特許第6239901号(P6239901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239901
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 11/36 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G05B11/36 507F
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-173016(P2013-173016)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-41315(P2015-41315A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−168843(JP,A)
【文献】 特開2000−234550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/00−11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信により任意設定できる操作量下限値と操作量上限値のうちいずれか一方を示す第1の操作量リミット値を記憶する操作量リミット値記憶手段と、
前記第1の操作量リミット値の通常値である第2の操作量リミット値を記憶する通常リミット値記憶手段と、
操作量MVを算出する制御演算手段と、
この制御演算手段で算出された操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量上限値以下の値に制限する上限リミット処理と、前記操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量下限値以上の値に制限する下限リミット処理のうちいずれか一方を行なうリミット処理手段と、
このリミット処理された操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、
規定時間TRを記憶する規定時間記憶手段と、
上位側の装置からの通信により前記第1の操作量リミット値が更新された後の経過時間を、前記通信により前記第1の操作量リミット値が更新される度に計測する経過時間計測手段と、
前記経過時間が前記規定時間TRに到達したときに、前記通常リミット値記憶手段に記憶されている第2の操作量リミット値を、新たな第1の操作量リミット値として前記操作量リミット値記憶手段に記憶させる自動復帰手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、
さらに、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間に基づく参照時間TXmを記録する参照時間記録手段と、
前記参照時間TXmの1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の制御装置において、
前記参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間の平均時間を前記参照時間TXmとするか、あるいは計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間のうちの最長時間を前記参照時間TXmとすることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の制御装置において、
前記規定時間記憶手段は、前記上位側の装置から設定すべき第1の操作量リミット値が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして記憶することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
通信により任意設定できる操作量上限値OH1を記憶する操作量上限値記憶手段と、
通信により任意設定できる操作量下限値OL1を記憶する操作量下限値記憶手段と、
前記操作量上限値OH1の通常値である操作量上限値OH2を記憶する通常上限値記憶手段と、
前記操作量下限値OL1の通常値である操作量下限値OL2を記憶する通常下限値記憶手段と、
操作量MVを算出する制御演算手段と、
この制御演算手段で算出された操作量MVを前記操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう上限リミット処理手段と、
前記制御演算手段で算出された操作量MVを前記操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう下限リミット処理手段と、
上下限リミット処理された操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、
規定時間TRを記憶する規定時間記憶手段と、
上位側の装置からの通信により前記操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを、前記通信により前記操作量上限値OH1が更新される度に計測する上限経過時間計測手段と、
上位側の装置からの通信により前記操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを、前記通信により前記操作量下限値OL1が更新される度に計測する下限経過時間計測手段と、
前記経過時間THが前記規定時間TRに到達したときに、前記通常上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として前記操作量上限値記憶手段に記憶させる上限自動復帰手段と、
前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達したときに、前記通常下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として前記操作量下限値記憶手段に記憶させる下限自動復帰手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5記載の制御装置において、
さらに、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間THに基づく参照時間THmを記録する上限参照時間記録手段と、
計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間TLに基づく参照時間TLmを記録する下限参照時間記録手段と、
前記参照時間THmとTLmの少なくとも一方に基づく値の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項6記載の制御装置において、
前記上限参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THの平均時間を前記参照時間THmとするか、あるいは計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THのうちの最長時間を前記参照時間THmとし、
前記下限参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLの平均時間を前記参照時間TLmとするか、あるいは計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLのうちの最長時間を前記参照時間TLmとし、
前記規定時間設定手段は、前記参照時間THmとTLmのうちいずれか長い方の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとするか、あるいは前記参照時間THmとTLmの平均時間を新たな規定時間TRとすることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項5記載の制御装置において、
前記規定時間記憶手段は、前記上位側の装置から設定すべき操作量上限値OH1と操作量下限値OL1のうち少なくとも一方が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして記憶することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
操作量リミット値記憶手段に記憶されている、操作量下限値と操作量上限値のうちいずれか一方を示す第1の操作量リミット値を上位側の装置からの通信により更新する更新ステップと、
操作量MVを算出する制御演算ステップと、
この制御演算ステップで算出した操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量上限値以下の値に制限する上限リミット処理と、前記操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量下限値以上の値に制限する下限リミット処理のうちいずれか一方を行なうリミット処理ステップと、
このリミット処理した操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、
前記上位側の装置からの通信により前記第1の操作量リミット値が更新された後の経過時間を、前記通信により前記第1の操作量リミット値が更新される度に計測する経過時間計測ステップと、
前記経過時間が規定時間記憶手段に記憶されている規定時間TRに到達したときに、前記第1の操作量リミット値の通常値として通常リミット値記憶手段に記憶されている第2の操作量リミット値を、新たな第1の操作量リミット値として前記操作量リミット値記憶手段に記憶させる自動復帰ステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項9記載の制御方法において、
さらに、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間に基づく参照時間TXmを記録する参照時間記録ステップと、
前記参照時間TXmの1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定ステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10記載の制御方法において、
前記参照時間記録ステップは、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間の平均時間を前記参照時間TXmとするか、あるいは計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間のうちの最長時間を前記参照時間TXmとすることを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項9記載の制御方法において、
さらに、前記上位側の装置から設定すべき第1の操作量リミット値が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定ステップを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
操作量上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH1を上位側の装置からの通信により更新する操作量上限値更新ステップと、
操作量下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL1を前記上位側の装置からの通信により更新する操作量下限値更新ステップと、
操作量MVを算出する制御演算ステップと、
この制御演算ステップで算出した操作量MVを前記操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう上限リミット処理ステップと、
前記制御演算ステップで算出した操作量MVを前記操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう下限リミット処理ステップと、
上下限リミット処理した操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、
上位側の装置からの通信により前記操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを、前記通信により前記操作量上限値OH1が更新される度に計測する上限経過時間計測ステップと、
上位側の装置からの通信により前記操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを、前記通信により前記操作量下限値OL1が更新される度に計測する下限経過時間計測ステップと、
前記経過時間THが規定時間記憶手段に記憶されている規定時間TRに到達したときに、前記操作量上限値OH1の通常値として通常上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として前記操作量上限値記憶手段に記憶させる上限自動復帰ステップと、
前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達したときに、前記操作量下限値OL1の通常値として通常下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として前記操作量下限値記憶手段に記憶させる下限自動復帰ステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項13記載の制御方法において、
さらに、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間THに基づく参照時間THmを記録する上限参照時間記録ステップと、
計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間TLに基づく参照時間TLmを記録する下限参照時間記録ステップと、
前記参照時間THmとTLmの少なくとも一方に基づく値の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定ステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項14記載の制御方法において、
前記上限参照時間記録ステップは、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THの平均時間を前記参照時間THmとするか、あるいは計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THのうちの最長時間を前記参照時間THmとし、
前記下限参照時間記録ステップは、計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLの平均時間を前記参照時間TLmとするか、あるいは計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLのうちの最長時間を前記参照時間TLmとし、
前記規定時間設定ステップは、前記参照時間THmとTLmのうちいずれか長い方の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとするか、あるいは前記参照時間THmとTLmの平均時間を新たな規定時間TRとすることを特徴とする制御方法。
【請求項16】
請求項13記載の制御方法において、
さらに、前記上位側の装置から設定すべき操作量上限値OH1と操作量下限値OL1のうち少なくとも一方が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定ステップを含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作量上限値、操作量下限値の少なくとも一方を上位側の装置から通信により設定操作する制御ソリューションが行なわれる場合に、上位側の装置と組み合わせて使用される下位側の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題に起因する法改正などに伴い、工場や生産ラインのエネルギー使用量管理が強く求められている。工場内の加熱装置や空調機器は特にエネルギー使用量の大きな設備装置であるため、エネルギー使用量の上限を、本来備える最大量よりも低く抑えるように管理されることが多い。例えば電力を使用する設備装置では、電力デマンド管理システムからの指示により、特定の電力使用量以内に制限する運用が行なわれている。
【0003】
特に複数の電気ヒータを備える加熱装置では、立ち上げ時(複数の電気ヒータが設置されている領域の一斉昇温時)に同時供給される総電力を抑制するために、電力総和抑制制御(特許文献1参照)などが提案されている。図8は特許文献1に開示された加熱装置の構成を示すブロック図である。加熱装置は、被加熱物を加熱するための加熱処理炉100と、加熱処理炉100の内部に設置された複数の制御アクチュエータであるヒータH1〜H4と、それぞれヒータH1〜H4によって加熱される領域の温度を測定する複数の温度センサS1〜S4と、ヒータH1〜H4に出力する操作量MV1〜MV4を算出する電力総和抑制制御装置の上位側制御部101と、電力総和抑制制御装置の下位側制御部102と、下位側制御部102から出力された操作量MV1〜MV4に応じた電力をそれぞれヒータH1〜H4に供給する電力調整器103−1〜103−4とから構成される。
【0004】
電力総和抑制制御装置の上位側制御部101は、電力を管理する電力デマンド管理システムのコンピュータである上位PC104から、ヒータH1〜H4の電力使用量を規定する割当総電力PWの情報を受信し、各ヒータH1〜H4の使用電力の総和である使用電力総量TWを算出して、この使用電力総量TWが割当総電力PWを超えないように各制御ループの操作量上限値OH1_1〜OH1_4を算出する。
【0005】
電力総和抑制制御装置の下位側制御部102は、複数の制御ループRi(i=1〜nであり、制御ループの個数nは図8の例ではn=4)を形成する温調計C1〜C4により構成される。各温調計C1〜C4は、それぞれ例えばPID制御演算により操作量MV1〜MV4を算出し、操作量MV1〜MV4を操作量上限値OH1_1〜OH1_4以下に制限する上限リミット処理を実行して、上限処理後の操作量MV1〜MV4を対応する制御ループの電力調整器103−1〜103−4に出力する。こうして、温調計C1〜C4の操作量上限値OH1_1〜OH1_4を操作することで、総電力抑制を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−048533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された電力総和抑制制御では、下位側制御部102として通常の温調計を採用することができる。つまり、装置メーカにとっては、扱いやすい計装方式である。また、操作量上限値OHに限らず、操作量下限値OLを上位側制御部101から下位側制御部102に適宜設定操作することで、さらに多くの特殊な制御を実現できるようになる。
【0008】
ところで、上位側制御部101から下位側制御部102に対しては、通信機能により操作量下限値OLおよび操作量上限値OHを送ることになる。この場合、上位側制御部101から操作量下限値OLや操作量上限値OHの値として通常より大きい値または通常より小さい値を一時的に送った後で、通常の値に戻す前に通信機能に障害が発生すると、操作量下限値OLや操作量上限値OHが通常より大きい値または通常より小さい値に長時間固定されることになる。このような想定外の固定により、制御に大きな不備あるいは不具合が発生し得る。
【0009】
例えば、特許文献1に開示された電力総和抑制制御の操作量上限値OH算出アルゴリズムが上位側制御部101で実行され、算出された操作量上限値OHが下位側制御部102(温調計)に通信機能を介して逐次設定されるとする。このとき上位側制御部101と温調計とを結ぶ通信機能の障害によって操作量上限値OHが想定外に長時間固定された場合の問題点を図9(A)、図9(B)を用いて説明する。図9(A)は制御量PV(図8の例では温度計測値)の変化を示し、図9(B)は操作量MVの変化を示している。
【0010】
昇温要求の無いPID制御ループの温調計(すなわち、図9(A)のように温度設定値SPが300℃から150℃に変更された温調計)に対して、電力配分の都合により、時刻t1において操作量上限値OHが100%から20%に一時的に変更されたとする。ここで、操作量上限値OH=20%が設定された状態で通信機能に障害が発生すると、本来であれば点線130で示すように操作量上限値OH=100%に復帰させる必要があるにも拘わらず、温調計には操作量上限値OH=20%が設定されたままになる。そして、通信障害が解決しない状態のまま、この温調計の温度設定値SPが時刻t2において150℃から300℃に変更され昇温が開始すると、操作量上限値OH=20%が設定されたままなので、時刻t2以降において深刻な昇温能力不足が発生し、加熱装置の稼働状態としては大きな不具合に繋がる。
【0011】
あるいは、例えば何らかの特殊アルゴリズムが上位側制御部101で実行され、操作量下限値OLが下位側制御部102(温調計)に通信機能を介して逐次設定されるとする。このとき上位側制御部101と温調計とを結ぶ通信機能の障害によって操作量下限値OLが想定外に長時間固定された場合の問題点を図10(A)、図10(B)を用いて説明する。図10(A)は制御量PV(温度計測値)の変化を示し、図10(B)は操作量MVの変化を示している。
【0012】
時刻t3において温度設定値SPが150℃から300℃に変更され、これに応じて強制的に急速温度上昇させるために、対象になる温調計に対して、時刻t4において操作量下限値OLが0%から80%に一時的に変更されたとする。ここで、操作量下限値OL=80%が設定された状態で通信機能に障害が発生すると、本来であれば点線140で示すように操作量下限値OL=0%に復帰させる必要があるにも拘わらず、温調計には操作量下限値OL=80%が設定されたままになる。そして、通信障害が解決しない状態のまま、この温調計の制御量PVが急速上昇し高温維持状態に移行すべき時刻t5の段階に至っても、操作量下限値OL=80%が設定されたままなので、時刻t5以降において保温状態に移行できずに、危険な過剰昇温が発生することになる。
【0013】
このように、下位側の装置で用いる操作量下限値OLや操作量上限値OHを適宜設定操作する特殊処理技術を、上位側の装置と下位側の装置との間の通信機能によって実現する場合、通信機能の障害による操作量下限値OLや操作量上限値OHの想定外の固定が、深刻あるいは危険な不具合に結び付きやすいという問題点があった。特許文献1に開示された電力総和抑制制御は操作量下限値OLおよび操作量上限値OHを利用した制御ソリューションの代表的な事例であり、上記の問題点は、このタイプの制御ソリューションに共通する問題点である。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、操作量上限値、操作量下限値の少なくとも一方を上位側の装置から通信により設定操作する制御ソリューションが行なわれる場合において、通信機能に障害が発生したときの不具合を緩和することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の制御装置は、通信により任意設定できる操作量下限値と操作量上限値のうちいずれか一方を示す第1の操作量リミット値を記憶する操作量リミット値記憶手段と、前記第1の操作量リミット値の通常値である第2の操作量リミット値を記憶する通常リミット値記憶手段と、操作量MVを算出する制御演算手段と、この制御演算手段で算出された操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量上限値以下の値に制限する上限リミット処理と、前記操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量下限値以上の値に制限する下限リミット処理のうちいずれか一方を行なうリミット処理手段と、このリミット処理された操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、規定時間TRを記憶する規定時間記憶手段と、上位側の装置からの通信により前記第1の操作量リミット値が更新された後の経過時間を、前記通信により前記第1の操作量リミット値が更新される度に計測する経過時間計測手段と、前記経過時間が前記規定時間TRに到達したときに、前記通常リミット値記憶手段に記憶されている第2の操作量リミット値を、新たな第1の操作量リミット値として前記操作量リミット値記憶手段に記憶させる自動復帰手段とを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の制御装置の1構成例は、さらに、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間に基づく参照時間TXmを記録する参照時間記録手段と、前記参照時間TXmの1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間の平均時間を前記参照時間TXmとするか、あるいは計測中の前記経過時間が前記規定時間TRに到達する前に通信により前記第1の操作量リミット値が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間のうちの最長時間を前記参照時間TXmとすることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記規定時間記憶手段は、前記上位側の装置から設定すべき第1の操作量リミット値が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして記憶することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の制御装置は、通信により任意設定できる操作量上限値OH1を記憶する操作量上限値記憶手段と、通信により任意設定できる操作量下限値OL1を記憶する操作量下限値記憶手段と、前記操作量上限値OH1の通常値である操作量上限値OH2を記憶する通常上限値記憶手段と、前記操作量下限値OL1の通常値である操作量下限値OL2を記憶する通常下限値記憶手段と、操作量MVを算出する制御演算手段と、この制御演算手段で算出された操作量MVを前記操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう上限リミット処理手段と、前記制御演算手段で算出された操作量MVを前記操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう下限リミット処理手段と、上下限リミット処理された操作量MVを制御対象に出力する操作量出力手段と、規定時間TRを記憶する規定時間記憶手段と、上位側の装置からの通信により前記操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを、前記通信により前記操作量上限値OH1が更新される度に計測する上限経過時間計測手段と、上位側の装置からの通信により前記操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを、前記通信により前記操作量下限値OL1が更新される度に計測する下限経過時間計測手段と、前記経過時間THが前記規定時間TRに到達したときに、前記通常上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として前記操作量上限値記憶手段に記憶させる上限自動復帰手段と、前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達したときに、前記通常下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として前記操作量下限値記憶手段に記憶させる下限自動復帰手段とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の制御装置の1構成例は、さらに、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間THに基づく参照時間THmを記録する上限参照時間記録手段と、計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された前記経過時間TLに基づく参照時間TLmを記録する下限参照時間記録手段と、前記参照時間THmとTLmの少なくとも一方に基づく値の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとして前記規定時間記憶手段に記憶させる規定時間設定手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記上限参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THの平均時間を前記参照時間THmとするか、あるいは計測中の前記経過時間THが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量上限値OH1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間THのうちの最長時間を前記参照時間THmとし、前記下限参照時間記録手段は、計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLの平均時間を前記参照時間TLmとするか、あるいは計測中の前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達する前に通信により前記操作量下限値OL1が新たに更新された場合に、この更新のときまで計測された過去の前記経過時間TLのうちの最長時間を前記参照時間TLmとし、前記規定時間設定手段は、前記参照時間THmとTLmのうちいずれか長い方の1を超える実数倍の時間を新たな規定時間TRとするか、あるいは前記参照時間THmとTLmの平均時間を新たな規定時間TRとすることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記規定時間記憶手段は、前記上位側の装置から設定すべき操作量上限値OH1と操作量下限値OL1のうち少なくとも一方が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして記憶することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の制御方法は、操作量リミット値記憶手段に記憶されている、操作量下限値と操作量上限値のうちいずれか一方を示す第1の操作量リミット値を上位側の装置からの通信により更新する更新ステップと、操作量MVを算出する制御演算ステップと、この制御演算ステップで算出した操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量上限値以下の値に制限する上限リミット処理と、前記操作量MVを前記第1の操作量リミット値が示す操作量下限値以上の値に制限する下限リミット処理のうちいずれか一方を行なうリミット処理ステップと、このリミット処理した操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、前記上位側の装置からの通信により前記第1の操作量リミット値が更新された後の経過時間を、前記通信により前記第1の操作量リミット値が更新される度に計測する経過時間計測ステップと、前記経過時間が規定時間記憶手段に記憶されている規定時間TRに到達したときに、前記第1の操作量リミット値の通常値として通常リミット値記憶手段に記憶されている第2の操作量リミット値を、新たな第1の操作量リミット値として前記操作量リミット値記憶手段に記憶させる自動復帰ステップとを含むことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の制御方法は、操作量上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH1を上位側の装置からの通信により更新する操作量上限値更新ステップと、操作量下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL1を前記上位側の装置からの通信により更新する操作量下限値更新ステップと、操作量MVを算出する制御演算ステップと、この制御演算ステップで算出した操作量MVを前記操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう上限リミット処理ステップと、前記制御演算ステップで算出した操作量MVを前記操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう下限リミット処理ステップと、上下限リミット処理した操作量MVを制御対象に出力する操作量出力ステップと、上位側の装置からの通信により前記操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを、前記通信により前記操作量上限値OH1が更新される度に計測する上限経過時間計測ステップと、上位側の装置からの通信により前記操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを、前記通信により前記操作量下限値OL1が更新される度に計測する下限経過時間計測ステップと、前記経過時間THが規定時間記憶手段に記憶されている規定時間TRに到達したときに、前記操作量上限値OH1の通常値として通常上限値記憶手段に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として前記操作量上限値記憶手段に記憶させる上限自動復帰ステップと、前記経過時間TLが前記規定時間TRに到達したときに、前記操作量下限値OL1の通常値として通常下限値記憶手段に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として前記操作量下限値記憶手段に記憶させる下限自動復帰ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御装置で用いる操作量リミット値を適宜設定操作する特殊処理技術を、上位側の装置と下位側の制御装置との間の通信機能によって実現する構成において、通信機能に障害が発生して、上位側の装置から操作量リミット値を通常値に戻すことができない場合であっても、操作量リミット値を規定時間TRで通常値に自動復帰させることができる。すなわち、操作量リミット値が通常値と異なる値に長時間固定されることにより発生し得る問題点を緩和することができる。
【0022】
また、本発明では、通信により操作量リミット値が更新されたときの経過時間に基づく参照時間TXmを記録し、参照時間TXmの実数倍の時間を新たな規定時間TRとして規定時間記憶手段に記憶させることにより、制御装置に記憶される規定時間TRを適切な値に設定することができる。
【0023】
また、本発明では、上位側の装置から設定すべき操作量リミット値が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、送信された規定時間を新たな規定時間TRとして制御装置の規定時間記憶手段が記憶することにより、一時的に設定する操作量リミット値に適合する規定時間TRを、上位側の装置から臨機応変に指定することができる。
【0024】
また、本発明では、制御装置で用いる操作量下限値OL1や操作量上限値OH1を適宜設定操作する特殊処理技術を、上位側の装置と下位側の制御装置との間の通信機能によって実現する構成において、通信機能に障害が発生して、上位側の装置から操作量下限値OL1や操作量上限値OH1を通常値に戻すことができない場合であっても、操作量下限値OL1や操作量上限値OH1を規定時間TRで通常値に自動復帰させることができる。すなわち、操作量下限値OL1や操作量上限値OH1が通常値と異なる値に長時間固定されることにより発生し得る問題点を緩和することができる。
【0025】
また、本発明では、通信により操作量上限値OH1が更新されたときの経過時間THに基づく参照時間THmを記録すると共に、通信により操作量下限値OL1が更新されたときの経過時間TLに基づく参照時間TLmを記録し、参照時間THmとTLmの少なくとも一方に基づく値の実数倍の時間を新たな規定時間TRとして規定時間記憶手段に記憶させることにより、制御装置に記憶される規定時間TRを適切な値に設定することができる。
【0026】
また、本発明では、上位側の装置から設定すべき操作量上限値OH1と操作量下限値OL1のうち少なくとも一方が送信されると同時に、設定すべき規定時間が送信されたときに、送信された規定時間を新たな規定時間TRとして制御装置の規定時間記憶手段が記憶することにより、一時的に設定する操作量下限値OL1や操作量上限値OH1に適合する規定時間TRを、上位側の装置から臨機応変に指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作を説明する図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図8】複数の電気ヒータを備える加熱装置の構成を示すブロック図である。
図9】操作量上限値の想定外の固定による問題点を説明する図である。
図10】操作量下限値の想定外の固定による問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[発明の原理1]
上位側の装置(PCなど)のアルゴリズムにより、上位側の装置から下位側の装置(コントローラ、温調計など)に対し、一時的に通常値とは異なる操作量下限値OLや操作量上限値OHに設定変更するのであれば、これらの値を通常値に戻す操作も上位側の装置から行なうのが自然な形と考えられる。しかし、通信機能の障害などにより操作量下限値OLや操作量上限値OHを通常値に戻し損なうという危険性を想定するのだから、上位側からの操作はできないものとする。
【0029】
そこで、通常値とは異なる操作量下限値OLや操作量上限値OHについては、規定された時間(規定時間TR)だけ採用するものとして、下位側の装置で積極的に通常値に自動復帰させるように構成すれば、操作量下限値OLや操作量上限値OHを確実に通常値に戻せることに想到した。この場合、戻すべき通常値は下位側の装置に記憶されてなければならないし、規定時間TRの計測も下位側の装置で行なわれなければならない。
【0030】
なお、操作量下限値OLや操作量上限値OHを下位側の装置で通常値に自動復帰させる構成を採用する場合でも、この自動復帰よりも早いタイミングで上位側の装置からの信号により操作量下限値OLや操作量上限値OHを通常値に戻せるように構成するのが好ましい。下位側の装置での自動復帰機能は、操作量下限値OLや操作量上限値OHを通常値に戻すためのバックアップ機能になるわけであり、事実上の2重化という概念になる。
【0031】
[発明の原理2]
上記の規定時間TRを適度に決定するために、過去の更新時間を参照して自動決定するのが好ましい。規定時間TRの決定方法としては、例えば、過去の更新サイクル実績の平均時間の実数倍や最長時間の実数倍を規定時間TRとする方法が考えられる。この場合、実績の累積や規定時間TRの算出・更新については、必ずしも下位側の装置で行なう必要はない。予め下位側の装置に設定される規定時間TRが概ね適切であるならば、実績に基づく規定時間TRの算出・更新は緊急性の高いものではない。
【0032】
[発明の原理3]
上位側の装置から操作量下限値OLや操作量上限値OHを一時的に設定する際に、操作量下限値OLや操作量上限値OHの設定値と同時に上記の規定時間TRを上位側の装置から下位側の装置に送るのが好ましい。例えば、操作量上限値OHとして20%を設定する際に、最長でも10秒というように規定時間TRを下位側の装置に送るようにする。このようにすることにより、一時的に設定される操作量下限値OLや操作量上限値OHに適合する規定時間TRを、常に臨機応変に指定できる。なお、上位側の装置から規定時間TRを指定する場合でも、操作量下限値OLや操作量上限値OHの戻すべき通常値は下位側の装置に記憶されてなければならないし、規定時間TRの計測も下位側の装置で行なわれなければならない。
【0033】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態は、上記発明の原理1に対応するものである。図1は本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態の制御装置は、通信により任意設定できる操作量上限値OH1を記憶する操作量上限値記憶部1と、通信により任意設定できる操作量下限値OL1を記憶する操作量下限値記憶部2と、操作量上限値OH1の通常値である操作量上限値OH2を記憶する通常上限値記憶部3と、操作量下限値OL1の通常値である操作量下限値OL2を記憶する通常下限値記憶部4と、操作量MVを算出する制御演算部5と、制御演算部5で算出された操作量MVを操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう上限リミット処理部6と、制御演算部5で算出された操作量MVを操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう下限リミット処理部7と、上限リミット処理部6と下限リミット処理部7でリミット処理された操作量MVを制御対象に出力する操作量出力部8と、規定時間TRを記憶する規定時間記憶部9と、上位側の装置からの通信により操作量上限値記憶部1の操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを計測する上限経過時間計測部10と、上位側の装置からの通信により操作量下限値記憶部2の操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを計測する下限経過時間計測部11と、経過時間THが規定時間TRに到達したときに、通常上限値記憶部3に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として操作量上限値記憶部1に記憶させる上限自動復帰部12と、経過時間TLが規定時間TRに到達したときに、通常下限値記憶部4に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として操作量下限値記憶部2に記憶させる下限自動復帰部13とを有する。このような制御装置はコントローラや温調計によって実現される。
【0034】
次に、本実施の形態の制御装置の動作を図2を用いて説明する。初期状態では、操作量上限値記憶部1に記憶される操作量上限値OH1として、通常上限値記憶部3に記憶されている操作量上限値OH2(通常値)が設定されている。例えば、OH2=100%であるならOH1=100%に設定される。同様に、初期状態では、操作量下限値記憶部2に記憶される操作量下限値OL1として、通常下限値記憶部4に記憶されている操作量下限値OL2(通常値)が設定されている。例えば、OL2=0%であるならOL1=0%に設定される。
【0035】
図示しない上位側の装置(PCなど)から設定すべき操作量上限値が通信機能によって送信された場合(図2ステップS100においてYES)、操作量上限値記憶部1は、この送信された操作量上限値を新たな操作量上限値OH1として記憶し(図2ステップS101)、上限経過時間計測部10は、経過時間THを0にリセットする(図2ステップS102)。例えば、操作量上限値を60%に変更する場合、OH1=60%に更新設定される。なお、1制御周期前の時点において通信によりOH1=60%に設定されているときに、さらに同じOH1=60%が通信により設定されるような場合も、更新設定されたものとして経過時間THが0にリセットされる。
【0036】
また、上位側の装置から設定すべき操作量下限値が通信機能によって送信された場合(図2ステップS103においてYES)、操作量下限値記憶部2は、この送信された操作量下限値を新たな操作量下限値OL1として記憶し(図2ステップS104)、下限経過時間計測部11は、経過時間TLを0にリセットする(図2ステップS105)。例えば、操作量下限値を40%に変更する場合、OL1=40%に更新設定される。なお、1制御周期前の時点において通信によりOL1=40%に設定されているときに、さらに同じOL1=40%が通信により設定されるような場合も、更新設定されたものとして経過時間TLが0にリセットされる。
【0037】
次に、制御演算部5は、PID制御演算により、例えば以下の伝達関数式のように操作量MVを算出する(図2ステップS106)。
MV=(100/Pb){1+(1/Tis)+Tds}(SP−PV)
・・・(1)
式(1)において、SPは設定値(制御装置の適用対象が加熱装置の場合は温度設定値)、PVは制御量(制御装置の適用対象が加熱装置の場合は温度計測値)、Pbは予め規定された比例帯、Tiは予め規定された積分時間、Tdは予め規定された微分時間、sはラプラス演算子である。
【0038】
上限リミット処理部6は、制御演算部5で算出された操作量MVを、操作量上限値記憶部1に記憶されている操作量上限値OH1以下の値に制限する上限リミット処理を行なう(図2ステップS107)。
IF MV>OH1 THEN MV=OH1 ・・・(2)
つまり、上限リミット処理部6は、操作量MVが操作量上限値OH1より大きい場合、操作量MV=OH1とする。例えば、MV=80%が算出されOH1=100%であればMV=80%のままとする。また、MV=80%が算出されOH1=60%であればMV=60%とする。
【0039】
下限リミット処理部7は、制御演算部5で算出され上限リミット処理部6で上限リミット処理された操作量MVを、操作量下限値記憶部2に記憶されている操作量下限値OL1以上の値に制限する下限リミット処理を行なう(図2ステップS108)。
IF MV<OL1 THEN MV=OL1 ・・・(3)
つまり、下限リミット処理部7は、操作量MVが操作量下限値OL1より小さい場合、操作量MV=OL1とする。例えば、MV=20%が算出されOL1=0%であればMV=20%のままとする。また、MV=20%が算出されOL1=40%であればMV=40%とする。
【0040】
操作量出力部8は、上下限リミット処理された操作量MVを制御対象(制御装置の適用対象が加熱装置の場合は電力調整器103)に出力する(図2ステップS109)。
次に、上限経過時間計測部10は、現在の経過時間THに制御周期dtを加算して経過時間THを更新する(図2ステップS110)。
TH=TH+dt ・・・(4)
この加算処理により、操作量上限値記憶部1の操作量上限値OH1が更新された後の経過時間THを計測できる。
【0041】
下限経過時間計測部11は、現在の経過時間TLに制御周期dtを加算して経過時間TLを更新する(図2ステップS111)。
TL=TL+dt ・・・(5)
この加算処理により、操作量下限値記憶部2の操作量下限値OL1が更新された後の経過時間TLを計測できる。
【0042】
上限自動復帰部12は、経過時間THが規定時間TRに到達したかどうかを判定し(図2ステップS112)、経過時間THが規定時間TRに到達したときに(ステップS112においてYES)、通常上限値記憶部3に記憶されている操作量上限値OH2を、新たな操作量上限値OH1として操作量上限値記憶部1に記憶させる(図2ステップS113)。こうして、操作量上限値OH1を操作量上限値OH2(通常値)に復帰させる。例えば、OH2=100%であるならOH1=100%に復帰設定される。
【0043】
下限自動復帰部13は、経過時間TLが規定時間TRに到達したかどうかを判定し(図2ステップS114)、経過時間TLが規定時間TRに到達したときに(ステップS114においてYES)、通常下限値記憶部4に記憶されている操作量下限値OL2を、新たな操作量下限値OL1として操作量下限値記憶部2に記憶させる(図2ステップS115)。こうして、操作量下限値OL1を操作量下限値OL2(通常値)に復帰させる。例えば、OL2=0%であるならOL1=0%に復帰設定される。
【0044】
以上のようなステップS100〜S115の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(図2ステップS116においてYES)、制御周期dt毎に繰り返し実行される。
【0045】
本実施の形態では、制御装置で用いる操作量下限値OLや操作量上限値OHを適宜設定操作する特殊処理技術を、上位側の装置(PCなど)と下位側の制御装置との間の通信機能によって実現する構成において、通信機能に障害が発生して、上位側の装置から操作量下限値OLや操作量上限値OHを通常値に戻すことができない場合であっても、操作量下限値OLや操作量上限値OHを規定時間TRで通常値に自動復帰させることができる。すなわち、操作量下限値OLや操作量上限値OHが通常値と異なる値に長時間固定されることにより発生し得る問題点を緩和することができる。
【0046】
なお、規定時間TRは、操作量下限値OLと操作量上限値OHに対して共通の値として設定されていてもよいし、操作量下限値OL用の規定時間TR(ステップS114の判定に使用される規定時間TR)と操作量上限値OH用の規定時間TR(ステップS112の判定に使用される規定時間TR)とが異なる値として設定されていてもよい。
【0047】
図3(A)、図3(B)は本実施の形態の制御装置の動作を説明する図であり、図3(A)は制御量PVの変化を示し、図3(B)は操作量MVの変化を示している。
ここでは、昇温要求の無い制御装置(すなわち、図3(A)のように温度設定値SPが300℃から150℃に変更された制御装置)に対して、例えば電力配分の都合により、時刻t1において上位側の装置から送信される値により操作量上限値OH1が100%から20%に変更されたとする。
【0048】
同様に、t2,t3,t4の各時刻においても、上位側の装置から送信される値により操作量上限値OH1が20%付近の値に変更される。上記のとおり、操作量上限値OH1が更新される度に、上限経過時間計測部10で計測されている経過時間THが0にリセットされる。時刻t1とt2の間隔、t2とt3の間隔、t3とt4の間隔は全て規定時間TR未満である。時刻t4において操作量上限値OH1が更新された後は、新たな更新がなく、経過時間THが時刻t5において規定時間TRに到達するので、上限自動復帰部12は、操作量上限値OH1を操作量上限値OH2(通常値)に復帰させる。この後に、時刻t6において温度設定値SPが150℃から300℃に変更され昇温が開始すると、操作量上限値OH1=OH2=100%に復帰しているので、昇温能力不足が発生することもなく、正常な昇温が行われる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理2に対応する構成を第1の実施の形態に加えたものである。図4は本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の制御装置は、操作量上限値記憶部1と、操作量下限値記憶部2と、通常上限値記憶部3と、通常下限値記憶部4と、制御演算部5と、上限リミット処理部6と、下限リミット処理部7と、操作量出力部8と、規定時間記憶部9と、上限経過時間計測部10と、下限経過時間計測部11と、上限自動復帰部12と、下限自動復帰部13と、経過時間THが規定時間TRに到達する前に通信により操作量上限値OH1が更新されたときの経過時間THに基づく参照時間THmを記録する上限参照時間記録部14と、経過時間TLが規定時間TRに到達する前に通信により操作量下限値OL1が更新されたときの経過時間TLに基づく参照時間TLmを記録する下限参照時間記録部15と、参照時間THmと参照時間TLmのいずれか長い方の1.5倍の時間を新たな規定時間TRとして規定時間記憶部9に記憶させる規定時間設定部16とを有する。本実施の形態の制御装置についても、コントローラや温調計によって実現することができる。
【0050】
次に、本実施の形態の制御装置の動作を図5を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、初期状態では、操作量上限値記憶部1に記憶される操作量上限値OH1として、通常上限値記憶部3に記憶されている操作量上限値OH2(通常値)が設定されている。また、初期状態では、操作量下限値記憶部2に記憶される操作量下限値OL1として、通常下限値記憶部4に記憶されている操作量下限値OL2(通常値)が設定されている。
【0051】
また、初期状態では、規定時間記憶部9に記憶される規定時間TRとして、十分に長いと想定される時間が設定されている。例えば、TR=60秒に設定される。さらに、初期状態では、上限参照時間記録部14に記憶される参照時間THmとして、0が設定されている。同様に、初期状態では、下限参照時間記録部15に記憶される参照時間TLmとして、0が設定されている。
【0052】
図5のステップS200,S201の処理は、それぞれ図2のステップS100,S101と同じなので、説明は省略する。
上限参照時間記録部14は、経過時間THが規定時間TRに到達する前に操作量上限値記憶部1の操作量上限値OH1が更新された場合で、かつ上限参照時間記録部14に記憶されている参照時間THmよりも現在の経過時間THが長い場合(図5ステップS202においてYES)、この経過時間THを新たな参照時間THmとして記録する(図5ステップS203)。例えば、実績としてTHm=10秒が記録される。そして、上限経過時間計測部10は、経過時間THを0にリセットする(図5ステップS204)。
【0053】
図5のステップS205,S206の処理は、それぞれ図2のステップS103,S104と同じなので、説明は省略する。
下限参照時間記録部15は、経過時間TLが規定時間TRに到達する前に操作量下限値記憶部2の操作量下限値OL1が更新された場合で、かつ下限参照時間記録部15に記憶されている参照時間TLmよりも現在の経過時間TLが長い場合(図5ステップS207においてYES)、この経過時間TLを新たな参照時間TLmとして記録する(図5ステップS208)。例えば、実績としてTLm=12秒が記録される。そして、下限経過時間計測部11は、経過時間TLを0にリセットする(図5ステップS209)。
【0054】
規定時間設定部16は、参照時間THmと参照時間TLmのうち少なくとも一方が初期値0以外の値に更新されたときに(図5ステップS210においてYES)、参照時間THmと参照時間TLmのうちいずれか長い方の実数倍(例えば1.5倍)の時間を新たな規定時間TRとして規定時間記憶部9に記憶させる(図5ステップS211)。例えば、上記のとおりTHm=10秒に更新され、TLm=12秒に更新されると、TLm=12秒の1.5倍の時間である18秒が新たな規定時間TRとして設定される。
【0055】
図5のステップS212,S213,S214,S215,S216,S217,S218,S219,S220,S221の処理は、それぞれ図2のステップS106,S107,S108,S109,S110,S111,S112,S113,S114,S115と同じなので、説明は省略する。
以上のようなステップS200〜S221の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(図5ステップS222においてYES)、制御周期dt毎に繰り返し実行される。
【0056】
こうして、本実施の形態では、下位側の制御装置に記憶される規定時間TRを適切な値に設定することができる。
なお、本実施の形態では、過去に計測された経過時間THのうちの最長時間を上限参照時間記録部14に記録する参照時間THmとしているが、これに限るものではなく、過去に計測された経過時間THの平均時間を参照時間THmとして記録してもよいし、別の参照可能な時間を記録してもよい。同様に、本実施の形態では、過去に計測された経過時間TLのうちの最長時間を下限参照時間記録部15に記録する参照時間TLmとしているが、これに限るものではなく、過去に計測された経過時間TLの平均時間を参照時間TLmとして記録してもよいし、別の参照可能な時間を記録してもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、参照時間THmと参照時間TLmのうちいずれか長い方の実数倍の時間を新たな規定時間TRとしているが、これに限るものではなく、参照時間THmと参照時間TLmの平均時間を新たな規定時間TRとして設定してもよいし、別の参照可能な時間を規定時間TRとしてもよい。
【0058】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記発明の原理3に対応する構成を第1の実施の形態に加えたものである。図6は本実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の制御装置は、操作量上限値記憶部1と、操作量下限値記憶部2と、通常上限値記憶部3と、通常下限値記憶部4と、制御演算部5と、上限リミット処理部6と、下限リミット処理部7と、操作量出力部8と、規定時間記憶部9と、上限経過時間計測部10と、下限経過時間計測部11と、上限自動復帰部12と、下限自動復帰部13とを有する。本実施の形態の制御装置についても、コントローラや温調計によって実現することができる。
【0059】
次に、本実施の形態の制御装置の動作を図7を用いて説明する。第1の実施の形態と同様に、初期状態では、操作量上限値記憶部1に記憶される操作量上限値OH1として、通常上限値記憶部3に記憶されている操作量上限値OH2(通常値)が設定されている。また、初期状態では、操作量下限値記憶部2に記憶される操作量下限値OL1として、通常下限値記憶部4に記憶されている操作量下限値OL2(通常値)が設定されている。
【0060】
図7のステップS300,S301,S302,S303,S304,S305の処理は、それぞれ図2のステップS100,S101,S102,S103,S104,S105と同じなので、説明は省略する。
本実施の形態では、上位側の装置(PCなど)の送信部17は、設定すべき操作量上限値や操作量下限値の送信と同時に、設定すべき規定時間を送信できるようになっている。これに応じて、規定時間記憶部9に記憶されている規定時間TRは通信により任意に設定できるようになっている。
【0061】
すなわち、規定時間記憶部9は、操作量上限値と操作量下限値のうち少なくとも一方の送信と同時に、上位側の装置の送信部17から設定すべき規定時間が通信機能によって送信された場合(図7ステップS306においてYES)、この送信された規定時間を新たな規定時間TRとして記憶する(図7ステップS307)。
【0062】
図7のステップS308,S309,S310,S311,S312,S313,S314,S315,S316,S317の処理は、それぞれ図2のステップS106,S107,S108,S109,S110,S111,S112,S113,S114,S115と同じなので、説明は省略する。
【0063】
以上のようなステップS300〜S317の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(図7ステップS318においてYES)、制御周期dt毎に繰り返し実行される。
こうして、本実施の形態では、一時的に設定する操作量下限値OL1や操作量上限値OH1に適合する規定時間TRを、上位側の装置から臨機応変に指定することができる。
【0064】
なお、第1〜第3の実施の形態では、操作量下限値OL1と操作量上限値OH1の両方を上位側の装置から適宜設定操作するようにしているが、どちらか一方のみを設定操作するようにしてもよい。
【0065】
上記発明の原理1,3に対応する構成において、操作量上限値OH1のみを設定操作する場合、制御装置には、操作量上限値OH1(第1の操作量リミット値)を記憶する操作量上限値記憶部1(操作量リミット値記憶手段)と、操作量上限値OH1の通常値である操作量上限値OH2(第2の操作量リミット値)を記憶する通常上限値記憶部3(通常リミット値記憶手段)と、制御演算部5と、上限リミット処理部6と、操作量出力部8と、規定時間記憶部9と、上限経過時間計測部10と、上限自動復帰部12とを最低限設けるようにすればよい。また、上記発明の原理2に対応する構成においては、さらに制御装置に、上限参照時間記録部14と、規定時間設定部16とを設けるようにすればよい。この場合、参照時間THmが参照時間TXmとなる。このとき、操作量下限値記憶部2と下限リミット処理部7とは、制御装置に有ってもよいし無くてもよい。
【0066】
上記発明の原理1,3に対応する構成において、操作量下限値OL1のみを設定操作する場合、制御装置には、操作量下限値OL1(第1の操作量リミット値)を記憶する操作量下限値記憶部2(操作量リミット値記憶手段)と、操作量下限値OL1の通常値である操作量下限値OL2(第2の操作量リミット値)を記憶する通常下限値記憶部4(通常リミット値記憶手段)と、制御演算部5と、下限リミット処理部7と、操作量出力部8と、規定時間記憶部9と、下限経過時間計測部11と、下限自動復帰部13とを最低限設けるようにすればよい。また、上記発明の原理2に対応する構成においては、さらに制御装置に、下限参照時間記録部15と、規定時間設定部16とを設けるようにすればよい。この場合、参照時間TLmが参照時間TXmとなる。このとき、操作量上限値記憶部1と上限リミット処理部6とは、制御装置に有ってもよいし無くてもよい。
【0067】
第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0068】
なお、特許文献1に開示された電力総和抑制制御では、上位側の装置から下位側の装置の操作量上限値を設定操作しているが、上記のとおり、本発明は操作量上限値の設定操作のみに限るものではなく、操作量下限値のみを設定操作する場合にも適用することができ、操作量下限値と操作量上限値の両方を設定操作する場合にも適用することができる。また、上位側の装置から下位側の装置の操作量下限値や操作量上限値を設定操作する目的は様々であり、上位側の装置における操作量下限値や操作量上限値の決定方法としては様々な方法が考えられる。本発明は、下位側の制御装置に関するものであり、上位側の装置における操作量下限値や操作量上限値の決定方法に左右されるものではない。すなわち、上位側の装置において操作量下限値や操作量上限値を決定する構成は、本発明において必須の構成要素ではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、操作量上限値、操作量下限値の少なくとも一方を上位側の装置から設定操作する制御ソリューションが行なわれる制御システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…操作量上限値記憶部、2…操作量下限値記憶部、3…通常上限値記憶部、4…通常下限値記憶部、5…制御演算部、6…上限リミット処理部、7…下限リミット処理部、8…操作量出力部、9…規定時間記憶部、10…上限経過時間計測部、11…下限経過時間計測部、12…上限自動復帰部、13…下限自動復帰部、14…上限参照時間記録部、15…下限参照時間記録部、16…規定時間設定部、17…送信部。
図1
図2
図3
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