(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239818
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
F25B 19/00 20060101AFI20171120BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F25B19/00 Z
F25B1/00 399Y
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-219669(P2012-219669)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-70864(P2014-70864A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】393027729
【氏名又は名称】株式会社カンネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】荒木 努
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−192088(JP,A)
【文献】
特開2002−137271(JP,A)
【文献】
特開平06−249471(JP,A)
【文献】
実開平04−077417(JP,U)
【文献】
特開2010−210139(JP,A)
【文献】
特開平04−208332(JP,A)
【文献】
特開平08−028944(JP,A)
【文献】
特開平03−271675(JP,A)
【文献】
特開2002−168479(JP,A)
【文献】
特開2010−085010(JP,A)
【文献】
特開2007−198693(JP,A)
【文献】
特開平05−093550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 − 1/10
F25B 19/00
F24F 5/00
B29C 45/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却部(11)へ送るための被冷却水(M1 )が貯水された被冷却側(Z)のタンク(1)と、該タンク(1)から送られてくる上記被冷却水(M1 )をHCFC又はHFCの冷却媒体(F)を循環させることで冷却する水冷式冷凍ユニット(10)と、該冷凍ユニット(10)の凝縮器(5)への冷却水(M0 )を送る空冷ユニット(9)と、を備え、
上記冷凍ユニット(10)は、複数、設けられ、
上記空冷ユニット(9)に、複数の上記冷凍ユニット(10)の上記凝縮器(5)が並列状に接続されると共に、上記タンク(1)に、複数の上記冷凍ユニット(10)の蒸発器(6)が並列状に接続され、
夏季運転時には、上記タンク(1)からの上記被冷却水(M1 )を、分流させて各上記冷凍ユニット(10)の上記蒸発器(6)に流して上記冷却媒体(F)との熱交換によって冷却して上記タンク(1)に戻るようにし、かつ、上記空冷ユニット(9)からの上記冷却水(M0 )を、分流させて各上記冷凍ユニット(10)の上記凝縮器(5)に流して上記冷却媒体(F)と熱交換した後に上記空冷ユニット(9)に戻して、上記空冷ユニット(9)にて上記冷却水(M0 )を噴霧させずに上記冷却水(M0 )を空冷によって冷却し、
冬季運転時には、上記タンク(1)からの上記被冷却水(M1 )を、各上記冷凍ユニット(10)の上記凝縮器(5)及び上記蒸発器(6)を介さずに上記空冷ユニット(9)に送って上記空冷ユニット(9)にて上記被冷却水(M1 )を噴霧させずに上記被冷却水(M1 )を空冷によって冷却して各上記冷凍ユニット(10)の上記凝縮器(5)及び上記蒸発器(6)を介さずに上記タンク(1)に戻すように構成し、かつ、冬季運転時には、複数の上記冷凍ユニット(10)を休止させるようにしたことを特徴とする冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形機やダイキャスト成形機、あるいは、その他の各種機器・装置等に用いられる冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチック成形機の場合について説明すると、従来は、油圧駆動式が主流であり(例えば、特許文献1参照)、オイルポンプにより昇圧された油圧を駆動源として、金型の開閉、樹脂の射出注入に必要な動作が行われ、このときオイルポンプの駆動により作動油が昇温される。そこで、昇温を防止するためにオイルクーラが設けられている。一般的に、油圧駆動式のプラスチック成形機では、オイルクーラ,金型,ホッパー下の3箇所が冷却・温調を必要としている。プラスチック成形工場では、屋内の成形機に対応して屋外に冷却塔が設けられており、この冷却塔で冷却された冷却水が、冷凍機付水冷却機(チラー)を経由してオイルクーラ,金型,ホッパー下に送られ、冷却が行われている。又は、別の冷却システムでは、常に直接的に冷却水をオイルクーラ,金型,ホッパー下に送っている。
最近では、プラスチック成形の省エネルギー化による製造コスト低減や高精度化を目的として、プラスチック成形機が、従来の油圧駆動式から電動モータ駆動式へと急速に変化してきている。プラスチック成形機を電動モータ駆動式にすることによって、油圧駆動式で使用されていたオイルクーラが必要なくなり、冷却熱量負荷が少なくなる。
また、最近のプラスチック成形品では、精密成形品が多くなってきている。精密成形品は、通常の成形品より高い金型温度で成形するものが多く、そのために冷却水温が高くても成形が可能になっている。また、上述したプラスチック成形機以外のダイキャスト成形機あるいはその他の各種機器・装置でも同様の傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−300983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、最近の被冷却機器・装置では、冷却熱量負荷が少なくなってきているにもかかわらず、冷却システムは、大きな冷却熱量負荷に耐え得る従来のシステムを使用していたため、無駄が生じていた。
さらに、工場内に多数の成形機等が設置されている場合に、工場共用(ベース)の冷却水供給ユニットからは、従来、10℃〜35℃に冷却した水を供給していた。
従って、一つの工場全体に於て、使用電気量が多く、省エネの要望に十分に応えることが難しくなってきている。
また、別の従来の問題として、夏季と冬季と同一の冷却構成(冷却系)を用いていたので、冬季の消費電力に無駄があった。
そこで、本発明は、工場全体の省エネルギー化(電気使用量の削減)に貢献でき、工場内の多数の被冷却機器・装置を効率良く冷却できる冷却システムを提供することを目的とする。さらに、冬季運転時に効率よく消費電力の低減を図り得る冷却システムを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る冷却システムは、
被冷却部へ送るための被冷却水が貯水された
被冷却側のタンクと、該タンクから送られてくる上記被冷却水をHCFC又はHFCの冷却媒体を循環させることで冷却する水冷式冷凍ユニットと、該冷凍ユニットの凝縮器
への冷却水を送る空冷ユニットと、を備え、上記冷凍ユニットは、複数、設けられ、上記空冷ユニットに、複数の上記冷凍ユニットの上記凝縮器が並列状に接続されると共に、上記タンクに、複数の上記冷凍ユニットの蒸発器が並列状に接続され、夏季運転時には、上記タンクからの上記被冷却水を、分流させて各上記冷凍ユニットの上記蒸発器に流して上記冷却媒体との熱交換によって冷却して上記タンクに戻るようにし、かつ、上記空冷ユニットからの上記冷却水を、分流させて各上記冷凍ユニットの上記凝縮器に流して上記冷却媒体と熱交換した後に上記空冷ユニットに戻して、上記空冷ユニットにて上記冷却水を噴霧させずに上記冷却水を空冷によって冷却し、冬季運転時には、上記タンクからの上記被冷却水を、各上記冷凍ユニットの上記凝縮器及び上記蒸発器を介さずに上記空冷ユニットに送って上記空冷ユニットに
て上記被冷却水を噴霧させずに上記被冷却水を空冷によって冷却して各上記冷凍ユニットの上記凝縮器及び上記蒸発器を介さずに上記タンクに戻すように構成し、かつ、冬季運転時には、複数の上記冷凍ユニットを休止させるようにした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、夏季運転と冬季運転における冷却方式を簡単に切換自在とでき、夏季の冷凍(チラー)方式から、冬季には、いわばナチュラル方式(空冷方式)に切換えることができる。このようにして、最適な運転状態を実現し、(効率良く運転して)消費電力を低減できる。さらに、寿命も長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の一形態を示す(夏季運転時の)要部構成図である。
【
図2】本発明の実施の一形態を示す(冬季運転時の)要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1と
図3に於て、※印の1,2は相互に接続される配管図を分離して描いた図であり、特に、夏季運転を示す。他方、
図2と
図3に於て、※印の1,2は相互に接続される配管図を分離して描いた図であり、特に、冬季運転を示す。
【0009】
図3は、被冷却側Zを示し、1はタンクを示し、本発明に係る冷却システムでは、(
図3に示した実施形態では、)このタンク1内からポンプP
1 にて送られてくる被冷却水M
1 を冷却するものである。
【0010】
図1の夏季運転を示す系統図では、
図3の被冷却側Zから送られてくる被冷却水M
1 を冷却する2個の水冷式冷凍ユニット10,10を有すると共に、この冷凍ユニット10は、HCFC(R22)やHFC(R134aやR410A)の(水以外の)冷却媒体Fを循環させる構成である。
この冷凍ユニット10は、圧縮器4と、凝縮器5、蒸発器6、アキュムレータ7等を備えている。さらに、
図1では、緊急用の補
器8が付加されている。なお、冷凍ユニット10は、いわゆるチラーとして、公知の他の構成のものを用いるも良い。
【0011】
ところで、本発明に於て、被冷却水M
1 、冷却水
M0 、水という用語は、ケミカルクーラント等のように、防錆性及び
防腐食性に必要な化学薬品(例えば、有機カルボン酸ナトリウム、第4アンモニウム塩等)を混合させた水であると定義する。水冷式冷凍ユニット10の水冷式の水も同様である。
【0012】
図1にもどってさらに説明すれば、9は空冷ユニットであり、冷凍ユニット10,10の凝縮器5,5に冷却水M
0 を送って、冷凍ユニット10を循環している前記冷却媒体Fと熱交換を行って冷却(凝縮)させる。このように、凝縮器5は、水・冷媒熱交換器であるということもできる。
図1に於て、冷凍ユニット10,10は、細い実線をもって冷却媒体Fが流れている配管を図示しているが、後述する
図2との比較のために、太い実線は、水(冷却水M
0 及び被冷却水M
1 を含む)が流れている配管系路を、図示している。この
図1からも明らかなように、夏季運転時には、(
図3に示した)被冷却側Zから送られてくる被冷却水M
1 は、冷凍ユニット10、及び、空冷ユニット9の両方を作動させて、冷却しており、強力な(十分な)冷却を行っている状態である。
【0013】
これに対し、冬季運転時には、
図2に示すように、被冷却側Z(
図3参照)から送られてくる被冷却水M
1 は、
図2に太い実線にて示した配管を流れており、
図2の細い実線にて示した配管には流れないように、切換バルブV
1 ,V
2 ,V
3 ,V
4 ,V
5 ,V
6 ,V
7 ,V
8 ,V
9 ,V
10,V
11等を、図示省略の自動制御回路によって、又は、手動切換によって、あるいは、その他の切換方式によって、切換っている。なお、上記制御回路は、外気温検出器、又は、
図3に示したタンク1から送られてくる被冷却水M
1 の温度検出器、からの信号によって、上記切換バルブV
1 ………V
11の方向切換えや開閉切換えを、行う命令信号を発する。
【0014】
次に、
図3に示した具体例について追加説明すれば、11は、被冷却部を示し、プラスチック成形機、ダイキャスト成形機等の金型やホッパー部、あるいは、プレス機械の加熱しやすい部分、検査装置を恒温に保つべき部分、工作機械の切削油タンク、電子部品や液晶用フィルムの製造装置等の被冷却部が該当する。なお、Bは温調ユニットを示し、タンク1からは、ポンプP
2 によって、被冷却部11へ、直接に、又は、温調ユニットB等を介して、
被冷却水
M1 が送られる。
【0015】
なお、本発明に於て、夏季,冬季とは、基本的に季節の夏,冬を指すのであるが、地域によっては、冬でも暖かい地方があったり、夏でも涼しい地方もあり、また、春や秋でも、夏のように暑い日と、冬のように寒い日もあり得るために、前述の被冷却水M
1 を冷却するために除去すべき熱エネルギー(時間当り)の多少を基準とするのが望ましい。即ち、本発明に於て、夏季とは、被冷却水M
1 を冷却するために除去すべき(時間当りの)熱エネルギーが所定基準を越える場合を言い、冬季とは、その(時間当りの)熱エネルギーが所定基準以下の場合を言うものと定義する。
【0016】
ところで、
図1,
図2に示した装置は、屋外に設置し、他方、
図3に示した配管・装置は屋内に設置する。また、
図1,
図2に示した実施の形態では、2個の冷凍ユニット10,10を設けているので、設備のトラブル発生時に、片肺運転(片側運転)が可能であり、生産を極力休止せずに済む利点がある
。
【0017】
従来のように、冬季運転を夏季運転時の全ての機器をそのまま作動させている場合に比較すれば、本発明では、冬季運転時の消費電力を、マイナス50%〜マイナス90%まで低減可能となった。夏季のチラー運転から、冬季には、いわばナチュラル運転となり、消費電力が低減できる。また、水冷式を採用しているが、水を噴霧せず、密封式であって設備の耐久性も良好である。
【符号の説明】
【0018】
M
1 被冷却水
M
0 冷却水
1 タンク
5 凝縮器
6 蒸発器
9 空冷ユニット
10 (水冷式)冷凍ユニット
Z 被冷却側
F 冷却媒体