セットされた状態、(B)作動した状態、を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠1の概略を示す図である。動物捕獲用罠1は、猪や鹿等の獣類を捕獲するために用いられる括り罠である。図1に示すように、動物捕獲用罠1は、複数の括り輪11が形成された捕獲ワイヤ10と、括り輪11がそれぞれ巻き掛けられる複数の筒状体25と、捕獲ワイヤ10を引き上げて括り輪11を縮径させる駆動手段としての駆動装置30と、を有する。
【0027】
捕獲ワイヤ10は、獣類を捕獲して束縛するためのワイヤやロープ等である。本実施形態では、捕獲ワイヤ10として、例えば、直径約4mmの鋼製のワイヤが用いられている。捕獲ワイヤ10には、獣類の脚部を緊縛するための複数の括り輪11が形成されている。なお、図1においては、捕獲ワイヤ10は、駆動装置30に接続された固定端側ワイヤ12と、括り輪11が形成された先端側ワイヤ13と、に分離された状態を示しているが、使用時には、固定端側ワイヤ12と先端側ワイヤ13が連結される。
【0028】
詳しくは、固定端側ワイヤ12は、駆動装置30の動力源としてのばね40に設けられた略環状のワイヤ支持金具44に挿通されており、固定端側ワイヤ12の一端は、駆動装置30の基台31に設けられたワイヤ固定部34に接続されている。そして、固定端側ワイヤ12の自由端となっている他端に、猿環やスナップフック等の継手22を介して先端側ワイヤ13が接続される。これにより、一端がワイヤ固定部34に接続されて他端側に複数の括り輪11が形成された捕獲ワイヤ10が構成される。
【0029】
筒状体25は、括り輪11を巻き掛けるための部材であり、略円筒状の形態をなし、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂等から形成されている。筒状体25は、括り輪11の数に合せて複数設けられている。複数の筒状体25は、それぞれの軸を略平行にして開口が上下方向を向くよう略並列に配置され、且つ直線状または曲線状に並ぶよう略列状に配設されて用いられるものである。略列状に配設された複数の筒状体25は、互いに連結され固定されている。これにより、複数の筒状体25からなる筒状体ユニット24が構成されている。
【0030】
なお、図1に示す動物捕獲用罠1では、5個の括り輪11が形成された捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13が3本用いられ、5個の筒状体25が略列状に連結された筒状体ユニット24が3列設けられる例を示しているが、括り輪11及び筒状体25の数や配列は、これに限定されるものではない。
【0031】
駆動装置30は、ばね40の反発力により捕獲ワイヤ10を引き上げて複数の括り輪11を一括して筒状体25から外す装置である。駆動装置30によって捕獲ワイヤ10が引き上げられることにより、獣類の脚部が進入している括り輪11のみを縮径させることができる。
【0032】
図2(A)は、捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13を示す平面図であり、図2(B)は、捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13の他の例を示す平面図である。図2(A)に示すように、捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13には、略同一長さの複数の枝ワイヤ14が所定の間隔を設けて順次接続されている。そして、複数の枝ワイヤ14によってそれぞれ括り輪11が形成されている。これにより、1本の捕獲ワイヤ10の先端側に複数の括り輪11が略列状に並ぶことになる。
なお、各枝ワイヤ14は、接続金具15によって先端側ワイヤ13の主ワイヤに接続され固定されている。接続金具15は、加締め式やねじ止め式のワイヤ継手等である。
【0033】
また、図2(B)に示すように、捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13は、長さを変えた複数の枝ワイヤ14が一カ所で連結されることにより構成されても良い。このように先端近傍に括り輪11が形成された長さの異なる複数の枝ワイヤ14を組み合わせることにより、括り輪11を略列状に配置することができる。なお、括り輪11の配列は、略直線状に限定されるものではなく、括り輪11は、略円弧状等に並べられても良い。
【0034】
このように1本の捕獲ワイヤ10に複数の括り輪11が形成されることにより、括り輪11による総捕獲面積を増やすことができるので、捕獲効率を向上させることができる。また、総捕獲面積を大きくするために括り輪11の内径を大きくする必要がないので、捕獲対象外の獣類が捕獲されてしまうことや、括り輪11に人が足を踏み入れて動物捕獲用罠が作動してしまう等の危険も回避できる。
【0035】
また、捕獲ワイヤ10に複数の枝ワイヤ14が接続され、それぞれの枝ワイヤ14によって括り輪11が形成されることにより、総捕獲面積を増大させる構成において、捕獲ワイヤ10の質量が増加することを抑えることができる。よって、動物捕獲用罠1の作動速度を高めて捕獲効率を高めることができると共に、駆動装置30(図6参照)の小型化を図ることができる。
【0036】
図3(A)は、括り金具20を示す透視図である。図3(B)は、開いた状態の括り輪11を示す平面図であり、図3(C)は、縮小された状態の括り輪11を示す平面図である。図3(A)ないし(C)に示すように、捕獲ワイヤ10の枝ワイヤ14の先端近傍には、括り輪11を形成するための括り金具20が取り付けられている。
【0037】
図3(A)に示すように、括り金具20は、鋼鈑等を曲折することにより形成されており、断面略ハット状の形態をなす。即ち、括り金具20は、中央部が凸状に曲折されており、その両端に略平板状のフランジ部が連続している。括り金具20の両端のフランジ部には、捕獲ワイヤ10(図3(B)参照)の枝ワイヤ14(図3(B)参照)が移動自在に挿通される一対のワイヤ孔21a、21bが形成されている。
【0038】
図3(B)に示すように、捕獲ワイヤ10の枝ワイヤ14の先端近傍は、括り金具20の一方のワイヤ孔21aに挿通され、略環状に曲げられて、括り金具20の他方のワイヤ孔21bに挿通されている。これにより、括り輪11が形成されている。
【0039】
枝ワイヤ14の括り金具20よりも固定端側には、ワイヤ孔21aを通過不可能な大きさの止め金具16が加締めやねじ止め等によって取り付けられている。これにより、括り輪11の大きさが過大になることが抑えられる。具体的には、括り輪11の内径は、鳥獣法の規定に適合するよう、12cm以下に形成されている。
【0040】
また、括り金具20に挿通された枝ワイヤ14の先端部近傍には、ワイヤ孔21bを通過不可能な大きさの止め金具17が加締めやねじ止め等によって取り付けられている。これにより、枝ワイヤ14から括り金具20が外れてしまうことが防止され、括り輪11が維持される。
【0041】
上記のように形成された括り輪11の中に獣類が足を踏み入れ、駆動装置30(図1参照)によって捕獲ワイヤ10が引き上げられると、図3(C)に示すように、枝ワイヤ14の固定端側が引かれて括り輪11が縮小する。そして、括り輪11によって獣類の脚部が緊縛され、獣類が捕獲される。
【0042】
なお、枝ワイヤ14は適度な剛性を有し、枝ワイヤ14には略直線的な状態に戻ろうとする復元力が作用している。そのため、枝ワイヤ14によって形成された括り輪11は、枝ワイヤ14の復元力によって拡径する方向に力が作用し、通常、図3(B)に示す如く開いた状態にある。よって、駆動装置30で捕獲ワイヤ10が引かれても、獣類の脚部が進入した括り輪11のみが縮径され、獣類の脚部が進入していない他の括り輪11は縮径されずに開いた状態に維持される。
【0043】
また、断面略ハット状に形成された括り金具20は、一対のワイヤ孔21a、21bの間において凸状に曲折された箇所が、括り輪11の外径側に突出するよう取り付けられている。これにより、図3(C)に示す如く括り輪11が小さくなり、更に縮小されて最小に縮められた際であっても、括り輪11の外径側に突出するよう曲折された括り金具20の凸状の箇所に空間が確保され、括り輪11による過度な締め付けが防止される。即ち、括り金具20は、括り輪11を形成するための金具であると共に締め付け防止金具としても機能する。
【0044】
図4(A)は、動物捕獲用罠1の筒状体ユニット24の斜視図であり、図4(B)は、筒状体25の斜視図である。図4(A)に示すように、略列状に並べられた複数の筒状体25は、連結具27によって連結され固定されている。これにより、筒状体25の取り扱いが容易になると共に後述する検知ワイヤ55による係止ピン50(図7参照)の作動が良好になる。
【0045】
図4(B)に示すように、筒状体25には、対向する円筒部に一対のワイヤ孔26が形成されている。そして、図4(A)及び(B)に示すように、ワイヤ孔26には、検知ワイヤ55が挿通されている。即ち、検知ワイヤ55は、列状に連結固定された複数の筒状体25の筒内を径方向に貫通するよう筒状体25に挿通されている。
【0046】
検知ワイヤ55は、括り輪11(図2参照)に進入した獣類の脚部を検知して駆動装置30(図6参照)を作動させる検知手段であり、獣類に踏まれることにより係止ピン50を引っ張って、係止ピン50によるばね40(図6参照)の係止を解除する。なお、検知ワイヤ55は、略管状のワイヤ管56の中に、摺動自在に挿通されている。
【0047】
このように検知手段として検知ワイヤ55が用いられることにより、電気的な検知センサ等を利用することなく、簡単な構成で、何れかの筒状体25に進入した獣類の脚部を検知して駆動装置30のばね40を作動させることができる。
【0048】
なお、筒状体25の筒内を貫通する検知ワイヤ55の上方には、獣類に踏まれて検知ワイヤ55を押圧する図示しない踏板等が設けられても良い。踏板等は、板状、棒状または線状等の各種の形態で良く、検知ワイヤ55に取り付けられても良いし、検知ワイヤ55の上部に当接するよう置かれても良いし、上下方向に移動自在に筒状体25に取り付けられても良い。このような踏板等が設けられることにより検知ワイヤ55による検知精度を向上させることができる。
【0049】
図5(A)及び(B)は、捕獲ワイヤ10の括り輪11が筒状体25にセットされた状態を示す図であり、図5(A)は、平面図であり、図5(B)は、正面図である。図5(A)及び(B)に示すように、筒状体25は、開口を上下方向に向けて、獣類の通り道等の土中に設置される。
【0050】
捕獲ワイヤ10の括り輪11は、筒状体25の上端部近傍の外周に巻き掛けられるようにセットされる。これにより、括り輪11は、筒状体25の外周面に略沿って、略円形状になる。なお、筒状体25にセットされた状態において、捕獲ワイヤ10は駆動装置30(図6参照)に引かれていないので、括り輪11によって筒状体25が過度に締め付けられることはない。よって、獣類を検知した際には、複数の括り輪11を一括して容易に筒状体25から外すことができる。
【0051】
図6は、駆動装置30の概略を示す正面図である。図6に示すように、駆動装置30は、設置面に設置される基台31と、基台31に固定された動力源としてのばね40と、ばね40を蓄勢された状態で保持する係止手段としての係止ピン50と、を有している。
【0052】
基台31は、例えば、形鋼等から構成され、設置面に載置される基部32と、基部32から立設された支柱部33と、を有する。支柱部33には、ばね40の一端側の支持部41が、クランプ等の支持金具39によって固定されている。なお、動物捕獲用罠1を使用する際には、基台31は、固定ワイヤ60によって、立木や地面に打ち込まれた杭等の固定物に固定される。
【0053】
基台31には、捕獲ワイヤ10の固定端側ワイヤ12が接続固定されるワイヤ固定部34が設けられている。ワイヤ固定部34は、例えば、基台31に形成された穿孔やそこに接続されたスナップフック等の接続金具から構成されている。
【0054】
基台31の基部32には、安全装置としてのロック金具35が設けられている。ロック金具35は、例えば、スナップフック等の接続金具であり、基部32に形成された穿孔等に接続されている。
【0055】
ばね40は、動力源としての弾性体であり、例えば、略棒状のコイルばねである。ばね40が設けられることにより、電力等の動力を利用することなく、ばね40の復元力を利用して捕獲ワイヤ10を引き上げることができる。
【0056】
ばね40の両端には、鋼管やアルミニウム管等からなる支持部41及び支持部42が取り付けられており、支持部41、ばね40及び支持部42は、全体として略直線状に形成されている。そして、ばね40は、一端側の支持部41が基台31の支柱部33に固定されており、変位可能な自由端となる他端側の支持部42を上に向けて略垂直に設けられている。
【0057】
ばね40の自由端側となる支持部42には、捕獲ワイヤ10が挿通されて捕獲ワイヤ10を移動自在に支持する略環状のワイヤ支持金具44が設けられている。ワイヤ支持金具44は、例えば、クランプ等の接続金具によって支持部42に固定されている。
【0058】
ここで、ワイヤ支持金具44は、支持部42のばね40近傍に設けられている。これにより、曲げられたばね40の復元力を利用して捕獲ワイヤ10を引き上げるための大きな張力を得ることができる。
【0059】
また、ばね40の支持部42には、ワイヤ支持金具44よりも上方である上端付近に、ロック金具接続部45が設けれている。ロック金具接続部45は、安全装置としてのロック金具35に接続される略環状の接続部を有し、例えば、クランプ等の接続金具によって支持部42に固定されている。
【0060】
また、ばね40の支持部42の上端近傍には、係止ピン50が係合する係合部46が形成されている。係合部46は、ばね40が曲げられた状態において係止ピン50に係合する形状であれば良く、例えば、係止ピン50の先端が挿入されて係合する孔等である。
【0061】
上記のように、ロック金具接続部45及び係合部46が支持部42の上端近傍に設けられることにより、曲げられて蓄勢されたばね40を比較的小さな力で保持することができる。
【0062】
図7は、動物捕獲用罠1の係止ピン50近傍を示す正面図である。図7に示すように、駆動装置30の基台31には、ばね40を曲げられた状態で保持するための係止ピン50が設けられている。
【0063】
詳しくは、基台31の基部32には、係止ピン50を摺動自在に支持する一対のピン支持部37、38と、検知ワイヤ55及びワイヤ管56を支持するワイヤ支持部36が設けられている。ピン支持部37、38には、係止ピン50を支持するための支持孔が形成されており、係止ピン50は、ピン支持部37、38の支持孔に摺動自在に嵌合している。
【0064】
一方のピン支持部37と係止ピン50との間には、係止ピン50を係合する方向に付勢するばね54が設けられている。ばね54は、例えば、コイルばねであり、係止ピン50が挿通されており、一端がピン支持部37に当接し、他端が係止ピン50に固定されたばね当て部51に当接している。
【0065】
ワイヤ支持部36は、検知ワイヤ55が挿通されたワイヤ管56を支持する部材であり、基部32から立設されている。ワイヤ支持部36には、ワイヤ管56が挿通される取付孔が形成されている。検知ワイヤ55及びワイヤ管56は、ワイヤ支持部36の取付孔に挿通され、ワイヤ管56は、その端部近傍がワイヤ支持部36に固定され、検知ワイヤ55は、係止ピン50の係合する端部に対して反対側となる端部の近傍に接続されている。
【0066】
上記のとおり係止ピン50が構成されることにより、ばね54に押された係止ピン50が、ばね40の支持部42の係合部46に係合して、ばね40を蓄勢された状態に保持することができる。そして、筒状体25(図4参照)の筒内に張られた検知ワイヤ55が獣類に踏まれることにより、検知ワイヤ55によって係止ピン50が引かれ、係止ピン50によるばね40の係止が解除される。
【0067】
なお、ばね40側となるピン支持部38の、ばね40の支持部42に当接する面は、支持部42の外周に対して傾斜するよう形成されていても良い。これにより、ピン支持部38と支持部42との摩擦抵抗を減らして、係止ピン50による係止が解除された際のばね40の戻りを良好にすることができる。
【0068】
次に、図1ないし図8を参照して、動物捕獲用罠1の使用方法及び動作について詳細に説明する。
動物捕獲用罠1を使用して猟を行う際には、先ず、獣類の歩行が予測される獣道等の土中に図4(A)及び(B)に示す筒状体25が配置される。そして、図5(A)及び(B)に示すように、筒状体25の外周上部に捕獲ワイヤ10の括り輪11が巻き掛けられる。
【0069】
なお、この作業を行う際には、捕獲ワイヤ10は、駆動装置30(図6参照)に接続されていない。そのため、誤って捕獲ワイヤ10が引き上げられる恐れはなく、狩猟者は、安全且つ容易に括り輪11をセットすることができる。
【0070】
次に、駆動装置30のセットが行われる。図8(A)は、動物捕獲用罠1のセットされた状態を示す正面図である。先ず、図8(A)に示すように、駆動装置30は、固定ワイヤ60によって、立木や杭等の固定物に固定される。
【0071】
そして、駆動装置30のばね40が曲げられ、支持部42の係合部46に係止ピン50が挿入される。これにより、ばね40は、蓄勢された状態で保持される。なお、ばね40の上部に支持部42が設けられているので、狩猟者は、ばね40を容易に曲げることができる。
【0072】
次いで、ばね40が係止ピン50に保持された状態において、基台31に設けられた安全装置としてのロック金具35と、ばね40の支持部42に設けられたロック金具接続部45と、が接続される。これにより、仮に係止ピン50による係合が外れてしまったとしても、ばね40が伸びて支持部42が跳ね上がることを防止することができる。これにより、作業の安全性が確保される。
【0073】
次に、筒状体25にセットされた捕獲ワイヤ10の先端側ワイヤ13と、駆動装置30に接続されている固定端側ワイヤ12と、が接続される。上記のとおり、作業中にばね40が伸びて捕獲ワイヤが引き上げられることはないので、狩猟者は、安全に作業を行うことができる。
【0074】
全ての捕獲ワイヤ10の接続が完了したら、ロック金具35がロック金具接続部45から外されて安全装置が解除される。これにより、動物捕獲用罠1のセットが完了する。このようにセットされた動物捕獲用罠1は、複数の括り輪11を有するので、従来技術のように括り輪が1つのみの括り罠と比べて、獣類が括り輪11に足を踏み入れる確率が高い。具体的には、15個の括り輪11がセットされるとすれば、獣類が足を踏み入れる確率は、従来の括り輪と比べて15倍になる。
【0075】
そして、筒状体25の中に獣類が足を踏み入れると、検知ワイヤ55が獣類に踏まれ、その検知ワイヤ55によって係止ピン50が引かれて係合部46から抜かれ、係止ピン50によるばね40の保持が解除される。
【0076】
図8(B)は、動物捕獲用罠1の作動した状態を示す正面図である。図8(B)に示すように、係止ピン50による係合が解除されると、ばね40の支持部42は、ばね40の復元力によって上方に戻され、これにより、捕獲ワイヤ10が上方に引き上げられる。
【0077】
そして、筒状体25に巻き掛けられていた括り輪11が一括して外され、獣類の脚部Xが進入した括り輪11のみが図3(B)に示す如く縮径され、獣類の脚部Xが締め付けられる。これにより、獣類を捕獲することができる。
【0078】
動物捕獲用罠1では、1つの駆動装置30のばね40によって複数の括り輪11がまとめて引き上げられるので、獣類を捕獲するために駆動装置30が一旦作動した後は、動物捕獲用罠1は括り輪11がセットされた状態で未作動のまま残されることがない。そのため、未作動の括り輪11によって複数の獣類が捕獲されてしまう恐れがなく、また、捕獲された獣類を捕らえる際の狩猟者の安全も確保される。
【0079】
また、1つの駆動装置30のばね40によって複数の括り輪11をまとめて引き上げる構成により、駆動装置30及びばね40を複数設ける必要がなく、駆動装置30及びばね40の数を減らすことができる。これにより、動物捕獲用罠1を構成する部品の数が少なくなり、動物捕獲用罠1の生産性が高められるという効果も期待できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態に係る動物捕獲用罠1について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、捕獲ワイヤ10を引き上げるための駆動手段の動力源としては、引張ばね、圧縮ばね、キックばね、板バネ、合成ゴム等の弾性体、圧縮空気、電動モータ、その他各種の動力源を採用することもできる。
【0081】
また、獣類の進入を検知するための検知手段としては、検知ワイヤ55に代えて、赤外線センサ等の各種のセンサや撮像装置、各種スイッチ等が利用されても良い。
また、獣類が括り輪11に進入したことまたは捕獲されたことを報知するための表示器や警報器、通信装置等が設けられても良い。
【0082】
また、係止手段は、係止ピン50に限られず、弾性体を蓄勢した状態で解除可能に保持できるものであれば良く、例えば、鉤状、棒状、板状等各種形状の係止具やワイヤ等でも良い。また、係止手段は、回動または揺動して保持状態から解除状態に切り替えられる機構等を備えても良い。
また、係止手段を解除する方法は、例えば、電磁アクチュエータ等を利用して係止手段を移動させる方法であっても良い。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 動物捕獲用罠
10 捕獲ワイヤ
11 括り輪
12 固定端側ワイヤ
13 先端側ワイヤ
14 枝ワイヤ
20 括り金具
21a、21b ワイヤ孔
25 筒状体
30 駆動装置
40 ばね
50 係止ピン
55 検知ワイヤ
【要約】
【課題】安全で捕獲効率が高く生産性に優れる動物捕獲用罠を提供する。
【解決手段】獣類の脚部を緊縛する複数の括り輪11が形成された捕獲ワイヤ10と、括り輪11がそれぞれ巻き掛けられる複数の筒状体25と、捕獲ワイヤ10を引き上げて括り輪11を縮径させる駆動手段30と、括り輪11に進入した獣類の脚部を検知して駆動手段30を作動させる検知手段55と、を有し、駆動手段30は、複数の括り輪11を筒状体25から外して獣類の脚部が進入している括り輪11を縮径させる。これにより、総捕獲面積を増やすことができ、捕獲効率を向上させることができる。また、括り輪の内径が大きくならず、捕獲対象外の獣類や人に対する危険も少ない。また、一旦作動した後は、未作動の状態で括り輪が残されないので、複数の獣類の捕獲が回避され、狩猟者に対する安全も確保される。また、部品数が少なく生産性に優れる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8