(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239831
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】遮熱コーティングの施工方法
(51)【国際特許分類】
C23C 4/134 20160101AFI20171120BHJP
C23C 4/10 20160101ALI20171120BHJP
C23C 4/06 20160101ALI20171120BHJP
【FI】
C23C4/134
C23C4/10
C23C4/06
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-32891(P2013-32891)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-174014(P2013-174014A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2016年1月27日
(31)【優先権主張番号】12156756.4
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513043961
【氏名又は名称】フォルシュングスツェルトルム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】500063790
【氏名又は名称】ズルツァー・メットコ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sulzer Metco AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホスパク
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ヴァセン
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ マオアー
(72)【発明者】
【氏名】カール − ハインツ ラオヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】デトレブ シュトゥーヴァー
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン フォン ニーセン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ギンドラット
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07838083(US,B1)
【文献】
特開平04−045254(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1338671(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0136695(US,A1)
【文献】
特表2007−527468(JP,A)
【文献】
特開平03−087379(JP,A)
【文献】
特開2009−249741(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/013772(US,A1)
【文献】
特開平01−100254(JP,A)
【文献】
特開2007−009277(JP,A)
【文献】
特表2006−506519(JP,A)
【文献】
特開2009−046765(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0220126(US,A1)
【文献】
特開平11−229109(JP,A)
【文献】
特開2007−297711(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0259173(US,A1)
【文献】
特開2005−180257(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0136249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面への遮熱コーティング(10)の施工方法であり、
プラズマトーチ(4)を有する作業室(2)を提供し、
プラズマジェット(5)を発生させて、それを前記作業室内に導入された基体(3)の表面に向け、
セラミックコーティング材料を、粉末として前記プラズマジェットに注入し、そこで部分的に若しくは完全に蒸発させて、コーティング材料を、プラズマ溶射物理蒸着又は略してPS−PVDによって、前記基体表面に施工する方法であって、
遮熱コーティング(10)を施工する際、第1の作業ステップにおいて、前記注入される粉末の供給速度を、注入される粉末の80重量%超が蒸発し、又は前記注入される粉末が完全に蒸発し、及び/又は、その際に、前記施工された層が、スプラット及びナノスケールのクラスターを有さないように設定すること、
前記第1の作業ステップにおいて、前記コーティング材料が、蒸気相から前記基体表面上に凝縮し、基体表面の材料との混合相を形成すること、
第2の作業ステップにおいて、前記注入される粉末の供給速度を少なくとも3倍増大させ、それにより、蒸発する注入された粉末の相対的部分を減少させること、並びに
前記第2の作業ステップにおいて、前記コーティング材料が、異方性微細構造を形成し且つ前記基体表面に垂直に整列する、細長い柱状体の形態で堆積されること
を特徴とする上記方法。
【請求項2】
前記基体表面が、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層(13)によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基体表面が、酸化物層によって形成される、請求項1又は2の一項に記載の方法。
【請求項4】
前記基体(3)が金属質である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記セラミックコーティング材料が、酸化物セラミック成分を含有し、且つ/又は、前記セラミックコーティング材料が、安定化酸化ジルコニウムからなり、或いは一成分として安定化酸化ジルコニウムを含有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記注入される粉末の供給速度が、前記第2の作業ステップにおいて段階的に増大される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の作業ステップにおいて注入される粉末の供給速度が、0.5g/分〜5g/分に達し、且つ/又は前記第2の作業ステップにおいて注入される粉末の供給速度が、5g/分〜40g/分に達する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の作業ステップの継続時間が、第2の作業ステップの継続時間の最大10%で、少なくとも1%に達する、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の作業ステップの間に施工され、且つ前記混合相を含む前記遮熱コーティングが、厚さ0.1μm〜10μmである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法を使用して施工されるセラミック遮熱コーティング(10)を使用することによって、前記セラミック遮熱コーティング(10)を有する基体又は工作物を製造する方法。
【請求項11】
接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層(13)が、前記基体表面と前記遮熱コーティング(10)との間に提供される、請求項10に記載の基体又は工作物を製造する方法。
【請求項12】
酸化物層(14)が、前記基体表面と前記遮熱コーティング(10)との間に提供される、請求項10又は11の一項に記載の基体又は工作物を製造する方法。
【請求項13】
前記遮熱コーティング(10)が、前記基体表面に向かって混合相を有する帯域(11)、並びに遮熱コーティングの表面に向かって細長い柱状体を有し、前記細長い柱状体が異方性微細構造を形成し、且つ前記基体表面に垂直に整列している帯域(12)を含み、前記遮熱コーティングは、細長い柱状体を有する帯域(12)を含む、請求項10から12までのいずれか一項に記載の基体又は工作物を製造する方法。
【請求項14】
前記混合相を有する帯域(11)が、厚さ0.1μm〜10μmを有し、又細長い柱状体を有する帯域(12)が、厚さ20μm〜2000μmを有する、請求項13に記載の基体又は工作物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに従う基体(substrate)表面への遮熱コーティング(thermal barrier coating)の施工方法に関し、又このような遮熱コーティングを有する基体に関する。
【背景技術】
【0002】
遮熱コーティングは、熱の影響、高温ガス腐食及び浸食から高い熱歪みに曝される部品を保護するために機械及びプロセスにおいて使用される。機械及びプロセスの効率向上は、しばしば工程温度の上昇によってのみ可能であり、このためそれに応じて、曝露される部品を保護しなければならない。したがって、例えば、航空機エンジン及び定置ガスタービン内のタービン翼には、普通遮熱コーティングが提供され、又は通常多層の遮熱コーティング系を備えて、高い工程温度の影響からタービン翼を保護し、又使用期間及び耐用寿命を延ばしている。
【0003】
遮熱コーティング系は、用途に応じて1層又は複数の層、例えば、バリヤ層、特に拡散バリヤ層、接着促進層、高温ガス腐食防止層、保護層、遮熱コーティング及び/又は被覆層を含むことができる。上述のタービン翼の例において、基体は通常Ni基合金又はCo基合金から製造される。タービン翼に施工される遮熱コーティング系は、例えば、上層に行く順に下記の層を含むことができる:
− 例えばNiAl相若しくはNiCr相又は合金からの、金属質バリヤ層、
− 高温ガス腐食防止層の役割も果たし、例えば、NiAl、NiPtAl若しくはPtAlなどの金属アルミナイドから、又はMCrAlY合金(式中、Mは、金属Fe、Ni若しくはCoの1つ又はNi及びCoの組合せを意味する。)から作製することができる、金属質接着促進層、
− 例えば、主としてAl
2O
3の、又は他の酸化物の、酸化物セラミック保護層、
− 例えば、安定化酸化ジルコニウムの、酸化物セラミック遮熱コーティング、並びに
− 例えば、安定化酸化ジルコニウム又はSiO
2の、酸化物セラミック平滑化層又は被覆層。
【0004】
その形成が下記において説明されるであろう遮熱コーティングは、1層又は複数のセラミックコーティング材料の層を含む。この遮熱コーティングは、上述のタービン翼の例のように、金属質接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層を備えることができる基体表面に施工される。
【0005】
酸化物セラミック遮熱コーティングが、大気圧プラズマ溶射(APS)によって施工される場合、溶融したコーティング材料は、基体表面で凝固し、原則としてラメラ層を形成する。APSによって施工されるラメラ状遮熱コーティングは、それらの伸び許容(stretch tolerance)が比較的低く、繰返し熱歪みのもとで剥離し易い欠点を有する。
【0006】
文献US5,238,752において、金属基体表面に施工される遮熱コーティング系の作製について記述されている。基体それ自体はNi合金又はCo合金からなり、一方金属質基体表面は、Niアルミナイド又はPtアルミナイドの厚さ25μmから厚さ125μmの接着促進層によって形成される。熱的酸化によって、この基体表面上で、酸化物セラミック保護層である厚さ0.03μmから3μmのAl
2O
3が生成され、その後ZrO
2及び6重量%〜20重量%Y
2O
3の、厚さ125μmから725μmの酸化物セラミック遮熱コーティングを、電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)によって堆積させる。EB−PVD方法において、遮熱コーティングのため堆積させる物質、例えばY
2O
38%を有するZr
2は、高真空中の電子ビームによって蒸気相中にもたらされ、コーティングされる成分上に前記蒸気相から凝縮される。プロセスパラメーターを適切な形で選択すると、柱状微細構造がもたらされる。
【0007】
柱状層が成長するので、こうして形成される遮熱コーティングは、繰返し熱歪みのもとで比較的高い伸び許容を有し、そのため遮熱コーティングの耐用寿命を延ばすことができる。
【0008】
しかし、US5,238,752において記述される遮熱コーティング構造体の作製は、EB−PVDによって遮熱コーティングを施工する装置コストが比較的高く、又施工速度が遅く、そのためEB−PVDによって施工される遮熱コーティングは比較的高価である欠点を有する。
【0009】
WO03/087422A1から、遮熱コーティングは、LPPS薄膜法によって柱状構造を有して形成できることも知られている。WO03/087422A1において記述されるプラズマ溶射方法では、コーティングされる材料を、プラズマジェットによって金属質基体の表面上に溶射させる。この点において、コーティング材料は、粉末ジェットの集束をずらしてプラズマに注入し、そこで、10kPa未満の低い工程圧力で一部若しくは完全に溶融させる。この目的のため、十分に高い比エンタルピーを有するプラズマが発生され、それにより、少なくとも5重量%に達するコーティング材料の実質的部分が、蒸気相に変化する。このコーティング材料により、異方性の構造層が基体に施工される。この層では、以下において柱状体(columns)と呼ばれる、異方性微細構造を形成する細長い微粒子(corpuscles)の大部分が基体表面に対し垂直に立って配列され、これらの柱状体が、材料転位の少ない領域のため互いに線引きされ(delineated)、その結果として柱状構造を形成するものである。
【0010】
柱状構造を有する遮熱コーティングを形成するためのWO03/087422A1中で記述されるプラズマ溶射方法は、LPPS薄膜方法と関連して言及される。それは、これらの方法と同様に、その方法が、通例100kPaのプラズマトーチの内部の圧力と、10kPa未満の作業室における圧力との間の圧力差によって生ずる、幅広いプラズマジェットを使用するからである。しかし、この記述された方法を使用して生成する遮熱コーティングは、1mmまで若しくはこれを超える厚さとすることができ、したがってほとんど用語「薄膜」によって扱われるものではないので、この記述された方法は、以下において、プラズマ溶射物理蒸着法又は略してPS−PVD方法と呼ばれるであろう。
【発明の概要】
【0011】
基体表面に施工された遮熱コーティングの接着強度及び繰返し熱歪み下での伸び許容が、EB−PVDによって施工された遮熱コーティングの接着強度及び繰返し熱歪み下での伸び許容に匹敵する、EB−PVD方法と比較してより経済的な遮熱コーティングの施工方法を提供することが、本発明の目的である。さらなる目的は、このような遮熱コーティングを有する基体又は工作物(workpiece)を提供することである。
【0012】
この目的は、本発明に従って、請求項1において定義される方法によって、又請求項10において定義される基体又は工作物によって満たされる。
【0013】
基体表面上に遮熱コーティングを形成する本発明に従う方法において、プラズマトーチを有する作業室を提供し、例えば、その作業室内でプラズマトーチを通ってプラズマガスを導き、プラズマトーチ内で、このプラズマガスを、例えば、電気的ガス放電又は電磁誘導若しくはマイクロ波によって加熱して、プラズマジェットを発生させ、このプラズマジェットを、作業室内に導入された基体の表面に向ける。さらに、本方法において、セラミックコーティング材料が、プラズマ溶射物理蒸着又は略してPS−PVDによって基体表面に施工され、その場合、このコーティング材料は粉末としてプラズマジェットに注入し、そこで部分的に又は完全に完全に蒸発させる。
【0014】
さらに、遮熱コーティングを施工する際、注入される粉末の供給速度を、第1の作業ステップにおいて、注入される粉末の大部分が蒸発し、具体的には、注入される粉末の80重量%超が蒸発する、又は注入される粉末がほぼ完全に蒸発する、及び/又は、その際に、施工された層が実質的にスプラット(splat)及びナノスケールのクラスター(cluster)を有さないように設定される。このコーティング材料は、蒸気相から基体表面上に凝縮され、すなわち、主として原子及び/又は分子として堆積され、基体表面の材料と混合相を形成する。その後、第2の作業ステップにおいて、注入される粉末の供給速度を少なくとも3倍、特に少なくとも5倍若しくは少なくとも10倍増大させ、それにより、蒸発する注入される粉末の相対的部分が減少し、又コーティング材料が、異方性微細構造を形成する且つ基体表面に対し実質的に垂直に整列する、細長い柱状体の形態で堆積される。
【0015】
蒸発する注入された粉末の部分、又はナノスケールのクラスターを形成する注入された粉末の部分が少な過ぎると、原則として施工された層上にいわゆるスプラット、すなわち、コーティング材料の凝固したスプラッシュ(溶着しぶき)の輪郭のある領域が観察される。プラズマガスとしてAr及びH
2の混合物が使用される場合、この効果が増幅された形で生じる。
【0016】
基体表面及び/又はその下の基体は、通例金属質であり、基体は超合金から作製することができ、又基体表面は、例えば、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層によって、例えば、NiAl、NiPtAl若しくはPtAlなどの金属アルミナイド、又はMCrAlY型合金(式中、M=Fe、Co、Ni若しくはNiCoである)の層によって形成することができる。必要な場合、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層は、プラズマ溶射方法若しくは他の適切な方法による上述の遮熱コーティングの前に、基体表面に施工することができる。
【0017】
必要な場合、基体表面は、酸化物層によって、例えば、Al
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3を含有する、又はAl
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3からなる熱酸化物層によって、且つ/或いは接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層に施工される酸化物層によって、形成することができる。例えば、酸化物層は、作業室内で熱的に生成させることができ、その場合酸素又は酸素を含有するガスが作業室に導入され、且つ例えばプラズマジェットによって基体表面が加熱される。生成される酸化物層は、基体の使用条件下で熱的に安定であるα−Al
2O
3を高い割合で有利に含有する。
【0018】
酸化物層は、PS−PVDによって、又は化学的方法によって、例えば、プラズマ溶射化学蒸着(PS−CVD)によって生成させることもでき、この場合作業室内の圧力は通例1kPa未満にあり、且つ必要に応じて、少なくとも1種の反応性成分が固体及び/若しくは液体及び/又は気体の形態でプラズマジェットに注入する。
【0019】
セラミックコーティング材料は、酸化物セラミック成分を有利に含有しており、セラミックコーティング材料は、例えば、安定化酸化ジルコニウム、例えばイットリウム、セリウム、スカンジウム、ジスプロシウム若しくはガドリニウムで安定化した酸化ジルコニウムからなることができ、及び/又は、一成分として安定化酸化ジルコニウム、例えばイットリウム、セリウム、スカンジウム、ジスプロシウム若しくはガドリニウムで安定化した酸化ジルコニウムを含有することができる。
【0020】
本方法の有利な一実施形態において、注入される粉末の供給速度は、第2の作業ステップにおいて段階的に増大される。
【0021】
さらに有利な一実施形態において、注入される粉末の供給速度は、第1の作業ステップにおいて0.5g/分〜5g/分に達し、且つ/又は第2の作業ステップにおいて少なくとも5g/分、典型的には8g/分〜30g/分に達する。
【0022】
さらに有利な一実施形態において、第1の作業ステップの継続時間は、最大10%、特に最大5%又は最大3%である。これとは独立に、第1の作業ステップの継続時間が、第2の作業ステップの継続時間の少なくとも0.5%、特に少なくとも1%又は少なくとも2%に達すると、有利である。
【0023】
さらに有利な一実施形態において、第1の作業ステップの間に施工され、混合相を含有する遮熱コーティングは、厚さ0.1μm〜10μm、特に厚さ0.5μm〜5μmである。
【0024】
さらに有利な一実施形態において、プラズマジェットの方向及び/又はプラズマトーチの位置は、基体に対して制御される(単数又は複数)。この形で、プラズマジェットは、基体表面の予熱の際に、又は遮熱コーティングの施工の際に、基体表面を覆って導くことができる。
【0025】
遮熱コーティングは、作業室内における圧力5kPa未満で、典型的には2kPa未満若しくは1kPa未満でPS−PVDによって施工される。このコーティング材料は、通常、粉末ジェットの集束をずらしてプラズマに注入され、又このコーティング材料はプラズマジェット内で少なくとも一部蒸発され、若しくはナノスケールのクラスターを形成し、それにより、例えば、少なくとも30重量%又は50重量%が蒸気相に変って、柱状構造を有する遮熱コーティングを生成させる。
【0026】
本発明にはさらに、上述の方法、又は上述の実施形態及び実施形態の変形形態の1つを使用して施工した、セラミック遮熱コーティングを有する基体又は工作物が含まれる。
【0027】
その基体表面、及び/又はその下に存在する基体は、典型的には金属質である。この基体は超合金から作製することができ、又、基体表面と遮熱コーティングとの間に接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層、特に、MCrAlY型合金(式中、M=Fe、Co、Ni若しくはNiCoである)の層又は金属アルミナイドの層を提供することができる。
【0028】
必要な場合、基体表面と遮熱コーティングとの間に酸化物層、例えば、Al
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3を含有する、又はAl
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3からなる熱酸化物層及び/或いは、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層上に施工される酸化物層を提供することができる。
【0029】
有利な一実施形態において、この遮熱コーティングは、基体表面に向かって混合相を有する帯域、並びに遮熱コーティングの表面に向かって細長い柱状体を有し、前記細長い柱状体が異方性微細構造を形成し、且つ基体表面に実質的に垂直に整列している帯域を含む。この遮熱コーティングの大部分まで、細長い柱状体を有する帯域からなる。
【0030】
さらに有利な一実施形態において、混合相を有する帯域は、厚さ0.1μm〜10μm、有利には0.5μm〜5μmを有し、又細長い柱状体を有する帯域は、厚さ20μm〜2000μm、有利には100μm〜1500μmを有する。
【0031】
上述の方法と従来のコーティング方法との間の決定的な差異は、層の堆積の開始時の低い成長速度(EB−PVDにおけるものと同様)に設定することができることと、その後、高い乃至極めて高い成長速度で柱状層としての大部分の遮熱コーティングを堆積させることが可能である点である。開始時の層堆積が遅いことにより、Al
2O
3−Y
2O
3−ZrO
2混合相の形成によって、接着促進層への又は酸化物層への遮熱コーティングの結合性の増大が可能になる。プラズマ中に比較的少量粉末(0.5g/分〜5g/分)を導入することによって、粉末がほとんど完全に蒸発され、主として原子又は分子の堆積をもたらす。高い成長速度により、急速な、したがって安価な層堆積が可能になる。プラズマ中へのより多い粉末の導入(5g/分〜40g/分)のため、粉末がもはや完全に蒸発されず、又主として大きさ2nm〜20nmのクラスターの堆積がもたらされ、それにより柱状構造が形成される。これらの範囲は、使用される粒度分布及びプラズマトーチ電力に応じて、ずらすことができる。
【0032】
本発明に従う遮熱コーティングの施工方法及び基体又は工作物は、従来のEB−PVD方法によるよりも、遮熱コーティングを安価に施工することができる利点を有し、又同時に、基体表面上に施工された遮熱コーティングの接着強度及び繰返し熱歪みに対する伸び許容を、従来のPS−PVD方法を使用して形成した遮熱コーティングに比較して向上させることができる。
【0033】
実施形態及び実施形態の変形形態についての上述の記述は、例としての役割を果たすものに過ぎない。さらに有利な実施形態を、従属する請求項から、又図面から見ることができる。その上、記述した若しくは示した実施形態及び実施形態の変形形態からの個々の特徴を、本発明の枠組みの範囲内で互いに組み合わせて、新たな実施形態を形成することもできる。
【0034】
本発明は、下記において、実施形態及び図面を参照してより詳細に説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に従って遮熱コーティングを施工するプラズマコーティング装置の一実施形態の図である。
【
図2】温度サイクル2700回後の、本発明に従って遮熱コーティングを有する、一実施形態の遮熱コーティング構造体を通る横断面の図である。
【
図3】温度サイクル1000回後の、本発明に従って遮熱コーティングを有する、さらなる実施形態の遮熱コーティング構造体を通る横断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明に従って遮熱コーティングを施工するプラズマコーティング装置の一実施形態を示す。プラズマコーティング装置1には、プラズマジェット5を発生させるためのプラズマトーチ4を有する作業室2と、
図1には示されず、作業室2に接続されて作業室内の圧力を設定する制御されたポンプ装置と、基体3を保持する基体ホルダー8が含まれる。例えばDCプラズマトーチとして設計することができるプラズマトーチ4は、少なくとも60kW若しくは少なくとも80kW又は少なくとも100kWの供給電力を有して、十分に高い比エンタルピーを有するプラズマを発生させ、それにより柱状構造を有する遮熱コーティングを形成することができる。作業室2内の圧力は、2Paと100kPaの間に、又は5Paと20kPaの間に便宜良く設定できる。要求に応じて、プラズマコーティング装置1は、プラズマ中に、若しくはプラズマジェット中に固体、液体及び/又は気体形態の1種又は複数の成分を注入する1台又は複数の注入装置をさらに含むことができる。
【0037】
典型的には、プラズマトーチは、電源、例えばDCプラズマトーチのためのDC電源に、且つ/又は冷却装置に、且つ/又はプラズマガス供給装置に、又ケースバイケースで溶射粉末の供給装置に接続される。工程ガス又はプラズマガスは、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウム若しくは水素、又はAr若しくはHeの窒素及び/若しくは水素との混合物を含むことができ、或いはこれらのガスの1種又は複数からなることができる。
【0038】
有利な実施形態の変形形態において、基体ホルダー8は、移動可能なバーホルダーとして設計されており、基体を、手前の小室(antechamber)から、密閉ロック9を通って作業室2中に移動させる。バーホルダーはさらに、処理及び/又はコーティングの間に、必要に応じて基体を回転させることを可能にしている。
【0039】
さらに有利な実施形態の変形形態において、プラズマコーティング装置1には、プラズマジェット5の方向及び/又は基体3からのプラズマトーチの空間配置を、例えば0.2m〜2m又は0.3m〜1.2mの範囲で制御する、
図1に示されないプラズマトーチ4向けの制御される調節装置がさらに含まれる。ケースバイケースで、ピボット運動7を行うための調節装置内に1つ又は複数のピボット軸を設けることができる。この調節装置は、基体3の種々の領域にわたってプラズマトーチ4を配置するための、さらなる直線調節軸6.1、6.2も含む。プラズマトーチの直線運動及びピボット運動は、基体処理及び基体コーティングの制御、例えば、全表面にわたって均一に基体を予熱すること、或いは、基体表面上の均一な層厚及び/又は層品質を達成することを可能にする。
【0040】
本発明に従って、基体表面への遮熱コーティング10の施工方法の一実施形態を、
図1、2及び3を参照して、下記において記述する。この方法において、プラズマトーチ4を有する作業室2が提供され、例えば、プラズマトーチを通ってプラズマガスを導き、プラズマトーチ内で、このプラズマガスが、例えば、電気的ガス放電又は電磁誘導若しくはマイクロ波によって加熱されて、プラズマジェット5を発生し、このプラズマジェット5が、作業室内に導入された基体3の表面上に向けられる。さらに、本方法において、セラミックコーティング材料が、プラズマ溶射物理蒸着又は略してPS−PVDによって基体表面に施工され、その場合、コーティング材料は粉末としてプラズマジェット5に注入され、そこで一部若しくは完全に蒸発される。
【0041】
さらに、遮熱コーティング10の施工に際して、注入される粉末の供給速度は、第1の作業ステップにおいて、注入される粉末の大部分が蒸発する、具体的にはそれにより、注入される粉末が80重量%を超えて蒸発する、又は注入される粉末がほとんど完全に蒸発するように設定され、且つ/又はそれにより、施工される層が実質的にどんなスプラットもナノスケールのクラスターも有しておらず、コーティング材料が蒸気相から基体表面上に凝縮する、すなわち、主として原子及び/又は分子として堆積し、基体表面の材料との混合相を形成する。第2の作業ステップにおいて、注入される粉末の供給速度を少なくとも3倍、特に少なくとも5倍若しくは少なくとも10倍増大させ、それにより、蒸発する注入された粉末の相対的部分が減少し、又コーティング材料が、異方性微細構造を形成し、又基体表面に対し実質的に垂直に整列する細長い柱状体の形態で堆積される。
【0042】
基体表面、及び/又はその下にある基体3は、通例金属質であり、基体は超合金から作製することができ、又基体表面は、例えば、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層によって、例えば、NiAl、NiPtAl若しくはPtAlなどの金属アルミナイド、又はMCrAlY型合金(式中、M=Fe、Co、Ni若しくはNiCoである)の層によって形成することができる。必要な場合、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13は、プラズマ溶射方法又は他の適切な方法による上述の遮熱コーティング10の前に基体表面に施工することができる。
【0043】
必要な場合、基体3の表面粗さを前以て増大させて(例えばサンドブラストによって)、結合性を向上させることができる。接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13を施工した後、表面粗さは通常低下させる(例えば、機械的研削/研磨によって)。基体に、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層をより良好に結合させるため、後者を、その後真空(<10
−4ミリバール)下で熱処理することができる(拡散焼なまし(diffusion anealing)とも呼ばれる)。この点で、歪みが減少し、元素がより均一に分布され、基体とこの層の間の化学結合が生じる。均一に分布したβ及びγ相が接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層内に典型的に形成され、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層がMCrAlY型合金からなる(単数又は複数)場合、その表面で酸化物結晶(例えば、Y
2O
3)が、成長することができる。
【0044】
必要に応じてさらに、基体3と接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13との間にバリヤ層を提供することができ(
図2及び3中に図示されない)、この場合バリヤ層は金属質として有利に形成され、例えば、NiAl若しくはNiCrを含有することができる。
【0045】
この基体表面は、酸化物層14、例えば、Al
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3を含有する又はAl
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3からなる酸化物層によって形成することもできる。この酸化物層は、接着促進層且つ/又は高温ガス腐食防止層13に施工されることが有利である。
【0046】
酸化物層14は、例えば、表面温度1000℃〜1150℃で作業室2内において熱的に生成させることができ、その場合酸素又は酸素を含有するガスを作業室中に導き、例えば、プラズマジェット5によって基体表面を加熱する。
【0047】
この点で、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13がMCrAlY型合金からなる場合、基体の使用条件下で熱的に安定なα−Al
2O
3部分を多く有する、薄い緻密なAl
2O
3+Y
2O
3(熱的に成長した酸化物又はTGOとも呼ばれる)が成長する。この点で、典型的に、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13並びにTGO層14の両方中に、真空中の熱処理の間に表面において成長したY
2O
3結晶が成長して、細長い棒状体を形成する。これらの細長い棒状体は辺縁領域にAl
2O
3−Y
2O
3混合相を含有しており、接着促進層中における固定作用のために、接着促進層及び/若しくは高温ガス腐食防止層と、TGO層との間の亀裂の発生及び/又は亀裂の成長を低減させる。粒界におけるYの偏析が、酸素の拡散を、したがってTGO成長を遅らせる。
【0048】
酸化物層14は、PS−PVDによって、又は化学的方法によって、例えば、プラズマ溶射化学蒸着(PS−CVD)によって生成させることもでき、この場合作業室内の圧力は通例1kPa未満にあり、且つ必要に応じて、少なくとも1種の反応性成分を固体及び/若しくは液体及び/又は気体の形態でプラズマジェットに注入する。
【0049】
遮熱コーティング10は、遮熱コーティングの施工に関する第1の作業ステップの間、酸化物層14及び/又は酸化物層14が少なくとも一部形成された直後に施工されることが有利である。
【0050】
セラミックコーティング材料は、酸化物セラミック成分を含有することが有利であり、セラミックコーティング材料は、例えば、安定化酸化ジルコニウム、例えば、希土類で安定化した酸化ジルコニウムからなることができ、及び/又は、一成分として安定化酸化ジルコニウムを含有することができる。安定剤として使用される物質は、希土類の酸化物の形態、例えば、イットリウム、セリウム、スカンジウム、ジスプロシウム若しくはガドリニウムの酸化物の形態で酸化ジルコニウムに好都合に添加され、その部分は、酸化イットリウムの場合、有利には5〜20重量%に、又典型的には6〜10重量%に達する。
【0051】
本方法の有利な一実施形態において、注入される粉末の供給速度は、第2の作業ステップにおいて段階的に増大される。
【0052】
さらに有利な一実施形態において、注入される粉末の供給速度は、第1の作業ステップにおいて0.5g/分〜5g/分に達し、且つ/又は第2の作業ステップにおいて少なくとも5g/分、典型的には8g/分〜30g/分に、又は40g/分に達する。
【0053】
さらに有利な一実施形態において、第1の作業ステップの継続時間は、最大10%、特に最大5%又は最大3%である。これとは独立に、第1の作業ステップの継続時間が、第2の作業ステップの継続時間の少なくとも0.5%、特に少なくとも1%又は少なくとも2%に達する場合に有利である。
【0054】
さらに有利な一実施形態において、第1の作業ステップの間に施工され、混合相を含有する遮熱コーティング10は、厚さ0.1μm〜10μm、特に厚さ0.5μm〜5μmである。
【0055】
さらに有利な一実施形態において、プラズマジェット5の方向及び/又はプラズマトーチ4の位置は、基体に対して制御される(単数又は複数)。この形で、プラズマジェット10は、基体表面を予熱する際に、又は遮熱コーティングを施工する際に、基体表面を覆って導くことができる。
【0056】
上記の実施形態及び実施形態の変形形態において記述された層の施工及び/又は生成の前に、基体3及び/又は基体表面は、層の接着性を向上させるため、普通予熱される(単数又は複数)。基体の予熱は、プラズマジェットによって行うことができ、予熱のためにコーティング粉末も反応性成分も含まないプラズマジェット5が、ピボット運動により基体を覆って導かれる。
【0057】
遮熱コーティング10は、作業室内における圧力5kPa未満で、典型的には2kPa未満若しくは1kPa未満で、PS−PVDによって有利に施工される。コーティング材料は、通常、粉末ジェットの集束をずらしてプラズマに注入され、又コーティング材料はプラズマジェット内で少なくとも一部蒸発され、それにより、例えば、少なくとも15重量%又は少なくとも20重量%が蒸気相に変化され、柱状構造を有する遮熱コーティングを生成させる。
【0058】
遮熱コーティング10は、この点において、複数の層を堆積することによって、増強することができる。遮熱コーティング10の合計層厚は、典型的に、50μmと2000μmの間の値、又好ましくは少なくとも100μmの値を有する。
【0059】
PS−PVD工程の間、プラズマの集束をずらすことにより粉末ジェットを再形成して、所望の柱状構造を有する層をもたらす蒸気及び粒子の雲とするためには、コーティング材料の粉末粒子が極めて微細な粒子を有しなければならない。コーティング材料の粒径分布は、実質的な程度まで、1μmと50μmの間、好ましくは3μmと25μmの間の範囲で存在するのが有利であり、これらの粉末粒子は、例えば、典型的には大きさ0.02μm〜3μmの一次粒子から形成される、集塊物とすることができる。
【0060】
本発明にはさらに、上述の方法を使用して、又は上述の実施形態及び実施形態の変形形態の1つを使用して施工したセラミック遮熱コーティング10を有する基体及び工作物3が含まれる。この基体は、例えば、Ni若しくはCo基合金で製作したタービン翼とすることができる。
【0061】
この基体表面及び/又はその下に存在する基体3は、典型的に金属質であり(単数又は複数)、この基体は超合金から作製することができ、又、基体表面と遮熱コーティング10の間に接着促進層10及び/又は高温ガス腐食防止層13、具体的には、MCrAlY型合金(式中、M=Fe、Co、Ni若しくはNiCoである)の層又は金属アルミナイドの層を提供することができる。
【0062】
必要な場合、基体表面と遮熱コーティング10との間に酸化物層14、例えば、Al
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3を含有する、又はAl
2O
3若しくはAl
2O
3+Y
2O
3からなる熱酸化物層及び/或いは接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13に施工される酸化物層を提供することができる。
【0063】
有利な一実施形態において、遮熱コーティング10は、基体表面に向かって混合相を有する帯域11、並びに遮熱コーティングの表面に向かって細長い柱状体を有し、前記細長い柱状体が異方性微細構造を形成し、且つ基体表面に対し実質的に垂直に整列している帯域12を含み、遮熱コーティング10は、大部分まで、細長い柱状体を有する帯域12で構成される。
【0064】
さらに有利な一実施形態において、混合相を有する帯域11は、厚さ0.1μm〜10μm、有利には0.5μm〜5μmを有し、又細長い柱状体を有する帯域12は、厚さ50μm〜2000μm、有利には100μm〜1500μmを有する。
【0065】
図2は、温度サイクル2700回後の、本発明に従う遮熱コーティング10を有する、一実施形態の遮熱コーティング構造を通る横断面を示し、又
図3は、温度サイクル1000回後の、さらなる実施形態を通る横断面を示す。
【0066】
示した実施形態において、基体3は、ニッケル基合金Iconel 738から製作し、この基体表面は、例えば、
図2に示したように、α−Al
2O
3及びAl
2O
3−Y
2O
3混合相から構成される熱酸化物層14によって形成することができる。示した実施形態において、酸化物層14は、接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13に、例えば、MCrAlY型合金(式中、M=Fe、Co、Ni又はNi及びCoの組合せである。)の層に施工される。接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層13は、典型的には、50μmと500μmの間の厚さを有する。
【0067】
遮熱コーティング10は、本発明に従う方法を使用して基体表面に施工した。遮熱コーティング10は、
図2及び3に示したように、基体に向かってAl
2O
3−Y
2O
3−ZrO
2混合相を有する帯域11面と、遮熱コーティングの表面に向かって細長い柱状体を有し、前記細長い柱状体が、異方性微細構造を形成し且つ基体表面に対して実質的に垂直に整列している帯域12とを含む。
【0068】
示した遮熱コーティングは、温度サイクル試験にかけられた。この点において、トーチを使用して7分サイクルで、この遮熱コーティング表面の温度が1250℃で安定になり、且つ接着促進層の温度が1050℃で安定になるまで、この遮熱コーティングを表面から加熱し、その後遮熱コーティング表面の温度が100℃に下がるまで基体裏側を圧縮空気により冷却した。この遮熱コーティングの上述の構造のおかげで、本発明に従う方法を使用して施工した遮熱コーティング10が、温度サイクル試験後、
図2及び3中に示した領域において完全な状態のままである点、並びに2700回及び1000回の温度サイクル後でさえ全く層割れ(delamination)の兆候を認めることができない点を、
図2及び3から容易に認めることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 プラズマコーティング装置
2 作業室
3 基体
4 プラズマトーチ
5 プラズマジェット
6.1、6.2 直線調節軸
7 ピボット運動
8 基体ホルダー
9 密閉ロック
10 遮熱コーティング
11 基体に向かって混合相を有する帯域
12 遮熱コーティングの表面に向かって、細長い柱状体を有する帯域
13 接着促進層及び/又は高温ガス腐食防止層
14 酸化物層