特許第6239832号(P6239832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239832
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】止水シート
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20171120BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20171120BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20171120BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B60J5/00 501E
   B32B27/32
   G10K11/16 130
   G10K11/162
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-34516(P2013-34516)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-162337(P2014-162337A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】石原義久
(72)【発明者】
【氏名】青木健
(72)【発明者】
【氏名】岩崎聡
(72)【発明者】
【氏名】小澤正男
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−180005(JP,A)
【文献】 特開平10−245907(JP,A)
【文献】 特開平09−207686(JP,A)
【文献】 実開昭55−045512(JP,U)
【文献】 実開昭58−156052(JP,U)
【文献】 特開2002−274287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B32B 27/32
G10K 11/16
G10K 11/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルと開口部を有するインナパネルとにより構成される自動車用ドアパネルの該開口部を覆うための止水シートであって、
該止水シートが、ポリエチレン系樹脂製下面シートと、多数の成形凸部を有するポリエチレン系樹脂製中間シートと、ポリエチレン系樹脂製上面シートとを順に積層接着してなる、該下面シートと該上面シートとの間に多数の中空部を有するポリエチレン系樹脂製中空シートであり、該中空シートの片面に該中空部と連通する多数の孔が形成されており、該成形凸部の形状が円柱形状または円錐台形形状であり、該凸部の開口部の最大直径が2〜30mmであり、該中空部と連通する孔が中空シートの片面に20〜90個/cm形成されており、該孔の孔径が0.02〜1.5mmであり、該中空シートの厚みが1〜5mmであり、坪量が100〜600g/mであることを特徴とする止水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水シートに関し、詳しくは自動車のドアパネルを構成するインナパネルの作業用開口部を覆うための止水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より自動車ドアの構造としては、図11に示すように、鋼材からなるアウタパネル101とインナパネル102とから構成される中空のドア本体部と、該本体部の車体内側に取り付けられる合成樹脂材からなる化粧内装材としてのトリム105により構成されている。上記ドア本体部の中空部にはドアガラスを上下させるための機構部品等が設けられ当該部品等の取り付けや、調整、修理のためにインナパネル102にはサービスホールと呼ばれる開口部107が設けられている。また、インナパネル102には、該パネルに形成された開口部107から室内側への雨水の浸入を防ぐためにポリエチレン製の止水シート103が、該開口部107を覆うようにして、止水シート周囲近傍全周に配置されたブチルゴム製のテープ状粘着剤にて貼り付けられている(引用文献1、2)。
【0003】
さらに、近年、車内空間の静寂性の要求も高くなっており、自動車ドアの構造においては、上記インナパネルの開口部107から浸入する風切り音等を吸音するために、トリム105のインナパネル側にフェルト製の吸音材104を取り付ける対応が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−42825
【特許文献2】特開2005−41413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来技術における自動車ドア構造の簡素化、軽量化、車内空間の静寂性要求の課題などを解決するためになされたものであり、消音性、止水性に優れる止水シートであって、自動車のサービスホールカバーの止水シートとして好適に使用できるものを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す止水シートが提供される。
[1]アウタパネルと開口部を有するインナパネルとにより構成される自動車用ドアパネルの該開口部を覆うための止水シートであって、
該止水シートが、ポリエチレン系樹脂製下面シートと、多数の成形凸部を有するポリエチレン系樹脂製中間シートと、ポリエチレン系樹脂製上面シートとを順に積層接着してなる、該下面シートと該上面シートとの間に多数の中空部を有するポリエチレン系樹脂製中空シートであり、該中空シートの片面に該中空部と連通する多数の孔が形成されており、該成形凸部の形状が円柱形状または円錐台形形状であり、該凸部の開口部の最大直径が2〜30mmであり、該中空部と連通する孔が中空シートの片面に20〜90個/cm形成されており、該孔の孔径が0.02〜1.5mmであり、該中空シートの厚みが1〜5mmであり、坪量が100〜600g/mであることを特徴とする止水シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の止水シートは従来の止水シートにはなかった優れた消音性を発現できるものである。さらに、該止水シートは強度的にも従来のポリエチレン製単層シートからなる止水シートと比べて優れており、繰り返し使用時に破れることもなく耐久性にも優れるものである。また、該止水シートは、透明、或いは半透明なシートとすることができるため止水シートをサービルホールに取り付ける際の位置決めが容易である。また、別途、フェルトなどの吸音材をドアトリムに設けるなどの作業を簡略化、或いは省略でき、自動車ドアの製造時のコスト、作業性、ドア全体の重量軽減にも繋がるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の止水シートの一例を示す平面図である。
図2図1のI−I線に沿う断面図である。
図3】本発明の止水シートの一例を示す一部破断斜視図である。
図4図4(a)は、孔が形成された上面シートの拡大写真、図4(b)は、孔の拡大写真である。
図5図5(A)は、円柱形状の成形凸部を格子状に配列した一例を示す配置図であり、図5(B)は、円柱形状の成形凸部をジグザグ状に配列した一例を示す配置図である。
図6図6(A)は、円柱形状の成形凸部をジグザグ状に配列した他の一例を示す配置図であり、図6(B)は、円柱形状の成形凸部をジグザグ状に配列した他の一例を示す配置図である。
図7】本発明の止水シートの他の一例を示す断面図である。
図8】本発明の止水シートの前駆体シートの製造装置の一例を示す説明図である。
図9】孔の形成装置の一例を示す説明図である。
図10】実施例1〜6、比較例1、2のシートにつき500〜6300Hzにおける消音率の測定結果を対比したグラフである。
図11】従来の自動車ドア構造を示す断面図である。
図12】消音率の測定方法を説明するための装置図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の止水シートの具体例について図面を用いつつ詳細に説明する。
本発明の止水シートは、ポリオレフィン系樹脂製下面シートと、ポリオレフィン系樹脂製上面シートとを有し、ポリオレフィン系樹脂製上面シートとの間に多数の中空部を有する中空シートである。かかる構造を有する止水シートの具体例は、ポリオレフィン系樹脂製下面シート(以下、単に下面シートともいう。)と、多数の成形凸部を有するポリオレフィン系樹脂製中間シート(以下、単に中間シートともいう。)と、ポリオレフィン系樹脂製上面シート(以下、単に上面シートともいう。)とが順に積層接着されてなり、該下面シートと該上面シートとの間に該成形凸部により支持されて中空部が形成されている積層シートであって、該積層シートの片面に該積層シートの中空部と連通する多数の孔が形成されてなるものである。
【0010】
本発明の止水シートの好ましい具体例を、図1図2図3に示す。図1は其の平面図、図2図1のI−I線に沿う断面図、図3は斜視図である。
図1〜3において、1は止水シートを、2は下面シートを、2aは下面シート2を構成する第一下面シートを、2bは下面シート2を構成する第二下面シートを、3は中間シートを、4は成形凸部を、4aは成形凸部の頂部を、5は上面シートを、6は成形凸部により支持され形成されている中空部を、6aは成形凸部4の内部である中空部を、6bは成形凸部4の外部である中空部を、7は止水シートの片面に形成されている多数の孔を、7aは上面シート5及び成形凸部の頂部4a(中間シート3)を貫通し中空部6aに連通する孔を、7bは上面シート5を貫通し中空部6bに連通する孔をそれぞれ示す。
【0011】
本発明の止水シートの好ましい具体例は、例えば、図1に示すように、下面シート2と、中間シート3と、上面シート5とが順に積層接着されている積層シートであり、中間シート3には多数の成形凸部4が形成されている。さらに、下面シート2と上面シート5の間には、成形凸部4により支持されることにより、中空部6a、6bが形成されている。ここで中空部6aは成形凸部4の内部と下面シート2とで囲まれた空間であり、中空部6bは成形凸部4の外部と上面シート5とで形成されている。
【0012】
この中空部6は、後述する孔7を通過した音を反射、減衰させる空間として働き、更に、止水シート1自体の面振動時の粘弾性特性における粘性項の値の増大にも寄与して消音性能を一層高めるものと考えられる。また、下面シート2、中間シート3、上面シート5のいずれも、ポリオレフィン系樹脂製のシートであり、透明あるいは半透明であることから、得られる積層シート全体も透明あるいは半透明なものとなり開口部へ止水シートを取り付ける際の位置あわせが容易なものとなる。
【0013】
止水シート1の片面には、多数の孔7が形成されており、孔7は前記中空部6a、6bと連通している。具体的には、孔7aは、上面シート5と中間シート3を貫いて中空部6aに連通し、孔7bは上面シート5を貫いて中空部6bに連通している。
孔7と孔7と連通する上記中空部6の存在により、止水シート1は優れた消音性を有するものとなる。
【0014】
孔7は止水シート1の片面に形成されており、上記中空部の音を反射、減衰させる機構の観点、止水性の観点から止水シート1の片面のみに形成されていることが好ましい。図1〜3に示す好ましい態様の止水シートの場合、下面シート2は、成形凸部4側に位置する第一下面シート2aと、外側に位置する第二下面シート2bからなり、孔7は第一下面シート2aを貫いているが、第二下面シート2bの手前で止まり下面シート2bは貫いていない。このような止水シート1は、第一下面シート2aと中間シート3と上面シート5が積層接着されたシートを貫く孔7を形成してから、第一下面シート2aに第二下面シート2bを積層接着することにより得ることができる。
【0015】
前記中空部と連通する孔7の数は、消音率と消音周波数に係る消音性能の観点から、止水シート1の片面に20〜90個/cm形成されていることが好ましく、より好ましくは30〜80個/cmであり、さらに好ましくは40〜70個/cmである。
【0016】
尚、前記中空部と連通する孔7の1cm当たりに設けられる個数は、孔の設けられた上面または下面シートを1辺10cmの正方形に区切った場合に、この100cmの中に一部でも入っている孔の個数を数えた値を100で除して求められる値である。但し、1辺10cmの正方形内に入る孔の個数が最低になるように正方形を区切った時の値を採用する。
【0017】
上記孔7は、多数の針が表面に列設された針ロールを使用して、該ロールと受ロールとの間にシートを通過させる方法などにより形成され、孔の形状は必ずしも円形である必要はなく、不定形であってもかまわない。なお、孔を形成するための針を加熱することにより、孔の形状の均一化や円形に近づけることができる。図4(a)に、孔が形成された上面シートの拡大写真(平面視)、図4(b)に孔の拡大写真(平面視)を示す。
【0018】
孔7の孔径は、消音性能と止水性の観点から、0.02〜1.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.0mm、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。なお、貫通孔の孔径は、シート表面における孔径を意味し、顕微鏡等でシート表面を平面視にて拡大撮影して得られた拡大図から無作為に30個の孔の最大径を測定し、それらの平均値として求められる値である。
【0019】
上記孔7において隣接する孔の間隔は、消音性と加工性の観点から、好ましくは0.5〜7mm、より好ましくは1〜5mm、さらに好ましくは1〜3mmである。
【0020】
本発明の止水シートの厚みは、シートの機械的物性と消音性の観点から、1〜5mmが好ましく、より好ましくは2〜4mmである。
【0021】
該止水シートの坪量は、シートの機械的物性と消音性の観点から、100〜600g/mが好ましく、より好ましくは150〜500g/mであり、さらに好ましくは200〜450g/mである。
【0022】
前記中間シートの成形凸部4の水平断面形状に制限はなく、円形、楕円形、正方形、長方形等にすることができる。この中では、均一な厚み且つ均一な強度に形成しやすいことから、円形が好ましい。また、成形凸部4全体の形状は、開口部の形状に対応した柱状、錐体状、錐台状又はドーム状にすることが、製造が容易であることから好ましい。
以上より、成形凸部4の形状は中空部を有する円柱形状または円錐台形形状が好ましい。
【0023】
前記成形凸部4の開口部の径は最大径を代表径とする。従って成形凸部4の開口部の形状が円形の場合は、該開口部の径は直径を意味することになる。前記成形凸部4の開口部の径は、生産性、消音性の観点から、2〜30mmが好ましく、より好ましくは3〜20mmであり、さらに好ましくは4〜15mmである。
【0024】
前記中空部6、成形凸部4の高さは、止水シートの厚みや、各シートの坪量や成形凸部の形状に対応して定められるが、通常0.3〜10mmであり、好ましくは1〜5mm、より好ましくは2〜4mmである。
【0025】
隣接する中空部6a同士の間隔は、消音性の観点から、1〜25mmが好ましく、より好ましくは2〜20mmである。この間隔は中空凸部間の最短距離を意味する。
【0026】
上記の坪量、厚み、孔、成形凸部を有する積層シートの加工性等の観点から、下面シート2、上面シート5、或いは中間シート3の各々の坪量は、20〜300g/mが好ましく、より好ましくは30〜250g/mである。
【0027】
前記成形凸部4の中間シート3上における配置については特に制限はないが、規則的な、ジグザグ配列(千鳥配列)や升目状に格子配列などにすることができ、成形凸部4を密に配列することができ、前記占有面積比を高い値に調整することができることから、ジグザグ配列が好ましい。
【0028】
成形凸部4の中間シート3上における配置の具体例を、図5(A)(B)、図6(A)(B)に示す。図5(A)は、直径10mmの中空部4を81個/100cmの割合で格子状に配列(最短距離1.5mm)した例であり、図5(B)は、直径10mmの中空部4を90個/100cmの割合でジグザグ状(千鳥配列)に配列(最短距離1.5mm)した例である。また、図6(A)は、直径20mmの中空部4を30個/100cmの割合でジグザグ状(千鳥配列)に配列(最短距離2mm)した例であり、図6(B)は、直径7mmの中空部4を168個/100cmの割合でジグザグ状(千鳥配列)に配列(最短距離1.7mm)した例である。
【0029】
本発明においては、図7に示すように、単層の下面シート2と中間シート3と上面シート5とで積層シートを構成し、孔7を下面シート2側に形成することもできる。この場合、孔7aは下面シート2を貫き中空部6aと連通し、孔7bは下面シート2と中間シート3を貫いて中空部6bと連通している。
なお、図7に示す止水シート1は、下面シート2と成形凸部4が形成された中間シート3とを積層接着したシートを作成し、該シートを針で貫いて孔7を形成してから、成形凸部の頂部4aに上面シート5を積層接着することにより製造することができる。
【0030】
また、下面シートと上面シートの少なくとも一方のシートに多数の孔を設け、蛇腹状(波型)の中間シートの下部に該下面シートを積層接着し、該中間シートの上部に該上面シートを積層接着することによっても(図示せず。)、下面シートと上面シートとの間に成形凸部により支持された中空部を形成し、下面シートと上面シートの少なくとも一方のシートに中空部と連通する多数の孔が開けられた本発明の止水シートを得ることもできる。
【0031】
本発明の止水シートを構成するポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂挙げられる。また、上記樹脂を2種類以上混合したものを基材樹脂として使用することもできる。なお、本発明におけるポリエチレン系樹脂とはポリエチレン樹脂が50重量%以上含有されていることを意味する。
【0032】
前記のポリオレフィン系樹脂の中では、柔軟性に優れるポリエチレン系樹脂が好ましい。なお、下面シート、上面シート、中間シートは同一の樹脂で構成することが好ましいが、積層接着さえできれば、異なる樹脂を用いることもできる。
【0033】
さらに、本発明においては、第一下面シート2、中間シート3、上面シート5の少なくともいずれかを3〜5層の多層構造とすることができ、その各々の層に異なる種類のポリエチレン系樹脂を用いることができる。また、多層構造の1〜3層を、例えば6ナイロンや6,6ナイロン等のナイロン樹脂で構成して止水シートの強度を上げることができる。
なお、止水シートの強度が向上すると、高周波数側の吸音率が高くなる傾向が確認されている。
【0034】
なお、下側シート2、上側シート5、中間シート3には必要に応じて酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤や帯電防止剤、防曇剤、スリップ剤やアンチブロッキング剤等の各種添加剤を添加する事ができる。
【0035】
次に、本発明の止水シート1の製造方法について説明する。
図1〜3に示す態様の止水シートは、例えば、図8に示した製造装置を用いて積層前駆体シートを製造し、得られた前駆体シートに図9に示す装置を用いて連通孔を形成し、第一下面シートに無孔のシートを積層することにより得ることができる。
図8に示すように、先ず、ダイ11から押し出された中間シート形成用シート3Aを、温調ロール12,13を経て真空成形ロール14に導き、該ロール14にて、円柱状等の多数の成形凸部4を真空成形し、中間シート3を形成する。一方、ダイ15から押し出された第一下面シート2aを真空成形ロール14上の中間シート3に会合させ、真空成形ロール14,バックアップロール16間を通して第一下面シート2aと中間シート3とを融着させる。そして、図8に示したように、その重ね合わせて互いに融着させたシート2a,3をロール18,19間に導く。一方、ダイ17から押し出された上面シート5をロール18,19間に導き、そこで互いに融着させたシート2a,3に上面シート5を会合させ、ロール18,19間で狭圧して中間シート3の成形凸部の頂部4aに上面シート5を融着させることによって、本発明の止水シートの前駆体シート2a,3,5を得ることができる。なお、各シートは、接着剤により接着させてもよい。
【0036】
前記前駆体シート2a,3,5に、孔7を形成する方法としては、例えば、図9に示すような貫通孔形成装置21を用いて、加温された貫通孔形成用針24が設けられている針ロール22と受ロール23とを用い、該針ロール22と受ロール23とを回転させながら、針ロール22と受ロール23との間隙を前駆体シート2a,3,5を通過させることにより形成することができる。
【0037】
図9に示す装置においては、針ロール22の周面の略全面にわたって貫通孔形成用の針24が設けられている。又、受ロール23の周面は、ラバー、ブラシ等を用いて針24を傷つけないように構成されている。
針ロール22の太さは、孔径、シートの材質、見かけ密度、厚みに対応して適宜変更されるが、通常は0.02〜1.3mmであることが好ましい。
【0038】
針ロール22と受ロール23との間隙は、針24が前駆体シート2a,3,5を貫通するように針14と同じ長さか若干短く設定することが好ましい。
【0039】
針ロール12の周面の針24は、シートの基材樹脂の融点(mp)(℃)を基準に、(mp−40)℃〜(mp+10)℃に加温されていることが好ましい。針24が(mp−40)℃以上に加温されていると、針24が前駆体シート2a,3,5に刺し込まれて貫通孔24が形成された後、貫通孔周辺の前駆体シート2a,3,5が軟化されているので、針24を前駆体シート2a,3,5から容易に引き抜くことができる。尚、融点はJIS K7121に基づき熱流束DSCにより加熱速度10℃/分にて得られる融解ピーク(二つ以上の融解ピークが現れる場合は、より広い面積を有する融解ピーク)の頂点温度とする。
【0040】
上記孔加工時の針ロール、受ロールの回転の周速度は、シートの材質、厚みに対応して適宜変更されるが、通常は5〜100m/minである。針により形成される貫通孔の加工精度を向上させるためには、5〜45m/minが好ましい。
また、針ロール、受ロールを複数回、通すことで貫通孔の数を調整することも可能である。
【0041】
孔7が形成された前記の前駆体シート2a,3,5の第一下面シート2aに、第二下面シート2bを積層接着することにより、図1〜3に示す態様の止水シートを得ることができる。第二下面シート2bを形成し前駆体シートに積層接着する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、熱ラミネートやTダイを用いる押出ラミネートが挙げられる。
【0042】
図7に示す態様の止水シートは、図8に示す装置を用いて、下面シート2と中間シート3とを融着させたシート2,3に、図9に示す装置を用いて、孔7をシート2,3を貫通するように形成し、孔7が形成されたシート2,3の成形凸部の頂部4aに上面シート5を融着させることによって得ることができる。
【0043】
本発明の止水シートは、防水性、消音性に優れることから、アウタパネルと開口部を有するインナパネルとにより構成される自動車用ドアパネルを構成するインナパネル開口部を覆うための止水シートとして好適に用いることができるものである。なお、以上のとおり説明した止水シートは、該開口部を覆うための止水シート以外にも、種々の用途における止水シート、消音シートとして用いることができるものである。
【実施例1】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1〜6
表1、2に示す原料を用いて、下面シート、中間シート、上面シートからなる図2に示す形態の止水シートを、図8に示した製造装置を用いて積層前駆体シートを製造し、得られた前駆体シートに図9に示す装置を用いて連通孔を形成し、更に第一下面シートに無孔のシートを積層することにより製造した。
【0048】
貫通孔形成装置における仕様としては、針ロールは、径150mm,幅1400mm、受ロールは、径130mm,幅1400mmとし、貫通孔形成用針は、長さ6mm,太さ0.62mmとした。なお、針ロールの温度を90℃とし、前駆体シートを孔形成装置に1回(実施例1、3〜6)又は2回(実施例2)通すことによって孔7を形成して止水シートを作製した。得られた止水シートについて下記のとおり吸音率の測定を行った。
【0049】
比較例1
厚さ90μmのポリエチレンフィルムについて実施例1と同様に吸音率の測定を行った。
【0050】
比較例2
厚さ5mmのフェルトについて実施例1と同様に吸音率の測定を行った。
【0051】
実施例1〜6にて得られた止水シートの諸物性を表3に記載した。
【0052】
【表3】
【0053】
実施例、比較例のシートにつき500〜6300Hzにおける消音率を測定した結果を表4に示す。また、実施例1〜6、比較例1、2を対比したグラフを図10に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
表4における吸音率の測定は、ISO 10534−1:1996(JIS A 1405に対応)に準拠し、Bruel&Kjar社製、垂直入射吸音率測定装置Type4206(図12)を使用して、1/3オクターブ垂直入射管吸音率を測定した結果である。なお、上記吸音率測定は、実施例1〜6においては、止水シートの孔が設けられている面を音源側にして測定を行った。
【0056】
実施例1〜6で得られた止水シートは、比較例1のポリエチレンフィルムと比較して、全周波数において高い吸音率を示している。実施例1〜6で得られた止水シートは、比較例2のフェルトと比較して、3000Hz以上では高い吸音率を示している。なお、実施例1〜6の吸音率測定結果より、止水シートの坪量や成形凸部の大きさ等を変えることにより低周波数側の吸音率を上げることができることも分かる。
【符号の説明】
【0057】
1 止水シート
2 下面シート
2a 第一下面シート
2b 第二下面シート
3 中間シート
4 成形凸部
4a 成形凸部の頂部
5 上面シート
6 中空部
6a 成形凸部の内部である中空部
6b 成形凸部の外部である中空部
7 孔
7a 中空部6aに連通する孔
7b 中空部6bに連通する孔
3A 中間シート形成用シート
11 ダイ
12,13 温調ロール
14 真空成形ロール
15 ダイ
16 バックアップロール
17 ダイ
18,19 ロール
21 貫通孔形成装置
22 針ロール
23 受ロール
24 貫通孔形成用針
101 アウタパネル
102 インナパネル
103 止水シート
104 吸音材
105 ドアトリム
106 ガラス
107 開口部(サービスホール)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12