(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
n行m列(nは自然数、mは正の偶数)に配置される画素容量が行ごとにn本のゲート線に接続され、第1列から第m列のデータ線と、第2列から第m+1列のデータ線に1行ごとに交互に接続される液晶表示パネルに接続される、液晶表示ドライバであって、
共通電位を基準として正極側の電圧を出力し、負極側の電圧を出力しない(m+2)/2個の正極側増幅器と、前記共通電位を基準として負極側の電圧を出力し、正極側の電圧を出力しない(m+2)/2個の負極側増幅器と、階調試験時に前記(m+2)/2個の正極側増幅器と前記(m+2)/2個の負極側増幅器の出力電圧が出力されるm+2個のパッドとを備える、液晶表示ドライバ。
請求項1において、前記(m+2)/2個の正極側増幅器は、第1から第(m+2)/2までの正極側増幅器であり、前記(m+2)/2個の負極側増幅器は、第1から第(m+2)/2までの負極側増幅器であり、前記m+2個のパッドは第1から第m+2までのパッドであり、
前記液晶表示ドライバは、第1から第(m+2)/2までのクロスバースイッチをさらに備え、
第i(iは1以上(m+2)/2以下の整数)クロスバースイッチは、ストレート接続とクロス接続とを選択的に制御され、
前記ストレート接続では、第i正極側増幅器の出力を第2i−1パッドに接続し、第i負極側増幅器の出力を第2iパッドに接続し、
前記クロス接続では、第i正極側増幅器の出力を第2iパッドに接続し、第i負極側増幅器の出力を第2i−1パッドに接続する、
液晶表示ドライバ。
請求項2において、前記液晶表示ドライバは、正極側階調電圧発生回路と、負極側階調電圧発生回路と、第1から第m+2までのデータラッチと、第1から第m+2までの階調選択回路と、をさらに備え、
前記正極側階調電圧発生回路は、前記共通電位を基準として正極側の複数のアナログ電圧を出力して、第2i−1階調選択回路に供給し、前記負極側階調電圧発生回路は、前記共通電位を基準として負極側の複数のアナログ電圧を出力して、第2i階調選択回路に供給し、
前記第2i−1階調選択回路は、第2i−1データラッチに保持される値に基づいて、前記正極側の複数のアナログ電圧から、1つのアナログ電圧を選択して、前記第i正極側増幅器に供給し、
前記第2i階調選択回路は、第2iデータラッチに保持される値に基づいて、前記負極側の複数のアナログ電圧から、1つのアナログ電圧を選択して、前記第i負極側増幅器に供給する、
液晶表示ドライバ。
請求項3において、前記(m+2)/2個の正極側増幅器と、前記(m+2)/2個の負極側増幅器と、前記第1から第(m+2)/2までのクロスバースイッチと、前記正極側階調電圧発生回路と、前記負極側階調電圧発生回路と、前記第1から第m+2までのデータラッチと、前記第1から第m+2までの階調選択回路と、前記m+2個のパッドとが、単一の半導体基板上に形成された、液晶表示ドライバ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜6について本願の発明者が検討した結果、以下のような新たな課題があることがわかった。
【0007】
特許文献4〜6に記載される液晶表示ドライバによって駆動される液晶表示パネルのデータ線は、1ライン期間毎に、正極側と負極側のデータ駆動信号で交互に駆動される。1ライン期間は、例えば30フレーム/秒で1フレーム当たり1080ラインとすると、約30.9μsとなる。表示パネルの高精細化に伴い1ライン期間は短縮される傾向にあるため、正極側と負極側のデータ駆動信号で交互に駆動するための増幅器には高速性能が求められる傾向にある。一方、表示パネルの大型化に伴い、データ線の負荷容量は大きくなる傾向にあり、正負の切替え速度の向上を阻み、液晶表示ドライバの消費電力を大きくする要因となりつつある。
【0008】
特許文献1〜3に記載される液晶表示パネルでは、1本のデータ線によって駆動される画素容量が、1行ごとに交互に千鳥配置されているので、正極側と負極側のデータ駆動信号を1ライン期間毎に交互に入れ替える必要はない。しかし、画素容量が常に正極側または負極側のデータ駆動信号によって駆動されると、焼き付きの問題が発生することが知られているので、一般には、1フレーム期間毎に、正極側と負極側を入れ替えるように構成される。
【0009】
特許文献1と2には、データ線駆動回路を含む表示装置全体の具体的な動作は開示されていないが、特許文献3には、正極側と負極側を入れ替えるための回路及び動作が、同文献の
図2と第0420段落〜第0580段落に記載されている。
図2には3行3列の液晶表示パネルが例示され、1ライン当たり3個の画素容量は、4本のデータ線X1〜X4に1ラインごとに千鳥配置されている。3個のチャネル駆動部CR1〜CR3(データ線駆動回路に相当)が、6個のスイッチを介して4本のデータ線X1〜X4に接続されている。第1行のゲート線が活性化される期間には、奇数番目のチャネル駆動部CR1とCR3は正極性の階調電圧を出力して奇数番目のデータ線X1とX3を駆動し、偶数番目のチャネル駆動部CR2は負極性の階調電圧を出力して偶数番目のデータ線X2を駆動する。次の第2行のゲート線が活性化される期間には、奇数番目のチャネル駆動部CR1とCR3は負極性の階調電圧を出力して偶数番目のデータ線X2とX4を駆動し、偶数番目のチャネル駆動部CR2は負極性の階調電圧を出力して奇数番目のデータ線X3を駆動する。1つのフレーム走査期間中、各データ線は常に正極または負極のいずれか一方の極性の電圧で駆動される(第0540段落)。このとき、チャネル駆動部は、1ライン毎に正極性電圧と負極性電圧を交互に出力する(第0580段落)。チャネル駆動部は、同文献の
図3と第0030段落〜第0410段落に記載されるように、反転制御信号RVによって、正極性電圧と負極性電圧のどちらを出力するかを切替えられるように構成されている。
【0010】
本願の発明者は、データ線駆動回路(特許文献3ではチャネル駆動部)の出力極性を、1ライン毎に正極性と負極性の間で切り替える代わりに、特許文献4〜6に記載されるような液晶表示ドライバによって、特許文献1〜3に記載される液晶表示パネルを駆動する、液晶表示装置について検討した。特許文献4〜6に記載される液晶表示ドライバは、共通電位を基準として正極側と負極側のデータ駆動信号を交互に出力するために、正極側の増幅器と負極側の増幅器とを一組として備える。増幅器とデータ線との間を、スイッチを介して接続し適切に制御すれば、増幅器の極性を1ライン期間毎の切り替えるような高速の制御を不要とすることができる。
【0011】
しかしながら、データ線駆動回路の試験において、以下のような課題が発生することが明らかになった。まず、液晶表示パネルのサイズを画素数でn行m列とする。画素容量は、n行m列に配列される。このとき、特許文献1〜3に記載される液晶表示パネルでは、1本のデータ線によって駆動される画素容量が、1行ごとに交互に千鳥配置されているので、データ線の数は、m+1本となる。ここで、特許文献4〜6に記載される液晶表示ドライバを組合せるには、(m+1)/2組の増幅器を含むように構成すればよい。ところが、実際の液晶表示パネルのサイズは、フルハイビジョンの1920×1080、VGAの640×480など、mは偶数である。液晶表示ドライバは、必ず正極側の増幅器と負極側の増幅器とを一組として備える必要があるため、(m+2)/2組の増幅器を備えて構成される。このとき、駆動すべきデータ線の数はm+1本であるので、出力パッドはm+1個である。即ち、液晶表示ドライバは、正極側の増幅器(m+2)/2個と負極側の増幅器(m+2)/2個の合計m+2個の増幅器と、m+1個の出力パッドを備える。
【0012】
一方、データ線駆動回路の試験においては、上記増幅器の階調試験が不可欠であり、その階調試験に要するテスト時間が、テストコストを圧迫することが分かった。増幅器はディジタルで入力されるデータをアナログの電圧レベルに変換して出力する。階調試験とは、入力されるディジタルコードに対応して、適切なアナログ電圧レベルが出力されていることを確認する試験である。そのため、全てのディジタルコードを入力して出力電圧を測定するために、長いテスト時間を要し、全体のテスト時間に占める割合が大きく、テストコストに対する影響が大きい。
【0013】
上述のように、発明者が検討中の液晶表示ドライバは、合計m+2個の増幅器に対して、m+1個の出力パッドを備えるため、m+1個の出力パッドを全て使っても、m+2個の増幅器全てに対して同時に階調試験をすることができないことがわかった。そのため、m+2個の増幅器の階調試験を、2度に分けて行うこととなり、階調試験に要するテスト時間が2倍になり、テストコストに対する影響が極めて深刻であることがわかった。
【0014】
このような課題を解決するための手段を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る液晶表示ドライバは、n行m列(nは自然数、mは正の偶数)に配置される画素容量が行ごとにn本のゲート線に接続され、第1列から第m列のデータ線と、第2列から第m+1列のデータ線に1行ごとに交互に接続される液晶表示パネルに接続される、液晶表示ドライバであって、共通電位を基準として正極側の電圧を出力する(m+2)/2個の正極側増幅器と、前記共通電位を基準として負極側の電圧を出力する(m+2)/2個の負極側増幅器と、階調試験時に前記(m+2)/2個の正極側増幅器と前記(m+2)/2個の負極側増幅器の出力電圧が出力されるm+2個のパッドとを備える。
【発明の効果】
【0016】
前記一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0017】
すなわち、m+2個の増幅器の階調試験を、同時に並列して実施することができ、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0020】
〔1〕<増幅器と同数になるようにテストパッドを追加>
本願において開示される代表的な実施の形態に係る液晶表示ドライバ(100)は、n行m列に配置される画素容量(1)が行ごとにn本のゲート線(G1〜Gn)に接続され、第1列から第m列のデータ線(D1〜Dm)と、第2列から第m+1列のデータ線(D2〜Dm+1)に1行ごとに交互に接続される液晶表示パネル(200)に接続可能であり、以下のように構成される。ここで、nは自然数、mは正の偶数であり、以下、本明細書内で同様である。
【0021】
前記液晶表示ドライバは、共通電位を基準として正極側の電圧を出力する(m+2)/2個の正極側増幅器(101)と、前記共通電位を基準として負極側の電圧を出力する(m+2)/2個の負極側増幅器(102)と、階調試験時に前記(m+2)/2個の正極側増幅器と前記(m+2)/2個の負極側増幅器の出力電圧が出力されるm+2個のパッド(161)とを備える。
【0022】
これにより、m+2個の増幅器(101、102)の階調試験を、同時に並列して実施することができ、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えることができる。
【0023】
〔2〕<クロスバースイッチ>
項1において、前記(m+2)/2個の正極側増幅器は、第1から第(m+2)/2までの正極側増幅器であり、前記(m+2)/2個の負極側増幅器は、第1から第(m+2)/2までの負極側増幅器であり、前記m+2個のパッドは第1から第m+2までのパッドである。
【0024】
前記液晶表示ドライバは、第1から第(m+2)/2までのクロスバースイッチ(150、151)をさらに備える。
【0025】
第iクロスバースイッチは、ストレート接続とクロス接続とを選択的に制御される。前記ストレート接続では、第i正極側増幅器の出力を第2i−1パッドに接続し、第i負極側増幅器の出力を第2iパッドに接続し、前記クロス接続では、第i正極側増幅器の出力を第2iパッドに接続し、第i負極側増幅器の出力を第2i−1パッドに接続する。ここで、iは1以上(m+2)/2以下の整数であり、以下、本明細書内で同様である。
【0026】
これにより、駆動電圧の極性を簡単な回路で反転させることができ、液晶表示パネル(200)のドット反転駆動のための制御を単純化することができる。
【0027】
〔3〕<データラッチ>
項2において、前記液晶表示ドライバは、正極側階調電圧発生回路(141)と、負極側階調電圧発生回路(142)と、第1から第m+2までのデータラッチ(130、131、132)と、第1から第m+2までの階調選択回路(110、111、112)と、をさらに備える。
【0028】
前記正極側階調電圧発生回路(141)は、前記共通電位を基準として正極側の複数のアナログ電圧を出力して、第2i−1階調選択回路(111)に供給し、前記負極側階調電圧発生回路(142)は、前記共通電位を基準として負極側の複数のアナログ電圧を出力して、第2i階調選択回路(112)に供給する。
【0029】
前記第2i−1階調選択回路(111)は、第2i−1データラッチ(131)に保持される値に基づいて、前記正極側の複数のアナログ電圧から、1つのアナログ電圧を選択して、前記第i正極側増幅器(101)に供給する。
【0030】
前記第2i階調選択回路(112)は、第2iデータラッチ(132)に保持される値に基づいて、前記負極側の複数のアナログ電圧から、1つのアナログ電圧を選択して、前記第i負極側増幅器(102)に供給する。
【0031】
これにより、液晶表示パネル(200)のデータ線を駆動すべき電圧レベルの絶対値を、データラッチ(130)にセットすることにより、液晶画素に印加される電界の極性が自動的にドット反転制御されるように、データ線向けの信号レベルが制御され、パッド(161)から出力される。また、データラッチ(130)は、接続される液晶表示パネルの1ライン当たりの画素数mよりも2個多いm+2個備えられているので、m+2個の増幅器に対する階調試験用の入力データを並列してセットされることができる。
【0032】
〔4〕<ドット反転動作>
項3において、第1から第m+1までの前記パッドは、前記液晶表示パネルの第1列から第m+1列までの前記データ線にそれぞれ接続される。
【0033】
前記正極側増幅器の出力と前記負極側増幅器の出力が、偶数列と奇数列の前記データ線に、フィールド期間毎に交互に供給されるように、前記第1から第(m+2)/2までのクロスバースイッチが制御される。即ち、奇数フィールド期間または偶数フィールド期間うちの一方である第1フィールド期間に、奇数列の前記データ線に前記正極側増幅器の出力が供給され、偶数列の前記データ線に前記負極側増幅器の出力が供給される。他方の第2フィールド期間に、奇数列の前記データ線に前記負極側増幅器の出力が供給され、偶数列の前記データ線に前記正極側増幅器の出力が供給される。
【0034】
前記第1フィールド期間に、前記第1から前記第m+1データラッチに前記液晶表示パネルの奇数行に表示すべき画像データが入力され、前記第2から前記第m+2データラッチに前記液晶表示パネルの偶数行に表示すべき画像データが入力される。
【0035】
前記第2フィールド期間に、前記第2から前記第m+2データラッチに前記液晶表示パネルの奇数行に表示すべき画像データが入力され、前記第1から前記第m+1データラッチに前記液晶表示パネルの偶数行に表示すべき画像データが入力される。
【0036】
これにより、データ線の極性がフィールド走査ごとに反転するように制御することが可能な、液晶表示ドライバを提供することができる。データ線の極性反転の頻度がライン毎ではなくフィールド毎に抑えられるので、データ線の負荷容量が大きくても、消費電力を低く抑えることができ、また、正極側増幅器及び負極側増幅器それぞれに要求されるスルーレートも低く抑えることができる。
【0037】
〔5〕<階調試験>
項3において、前記液晶表示ドライバは、第1から第m+2までの電圧測定部(421)と、パターン入力部(430)とを備える試験装置(400)に接続可能に構成される。
【0038】
第1から第m+2までの前記パッドは、前記試験装置の第1から第m+2までの前記電圧測定部にそれぞれ接続され、第1から第m+2までの前記データラッチに、前記パターン入力部から入力コードを設定することができるように構成される。
【0039】
これにより、m+2個の増幅器の階調試験を、同時に並列して実施することができ、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えることができる。
【0040】
〔6〕<液晶表示ドライバIC>
項3に記載される液晶表示ドライバ(100)において、前記(m+2)/2個の正極側増幅器と、前記(m+2)/2個の負極側増幅器と、前記第1から第(m+2)/2までのクロスバースイッチと、前記正極側階調電圧発生回路と、前記負極側階調電圧発生回路と、前記第1から第m+2までのデータラッチと、前記第1から第m+2までの階調選択回路と、前記m+2個のパッドとが、単一の半導体基板上に形成される。
【0041】
これにより、1チップに集積化された液晶表示ドライバを提供することができる。
【0042】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0043】
〔実施形態1〕<液晶表示ドライバの構成>
実施形態1に係る液晶表示ドライバ100は、ドット反転駆動対応の液晶表示パネル200に接続されることができる。
図1は、本発明に係る液晶表示ドライバ100の構成を示すブロック図であり、
図2は、本発明に係る液晶表示ドライバ100に接続される、ドット反転駆動対応の液晶表示パネル200の主要部分の構成を表す回路図である。
【0044】
液晶表示パネル200は、n行m列に配置される画素容量1が、パストランジスタ2を介して、行ごとにn本のゲート線G1〜Gnに接続され、第1列から第m列のデータ線D1〜Dmと、第2列から第m+1列のデータ線D2〜Dm+1とに、1行ごとに交互に接続されている。1行目の画素容量1_1_1、1_1_2、〜1_1_m−1、1_1_mは、ゲート線G1によって制御されるパストランジスタ2_1_1、2_1_2、〜2_1_m−1、2_1_mを介して、データ線D1〜Dmに接続されている。2行目の画素容量1_2_1、1_2_2、〜1_2_m−1、1_2_mは、ゲート線G2によって制御されるパストランジスタ2_2_1、2_2_2、〜2_2_m−1、2_2_mを介して、データ線D2〜Dm+1に接続されている。3行目の画素容量1_3_1、1_3_2、〜1_3_m−1、1_3_mは、ゲート線G3によって制御されるパストランジスタ2_3_1、2_3_2、〜2_3_m−1、2_3_mを介して、データ線D1〜Dmに接続されている。以降は図示を省略するが、奇数行の画素容量1はデータ線D1〜Dmに、偶数行の画素容量1はデータ線D2〜Dm+1に、それぞれパストランジスタ2を介して接続されている。同じ列に位置する画素容量が1行ごとに、その行を挟む両側のデータ線に交互に接続されている。第1列の画素容量1_1_1、1_2_1、1_3_1、・・・は、交互にデータ線D1とD2に交互に接続され、第2列の画素容量1_1_2、1_2_2、1_3_2、・・・は、交互にデータ線D2とD3に交互に接続される。奇数列のデータ線D1、D3、・・・Dm+1と偶数列のデータ線D2、D4、・・・Dmを、共通電位を基準として正極側と負極側の信号で駆動することにより、画素容量1は、上下・左右で隣接する画素容量どうしが、互いに逆極性の信号で駆動され、ドット反転駆動となる。
【0045】
液晶表示ドライバ100は、共通電位を基準として正極側の電圧を出力する(m+2)/2個の正極側増幅器101_1〜101_m+1と、前記共通電位を基準として負極側の電圧を出力する(m+2)/2個の負極側増幅器102_2〜102_m+2と、階調試験時に正極側増幅器101_1〜101_m+1と負極側増幅器102_2〜102_m+2の出力電圧が出力されるm+2個のパッド161_1〜161_m+2とを備える。
【0046】
これにより、m+2個の増幅器101_1〜101_m+1と102_2〜102_m+2の階調試験を、同時に並列して実施することができ、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えることができる。
【0047】
液晶表示ドライバ100は、ストレート接続とクロス接続とを選択的に制御される、クロスバースイッチ150を備える。i番目のクロスバースイッチ151_iは、正極側増幅器101_2i−1と負極側増幅器102_2iとを1組として、その出力と対応する2個のパッド161_2i−1とパッド161_2iとの接続を切替える。iは1以上(m+2)/2以下の整数である。ストレート接続では、正極側増幅器101_2i−1の出力をパッド161_2i−1に接続し、負極側増幅器102_2iの出力をパッド161_2iに接続する。クロス接続では、正極側増幅器101_2i−1の出力をパッド161_2iに接続し、負極側増幅器102_2iの出力をパッド161_2i−1に接続する。
【0048】
これにより、データ線D1〜Dm+1を駆動する駆動電圧の極性を簡単な回路で反転させることができ、液晶表示パネル200のドット反転駆動のための制御を単純化することができる。
【0049】
液晶表示ドライバ100は、正極側階調電圧発生回路141と、負極側階調電圧発生回路142と、第1から第m+2までのデータラッチ130と、レベルシフト回路120と、第1から第m+2までの階調選択回路110とをさらに備える。データラッチ130とレベルシフト回路121と階調選択回路110は、正極側増幅器101_1〜101_m+1と負極側増幅器102_2〜102_m+2のそれぞれに対応して1個ずつ設けられる。正極側増幅器101_1〜101_m+1に対応して、データラッチ131_1〜131_m+1と、レベルシフト回路121_1〜121_m+1と、階調選択回路111_1〜111_m+1が設けられ、負極側増幅器102_2〜102_m+2に対応して、データラッチ132_2〜132_m+2と、レベルシフト回路122_2〜122_m+2と、階調選択回路112_2〜112_m+2が設けられている。
【0050】
正極側階調電圧発生回路141は、共通電位を基準として正極側の複数のアナログ電圧を出力して、階調選択回路111_1〜111_m+1に供給する。負極側階調電圧発生回路142は、共通電位を基準として負極側の複数のアナログ電圧を出力して、階調選択回路112_2〜112_m+2に供給する。特に制限されないが、共通電位は、例えばグラウンドレベルである0Vであり、表示すべき画像データの階調にしたがって、例えば256階調とすると、正極側階調電圧発生回路141は256通りの正極側電圧レベルを出力し、負極側階調電圧発生回路142は、256通りの負極側電圧レベルを出力する。階調電圧発生回路は、例えば、出力すべき電圧の最大値と最小値を含む範囲の電圧を持つ電源を、階調の数に対応する数の抵抗を直列接続することによって構成され、直列抵抗による分圧電圧によって、複数のアナログ電圧を発生させる。
【0051】
図5は、ドット反転駆動方式において、画像データに対応するコードと、正極側と負極側のデータ線の駆動電圧との関係の一例を示す、特性図である。横軸に画像データに対応するコードが16進表記で示され、縦軸にはデータ線D1〜Dm+1の駆動電圧が示される。共通電位0Vを挟んで、正極側と負極側の特性が示される。コード0x00(16進で00)のとき、データ線は例えば約0.2Vで駆動されて黒色(最低輝度)が表示され、コード0xFF(16進でFF)のときデータ線は例えば約4Vで駆動されて白色(最大輝度)が表示される。共通電位0Vを挟んで正極側と負極側で、特性は対称である。即ち、同じコードに対して正極側でも負極側でも絶対値の等しい電圧が駆動電圧でとなる。256階調の表示のために、コードは8ビットであり、正極側階調電圧発生回路141は0.2Vから4Vの間を256分割した256通りのアナログ電圧を出力し、負極側階調電圧発生回路142は-0.2Vから-4Vの間を256分割した256通りのアナログ電圧を出力する。図示されるように、コードと駆動電圧の関係は、必ずしも直線で示される比例関係にはなく、非線形の曲線で表される。液晶の物理特性やγ補正係数を加味して規定される。出力すべき電圧の最大値±4Vと最小値0.2V、階調数の256やそれに対するコードの割り付け方法は、全て一例であり、特にこれに制限されるものではない。
【0052】
階調選択回路111_1〜111_m+1は、データラッチ131_1〜131_m+1に保持される値(コード)に基づいて、正極側階調電圧発生回路141が発生する正極側の複数のアナログ電圧(上述の例では0.2Vから4Vの間を256分割した256通りのアナログ電圧)から、1つのアナログ電圧を選択して、正極側増幅器101_1〜101_m+1に供給する。階調選択回路112_2〜112_m+2は、データラッチ132_2〜132_m+2に保持される値(コード)に基づいて、負極側階調電圧発生回路142が発生する負極側の複数のアナログ電圧(上述の例では-0.2Vから-4Vの間を256分割した256通りのアナログ電圧)から、1つのアナログ電圧を選択して、負極側増幅器102_2〜102_m+2に供給する。レベルシフト回路121_1〜121_m+1と122_2〜122_m+2は、データラッチ131_1〜131_m+1と132_2〜132_m+2の出力電圧レベルを、階調選択回路111_1〜111_m+1と112_2〜112_m+2を制御するのに適する電圧レベルに変換する。
【0053】
これにより、液晶表示パネル200のデータ線D1〜Dm+1を駆動すべき電圧レベルの絶対値を、ディジタル値でデータラッチ130にセットすることにより、液晶画素に印加される電界の極性が自動的にドット反転制御されるように、データ線向けの信号レベルが制御され、パッド161から出力される。また、データラッチ130は、接続される液晶表示パネルの1ライン当たりの画素数mよりも2個多いm+2個備えられているので、正極側増幅器101_1〜101_m+1と負極側増幅器102_2〜102_m+2の合計m+2個の増幅器101、102に対する階調試験用の入力データを、並列してセットされることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態にかかる液晶表示ドライバ100は、液晶表示パネル200のデータ線D1〜Dm+1を駆動するためのパッド161_1〜161_m+1に加えて、パッド161_m+2を備える。また、試験対象の増幅器の数と同じ合計m+2個のデータラッチを備える。このため、正極側増幅器101_1〜101_m+1と負極側増幅器102_2〜102_m+2の合計m+2個の増幅器の階調試験を、同時に並列して実施することができる。
【0055】
液晶表示ドライバ100は、特に制限されないが、例えば、公知のCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor field effect transistor)LSI(Large Scale Integrated circuit)の製造技術を用いて、シリコンなどの単一半導体基板上に形成される。これにより、1チップに集積化された液晶表示ドライバを提供することができる。
【0056】
〔実施形態2〕<ドット反転駆動動作>
図3は、本発明に係る液晶表示ドライバ100を用いた、液晶表示パネル200のドット反転駆動について説明するためのブロック図である。
【0057】
液晶表示ドライバ100は、
図1に示した液晶表示ドライバ100に加えてさらに、ホストインターフェース170を備え、接続されるホストプロセッサ300との間で、通信を行う。液晶表示パネル200に表示すべき画像の画像データは、ホストプロセッサ300から送信され、液晶表示ドライバ100によってホストインターフェース170で受信され、データラッチ130にセットされる。液晶表示パネル200は、各データ線D1〜Dm+1に対応するパッド261_1〜261_m+1を備えている。液晶表示ドライバ100のパッド161_1〜161_m+1は、液晶表示パネル200のパッド261_1〜261_m+1と、特に制限されないが、例えば、突起電極(バンプ電極)と異方性導電膜を介して電気的に接続される。液晶表示パネル200には、液晶表示ドライバ100のパッド161_m+2に対応して、さらに1個のパッド261_m+2を設け、液晶表示ドライバ100のパッド161_m+2と接続するように構成しても良い。これにより、構造上の対称性が保たれ、応力集中などの力学的な問題の発生を緩和することができる。
【0058】
図6は、ドット反転駆動方式において、液晶表示パネルの画素に対する正極側と負極側の駆動電圧の印加シーケンスの一例を示す、説明図である。n行m列に配置される画素容量1に、データ線D1〜Dm+1を介して印加される電界の極性を、正極側「+」記号と負極側「−」記号で表している。(A)と(B)にはそれぞれ奇数フィールドと偶数フィールドにおける、印加の状態が示される。ドット反転駆動方式では、上下左右で隣接する画素の間で極性が反転するように制御される。さらに、奇数フィールドと偶数フィールドでも反転するように制御される。奇数フィールド、偶数フィールドは、単に一例に過ぎず、同じ液晶に同一方向の極性が継続的に印加され続けることがないように、時間的に分散されていればよい。焼き付きと呼ばれる問題の発生を防止するためである。
【0059】
図6に示されるシーケンスでドット反転駆動するために、奇数フィールドでは、クロスバースイッチ150をストレート接続にして、奇数番目のデータ線D1、D3、…Dm−1、Dm+1が正極側増幅器101_1〜101_m+1で駆動され、偶数番目のデータ線D2、D4、…Dmが負極側増幅器102_2〜102_mで駆動されるように制御する。偶数フィールドでは、クロスバースイッチ150をクロス接続にして、奇数番目のデータ線D1、D3、…Dm−1、Dm+1が負極側増幅器102_2〜102_m+2で駆動され、偶数番目のデータ線D2、D4、…Dmが正極側増幅器101_1〜101_m+1で駆動されるように制御する。
【0060】
このように制御することにより、それぞれのデータ線においては、1フィールド期間内では駆動電圧の極性は反転しない。奇数番目のデータ線D1、D3、…Dm−1、Dm+1は、奇数フィールドの1フィールド期間、常に正極側の駆動電圧で駆動され、次の1フィールド(偶数フィールド)では常に負極側の駆動電圧で駆動される。偶数番目のデータ線も同様に、1フィールドごとに駆動電圧の極性が反転するが、1フィールド期間内での反転はない。このため、データ線の駆動電圧の極性を1ライン期間ごとに反転させる、例えば特許文献4〜6に開示されるような制御方式に比べて、データ線の充放電に要する消費電力を大幅に低減することができる。また、増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2のスルーレートに対する要求仕様も緩和される。
【0061】
〔実施形態3〕<増幅器の階調試験>
図4は、本発明に係る液晶表示ドライバ100に対する階調試験について説明するためのブロック図である。液晶表示ドライバ100は、階調試験を含む出荷試験のため、試験装置400に接続される。試験装置400は、パターン入力部430と、試験対象の液晶表示ドライバ100に搭載される増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2と同じ数の電圧測定部421_1〜421_m+2と、メモリ440と、判定部450とを備える。試験装置400のパターン入力部430からの出力は、試験対象の液晶表示ドライバ100の、例えば、ホストインターフェース170に接続される。データラッチ131_1〜131_m+1と132_2〜132_m+2に所定のコードをセットすることができれば、必ずしもホストインターフェース170を介してデータをセットする必要はない。例えば、液晶表示ドライバ100の内部で自動生成してもよい。
【0062】
液晶表示ドライバ100のパッド161_1〜161_m+2は、階調試験の際に、電圧測定部421_1〜421_m+2に電気的に接続される。例えば、試験装置400に探針411_1〜411_m+2を設け、パッド161_1〜161_m+2に接触させて電気的に接続する。
【0063】
液晶表示ドライバ100を制御して、データラッチ131_1〜131_m+1と132_2〜132_m+2にセットされたコードに従って、増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2から対応するアナログ電圧を出力させ、その出力電圧を電圧測定部421_1〜421_m+2で測定する。測定された出力電圧の値は、一旦メモリ440に格納された後、判定部450に送られる。判定部450では、出力されたアナログ電圧が、セットされたコードに対応する期待値からの許容範囲を外れる場合には、不良品と判定される。
【0064】
この測定方法により、m+2個の増幅器の階調試験を、同時に並列して実施することができ、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えることができる。
【0065】
図7は、本発明に係る液晶表示ドライバ100に対する階調試験S1の一例について説明するためのフローチャートである。特に制限されないが、例えば、階調試験S1は、液晶表示ドライバ100に対して出荷前に行われる、良品/不良品の選別試験の一試験項目である。試験開始から他の試験項目を経て階調試験S1に至り、「不良」の判定結果が出力(S9)されれば、試験を終了する。不良でない場合には他の試験項目に進む。階調試験S1ではまず、入力コードを初期化し(S11)、データラッチ131_1〜131_m+1と132_2〜132_m+2にセットする(S12)。次に、増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2からの出力電圧を電圧測定部421_1〜421_m+2で測定し(S13)、測定された出力電圧の値は、特に制限されないが、例えば、試験装置400に搭載されるメモリ440に格納される。未測定のコードに変更して(S14,S11,S12),電圧測定(S13)を繰り返し、すべてのコードについて測定が完了して測定値がメモリ440に格納された後、メモリ440に格納された測定値が、各コードに対応する期待値から許容される範囲内にあるか否かの判定を行う(S15)。許容範囲内にない出力電圧が1つでもあれば、「不良」の判定結果を出力する(S9)。
【0066】
階調試験では、原則として、全ての増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2に対して、全てのコード、即ち、8ビットなら256通りのコードを入力して、電圧測定を実施する。データのセットと電圧測定を階調の数だけ繰り返す必要があるため、長い時間を要する。特に階調が増えると、階調数が増えて繰り返し回数が増えるだけでなく、1階調当たりの電圧値の分解能が細かくなるので、電圧測定のための安定待ち時間(セットリングタイム)を長くする必要があり、階調試験に要するテスト時間は、さらに長くなる。
【0067】
階調試験に要するテスト時間が、液晶表示ドライバ100に対して出荷前に行われる、良品/不良品の選別試験全体のテスト時間に占める割合が、十分に短い場合には、全ての増幅器101_1〜101_m+1、102_2〜102_m+2に対して同時並行に試験する必要性は乏しく、実動作に必要なパッドの数から許される範囲内で、複数回に分けて試験を実施すればよいが、上述のように階調試験に要するテスト時間が長くなり、全体に占める割合が大きくなった場合には、本実施形態に示す階調試験は、階調試験に要するテスト時間を最小限に留め、テストコストの増加を抑えるために有効である。
【0068】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0069】
例えば、液晶表示ドライバ100には、ホストインターフェース170を設けて、データラッチ130に、画像データやテストコードを入力する例を示したが、他の方法によって伝送してもよい。ホストプロセッサとの間は圧縮されたデータで通信し、液晶表示ドライバ100の内部で伸長・復元した画像データをデータラッチに入力してもよい。試験時には、例えばスキャンチェーンを介して入力してもよく、一方、液晶表示ドライバ100の内部にテストコード生成回路を設けてもよい。
【0070】
また、階調試験では、全てのコード、即ち、8ビットなら256通りのコードについて、電圧測定を実施するのが原則であるが、経験則によって間引くことにより、試験時間を短縮してもよい。