特許第6239811号(P6239811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239811
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】測定プログラムおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20171120BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20171120BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20171120BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01N21/64 F
   G01N33/48 T
   G01N33/48 Z
   G01N33/49 K
   G01T1/161 E
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-101036(P2012-101036)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-228305(P2013-228305A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年7月14日
【審判番号】不服2016-1548(P2016-1548/J1)
【審判請求日】2016年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大石 彰
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 宣弥
(72)【発明者】
【氏名】明地 将一
【合議体】
【審判長】 伊藤 昌哉
【審判官】 渡戸 正義
【審判官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/117952(WO,A1)
【文献】 特表2001−508171(JP,A)
【文献】 特開平1−126779(JP,A)
【文献】 特開2008−165198(JP,A)
【文献】 特開2007−107932(JP,A)
【文献】 特開2003−262588(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/006696(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/17-21/83
G01T1/00-1/40
G01N33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する一連の処理をコンピュータに実行させるための測定プログラムであって、
前記測定対象の液体を収容するために設けられた容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する輪郭強調工程と、
その輪郭強調工程で輪郭が強調された前記輪郭強調画像、および前記容器の設計情報に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量を算出する歪み算出工程と、
その歪み算出工程で算出された前記歪み補正物理量に基づいて、画像の歪みを補正する画像歪み補正工程と、
その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、前記光あるいは放射線の情報を算出する情報算出工程と
を備えることを特徴とする測定プログラム。
【請求項2】
請求項に記載の測定プログラムにおいて、
前記画像歪み補正工程では、前記流路に関する画像の全体に対して歪みを補正すること
を特徴とする測定プログラム。
【請求項3】
請求項に記載の測定プログラムにおいて、
前記画像歪み補正工程では、前記流路に関する画像からアルゴリズムによって抽出された流路領域に対して歪みを補正することを特徴とする測定プログラム。
【請求項4】
請求項に記載の測定プログラムにおいて、
前記画像歪み補正工程では、前記流路に関する画像からアルゴリズムによって抽出された流路長に対して歪みを補正することを特徴とする測定プログラム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定プログラムにおいて、
前記流路に関する画像は、前記測定対象の液体の形態情報を有した形態情報画像であることを特徴とする測定プログラム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の測定プログラムにおいて、
前記流路に関する画像は、前記光あるいは放射線の測定情報を有した測定情報画像であることを特徴とする測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する測定プログラムおよび測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定装置は、核医学診断(例えば、PET(Positron Emission Tomography)、SPECT(Single Photon Emission CT)など)における定量解析で用いられ、特に小動物(例えばマウスやラットなど)の動脈血中の放射能濃度の測定に用いられている。
【0003】
マウスの体内への放射性薬剤の投与後の血液を時系列に分離して、円板(CDウェル)の複数の溝に血液を滴下して採取する。採取された血液を遠心分離して、血漿分離された血漿および血球に含まれている放射線(例えばβ線やγ線など)をそれぞれ測定する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、測定対象の血液を円板(CDウェル)の流路に採取する。採取後に円板を回転させて遠心分離して、血液を血漿および血球に分離する血漿分離を行う。円板をフラットヘッドスキャナで撮像し、画像データ(スキャナ画像)を取得する。
【0005】
円板の各流路は、円板に対して所定の寸法で溝加工したもので形成されていることから、流路に送り込まれた血液の溝長あるいは溝領域がわかれば、所定の寸法で溝加工された溝の断面積あるいは溝の深さに基づいて流路に送り込まれた血液の体積を規定することができる。取得された円板の画像データ(スキャナ画像)をソフトウェアで読み込んで、流路領域、流路内の血液が分離した血漿と気体との境界、および血漿と血球との境界を、CPU(中央演算処理装置)によるアルゴリズムにより自動的に検出する。この境界線の位置から溝長を割り出し、溝長および流路の断面積から血漿および血球の体積をそれぞれ算出する。
【0006】
血中放射能濃度を求める際には、フラットヘッドスキャナで撮像された円板の画像(スキャナ画像)と、イメージングプレート(IP: Imaging Plate)で得られた計数情報であるβ線の分布像(IP画像)とを重ね合わせて重畳処理して、β線の分布像(IP画像)上で、溝内部で分離された血漿領域および血球領域と重なる部分のβ線の計数情報から、単位体積当たりの血中放射能濃度を求める。具体的には、円板の画像(スキャナ画像)中の血漿と、β線の分布像(IP画像)中の血漿とを対応付けるとともに、円板の画像(スキャナ画像)中の血球と、β線の分布像(IP画像)中の血球とを対応付けることで、各部の計数を各部の体積で除算して、各部の血中放射能濃度をそれぞれ求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2009−093306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の手法により求められた血中放射能濃度と、実際の血中放射能濃度とに間にズレが生じて、上述の手法により求められた血中放射能濃度が正確な値を示さないという問題がある。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光あるいは放射線の情報を正確に算出することができる測定プログラムおよび測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
【0011】
すなわち、重畳処理されるスキャナ画像とIP画像との間にズレが生じた結果、スキャナ画像中の各部(血漿・血球)とIP画像中の各部(血漿・血球)とが正確に対応付けられずに、各部の血中放射能濃度が正確な値を示さないという知見を得た。スキャナ画像の全体とIP画像の全体とを比較すると、さほどに大きなズレは生じていない。しかし、流路領域や流路長を拡大して見ると画像に歪み(例えば横方向に伸長あるいは縮小)が生じており、特にスキャナ画像に歪みが生じていることが判明した。
【0012】
例えば流路入口を拡大すると、円板の厚みがスキャナ画像に写り込んでいることから、フラットヘッドスキャナが微小な斜め方向から円板を撮像しているのが原因ではないかと考えられる。また、円板とフラットヘッドスキャナとが近接していれば、微小な斜め方向からの撮像でもスキャナ画像の歪みはさほどに大きいものではないが、円板を固定して位置決めを行いつつ支持する固定治具の厚みにより、円板とフラットヘッドスキャナとが近接することができない。その結果、固定治具の厚みの影響により、スキャナ画像に歪みが生じると考えられる。
【0013】
一方で、円板などに代表される容器の設計情報は既知であるので、その既知の容器の設計情報を参照すれば、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)を算出することができる筈という知見を得た。また、予め取得された参照画像も既知であるので、その既知の参照画像を参照すれば、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)を算出することができる筈という知見を得た。前者の容器の設計情報においても、後者の参照画像においても、画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力しなければ、画像の歪みを正確に求めることができないという知見も得た。
【0014】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る測定プログラム(前者の発明)は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する一連の処理をコンピュータに実行させるための測定プログラムであって、前記測定対象の液体を収容するために設けられた容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する輪郭強調工程と、その輪郭強調工程で輪郭が強調された前記輪郭強調画像、および前記容器の設計情報に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量を算出する歪み算出工程と、その歪み算出工程で算出された前記歪み補正物理量に基づいて、画像の歪みを補正する画像歪み補正工程と、その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、前記光あるいは放射線の情報を算出する情報算出工程とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]この発明に係る測定プログラム(前者の発明)によれば、輪郭強調工程では、測定対象の液体を収容するために設けられた容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する。その輪郭強調工程で輪郭が強調された輪郭強調画像、および容器の設計情報に基づいて、歪み算出工程では、画像の歪みに関する歪み補正物理量を算出する。このように、輪郭強調画像および既知の容器の設計情報を参照すれば、容器の設計情報に対する画像の歪みの度合いがわかり、歪み補正物理量を算出することが可能になる。したがって、歪み算出工程で算出された歪み補正物理量に基づいて、画像歪み補正工程では画像の歪みを補正することが可能になり、その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、情報算出工程では、光あるいは放射線の情報を正確に算出することができる。また、前者の発明の場合には、撮像によって取得された画像の歪みに依存せずに、容器の設計情報に基づいて画像の歪みの補正において一定の効果が得られる。
【0016】
また、この発明に係る測定プログラム(後者の発明)は、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線を測定する一連の処理をコンピュータに実行させるための測定プログラムであって、前記測定対象の液体を収容するために設けられた容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する輪郭強調工程と、その輪郭強調工程で輪郭が強調された前記輪郭強調画像、および予め取得された参照画像に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量を算出する歪み算出工程と、その歪み算出工程で算出された前記歪み補正物理量に基づいて、画像の歪みを補正する画像歪み補正工程と、その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、前記光あるいは放射線の情報を算出する情報算出工程とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]この発明に係る測定プログラム(後者の発明)によれば、前者の発明と同様に、輪郭強調工程では、容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力する。その輪郭強調工程で輪郭が強調された輪郭強調画像、および予め取得された参照画像に基づいて、歪み算出工程では歪み補正物理量を算出する。このように、輪郭強調画像および既知の参照画像を参照すれば、参照画像の元となる対象物に対する画像の歪みの度合いがわかり、歪み補正物理量を算出することが可能になる。したがって、歪み算出工程で算出された歪み補正物理量に基づいて、画像歪み補正工程では画像の歪みを補正することが可能になり、その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、情報算出工程では、光あるいは放射線の情報を正確に算出することができる。また、後者の発明の場合には、個々の参照画像に応じて画像の歪みをそれぞれ補正するので、個々の参照画像の歪み具合に応じて画像の歪みをより一層正確に補正することができる効果が得られる。
【0018】
前者の発明および後者の発明において、上述の画像歪み補正工程では、流路に関する画像の全体に対して歪みを補正してもよい。全体に対して歪みを補正することで、一連の処理が簡素化されるという効果を奏する。
【0019】
前者の発明および後者の発明において、上述の画像歪み補正工程では、流路に関する画像からアルゴリズムによって抽出された流路領域に対して歪みを補正してもよい。流路領域に対して歪みを補正することで、流路領域の歪みをより一層正確に補正することができるという効果を奏する。
【0020】
前者の発明および後者の発明において、上述の画像歪み補正工程では、流路に関する画像からアルゴリズムによって抽出された流路長に対して歪みを補正してもよい。流路長に対して歪みを補正することで、流路長の歪みをより一層正確に補正することができるという効果を奏する。
【0021】
上述した流路に関する画像は、測定対象の液体の形態情報を有した形態情報画像(例えばスキャナ画像)であってもよいし、光あるいは放射線の測定情報を有した測定情報画像(例えばIP画像)であってもよい。特に、形態情報画像の場合には歪みが生じ易いことが判明しており、画像の歪みの対象として形態情報画像を適用することで、歪みの補正において有用である。また、測定情報画像の場合には光あるいは放射線の分布像が得られるが流路が抽出され難く、当該分布像から輪郭強調画像を出力することで流路が抽出され易くなり、画像の歪みの対象として測定情報画像を適用することで、歪み補正物理量の算出において有用である。
【0022】
また、この発明に係る測定装置は、上述したこれらの発明に係る測定プログラムを実行する演算手段を備えたことを特徴とするものである。
【0023】
[作用・効果]この発明に係る測定装置によれば、上述したこれらの発明に係る測定プログラムを実行する演算手段を備えることで、測定装置においても、光あるいは放射線の情報を正確に算出することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る測定プログラムおよび測定装置によれば、輪郭強調工程では、容器の流路に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力し、その輪郭強調工程で輪郭が強調された輪郭強調画像、および容器の設計情報/参照画像に基づいて、歪み算出工程では歪み補正物理量を算出する。このように、輪郭強調画像および既知の容器の設計情報/参照画像を参照すれば、容器の設計情報/参照画像の元となる対象物に対する画像の歪みの度合いがわかり、歪み補正物理量を算出することが可能になる。したがって、歪み算出工程で算出された歪み補正物理量に基づいて、画像歪み補正工程では画像の歪みを補正することが可能になり、その画像歪み補正工程で歪みが補正された画像に基づいて、情報算出工程では、光あるいは放射線の情報を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】各実施例に係る測定装置のブロック図である。
図2】測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。
図3】各実施例に係る円板の概略平面図である。
図4】実施例1に係る表示装置のブロック図である。
図5】各実施例に係る固定治具の概略平面図である。
図6】各実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートである。
図7】歪みが無いときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図である。
図8】横方向に伸びて歪んだときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図である。
図9】横方向に縮んで歪んだときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図である。
図10】実施例2に係る表示装置のブロック図である。
【実施例1】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、各実施例に係る測定装置のブロック図であり、図2は、測定装置の撮像部におけるスキャナの概略斜視図である。後述する実施例2も含めて、本実施例1では、測定対象の液体として血液を例に採って説明するとともに、測定装置を備えた測定システムを例に採って説明する。
【0027】
測定システムの採血装置(図示省略)は、測定対象の血液を時系列に分離して採取する。各実施例に係る測定システムは、図1に示すように、採取された血液中に含まれている放射線(例えばβ線やγ線など)を測定する測定装置10を備えている。
【0028】
測定システムは、図2に示すように、滴下した血液を受け取って収容する円板(「CDウェル」とも呼ばれる)24を配設している。円板24の中央側には、滴下された血液を受け取る複数の開口部からなる流路入口25(図3を参照)を放射状に配設している。円板24に対して溝加工を施しており、その溝加工の溝によってU字型の溝からなる複数本のU字流路26(図3を参照)を放射状に形成している。各々のU字流路26は、上述した流路入口25の外側一端に一対一でそれぞれ接続されており、各々のU字流路26は、円板24の径方向に延びて形成されている。円板24は、この発明における容器に相当し、U字流路26は、この発明における流路に相当する。円板24の具体的な構成については、図3以降で後述する。
【0029】
一方、図1に示すように、測定装置10は読取部11を備えている。この読取部11には、露光後のイメージングプレート(図示省略)を挿入するためのカバー部を設けており、イメージングプレートから励起された光を読み取ることで血液中に含まれているβ線を検出する。具体的には、読取部11は、レーザ光源12とフォトマルチプライヤチューブ(光電子増倍管)13とを備えており、レーザ光源12からイメージングプレートにレーザを照射して、イメージングプレートへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ13が電子に変換して増倍させることで、β線を検出する。
【0030】
測定装置10は、上述した読取部11の他に、撮像部14と表示装置15とを備えている。表示装置15については、通常のパーソナルコンピュータで構成してもよい。表示装置15の具体的な構成については、図4以降で後述する。
【0031】
図2に示すように、撮像部14は円板24を撮像する。後述する実施例2も含めて、本実施例1では、撮像部14としてフラットヘッドスキャナを採用する。円板24の直径分の長さを少なくとも有する線状の光源14aと円板24を挟んで光源14aに対して対向配置された線状のフォトダイオードアレイ(すなわちラインセンサ)14bでフラットヘッドスキャナを構成する。フラットヘッドスキャナで円板24上を走査(スキャン)することで円板24を撮像して、円板24の画像を取得する。
【0032】
次に、円板24の具体的な構成について、図3を参照して説明する。図3は、各実施例に係る円板の概略平面図である。円板24のU字流路26は、図3に示すように、上述の流路入口25と空気穴27とをつないで形成されている。血液の導入口である流路入口26を血液の上流部、空気穴27を下流部としたときに、上流部から下流部へは、U字流路26は、円板24の径方向に内側から外側に向かって延びて、折り返して円板24の径方向に外側から内側に向かって延びて形成されたU字型となっている。かかるU字流路26を複数に備えている。
【0033】
なお、円板24には2箇所の窪み24A,24Bがあり、後述する固定治具31(図5を参照)に嵌合される。固定治具31については、図5以降で後述する。
【0034】
円板24の中央に円板24を回転させるモータ(図示省略)を備えている。モータの回転軸(図示省略)を円板24に連結させることで、モータによる円板24の遠心力を利用して、血液を遠心分離させて血漿および血球に分離する血漿分離を行う。
【0035】
後述する実施例2も含めて、本実施例1では、円板24はアクリル板で形成されている。円板24の素材はアクリルに限定されず、上述のPDMS、その他、ポリカーボネート、COPなど樹脂光学的に透明なものであれば良い。
【0036】
次に、表示装置15の具体的な構成について、図4を参照して説明する。図4は、実施例1に係る表示装置のブロック図である。図4に示すように、表示装置15は、第1読み込み部16Aと第2読み込み部16Bとメモリ部17とコントローラ18と入力部19と出力モニタ20とを備えている。コントローラ18は、この発明における演算手段に相当する。
【0037】
第1読み込み部16Aおよび第2読み込み部16Bは、例えばI/O(Input/Output)デバイスなどの読み込みデバイスなどで構成されている。第1読み込み部16Aは、読取部11(図1を参照)を介してイメージングプレート(図示省略)で取得されたIP画像を読み込む。第2読み込み部16Bは、撮像部14で取得されたスキャナ画像を読み込む。IP画像は、この発明における測定情報画像に相当し、スキャナ画像は、この発明における形態情報画像に相当する。
【0038】
メモリ部17は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例1では、図6に示す一連の処理をコンピュータ(本実施例1ではコントローラ18)に実行させるための測定プログラム17Aと、アルゴリズムで抽出された抽出結果として、測定対象の液体(各実施例では血液)を収容するために設けられた容器(各実施例では円板24:図2図3を参照)の流路(各実施例ではU字流路26:図3を参照)に関する画像(各実施例ではIP画像やスキャナ画像)の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力して記憶する抽出結果メモリ部17Bと、容器(円板24)の設計情報を記憶する設計情報メモリ部17Cとをメモリ部17は備えている。測定プログラム17AはROMで構成され、抽出結果メモリ部17B,設計情報メモリ部17CはRAMで構成されている。本実施例1では、設計情報として、円板24のU字流路26の外側の輪郭(図7図9の点線を参照)を例に採って説明する。測定プログラム17Aは、この発明における測定プログラムに相当する。
【0039】
コントローラ18は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。各種の画像処理を行うためのプログラムとして、歪み補正パラメータを算出する、画像の歪みを補正する、放射能濃度を算出する等の図4に示す測定プログラム17A等をコントローラ18が実行することでそのプログラムに応じた画像処理を含む測定プログラムに応じた図6に示す一連の処理を行う。本実施例1では、コントローラ18は、輪郭強調工程,歪み算出工程,画像歪み補正工程および情報算出工程を実行する。
【0040】
入力部19は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスなどで構成されている。出力モニタ20は、図6に示すように、第1読み込み部16Aで読み込まれたIP画像や第2読み込み部16Bで読み込まれたスキャナ画像を表示し、アルゴリズムで抽出された抽出結果として出力された輪郭強調画像を表示し、歪みが補正された画像を表示し、歪みが補正された画像(ここではスキャナ画像)とIP画像とを重ね合わせて重畳表示するように構成されている。
【0041】
次に、固定治具31の具体的な構成について、図5を参照して説明する。図5は、各実施例に係る固定治具の概略平面図である。かかる円板24(図2図3を参照)を固定して位置決めを行いつつ支持するために、図5に示すように固定治具31を備えている。固定治具31には、円板24が嵌合する開口部32が設けられており、その開口部32に2つの突起部32A,32Bが設けられている。突起部32Aに円板24の窪み24A(図3を参照)を嵌合し、突起部32Bに円板24の窪み24B(図3を参照)を嵌合することで、固定治具31は円板24を固定して位置決めを行いつつ支持する。
【0042】
後述する実施例2も含めて、本実施例1では、図5に示すように開口部32を1つ設けて、1つの固定治具31に対して1つの円板24が固定されるが、開口部32を複数(例えば2つ)設けて、1つの固定治具31に対して当該複数の円板24が固定されるように構成してもよい。また、図面の左上には固定治具31に切り欠き31Aを設けている。
【0043】
なお、図5に示す固定治具31の場合には180°回転させると流路入口26(図3を参照)の対称性から上下左右を間違える恐れがあるが、切り欠き31Aを図面の左上に設けることで、読取部11(図1を参照)を介してイメージングプレート(図示省略)で取得されたIP画像も、撮像部14(図1図2図4を参照)で取得されたスキャナ画像も、切り欠き31Aを基準として向きをそろえることができる。
【0044】
モータ(図示省略)による円板24(図2図3を参照)の遠心力により、血漿および血球に血漿分離された円板24を固定治具31は固定して位置決めを行いつつ支持することで、円板24の各々の流路入口26(図3を参照)の向きや位置も固定される。そして、向きや位置が固定された状態で、イメージングプレート(図示省略)を用いて円板24の撮像を行ってIP画像を取得し、撮像部14(図1図2図4を参照)のフラットヘッドスキャナによる円板24の撮像を行ってスキャナ画像を取得する。なお、撮像の順番については特に限定されない。
【0045】
具体的に説明すると、円板24(図2図3を参照)および固定治具31をサンプルとして、図示を省略するカセッテを開いて収容して、その上にイメージングプレート(図示省略)を収容して、カセッテを閉じて露光を行う。この露光によって、血液中に含まれているβ線の電離能により、イメージングプレートの蛍光体(図示を省略)の格子欠陥に電子が捕獲される。一定時間の露光後にイメージングプレートをカセッテから取り出して、測定装置10(図1を参照)の読取部11(図1を参照)のカバー部に挿入して、イメージングプレートに光を照射して露光を行う。
【0046】
読取部11(図1を参照)のレーザ光源12(図1を参照)からイメージングプレート(図示省略)にレーザを照射する。捕獲された電子がこの照射によって伝導体に励起され正孔と再結合し、蛍光体から光として励起される。このイメージングプレートへのレーザ照射によって励起された光をフォトマルチプライヤチューブ13(図1図4を参照)が電子に変換して増倍させることで、電気パルスとして検出して計数する。なお、レーザ光源12からイメージングプレートへ照射した後には、再利用するために消去用光源(図示省略)から光をイメージングプレートへ照射することで、捕獲された電子を消去する。イメージングプレートと読取部11で求められたβ線の計数情報に基づいて、β線の計数情報である血中の放射線量を求める。このようにして、IP画像が取得される。
【0047】
一方、撮像部14(図1図2図4を参照)は、血漿分離された血漿および血球を円板24(図2図3を参照)およびそれを支持した固定治具31ごと撮像する。撮像部14のフラットヘッドスキャナの光源14a(図2を参照)から光を照射することで、吸光度の相違によって血漿および血球が撮像された画像上で濃淡差となって現れ、画像上で容易に識別可能である。このようにして、スキャナ画像が取得される。
【0048】
スキャナ画像は、血液や円板24(図2図3を参照)や切り欠き31Aを設けた固定治具31を含んだ形態情報画像であるので、切り欠き31Aなどの情報も反映されるが、IP画像は、測定情報を有した測定情報画像であるので、切り欠き31Aなどの情報は画像に反映されない。しかし、固定治具31によって各々の流路入口26(図3を参照))の向きや位置が固定されるので、(円板24の固定位置である)円板24のU字流路26と固定治具31との相対位置も決定される。
【0049】
ただし、固定治具31を備えていても、円板24(図2図3を参照)を撮像部14(図1図2図4を参照)のフラットヘッドスキャナで撮像する際に、上述したようにフラットヘッドスキャナが微小な斜め方向から円板24を撮像する場合には、それによって取得されたスキャナ画像に歪みが生じる可能性がある。特に固定治具31が円板24を固定して位置決めを行いつつ支持して、固定治具31ごと円板24をフラットヘッドスキャナで撮像する場合には、固定治具31の厚みにより、円板24とフラットヘッドスキャナとが近接することができない。その結果、固定治具31の厚みの影響により、スキャナ画像に歪みが生じる可能性がある。その結果、個々の画像を重ね合わせて重畳表示したとしても、重畳処理されるスキャナ画像とIP画像との間にズレが生じて、スキャナ画像中の各部(血漿・血球)とIP画像中の各部(血漿・血球)とが正確に対応付けられずに、各部の血中放射能濃度が正確な値を示さない可能性がある。
【0050】
そこで、本実施例1では、アルゴリズムで抽出された抽出結果として、円板24(図2図3を参照)のU字流路26(図3を参照)に関する画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力して、輪郭が強調された輪郭強調画像および円板24の設計情報(本実施例1では円板24のU字流路26の外側の輪郭)に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)を算出する。そして、歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)に基づいて画像の歪みを補正して、歪みが補正された画像に基づいて、血中放射能濃度を算出する。
【0051】
次に、一連の処理について、図6を参照して説明するとともに、図7図9と併せて説明する。図6は、各実施例に係る一連の処理の流れを示したフローチャートであり、図7は、歪みが無いときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図であり、図8は、横方向に伸びて歪んだときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図であり、図9は、横方向に縮んで歪んだときのスキャナ画像と設計情報との関係の説明に供する概略平面図である。図7図9では、スキャナ画像SCの輪郭を強調して得られた輪郭強調画像として概略的に図示している。
【0052】
先ず、読取部11(図1を参照)を介してイメージングプレート(図示省略)からIP画像を取得するとともに、撮像部14(図1図2図4を参照)のフラットヘッドスキャナからスキャナ画像を取得する。
【0053】
(ステップS1)画像読み込み
第2読み込み部16B(図4を参照)は、撮像部14(図1図2図4を参照)で取得されたスキャナ画像を読み込む。
【0054】
(ステップS11)輪郭強調
また、通常では、関心領域を抽出するために、ステップS1で読み込まれたスキャナ画像の輪郭をコントローラ18(図4を参照)は強調して輪郭強調画像を出力する。輪郭強調処理としては、例えばゾーベルフィルタ(Sobel filter)処理やプレヴィットフィルタ(Prewitt filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分を求める一次微分による輪郭強調処理、ラプラシアンフィルタ(Laplacian filter)処理などに代表される、注目画素とその周辺画素との差分のさらなる差分を求める二次微分による輪郭強調処理などを行えばよい。これらの輪郭強調処理については公知の技術であるので、その説明を省略する。このステップS11は、この発明における輪郭強調工程に相当する。
【0055】
この輪郭強調画像を利用して抽出結果(流路領域)に供する。すなわち、コントローラ18(図4を参照)はスキャナ画像に対して輪郭強調処理などのアルゴリズムを施してスキャナ画像の輪郭を強調して輪郭強調画像を出力することで、円板24(図2図3を参照)のU字流路26(図3を参照)の流路の輪郭(すなわち流路領域)や、気体・血漿や血漿・血球の境界位置を検出して、当該流路の輪郭(流路領域)を抽出し、当該境界位置および当該流路領域で囲まれた領域を成分領域として抽出する。そして、この輪郭強調処理のアルゴリズムによる抽出結果とした流路領域を抽出結果メモリ部17B(図4を参照)に書き込んで記憶する。また、それに併せて、成分領域を抽出結果メモリ部17B(図4を参照)に書き込んで記憶してもよい。
【0056】
(ステップT1)画像読み込み
一方、第1読み込み部16A(図4を参照)は、読取部11(図1を参照)を介してイメージングプレート(図示省略)で取得されたIP画像を読み込む。上述のステップS1,このステップT1の順番については特に限定されず、ステップT1を先に行ってもよいし、ステップS1を先に行ってもよいし、ステップS1,T1を同時並行に行ってもよい。
【0057】
(ステップS2)画像表示
ステップS1で読み込まれたスキャナ画像を出力モニタ20(図4を参照)の画面に表示する。
【0058】
(ステップS3)抽出結果表示
ステップS2でスキャナ画像を出力モニタ20(図4を参照)の画面に表示すると、当該スキャナ画像に対してアルゴリズムで抽出された抽出結果とした流路領域を当該スキャナ画像に付加して出力モニタ20の画面に表示する。抽出結果(流路領域、成分領域)を出力モニタ20の画面に付加して表示するために、抽出結果メモリ部17B(図4を参照)から抽出結果とした流路領域を読み出して、流路領域をスキャナ画像に付加して出力モニタ20の画面に表示する。流路領域の他に、抽出結果として成分領域をもスキャナ画像に付加して出力モニタ20の画面に表示することも可能である。
【0059】
(ステップS4)調整
ステップS3で誤検出があった場合でも、このステップS4のように調整するのがより一層好ましい。具体的には、スキャナ画像、抽出結果とした流路領域のいずれか少なくとも一方を表示画面上で移動させて調整、あるいは抽出結果とした流路領域の大きさを表示画面上で調整する。入力部19(図4を参照)により調整する。図4に示す出力モニタ20から、各々の抽出結果とした流路領域(その他に成分領域)をグループ化して、グループ化された抽出結果をドラッグしてスキャナ画像の成分や流路に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、各々の抽出結果(流路領域、成分領域)をグループ化させずに、個々に抽出結果(流路領域、成分領域)をドラッグしてスキャナ画像の成分や流路に一致するように表示画面上で移動させて調整したり、あるいは囲み領域の囲み部分にポインタを合わせて抽出結果(流路領域、成分領域)の大きさを調整する。もちろん、スキャナ画像の方を表示画面上で移動させて調整してもよいし、両方を表示画面上で移動させて調整してもよい。また、入力部19を出力モニタ20のタッチパネルで構成し、出力モニタ20のタッチパネルにおいて調整の対象となるスキャナ画像あるいは抽出結果(流路領域、成分領域)を直接に指で触れることにより、調整してもよい。
【0060】
(ステップT2)画像表示
一方、ステップT1で読み込まれたIP画像も出力モニタ20(図4を参照)の画面に表示する。上述のステップS2〜S4,T2の順番についても特に限定されず、ステップT2を先に行ってもよいし、ステップS2〜S4を先に行ってもよいし、ステップS2〜S4,T2を同時並行に行ってもよい。
【0061】
(ステップS5)画像歪み補正
ステップS4でスキャナ画像・抽出結果とした流路領域間で調整したとしても、画像の全体、流路領域あるいは流路長に歪みが生じている可能性がある。そこで、このステップS5で画像の歪みを補正する。先ず、ステップS11で輪郭が強調されて抽出結果メモリ部17B(図4を参照)に記憶された輪郭強調画像(流路領域や成分領域)、および設計情報メモリ部17C(図4を参照)に記憶された円板24(図2図3を参照)の設計情報(ここでは円板24のU字流路26(図3を参照)の外側の輪郭)に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)をコントローラ18(図4を参照)は算出する。
【0062】
そのために、円板24(図2図3を参照)の設計情報と、スキャナ画像から抽出された流路領域とを比較して、スキャナ画像が歪んでいるか否かを判定する。例えば、画像の横方向について、図7に示すように向かい合って抽出されたU字流路26の外側の輪郭が、図7の点線で示される設計情報Dによって決まる円の円周上に接していれば、画像が歪んでいないと判断することができる。また、図8の点線で示される設計情報Dによって決まる円よりも外側にU字流路26の外側の輪郭があれば、画像が横方向に伸びて歪んでいると判断する。また、図9の点線で示される設計情報Dによって決まる円よりも内側にU字流路26の外側の輪郭があれば、画像が横方向に縮んで歪んでいると判断する。
【0063】
このように、図7図9の点線で示される円の円周上にU字流路26の外側の輪郭が接していなければ、スキャナ画像SC上でのU字流路26の外側の輪郭から点線で示される当該円の円周上までの距離に基づいて、画像が縮んでいる、あるいは伸びている比率をコントローラ18(図4を参照)は算出する。本実施例1では、この比率を歪み補正パラメータとして求める。
【0064】
画像が横方向に縮んで歪んでいるときには、この比率を用いて画像の全体を横方向に引き伸ばすことによって画像の歪みを補正する。逆に、画像が横方向に伸びて歪んでいるときには、この比率を用いて画像の全体を横方向に縮小することによって画像の歪みを補正する。横方向について判断した後、同様の手順で縦方向についても判断して行い、画像の縦横の歪みを補正する。このステップS5は、この発明における歪み算出工程および画像歪み補正工程に相当する。
【0065】
(ステップS6)画像表示
ステップS5で歪みが補正された画像を出力モニタ20(図4を参照)の画面に表示する。なお、歪みが完全に補正されていないときには、ステップS5に戻って画像歪み補正、このステップS6での画像表示を、歪みを完全に補正するまで繰り返し行ってもよい。
【0066】
(ステップU1)重畳処理
コントローラ18(図4を参照)は、ステップS4で調整され、ステップS5で歪みが補正されたスキャナ画像、ステップT2で表示されたIP画像を重ね合わせて重畳処理する。
【0067】
このようにして、重畳処理されるスキャナ画像とIP画像とが正確に対応付けられ、スキャナ画像中の血漿における体積および血球における体積が正確に求められる。そして、コントローラ18(図4を参照)は、スキャナ画像中の血漿に対応付けられたIP画像中のβ線の計数を、当該血漿における体積で除算して、血漿の血中放射能濃度を算出する。また、コントローラ18は、スキャナ画像中の血球に対応付けられたIP画像中のβ線の計数を、当該血球における体積で除算して、血球の血中放射能濃度を算出する。このステップU1は、この発明における情報算出工程に相当する。
【0068】
(ステップU2)重畳表示
重畳処理後の画像(図6では「重ね合わせ画像」で表記)を、出力モニタ20(図4を参照)の画面に表示する。ここでの説明では、血中放射能濃度を算出した後にステップU2での重畳表示を行ったが、ステップU2での重畳表示の後に血中放射能濃度を算出してもよい。
【0069】
本実施例1に係る測定プログラム17Aによれば、ステップS11では、測定対象の液体(各実施例では血液)を収容するために設けられた容器(各実施例では円板24)の流路(各実施例ではU字流路26)に関する画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)の輪郭を強調して輪郭強調画像(流路領域や成分領域)を出力する。そのステップS11で輪郭が強調された輪郭強調画像(流路領域や成分領域)、および容器(円板24)の設計情報(本実施例1では円板24のU字流路26の外側の輪郭)に基づいて、ステップS5では、画像の歪みに関する歪み補正物理量(本実施例1では比率)を算出する。このように、輪郭強調画像および既知の容器(円板24)の設計情報D(円板24のU字流路26の外側の輪郭)を参照すれば、容器(円板24)の設計情報D(円板24のU字流路26の外側の輪郭)に対する画像の歪みの度合いがわかり、歪み補正物理量(比率)を算出することが可能になる。したがって、ステップS5で算出された歪み補正物理量(比率)に基づいて、同じステップS5では画像の歪みを補正することが可能になり、そのステップS5で歪みが補正された画像に基づいて、ステップU1では、放射線(各実施例ではβ線)の情報(各実施例では血中放射能濃度)を正確に算出することができる。
【0070】
また、本実施例1の場合には、撮像によって取得された画像の歪みに依存せずに、容器(円板24)の設計情報Dに基づいて画像の歪みの補正において一定の効果が得られる。
【0071】
本実施例1では、流路に関する画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)の全体に対して歪みを補正している。全体に対して歪みを補正することで、一連の処理が簡素化されるという効果を奏する。
【0072】
本実施例1では、流路に関する画像は、測定対象の液体(各実施例では血液)の形態情報を有した形態情報画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)である。特に、スキャナ画像に代表される形態情報画像の場合には歪みが生じ易いことが判明しており、画像の歪みの対象として形態情報画像を適用することで、歪みの補正において有用である。
【0073】
また、本実施例1に係る測定装置10は、測定プログラム17Aを実行するコントローラ18を備えることで、測定装置10においても、放射線(各実施例ではβ線)の情報(各実施例では血中放射能濃度)を正確に算出することができる。
【実施例2】
【0074】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図10は、実施例2に係る表示装置のブロック図である。上述した実施例1と共通する構成については同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。また、本実施例2に係る測定装置については、実施例1でも述べた図1図2と同じ構成であり、本実施例2に係る円板や固定治具についても、実施例1でも述べた図3図5と同じ構成であるので、その説明および図示を省略する。
【0075】
実施例1と相違する点は、実施例1では参照元が容器(円板24)の設計情報D(円板24のU字流路26の外側の輪郭)であったのに対して、本実施例2では参照元が参照画像である点である。つまり、本実施例2では、輪郭強調画像(流路領域や成分領域)、および予め取得された参照画像に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)を算出する。そのために、実施例1での図4の設計情報メモリ部17Cの代わりに、本実施例2では、図10に示すように、予め取得された参照画像を記憶する参照画像メモリ部17Dをメモリ部17は備えている。その他の図10の構成については、実施例1の図4の構成と同じであるので、その説明を省略する。
【0076】
本実施例2でも、コントローラ18は、輪郭強調工程,歪み算出工程,画像歪み補正工程および情報算出工程を実行する。ただし、本実施例2での歪み算出工程(図6のステップS5)では、参照元が参照画像となるので、その部分について詳しく述べる。
【0077】
参照画像については特に限定されないが、図6のフローチャートのように画像歪みの補正の対象がスキャナ画像であれば、スキャナ画像を取得したのと同じフラットヘッドスキャナで対象物上を走査(スキャン)することで当該対象物を撮像して、参照画像を取得する。この場合、縦横のマス目が入った方眼紙を対象物として、方眼紙をフラットヘッドスキャナで事前にスキャンすることで、縦横のマス目の入った方眼紙の参照画像を取得して、当該マス目からのズレ量あるいはズレ角度を算出することができる。
【0078】
もし、フラットヘッドスキャナで円板24のスキャナ画像に歪みが生じているのであれば、同じフラットヘッドスキャナで事前に取得された方眼紙の参照画像においても歪みが生じており、歪みが生じた参照画像中のマス目も、元来の縦横方向から特定のズレ量あるいは特定のズレ角度が生じている。そこで、マス目毎にズレ量あるいはズレ角度をそれぞれ算出することで、これらのズレ量あるいはズレ角度を補正物理量(歪み補正パラメータ)としてコントローラ18は算出する。
【0079】
次に、一連の処理について、図6を参照して説明する。ただし、図6のステップS1〜S4,S11およびS6と、ステップT1およびT2と、ステップU1およびU2とは、実施例1の各々のステップと同じであるので、その説明を省略する。ステップS5での画像歪み補正のみについて説明する。
【0080】
(ステップS5)画像歪み補正
先ず、ステップS11で輪郭が強調されて抽出結果メモリ部17B(図10を参照)に記憶された輪郭強調画像(流路領域や成分領域)、および参照画像メモリ部17D(図10を参照)に基づいて、画像の歪みに関する歪み補正物理量(歪み補正パラメータ)をコントローラ18(図10を参照)は算出する。
【0081】
そのために、参照画像(ここではフラットヘッドスキャナで事前に取得された方眼紙の参照画像)と、スキャナ画像から抽出された流路領域とを比較して、スキャナ画像が歪んでいるか否かを判定する。上述したように、参照画像において歪みが生じていれば、スキャナ画像も歪んでいると判断する。
【0082】
このように、参照画像中のマス目に基づいて、元来の縦横方向からの特定ズレ量あるいはズレ角度をコントローラ18(図10)はそれぞれ算出する。本実施例2では、これらのズレ量あるいはズレ角度を歪み補正パラメータとして求める。
【0083】
画像が斜め方向に歪んでいるときには、ズレ角度を用いて逆方向に回転させることによって画像の歪みを補正する。画像が縦横のいずれかにずれて歪んでいるときには、ズレ量を用いて逆方向に移動させることによって画像の歪みを補正する。なお、ズレ量およびズレ角度の双方を用いて補正してもよい。
【0084】
また、縦横のマス目が歪みによって縦あるいは横方向に縮んでいる、あるいは伸びている場合には、実施例1と同様に比率を歪み補正パラメータとして求めてもよい。この場合には、マス目毎に比率をそれぞれ算出する方が、より正確に歪みを補正する点においても好ましい。このステップS5は、この発明における歪み算出工程および画像歪み補正工程に相当する。
【0085】
本実施例2に係る測定プログラム17Aによれば、実施例1と同様に、ステップS11では、容器(各実施例では円板24)の流路(各実施例ではU字流路26)に関する画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)の輪郭を強調して輪郭強調画像(流路領域や成分領域)を出力する。そのステップS11で輪郭が強調された輪郭強調画像(流路領域や成分領域)、および予め取得された参照画像(例えば方眼紙の参照画像)に基づいて、ステップS5では、画像の歪みに関する歪み補正物理量(本実施例2ではズレ量あるいはズレ角度)を算出する。このように、輪郭強調画像および既知の参照画像(方眼紙の参照画像)を参照すれば、参照画像(方眼紙の参照画像)の元となる対象物(方眼紙)に対する画像の歪みの度合いがわかり、歪み補正物理量(ズレ量あるいはズレ角度)を算出することが可能になる。したがって、ステップS5で算出された歪み補正物理量(ズレ量あるいはズレ角度)に基づいて、同じステップS5では画像の歪みを補正することが可能になり、そのステップS5で歪みが補正された画像に基づいて、ステップU1では、放射線(各実施例ではβ線)の情報(各実施例では血中放射能濃度)を正確に算出することができる。
【0086】
また、本実施例2の場合には、個々の参照画像(方眼紙の参照画像)に応じて画像の歪みをそれぞれ補正するので、個々の参照画像(方眼紙の参照画像)の歪み具合に応じて画像の歪みをより一層正確に補正することができる効果が得られる。
【0087】
本実施例2では、上述した実施例1と同様に、流路に関する画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)の全体に対して歪みを補正している。全体に対して歪みを補正することで、一連の処理が簡素化されるという効果を奏する。
【0088】
本実施例2では、上述した実施例1と同様に、流路に関する画像は、測定対象の液体(各実施例では血液)の形態情報を有した形態情報画像(図6のフローチャートではスキャナ画像)である。特に、スキャナ画像に代表される形態情報画像の場合には歪みが生じ易いことが判明しており、画像の歪みの対象として形態情報画像を適用することで、歪みの補正において有用である。
【0089】
また、本実施例2に係る測定装置10は、上述した実施例1と同様に、測定プログラム17Aを実行するコントローラ18を備えることで、測定装置10においても、放射線(各実施例ではβ線)の情報(各実施例では血中放射能濃度)を正確に算出することができる。
【0090】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0091】
(1)上述した各実施例では、測定対象の液体として血液を例に採って説明したが、測定対象の液体であれば、血液に限定されずに、放射性物質や発光物質や蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。また、測定対象の液体は、遠心分離の対象となる液体でなくともよい。
【0092】
(2)上述した各実施例では、測定情報画像は、イメージングプレートから取得された放射線(各実施例ではβ線)の測定情報を有したIP画像であったが、測定対象の液体中に含まれている発光あるいは蛍光物質から発生した光あるいは測定対象の液体中に含まれている放射線の測定情報を有した測定情報画像であれば、例えば光(フォトン:光子)や放射線を直接的に計数することで取得された測定情報画像などのように、必ずしもIP画像に限定されない。
【0093】
(3)上述した各実施例では、形態情報画像は、撮像部14のフラットヘッドスキャナから取得されたスキャナ画像であったが、測定対象の液体の形態情報を有した形態情報画像であれば、例えば放射線照射手段および放射線検出手段で構成される放射線撮像手段で取得された形態情報画像などのように、必ずしもスキャナ画像に限定されない。その他に、ディジタルカメラ等で撮像された容器(例えば円板)の画像に対して輪郭を強調して輪郭強調画像を出力して、容器(例えば円板)の設計情報に合わせて当該輪郭強調画像を拡大あるいは縮小して形態情報画像として用いてもよい。
【0094】
(4)上述した各実施例では、容器は遠心分離を行う円板であったが、測定対象の液体が、遠心分離の対象となる液体でない場合には、液体を収容する容器であれば、円板に限定されない。方形の板や多角形の板などであってもよい。
【0095】
(5)上述した各実施例では、円板24の径方向に沿って溝加工を放射状に施すことで、径方向に形成されたU字流路26を複数に設けたが、必ずしも放射状に配設する必要はない。例えば、互いに平行に配設してもよい。
【0096】
(6)上述した各実施例では、画像歪みの補正の対象が、スキャナ画像に代表される形態情報画像であったが、流路に関する画像でさえあれば、光あるいは放射線(各実施例ではβ線)の測定情報を有した測定情報画像(例えばIP画像)であってもよい。測定情報画像の場合には光あるいは放射線の分布像が得られるが流路が抽出され難く、当該分布像から輪郭強調画像を出力することで流路が抽出され易くなり、画像の歪みの対象として測定情報画像を適用することで、歪み補正物理量の算出において有用である。
【0097】
(7)上述した各実施例では、流路に関する画像(各実施例ではスキャナ画像)の全体に対して歪みを補正したが、必ずしも画像の全体に限定されない。必要なのはアルゴリズムによって抽出された流路領域あるいは流路長であるので、流路領域あるいは流路長に対して歪みを補正してもよい。流路領域に対して歪みを補正することで、流路領域の歪みをより一層正確に補正することができるという効果を奏する。流路長に対して歪みを補正することで、流路長の歪みをより一層正確に補正することができるという効果を奏する。
【0098】
(8)上述した各実施例では、図6のフローチャートに示すように、流路に関する画像(各実施例ではスキャナ画像)に対して歪みを毎回判定して画像の歪みを補正したが、必ずしも歪みを毎回判定する必要はない。一度、歪み判定で得られた同じ歪み補正パラメータを用いて、画像の歪みを補正してもよい。
【0099】
(9)上述した実施例1では、画像に対して縦横方向に歪みを補正したが、方向は縦横に限定されない。斜め方向に対して歪みを補正してもよいし、ある特定の角度に対して歪みを補正してもよいし、それらの方向を一部あるいは全て組み合わせて補正してもよい。また、実施例2のように特定のマス目毎に実施例1においても補正してもよい。
【0100】
(10)上述した実施例1では、容器の設計情報は、円板24のU字流路26の外側の輪郭であったが、設計情報はこれに限定されない。U字流路26の内側や、円板の外周円であってもよい。
【0101】
(11)上述した実施例2では、参照画像は、縦横のマス目が入った方眼紙を対象物として撮像して得られた画像であったが、容器の形状に合わせて描いた用紙を対象物として撮像して得られた画像であってもよいし、容器(各実施例では円板)上に歪み補正に設けられたマーカを容器ごと撮像して得られた画像であってもよい。
【0102】
(12)上述した各実施例では、容器(実施例では円板24)を固定して位置決めを行いつつ支持する固定治具31を備えたが、必ずしも固定治具31を備える必要はない。例えば、図3に示すように窪みを円板24自体に設ける、あるいは切り欠きや突起部を円板24自体に設けることで、その窪みや切り欠きや突起部などを基準として重畳の対象となる画像の向きを揃えてもよい。また、円板24の所定の箇所に光や放射線の透過性の異なる部材をマーカとして貼り付けて、撮像された画像でマーカ部分を基準として向きを揃えて重畳処理を行ってもよい。
【0103】
(13)上述した各実施例では、画像の歪みを自動で補正したが、入力部19への入力操作により画像の歪みを手動で補正するようなプログラミングで測定プログラム17Aをコントローラ18が実行してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 … 測定装置
17A … 測定プログラム
18 … コントローラ
24 … 円板
26 … U字流路
SC … スキャナ画像
D … 設計情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10