(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6239810
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】超音波ガイド下穿刺術用の穿刺アダプター及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-551347(P2017-551347)
(86)(22)【出願日】2017年7月12日
(86)【国際出願番号】JP2017025458
【審査請求日】2017年9月29日
(31)【優先権主張番号】特願2016-150944(P2016-150944)
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513249851
【氏名又は名称】株式会社日本医療機器開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 高行
【審査官】
門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−115246(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3187732(JP,U)
【文献】
特開2012−81134(JP,A)
【文献】
特開2016−202645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブに取り付けられる穿刺アダプター(1)であって,
上下方向に延びるメインピース(10)と,
前記メインピースの正面(10a)側に位置するサブピース(20)とを備え,
前記メインピース(10)と前記サブピース(20)は連結しており,
前記メインピース(10)は,
前記サブピース(20)の連結部位よりも下方の前記正面(10a)に上下方向に延びる鏡面部(11)を有し,
前記サブピース(20)は,
前記メインピースの正面(10a)に対して下向きに傾斜した傾斜部(21)と,
前記傾斜部(21)に形成された第1スリット(22)とを有し,
前記第1スリット(22)を通じて前記鏡面部(11)を視認することができる
穿刺アダプター。
【請求項2】
前記鏡面部(11)は,
前記メインピース(10)に形成された上下方向に延びる第2スリット(11a)と,
前記メインピースの背面(10b)側に配置され,前記第2スリット(11a)を通じて視認可能な鏡部材(11b)とによって構成されている
請求項1に記載の穿刺アダプター
【請求項3】
前記メインピースの背面(10b)側に,前記メインピース(10)を前記超音波プローブに固定するための取付部(40)を,さらに備え,
前記取付部(40)は,前記鏡面部(11)の鏡面がプローブ面に対して略垂直になるように,前記メインピース(10)を前記超音波プローブに固定する
請求項1に記載の穿刺アダプター。
【請求項4】
前記メインピース(10)は,前記鏡面部(11)の左右両側に非鏡面部(12)をさらに有する
請求項1に記載の穿刺アダプター。
【請求項5】
前記サブピース(20)は,前記傾斜部(21)と前記メインピースの正面(10a)とを間隙を空けて連結する連結部(23)をさらに有する
請求項1に記載の穿刺アダプター。
【請求項6】
前記傾斜部(21)は,穿刺針(3)の像を構成する光が前記鏡面部(11)で反射した後に使用者の視点に到達するまでの光路と交わるように,傾斜している
請求項1に記載の穿刺アダプター。
【請求項7】
使用者の視点から見たときに,前記サブピース(20)の第1スリット(22)を通じて鏡面部(11)を真っ直ぐに視認でき,かつ,前記鏡面部(11)に映った穿刺針(3)の虚像(3´)が前記第1スリット(22)及び前記鏡面部(11)と一直線上に並ぶように,穿刺針(3)の刺入位置及び刺入角度を決定するにあたり,
前記鏡面部(11)の幅,及び,前記第1スリット(22)の幅は,前記穿刺針(3)の虚像(3´)の外径よりも広い
請求項1に記載の穿刺アダプター。
【請求項8】
請求項1に記載の穿刺アダプター(1)と,
前記穿刺アダプター(1)が取り付けられた超音波プローブ(2)と,を備える
超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,超音波ガイド下穿刺術用の穿刺アダプターに関する。具体的に説明すると,本発明の穿刺アダプターは,注射針等の穿刺針をガイドするために超音波プローブに取り付けて使用されるものである。また,本発明は,前記の穿刺アダプターと超音波プローブとを備える超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,注射針等の穿刺針を生体内に刺入して,腫瘍などの組織の採取等の検査や,薬剤の局所投与,あるいは穿刺針からのマイクロ波やラジオ波の照射等の温熱治療などを行う穿刺術が知られている。このような穿刺術は,損傷により大出血を起こす危険性のある血管などを避ける目的や,腫瘍などの組織に対して確実に穿刺する目的の下,超音波診断装置によって生成される超音波断層像を参照しながら行うことが一般的である。このように,超音波診断装置によるガイド下で行う穿刺術を,超音波ガイド下穿刺術という。
【0003】
例えば,超音波ガイド下穿刺術を施す場合には,穿刺針を目標とする位置に確実に刺入できるように,診断用の超音波プローブに穿刺用の穿刺アダプターを取り付けておく。そして,穿刺針をこの穿刺アダプターよってガイドしながら,超音波プローブの生体との接触面(プローブ面)の端部近傍から生体内に刺入する方法が取られる。
【0004】
例えば,穿刺アダプターとしては,穿刺針の刺入方向を超音波プローブによる超音波の走査線上に案内するために,この穿刺針を挿入可能なガイド孔を有するものが知られている(特許文献1)。超音波ガイド下穿刺術を施す際には,超音波プローブで生体内の超音波断層像を撮影しながら,この穿刺アダプターのガイド孔に穿刺針を挿し込み,ガイド孔に沿って穿刺針を生体に刺入させることで,術者による手振れなどの影響を抑え,穿刺針を目標とする部位に案内することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−212165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,ガイド孔を有する従来の穿刺アダプターは,穿刺針をガイド孔に沿って進退させたときに患者の体液が付着するため,超音波ガイド下穿刺を行う度に穿刺アダプターを滅菌消毒したり,又は穿刺アダプター自体を使い捨てにする必要があり,手間とコストがかかるという問題がある。また,従来の穿刺アダプターは,ガイド孔に穿刺針が刺し込まれると,生体への刺入方向が制限されて操作の自由度が失われることとなるため,施術を行いにくくなるという問題がある。また,従来のアダプターは,穿刺針の太さに応じて,適切な口径のガイド孔を持つものを選択する必要があったり,穿刺針を変更したときには穿刺アダプター自体を取り替える必要があるなど,施術の遅延をもたらすおそれがある。さらに,ガイド孔に穿刺針を挿入した状態では,超音波プローブと穿刺針とが穿刺アダプターを介して連結した状態となるため,超音波プローブと穿刺針とをそれぞれ独立して操作することが難しくなる。例えば,穿刺針をガイド孔に沿って生体内に刺入した状態で超音波プローブを動かしてしまうと,超音波プローブの動きに応じて穿刺針の刺入方向にずれが生じることとなる。このため,超音波プローブのみを動かして撮影する位置を微調整するという操作に危険が伴うという問題がある。その他にも,従来の穿刺アダプターは,穿刺針の針先を見失いやすくなったり,装着に手間がかかるなど,種々の問題を内包するものであった。
【0007】
そこで,本発明は,上記した従来の穿刺アダプターが抱える問題のいずれか1つ以上を解決できる穿刺アダプターを提供することを課題とする。すなわち,本発明は,ガイド孔に拠らなくても,超音波プローブの走査線上の目標とする位置へ穿刺針を適切に刺入させることのできる穿刺アダプターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,基本的に,上下に延びる鏡面部を有するメインピースと,その正面側に位置するサブピースとを前後に連結し,このサブピースにスリットを設けて,術者が鏡面部に映る穿刺針の虚像をサブピースのスリットを通じて視認できるようにするという知見に基づくものである。本発明に係る穿刺アダプターを利用すれば,術者の目視方向,穿刺針の刺入位置,及び刺入角度が適切であることを,超音波ガイド下穿刺術を行う術者自身に確認させることが可能となる。そして,本発明によれば,ガイド孔等によって穿刺針を固定しなくても,超音波プローブの走査線上の目標とする位置に穿刺針を刺入させやすくなる。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0009】
本発明の第1の側面は,超音波プローブに取り付けられる穿刺アダプター1に関する。穿刺アダプターは,上下方向に延びるメインピース10と,メインピースの正面10a側に位置するサブピース20とを備え,これらのメインピース10とサブピース20は連結している。メインピース10は,サブピース20の連結部位よりも下方の正面10aに,上下方向に延びる鏡面部11を有する。サブピース20は,メインピースの正面10aに対して下向きに傾斜した傾斜部21と,この傾斜部21に形成された第1スリット22とを有する。つまり,傾斜部21は,穿刺針3の像を構成する光が鏡面部11で反射した後に使用者の視点に到達するまでの光路と交わるように,傾斜している。そして,穿刺アダプターは,第1スリット22を通じて鏡面部11を視認することができるように構成されている。
【0010】
本発明の穿刺アダプター1を利用して超音波ガイド下穿刺術を行う際には,まず,使用者(術者)は,サブピース20の第1スリット22を通じてメインピース10の鏡面部11を視認できる位置に,自身の視点位置(頭部)を移動させる。これにより,使用者は自身の頭部の位置や目視方向が適切であることを確認できる。その後,使用者は,サブピース20の第1スリット22を通じてメインピース10の鏡面部11を視認できる状態を維持したまま,超音波プローブの走査線上に注射針などの穿刺針を運ぶ。このとき,使用者は,メインピース10の鏡面部11に穿刺針が映し出されていることを確認する。そして,使用者は,穿刺針を左右に動かしながら,この穿刺針の角度が超音波プローブの走査線と略平行な角度となるように,この穿刺針の刺入角度を決定する。すなわち,使用者は,メインピース10の鏡面部11に映し出された穿刺針の虚像が,メインピース10の鏡面部11とサブピース20の第1スリット22と一直線上に並ぶように,穿刺針を左右に動かしながら刺入角度を決定する。このように,使用者は,サブピース20の第1スリット22を通じてメインピース10の鏡面部11に映る穿刺針の虚像を視認することで,穿刺針の刺入位置及び刺入角度が適切であるかを簡単に確認することができる。従って,ガイド孔によって穿刺針の刺入方向を案内しなくても,超音波プローブの走査線上の目標とする位置に,穿刺針適切に導くことが可能となる。
【0011】
本発明の穿刺アダプターにおいて,鏡面部11は,メインピース10に形成された上下方向に延びる第2スリット11aと,メインピースの背面10b側に配置され第2スリット11aを通じて視認可能な鏡部材11bと,によって構成されていることが好ましい。このような構成によれば,使用者が鏡部材11bに穿刺針が映し出されているかどうかを目視で確認しやすくなる。
【0012】
本発明の穿刺アダプターは,メインピースの背面10bに,メインピース10を超音波プローブに固定するための取付部40を,さらに備えることが好ましい。このとき,取付部40は,鏡面部11の鏡面がプローブ面に対して略垂直になるように,メインピース10を超音波プローブに固定する。なお,プローブ面とは,超音波プローブの端部が接する面である。また,略垂直とは,80〜100度の範囲を意味する。このようにメインピースの背面10b側に取付部40を設けることで,穿刺アダプターを超音波プローブに取り付けやすくなるとともに,超音波プローブを扱いやすくなる。
【0013】
本発明の穿刺アダプターにおいて,メインピース10は,鏡面部11の左右両側に非鏡面部12をさらに有することが好ましい。メインピース10の正面側全体が鏡面部11であると,サブピース20の第1スリット22と鏡面部11との位置合わせが行いにくくなる。このため,メインピース10の正面には,鏡面部11の左右両側に非鏡面部12を設けて,鏡面部11と非鏡面部12とを区別することが好ましい。
【0014】
本発明の穿刺アダプターにおいて,サブピース20は,傾斜部21とメインピースの正面10aとを間隙を空けて連結する連結部23をさらに有することが好ましい。特に,連結部23とメインピースの正面10aのなす角は,ほぼ直角(85〜95度)であることが好ましい。このように,サブピース20は傾斜部21とメインピース10の正面10aとの間に一定の間隙が設けられていることで,使用者が自身の頭部の位置や目視方向が適切であることかどうかをより適切に確認できるようになる。
【0015】
本発明の穿刺アダプターは,使用者の視点から見たときに,サブピース20の第1スリット22を通じて鏡面部11を真っ直ぐに視認でき,かつ,鏡面部11に映った穿刺針3の虚像3´が第1スリット22及び鏡面部11と一直線上に並ぶようにすることで,穿刺針3の刺入位置及び刺入角度を決定する。このとき,鏡面部11の幅,及び,第1スリット22の幅は,穿刺針3の虚像3´の外径よりも広いことが好ましい。このように,鏡面部11と第1スリット22の幅を穿刺針3の虚像3´の外径よりも広く設定しておくことで,使用者は鏡面部11に映り込んだ穿刺針3の虚像3´を視認しやすくなる。
【0016】
本発明の第2の側面は,前述した第1の側面に係る穿刺アダプター1と,この穿刺アダプター1が取り付けられた超音波プローブ2と,を備える超音波装置に関する。本発明に係る超音波装置において,穿刺アダプター1は超音波プローブ2に対して着脱可能に取り付けられていてもよいし,穿刺アダプター1と超音波プローブ2は一体的に(着脱不能)に取り付けられていてもよい。つまり,本発明の超音波診断装置は,穿刺アダプター1と超音波プローブ2とが一体的に構成されていてもよい。なお,超音波プローブ2としては,適宜公知のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,ガイド孔に拠らなくても,超音波プローブの走査線上の目標とする位置に穿刺針を適切に刺入させることのできる穿刺アダプターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は,本発明に係る穿刺アダプターの一例を示した正面側斜視図である。
【
図2】
図2は,本発明に係る穿刺アダプターの一例を示した背面側側面図である。
【
図3】
図3は,穿刺アダプターを超音波プローブに取り付けた状態を示した模式図である。
【
図4】
図4は,第1スリットと鏡面部を合わせる操作を使用者の視点位置から模式的に描画している。
【
図5】
図5は,穿刺針の刺入位置及び刺入角度を決定する操作を使用者の視点位置から模式的に描画している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0020】
本願明細書において,「正面」というときは,穿刺アダプターを超音波プローブに取り付けて使用している状態において,使用者の視点と相対する面を意味する。また,本願明細書において,「背面」というときは,正面とは反対側の面,すなわち穿刺アダプターの使用状態においては使用者によっては視認されない面を意味する。また,本願明細書において,「上下」というときは,穿刺アダプターを超音波プローブに取り付けた状態における上下の方向を意味する。また,本願明細書において,「前後」及び「左右」というときは,穿刺アダプターを超音波プローブに取り付けて穿刺アダプターを使用している状態において,使用者の視点を基準とした前後の方向及び左右の方向を意味する。
【0021】
図1は,穿刺アダプター1の正面側斜視図であり,
図2は,穿刺アダプター1の背面側斜視図である。また,
図3は,穿刺アダプター1が超音波プローブ2に取り付けられた超音波装置の概要を示している。
図1から
図3に示されるように,穿刺アダプター1は,超音波プローブ2に取り付けて使用される。穿刺アダプター1は,超音波ガイド下穿刺術において,注射針などの穿刺針3の刺入方向を,超音波プローブ2から発生された超音波の走査線(
図3の一点鎖線)上に案内するために用いられる。穿刺アダプター1を正しく使用して,穿刺針3の刺入方向を決定することで,超音波プローブ2の走査線上に位置する生体内の目標とする部位(例えば血管など)に,この穿刺針3を正しく刺し込むことが可能となる。
【0022】
図1及び
図2に示した実施形態において,穿刺アダプター1は,基本的に,メインピース10と,サブピース20と,鏡部材保持部30と,取付部40とを備える。また,
図2に示されるように,穿刺アダプター1は,メインピース10と鏡部材保持部30との間に挿入可能な板状の鏡部材11bを備えている。
【0023】
メインピース10は,上下方向に延びる部位である。本実施形態においては,メインピース10の上端部分の正面10a側にサブピース20が設けられ,メインピース10の下端部分の背面10b側に取付部40が設けられる。本実施形態において,メインピース10は,上下方向と左右方向とを有し,上下方向の長く延びる板状に構成されている。メインピース10の上下方向の長さと左右方向の幅は適宜設計可能である。例えば,メインピース10の長さは,100mm〜200mmとすればよい。また,メインピース10の幅は,10mm〜90mmとすればよい。メインピース10の厚みは,特に限定されないが,5〜15mmとすればよい。
【0024】
メインピース10の正面10a側には,上下方向に直線状に延びる鏡面部11が設けられている。鏡面部11は,メインピース10の正面10a側に位置する物体を映し出す鏡で構成されている。つまり,鏡面部11は,少なくとも正面側に光(主に可視光)を反射する鏡面を有する。鏡面部11は,別途設けられた鏡部材11bによって構成されていてもよいし,その他,正面10aに鏡面塗料を塗布したり鏡面を持つシールを貼付することによっても実現できる。鏡面部11は,少なくとも使用者が扱う穿刺針3の虚像3´を映し出すことのできる幅を有する。つまり,鏡面部11の幅は,穿刺アダプター1の使用状態において,この鏡面部11に映り込んだ穿刺針3の虚像3´の外径よりも広いことが好ましい。鏡面部11の幅は,例えば1mm〜15mmとすればよく,特に2mm〜10mmであることが好ましい。また,鏡面部11は,少なくともメインピース10の全長の半分を超える長さを有することが好ましい。
【0025】
鏡面部11は,メインピース10の正面の左右方向の中央に位置している。つまり,鏡面部11は,メインピース10の中心線に沿って延びたものである。また,鏡面部11の左右両側には,非鏡面部12が設けられている。非鏡面部12は,物体を映し出すことができない部位であり,その形成方法は特に限定されない。鏡面部11の左右両側に非鏡面部12を設けることで,使用者が鏡面部11の位置を把握しやすくなる。
【0026】
図1及び
図2に示されるように,本実施形態において,鏡面部11は,第2スリット11aと鏡部材11bとによって構成されている。第2スリット11aは,メインピース10の正面から背面まで貫通する穴であり,上下方向に長く延びている。
図1に示された例において,第2スリット11aは,下端が開き,上端が閉じた状態となっている。ただし,第2スリット11aは,下端と上端の両方が閉じられていてもよいし,下端と上端の両方が開いていてもよい。また,図の例とは反対に,第2スリット11aは,下端が閉じ,上端が開いた状態のものであってもよい。第2スリット11aは,メインピース10の正面の左右方向の中央に位置している。第2スリット11aの幅は,前述した鏡面部11の幅に一致するものであり,1mm〜15mm又は2mm〜10mmとすればよい。鏡部材11bは,メインピース10の背面10b側に配置される部材であり,メインピース10から取り外すことができる。鏡部材11bは,少なくとも一面が鏡面となっており,その鏡面がメインピース10の背面10bに接するように配置される。これにより,メインピース10の第2スリット11aを通じて,鏡部材11bの鏡面が,メインピース10の正面10a側に露出する。従って,使用者は,メインピース10の正面10a側から,鏡部材11bの鏡面を視認することができる。このように,使用者に対して第2スリット11aを通じて鏡面を視認させることで,使用者はその鏡面の位置を目視で把握しやすくなる。
【0027】
また,
図2に示されるように,穿刺アダプター1は,メインピース10の背面10b側に鏡部材保持部30を有していてもよい。鏡部材保持部30は,メインピース10の背面10bとの間で鏡部材11bを挟み込むことにより,この鏡部材11bを保持する。つまり,鏡部材11bは,メインピース10と鏡部材保持部30との間に差し込むことができるようになっている。また,鏡部材11bは自由に着脱することができる。
【0028】
図1及び
図2に示されるように,メインピース10の上端の正面10a側には,サブピース20が連結されている。サブピース20は,基本的に,メインピース10と一体的に成型されている。サブピース20は,メインピース10と同様の幅及び厚みを持つ板状とすることが好ましい。本実施形態において,サブピース20は,メインピース10の上端に取り付けられているが,本発明はこのような形態に限定されない。例えば,メインピース10は,サブピース20よりも上方に延出する部位を有するものであってもよい。この場合,サブピース20は,メインピース10の長手方向の中頃に連結されることとなる。本発明は,メインピース10に設けられた鏡面部11が,少なくとも,サブピース20の連結部位よりも下方に位置していればよい。
【0029】
サブピース20は,メインピース10の正面10aに対して下向きに傾斜した傾斜部21を有している。ここにいう「下向きに傾斜」するとは,つまり,メインピース10から最も遠い傾斜部21の遠位端21aが,メインピース10に最も近い傾斜部21の近位端21bよりも,下方に位置することを意味する。すなわち,傾斜部21は,穿刺針3の像を構成する光が鏡面部11で反射した後に使用者の視点に到達するまでの光路と交わるように,傾斜している。また,
図2において,傾斜部21とメインピース10とのなす角が,符号θで示されている。例えば,なす角θは,20度〜85度,30度〜80度,又は45〜60度であることが好ましい。傾斜部21は,メインピース10の正面10aから離れる方向に延在する。例えば,傾斜部21の近位端21bから遠位端21aまでの長さは,20mm〜100mm又は30mm〜80mmとすればよい。
【0030】
サブピース20の傾斜部21には,第1スリット22が形成されている。第1スリット22は,傾斜部21を貫通する穴であり,傾斜部21の延在方向に沿って長く延びている。
図1に示された例において,第1スリット22は,下端が開き,上端が閉じた状態となっている。ただし,第1スリット22は,下端と上端の両方が閉じられていてもよいし,下端と上端の両方が開いていてもよい。また,第1スリット22は,鏡面部11(第2スリット11a)と同様に,サブピース20の傾斜部21の左右方向の中央に位置している。つまり,第1スリット22は,サブピース20の中心線に沿って延びたものである。このため,第1スリット22と鏡面部11(第2スリット11a)とは,共に,穿刺アダプター1の中心線に沿って形成されたものとなる。これにより,使用者が穿刺アダプター1を正面側からみたときに,使用者の視点が穿刺アダプター1の中心線と一致している場合に,使用者は,第1スリット22を通じて,鏡面部11(第2スリット11a)を視認することとなる。また,第1スリットの幅は,鏡面部11(第2スリット11a)と略等しいことが好ましい。具体的に,第1スリットの幅は,鏡面部11の幅に対して,90%〜110%の範囲の値であることが好ましい。また,第1スリット22の幅は,穿刺アダプター1の使用状態において,鏡面部11に映り込んだ穿刺針3の虚像3´の外径よりも広いことが好ましい。
【0031】
また,サブピース20は,傾斜部21とメインピース10と間に連結部23を有していてもよい。連結部23は,傾斜部21とメインピースの正面10aとを間隙を空けて連結する部位である。このとき,連結部23とメインピースの正面10aのなす角は,ほぼ直角(85〜95度)であることが好ましい。このように,サブピース20は傾斜部21とメインピース10の正面10aとの間に一定の間隙が設けられていることで,使用者が自身の頭部の位置や目視方向が適切であることかどうかをより適切に確認できるようになる。連結部23の長さ(すなわち,メインピースの正面10aから傾斜部21の近位端21bまでの距離)は,例えば,3mm〜40mm,又は10mm〜30mmとすればよい。
【0032】
取付部40は,穿刺アダプター1の本体を超音波プローブ2に取り付けるための構造を有する。取付部40を介して穿刺アダプター1の本体を超音波プローブ2に取り付けることで,鏡面部11の鏡面がプローブ面に対して略垂直になる。
図1から
図3に示した例において,取付部40は,左右二対(合計4本)のアーム部41を有している。このため,左右のアーム部41で超音波プローブ2を挟み込むことで,穿刺アダプター1を超音波プローブ2に固定することができる。例えば,左右のアーム部41に輪ゴムを巻き付けることで,左右のアーム部41で超音波プローブ2を挟み込んで固定することができる。また,各アーム部41の下縁と上縁の両方又は一方には,一又は複数箇所に切欠き42が形成されている。例えば,左右のアーム部41に輪ゴムを巻き付けて固定する際に,切欠き42に輪ゴムが係合するようになっている。これにより,左右のアーム部41に安定的に輪ゴムを巻き付けることが可能となる。
図1等に示した例において,取付部40は,メインピース10の下端に設けられており,この下端から背面10b側に向かって延在している。ただし,取付部40を設ける位置は,メインピース10の下端に限定されず,メインピース10の中頃であってもよい。
【0033】
続いて,本発明に係る穿刺アダプター1を利用して,注射針等の穿刺針3の刺入位置及び刺入角度を決定する方法について説明する。
【0034】
図4は,使用者の視点位置を決定する操作を説明するための図である。
図4は,使用者の視点から見た穿刺アダプター1及び超音波プローブ2を模式的に示している。
図4(a)に示されるように,メインピース10の正面側の上方に,サブピース20が位置している。超音波プローブ2に取り付けられた穿刺アダプター1を上側から覗き込むような体勢の場合,メインピース10は,部分的に,サブピース20の裏に隠れることとなる。このため,使用者の視点位置からは,メインピース10の全体を視認することはできない。
図4(a)に示した状態では,サブピース20の第1スリット22と,メインピース10の鏡面部11は揃っていない。つまり,サブピース20の第1スリット22を通じて,メインピース10の鏡面部11を一直線上に視認できない状態にある。この状態は,使用者の視点と穿刺アダプター1との相対的な位置関係が悪い状態であるといえる。
【0035】
そこで,
図4(b)に示されるように,穿刺アダプター1が取り付けられた超音波プローブ2を左右に回転させるか,あるいは使用者の頭部の位置を移動させることによって,使用者の視点から,サブピース20の第1スリット22を通じて,メインピース10の鏡面部11を真っ直ぐに視認できるように調整する。
図4(b)の状態は,使用者の視点から見て,サブピース20の第1スリット22とメインピース10の鏡面部11が完全に揃っており,第1スリット22を通じて鏡面部11が一直線上に見えている。このような状態は,使用者の視点と穿刺アダプター1との相対的な位置関係が適切な状態であるといえる。
【0036】
次に,
図5は,穿刺針3の刺入位置及び刺入角度を決定する操作を説明するための図である。
図5は,
図4と同様に,使用者の視点から見た穿刺アダプター1及び超音波プローブ2を模式的に示している。まずは,前述の
図4(b)で決定した使用者の視点位置を動かさないようにして,穿刺針3の刺入位置を決定する。つまり,
図5(a)に示されるように,サブピース20の第1スリット22とメインピース10の鏡面部11が揃った状態を維持しておく。この状態で,使用者は,サブピース20の第1スリット22を通じて,メインピース10の鏡面部11を上から覗き込む。すると,鏡面部11には,穿刺アダプター1の下側の領域が映し出される。使用者は手元で穿刺針3を操作しているため,メインピース10の鏡面部11には穿刺針3の虚像3´が投影される。ただし,
図5(a)に示されるように,鏡面部11に投影された穿刺針3の虚像3´は,この鏡面部11及びサブピース20の第1スリット22と一直線上に並んでおらず,傾いた状態となっている。このような状態は,使用者の視点から見て,穿刺針3の刺入角度が悪い状態であるといえる。
【0037】
そこで,
図5(b)に示されるように,使用者は,視点を動かさずに,手元で操作する穿刺針3を左右に回転移動させて,使用者の視点から見て,鏡面部11に映った穿刺針3の虚像3´が,この鏡面部11及びサブピース20の第1スリット22と一直線上に並ぶように調整する。つまり,
図5(b)に示されるように,使用者の視点から見たときに,サブピース20の第1スリット22を通じて鏡面部11を真っ直ぐに視認でき,かつ,この鏡面部11に映った穿刺針3の虚像3´が第1スリット22及び鏡面部11と一直線上に並ぶように,穿刺針3の刺入角度を決定する。このような
図5(b)に示した状態が,使用者の視点位置,穿刺針3の刺入位置,及び穿刺針3の刺入角度が適切に決定された状態であるといえる。そこで,使用者は,この状態になったことを確認できた後に,穿刺針3を真っ直ぐに患者の皮膚や体内に進入させる。これにより,超音波プローブ2によるガイドの下,その走査線上の目標とする部位に穿刺針3を確実に刺入できるようになる。
【0038】
以上のとおり,本発明に係る穿刺アダプター1を利用すれば,従来のアダプターのようにガイド孔を利用して穿刺針の移動方向を規制しなくても,使用者が超音波プローブ2の走査線上に穿刺針3を刺入する操作を適切に補助することができる。従って,本発明の穿刺アダプター1によれば,ガイド孔が設けられた従来のアダプターが抱える問題を解消することができる。例えば,本発明の穿刺アダプター1は,透明な滅菌プローブカバーの中に装着することができ基本的に患者の体液が付着することがないため,繰り返し使用することが可能である。また,本発明の穿刺アダプター1は,穿刺針3の刺入方向を物理的に規制するものではないため,穿刺針3の操作の自由度が高くなるとともに,超音波プローブ2と穿刺針3とをそれぞれ独立して操作することが可能となる。さらに,本発明の穿刺アダプター1は,例えば穿刺針3の太さに関わらず,すべての穿刺針3で使用することができるため,穿刺針3の太さに応じてアダプターを付け替える手間を省くことができ,施術を迅速に遂行することができる。
【0039】
さらに,例えば人体の腕部のように,丸みを帯びた部位に超音波プローブのプローブ面を接触させる場合,超音波プローブ自体が傾くことがある。このように接地面が傾いた状態では,従来の穿刺アダプターを利用して穿刺針を正確に超音波プローブの走査線上に導くことが難しいとされていた。これに対して,本発明の穿刺アダプター1は,使用者自身がメインピース10の鏡面部11とサブピース20の第1スリット22を目視しながら,穿刺針3の刺入位置と刺入角度を微調整することができる。このため,人体の腕部に超音波プローブ2を接触させる場合のように,超音波プローブ2の接地面が傾いた状態であっても,使用者の技術によって,穿刺針3の針先を超音波プローブ2の走査線上へと正確に導くことができる。このように,本発明の穿刺アダプター1は,従来のアダプターと比較して,傾いた接地面で運用する際の有効性が高いといえる。
【0040】
また,本発明の穿刺アダプター1は,再利用可能なものであってもよいし,使い捨てのものであってもよい。穿刺アダプター1を再利用する場合には,その使用後に超音波プローブ2から穿刺アダプター1を取り外して,加熱消毒することが好ましい。また,穿刺アダプター1が使い捨てタイプである場合には,穿刺アダプター1の本体は安価なプラスチック製とすると良い。
【0041】
本願明細書では,主として,超音波プローブ2に対して着脱自在に構成された穿刺アダプター1について説明を行った。ただし,穿刺アダプター1と超音波プローブ2とは予め一体的に構成されており,互いに分離不能なものであってもよい。
【0042】
また,穿刺アダプター1の構成は上述したとおりである。他方で,超音波プローブ2の構成は,特に限定されるものではなく,例えば特許文献1(特開2006−212165号公報)に開示されているものなど,適宜公知の構成を採用することができる。
【0043】
また,本願明細書では,術者が目視で穿刺アダプターを使用する例を説明したが,目視の代わりに視覚センサを利用して穿刺アダプターを使用することもできる。このため,ロボットによる手術においても本発明に係る穿刺アダプターを利用することもできる。
【0044】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は,超音波ガイド下穿刺術用の穿刺アダプターに関する。従って,本発明は,医療機器の製造業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0046】
1…穿刺アダプター 2…超音波プローブ
3…穿刺針 10…メインピース
10a…正面 10b…背面
11…鏡面部 11a…第2スリット
11b…鏡部材 12…非鏡面部
20…サブピース 21…傾斜部
21a…遠位端 21b…近位端
22…第1スリット 23…連結部
40…取付部 41…アーム部
42…切欠き
【要約】
【課題】ガイド孔に拠らずに超音波プローブの走査線上の目標とする位置へ穿刺針を適切に刺入させる。【解決手段】超音波プローブに取り付けられる穿刺アダプター(1)であって,上下方向に延びるメインピース(10)と,メインピースの正面(10a)側に位置するサブピース(20)とを備え,メインピースとサブピースは連結しており,メインピースは,サブピースの連結部位よりも下方の正面に上下方向に延びる鏡面部(11)を有し,サブピースは,メインピースの正面に対して下向きに傾斜した傾斜部(21)と,傾斜部に形成された第1スリット(22)とを有し,第1スリットを通じて鏡面部を視認することができるように構成されている。