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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239854
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ホスト通信アーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/42 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   H04L12/42 Z
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-96458(P2013-96458)
(22)【出願日】2013年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-236372(P2013-236372A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】61/643,794
(32)【優先日】2012年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル ブライアン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】イアン カシミアー ディメン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル ダグラス クロウダー
【審査官】 速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0013201(US,A1)
【文献】 特開2012−075103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的雑音環境におけるデータ通信システムであって、
複数の通信装置を備え、前記通信装置は、ホストと、デイジーチェーンループを用いて前記ホストと通信するN個(N>1)のクライアントとを含み、前記デイジーチェーンループが前記ホストの第1の位置を始端とすると共に前記ホストの第2の位置を終端とし、前記デイジーチェーンループはN+1個の導体セグメントを備え、前記デイジーチェーンループの各特定の1つの導体セグメントは上流通信装置を下流通信装置に連絡し、
前記ホストは、第1下流クライアントへのデータパケットのシリアル送信を開始するシリアル通信マスタを含み、前記データパケットは、複数のバイトと、前記データパケットのアドレス部を含む前記複数のバイトの第1サブセットと、ペイロード部を含む前記複数のバイトの第2サブセットと、を含んでおり、前記データパケットは、信号非アクティビティの所定期間によって定められるパケット開始識別子を有し、
前記各クライアントは、特定の上流通信装置から前記データパケットを受信データパケットとして受信し、且つ、前記データパケットを再送信データパケットとして特定の下流通信装置に再送信するシリアル通信スレーブを含み、N個のうちのXクライアントがX−1クライアントから受信してX+1クライアントに再送信し、ここで、前記X=1クライアントが前記受信データパケットを前記ホストから受信し、前記Nクライアントが前記再送信データパケットを前記ホストに再送信し、前記データパケットは、前記ホストからの前記データパケットの送信開始から前記Nクライアントから前記ホストへの前記データパケットの再送信完了まで、前記デイジーチェーンループを通した通過時間を有しており、所定の無音期間が前記通過時間よりも長く予め決められていることを特徴とするデータ通信システム。
【請求項2】
前記各シリアル通信スレーブは、信号非アクティビティの初期期間及び信号アクティビティの後続期間を有する送信を受信するための受信機と、前記信号非アクティビティの初期期間を前記所定の無音期間に対して比較するコンパレータとを含み、前記シリアル通信スレーブは、前記比較に応答して前記信号アクティビティの後続期間が前記データパケットを含むことを前記信号非アクティビティの初期期間が指し示すとき、復号アドレス部に前記送信を復号するデコーダを含むことを特徴とする請求項1に記載のデータ通信システム。
【請求項3】
前記各クライアントがアドレスを含んでおり、前記シリアル通信スレーブは、前記復号アドレス部が前記アドレスに所定の適合を有するとき、前記ペイロードを復号することを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項4】
前記各シリアル通信スレーブは、前記比較に関係なく、前記各送信を前記特定の下流通信装置に再送信することを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項5】
前記各シリアル通信スレーブは、前記比較に関係なく、前記各送信を前記特定の下流通信装置に再送信することを特徴とする請求項3に記載のデータ通信システム。
【請求項6】
前記ホストによって送信された前記データパケットは、ホスト送信ループバック部を含み、前記ホストによって受信された前記再送信データパケットは、ホスト受信ループバック部を含んでおり、
ループバックエラー検出機構をさらに備え、前記ループバックエラー検出機構は、前記ホスト送信ループバック部を前記ホスト受信ループバック部に対して比較することを含み、前記ループバックエラー検出機構は、前記ホスト送信ループバック部が前記ホスト受信ループバック部に適合しないときにループバックエラーをアサートすることを特徴とする請求項4に記載のデータ通信システム。
【請求項7】
前記ホスト送信ループバック部が前記データパケットであることを特徴とする請求項6に記載のデータ通信システム。
【請求項8】
前記ホストは、前記ホスト送信ループバック部が前記ホスト受信部に適合するときにACK/NAKを用いることなく前記ホスト送信ループバック部を前記各クライアントが受信したことを決定することを特徴とする請求項6に記載のデータ通信システム。
【請求項9】
前記各クライアントは、前記クライアントのアドレスメモリに保存されたクライアントアドレスを含み、前記各クライアントアドレスは、前記クライアントのためにアドレス指定されていない状態を表す所定のアドレス値に初期化され、前記データパケットは、前記アドレス部が有効アドレスを表すときに第1値を有し、且つ、前記アドレス部が無効アドレスを表すときに第2値を有する違法アドレスフラグを含み、前記復号アドレス部が前記クライアントアドレスに所定の適合を有して前記違法フラグが前記第1値を有するとき、前記シリアル通信スレーブは、前記受信データパケットの前記ペイロード部を復号ペイロード部として復号し、前記各シリアル通信スレーブは、前記復号アドレス部が前記クライアントアドレスに合致し、前記復号アドレス部が前記所定のアドレス値に合致し、且つ、前記違法アドレスフラグが前記第1値に設定される場合を除いて前記受信データパケットを前記再送信データパケットとして再送信し、この場合、前記シリアル通信スレーブが前記違法アドレスフラグを前記第2値に設定して修正受信データパケットを前記再送信データパケットとして送信することを特徴とする請求項2に記載のデータ通信システム。
【請求項10】
前記送信データパケットは、前記所定のアドレス値に適合するアドレス部を含み、前記第1値に設定された前記違法アドレスフラグを含み、且つ、前記クライアントアドレスを前記所定のアドレス値以外の特定の値に設定するコマンドを有する前記受信データ部の前記復号ペイロード部を含み、前記複数のクライアントは、前記所定のアドレス値を保存する前記アドレスメモリをそれぞれ有し、前記所定のアドレス値を有する前記ホストからの第1下流クライアントだけが前記アドレスメモリを前記特定の値に変更することを特徴とする請求項9に記載のデータ通信システム。
【請求項11】
電気的雑音環境においてホストとN個のクライアント(N>=1)とを含む複数の通信装置用のデータ通信方法であって、
a)別個のクロック信号線なしに第1下流クライアントへのデータパケットのシリアル送信を初期化することであって、前記データパケットは、複数のバイトと、前記データパケットのアドレス部を含む前記複数のバイトの第1サブセットと、ペイロード部を含む前記複数のバイトの第2サブセットと、を含んでおり、前記データパケットは、信号非アクティビティの所定期間によって定められるパケット開始識別子を有することと、
b)特定の上流通信装置から前記データパケットを受信データパケットとして受信することであって、N個のうちのXクライアントがX−1クライアントから受信し、前記X=1クライアントが前記ホストから前記データパケットを受信することと、
c)特定の下流通信装置に前記データパケットを再送信データパケットとして再送信することであって、N個のうちのXクライアントがX+1クライアントに再送信し、Nクライアントが前記ホストに前記再送信データパケットを再送信することと、を含み、
前記データパケットは、前記ホストからの前記データパケットの送信開始から前記Nクライアントから前記データパケットの前記ホストへの再送信完了までの前記デイジーチェーンループを通した通過時間を有しており、所定の無音期間が前記通過時間よりも長く予め決められていることを特徴とするデータ通信方法。
【請求項12】
前記データパケット受信ステップa)は、クライアントごとに、
a1)信号非アクティビティの初期期間及び信号アクティビティの後続期間を有する送信を受信することと、
a2)前記信号非アクティビティの初期期間を前記所定の無音期間に対して比較することと、
a3)前記信号非アクティビティの初期期間が前記所定の無音期間に対して所定の関係を有するとき、前記信号アクティビティの後続期間を前記受信データパケットとして復号することと、を含むことを特徴とする請求項11に記載のデータ通信方法。
【請求項13】
前記各クライアントはアドレスを含んでおり、
a4)前記復号アドレス部が前記アドレスへの所定の適合を有するとき、前記ペイロード部を復号することをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のデータ通信方法。
【請求項14】
前記再送信ステップc)は、前記比較ステップa2)の結果に関係なく、前記各送信を前記特定の下流通信装置に再送信することを特徴とする請求項12に記載のデータ通信方法。
【請求項15】
前記再送信ステップc)は、前記比較ステップa2)の結果に関係なく、前記各送信を前記特定の下流通信装置に再送信することを特徴とする請求項13に記載のデータ通信方法。
【請求項16】
前記ホストによって送信された前記データパケットの前記ペイロード部がホスト送信ループバック部を含み、前記ホストによって受信された前記再送信データパケットがホスト受信ループバック部を含んでおり、
d)前記ホスト送信ループバック部を前記ホスト受信ループバック部に対して比較することと、
e)前記ホスト送信ループバック部が前記ホスト受信ループバック部に適合しないときにループバックエラーをアサートすることと、をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のデータ通信方法。
【請求項17】
f)前記ホスト送信ループバック部が前記ホスト受信ループバック部に適合したとき、ACK/NAKを用いることなく、前記各クライアントが前記ホスト送信ループバック部を受信したことを前記ホストで決定することをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のデータ通信方法。
【請求項18】
前記各クライアントは、前記クライアントのアドレスメモリに保存されたクライアントアドレスを含み、前記データパケットは、前記アドレス部が有効アドレスを表すときに第1値を有し、且つ、前記アドレス部が無効アドレスを表すときに第2値を有する違法アドレスフラグを含んでおり、
d)初期化事象において、前記クライアントのためにアドレス指定されていない状態を表す所定のアドレス値に前記各クライアントアドレスを初期化することと、
e)前記復号アドレス部が前記クライアントアドレスに所定の適合を有するとき、前記受信データパケットの前記ペイロード部を復号ペイロード部として復号することと、
f)前記復号アドレス部が前記クライアントアドレスに合致し、前記復号アドレス部が前記所定のアドレス値に合致し、且つ、前記違法アドレスフラグが前記第1値に設定される場合を除いて前記受信データパケットを前記再送信データパケットとして再送信することと、
g)前記復号アドレス部が前記クライアントアドレスに合致するときにはいつでも、前記違法アドレスフラグを前記第2値に設定し、前記復号アドレス部が前記所定のアドレス値に適合し、そして、前記違法アドレスフラグが前記第1値に設定されることと、
h)前記違法アドレスフラグ値が前記第2値に設定されたときにはいつでも、修正受信データパケットを前記再送信データパケットとして送信することと、をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のデータ通信方法。
【請求項19】
前記送信データパケットは、前記所定のアドレス値に適合するアドレス部、前記第1値に設定された前記違法アドレスフラグ、及び、前記クライアントアドレスを前記所定のアドレス値以外の特定の値に設定するコマンドを有する前記受信データ部の前記復号ペイロード部を含み、複数のクライアントが、前記所定のアドレス値を保存する前記アドレスメモリをそれぞれ有しており、
i)前記所定のアドレス値を保存する第1下流クライアントだけのために、前記アドレスメモリを前記特定の値に変更することをさらに含むことを特徴とする請求項18に記載のデータ通信方法。
【請求項20】
電気的雑音環境におけるデータ通信システムであって、
複数の通信装置を備え、前記通信装置は、ホストと、デイジーチェーンループを用いて前記ホストと通信するクライアントとを含み、前記デイジーチェーンループが前記ホストの第1の位置を始端とすると共に前記ホストの第2の位置を終端とし、前記デイジーチェーンループは一対の導体セグメントを備え、第1導体セグメントが前記ホストを前記クライアントに連絡し、第2導体セグメントが前記クライアントを前記ホストに連絡し、
前記ホストは、前記クライアントへのデータパケットのシリアル送信を開始するシリアル通信マスタを含み、前記データパケットは、複数のバイトと、前記データパケットのアドレス部を含む前記複数のバイトの第1サブセットと、ペイロード部を含む前記複数のバイトの第2サブセットと、を含んでおり、前記データパケットは、信号非アクティビティの所定期間によって定められるパケット開始識別子を有し、
前記クライアントは、前記ホストから前記データパケットを受信データパケットとして受信し、且つ、前記データパケットを再送信データパケットとして前記ホストに再送信するシリアル通信スレーブを含み、前記データパケットは、前記ホストからの前記データパケットの送信開始から前記クライアントから前記ホストへの前記データパケットの再送信完了まで、前記デイジーチェーンループを通した通過時間を有しており、所定の無音期間が前記通過時間よりも長く予め決められていることを特徴とするデータ通信システム。
【請求項21】
前記シリアル通信マスタは、前記データパケットを別個のクロック信号なしに送信することを特徴とする請求項20に記載のデータ通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年5月7日に出願された米国特許仮出願第61/643,794号の利益を主張し、その内容をあらゆる目的のために引用により全文をここに明示的に組み込む。
【0002】
以下の出願が本願に関連しており、それぞれが2012年5月7日に提出された米国特許仮出願第61/643,794号の利益を主張する出願であり、同日付で出願されており、これらの出願の内容はあらゆる目的のため、引用により全文をここに明示的に組み込む:米国特許出願第13/572,665号「ROBUST COMMUNICATIONS IN ELECTRICALLY NOISY ENVIRONMENTS(電気的雑音環境下のロバスト通信)」、米国特許出願第13/572,667号「REDUNDANT MULTISTATE SIGNALING(冗長多状態信号方式)」、米国特許出願第13/572,668号「WIRE BREAK DETECTION IN REDUNDANT COMMUNICATIONS(冗長通信における線切断検出)」、および米国特許出願第13/572,669号「HOST INITIATED STATE CONTROL OF REMOTE CLIENT IN COMMUNICATIONS SYSTEM(通信システムにおける遠隔クライアントのホスト始動状態制御)」
【背景技術】
【0003】
本発明は概してデータ通信、特に、限定的ではないが、高性能電気自動車(EV)環境用の低コストで、障害に強い、EMIロバストデータ通信に関する。
【0004】
車両および産業用途において、高エネルギー電気エネルギー保存システムの使用が増大し続けている。走行/推進モータまたは工場機械に通電する場合のいずれにおいても、これらのエネルギー保存システムは多数の相互接続バッテリモジュールアセンブリを含むことが多く、各モジュールアセンブリは多数の個別のバッテリ蓄電池を含む。相互接続されたモジュールは、その用途のエネルギー保存需要のために一括して一体型バッテリパックを表す。
【0005】
各モジュールは、安全および監視用の実装電子機器を含み、中央監視システムが確実にこれらのモジュールとデータを交換することが重要である。モータまたはマシンの動作および制御の際の存在する電圧および電流は、様々な形で通信に干渉する状況(たとえば、電圧および電流の変動)を生み出す。したがって、通信システムは、大きな潜在的電磁干渉(電磁誘導と電磁放射の両方)が存在する場合にも満足に動作するように設計されねばならない。
【0006】
EVでは、さらなる境界条件はたとえば、a)低コストソリューション、b)省部品/コンポーネントソリューション、c)低電力消費、およびd)自動車環境にとって十分な信頼性である。エネルギー保存システムとの通信は安全を最重視すべきデータを含み、自動車環境は過酷である。車両は移動中、広範な温度および湿度条件下で、機械的衝突、衝撃、および振動を受ける。モジュールは個別の構成要素(コンポーネント)であり、通信システムは線およびコネクタを使用するワイヤリングハーネスを必要とする。線および線コネクタ/接続は切断される、および/または緩む、あるいは断続的に接続される可能性がある。
【0007】
特にEV環境における低コストで、障害に強い、EMIロバストデータ通信のシステムおよび方法が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低コストで、障害に強い、EMIロバストデータ通信のシステムおよび方法を開示する。
【0009】
以下の本発明の概要は、電気自動車(EV)における低コストで、障害に強い、EMIロバストデータ通信に関連するいくつかの技術的特徴に関する理解を深めるために提供されるものであり、本発明を完全に説明することを目的としていない。本発明は、明細書全体、請求項、図面、および要約を全体的に解釈することによって完全に理解することができる。本発明は、電気自動車の他の環境にも適用可能である。
【0010】
電気的雑音環境におけるデータ通信システムは、複数の通信装置を備え、前記通信装置は、ホストと、デイジーチェーンループを用いて前記ホストと通信するN個(N>1)のクライアントとを含み、前記デイジーチェーンループが前記ホストの第1の位置を始端とすると共に前記ホストの第2の位置を終端とし、前記デイジーチェーンループはN+1個の導体セグメントを備え、前記デイジーチェーンループの各特定の1つの導体セグメントは上流通信装置を下流通信装置に連絡し、前記ホストは、第1下流クライアントへのデータパケットのシリアル送信を開始するシリアル通信マスタを含み、前記データパケットは、複数のバイトと、前記データパケットのアドレス部を含む前記複数のバイトの第1サブセットと、ペイロード部を含む前記複数のバイトの第2サブセットと、を含んでおり、前記データパケットは、信号非アクティビティの所定期間によって定められるパケット開始識別子を有し、前記各クライアントは、特定の上流通信装置から前記データパケットを受信データパケットとして受信し、且つ、前記データパケットを再送信データパケットとして特定の下流通信装置に再送信するシリアル通信スレーブを含み、N個のうちのXクライアントがX−1クライアントから受信してX+1クライアントに再送信し、ここで、前記X=1クライアントが前記受信データパケットを前記ホストから受信し、前記Nクライアントが前記再送信データパケットを前記ホストに再送信し、前記データパケットは、前記ホストからの前記データパケットの送信開始から前記Nクライアントから前記ホストへの前記データパケットの再送信完了まで、前記デイジーチェーンループを通した通過時間を有しており、所定の無音期間が前記通過時間未満に予め決められている。
【0011】
電気的雑音環境においてホストとN個のクライアント(N>=1)とを含む複数の通信装置用のデータ通信方法は、
a)別個のクロック信号線なしに第1下流クライアントへのデータパケットのシリアル送信を初期化することであって、前記データパケットは、複数のバイトと、前記データパケットのアドレス部を含む前記複数のバイトの第1サブセットと、ペイロード部を含む前記複数のバイトの第2サブセットと、を含んでおり、前記データパケットは、信号非アクティビティの所定期間によって定められるパケット開始識別子を有することと、
b)特定の上流通信装置から前記データパケットを受信データパケットとして受信することであって、N個のうちのXクライアントがX−1クライアントから受信し、前記X=1クライアントが前記ホストから前記データパケットを受信することと、
c)特定の下流通信装置に前記データパケットを再送信データパケットとして再送信することであって、N個のうちのXクライアントがX+1クライアントに再送信し、Nクライアントが前記ホストに前記再送信データパケットを再送信することと、を含み、
前記データパケットは、前記ホストからの前記データパケットの送信開始から前記Nクライアントから前記データパケットの前記ホストへの再送信完了までの前記デイジーチェーンループを通した通過時間を有しており、所定の無音期間が前記通過時間未満に予め決められている。
【0012】
本発明のその他の特徴、利益、および利点は、明細書、図面、および請求項を含む本開示に目を通すことで明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付図面では、類似の参照符号は図面全体を通じて同一のまたは機能的の類似の構成要素を指し、前記図面は組み込まれて本明細書の一部を成し、本発明をさらに例示し、本発明の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0014】
図1】バッテリエレクトロニクスシステムのデータフロー概略を示す。
【0015】
図2】バッテリエレクトロニクスシステムの接続図である。
【0016】
図3】クライアントの構成要素の概略図である。
【0017】
図4】受信したシリアルデータに対するクライアント応答工程400のフローチャートである。
【0018】
図5】バッテリ通信システムで使用されるアドレスバイトを示す。
【0019】
図6】列挙中にバッテリ通信システムで使用される4バイトを有するパケット6を示す。
【0020】
図7】ホスト105によって開始されるアドレス列挙送信のシーケンスを示す。
【0021】
図8】バッテリ通信システム用障害信号伝達サブシステムの信号送信部の詳細図である。
【0022】
図9】バッテリ通信システム用障害信号伝達サブシステムの冗長部の詳細図である。
【0023】
図10】バッテリ通信システムの障害信号伝達サブシステムの干渉排除部の詳細図である。
【0024】
図11図10に示されるホストの代替となるホストの構造を示し、デイジーチェーンループの各端にフィルタが追加されている。
【0025】
図12】クライアントの配電実施態様の振動制動部の詳細図である。
【0026】
図13】クライアントのウェイク部の詳細図である。
【0027】
図14】バッテリエレクトロニクスシステムの差分データ信号実施態様の一部の概略図である。
【0028】
図15】データ信号切断検出のための機構(すなわち、「切断検出器(break detector)」)を含むデータ導体切断検出回路トポロジの概略図である。
【0029】
図16図15に示されるトポロジ1500よりも一般的な導体切断検出回路トポロジの概略図である。
【0030】
図17】電源導体切断検出回路トポロジ1700の概略図である。
【0031】
図18】オプション細部を追加した、図10に類似のバッテリ通信システム用信号伝達サブシステムの干渉排除部の詳細図である。
【0032】
図19図11に示されるホストの代替となるホストの構造を示し、第2のホスト絶縁電源が追加されている。
【0033】
図20図19に示されるホストの代替となるホストの構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態は、低コストの、障害に強い、EMIロバストデータ通信のためのシステムおよび方法を提供する。以下の説明は、当業者が本発明を作製し使用することができるように提示され、特許出願およびその要件の文脈において提供される。
【0035】
好適な実施形態の各種修正、および本明細書に記載の一般的な原理および特徴は当業者にとって容易に自明になるであろう。よって、本発明は、図示される実施形態に限定されず、本明細書に記載の原理および特徴に相当する最大範囲に一致するものとする。
【0036】
大半の動作環境において電気的雑音には様々な多くの原因がある。電気的雑音(ノイズ)は必ずしも動作環境内の通信を大きく阻害するとは限らない。本発明の実施形態は電気的雑音環境内のロバスト通信を提供するように構成され、実施される。本願の目的上、電気的雑音環境とは、ノード間または試験下点間で測定される、環境内の電気的雑音から誘発される、あるいは生じる電圧が、データ信号伝達で使用される電圧レベルと同程度である環境のことを指す。電気自動車(EV)の推進に使用されるモータを含め、電動モータを含む特定用途では、(電圧および/または電流として)大きな雑音を生成し得る大きな経時変化磁界が、EVの領域に存在する。
【0037】
図1は、バッテリエレクトロニクスシステム100のデータフロー図である。バッテリエレクトロニクスシステム100は、ホスト105とN個のクライアント110(i=1〜N)とを含む。ホスト105およびクライアント110は多数の様々な実施態様と配置が可能であり、どれもが本発明の範囲に含まれる。説明を簡易化し、理解を助けるため、以下の説明では、バッテリ管理システム(BMS)と、それぞれがバッテリモジュール基板(BMB)を含むN=8個のバッテリモジュールとを有する電気自動車(EV)に関する特定の実施態様に焦点を当てる。BMSはホスト105を含み、各バッテリモジュール基板は1つのクライアント110(i=1〜8)を含む。
【0038】
各クライアント110は、商品プロセッサ(たとえば、8ビットマイクロコントローラ)を用いて具体化され、上記特徴を達成するために線数を最小化すべく設計されたアーキテクチャ内で動作する。バッテリエレクトロニクスシステム100の機能全体は単独の断線のときも維持され、システムは比較的高いスルーレート(slew rate)のEMIが存在する際に十分に動作する。
【0039】
データ送信のため、ホスト105は該ホスト105を始端および終端とする一方向デイジーチェーンループ(daisy−chain loop)115内で各クライアント110に接続される。クライアント110は、デイジーチェーンループ115に接続される順番で番号を付される。ホスト105はデイジーチェーンループ115上の第1のクライアント(すなわち、図1のクライアント110)に全コマンドを送信する。一般的なプロトコルが規定するように、各クライアント110(たとえば、クライアント110)はバイト毎に受信する全データを次のクライアント110i+1(すなわち、クライアント110)に再送信する。ループ内の最後のクライアント(すなわち、クライアント110N=8)は全データをホスト105に戻す。よって、図1では、ホスト105は常にデータをクライアント110に送信し、クライアント110から受信する。バッテリエレクトロニクスシステム100は、電位に関係なく、バッテリモジュールの特定の接続順を要求しない(たとえば、モジュールはパック電圧順に接続する必要はない)。従来の語法で使用されるように、デイジーチェーンループは、複数の装置がシーケンスまたはリング状に共に配線される配線スキームを含む。本明細書で使用される場合、デイジーチェーンは上記配線スキームだけでなく、デジタルデータが再生または修正され、アナログ信号が減衰に対抗するように処理される他の円形/シーケンス配線スキームも含む。
【0040】
図2は、バッテリエレクトロニクスシステム100の接続図である。バッテリエレクトロニクスシステム100用の接続アーキテクチャは5つの線を含み、各線は各クライアント110で終端となる。これらの5つの線は第1のシリアルデータ線205、第2のシリアルデータ線210(冗長用)、絶縁電源線215、絶縁接地線220、および障害線225である。障害耐性および冗長送信方法を必要としない用途では、電力、接地、およびシリアルデータ用の最低3本の線を使用する。よって、4つの論理線が各クライアントを接続する(実際には、シリアルデータ冗長のために5つの線が使用されている)。ホスト105およびクライアント110は、関連バッテリモジュールから電力を受ける各クライアントで有意なEMIがある場合にこれらの線を通じてデータを確実に送信する。各バッテリモジュールは、より大きな電位スタックの一部であり、他のバッテリモジュールとは異なるローカル接地を有する。EVでは、運転手のインバータなどから大きな電気的スイッチング雑音が生じて、スイッチング過渡事象、差分モード雑音、一般モード雑音の3つの形の有意なEMIを引き起こす。
【0041】
ホスト105は、汎用非同期受信機/送信機(UART)マスタとしての役割を果たすことができるデジタル信号プロセッサ(DSP)を含む。また、このDSPはバッテリの挙動を判定し、充電状態やその他のバッテリメトリクスおよび状況を算出する。クライアント110と通信バスは、DSPが正確な挙動を判定するために採用する周辺装置の一部である。
【0042】
本明細書では、いくつかの線または線数について言及する。線数を低減することは、構成要素のコストおよび製造コストの削減のためだけではなく、信頼性の面からも望ましい。図2は線ループを有するバッテリエレクトロニクスシステム100を図示しているが、これらのループは実際には、ホスト105とクライアント110間、各クライアント110とクライアント110x+1間、およびクライアント110とホスト105間を延在する一連の線セグメントおよび接続部の集合体である。これらの線は1つの線セグメントにつき最低2つの接続点を有する。コネクタまたはその他の接合手法(たとえば、圧着)のいずれを使用するにせよ、接続は線自体が故障する可能性よりもさらに大きな故障リスクを有する電位故障点をもたらす。したがって、線をなくすことは、信頼性を多大に向上させる可能性がある。どんな線を追加する場合も入念に検討する必要がある。
【0043】
図3は、各クライアント110に含まれる構成要素の概略図である。クライアント110は、プロセッサ310(たとえば、商品の8ビットマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなど)と、ASIC315と、オンボード信号とオフボード信号を分離する1セットのアイソレータ320とを有するプリント回路板(PCB)305を含む。PCB305は、構成要素を相互接続するいくつかの線/接続トレースを含む。シリアルデータ線の冗長がPCB305上で繰り返されないように、本願では信頼性の高い相互接続が行われる。入ってくる第1のシリアルデータ線205と第2のシリアルデータ線210は処理のためにPCB305上で共に結合される。出て行く第1のシリアルデータ線205と第2のシリアルデータ線210とはPCB305上で分離された後、外の下流装置(たとえば、ホスト105または別のクライアント110x+1)へと送られる。各PCB305はバッテリモジュールおよびその一部と関連付けられる。PCB305上の電子機器は、関連バッテリモジュールから利用可能なエネルギーによって動力を供給される。PCB305の一部であるいくつかのインタフェース素子は、後述するようにホスト105から動力を供給される。
【0044】
プロセッサ310はクライアント110の通信を管理する。ASIC315は各バッテリモジュールに関する電圧、温度、およびその他の値を測定するアナログ−デジタルコンバータ(ADC)を含み、コマンドを受けてブリードスイッチをオンにする。また、二次的なハードウェア過電圧/低電圧保護も含む。この保護はプロセッサ310と相互作用せず、局地的な障害表示/信号を直接起動させる。
【0045】
プロセッサ310は汎用非同期受信機/送信機(UART)を含み、ホスト105およびクライアント110でシリアルデータ通信を実行するために使用される。UARTは商品のマイクロコントローラで広く採用され、別個のクロック信号(分離クロック信号)を必要としないため、線数とコストの低減を維持するのに役立つ。
【0046】
各クライアント110は、共通の接地基準なしにクライアント−クライアント転送とクライアント−ホスト転送間の情報の転送を分離する1セットのアイソレータ320を含む。PCB305は4つのアイソレータ320を含み、それぞれ入ってくるシリアルデータ(205(in)と210(in)の両方が結合され、PCB305上のデータイン信号トレース325に接続される)、出て行くシリアルデータ(205(out)と210(out)の両方が結合され、PCB305上のデータアウト信号トレース330に接続される)、電源線215、および障害線225に対応する。いくつかの実施形態は、たとえば電源線215上の電力と共にデータ信号または障害信号を調整することによってこの線数をさらに低減することができる。データホワイトニングなどの手法は、アイソレータ320の通信側335に電力を供給するのに十分な一定速度でシリアルデータ路のトグリングを可能にする。
【0047】
実装されるアイソレータ320は、超高周波(>100MHz)で信号を調整して高周波AC信号を生成するデジタルアイソレータである。デジタルアイソレータはコンデンサまたはインダクタ上でこのAC信号を流し、所望の絶縁通信を達成する。光学アイソレータは、設計がコストや電力問題に影響を受けない場合に、いくつかの実施形態で使用される。
【0048】
このように、アイソレータ320は通信側335をローカル側340から隔離する。すべてのクライアント110の通信側335は、接地線220を使用して同じ接地と関連付ける。ローカル側340は、PCB305を支持する関連バッテリモジュールの接地と関連付ける。よって、アイソレータ320は2つの異なる電圧領域(通信側335に接続されるバッテリエレクトロニクスシステム100の他の装置を含む通信領域と、ローカル側340に接続されるPCB305の装置を含むローカル領域)間で情報を転送する。アイソレータ320は、相互に対して(電気的に)移動するこれらの領域に耐性があるという特徴を有する。アイソレータ320が耐える必要のある共通モードの電圧歪み量は用途によって変動する。この場合、アイソレータ320は、領域間のデータ転送が破損の危機に立たされる前に、最大20kV/μSの共通モード歪み(slew)に耐えることができる。
【0049】
所望の電圧絶縁を達成するアイソレータ320は、複数の半導体を1つの基板およびパッケージに埋め込むマルチチップモジュール(MCM)製造手法を用いて構成される。アイソレータ320の複数のダイ間の物理的差異が電圧絶縁を促進する。ASIC315はMCM製造手法を用いて構築することができる。本発明のいくつかの実施形態では、アイソレータ320に使用される半導体ダイはASIC315の基板およびパッケージに埋め込まれて、所望レベルの雑音耐性を達成しつつ、外部構成要素の使用を低減する。
【0050】
上述したように、一般的な送信プロトコルでは、ホスト105が一方向デイジーチェーンのシリアルデータループを通じてコマンドを送信することによってすべての通信を開始する。さらに、各クライアント110は、あらゆる受信したコマンドだけでなく、下流クライアント110(y<x)から既に送信されているコマンドに応答する全データを再送信する。各クライアントは、送信する自身の応答も有することができる。UARTがデータパケットの開始と終了をフレーム付けする内蔵機構を有していないため、バッテリエレクトロニクスシステム100はデータパケットを特定するスキームを必要とする。
【0051】
各クライアント110はUARTを実装してこれらのコマンドおよび応答を送受信する。応答はコマンドとまさに同様に、コマンドとして解釈可能な一連のバイトを定期的に含む応答データのストリームである。バッテリエレクトロニクスシステム100は、パケットの開始と終了を検出する簡易で低リソースな構造および方法を実現することができる。
【0052】
現状で使用可能な簡易な機構は、パケットの開始マークとして持続的な完全無音期間(period of complete silence)を使用する。アイソレータ320は、電気的雑音によりスプリアスバイトがデータ線上で誘発されるのを防止するように設計される。したがって、ホスト105が送信中ではなく、全クライアント110がすべてのコマンドおよび応答を再送信し終わったとき、データ線は確実に完全に無音である。コマンドがホスト105から全クライアント110を経由して循環するのに必要な時間長が、この無音期間のために使用される基準期間である。ホスト105は、単に次のコマンドの送信前に前のコマンドの完了を待つことによって簡易にコマンドをフレーム付けする。
【0053】
クライアント110も無音期間を利用する。図4は受信したシリアルデータに対するクライアント応答工程400のフローチャートである。工程400はステップ405〜435を含む。工程400は、データを受信中であるか否かを判定するステップ405でのテストから開始される。データ受信中でない場合、工程400はループし、データを受信しなかった時間長を判定しつつステップ405のテストを繰り返す。ただし、ステップ405でのテストがYESである場合(受信したデータがある場合)、工程400はステップ410に進み、受信したデータを再送信する。ステップ410後、工程400はステップ415でのテストを実行し、測定されたデータ受信無音期間が所定の時間長閾値を満たすか否かを判定する。ステップ415でのテストがNOである場合、工程400はステップ405に戻り、データの受信を待つ。
【0054】
ただし、ステップ415でのテストがYESである場合、工程400はステップ420で最初のバイトを復号(デコード)する。ステップ425での次のテストは、受信したデータが適切に形成されたコマンドであるときにアドレス指定される最初の復号されたバイトが、クライアントに関連付けられた保存アドレスと一致するか否かを判定する。すなわち、最初のバイトは、受信したデータがこの特定のクライアント宛てのコマンドであることを示唆する。ステップ425でのテストがNOである場合、工程400はステップ405に戻り、受信したデータを待つ。ステップ425でのテストがYESである場合、工程400は次のバイトを復号する、あるいはステップ430でコマンドを復号する。その後、工程400はコマンドを処理するステップ435を実行し、ここでは、データの追加バイトが必要とされ、クライアントが受信したデータへの応答を追加する場合がある。ステップ435後、工程400はステップ405に戻り、追加データを待つ。
【0055】
特定バイトをフレーム開始区切り記号として表示し、特定のバイトが実際のデータに現れるのを防ぐバイトスタッフィングなど、バッテリエレクトロニクスシステム100がパケットのフレーム付けに利用することのできる機構は他にもある。バイトスタッフィングはコマンドを通信バス上で輸送させ、バスの利用を高めるのに有益であろう。しかしながら、そうすると、ホスト105およびクライアント110のプロセッサによる処理がさらに必要になる。
【0056】
バス上でクライアントにコマンドを発するホストを有する通信システムでは、信号伝達システムを導入するのが一般的であるため、ホストは、クライアントが既に発せられたコマンドを適切に検出および復号したか否かを判定することができる。そうするための機構の1つが、クライアントがコマンド受信後に提供する応答/否定応答(ACK/NAK)の使用である。全クライアントに同報メッセージを送信するホストを含む現状では、ACK/NAKを同時に送信する複数のクライアントすべてを管理するのは困難である。
【0057】
バッテリエレクトロニクスシステム100は簡易なループバックエラー検出機構を実装する。使用されるプロトコルは各クライアントに受信されたコマンドおよび応答を再送信させて、全クライアントが適切にコマンドを検出し復号したことをホストに確認させる。コマンドに応答して、全クライアントは、最終クライアントがコマンドをホストに再送信し返すまで順次そのコマンドを再送信する。ホスト105は受信したコマンドを送信したコマンドと比較する。バイト毎に一致すると、ホスト105は、すべてのクライアント110が送信されたコマンドを見たと結論付ける。ACK/NAKハンドシェーキングは使用されない。
【0058】
バッテリエレクトロニクスシステム100はすべてのクライアント110が固有のアドレスを有することを要求するため、ホスト105はアドレスとコマンドを明瞭に関連付けることができる。複数のモジュールをエネルギー保存システムの一部として有するEVの製造は、できる限り少ない要件および制約の下でバッテリモジュールを物理的に設置できる場合に簡易化される。したがって、製造においては、モジュールを設置する際にアドレスをあらかじめ決定し設定しない、あるいはモジュールの接続順序について悩まないことが好ましい。よって、ホストおよびクライアントは、実行時にアドレスを決定する。ホスト105はアドレス割当時に使用する特定のアドレスを持たないため、これは難題である可能性がある。
【0059】
バッテリエレクトロニクスシステム100は、電源投入時にアドレス「0」で始まる各クライアント110を含むソリューションを提供する。バッテリエレクトロニクスシステム100は、クライアント110がアドレス「0」を有する場合、「アドレス指定されていない(unaddressed)」とみなす。任意のパケットの(8ビットの)1番目のバイトはアドレスバイトである。2ビットのアドレスバイト(たとえば、1番目と2番目のビット)が確保される。一方の確保されたビットは読取り/書込みビットであり、他方の確保されたビットは違法アドレスビットである。残りのビットは、最大62個の異なる利用可能なアドレス、よって62個の固有にアドレス可能なクライアント110を提供する。以下の列挙工程(非違法アドレスを全クライアント110に割り当てる)は、1つの例外を除いて一般的な動作送信規則を使用する。その例外とは、非常に特別な条件セット下では、クライアント110が受信したデータを正確に再送信しなくてもよいというものである。
【0060】
図5は、バッテリエレクトロニクスシステム100で使用されるアドレスバイト500を示す。1番目のビット505は確保された違法アドレスビットであり、2番目のビット510は確保された読取り/書込みビットである。6つの下位ビット515はアドレスバイト500のアドレスビットである。6ビット(000000)〜(111111)は63個の異なるアドレスを表し、アドレス(000000)は列挙のために確保され、62個の動作アドレス(000001)〜(111111)を残す。
【0061】
図6は、列挙中にバッテリエレクトロニクスシステム100で使用される4バイトを有するパケット600を示す(他の実施形態では、パケットは異なるバイトの配置および数を有することができる)。パケット600は、アドレスバイト(たとえば、図5に示されるアドレスバイト500)である1番目のバイト605、レジスタバイト610、ペイロードバイト615、およびCRCバイト620を含む。
【0062】
図7は、ホスト105によって開始されるアドレス列挙送信のシーケンス700を示す。ホスト105は最初に列挙パケット705を送信し、該パケットは第1のシリアルデータ線205を通じてクライアント110に到達する。列挙パケット705はアドレス(000000)を含み、違法アドレスビットと読取り/書込みビットは共に(0)(これは16進法で(0x00)と表される)に設定される。図7に示されるように、アドレス「前」レジスタBARとアドレス「後」レジスタAARである。これらは、各クライアント110がアドレスを決定するために使用する内部メモリの値を示す。
【0063】
ホスト105からのパケット(たとえば、列挙パケット705)の受信に応答して、各クライアントは図4の工程400を用いて動作する。アドレス一致(000000)する第1のクライアント110は、クライアント110に関して所望の固有のアドレスを設定するのに使用される残りのバイトを復号する。この場合、ホスト105はクライアント110のアドレスを(000000)から0x03としても表される(000011)に変更している。クライアント110のBARは0x00として示され、AARはこの変更を反映する0x03である。
【0064】
通常、クライアント110は受信したパケットをクライアント110x+1に再送信するが、そうすることでクライアント110x+1は0x03のアドレスも有することになる。これを防止するため、この特定例では、クライアント110は修正した列挙パケット710を再送信する。修正した列挙パケット710は、違法アドレスビットが高く設定されることを除き列挙パケット705と全く同じである。よって、アドレスバイト500は(00000000)から(10000000)へと変更され、それは0x00から0x80への変化としても示される。クライアント110x+1は修正した列挙パケット710のアドレスを、アドレスと一致する(000000)として復号するが、違法アドレスビットが設定されるため、クライアント110x+1はこのパケット送信を無視し、そのアドレスを変更しない。クライアント110x+1は単に、受信されたときと同じように修正した列挙パケット710を再送信する。クライアント110x+1に対するBARおよびAARはどちらも0x00として示される。
【0065】
この列挙工程はクライアント110毎に繰り返され、アドレスはデイジーチェーンループでの接続順に割り当てられる。最終的にホスト105は送信した列挙パケット705に応答してループバックを受信する。応答して修正した列挙パケット710を受信する限り、ホスト105は、クライアント110が列挙パケット705に基づき動作したことを確認する。
【0066】
このように構成されたバッテリエレクトロニクスシステム100は、N個のクライアント110の電位制限である待ち時間で動作する。すべてのクライアント110は送信前に全バイトを受信するため、1クライアントにつき最低1バイト時間(選択されたボーレートで1バイトを送信する時間)の待ち時間が生じる。3バイトである読取りコマンドの場合、ホスト105は、応答の最初のバイトを受信する前にN+3バイト時間待たなければならない。用途によっては、Nが増大するためにこの待ち時間によって制限される場合がある。
【0067】
図8は、バッテリエレクトロニクスシステム100用の障害信号伝達サブシステムの信号送信部の詳細図である。上述したように、バッテリエレクトロニクスシステム100は、高安全性システムの信頼性を高める障害線225を含む。各バッテリモジュールには、バッテリモジュール基板を通じて障害信号を生成する機構が設けられる。この障害信号はデータ送信に関する冗長ハードウェア路を提供して、エネルギー保存システムまたはその構成要素の1つに障害が検出された場合にEVに適切に対応させる。障害線225は、オンボード障害信号をバッテリエレクトロニクスシステム100に分配する共有障害線である。障害線225はデイジーチェーンバスの円形トポロジを利用して、各クライアント110からホスト105へのデュアル冗長障害路を提供する。
【0068】
N個のクライアント110のそれぞれは、ホスト105に確実に障害信号を送信できなければならない。本例では、任意のクライアント110によって生成される任意の個々の障害信号は障害状態についてホスト105に警告するのに十分な条件であるため、信号伝達媒体は、全クライアント110から個々の障害信号すべての「ワイヤードOR(wired OR)」の合計を許容しなければならない。物理的損傷の際の頑強性を向上させるため、信号伝達媒体は各クライアント110からホスト105への2つの独立した経路を提供する。
【0069】
実際の実施態様では、障害線225がコネクタに設置され、そのコネクタはクライアント110にホストとして働くバッテリモジュール基板に物理的に装着するために使用される。線は圧着端子を用いてコネクタに接合される。時には、単独の圧着端子を用いて2つまたはそれ以上の導体/線を接合することによって所望レベルの信頼性およびコストが達成されない場合がある。信頼性を高め、コストを下げるため、どの圧着端子にも1つの導体/線しか関連付けられない、つまり、各コネクタ回路を2つ以上の信号導体と関連付けることができないという制限がある。
【0070】
これらすべての要件を満たし、複数の障害信号を障害線225に接続するため、バッテリエレクトロニクスシステム100は障害信号送信機805(アイソレータ320の送信機チャネルとして示される)用の「開放コレクタ(open collector)」信号伝達を使用する。開放コレクタ信号伝達では、各障害信号送信機805は信号導体(たとえば、障害線225)から接地へと電流を送ることができるが、信号導体に電流を供給することができない。IDLE状態(障害信号がアクティブではない)では、障害線225は、たとえば1つまたはそれ以上のプルアップ抵抗810を使用することによって正電源電位に維持される。
【0071】
たとえば、これらの抵抗810は、デイジーチェーン供給電圧に等しい電位が印加されるときに抵抗を流れる電流が、障害信号送信機805の最小保証出力電流に近いがそれ未満になるような値を持つべく選択される。これにより、障害信号送信機805は障害線225を確実に駆動させることができるが、雑音電流排除のためのマージンをできる限り多く提供する。所与の電圧を抵抗810間で低下させるのに必要な電流が大きいほど、所与の雑音電流によって誘導される電圧は小さくなる。バッテリエレクトロニクスシステム100の場合、プルアップ抵抗の平行な組み合わせは2.375キロオームであり、5Vの供給電圧電位が抵抗810間に印加されるときに約2mAの電流が流れる。障害信号送信機805の最大定格出力電流は4mAであって、障害信号送信機805がすべての条件下で目標出力電圧に確実に達するのに十分なマージンを残す。
【0072】
障害線225を使用して障害状態を確実に伝える実際の障害信号に応答しつつ、誤障害を表示しないようにすべての条件下で適切なデジタル信号伝達マージンを保証するように注意を払わねばならない。たとえば、障害信号送信機805は開放コレクタ送信機でなくてもよい。開放コレクタ動作のためにそれを変換する方法の1つは、障害信号送信機805の出力と直列にダイオード815を使用することである。この出力に接続されたダイオード815の陰極と障害線225に接続された陽極を持つことで、障害信号送信機805の出力上の低電圧は障害線225をホスト105への接地信号伝達障害へと引き寄せがちである。最悪の場合、最大ダイオード順電圧と、プルアップ抵抗電流と、同一の電流での障害信号送信機805の最大保証出力電圧との和が障害信号を受信する予定のホスト105の受信機における最大入力低電圧未満である。
【0073】
図9は、バッテリエレクトロニクスシステム100用障害信号伝達サブシステムの冗長部の詳細図である。概念的には、障害線225は、ホストから全クライアントへ、そしてホストに戻るデイジーチェーンループのトポロジに従う円形トポロジを用いて冗長を達成する。デイジーチェーンループはホスト105を始端および終端とし、障害線225も同様である。ホスト105は、障害信号を受信する第1の障害受信機905と第2の障害受信機910とを含む。障害線225がいずれかの地点で断線すると、2つの部分が生成され、信号路の一方のみが遮断されて、ホスト105の障害受信機への第2の信号路が常に存在する。各障害受信機にはプルアップ抵抗810が設けられて、障害線225の各部分が、接続された障害信号送信機805のいずれもがアクティブでないときでも正確なIDLE電位を取るように確保する。断線がない場合、一対のプルアップ抵抗810が障害線225上に平行に存在して、動作中に占められる。
【0074】
圧着端子を使用する機械的接合に関して本明細書に記載される設計制約は、単独の線が文字通り完全回路内で延在されず、必要な接続ができないことを意味する。よって、障害線225はおそらく適切には障害路として記載され、多数の単独線セグメント915を用いて形成される。クライアント110を支持する各PCB305は、デイジーチェーンコネクタ920と、隣接するデイジーチェーンコネクタ920間を延びるデイジーチェーンの一部にわたる線セグメント915とを含む。各デイジーチェーンコネクタ920は一対の圧着端子925を含み、各端子は線セグメント915の端部に接合する。クライアント110の場合、1つの圧着端子がクライアント110x−1まで延在する線セグメント915に接合し、1つの圧着端子がクライアント110x+1まで延在する線セグメント915に接合する。これらのセグメントはそれぞれデイジーチェーンコネクタ920に接続されるPCB305の金属トレースを用いて共に接合される。内蔵の冗長(built−in reduntancy)がなければ、いずれかのクライアント110で発生した障害信号がホスト105にたどり着くまですべての中間クライアント110を出入りしなければならないため、機械コネクタの設計制約が問題となる可能性がある。機械的コネクタが電気システムの故障の共通点であると仮定すると、複数の線分915を使用すると、複数の機械的接続が順に障害信号の影響を受ける可能性がある。冗長の実行は本実施態様における付帯リスクを軽減する。
【0075】
上記冗長は、ハーネスのマルチポイントの故障を招く場合があるバッテリパックの機械的接続の進行性劣化を防ぐため、ホスト105は、障害信号路のシングルポイントの故障を検出し、障害信号伝達の冗長が切断されている場合、適切に対応する(たとえば、車両の動作継続を防止する)機構を有していなければならない。ホスト105は2つの別個の障害受信機(受信機905と受信機910)を含むため、そのそれぞれがクライアント110のいずれかからの障害信号を検出できるべきであり、ホスト105は信号伝達の冗長を検証する自己テストシーケンスを実行することができる。クライアント110はデイジーチェーンデータ信号を介して手動で障害信号を始動させるように命令され得るため、ホスト105は、各クライアント110の各障害信号を順に始動させて、障害受信機の両方共が障害信号を検出することを検証することができる。円形路の周囲全体の冗長障害信号線の完全性を確保するようにクライアント110を1つだけ始動させる必要があるが、クライアント110のそれぞれを始動することで障害信号送信機805をそれぞれテストし、障害信号路が各障害信号送信機805から受信機905と受信機910の両方まで無傷であると保証する。
【0076】
全信号路(すなわち、シリアルデータ、出力、および障害)は、高圧バッテリでは一般的であるが、ごく短期間の大きな電流変化を含む環境を通じてルーティングされる。このような環境では、バッテリエレクトロニクスシステム100で実装されるようにルートが円形信号路を含むときに注意を要する。時間に伴う急速な電流変化は、有限領域を囲む導体で起電力(EMF)を誘発する磁界を変化させる。適切な注意を払わない場合、EMFにより、信号導体において不所望の電流が流れる、あるいは電圧として符号化される信号が破壊される。EMF環境の従来のソリューションでは、誘発EMFによって影響を受けないために通信に差分信号を使用する。
【0077】
図10は、バッテリエレクトロニクスシステム100用障害信号伝達サブシステムの干渉排除部の詳細図である。バッテリエレクトロニクスシステム100内の信号伝達は、その文言が一般的に理解される通りの差分信号伝達を利用しない。バッテリエレクトロニクスシステム100内の障害は、電源導体および接地導体に対して障害信号差分を取ることによって、誘発EMFにもかかわらず単独の円形にルーティングされた導体を用いて確実に伝達される。絶縁電源線215および絶縁接地線220は、バッテリ環境を通じて障害線225と同一の経路をたどる。つまり、これらの信号路は障害線225と同一の追加EMFを享受する。
【0078】
バッテリエレクトロニクスシステム100は、デイジーチェーンループの第1の端部1010を画定し、デイジーチェーンループの第2の端部1015から分離するデイジーチェーンアイソレータ1005を含む。デイジーチェーンアイソレータ1005は、誘発EMFに第1の端部1010と第2の端部1015との間の電位差を生成させる高周波アイソレータ(たとえば、一対のインダクタ、チョークなど)である。その電位差により、高周波絶縁による破壊電流がデイジーチェーンループ内を流れなくなる。
【0079】
十分に配慮しないと、この電位差はデジタル信号伝達に有害になり得る。バッテリエレクトロニクスシステム100では、第1の端部1010および第2の端部1015で使用されるデジタル送信機およびデジタル受信機はそれぞれの端部に存在する出力電位と接地電位にのみ関連付けられ、両端は後述するように絶縁電源(たとえば、絶縁DC−DCコンバータ1020)から電力の供給を受ける。さらに、デジタル送信機および受信機はデイジーチェーンループの他端には接続しない。たとえば、第1の端部1010に対するデジタル受信機1025は第2の端部1015に対するデジタル受信機1025から電気的に隔離されている。バッテリエレクトロニクスシステム100の信号回路はすべて、信号線(たとえば、障害線225)と基準回路に対して得られる基準電位とを含む。この文脈で、基準回路は、関連する送信機および受信機を供給する電源回路および接地回路を意味する。誘発EMFは信号線の電位および基準回路の電位に等しく追加される電位を生じさせるため、バッテリエレクトロニクスシステム100のこのような信号回路は存在するEMFからのいかなる破壊電位も享受しない。
【0080】
バッテリエレクトロニクスシステム100では、デイジーチェーンループの各端は、別個のデジタルアイソレータによってホスト105回路の残りに接続され、その受信機および送信機はデイジーチェーンの各端と同じ基準電位を取らされて、ホスト105回路の残りの共通基準電位に対して送受信されるデイジーチェーンループの信号を変換するのに供する。これらのデジタルアイソレータのデイジーチェーン端はデイジーチェーン出力および接地信号によって駆動され、他端はホスト回路の残りが使用する共通ホスト出力および接地信号によって駆動される。
【0081】
図11は、図10に示されるホスト105の代替となるホスト105の構造を示し、デイジーチェーンループの各端にフィルタ1105が追加されている。図10では、場合によっては、スプリアス電位が基準回路に関して障害線225に現れる可能性がある。このようなスプリアス電位は様々な原因から生じる可能性があるが、おそらくは何らかの種類の容量結合である。フィルタ1105は、スプリアス(spurious)電位を阻止するのを助け、好ましくは何らかの種類のローパスフィルタとして実現される。簡易なRCローパスフィルタで十分であるとする実施態様もあれば、異なるフィルタが必要である、あるいは望ましいとする実施態様もある。他の種類のフィルタ1105は、容量結合を介して障害線225に現れる高周波信号への対応を助ける何らかの種類のPiフィルタを含むことができる。
【0082】
図10は、バッテリエレクトロニクスシステム100の配電も示す。開示されるデイジーチェーンバスは、電圧絶縁のために各クライアント110でアクティブ(能動)デジタル回路を使用する。開示される実施形態の各クライアント110のPCB305は、パッケージ化されたデジタルアイソレータ半導体素子ソリューション(たとえば、「チップ」または集積素子など)として実装されるアイソレータ320を含む。バッテリエレクトロニクスシステム100は、アイソレータ320を動作させるために各クライアント110に給電しなければならない。バッテリエレクトロニクスシステム100は簡易な5VのDC配電バスを実装する。
【0083】
デイジーチェーンバスはデータ送信媒体とノード発生データ(すなわち、ホスト105とクライアント110)との間の電気絶縁を利用するため、各アイソレータ320の「浮動」部分に電力を供給する機構を設けなければならない。図3では、アイソレータ320は通信部335(これが浮動部分)とローカル部340とを含む。ローカル部は各バッテリモジュールまたはホストが利用可能なローカル電源から電力の供給を受ける。通信部335は「浮動(floating)」電源から電力の供給を受ける必要がある。このような電源にとって便利な形が絶縁DC−DCコンバータ1020である。図示されるように、1つの絶縁DC−DCコンバータ1020は全ノードに電力を供給するために使用されるので、全ノードに必須電力を配分するように導体を使用しなければならない。代替策としては、各ノードにDC−DCコンバータを設置して、各ノードに別々に電力を供給する。
【0084】
単独の絶縁DC−DCコンバータ1020を使用するには、各ノードへのデイジーチェーンループ内の電源線215および接地線220の設置およびルーティングを必要とする。これらの線は、障害線225の設置とルーティングの際に、同一の機械的設計制約と上述の電位EMIの問題の影響を受ける。障害線225の配分と同様に、各線は実際には単独導体ではなく単独路として実装される。出力路と接地路とがあり、各経路は圧着端子925を用いてデイジーチェーンコネクタ920に接合されるスパン線セグメントから成る。PCB305上の導電性トレースは分割されて、各アイソレータ320への電力と接地のルーティングを行う。
【0085】
電源路および接地路のデイジーチェーントポロジは、デイジーチェーンループの障害路で説明したときと同様、冗長性とEMI頑強性とを提供する。単独の切断があっても、ノードの出力および接地接続は不能にならない。デイジーチェーンアイソレータ1005はEMF誘発電流に関する懸念を軽減する。
【0086】
しかしながら、状況によっては、デイジーチェーンアイソレータ1005を追加することで、不所望の挙動につながる可能性がある。具体的には、デイジーチェーンバス全体、特に電源導体は、バッテリおよびバッテリ容器の周囲金属素子に対する片端接地伝送路として機能することができる。この伝送路の第1の端部1010および第2の端部1015をデイジーチェーンアイソレータ1005などの高インピーダンス素子で終端とすることで、伝送路のモード構造が変更され、端部が相互に終端とされる伝送路によって得られる周波数の半分で最低次定在波共振モードが開始される。具体的には、円形伝送路に存在し得る最低次定在波モードは、伝送路の完全回路周囲の完全な空間振動期間を呈示する電流(または電位)の正弦波から成る。この波は、路の長で割った共振周波数で、片端接地の伝送路の周波数依存伝搬速度と等しい時間周波数を有する。一方、線形の終端されていない伝送路は、電流(または電位)が路の長にわたる空間振動の半期間を呈示する定在波モードを享受することができる。このモードは、路の長の2倍で割った共振周波数で、路の片端接地モードの周波数依存伝搬速度に等しい時間周波数を有する。
【0087】
電源導体に対するデイジーチェーンバスのデータ送信導体の相互インダクタンスが全体として電源導体の自己インダクタンスと等しいとみなされる場合、上述のモードにおいて高インピーダンスで終端するデイジーチェーンの非駆動振動中に電源導体が享受する電位勾配は、データ導体に沿った同一の電位勾配と一致し、妨害電位がデータ信号回路に導入されない。残念ながら、本件はそれに当てはまらないため、データ導体はより小さな電位勾配を享受し、共振の電流上限に最も近いこれらのデータ信号回路(電位勾配の上限は線形伝送路の最低モードの間に生じる)は、モード振動速度で誘発電位を享受する。これらの電位は十分に大きければ、デジタル信号伝達を阻害する可能性がある。線形伝送路の1次モードの振動の低周波数速度は信号周波数により近く、円形伝送路の共振の1次モードよりもフィルタリングを通じて排除することが難しいため、EMF誘発電流を低減するのにインダクタが追加される場合は、デイジーチェーンの上述の共振モードに減衰を加えることが必要となる可能性がある。これは、インダクタまたはチョークと平行に抵抗を挿入して、デイジーチェーンの一端を他端に接続して、電位差が最大になったとき1次(およびその他の奇数次すべて)共振モードからのエネルギーを排出させることによって達成することができる。この減衰効果は、デイジーチェーンの電源導体に沿った別の地点で配分された、あるいは直列抵抗を追加することによっても達成できる。しかし、電源導体の目的はDC電力を距離全体に配分することであるため、追加された直列抵抗がその機能の妨げとなる。事実上、バッテリエレクトロニクスシステム100が各デイジーチェーンデータ導体とその関連データ受信機との間に挿入するローパスフィルタは、上述の共振モードに関連する振動電位を阻止するのに十分であるため、バッテリエレクトロニクスシステム100の信号伝達速度は追加の減衰が必要でないくらい低い。しかしながら、デイジーチェーンまたはシステムが長いほど、高い信号伝達速度を必要とするので、このような減衰が有益であると証明される場合もある。
【0088】
図12は、クライアント110の配電実施態様の振動制動部の詳細図である。この振動制動機構は、電力バスで生じ得る異なる種類の寄生振動、すなわち、2つの電源導体の差分振動に対応する。場合によっては、伝送路(たとえば、電源線215と接地線220、ここではLとしてモデル化)の分配リアクタンスは電源線215と接地線220間の差分電圧振動を送信することができる。このような振動は、アイソレータ320に関連付けられる多数のデカップリングコンデンサ(CDCと称する)間を流れる電流を含む。制動抵抗(R)1205は、各デジタルアイソレータ320と電源線215との間に直列で追加される。制動抵抗1205は、任意の寄生伝送路に関連付けられる振動電流を制動する。制動抵抗1205のさらなる利点は、短時間誘発される過渡電流がアイソレータ320に到達するのを防いで電位源の損傷を防ぐことである。
【0089】
図13は、クライアント110のウェイク(wake)部の詳細図である。上述したように、アイソレータ320は、バッテリエレクトロニクスシステム100における電位デルタ間の電気的雑音および通信に対応する。アイソレータ320は、本願においては、アクティブなときに、データがアクティブに送信されていないときでも電力を消費するという欠点を有する。電力消費を低減し、バッテリ待機寿命を延長するため、クライアント110のローカル側は、データが処理されていないときにアイソレータ320に提供される電力を「オフ」にする。したがって、ホスト105は、通信が所望されるときに局所出力を回復させるようにクライアント110に命令する機構を有していなければならない。ホストが提供する電力要求信号の状態を判定する機構は、本明細書では「WAKE(ウェイク)」と称する。クライアント110は定期的に電力を回復させるため、クライアント上の専用論理回路は、ホスト105が通信開始を望むか否かを判定する電力要求信号をポーリングすることができる。局所出力は短いインターバルで回復される。このアイソレータ320のON/OFFサイクルは、必須性能を犠牲とせずにできる限り低く平均電力消費を低減するように選択される。
【0090】
クライアント110は、ポーリング信号を供給するパルスジェネレータ1305を含む。ホスト105との通信がアクティブでないとき、ポーリング信号はアイソレータ320への局所出力の状態を判定する。定期的に、パルスジェネレータ1305はポーリング信号をアサート(assert、有効な状態にする)する(たとえば、信号が「オン」にされる)。アサートされると、ポーリング信号はアイソレータ320のローカル側340への電力を回復させ、すべての送信機および受信機を動作可能(有効又はイネーブル)にする。アサートされないと(たとえば、信号が「オフ」にされる)、局所出力が妨害されてすべての送信機および受信機を動作不能(無効又はdisable)にする。
【0091】
2つの入力論理OR素子1310(たとえば、「OR」ゲート)はパルスジェネレータ1305のポーリング信号に接続される第1の入力と、アイソレータ320の電源有効化入力に接続される出力とを有する。出力装置1310がアサートされると、アイソレータ320は動作可能になり、出力装置1310がアサートされないと、アイソレータ320が動作不能となる。パルスジェネレータ1305からのポーリング信号がアサートされるときは常に、出力装置1310がアサートされる。
【0092】
アイソレータ320はホスト105からのWAKE信号に接続されるウェイク受信機チャネル1315を含む(好適な実施形態では、電源線215はウェイク受信機チャネル1315の入力に接続され、電源線215の信号レベルがWAKE信号として働く)。ウェイク受信機チャネル1315の出力は装置1310の第2の入力に供給される。ウェイク受信機チャネル1315の出力がアサートされるときは常に、出力装置1310がアサートされる。ウェイク受信機チャネル1315の出力がアサートされるには以下の2つの条件が満たされなければならない。1)WAKE信号がホスト105によってアサートされなければならない、および2)ウェイク受信機チャネル1315が動作可能にされなければならない。ウェイク受信機チャネル1315が動作不能であると、出力装置1310をアサートするにはポーリング信号をアサートするしかない。ウェイク受信機チャネル1315が動作可能にされる場合、ポーリング信号をアサートするか、あるいはホスト105からのWAKE信号をアサートするかしてウェイク受信機チャネル1315が動作可能になる。ウェイク受信機チャネル1315が動作可能になるとアイソレータ320のすべてのチャネルが動作可能となり、一旦動作可能となると、ホスト105は、WAKE信号をアサートする限りアイソレータ320への電力を維持する。WAKE信号のデアサート(アサート停止、deassertion)はアイソレータ320への出力状態の制御を個々のクライアント110に戻し、その結果、アイソレータ320は短期間のみアクティブになり、WAKE信号状態のチェックのために定期的に電源投入されながら最小限の電力消費を維持する。ポーリング信号の最大OFF期間を把握することによって、ホスト105は、バッテリエレクトロニクスシステム100内の全アイソレータ320が動作可能になり、データの送受信に備えられるように、この期間、WAKE信号をアクティブにしておくだけでよい。
【0093】
WAKE信号がホスト105によってアサートされなければ、障害は全く影響し得ない。これが許容される理由は、ホスト105、本願では、障害信号がアサートされるときだけ行使することのできる応答機構を1つだけ有するからである(たとえば、該機構はHVスイッチを開放して、HVバッテリチェーンを外部環境から切断することができる)。ホスト105のハードウェアおよびソフトウェアのプログラミングはバッテリモジュールと通信することができない限り、最初にこれらのHVスイッチを閉鎖することができず、WAKE信号が無事アサートされない限りは閉鎖が不可能となるように保証する。要約すると、WAKE信号がデアサートされると、バッテリホスト105は個々のモジュールの障害信号にアクセスできない。しかし、その後、ホストは得られる中で最も安全な状態で既にバッテリを配置しているため、障害信号が存在しても、バッテリはどんな安全挙動も発揮させられない。別の実施態様として、障害信号をポーリング信号と組み合わせて、障害がアサートされるときは常にアイソレータ320のローカル側をオンにすることも可能である。これにより、デイジーチェーンの電源をオンにしたときに障害信号を受信するホスト105の待ち時間が低減される。しかしながら、障害状態でのモジュールの電力消費は増加する。低電圧は電位障害状態の1つであるため、バッテリモジュールの急速な過放電を招く可能性がある。さらに、ホストがデイジーチェーンの電源を投入し、アイソレータの通信側に電力を印加するまで、障害状態はまだホスト105には存在しない。
【0094】
ホスト105からのWAKE信号は、より一般的にはクライアント110xの他の回路を制御するために使用することができる。たとえば、レギュレータ1320はウェイク受信機チャネル1315の出力に接続される。レギュレータ1320が特定の状態にある(たとえば、レギュレータに含まれ、ウェイク受信機チャネル1315に接続されるイネーブル入力(Enable input)が論理的真状態に駆動される)と、プロセッサ310がオンになり、レギュレータ1320が特定の状態にないとき、プロセッサ310はオフになる。このように、ウェイク信号はプロセッサ310の電源状態を完全に制御する。ホスト105は、WAKE信号をデアサートすることによってプロセッサ310の電源を即時に切ることができる。アイソレータ320が動作可能になり、WAKE信号がアサートされるときは常にプロセッサ310への電力が回復される。いくつかの実施形態では、ウェイク機能がたとえばアイソレータ320などの他の構成要素に組み込まれる。
【0095】
バッテリエレクトロニクスシステム100は、EVの高エネルギースイッチング環境において信頼性を高める特徴を含む。それらの特徴の1つは、信号と電力接続の戦略的かつ有効な冗長である。冗長路の故障の検出が望ましい。バッテリエレクトロニクスシステム100は、車両起動時に障害線225を自己テストすることによってフォルト(故障、FAULT)信号のみに関して線切断検出を実行する。いくつかの実施形態は、切断線の故障の一部または全部を継続的に監視する。
【0096】
冗長信号または導電路を追加することでシステムの信頼性を高めることができる。単純な分析では、故障率ηの接続を同一の故障率を有する2つの同一の接続の平行な組み合わせで置き換えることで、総故障率はηとなる。しかしながら、この分析は故障事象間のゼロ相関関係の推定、およびポアソン発生に基づく。実際には、故障事象は相関関係がなく、複数時点での共通の原因から生じる場合が多い。このような原因は、湿度上昇、結露、冷却材漏れ、封止不良、過剰な振動期間、クラスタ製造工程故障などである。これらの故障原因の多くは短時間のインターバル内に属するデュアル冗長システムの両半分を招き、組み合わされた故障率はηよりもηにずっと近い。しかしながら、故障事象はちょうど同時に発生する可能性は低い。両方の経路が故障してしまう前に冗長の故障を検出することによって、バッテリエレクトロニクスシステム100は、車両のさらなる動作を防止する、あるいは危険な自発的機能喪失事象が発生する前に修理が必要であることを運転手に伝えることができる。バッテリエレクトロニクスシステム100は冗長を達成するために信号または出力電流のためのデュアル送電路に頼っているため、線切断検出(ここでは、機械的コネクタ端子の故障も含む)を実行する方法は、回路抵抗の増大を検出するために監視され、切断された、あるいは劣化した送電路によって生じる、回路を流れる既存のまたは追加の副テスト電流に頼る。これらの増加は電圧変化として現れ、容易に検出することができる。バッテリエレクトロニクスシステム100の使用する回路トポロジは、要素数と実施コストの低減を特徴とする。
【0097】
バッテリエレクトロニクスシステム100が冗長故障に関して監視する3種類の導体は、a)データ信号(たとえば、第1のシリアルデータ線205)、b)フォルト信号導体(すなわち、障害線225)、およびc)電源導体(たとえば、POWER線215)である。
【0098】
基本的なデュアル冗長データ信号路は、送信機から受信機に延びる2つの電気的に平行な線から成る。これらの信号はやや広い範囲の周波数にわたる情報を含むため(データは〜1Mbpsで送信される)、適切な動作のために送信機および受信機回路に対して比較的制御されたインピーダンスを呈する必要がある。各データ信号路自体は単独の線であるが、バッテリエレクトロニクスシステム100は平行電源導体を基準として差分データ信号路を形成する。各データ導体およびその関連電源導体によって形成される差分データ信号路は、バッテリ内に存在する磁界を変更することによって最小限にリンクされて、スプリアス電位の信号路への導入を回避すべきである。
【0099】
図14は、バッテリエレクトロニクスシステム100の差分データ信号実施態様1400の一部の概略図である。差分データ信号実施態様1400は、PCB305上で一対の冗長データ線(第1のシリアルデータ線205と第2のシリアルデータ線210)に分割されるデータ信号を生成するデータ信号送信機1405を含む。これらの信号は電源線215および接地線220と共に差分データ信号実施態様1440へと構成されて、そこでデータが下流装置の受信機1410に送信される。
【0100】
差分データ信号路の切り離しは、一方の信号導体(たとえば、第1のシリアルデータ線205)を正電源線215と撚り合わせ、他方の信号導体(第2のシリアルデータ線210)を負電源線220と撚り合わせることによって達成される。また、2つのデータ導体または2つの電源導体によって形成されるループとリンクされる磁束の量を低減することが望ましく、2つの撚り対を相互に撚り合わせることも望ましい可能性がある。
【0101】
図14はいかなる切断検出回路も含んでいない。図15は、データ信号切断検出のための機構(すなわち、「切断検出器(break detector)」)を含むデータ導体切断検出回路トポロジ1500の概略図である。切断検出を達成するため、バッテリエレクトロニクスシステム100は、実行されるデータ送信プロトコルが、送信されたデジタル信号の特定の最小デューティサイクルを保証するという事実を利用する。UARTプロトコルは送信されたバイト毎にSTOPビットを含む。すなわち、少なくともいくらかの正電圧がバイトインターバル毎にデータバス上に存在する。つまり、検出回路は、両方の状態でバスと協働する必要はない。IDLE(STOPビット)状態においてのみバスと協働するように設計することができる。また、STOP状態とIDLE状態は同一であるため、データバスはこのSTOP状態で大半の時間を使うように保証されるので、切断検出回路が過渡的故障を含む接続故障を検出する可能性が高まる。
【0102】
データ導体切断検出回路トポロジ1500の切断検出器は単独のBJTトランジスタ1505のベース−エミッタ接合点に基づき、PNダイオード1510はベース−エミッタ接合点に逆平行に接続されて、両極性の信号電流が切断検出器を通過することができる。トランジスタ1505は所与の温度範囲およびテスト電流にとって予測可能なVBE値を発揮し、同様にダイオード1510は同一の温度範囲および電流にとって予測可能な順電圧(V)値を発揮する。バッテリエレクトロニクスシステム100は、予測抵抗により生じる電圧降下が最小予測VBEよりもずっと低くなるようにテスト電流Itestを設定することによって、良好な導体を通るテスト電流(Itest)により生じる小電圧降下が誤障害信号を引き起こさないように保証する。さらに、最大VBEおよび最大Vはデジタル信号電圧よりも小さいため、信号伝達電流を伴う場合もベースーエミッタ接合点間で失われる電圧は小さい。
【0103】
以下の説明は、上述するように少なくとも一部の時間生じるように保証される高電圧を生成する送信機1405に関する。通常の状況下(データ信号導体(すなわち、第1のシリアルデータ線205または第2のシリアルデータ線210)のいずれにおいても断線がない)では、2つの信号導体によって形成される回路はトランジスタ1505のベース−エミッタ電圧をゼロに維持する。信号回路が第1のシリアルデータ線205の第1の位置1515または第2のシリアルデータ線210の第2の位置1520のいずれかで切断される場合、通常は送信機1405の出力から信号回路を通って接地まで流れる電流Itestは、トランジスタ1505のベース−エミッタ接合点を流れるように再ルーティングされる。トランジスタ1505のDC電流ゲインが十分高い限り、このベース−エミッタ電流によりトランジスタ1505が通電する。伝導電流は出力ノード(OUT)で入手可能なプルダウン抵抗Rpdを通る電圧を生成する。通常、抵抗Rpdは、トランジスタ1505が飽和に達するまで、その抵抗を通る電圧が上昇するのに十分な大きい値を有するように選択され、飽和時点で、OUTノードでの電圧は送信機出力電圧からトランジスタ1505の飽和電圧を引いたものと等しくなる。OUTノードでの電圧の存在は、信号回路が故障し、冗長が失われたという表示である。OUTはマイクロコントローラまたはその他の集積回路のデジタル入力にルーティングして、そこで監視することができる。もしくは、OUTは本明細書に記載の3レベル信号伝達スキーム内の障害信号路に接続することができる。ホスト105は障害線225上の電圧を監視することによって、中央位置で全データ信号線路を監視することができる。
【0104】
図15の実施態様の詳細は実際には、用途要件に応じたままの実施態様の詳細であることに留意すべきである。たとえば、このトポロジ内の無傷の信号導体を通るDC電圧の降下はB−E接合点の導通をトリガするのに十分ではないが、送信機1405がデジタル出力状態を変更するときに過渡的AC電圧が信号導体を通って増大することがある。具体的には、長いケーブル上の2つのデータ導体によって形成される回路のインダクタンスはこの電圧を増大させる可能性がある。この問題に対応するため、コンデンサはB−E接合点と平行に設置させることができる。これにより、AC過渡電流の伝導路が提供されて、信号路の妨害が生じた場合にItestのDC成分にトランジスタ1505を起動させる。上記コンデンサと2つのデータ導体を備える回路のインダクタンスとによって形成される共振回路が不十分にしか減衰されないことに留意すべきである。この結果、トランジスタ1505が始動する可能性がある。冗長信号線と直列に抵抗を挿入することによってこの問題を解決できる可能性がある。
【0105】
図16は、図15に示されるトポロジ1500と比較した導体切断検出回路トポロジ1600の概略図である。トポロジ1600は、切断検出器用の追加機構とホスト105への3レベルの障害信号とを含む。また、図16は、トランジスタ1505のベース−エミッタ接合点へのACデカップリングコンデンサ1605および制動抵抗1610の追加を含む。図16の障害信号極性は、図8に示される障害信号極性の逆である。簡易なインバータ(たとえば、別のトランジスタまたはデジタルICなど)を使用することで、いずれのスキームも互換性を持つ。
【0106】
トポロジ1600は、冗長データと、ホスト105にバッテリエレクトロニクスシステム100におけるデータまたは信号線の故障を中央で検出させる連続的な障害切断検出信号を有する、本明細書に記載の冗長障害信号の実施態様とを含む。
【0107】
トポロジ1600はクライアント110内にエミッタ−フォロワトランジスタ1615を含み、トランジスタ1615は、電源線215に接続されるエミッタと、トランジスタ1505のコレクタに接続されるベースと、障害信号送信機805に接続されるコレクタとを含む。ホスト105は抵抗分割器1620(たとえば、3つの直列抵抗RSA〜49kΩ、RSB〜5kΩ、およびRSC〜1kΩ)、ウィンドウコンパレータ1625、および障害検出器1630を含み、それらすべてが障害線225の両端に接続される。
【0108】
トランジスタ1615は、データ線が故障した場合はいつでも障害線225に電圧を印加する。この電圧は、約1のダイオードドロップである(たとえば、〜0.6V)。障害線225が故障すると、抵抗分割器1620(プルダウン抵抗Rpdとしても働く)がテストノード1635で類似の電圧レベルを生成する。ウィンドウコンパレータ1625はテストノード1635を監視し、電圧が切断を示すレベルにあるとき、ウィンドウコンパレータ1625は切断線信号をアサートする(この場合、テストノード1635での電圧が0.1V〜0.25Vの間にないとき、ウィンドウコンパレータ1625は切断線信号をアサートする)。切断線信号のアサートは、データまたは障害線冗長がバッテリエレクトロニクスシステム100のどこかで失われており、ホスト105で利用可能であるという警告信号である。
【0109】
ウィンドウコンパレータ1625は、2つの電源導体のうちの1つの短絡に関して障害線を監視する追加機能を有する。障害線の不慮の接続、すなわち「短絡(short)」は通常の機能を阻害する可能性がある。障害線は電位を変更することによって(トポロジ1600の場合、低電位から高電位)潜在的に危険な状況を伝えるため、動作可能な障害線が危険な状況の不在を伝えるのに通常使用する電位と同じ電位に障害線を電気的に接続する短絡は、障害線が危険な状況を伝えるのに通常使用される電位に達するのを防ぐことによって、危険な状況の真の存在を隠してしまうことがある。トポロジ1600で記載される実施形態では、障害線をデイジーチェーンの接地導体または接地導体の電位以下である金属体に接続することで、上述の潜在的に危険な状況を招き得る。抵抗分割器1620は、障害信号に電源導体とも接地導体とも等しくないが、その間の電位を達成させることが分かっている。記載されたトポロジである抵抗分割器1620は、障害線が通常、ウィンドウコンパレータの2つの閾値の間、好ましくは閾値から等距離の電位を獲得するように設計される。トポロジ1600では、障害や切断線が伝えられないときに障害線が通常獲得する電位は0.175Vである。障害線の電位が下限閾値、ここでは0.1Vを下回るときを検出することができるウィンドウコンパレータ1625を実装することによって、ウィンドウコンパレータは、障害線が上述のように切断されたときだけではなく、障害線が短絡接地して、障害を信号伝達できないときも伝えることができる。前者の場合は障害が全く伝えられないが、後者の場合は障害信号がまだ2つの対象冗長受信機のうちの1つに到着する可能性があるために、この「短絡接地(shorted to ground)」状態は障害線の切断よりも潜在的に危険であるとみなすことができる。したがって、実施態様は、本明細書に記載のウィンドウコンパレータ1625を2つの別々のレベルのコンパレータに置き換えることを所望する可能性がある。一方のコンパレータは上限閾値を超える障害信号の通過を伝え、他方のコンパレータは下限閾値を超える障害信号の通過を伝える。これら2つの閾値は、トポロジ1600に示され、ウィンドウコンパレータ1625に関連付けられる閾値0.1Vと0.25Vに相当する。上限閾値コンパレータは、トポロジ1600内のウィンドウコンパレータによって生成されるような「切断線(BROKEN WIRE)」信号を生成し続ける一方、下限閾値コンパレータは「短絡障害線(SHORTED FAULT WIRE)」信号を生成する。その後、バッテリホスト105は、これら2つの異なる状況に適切に対応することができる。
【0110】
仮にいずれかのクライアント110が障害信号送信機805から真のフォルト信号を生成する場合、障害線225上の電圧は高レベルへと上昇し、テストノード1635での電圧も上昇する。テストノード1635での電圧は障害検出器1630によって監視され、該電圧が第2の閾値(たとえば、0.25V)を超えると、障害検出器1630はフォルト信号をアサートする。ホスト105でのフォルト信号は、N個のクライアント110のうちの1つが真のフォルト信号をアサートしたという警告である。
【0111】
必要あるいは所望であれば、電源導体に線切断検出を組み込むことができる。図17は電源導体切断検出回路トポロジ1700の概略図である。このような線切断検出は、一対のダイオードで冗長電源路を完成させることによってのみ達成される(第1のダイオード1705が電力接続の2つの端部を接続し、第2のダイオード1710が接地接続の2つの端部を接続する)。主伝送路(DC−DCコンバータからデイジーチェーンアイソレータ1005を通りループを回る経路)はほとんど電圧低下なしにデイジーチェーン全体に電流を供給するため、通常これらのダイオード間に電圧が生じない。いずれかの電源導体が切断されたら、その関連ダイオードが電流を通し、ダイオード間の順電圧が比較回路1715によって測定される。単独差分コンパレータ1720は、両ダイオード電圧を測定するのに十分であろう。電源導体ループの反応性インピーダンスまたはEMFから誘発される電圧によって生じる可能性のある瞬間AC電圧を抑えるには、少数の抵抗(たとえば、RとR、RはRよりわずかに大きく、たとえばR=50kΩ、R=49kΩ)とコンデンサ(たとえば、一対のダイオードバイパストランジスタCBPと一対のフィルタコンデンサC)が必要となる。概して、2つのダイオードバイパスコンデンサと電源導体ループとの間で形成される共振回路は、不足減衰であることが分かる。電源ループ上のダイオードの陰極と接地ループダイオードの陽極との間に直列CまたはRC回路を追加する必要がある可能性がある。本明細書に記載のデータ切断検出のために実行されたように、この一対のダイオードは双極接合点トランジスタのベースーエミッタ接合点によって置き換えることができる。BE接合がデイジーチェーンループによって要求される複数のデジタルアイソレータを供給するのに必要な電流に関して評価されるBJTは確保するのがおそらく難しいため、商品化される可能性は低く、EVのバッテリエレクトロニクスシステム100にとっては通常不適切なより高額なソリューションとなる。
【0112】
図18は、オプション細部を追加した、図10に類似のバッテリ通信システム用信号伝達サブシステムの干渉排除部の詳細図である。図18には、ホスト105の通信マスタに関して冗長多状態信号(redundant multistate signaling)方式(たとえば、フォルト)およびデータ通信のために、第1の位置1010で第1のデジタルアイソレータ1805を、第2の位置1015で第2のデジタルアイソレータ1805を使用することが明瞭に含まれている。第1のデジタルアイソレータ1805はクライアント110へのフォルト信号伝達とデータ(DATA(OUT))の送信に対応し、第2のデジタルアイソレータ1805はクライアント110からのフォルト信号伝達とデータ(DATA(IN))の受信に対応している。上述したように、いくつかの実施態様では、データ通信用に2つまたはそれ以上のデイジーチェーンループを有することが望ましいが、図18を簡易化するため、1つのデータデイジーチェーンループのみが示されている。ホスト開始通信を上流通信装置から受信し、デイジーチェーンループ上で下流通信装置に送信し、最後にホスト105に戻す、クライアント毎のプロセッサ1810(プロセッサ310と類似)も示されている。
【0113】
図19は、図11に示されるホスト105の代替となるホスト105の構造を示し、第1の位置1010に第1のホスト絶縁電源1905を追加し、第2の位置1015に第2のホスト絶縁電源1910を追加している。各クライアント110は両電源から電力を受け取ることができ、電源の一方が常に接続されたままであるため、導体の一方で単独の断線が起きても動作電力が失われない。これにより両位置での冗長多状態信号(たとえば、フォルト)にも電力が供給される。
【0114】
図20は、図19に示されるホスト105の代替となるホスト105の構造を示す。本実施態様では、冗長な第2の障害受信機機能のため、図9の簡易化された障害受信機機構が使用されている。この簡易化された障害受信機の構成は、単独の電源1020と1つの接地基準障害受信機(たとえば、受信機910)を使用し、デイジーチェーンアイソレータ1005を排除している。
【0115】
上記システムおよび方法は、好適な本発明の実施形態の詳細を理解する助けとして一般的な文言で説明した。本明細書の記載では、本発明の実施形態の理解を深めるため、構成要素および/または方法などで具体的な詳細を多数提供している。たとえば、本願では、「プロセッサ」という文言は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、および電子回路のその他類似の構造を指すのに使用されるだけでなく、本願の目的上、メモリからアクセスされる指示を実行可能な電子回路も含む。データ処理システムは、本明細書ではこの広範なコンテキストを明瞭に含むように使用されることがあるが、逆に具体的なコンテキストが示されない場合、「プロセッサ」等の使用は電子回路のこれらの具体的な構成に限定されない。本発明のいくつかの特徴および利点は上記態様で実現されるが、あらゆるケースで必須ではない。当業者であれば、本発明の実施形態は、具体的な詳細またはその他の装置、システム、アセンブリ、方法、構成要素、材料、部品などのうち1つまたはそれ以上を利用せずに実行できることを認識するであろう。他の例では、十分既知な構造、材料、または動作は、本発明の実施形態の態様を曖昧にするのを避けるために具体的に図示も記載もされていない。
【0116】
本明細書全体にわたる「一実施形態」、「実施形態」、または「特定の実施形態」の言及は、実施形態と組み合わせて記載される具体的な特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ、必ずしもすべての実施形態に含まれるわけではないことを意味する。よって、本明細書全体にわたる様々な箇所での「一実施形態では」、「実施形態では」、または「特定の実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の本発明の実施形態の具体的な特徴、構造、または特性は、任意の適切な形でその他1つまたはそれ以上の実施形態と組み合わせることができる。ここに記載され図示される本発明の実施形態の変形および修正は、本明細書の教示に鑑み可能であり、本発明の精神と範囲の一部とみなされると理解すべきである。
【0117】
図/図面に示される要素のうち1つまたはそれ以上は、より分割された、または統合された形でも具体化することができ、特定の用途に応じて有益なように、場合によっては取り除く、あるいは動作不能とすることができると理解される。
【0118】
また、図/図面内の信号矢印は、特段他に明示されない限り単に例であり、限定的ではないとみなすべきである。さらに、本明細書で使用される「または」という文言は、特段他に明示されない限り「および/または」を意味するものとする。構成要素またはステップの組み合わせも言及されていると考えられ、用語上、分離または結合できることが不明瞭になると予測される。
【0119】
本明細書と以下の請求項全体で使用されるように、「a」、「an」、および「the」は文脈上明らかに他の意味を示す場合を除き複数の言及を含む。また、本明細書と以下の請求項全体で使用されるように、「in」の意味は文脈上明らかに他の意味を示す場合を除き「in」と「on」を含む。
【0120】
要約書に記載される内容を含め、例示の本発明の実施形態の上述の記載は、網羅的である、あるいは本明細書に記載された通りの形式に本発明を限定することを意図するものではない。本発明の特定の実施形態およびその実施例は単に例示のために説明されており、当業者が認識および理解するように、均等な各種修正は本発明の精神と範囲に含まれる。上述したように、こうした修正は、例示の本発明の実施形態の上記記載に鑑み本発明に加えることができ、本発明の精神および範囲に含まれるものとする。
【0121】
よって、本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、様々な修正、変更、置換が上述の開示では意図されており、場合によっては、本発明の実施形態のいくつかの特徴は、記載される本発明の範囲と精神を逸脱せずに、他の特徴を使用することなく採用されると理解される。したがって、特定の状況に適合するように、あるいは本発明の必須の範囲および精神にとって必須となるように多数の修正を加えることができる。本発明は以下の請求項で使用される具体的な文言、および/または本発明を実行するための最適な形態として開示される特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、本発明はあらゆる実施形態、および添付の請求項の範囲に属する均等物を含むものと意図される。よって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ決定されるべきである。
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