(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239874
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】吊り支持具
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
E04B9/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-136622(P2013-136622)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10390(P2015-10390A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508370201
【氏名又は名称】岸 繁一
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】勝田 順志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和也
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
実開平06−006546(JP,U)
【文献】
特開2005−139636(JP,A)
【文献】
特開2008−308874(JP,A)
【文献】
特開平04−185850(JP,A)
【文献】
特開2005−325633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00
E04B 9/16
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う梁の下側フランジに掛け渡される横架材と、上記横架材の端部を上記下側フランジに着脱可能に固定する端部固定具と、上記横架材に移動可能に装着されるとともに任意の位置で上記横架材に固定される吊り棒支持部と、上記吊り棒支持部に支持される吊り棒部と、を備えており、
上記端部固定具は上記横架材に外嵌される枠部を有するとともに、この枠部には上記下側フランジの厚さよりも高さがある凹部が形成されており、上記吊り棒支持部は上記端部固定具の凹部と同一の凹部が形成された共用品とされることを特徴とする吊り支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の吊り支持具において、上記横架材はリップ溝型鋼から成り、開口を有する面が下に向けられて配置され、上記吊り棒支持部は上記横架材に外嵌される枠部を有しており、当該枠部の下側から上方にねじ込まれたボルトの先端が上記横架材の上記開口を通って当該横架材の裏面部に当接可能に設けられていることを特徴とする吊り支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キッチン吊り戸や天井扇などの重量物の吊り支持に用いられる吊り支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン吊り戸や天井扇などの重量物を天井から吊り支持する場合、天井板自体ではなく、天井裏に存在する梁(H型鋼)を利用して吊り下げることが行われる。従来においては、
図7(A)および
図7(B)に示すように、隣り合う梁101の上下フランジ間に下地木材102を打ち叩いて固定し、この下地木材102に釘で支持木103を固定している。そして、上記支持木103に形成した縦貫通孔に吊り棒である全ネジボルト104を挿入し、上記支持木103の上面と下面に設けたナットを締めて上記全ネジボルト104を上記支持木103から垂下固定している。
【0003】
また、特許文献1には、梁に取付けるための梁取付部と、該梁取付部から延出する延長部材と、該延長部材に連結された本体部と、を備えた天井吊金物であって、前記本体部は、前記梁と略平行な方向に延出し上下方向に対向して配置された一対の側壁と、該一対の側壁を連繋する連繋壁とを備え、前記一対の側壁の所定の位置には、前記側壁の内面よりも内側へ突出する弾性係合部が設けられた天井吊金物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4180419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記下地木材102を用いた従来の吊り支持構造では、上記下地木材102を打ち叩いて固定するなど、現場での作業負担が大きい。また、経年変化で上記下地木材102が痩せてがたつきが発生するおそれがある。さらに、キッチン吊り戸や天井扇などの吊り下げたい位置から上記全ネジボルト104がずれている場合には、上記作業をやり直す必要が生じる。
【0006】
また、上記特許文献1に記載の天井吊金物では、上記梁101間において上記全ネジボルト104を適切に垂下させることはできない。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑み、梁に下地木材を取り付ける必要がなく、梁と梁の間で吊り棒部を位置調整可能に垂下固定させることができる吊り支持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するために、隣り合う梁の下側フランジに掛け渡される横架材と、上記横架材の端部を上記下側フランジに着脱可能に固定する端部固定具と、上記横架材に移動可能に装着されるとともに任意の位置で上記横架材に固定される吊り棒支持部と、上記吊り棒支持部に支持される吊り棒部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、隣り合う梁の下側フランジに掛け渡される横架材の端部を下側フランジに着脱可能に固定する端部固定具を有するので、梁に下地木材を取り付けることなく、上記横架材を上記下側フランジに固定することができる。また、上記吊り棒部を上記吊り棒支持部によって上記横架材の任意の位置に垂下固定することができる。
【0010】
上記横架材はリップ溝型鋼から成り、開口を有する面が下に向けられて配置され、上記吊り棒支持部は上記横架材に外嵌される枠部を有しており、当該枠部の下側から上方にねじ込まれたボルトの先端が上記横架材の上記開口を通って当該横架材の裏面部に当接可能に設けられていてもよい。一般的なリップ溝型鋼が上記横架材として用いられる構造であるので、低コスト化が図れることになる。また、開口を有する面が上向だと下方に荷重がかかったときに溝が閉じる方向に変形をしてしまうが、開口を有する面が下向きだとこのような変形は生じない。しかし下向きにすれば、溝が開く方向に変形する。そこで13bのプレートで開くのを阻止している
【0011】
上記端部固定具は上記横架材に外嵌される枠部を有するとともに、この枠部には上記下側フランジの厚さよりも高さがある凹部が形成されていてもよい。これによれば、上記凹部に上記下側フランジの縁が入り込んだ状態で確実な固定が行えるようになる。
【0012】
上記吊り棒支持部は上記端部固定具の凹部と同一の凹部が形成された共用品とされていてもよく、これによれば、部品の共用化によるコスト低減が図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、梁に下地木材を取り付ける必要がなく、梁と梁の間の任意の位置に吊り棒部を垂下固定させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態にかかる吊り支持具が用いられた重量物支持の構造が示された説明図である。
【
図2】同図(A)は
図1に示された重量物支持の構造の概略の平面図であり、同図(B)は正面図である。
【
図3】本発明の実施形態にかかる吊り支持具における端部固定具の正面図である。
【
図4】
図3の端部固定具を下フランジ部に装着した状態を示した図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる吊り支持具における吊り棒支持部を示した図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は正面図、同図(C)は側面図である。
【
図6】
図5の吊り棒支持部を横架材に装着した状態を示した図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は側面図である。
【
図7】従来の吊り支持具が用いられた重量物支持の構造が示された説明図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1、
図2(A)および
図2(B)に示すように、例えば、キッチンに設けられるレンジフード90の横位置に垂壁91がこの発明の実施形態の吊り支持具1によって支持される。そして、上記垂壁91に対面吊り戸収納棚92が固定される。また、上記吊り支持具1は天井93の裏に位置している梁(H型鋼)95の下側フランジ95aに取り付けられている。上記吊り支持具1の吊り棒部14は例えば全ネジボルトからなり、これに螺合されたナット96によって支持される受け部97が上記垂壁91を支持する。また、上記天井93は鋼製天井パネル等からなり、この鋼製天井パネル上に天井キッチン吊戸棚用下地やリビング側吊戸収納用下地などが設けられる。
【0016】
上記吊り支持具1は、隣り合う梁95の下側フランジ95aに掛け渡される横架材11と、上記横架材11の端部を上記下側フランジ95aに着脱可能に固定する端部固定具12と、上記横架材11に移動可能に装着されるとともに任意の位置で上記横架材11に固定される吊り棒支持部13と、上記吊り棒支持部13に支持される吊り棒部14と、を備える。上記横架材11は、この実施形態ではリップ溝型鋼からなり、開口側が下に向けられて配置されている。
【0017】
上記端部固定具12は、例えば、
図3に示すように、所定幅に切断されたリップ溝型鋼からなる本体枠部12aの開口側に板部12bを有する。この板部12bは上記本体枠部12aのリップ部にカシメ部材12cによって固定されている。上記本体枠部12aの上板部裏面と上記板部12bの上面との間の高さは、上記横架材11の高さに上記下側フランジ95aの厚みを加算した高さよりも高い。
【0018】
また、上記板部12bの中央側には、
図4(A)にも示すように、上記横架材11の延設方向に並んで2個の螺子孔12d,12eが形成されている。上記螺子孔12dには、下からボルト3が螺合されている。また、上記本体枠部12aには、
図4(B)に示すように、上記螺子孔12dの上方を越えて中央側に入り込むように切り欠かれた凹部12fが形成されている。この凹部12fの高さは上記下側フランジ95aの厚さよりも高い。上記端部固定具12は、上記凹部12fを上記下側フランジ95aに向けて上記横架材11に外嵌されている。
【0019】
上記下側フランジ95aに上記横架材11の端部を載せた状態で上記端部固定具12の上記凹部12fを上記下側フランジ95aに差し込み、この状態で上記ボルト3を締めつけると、上記横架材11が上記下側フランジ95aに固定される。そして、その後にナット4を締めつけて上記ボルト3をロックする。また、上記横架材11の位置を梁95の延設方向に調節するときには、上記ボルト3やナット4を緩め、位置調節後に再度締めつければよい。なお、上記端部固定具12においては、上記螺子孔12eは上記吊り棒支持部13との共用化のために設けられており、不使用とされる。
【0020】
上記吊り棒支持部13は上記端部固定具12と同様の構成を有する。上記吊り棒支持部13は、
図5(A)、
図5(B)および
図5(C)に示すように、所定幅に切断されたリップ溝型鋼からなる本体枠部13aの開口側に板部13bを有する。この板部13bは上記本体枠部13aのリップ部にカシメ部材13cによって固定されている。上記本体枠部13aの上板部裏面と上記板部13bの上面との間の高さは、上記横架材11の高さに上記下側フランジ95aの厚みを加算した高さよりも高い。なお、開口を有する面が上向だと下方に荷重がかかったときに溝が閉じる方向に変形をしてしまうが、開口を有する面が下向きだとこのような変形は生じない。しかし下向きにすれば、溝が開く方向に変形する。上記板部13bを設けておくと、開く方向の変形を阻止できる。
【0021】
また、上記板部13bの中央側には、上記横架材11の延設方向に並んで2個の螺子孔13d,13eが形成されている。上記螺子孔13dには、下からボルト5が螺合されている。このボルト5は上記本体枠部13aの高さよりも長い。また、上記本体枠部13aには上記螺子孔13dの上方を越えて中央側に入り込むように切り欠かれた凹部13fが形成されている。この凹部13fの高さは上記下側フランジ95aの厚さよりも高い。上記吊り棒支持部13においては、上記凹部13fは上記端部固定具12との共用化のために設けられているので、この凹部13fの向きは問わない。
【0022】
上記螺子孔13eには、上記吊り棒部14の上端部が螺合されている。そして、上記吊り棒部14に螺合されているナット6を締めつけることで、上記吊り棒部14を上記吊り棒支持部13に固定することができる。なお、上記吊り棒部14に設けられている受け金の端部には上向きに屈曲された食い込み部が形成されており、この食い込み部が垂壁に食い込むようになっている。
【0023】
図6(A)および
図6(B)に示すように、上記吊り棒支持部13は、上記横架材11に移動可能に外嵌されている。そして、上記吊り棒支持部13を適当な場所に位置させ、上記ボルト5をねじ込むと、その先端が上記横架材11の上板部裏面に当たり、上記吊り棒支持部13が上記横架材11に固定される。この固定後には、ナット4を締めつけて上記ボルト5をロックする。また、上記吊り棒支持部13の位置を上記横架材11の延設方向に調節するときには、上記ボルト5やナット4を緩め、位置調節後に再度締めつければよい。
【0024】
上記吊り支持具1であれば、隣り合う梁95の下側フランジ95aに掛け渡される横架材11の端部を下側フランジ95aに着脱可能に固定する端部固定具12を有するので、梁95に下地木材を取り付けることなく、上記横架材11を上記下側フランジ95aに固定することができる。また、上記吊り棒支持部13によって上記吊り棒部14を上記横架材11の任意の位置に垂下固定することができる。すなわち、上記吊り棒部14の位置を、隣り合う梁95間において上記横架材11の横架方向および当該梁95の延設方向に自在に調節することができる。
【0025】
上記横架材11として一般的なリップ溝型鋼が用いられる構造であると、低コスト化が図れることになる。なお、リップ溝型鋼に限らず、溝鋼或いは角鋼管などを上記横架材11として用いることも可能である。
【0026】
上記端部固定具12の本体枠部12aに上記凹部12fが形成されていると、上記凹部12fに上記下側フランジ95aの縁が入り込んだ状態で確実な固定が行えるようになる。また、上記吊り棒支持部13と上記端部固定具12が共用品とされていると、部品の共用化によるコスト低減が図れる。
【0027】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 吊り支持具
11 横架材
12 端部固定具
12a 本体枠部
12b 板部
12c カシメ部材
12d 螺子孔
12e 螺子孔
13 吊り棒支持部
13a 本体枠部
13b 板部
13c カシメ部材
13d 螺子孔
13e 螺子孔