(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0028】
熱活性化遅延蛍光(TADF)を示す物質を発光物質として用いた発光素子では、以下のようなエネルギーの過程を辿って発光が起こる。なお、ここでは、励起エネルギーを与える側の分子(エネルギードナー)をホスト分子、TADFを示す物質(エネルギーアクセプタ)をゲスト分子と記す。
【0029】
(1)電子及び正孔(ホール)がゲスト分子において再結合し、ゲスト分子が励起状態となる場合(直接再結合過程)。
【0030】
(1−1)ゲスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき。:蛍光を発する。
(1−2)ゲスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき。:エネルギー(主に熱)を吸収することにより一重項励起状態へ逆項間交差し、蛍光を発する。
【0031】
上記(1)の直接再結合過程においては、ゲスト分子の逆項間交差効率、及び蛍光量子収率が高ければ、高い発光効率が得られる。なお、ホスト分子のS
1準位及びT
1準位はゲスト分子の一重項励起エネルギーの準位(S
1準位)及び三重項励起エネルギーの準位(T
1準位)よりも高いことが好ましい。また、逆項間交差効率の高いTADFを示す物質(ゲスト分子)については、上記特許文献や各種発表がなされている。
【0032】
(2)電子及び正孔(ホール)がホスト分子において再結合し、ホスト分子が励起状態となる場合(エネルギー移動過程)。
【0033】
(2−1)ホスト分子の励起状態が一重項励起状態のとき
ホスト分子のS
1準位が、ゲスト分子のS
1準位よりも高い場合、ホスト分子から、ゲスト分子に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が一重項励起状態となる。一重項励起状態となったゲスト分子は蛍光を発する。なお、ホスト分子のS
1準位から、ゲスト分子のT
1準位へのエネルギー移動は、ゲスト分子における一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、主たるエネルギー移動過程になりにくいため、ここでは省略する。つまり、下記式(2−1)の通り、ホスト分子の一重項励起状態(
1H
*)から、ゲスト分子の一重項励起状態(
1G
*)へのエネルギー移動が重要である(式中、
1Gはゲスト分子の一重項基底状態、
1Hはホスト分子の一重項基底状態を表す)。
【0034】
1H
*+
1G →
1H+
1G
* (2−1)
【0035】
(2−2)ホスト分子の励起状態が三重項励起状態のとき
ホスト分子のT
1準位がゲスト分子のS
1準位およびT
1準位よりも高い場合、ホスト分子のT
1準位からゲスト分子のT
1準位に励起エネルギーが移動し、ゲスト分子が三重項励起状態となる。三重項励起状態となったゲスト分子は熱エネルギーを吸収することによって逆項間交差し、蛍光を発する。
【0036】
つまり、下記式(2−2)の通り、ホストの三重項励起状態(
3H
*)からゲスト分子の三重項励起状態(
3G
*)へエネルギー移動し、その後逆項間交差によってゲスト分子の一重項励起状態(
1G
*)が生成する。
【0037】
3H
*+
1G →
1H+
3G
* →(熱エネルギー)→(逆項間交差)→
1H+
1G
* (2−2)
【0038】
上記(2)で述べた全てのエネルギー移動過程が効率よく生じれば、ホスト分子の三重項励起エネルギー及び一重項励起エネルギーの双方が効率よくゲスト分子の一重項励起状態(
1G
*)に変換されるため、高効率な発光が可能となる。逆に、ホスト分子からゲスト分子に励起エネルギーが移動する前に、ホスト分子自体がその励起エネルギーを光又は熱として放出して失活してしまうと、発光効率が低下することになる。
【0039】
次に、上述したホスト分子とゲスト分子との分子間のエネルギー移動過程の支配因子について説明する。分子間のエネルギー移動の機構としては、フェルスター機構とデクスター機構の2つの機構が提唱されている。
【0040】
まず、1つ目の機構であるフェルスター機構(双極子−双極子相互作用)は、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、ホスト分子及びゲスト分子間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる機構である。双極子振動の共鳴現象によってホスト分子がゲスト分子にエネルギーを受け渡し、ホスト分子が基底状態になり、ゲスト分子が励起状態になる。なお、フェルスター機構の速度定数k
h*→gを数式(1)に示す。
【0042】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’
h(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光スペクトル)を表し、ε
g(ν)は、ゲスト分子のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命やりん光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光量子収率)を表し、K
2は、ホスト分子とゲスト分子の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合はK
2=2/3である。
【0043】
次に、2つ目の機構であるデクスター機構(電子交換相互作用)では、ホスト分子とゲスト分子が軌道の重なりを生じる接触有効距離に近づき、励起状態のホスト分子の電子と基底状態のゲスト分子の電子の交換を通じてエネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数k
h*→gを数式(2)に示す。
【0045】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、K’は、エネルギーの次元を持つ定数であり、νは、振動数を表し、f’
h(ν)は、ホスト分子の規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光スペクトル)を表し、ε’
g(ν)は、ゲスト分子の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、ホスト分子とゲスト分子の分子間距離を表す。
【0046】
ここで、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動効率Φ
ETは、数式(3)で表されると考えられる。k
rは、ホスト分子の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合はりん光)の速度定数を表し、k
nは、ホスト分子の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し、τは、実測されるホスト分子の励起状態の寿命を表す。
【0048】
数式(3)より、エネルギー移動効率Φ
ETを高くするためには、エネルギー移動の速度定数k
h*→gを大きくし、他の競合する速度定数k
r+k
n(=1/τ)が相対的に小さくなれば良いことがわかる。
【0049】
((2−1)のエネルギー移動効率について)
(2−1)のエネルギー移動過程を考える。式(2−1)の過程は、フェルスター機構(式(1))及びデクスター機構(式(2))の両方の機構によるエネルギー移動が考えられる。
【0050】
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。式(1)と式(3)からτを消去すると、エネルギー移動効率Φ
ETは、量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じているので、蛍光量子収率)が高い方が良いと言える。しかし実際は、さらに重要なファクターとして、ホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じているので蛍光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことも必要である(なお、ゲスト分子のモル吸光係数も高い方が好ましい)。このことは、ホスト材料の蛍光スペクトルと、ゲスト材料であるTADFを示す物質の最も長波長側に現れる吸収帯とが重なることを意味する。
【0051】
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。式(2)によれば、速度定数k
h*→gを大きくするにはホスト分子の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じているので蛍光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いことがわかる。
【0052】
以上のことから、(2−1)のエネルギー移動効率の最適化は、ホスト分子の蛍光スペクトルと、ゲスト材料であるTADFを示す物質の最も長波長側に現れる吸収帯とを重ねることによって実現される。
【0053】
((2−2)のエネルギー移動効率について)
(2−2)のエネルギー移動過程を考える。式(2−1)の過程はデクスター機構(式(2))によるエネルギー移動が考えられる。フェルスター機構によるエネルギー移動は、この場合、禁制であるため説明を省略する。デクスター機構によるエネルギー移動は上述のように、速度定数k
h*→gを大きくするために、ホスト分子の発光スペクトル(三重項励起状態からのエネルギー移動を論じているのでりん光スペクトル)とゲスト分子の吸収スペクトル(一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良い。なお、本構成の場合ゲスト材料は蛍光性化合物、ホスト材料も通常は蛍光性化合物であるため、これらのスペクトルは常温では確認されにくい。このような場合、分子軌道計算などにより想定されるりん光スペクトルや吸収スペクトルを用いることができる。また、特にりん光スペクトルに関しては、極低温(液体窒素雰囲気や液体ヘリウム雰囲気)で観測できることもある。
【0054】
なお、ホスト分子は通常、蛍光性化合物であるため、りん光寿命(τ)はミリ秒以上と非常に長い(k
r+k
nが小さい)。これは、三重項励起状態から基底状態(一重項)への遷移が禁制遷移のためである。数式(3)から、このことはエネルギー移動効率Φ
ETに対して有利に働く。
【0055】
以上のことを考慮すると、ホスト分子からゲスト分子へのエネルギー移動、すなわち式(2−1)及び式(2−2)の過程は、ホスト分子の蛍光スペクトルと、ゲスト分子の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収スペクトルとを重ね、且つ、ホスト材料の(想定される)りん光スペクトルと、ゲスト材料の(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収スペクトルとを重ねさえすれば、総じて起こりやすい傾向にある。
【0056】
しかし、熱活性化遅延蛍光を示す物質、特に比較的低温において高い効率で熱活性化遅延蛍光を示す物質(TADF材料)は、S
1準位とT
1準位が近接している。すなわち、ゲスト分子の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収スペクトルと、(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収スペクトルとが、非常に近接する。そのため、ホスト分子の蛍光スペクトルとりん光スペクトルも、同じような位置に来るようにホスト分子を設計しなければならない。
【0057】
ところが、一般に、S
1準位とT
1準位は大きく異なる(S
1準位>T
1準位)ため、蛍光の発光波長とりん光の発光波長も大きく異なる(蛍光の発光波長<りん光の発光波長)。例えば、りん光性化合物を用いた発光素子において、ホスト分子として良く用いられる4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)は、500nm付近にりん光スペクトルを有するが、一方で蛍光スペクトルは400nm付近であり、100nmもの隔たりがある。この例から考えてみても、ホスト分子の蛍光スペクトルがりん光スペクトルと同じような位置に来るようにホスト分子を設計することは、極めて困難である。
【0058】
従って、本発明の一態様は、熱活性化遅延蛍光を示す物質、特に比較的低温において高い効率で熱活性化遅延蛍光を示す物質を発光物質として用いた場合の、ホスト分子の三重項励起状態からのゲスト分子へのエネルギー移動効率に関する問題点を克服できる、有用な手法を提供するものである。以下に、その具体的な態様を説明する。
【0059】
本実施の形態では、熱活性化遅延蛍光を示す物質に効率的にエネルギー移動が可能なエネルギードナーとして、励起錯体(エキサイプレックス)を用いた発光素子を提供する。励起錯体は、2種類の物質から形成され、その一重項励起状態と、三重項励起状態とが近接しているという特徴を有する。そのため、エネルギーアクセプターである熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態の吸収である最も長波長側の吸収帯(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)に、励起錯体の蛍光を重ねることによって、励起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態へのエネルギー移動効率を高めると同時に、励起錯体の三重項励起状態からの(想定される)りん光スペクトルと熱活性化遅延蛍光を示す物質の(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収を重ねることができる。
【0060】
これによって、励起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態へのエネルギー移動効率を高めると共に、励起錯体の三重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の三重項励起状態へのエネルギー移動効率をも高めることが可能となる。
【0061】
また、通常、S
1準位とT
1準位の位置は物質ごとに異なっており、蛍光物質をホスト材料及びゲスト材料として用いた場合、ホスト分子の蛍光スペクトルとゲスト分子の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収を重ねることができたとしても、必ずしもホスト分子の(想定される)りん光スペクトルとゲスト分子の(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態へのエネルギー移動に相当する吸収が重なるとは限らない。しかも、蛍光物質におけるりん光スペクトルと一重項基底状態から三重項励起状態へのエネルギー移動に相当する吸収は観測が難しい又は観測できない場合が多いため、それらが重なっているのかどうかの確認も困難である。
【0062】
一方、上述のように、熱活性化遅延蛍光を示す物質と、励起錯体は共にS
1準位とT
1準位とが近接しているため、熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収と、励起錯体の蛍光スペクトルを重ね合わせることによって、おのずと熱活性化遅延蛍光を示す物質の(想定される)一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移に相当する吸収と、励起錯体の(想定される)りん光スペクトルを重ね合わせることが可能となる。
【0063】
以上のような構成を有する発光素子は、
図2のように効率よくエネルギー移動が起こる。
図2においては、電極10と電極11との間に発光層113が設けられている様子が記載されている。各電極と発光層113との間には任意の層が存在していて良い。励起錯体113Ecの一重項励起状態Seからは、発光物質113Dの一重項励起状態Saへエネルギー移動が起こり、励起錯体の三重項励起状態Teからは発光物質113Dの三重項励起状態Taへエネルギー移動が起こる。そして、発光物質113Dの三重項励起状態は発光物質の一重項励起状態に逆項間交差し、発光物質113Dの一重項励起状態Saから発光が起こる。本実施の形態における発光素子では、これらのエネルギー移動が、各々良好に行われることによって発光効率の高い発光素子を提供することができる。
【0064】
図1に、本実施の形態における発光素子の概念図を示した。
図1(a)は発光素子の図、(b)は発光層のみを拡大して示した図である。
【0065】
発光素子は、第1の電極101及び第2の電極102の一対の電極に挟まれたEL層103を有しており、EL層103は有機化合物を発光物質として含む。また、EL層は発光層113を有しており、発光物質は少なくとも発光層113に含まれる。発光層以外の層については、限定されないため、その他の層はどのような層を用いていてもよいが、代表的な積層構造としては、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115などがある。このほか、キャリアブロック層などを設けても良いし、発光層を複数設けても良い。
【0066】
発光層113には、
図1(b)に示したように、第1の有機化合物113H、第2の有機化合物113A及び発光物質113Dが含まれている。本実施の形態の発光素子は、第1の有機化合物113Hと第2の有機化合物113Aの二種類の材料でもって、ホスト材料が構成されるものとする。なお、本実施の形態の発光素子では、発光層113にその他の物質が含まれていることを排除しない。
【0067】
第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物113Aは励起錯体を形成する組み合わせである。励起錯体は、そのS
1準位とT
1準位とが近接している状態にあるが、特にS
1準位とT
1準位とのエネルギー差が0eV以上0.2eV以下の励起錯体を形成する組み合わせが好ましい。
【0068】
発光物質113Dは、熱活性化遅延蛍光を示す物質であり、好ましくは、比較的低温において(例えば100℃以下)熱活性化遅延蛍光を効率よく示す物質である。具体的には、S
1準位とT
1準位とのエネルギー差が0eV以上0.2eV以下の物質が好ましい。ここで、遅延蛍光とは、ある物質において、通常の蛍光と同じスペクトルをもちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10
−6秒以上、好ましくは10
−3秒以上である。
【0069】
さらに、この励起錯体と熱活性化遅延蛍光を示す物質は、上述したような関係を有する組み合わせである。すなわち、当該励起錯体の蛍光スペクトルと、熱活性化遅延蛍光を示す物質の最も長波長側の吸収帯が重なり合う組み合わせである。このことにより、励起錯体の一重項励起状態から熱活性化遅延蛍光を示す物質の一重項励起状態へ効率よくエネルギーの移動が行われる。
【0070】
また、励起錯体及び熱活性化遅延蛍光を示す物質は、双方共にS
1準位とT
1準位が近接していることから、一重項励起状態間のエネルギー移動を上記のように効率化することによって、三重項励起状態間のエネルギー移動も効率化することが可能である。
【0071】
上記、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。
【0072】
また、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Proto IX))、メソポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル−フッ化スズ錯体(SnF
2(Copro III−4Me))、オクタエチルポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(OEP))、エチオポルフィリン−フッ化スズ錯体(SnF
2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン−塩化白金錯体(PtCl
2OEP)等も挙げられる。
【0074】
また、熱活性化遅延蛍光を示す物質としては、以下の構造式に示される2−ビフェニル−4,6−ビス(12−フェニルインドロ[2,3−a]カルバゾール−11−イル)−1,3,5−トリアジン(PIC−TRZ)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強くなり、S
1準位とT
1準位のエネルギー差が小さくなるため、特に好ましい。
【0076】
第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物113Aとしては、励起錯体を形成できる組み合わせであればよく、公知のキャリア輸送材料をもちいることができるが、効率よく励起錯体を形成するために、第1の有機化合物及び第2の有機化合物としては、電子を受け取りやすい化合物(電子トラップ性化合物)と、ホールを受け取りやすい化合物(正孔トラップ性化合物)とを組み合わせることが好ましい。
【0077】
電子を受け取りやすい化合物としては、π電子不足型複素芳香族や金属錯体などを用いることができる。具体的には、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)、2−[3’−(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f、h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6−ビス[3−(フェナントレン−9−イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6−ビス〔3−(4−ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm−II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]
ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5−トリ[3−(3−ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0078】
ホールを受け取りやすい化合物としては、π電子過剰型複素芳香族又は芳香族アミンなどを好適に用いることができる。具体的には、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4−フェニル−3’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’−ジフェニル−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4−(1−ナフチル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’−ジ(1−ナフチル)−4’’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9−ジメチル−N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]フルオレン−2−アミン(略称:PCBAF)、N−フェニル−N−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル]スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)−9−フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)、2,8−ジフェニル−4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−III)、4−[4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]−6−フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP−IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P−II)、4−{3−[3−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi−II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。
【0079】
第1の有機化合物及び第2の有機化合物は、これらに限定されることなく、キャリアを輸送でき、且つ励起錯体を形成できる組み合わせであり、当該励起錯体の発光が、発光物質の吸収スペクトルにおける最も長波長側の吸収帯(発光物質の一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)と重なっていればよく、公知の他の材料を用いても良い。
【0080】
なお、電子を受け取りやすい化合物とホールを受け取りやすい化合物で第1の有機化合物及び第2の有機化合物を構成する場合、その混合比によってキャリアバランスを制御することができる。具体的には、第1の有機化合物:第2の有機化合物=1:9〜9:1の範囲が好ましい。
【0081】
ここで、励起錯体を形成する各化合物(第1の有機化合物113H及び第2の有機化合物113A)及び励起錯体について少しくわしく説明する。
【0082】
図14(A)、(B)に、物質単体の発光スペクトルと、励起錯体の発光スペクトルを示した。なお、図中、化合物1が2−[4−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:DBTBIm−II)、化合物2が2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)、化合物3が4,4’,4’’−トリス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’−TNATA)、化合物4が2,7−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]−スピロ−9,9’−ビフルオレン(略称:DPA2SF)であり、励起錯体1は化合物1と化合物3の励起錯体、励起錯体2は化合物2と化合物3の励起錯体、励起錯体3が化合物2と4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)との励起錯体、励起錯体4が化合物2と化合物4との励起錯体のスペクトルである。
【0085】
図14(A)には、励起錯体1及び励起錯体2の他、化合物1乃至化合物3の発光スペクトルを示した。励起錯体1で表されるスペクトルには化合物1をベースに、化合物3を少量添加した材料の発光を測定した結果を、励起錯体2で表されるスペクトルには、化合物2をベースに化合物3を少量添加した材料の発光を測定した結果をそれぞれ示した。すなわち、励起錯体1の測定を行った試料においては、化合物1と化合物3のどちらか一方が第1の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。また。励起錯体2の測定を行った試料においては、化合物2と化合物3のどちらか一方が第1の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。
【0086】
図14(A)からわかるように、少量成分である化合物3が同じであっても、励起錯体1と励起錯体2の発光は100nm以上の差がある。すなわち、ベースの物質を変更することによって、励起錯体の発光波長を容易に調整することができる。
【0087】
なお、励起錯体1の極大発光波長は520nm程度であるため、化合物1と化合物3とを含むホスト材料は、青緑から橙色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に用いることができる。
【0088】
また、励起錯体2の極大発光波長は610nm程度であるため、化合物2と化合物3とを含むホスト材料は、赤色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に用いることができる。
【0089】
図14(B)では、励起錯体3及び励起錯体4のほか、化合物2と化合物4の発光スペクトルを示した。励起錯体3で表されるスペクトルには、化合物2をベースに、NPBを少量添加した材料の発光を測定した結果を、励起錯体4で表されるスペクトルには化合物2をベースに化合物4を少量添加した材料の発光を測定した結果をそれぞれ示した。すなわち、励起錯体3の測定を行った試料においては、化合物2とNPBのどちらか一方が第1の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。また。励起錯体4の測定を行った試料においては、化合物2と化合物4のどちらか一方が第1の有機化合物113Hに相当し、他方が第2の有機化合物113Aに相当する。
【0090】
図14(B)からわかるように、ベースの材料が同じであっても、励起錯体3と励起錯体4の発光には100nm近くの差がある。すなわち、少量成分である物質を変更することによっても、励起錯体の発光波長を容易に調整することが可能である。
【0091】
なお、励起錯体3の極大発光波長は520nm程度であるため、化合物2とNPBとを含むホスト材料は、青緑から橙色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に用いることができる。
【0092】
また、励起錯体4の極大発光波長は580nm程度であるため、化合物2と化合物4とを含むホスト材料は、橙色から赤色の熱活性化遅延蛍光を示す材料のホスト材料として好適に用いることができる。なお、良好なエネルギー移動を実現するためには、熱活性化遅延蛍光を示す物質の最も低エネルギー側の吸収帯のピーク波長と、励起錯体の発光のピーク波長とのエネルギー換算値差が0.2eV以下であることが好ましい。
【0093】
以上のような構成を有する発光素子は、熱活性化遅延蛍光を示す物質へのエネルギー移動効率が高く、発光効率の良好な発光素子である。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態では実施の形態1で説明した発光素子の詳細な構造の例について
図1を用いて以下に説明する。
【0095】
本実施の形態における発光素子は、一対の電極間に複数の層からなるEL層を有する。本実施の形態において、発光素子は、第1の電極101と、第2の電極102と、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられたEL層103とから構成されている。なお、本形態では第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極102は陰極として機能するものとして、以下説明をする。つまり、第1の電極101の方が第2の電極102よりも電位が高くなるように、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加したときに、発光が得られる構成となっている。
【0096】
第1の電極101は陽極として機能するため、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。グラフェンも用いることができる。なお、後述する複合材料をEL層103における第1の電極101と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0097】
EL層103の積層構造については、発光層113が実施の形態1に示したような構成となっていれば他は特に限定されない。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層、中間層等を適宜組み合わせて構成することができる。本実施の形態では、EL層103は、第1の電極101の上に順に積層した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115を有する構成について説明する。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
【0098】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H
2Pc)や銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0099】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の物質にアクセプター性物質を含有させたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、第1の電極101として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0100】
複合材料に用いる正孔輸送性の物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸送性の物質として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0101】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0102】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0103】
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0104】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0105】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0106】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0107】
正孔注入層を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい発光素子を得ることが可能となる。
【0108】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の物質を含む層である。正孔輸送性の物質としては、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、正孔輸送性が高く、主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。また、上述の複合材料における正孔輸送性の物質として挙げた有機化合物も正孔輸送層112に用いることができる。また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもできる。なお、正孔輸送性の物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0109】
発光層113は、発光物質、第1の有機化合物及び第2の有機化合物を含む層である。発光層113は、実施の形態1で説明した構成を有していることから、本実施の形態における発光素子は非常に発光効率の良好な発光素子とすることができる。発光層113の構成については実施の形態1の記載を参照されたい。
【0110】
以上のような構成を有する発光層113は、真空蒸着法での共蒸着や、混合溶液としてインクジェット法やスピンコート法やディップコート法などを用いて成膜することで作製することができる。
【0111】
電子輸送層114は、電子輸送性の物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq
3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)
2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)
2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、電子輸送性が高く、主に10
−6cm
2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、上述した電子輸送性のホスト材料を電子輸送層114に用いても良い。
【0112】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0113】
また、電子輸送層と発光層との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0114】
また、第2の電極102に接して電子注入層115を設けてもよい。電子注入層115としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
2)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例えば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたものを用いることができる。なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電極102からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0115】
第2の電極102を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極102と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を第2の電極102として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
【0116】
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0117】
電極についても、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成しても良い。
【0118】
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極101と第2の電極102との間に与えられた電位差により電流が流れ、発光物質を含む層である発光層113において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0119】
発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極101のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101を通って取り出される。また、第2の電極102のみが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極102を通って取り出される。第1の電極101および第2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101および第2の電極102を通って、両方から取り出される。
【0120】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0121】
また、発光層113に接する正孔輸送層や電子輸送層、特に発光層113における発光領域に近い方に接するキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光物質もしくは、発光層に含まれる発光中心物質が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0122】
本実施の形態における発光素子は、ガラス、プラスチック、金属などからなる基板に設けられる。なお、発光素子からの光が透過する基板は、可視光領域に高い透光性を有しているものを用いる。基板上に作製する順番としては、第1の電極101側から順に積層しても、第2の電極102側から順に積層しても良い。発光装置は一基板上に一つの発光素子を形成したものでも良いが、複数の発光素子を形成しても良い。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、素子分割された照明装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、若しくはN型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方からのみなるものであってもよい。
【0123】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0124】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いた発光装置について説明する。
【0125】
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて作製された発光装置について
図3を用いて説明する。なお、
図3(A)は、発光装置を示す上面図、
図3(B)は
図3(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子618の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、625は乾燥材、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0126】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0127】
素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、
図3(B)では、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0128】
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0129】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0130】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0131】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0132】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1又は実施の形態2で説明した構成を含んでいる。また、EL層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0133】
さらに、EL層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi、等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0134】
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617により、発光素子618が形成されている。当該発光素子は実施の形態2の構成を有する発光素子である。なお、画素部602は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
【0135】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材625を設けると水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0136】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0137】
以上のようにして、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて作製された発光装置を得ることができる。
【0138】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1又は実施の形態2で示した発光素子は発光効率の良好な発光素子であり、消費電力の低減された発光装置とすることができる。また、当該発光素子は駆動電圧の小さい発光素子であり、駆動電圧の小さい発光装置を得ることができる。
【0139】
以上のように、本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、この他、パッシブマトリクス型の発光装置であってもよい。
図4には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、
図4(A)は、発光装置を示す斜視図、
図4(B)は
図4(A)をX−Yで切断した断面図である。
図4において、基板951上には、電極952と電極956との間にはEL層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は台形状であり、その底辺(絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を有することによって、低消費電力で駆動させることができる。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0140】
また、フルカラー表示とするためには、発光素子からの光が発光装置の外部に出る為の光路上に着色層もしくは色変換層を設ければ良い。着色層等を設けることによってフルカラー化した発光装置の例を
図5(A)及び(B)に示す。
図5(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の第2の電極1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。また、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設ける。また、黒色層(ブラックマトリックス)1035をさらに設けても良い。着色層及び黒色層が設けられた透明な基材1033は、基板1001に固定される。なお、着色層、及び黒色層は、オーバーコート層1036で覆われている。また、本実施の形態においては、光が着色層を透過せずに外部へと出る発光層と、各色の着色層を透過して外部に光が出る発光層とがあり、着色層を透過しない光は白、着色層を透過する光は赤、青、緑となることから、4色の画素で映像をフルカラーで表現することができる。
【0141】
また、以上に説明した発光装置では、TFTが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を
図6に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。
図5(A)で示された構造と異なり、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。
【0142】
発光素子の第1の電極1024W、1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。第1の電極は反射電極である。EL層1028を実施の形態1又は実施の形態2で説明した構成とすることで、白色の発光が得られる。
【0143】
着色層は、発光素子からの光が外部へ到達する光路上に設ける。
図5(A)のようなボトムエミッション型の発光装置の場合、透明な基材1033に着色層1034R、1034G、1034Bを設けて基板1001に固定することによって設けることができる。また、
図5(B)のように着色層をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に設ける構成としても良い。
図6のようなトップエミッションの構造であれば着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うこともできる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように黒色層1036を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)や黒色層1036はオーバーコート層によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いる。
【0144】
こうして得られた有機発光素子の一対の電極間に電圧を印加すると白色の発光領域1044Wが得られる。また、着色層と組み合わせることで、赤色の発光領域1044Rと、青色の発光領域1044Bと、緑色の発光領域1044Gとが得られる。本実施の形態の発光装置は実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いていることから、消費電力の小さい発光装置の実現が可能である。
【0145】
また、ここでは赤、緑、青、白の4色でフルカラー表示を行う例を示したが特に限定されず、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行ってもよい。
【0146】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0147】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を照明装置として用いる例を
図7を参照しながら説明する。
図7(B)は照明装置の上面図、
図7(A)は
図7(B)におけるe−f断面図である。
【0148】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。第1の電極401は実施の形態1又は実施の形態2における第1の電極101に相当する。
【0149】
第1の電極401上には補助電極402が設けられている。本実施の形態では、第1の電極401側から発光を取り出す例を示したため、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。補助電極402は透光性を有する材料の導電率の低さを補うために設けられており、第1の電極401の抵抗が高いことによる電圧降下を起因とする発光面内の輝度むらを抑制する機能を有する。補助電極402は少なくとも第1の電極401の材料よりも導電率の大きい材料を用いて形成し、好ましくはアルミニウムなどの導電率の大きい材料を用いて形成すると良い。なお、補助電極402における第1の電極401と接する部分以外の表面は絶縁層で覆われていることが好ましい。これは、取り出すことができない補助電極402上部からの発光を抑制するためであり、無効電流を低減し、電力効率の低下を抑制するためである。なお、補助電極402の形成と同時に第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412を形成しても良い。
【0150】
第1の電極401と補助電極402上にはEL層403が形成されている。EL層403は実施の形態1又は実施の形態2に説明した構成を有する。なお、これら構成については当該記載を参照されたい。なお、EL層403は第1の電極401よりも平面的に見て少し大きく形成することが、第1の電極401と第2の電極404とのショートを抑制する絶縁層の役割も担えるため好ましい構成である。
【0151】
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態1又は実施の形態2における第2の電極102に相当し、同様の構成を有する。本実施の形態においては、発光は第1の電極401側から取り出されるため、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成されることが好ましい。本実施の形態において、第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給されるものとする。
【0152】
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404(及び補助電極402)を有する発光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は発光効率の高い発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。また、当該発光素子は信頼性の高い発光素子であることから、本実施の形態における照明装置は信頼性の高い照明装置とすることができる。
【0153】
以上の構成を有する発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0154】
また、パッド412、第1の電極401及び補助電極402の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバータなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0155】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、EL素子に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を有することから、消費電力の小さい照明装置とすることができる。また、駆動電圧の低い照明装置とすることができる。また、信頼性の高い照明装置とすることができる。
【0156】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をその一部に含む電子機器の例について説明する。実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は発光効率が良好であり、消費電力が低減された発光素子である。その結果、本実施の形態に記載の電子機器は、消費電力が低減された発光部を有する電子機器とすることが可能である。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、駆動電圧の小さい発光素子であるため、駆動電圧の小さい電子機器とすることが可能である。
【0157】
上記発光素子を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0158】
図8(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率の良好な発光素子とすることが可能である。また、駆動電圧の小さい発光素子とすることが可能である。また、寿命の長い発光素子とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7103を有するテレビジョン装置は消費電力の低減されたテレビジョン装置とすることができる。また、駆動電圧の小さいテレビジョン装置とすることが可能である。また、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0159】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0160】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0161】
図8(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態1又は実施の形態2で説明した発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。
図8(B1)のコンピュータは、
図8(B2)のような形態であっても良い。
図8(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに第2の表示部7210が設けられている。第2の表示部7210はタッチパネル式となっており、第2の表示部7210に表示された入力用の表示を指や専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、第2の表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納や運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。当該発光素子は発光効率の良好な発光素子とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7203を有するコンピュータは消費電力の低減されたコンピュータとすることができる。
【0162】
図8(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には、実施の形態1又は実施の形態2で説明した発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、
図8(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定あるは検知する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、表示部7304および表示部7305の両方、または一方に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。
図8(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、
図8(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。上述のような表示部7304を有する携帯型遊技機は、表示部7304に用いられている発光素子が、良好な発光効率を有することから、消費電力の低減された携帯型遊技機とすることができる。また、表示部7304に用いられている発光素子が低い駆動電圧で駆動させることができることから、駆動電圧の小さい携帯型遊技機とすることができる。また、表示部7304に用いられている発光素子が寿命の長い発光素子であることから、信頼性の高い携帯型遊技機とすることができる。
【0163】
図8(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。当該発光素子は発光効率の良好な発光素子とすることが可能である。また、駆動電圧の小さい発光素子とすることが可能である。また、寿命の長い発光素子とすることが可能である。そのため、当該発光素子で構成される表示部7402を有する携帯電話機は消費電力の低減された携帯電話機とすることができる。また、駆動電圧の小さい携帯電話機とすることが可能である。また、信頼性の高い携帯電話機とすることが可能である。
【0164】
図8(D)に示す携帯電話機は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0165】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0166】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字入力モードとし、画面に文字を入力すればよい。この場合、表示部7402の画面にキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0167】
また、携帯電話機内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検知するセンサを有する検知装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示方向を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0168】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0169】
また、入力モードにおいて、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。なお、タッチ操作は表示部7402の光センサで検知しても良い。
【0170】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0171】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0172】
以上の様に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を備えた発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いることにより、消費電力の低減された電子機器を得ることができる。
【0173】
図9は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子をバックライトに適用した液晶表示装置の一例である。
図9に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライトユニット903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライトユニット903には、端子906により、電流が供給されている。
【0174】
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を液晶表示装置のバックライトに適用したことにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、該発光素子を用いることで、面発光の照明装置が作製でき、また大面積化も可能である。これにより、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、該発光装置は従来と比較し厚みを小さくできるため、表示装置の薄型化も可能となる。
【0175】
図10は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を、照明装置である電気スタンドに用いた例である。
図10に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、実施の形態4に記載の発光装置が用いられている。
【0176】
図11は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を、室内の照明装置3001および表示装置3002として用いた例である。実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は消費電力の低減された発光素子であるため、消費電力の低減された照明装置とすることができる。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、薄型であるため、薄型化した照明装置として用いることが可能となる。
【0177】
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。
図12に実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。表示5000乃至表示5005は実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いて設けられた表示である。
【0178】
表示5000と表示5001は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を搭載した表示装置である。実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0179】
表示5002はピラー部分に設けられた実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を搭載した表示装置である。表示5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0180】
表示5004や表示5005はナビゲーション情報、スピードやエンジンの回転数、走行距離、燃料残量、ギア状態、エアコンの設定など、様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示5000乃至表示5003にも設けることができる。また、表示5000乃至表示5005は照明装置として用いることも可能である。
【0181】
実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子は発光効率の高い発光素子とすることができる。また、消費電力の小さい発光素子とすることができる。このことから、表示5000乃至表示5005のような大きな画面を数多く設けても、バッテリーに負荷をかけることが少なく、快適に使用することができることから実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を用いた発光装置または照明装置は、車載用の発光装置又は照明装置として好適に用いることができる。
【0182】
図13(A)及び
図13(B)は2つ折り可能なタブレット型端末の一例である。
図13(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。なお、当該タブレット型端末は、実施の形態1又は実施の形態2に記載の発光素子を備えた発光装置を表示部9631a、表示部9631bの一方又は両方に用いることにより作製される。
【0183】
表示部9631aは、一部をタッチパネル領域9632aとすることができ、表示された操作キー9637にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0184】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネル領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタンを表示することができる。
【0185】
また、タッチパネル領域9632aとタッチパネル領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0186】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検知される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検知するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0187】
また、
図13(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0188】
図13(B)は、閉じた状態であり、本実施の形態におけるタブレット型端末では、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636を備える例を示す。
【0189】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0190】
また、この他にも
図13(A)及び
図13(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0191】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面または両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行うことができる。
【0192】
また、
図13(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図13(C)にブロック図を示し説明する。
図13(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9638、スイッチSW1乃至SW3が、
図13(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0193】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633で充電された電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9638で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0194】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、発電手段は特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によってバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよく、発電手段を有さなくとも良い。
【0195】
また、上記表示部9631を具備していれば、
図13に示した形状のタブレット型端末に限定されない。
【実施例1】
【0196】
本実施例では、熱活性化遅延蛍光を示す物質として白金(II)オクタエチルポルフィリン(略称:PtOEP)を用いた本発明の一態様に当たる発光素子について説明する。本実施例で用いた物質を以下に示す。
【0197】
【化4】
【0198】
以下に、発光素子1、比較発光素子1の作製方法を示す。
【0199】
(発光素子1の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0200】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0201】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0202】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層111を形成した。その膜厚は、20nmとし、DBT3P−IIと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0203】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
【0204】
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)と、上記構造式(iv)で表される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)と、上記構造式(v)で表される白金(II)オクタエチルポルフィリン(略称:PtOEP)とを、重量比0.8:0.2:0.05(=2mDBTBPDBq−II:PCzPCA1:PtOEP)となるように40nm共蒸着し、発光層113を形成した。
【0205】
その後、発光層113上に2mDBTBPDBq−IIを膜厚20nmとなるように成膜し、さらに、上記構造式(vi)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nmとなるように成膜して、電子輸送層114を形成した。
【0206】
電子輸送層114を形成したら、その後、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚となるように蒸着し、電子注入層115を形成し、最後に、陰極として機能する第2の電極102として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0207】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0208】
(比較発光素子1の作製方法)
比較発光素子1は発光素子1における発光層113を、2mDBTBPDBq−IIと、PtOEPとを、重量比0.8:0.05(=2mDBTBPDBq−II:PtOEP)となるように40nm共蒸着することで作製した。その他の材料、構成はすべて発光素子1と同じである。
【0209】
発光素子1及び比較発光素子1を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0210】
発光素子1及び比較発光素子1の電流密度−輝度特性を
図15に、電圧−輝度特性を
図16に、輝度−電流効率特性を
図17に、輝度−パワー効率特性を
図18に、輝度−外部量子効率特性を
図19に、発光スペクトルを
図20に示す。
【0211】
図より、励起錯体からのエネルギー移動を利用した発光素子1の方が、利用しない比較発光素子1よりも良好な特性を示すことがわかった。具体的には外部量子効率が向上し、電圧が低下した結果、パワー効率や電流効率が大幅に上昇している。このことから、本発明の一態様である発光素子1の優位性が確認された。
【実施例2】
【0212】
本実施例では、熱活性化遅延蛍光を示す物質として亜鉛(II)オクタエチルポルフィリン(略称:ZnOEP)を用いた本発明の一態様に当たる発光素子について説明する。本実施例で用いた物質を以下に示す。
【化5】
【0213】
以下に、発光素子2、比較発光素子2の作製方法を示す。
【0214】
(発光素子2の作製方法)
まず、ガラス基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。ここで、第1の電極101は、発光素子の陽極として機能する電極である。
【0215】
次に、基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0216】
その後、10
−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0217】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、第1の電極101が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極101上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により上記構造式(i)で表される4,4’,4’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P−II)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層111を形成した。その膜厚は、20nmとし、DBT3P−IIと酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=DBT3P−II:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0218】
次に、正孔注入層111上に、上記構造式(ii)で表される4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層112を形成した。
【0219】
さらに、正孔輸送層112上に、上記構造式(iii)で表される2−[3’−(ジベンゾチオフェン−4−イル)ビフェニル−3−イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq−II)と、上記構造式(vii)で表されるN,N’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−N,N’−ジフェニル−スピロ−9,9’−ビフルオレン−2,7−ジアミン(略称:PCA2SF)と、上記構造式(viii)で表される亜鉛(II)オクタエチルポルフィリン(略称:ZnOEP)とを、重量比0.8:0.2:0.01(=2mDBTBPDBq−II:PCA2SF:ZnOEP)となるように40nm共蒸着し、発光層113を形成した。
【0220】
その後、発光層113上に2mDBTBPDBq−IIを膜厚20nmとなるように成膜し、さらに、上記構造式(vi)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)を10nmとなるように成膜して、電子輸送層114を形成した。
【0221】
電子輸送層114を形成したら、その後、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚となるように蒸着し、電子注入層115を形成し、最後に、陰極として機能する第2の電極102として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子2を作製した。
【0222】
なお、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0223】
(比較発光素子2の作製方法)
比較発光素子2は発光素子2における発光層113を、2mDBTBPDBq−IIと、ZnOEPとを、重量比1:0.01(=2mDBTBPDBq−II:ZnOEP)となるように40nm共蒸着することで作製した。その他の材料、構成はすべて発光素子2と同じである。
【0224】
発光素子2及び比較発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時に80℃にて1時間熱処理)を行った後、これら発光素子の初期特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0225】
発光素子2及び比較発光素子2の電流密度−輝度特性を
図21に、電圧−輝度特性を
図22に、輝度−電流効率特性を
図23に、輝度−パワー効率特性を
図24に、輝度−外部量子効率特性を
図25に、発光スペクトルを
図26に示す。
【0226】
図より、励起錯体からのエネルギー移動を利用した発光素子2の方が、利用しない比較発光素子2よりも良好な特性を示すことがわかった。具体的には外部量子効率が向上し、電圧が低下した結果、パワー効率や電流効率が大幅に上昇している。このことから、本発明の一態様である発光素子2の優位性が確認された。