特許第6239836号(P6239836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239836放射性セシウム吸着材およびそれを用いた放射性汚染水の浄化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239836
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】放射性セシウム吸着材およびそれを用いた放射性汚染水の浄化方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/12 20060101AFI20171120BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G21F9/12 501B
   G21F9/12 501J
   B01J20/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-50550(P2013-50550)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-176777(P2014-176777A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年1月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505427573
【氏名又は名称】井上 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(72)【発明者】
【氏名】手島 淳
(72)【発明者】
【氏名】成富 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩義
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/027652(WO,A1)
【文献】 特開2012−250211(JP,A)
【文献】 特開2013−047650(JP,A)
【文献】 特開昭51−037289(JP,A)
【文献】 特開昭63−200837(JP,A)
【文献】 特開2013−002865(JP,A)
【文献】 特開2013−003131(JP,A)
【文献】 特開2013−117508(JP,A)
【文献】 特開昭58−051945(JP,A)
【文献】 特公昭46−039323(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
G21F 9/00 − 9/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維性基材にプルシアンブルーが付与されてなる、放射性セシウム吸着材であって、該基材がカルボキシメチルセルロースおよびパルプ繊維から構成されており、かつ該パルプ繊維の含有量が該基材の質量を基準として10質量%〜50質量%である、放射性セシウム吸着材。
【請求項2】
前記プルシアンブルーが、全体質量に対し、0.1質量%から50質量%の割合で含有されている、請求項1に記載の放射性セシウム吸着材。
【請求項3】
前記放射性セシウムが、セシウム137およびセシウム134からなる群から選択される少なくとも1種の放射性物質である、請求項1または2に記載の放射性セシウム吸着材。
【請求項4】
放射性セシウム吸着材の製造方法であって、
パルプ繊維性基材にプルシアンブルーを付与する工程、を包含し、
該基材がカルボキシメチルセルロースおよびパルプ繊維から構成されており、かつ該パルプ繊維の含有量が該基材の質量を基準として10質量%〜50質量%である、方法。
【請求項5】
前記プルシアンブルーの前記基材への付与が、該プルシアンブルーを含む水溶液への該基材の浸漬によって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プルシアンブルーが、全体質量に対し、0.1質量%から50質量%の割合で含有されている、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記放射性セシウムが、セシウム137およびセシウム134からなる群から選択される少なくとも1種の放射性物質である、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
放射性セシウムで汚染された汚染水を浄化するための方法であって、請求項1から3のいずれかに記載の放射性セシウム吸着材を該汚染水と接触させる工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウム吸着材およびそれを用いた放射性汚染水の浄化方法に関し、より詳細には、放射性セシウムなどの放射性物質に汚染された水を効率よく浄化することができる、放射性セシウム吸着材およびそれを用いた放射性汚染水の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年にて発生した東日本大震災は、東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により、我が国に甚大な被害を引き起こした。
【0003】
その中でも、福島県で発生した大量の放射性物質の拡散は、地域住民の長期避難を余儀なくされ、今なお深刻である。この放射性物質の拡散により東北地方の多くの場所で放射性物質による土壌汚染を引き起こし、放射性物質の除去が喫緊の大きな問題となっている。
【0004】
特に、放射性物質で汚染された土壌は、雨水によって地域河川や地下水源をも汚染する。このような放射性物質で汚染された水(汚染水)の存在は、土壌汚染の問題とともに東北地域の復興を妨げる大きな要因とも言える。
【0005】
当該汚染水の浄化において、従来より、青色顔料の一種であるプルシアンブルーが放射性セシウムの除去に有効であるとして、種々の放射性セシウム吸着材の研究開発が行われてきた。例えば、プルシアンブルーをポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミドなどの不織布に担持させた製品等が市販されている。
【0006】
しかし、このような従来の放射性セシウム吸着材では、土壌を一緒に含む汚染水の浄化において目詰まりを起こし易いなどの点で浄化効率の向上が所望されている。また、このような吸着材の製造において生産性の向上も所望されている。
【0007】
汎用性に富み、製造効率が高められた効果的な放射性セシウム吸着材の登場が強く期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、放射性セシウムで汚染された汚染水を効率よく浄化することができ、かつ生産性が高められた、放射性セシウム吸着材およびそれを用いた放射性汚染水の浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パルプ繊維性基材にプルシアンブルーが付与されてなる、放射性セシウム吸着材である。
【0010】
1つの実施態様では、上記基材は、古紙、陽イオン交換紙またはこれらの混合紙である。
【0011】
1つの実施態様では、上記プルシアンブルーは、全体質量に対し、1質量%から50質量%の割合で含有されている。
【0012】
1つの実施態様では、上記放射性セシウムは、セシウム137およびセシウム134からなる群から選択される少なくとも1種の放射性物質である。
【0013】
本発明はまた、放射性セシウム吸着材の製造方法であって、パルプ繊維性基材にプルシアンブルーを付与する工程、を包含する、方法である。
【0014】
1つの実施態様では、上記プルシアンブルーの上記基材への付与は、該プルシアンブルーを含む水溶液への該基材の浸漬によって行われる。
【0015】
1つの実施態様では、上記基材は、古紙、陽イオン交換紙またはこれらの混合紙である。
【0016】
1つの実施態様では、上記プルシアンブルーは、全体質量に対し、0.1質量%から50質量%の割合で含有されている。
【0017】
1つの実施態様では、上記放射性セシウムは、セシウム137およびセシウム134からなる群から選択される少なくとも1種の放射性物質である。
【0018】
本発明はまた、放射性セシウムで汚染された汚染水を浄化するための方法であって、上記放射性セシウム吸着材を該汚染水と接触させる工程を包含する、方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放射性セシウムを含有する汚染水を効率よく浄化することができる。本発明の吸着材は、例えば、放射性セシウムで汚染された土壌中に含まれる汚染水の浄化に際しても目詰まりが起こりにくく、効率よく汚染水の浄化をすることができる。本発明はまた、古紙などの廃棄資源を活用することができ、それにより製造効率を一層高めることができ、かつより大量の生産にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1および2で得られた放射性セシウム吸着材、従来のプルシアンブルー担持不織布、またはコントロールで評価した、放射性セシウム汚染水に対する性能を比較するためのグラフであって、放射性セシウム137の10時間累積放射能を計測した結果を示すグラフである。
図2】実施例1および2で得られた放射性セシウム吸着材、従来のプルシアンブルー担持不織布、またはコントロールで評価した、放射性セシウム汚染水に対する性能を比較するためのグラフであって、放射性セシウム134の10時間累積放射能を計測した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
【0022】
本発明の放射性セシウム吸着材は、パルプ繊維性基材にプルシアンブルーが付与されてなる。
【0023】
本発明の吸着材を構成するパルプ繊維性基材は、例えば、少なくとも80質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上の割合でパルプ繊維を含有する材料であり、例えばシート状の形態を有する。パルプ繊維性基材がシート状の形態を有する場合、本発明の放射性セシウム基材の厚みは特に限定されないが、例えば、0.01mm〜10mm、好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0024】
パルプ繊維性基材は、好ましくは古紙、陽イオン交換紙またはこれらの組み合わせでなる混合紙である。陽イオン交換紙は、例えば、パルプ繊維にカルボキシメチルセルロースなどのセルロース繊維が適宜混合して抄紙することにより得ることができる。陽イオン交換紙におけるパルプ繊維の含有量は特に限定されないが、陽イオン交換紙の質量を基準として、例えば、0.1%〜50%である。抄紙のための方法および手段は特に限定されず、当該分野において周知の方法かつ手段が使用され得る。
【0025】
本発明の吸着材を構成するプルシアンブルー(Prussian Blue;PB)は、フェロシアン化第2鉄に属し、例えば、以下の式(I):
【0026】
【化1】
【0027】
で表されるヘキサシアノ鉄(II)酸化カリウム鉄(II)であり、一般的には青色顔料として知られている。プルシアンブルーは、消化管に吸収されないコロイド状物質であり、毒性が低く、経口的にも使用することができ、セシウム、タリウムなどのある種の一価の陽イオンに対して結合することが知られている。
【0028】
本発明において、プルシアンブルーは、所定の割合で上記パルプ繊維性基材に付与されている。プルシアンブルーの含有割合は、特に限定されないが、本発明の吸着材の全体質量に対し、好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは1質量%〜30質量%である。プルシアンブルーの含有量が0.1質量%未満であると、汚染水に対し放射性セシウムを含む汚染水を効率的に浄化することが困難となる場合がある。プルシアンブルーの含有量が50質量%を超えると、プルシアンブルーが吸着材より再離脱する割合が多くなる場合がある。
【0029】
本発明において、上記プルシアンブルーのパルプ繊維性基材への付与は種々の方法が用いられ、例えば、(1)プルシアンブルーを含有する水溶液(以下、プルシアンブルー水溶液ということもある)への当該パルプ繊維性基材の浸漬、(2)パルプ繊維性基材へのプルシアンブルー水溶液の噴霧、(3)パルプ繊維性基材へのプルシアンブルー水溶液の塗布、(4)パルプ繊維性基材への公知の接着成分(接着剤等)を用いたプルシアンブルーの付着、または(5)これらの(1)〜(4)の2以上の組み合わせが用いられ得る。
【0030】
ここで、上記プルシアンブルーのパルプ繊維性基材への付与の一例として、(1)プルシアンブルー水溶液への当該パルプ繊維性基材の浸漬について説明する。
【0031】
プルシアンブルー水溶液は、水(例えば、水道水、イオン交換水、超純水、および電解水を包含する)に、所定量のプルシアンブルーを溶解または分散させることにより調製される。調製にあたり選択されるプルシアンブルー水溶液の濃度は、例えば、1g/L〜300g/L、好ましくは10g/L〜100g/Lである。
【0032】
プルシアンブルー水溶液は、上記プルシアンブルーによる放射性セシウムの吸着性能を阻害しない限りの成分かつ濃度で、プルシアンブルー以外に他の成分(例えば、放射性物質(例えば、放射性セシウム、放射性ヨウ素)に対して吸着性能を有する材料、pH調整剤などの他の添加剤)が含まれていてもよい。他の成分の含有量は、当業者によって適宜選択され得る。
【0033】
プルシアンブルー水溶液への上記パルプ繊維性基材の浸漬において、パルプ繊維性基材とプルシアンブルー水溶液の浴比は特に限定されず、当業者によって適切な浴比が設定され得る。浸漬の際の浴温度も特に限定されない。例えば、室温で浸漬が行われてもよい。浸漬時間は、パルプ繊維性基材の厚み、プルシアンブルー水溶液の濃度、および浴温度によって変動するため、必ずしも限定されない。浸漬時間は、例えば、当業者によって適切な時間が設定され得る。なお、このようなプルシアンブルー水溶液への上記パルプ繊維性基材の浸漬は、例えば、古紙を叩解した水溶液に、プルシアンブルー水溶液を添加することにより簡単に行われるため、古紙の再生ラインをそのまま活用でき生産性を飛躍的に向上することができる。
【0034】
所定の浸漬の後、プルシアンブルーが付与されたパルプ繊維性基材は、浸漬浴から取り出され乾燥が施される。
【0035】
このようにして、本発明の、パルプ繊維性基材にプルシアンブルーが付与された、放射性セシウム吸着材を得ることができる。
【0036】
本発明の放射性セシウム吸着材は、必要に応じて所定の大きさにカットされてもよい。
【0037】
次に、本発明の放射性セシウム吸着材を用いて、放射性セシウムを含む汚染水を浄化するための方法について説明する。
【0038】
汚染水の浄化にあたっては、上記本発明の放射性セシウム吸着材が該汚染水と接触させられる。
【0039】
上記接触は、例えば、(1)汚染水を含む容器内に本発明の放射性セシウム吸着材を所定時間仕込む、(2)本発明の放射性セシウム吸着材をそのまま、または必要に応じて細かく切断し、カラム充填剤としてカラム内に充填して、その中に汚染水を通す、(3)本発明の放射性セシウム吸着材を一種の濾紙として用いて汚染水を濾過する、(4)上記(1)〜(3)を複数回行うおよび/または組み合わせる;などの方法を通じて行うことができる。このような接触に伴う操作の条件は、当業者が必要に応じて任意の条件を設定することができる。
【0040】
このようにして放射性セシウムを含む汚染水から、放射性セシウムを効率良くかつ簡易に除去することができる。本発明の放射性セシウム吸着材では、吸着可能な放射性セシウムの種類は特に限定されない。すなわち、放射性セシウム137、放射性セシウム134およびこれらの組み合わせのいずれについても良好な吸着性能を発揮し得る。
【0041】
汚染水を浄化した後、本発明の放射性セシウム吸着材は、必要に応じて乾燥する等の追加作業が行われてもよく、例えば、各地域、地方公共団体または国が定める廃棄ルールに則って廃棄が行われる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
(実施例1:PB交換紙の製造)
カルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカルズ社製「サンローズ(登録商標)P」)に、パルプ繊維(和光純薬工業株式会社製)を10質量%の割合で混合した。次いで、この混合物を、繊維表面が充分に結合するように叩解した。その後、この混合物を水中に分散させて、希薄なパルプ繊維分散液を調製した。
【0044】
このパルプ繊維分散液から、ナイロンネット(100メッシュ)を用いて、抄紙した。次いで、得られた紙(基材)を不織布に挟み、余分な水分を除くために、ローラーを用いて充分に圧した。さらに、交換紙中に残存する自由水を取り除くために、60℃のホットプレートで加熱することにより、交換紙を得た。なお、この交換紙は、カルボキシメチルセルロースを含有することにより、陽イオン交換基として、カルボキシメチル基を有するものであった。
【0045】
次いで、この交換紙を、予め0.476質量%に調製したプルシアンブルー水溶液を含む浴中に浴比1:100にて室温で30分間浸漬した。浸漬後、交換紙を浴から取り出し、充分に液を切った後、風乾させることにより、放射性セシウム吸着材であるプルシアンブルー交換紙(PB交換紙)を得た。
【0046】
(実施例2:PB紙の製造)
実施例1のカルボキシメチルセルロースおよびパルプ繊維を含む交換紙の代わりに、新聞古紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、放射性セシウム吸着材であるプルシアンブルー紙(PB紙)を得た。
【0047】
(実施例3:放射性セシウム137の吸着性能の評価)
2011年5月に福島県南相馬市で採取した土壌1kgを篩に掛けた後、充分に混和し、20gずつ量り取り、12個のサンプルを準備した。当該サンプルを1群あたり3つのサンプルで構成される4群に分類した。
【0048】
次いで、各サンプルのそれぞれに80gの脱イオン水を添加し、充分に混和した。さらに12時間かけて転倒混和し、その後、元に戻して30分間放置した。各サンプルから上澄み部分を取り出し、これを3000rpmで20分間遠心分離した。その後、濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.1)を用いて余分な土壌・屑を除去した。
【0049】
ここで、得られた濾液について、4群のうち3群については、各群に被験材料として、上記実施例1で得られたPB交換紙、実施例2で得られたPB紙、または市販のプルシアンブルー不織布(PB不織布)(大日精化工業株式会社製)を1g添加した。残りの1群については対照水群として、何も被験材料を添加しなかった。その後、各サンプルの濾液について被験材料を30分間浸漬した。
【0050】
そして、当該サンプルから被験材料を充分絞りながら取り出し、新たな濾紙(アドバンテック東洋株式会社製No.1)を用いて濾過することにより、遊離したプルシアンブルーを除去し、濾過水のみを採取した。得られた濾過水を50gずつ量り取った後に、ゲルマニウム半導体検出器(SEIKO EG&G社製)を用いて、各サンプルにおける放射性セシウム137の10時間の累積放射能を測定した。さらに、得られたサンプルの累積放射能について、各群(対照水群(比較例2)、PB紙群(実施例1)、PB交換紙群(実施例1)、PB不織布群(比較例1))の測定結果の平均値を算出した。
【0051】
得られた結果を図1に示す。
【0052】
図1に示すように、実施例1および2で得られたPB交換紙およびPB紙は放射性セシウム137を効率良く吸着していたことがわかる。さらに、このような吸着性能は市販品のPB不織布(比較例1)のものと比較して同等またはそれ以上の結果を有していることがわかる。特に、PB紙(実施例2)は、1gで約33%もの放射性セシウム137を除去していた。一方で、実施例1で得られたPB交換紙は、市販品のPB不織布を上回る放射性セシウム137の吸着性能を有しており、より効率的な放射性セシウム吸着材であることがわかる。
【0053】
さらに上記で得られた濾過水(各50g)について、ゲルマニウム半導体検出器(SEIKO EG&G社製)を用いて、各サンプルにおける放射性セシウム134の10時間の累積放射能も測定した。また、得られたサンプルの累積放射能について、各群(対照水群(比較例2)、PB紙群(実施例1)、PB交換紙群(実施例1)、PB不織布群(比較例1))の測定結果の平均値を算出した。
【0054】
得られた結果を図2に示す。
【0055】
図2に示すように、放射性セシウム134の吸着能についても、放射性セシウム137と同様に、実施例1および2で得られたPB交換紙およびPB紙は優れた吸着性能を有していたことがわかる。さらに、このような吸着性能は市販品のPB不織布(比較例1)のものと比較して同等またはそれ以上の結果であった。特に、PB紙(実施例2)は、1gで約46%もの放射性セシウム137を除去していた。一方で、実施例1で得られたPB交換紙は、市販品のPB不織布を上回る放射性セシウム134の吸着性能を有しており、より効率的な放射性セシウム吸着材であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の放射性セシウム吸着材は、放射性セシウムを含有する汚染水を効率よく浄化することができる。このため、例えば、放射性セシウムによる放射性物質で汚染された災害現場や災害地域の浄化作業において有用である。
図1
図2