特許 6239920 車輪用軸受装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6239920

(24)【登録日】2017年11月10日

(45)【発行日】2017年11月29日

(54)【発明の名称】車輪用軸受装置

(51)【国際特許分類】

   F16C 33/76 20060101AFI20171120BHJP

   B60B 35/02 20060101ALI20171120BHJP

   F16C 19/18 20060101ALI20171120BHJP

   F16C 41/00 20060101ALI20171120BHJP

   G01P 3/487 20060101ALI20171120BHJP

【ＦＩ】

   F16C33/76 A

   B60B35/02 L

   F16C19/18

   F16C41/00

   G01P3/487 F

【請求項の数】4

【全頁数】15

(21)【出願番号】特願2013-204835(P2013-204835)

(22)【出願日】2013年9月30日

(65)【公開番号】特開2015-68454(P2015-68454A)

(43)【公開日】2015年4月13日

【審査請求日】2016年8月29日

(73)【特許権者】

【識別番号】000102692

【氏名又は名称】ＮＴＮ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100095614

【弁理士】

【氏名又は名称】越川 隆夫

(72)【発明者】

【氏名】須間 洋斗

(72)【発明者】

【氏名】中辻 雄太

【審査官】 渡邊 義之

(56)【参考文献】

【文献】 特開２０１３−２８２４８（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−１９０４２１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−９６１９４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 国際公開第２０１２／０７０５５５（ＷＯ，Ａ１）

【文献】 国際公開第２０１３／１４１３１９（ＷＯ，Ａ１）

【文献】 特開２００９−１９１９０２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１１−２０８７０２（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１０−７１４５６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−１０６５２１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２０１２−１１２４９４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ１６Ｃ ３３／７２− ３３／８２

Ｆ１６Ｃ ４１／００− ４１／０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材のインナー側の端部内周に圧入されたカップ状の保護カバーと、を備えた車輪用軸受装置において、
前記外方部材の端部内周が、前記保護カバーが圧入される内側嵌合面と、この内側嵌合面から段部を介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面を備え、
前記保護カバーが、前記外方部材の内側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に垂下する段付き部を介して軸方向に延び、前記シール嵌合面と同芯の円筒状の接合部と、この接合部から径方向内方に延びる円板状の遮蔽部を備えると共に、
前記保護カバーの段付き部と接合部に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合され、この弾性部材が、前記嵌合部の外径より径方向外方に突出し、前記シール嵌合面に圧着される環状突起を備え、この環状突起の先端部または当該環状突起のインナー側で径方向外方に突出する環状突起の先端部がインナー側に傾斜するリップ形状に形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。

【請求項2】

前記内輪に円周方向に特性を交互に変化させたパルサリングが外嵌されると共に、前記保護カバーが非磁性体の鋼板から形成され、この保護カバーを介して回転速度センサが前記パルサリングに軸方向エアギャップにて対峙されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。

【請求項3】

前記外方部材のシール嵌合面のインナー側に円筒状の外側嵌合面が形成されると共に、前記保護カバーのインナー側に、さらにカップ状のセンサキャップが装着され、このセンサキャップが、前記外側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に重合して延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する鍔部と、この鍔部から前記外方部材のインナー側の開口部を閉塞する底部とを備え、前記内輪に円周方向に特性を交互に変化させたパルサリングが外嵌されると共に、前記底部の当該パルサリングに対応する水平位置に嵌挿孔が形成され、この嵌挿孔に回転速度センサが装着されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。

【請求項4】

前記外方部材の内側嵌合面とシール嵌合面が切削加工によって同時に加工されている請求項１に記載の車輪用軸受装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置、特に、車輪の回転速度を検出する回転速度センサが装着される車輪用軸受装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承すると共に、アンチロックブレーキシステム（ＡＢＳ）を制御し、車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置が内蔵された車輪用軸受装置が一般的に知られている。従来、このような車輪用軸受装置は、転動体を介して転接する内方部材および外方部材の間にシール装置が設けられ、円周方向に磁極を交互に並べてなる磁気エンコーダを前記シール装置に一体化させると共に、磁気エンコーダと、この磁気エンコーダに対面配置され、車輪の回転に伴う磁気エンコーダの磁極変化を検出する回転速度センサとで回転速度検出装置が構成されている。

【0003】

前記回転速度センサは、懸架装置を構成するナックルに車輪用軸受装置が装着された後、当該ナックルに装着されているものが一般的である。しかし、この回転速度センサと磁気エンコーダとのエアギャップの調整作業の煩雑さを解消すると共に、よりコンパクト化を狙って、最近では回転速度センサをも装着される車輪用軸受装置が提案されている。

【0004】

このような車輪用軸受装置の一例として図８（ａ）に示すような構造が知られている。この車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面５１ａが形成された固定部材となる外方部材５１と、この外方部材５１に複列のボール５２を介して内挿されたハブ輪（図示せず）と、このハブ輪の小径段部に圧入固定され、外周に内側転走面５３ａが形成された内輪５３とからなる。そして、ハブ輪の小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部５４によって内輪５３が軸方向に固定されている。

【0005】

内輪５３に磁気エンコーダ５５が接合された断面Ｌ字形の支持環５６が外嵌されると共に、外方部材５１の開口部には保護カバー５７が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。

【0006】

外方部材５１の端部に装着された保護カバー５７は、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼板からプレス加工にて円環状に形成され、外方部材５１の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部５７ａと、この嵌合部５７ａから縮径部５７ｂを介して径方向内方に延びる円板状の遮蔽部５７ｃと、この遮蔽部５７ｃから段付き部５７ｄを介して外方部材５１の開口部を塞ぐ底部５７ｅとを備えている。そして、ナックルＫに固定された回転速度センサ５８の検出部５８ａは、保護カバー５７の遮蔽部５７ｃに近接または当接され、検出部５８ａと磁気エンコーダ５５とは保護カバー５７を介して所定のエアギャップで対向配置されている。

【0007】

保護カバー５７の縮径部５７ｂは段付き形状をなし、その外周部にシール部材５９が固着されている。このシール部材５９は合成ゴムからなり、加硫接着によって保護カバー５７に一体に接合され、凸部５９ａと環状部５９ｂとからなる。環状部５９ｂは嵌合部５７ａの外径よりも僅かに小径に形成されると共に、凸部５９ａは嵌合部５７ａの外径よりも僅かに大径に形成され、外方部材５１の端部内周面５１ｂに圧入されている。これにより、長期間に亘って外方部材５１と保護カバー５７との嵌合面の気密性を高めることができる（例えば、特許文献１参照。）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】特開２０１２−１８９０９６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

このような従来の車輪用軸受装置では、外方部材５１と内輪５３との間に形成される環状空間の開口部にはシール装置が装着されていないため、保護カバー５７のみで軸受内部に封入された潤滑グリースの漏洩と、外部から軸受内部に雨水やダスト等が侵入するのを防止している。然しながら、この種の車輪用軸受装置は泥水等がかかり易い過酷環境条件下において使用されると共に、近年、ユーザーからの厳しい仕様要求を満足するためには、さらに嵌合面の気密性を高めた保護カバー５７が必要とされる。

【0010】

特に、従来の構造では、合成ゴムからなるシール部材５９が接合される保護カバー５７の縮径部５７ｂが段付き形状をなし、図８（ｂ）に示すように、軸方向にストレートな円筒部ではなく傾斜したテーパ部を有しているため、保護カバー５７を外方部材５１の端部内周面５１ｂに圧入する際、シール部材５９が外方部材５１からの反力を受けて軸方向にズレ動くような分力が発生し、シール部材５９が矢印の方向に逃げて充分な面圧が確保することができないだけでなく、経時劣化によるシール部材５９のヘタリが発生して面圧が変化すると言った問題があった。

【0011】

本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、保護カバーの気密性を高めて密封性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0012】

係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項１に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材のインナー側の端部内周に圧入されたカップ状の保護カバーと、を備えた車輪用軸受装置において、前記外方部材の端部内周が、前記保護カバーが圧入される内側嵌合面と、この内側嵌合面から段部を介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面を備え、前記保護カバーが、前記外方部材の内側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に垂下する段付き部を介して軸方向に延び、前記シール嵌合面と同芯の円筒状の接合部と、この接合部から径方向内方に延びる円板状の遮蔽部を備えると共に、前記保護カバーの段付き部と接合部に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合され、この弾性部材が、前記嵌合部の外径より径方向外方に突出し、前記シール嵌合面に圧着される環状突起を備え、この環状突起の先端部または当該環状突起のインナー側で径方向外方に突出する環状突起の先端部がインナー側に傾斜するリップ形状に形成されている。

【0013】

このように、外方部材のインナー側の端部内周に圧入されたカップ状の保護カバーを備えた車輪用軸受装置において、外方部材の端部内周が、保護カバーが圧入される内側嵌合面と、この内側嵌合面から段部を介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面を備え、保護カバーが、外方部材の内側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に垂下する段付き部を介して軸方向に延び、シール嵌合面と同芯の円筒状の接合部と、この接合部から径方向内方に延びる円板状の遮蔽部を備えると共に、保護カバーの段付き部と接合部に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合され、この弾性部材が、嵌合部の外径より径方向外方に突出し、シール嵌合面に圧着される環状突起を備え、この環状突起の先端部または当該環状突起のインナー側で径方向外方に突出する環状突起の先端部がインナー側に傾斜するリップ形状に形成されているので、保護カバーを外方部材に圧入する際、弾性部材がインナー側に逃げて面圧が低下するのを防止するだけでなく、経時劣化による弾性部材のヘタリの発生を防止して面圧が変化するのを防止することができ、保護カバーの気密性を高めて密封性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。

【0014】

また、請求項２に記載の発明のように、前記内輪に円周方向に特性を交互に変化させたパルサリングが外嵌されると共に、前記保護カバーが非磁性体の鋼板から形成され、この保護カバーを介して回転速度センサが前記パルサリングに軸方向エアギャップにて対峙されていれば、エアギャップを小さく設定することができ、検出精度を高めることができる。

【0018】

また、請求項３に記載の発明のように、前記外方部材のシール嵌合面のインナー側に円筒状の外側嵌合面が形成されると共に、前記保護カバーのインナー側に、さらにカップ状のセンサキャップが装着され、このセンサキャップが、前記外側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向外方に重合して延び、前記外方部材のインナー側の端面に密着する鍔部と、この鍔部から前記外方部材のインナー側の開口部を閉塞する底部とを備え、前記内輪に円周方向に特性を交互に変化させたパルサリングが外嵌されると共に、前記底部の当該パルサリングに対応する水平位置に嵌挿孔が形成され、この嵌挿孔に回転速度センサが装着されていれば、２重のキャップにより軸受内部の密封性を向上させるだけでなく、センサキャップの剛性を高めて回転速度センサの位置決め精度を向上させることができると共に、車輪からの横方向荷重により外方部材と内方部材が相対的に傾いた状態においても、回転速度センサとパルサリングとのエアギャップ変動を抑制することができ、安定した検出精度を得ることができる。

【0019】

また、請求項４に記載の発明のように、前記外方部材の内側嵌合面とシール嵌合面が切削加工によって同時に加工されていれば、各嵌合面の真円度や同軸度等の精度が向上し、嵌合部の気密性が高くなると共に、同時切削によって加工工数を低減することができ、低コスト化を図ることができる。

【発明の効果】

【0020】

本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪とからなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材のインナー側の端部内周に圧入されたカップ状の保護カバーと、を備えた車輪用軸受装置において、前記外方部材の端部内周が、前記保護カバーが圧入される内側嵌合面と、この内側嵌合面から段部を介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面を備え、前記保護カバーが、前記外方部材の内側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に垂下する段付き部を介して軸方向に延び、前記シール嵌合面と同芯の円筒状の接合部と、この接合部から径方向内方に延びる円板状の遮蔽部を備えると共に、前記保護カバーの段付き部と接合部に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合され、この弾性部材が、前記嵌合部の外径より径方向外方に突出し、前記シール嵌合面に圧着される環状突起を備え、この環状突起の先端部または当該環状突起のインナー側で径方向外方に突出する環状突起の先端部がインナー側に傾斜するリップ形状に形成されているので、保護カバーを外方部材に圧入する際、弾性部材がインナー側に逃げて面圧が低下するのを防止するだけでなく、経時劣化による弾性部材のヘタリの発生を防止して面圧が変化するのを防止することができ、保護カバーの気密性を高めて密封性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0021】

【図1】本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図である。

【図2】（ａ）は、図１の保護カバーの嵌合部を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＡ部拡大図である。

【図3】（ａ）は、図１の保護カバー単体を示す縦断面図、（ｂ）は、図１のセンサキャップ単体を示す縦断面図である。

【図4】図１のセンサキャップのドレーン部を示す要部拡大図である。

【図5】（ａ）は、図２の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＢ部拡大図である。

【図6】（ａ）は、図５の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＣ部拡大図である。

【図7】（ａ）は、図６の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＤ部拡大図である。

【図8】（ａ）は、従来の車輪用軸受装置を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＥ部拡大図である。

【発明を実施するための形態】

【0022】

外周に車体に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面の一方に対向する内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、前記複列の外側転走面の他方に対向する内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、前記外方部材と内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内輪に外嵌された磁気エンコーダと、前記外方部材のインナー側の端部内周に圧入されたカップ状の非磁性体製の保護カバーと、を備え、この保護カバーを介して回転速度センサがパルサリングに軸方向エアギャップにて対峙される車輪用軸受装置において、前記外方部材の端部内周が、前記保護カバーが圧入される内側嵌合面と、この内側嵌合面から段部を介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面を備え、前記保護カバーが、前記外方部材の内側嵌合面に圧入される円筒状の嵌合部と、この嵌合部から径方向内方に垂下する段付き部を介して軸方向に延び、前記シール嵌合面と平行な同芯の円筒状の接合部と、この接合部から径方向内方に延び、前記パルサリングに軸方向すきまを介して対峙する円板状の遮蔽部を備えると共に、前記保護カバーの段付き部と接合部に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合され、この弾性部材が、前記保護カバーの嵌合部の外径より径方向外方に突出する環状突起と、この環状突起のインナー側で径方向外方に突出し、先端部がインナー側に傾斜するリップ形状をなす環状突起を備え、これらの環状突起が前記シール嵌合面に圧着されている。

【実施例】

【0023】

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図１は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図２（ａ）は、図１の保護カバーの嵌合部を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＡ部拡大図、図３（ａ）は、図１の保護カバー単体を示す縦断面図、（ｂ）は、図１のセンサキャップ単体を示す縦断面図、図４は、図１のセンサキャップのドレーン部を示す要部拡大図、図５（ａ）は、図２の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＢ部拡大図、図６（ａ）は、図５の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＣ部拡大図、図７（ａ）は、図６の保護カバーの変形例を示す要部拡大図、（ｂ）は、（ａ）のＤ部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側（図１の左側）、中央寄り側をインナー側（図１の右側）という。

【0024】

図１に示す車輪用軸受装置は従動輪側の第３世代と呼称され、内方部材１と外方部材２、および両部材１、２間に転動自在に収容された複列の転動体（ボール）３、３とを備えている。内方部材１は、ハブ輪４と、このハブ輪４に所定のシメシロを介して圧入された内輪５とからなる。

【0025】

ハブ輪４は、アウター側の端部に車輪（図示せず）を取り付けるための車輪取付フランジ６を一体に有し、外周に一方（アウター側）の内側転走面４ａと、この内側転走面４ａから軸方向に延びる小径段部４ｂが形成されている。なお、車輪取付フランジ６にはハブボルト６ａが周方向等配に植設されている。

【0026】

内輪５は、外周に他方（インナー側）の内側転走面５ａが形成され、ハブ輪４の小径段部４ｂに圧入されて背面合せタイプの複列アンギュラ玉軸受を構成すると共に、小径段部４ｂの端部を塑性変形させて形成した加締部４ｃによって内輪５が軸方向に固定されている。これにより、軽量・コンパクト化を図ることができる。なお、内輪５および転動体３、３はＳＵＪ２等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

【0027】

ハブ輪４はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、内側転走面４ａをはじめ、後述するシール８のシールランド部となる車輪取付フランジ６のインナー側の基部６ｂから小径段部４ｂに亙って高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。なお、加締部４ｃは鍛造加工後の表面硬さの生のままとされている。これにより、車輪取付フランジ６に負荷される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、内輪５の嵌合部となる小径段部４ｂの耐フレッティング性が向上すると共に、微小なクラック等の発生がなく加締部４ｃの塑性加工をスムーズに行うことができる。

【0028】

外方部材２は、外周にナックル９に取り付けられるための車体取付フランジ２ｂを一体に有し、この車体取付フランジ２ｂのインナー側にナックル９に嵌合される円筒状のパイロット部２ｃが形成され、内周にハブ輪４の内側転走面４ａに対向するアウター側の外側転走面２ａと、内輪５の内側転走面５ａに対向するインナー側の外側転走面２ａが一体に形成されている。これら両転走面間に複列の転動体３、３が収容され、保持器７、７によって転動自在に保持されている。そして、外方部材２と内方部材１との間に形成される環状空間のアウター側の開口部にシール８が装着されると共に、インナー側の開口部には後述する保護カバー１５が装着され、軸受内部に封入されたグリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。

【0029】

外方部材２はＳ５３Ｃ等の炭素０．４０〜０．８０ｗｔ％を含む中高炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面２ａ、２ａが高周波焼入れによって表面硬さを５８〜６４ＨＲＣの範囲に硬化処理されている。

【0030】

シール８は、外方部材２のアウター側の端部内周に圧入された芯金１０と、この芯金１０に加硫接着によって一体に接合されたシール部材１１とからなる一体型シールで構成されている。芯金１０は、オーステナイト系ステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ３０４系等）や冷間圧延鋼板（ＪＩＳ規格のＳＰＣＣ系等）からプレス加工にて断面が略Ｌ字状に形成されている。一方、シール部材１１はＮＢＲ（アクリロニトリル−ブタジエンゴム）等の合成ゴムからなり、基部６ｂの外周面に摺接するサイドリップ１１ａとダストリップ１１ｂおよびグリースリップ１１ｃを有している。そして、芯金１０の外表面を覆うように、シール部材１１が回り込んで接合され、所謂ハーフメタル構造をなしている。これにより、気密性を高めて軸受内部を保護することができる。

【0031】

なお、シール部材１１の材質としては、例示したＮＢＲ以外にも、例えば、耐熱性に優れたＨＮＢＲ（水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム）、ＥＰＤＭ（エチレンプロピレンゴム）等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたＡＣＭ（ポリアクリルゴム）、ＦＫＭ（フッ素ゴム）、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。

【0032】

なお、ここでは、転動体３、３にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受で構成された車輪用軸受装置を例示したが、これに限らず、円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受で構成されたものであっても良い。また、ハブ輪４の外周に内側転走面４ａが直接形成された第３世代と呼称される車輪用軸受装置を例示したが、本発明に係る車輪用軸受装置はこうした構造に限定されず、例えば、図示はしないがハブ輪の小径段部に一対の内輪が圧入された第１世代あるいは第２世代構造であっても良い。

【0033】

本実施形態では、内輪５の外周にパルサリング１２が圧入されている。このパルサリング１２は、図２（ａ）に拡大して示すように、円環状に形成された支持環１３と、この支持環１３の側面に加硫接着等で一体に接合された磁気エンコーダ１４とで構成されている。この磁気エンコーダ１４は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に磁極Ｎ、Ｓが着磁されて車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダを構成している。

【0034】

支持環１３は強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼板（ＪＩＳ規格のＳＵＳ４３０系等）や防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工によって断面略Ｌ字状に形成され、内輪５に圧入される円筒部１３ａと、この円筒部１３ａから径方向外方に延びる立板部１３ｂとを有している。そして、この立板部１３ｂのインナー側の側面に磁気エンコーダ１４が接合されている。

【0035】

ここで、外方部材２に装着される保護カバー１５は、耐食性を有し、後述する回転速度センサ２１の感知性能に悪影響を及ぼさないように、非磁性体のオーステナイト系ステンレス鋼板からプレス加工によってカップ状に形成されている。そして、図３（ａ）に示すように、外方部材２のインナー側の端部内周に圧入される円筒状の嵌合部１５ａと、この嵌合部１５ａから径方向内方に垂下する段付き部１５ｂを介して軸方向に延びる円筒状の接合部１５ｃと、この接合部１５ｃから径方向内方に延び、磁気エンコーダ１４に僅かな軸方向すきまを介して対峙する円板状の遮蔽部１５ｄと、この遮蔽部１５ｄからアウター側に膨出する屈曲部１５ｅを介して内方部材（図示せず）のインナー側の端部を覆う底部１５ｆを備えている。

【0036】

保護カバー１５は、段付き部１５ｂと接合部１５ｃにＮＢＲ等の合成ゴムからなる弾性部材（シール部材）１８が加硫接着によって一体に接合されている。この弾性部材１８は、保護カバー１５の遮蔽部１５ｄの側面からインナー側に突出して回転速度センサ２１に干渉しないように接合されると共に、図２（ｂ）に拡大して示すように、嵌合部１５ａの外径より径方向外方に突出する環状突起１８ａを備えている。そして、外方部材２の端部内周は、保護カバー１５の嵌合部１５ａが圧入される内側嵌合面１９ａと、この内側嵌合面１９ａからテーパ状の段部１９ｂを介して大径に形成された円筒状のシール嵌合面１９ｃを備えている。保護カバー１５の嵌合時、このシール嵌合面１９ｃに弾性部材１８の環状突起１８ａが弾性変形して圧着され、ハーフメタル構造をなして嵌合部１５ａの気密性を高めている。

【0037】

また、保護カバー１５の嵌合部１５ａが圧入される内側嵌合面１９ａよりも大径にシール嵌合面１９ｃが形成されているので、保護カバー１５の嵌合時、嵌合部１５ａの圧入によって内側嵌合面１９ａに傷や切屑が発生したとしても弾性部材１８が圧着されるシール嵌合面１９ｃを傷付けることがないため、気密性を向上させることができる。

【0038】

さらに、本実施形態では、弾性部材１８が断面略四角形に形成されると共に、保護カバー１５の接合部１５ｃが、外方部材２のシール嵌合面１９ｃと平行な同芯の円筒状（ストレート）に形成されているため、保護カバー１５を外方部材２に圧入する際、弾性部材１８が外方部材２からの反力を接合部１５ｃのストレート部で受け、弾性部材１８が軸方向にズレ動くような分力が発生することはない。したがって、弾性部材１８がインナー側に逃げて面圧が低下するのを防止すると共に、経時劣化による弾性部材１８のヘタリの発生を防止して面圧が変化するのを防止することができ、保護カバー１５の気密性を高めて密封性の向上を図った車輪用軸受装置を提供することができる。

【0039】

本実施形態では、保護カバー１５のインナー側に、さらにセンサキャップ１６が装着されている。具体的には、図２（ａ）に示すように、外方部材２のシール嵌合面１９ｃの開口部側（インナー側）に円筒状の外側嵌合面２０が形成され、センサキャップ１６はこの外側嵌合面２０に所定のシメシロを介して圧入されている。そして、少なくともこれら外側嵌合面２０と内側嵌合面１９ａおよびシール嵌合面１９ｃは、研削加工あるいは旋削加工等の切削加工によって同時に加工されている。好ましくは、高周波焼入れによる熱処理工程の後、研削工程において、複列の外側転走面２ａ、２ａと総型砥石によって同時研削されている。

【0040】

このように、外側嵌合面２０と内側嵌合面１９ａおよびシール嵌合面１９ｃが、同時に加工されていれば、各嵌合面１９ａ、１９ｃ、２０の真円度や同軸度等の精度が向上し、嵌合部の気密性が高くなると共に、同時切削によって加工工数を低減することができ、低コスト化を図ることができる。また、内側嵌合面１９ａのインナー側に段部１９ｂを介してシール嵌合面１９ｃと外側嵌合面２０が形成されているので、保護カバー１５の圧入ストロークを最小限に抑えて組立作業性を向上させると共に、圧入工程での保護カバー１５の変形を防止することができ、製品の信頼性を向上させることができる。

【0041】

センサキャップ１６は防錆処理された冷間圧延鋼板からプレス加工によってカップ状に形成され、図３（ｂ）に示すように、外方部材２の外側嵌合面２０に圧入される円筒状の嵌合部１６ａと、この嵌合部１６ａから径方向外方に重合して延び、外方部材２のインナー側の端面２ｄに密着する鍔部１６ｂと、この鍔部１６ｂから外方部材２のインナー側の開口部を閉塞する底部１６ｃとを備えている。このセンサキャップ１６の底部１６ｃには磁気エンコーダ１４に対応する水平位置に嵌挿孔１７が形成され、この嵌挿孔１７に後述する回転速度センサ２１が嵌挿される。このように、センサキャップ１６が外方部材２の端面２ｄに密着する鍔部１６ｂを備えているので、剛性を高めて回転速度センサ２１の位置決め精度を向上させることができると共に、嵌挿孔１７が水平位置に形成され、この嵌挿孔１７に回転速度センサ２１が装着されていれば、車輪からの横方向荷重により外方部材２と内方部材１が相対的に傾いた状態においても、回転速度センサ２１と磁気エンコーダ１４とのエアギャップ変動を抑制することができ、安定した検出精度を得ることができる。

【0042】

また、センサキャップ１６の中心側に形成された穿孔２２に固定ナット２３が加締加工により固定されている。この固定ナット２３はセンサキャップ１６の底部１６ｃの軸受内方側（アウター側）に加締固定されている。固定ナット２３の固定方法は、これ以外にも、例えば、溶接、接着、圧入等であっても良い。そして、センサキャップ１６の嵌挿孔１７に嵌挿された回転速度センサ２１が、取付部材２４を介して取付ボルト２５を固定ナット２３に締結することによって固定されている。このように、本実施形態では、固定ナット２３がセンサキャップ１６の底部１６ｃの軸受内方側に固定されているため、取付ボルト２５の締結により固定ナット２３が底部１６ｃの内側面に引き込まれ、固定ナット２３の簡便な加締固定だけで脱落を防止することができる。

【0043】

回転速度センサ２１は、ホール素子、磁気抵抗素子（ＭＲ素子）等、磁束の流れ方向に応じて特性を変化させる磁気検出素子およびこの磁気検出素子の出力波形を整える波形整形回路が組み込まれたＩＣ等からなり、車輪の回転速度を検出してその回転数を制御する自動車のアンチロックブレーキシステムを構成している。そして、この回転速度センサ２１が保護カバー１５の遮蔽部１５ｄに衝合または近接するまで挿入されている（図２（ａ）参照）。これにより、所望のエアギャップが得られ、煩雑なエアギャップ調整を省いて組立作業性の向上が図れると共に、接合部１５ｃに合成ゴムからなる弾性部材１８が設けられた保護カバー１５により軸受内部を密封することができる。

【0044】

センサキャップ１６にはカチオン電着塗装によって防錆皮膜（図示せず）が形成されている。ここで、防錆皮膜をセンサキャップ１６の全表面に形成する。ここで、低コスト化を図るために、外方部材２の外側嵌合面２０およびインナー側の端面２ｄとの当接部分にのみ防錆皮膜を形成しても良い。なお、カチオン電着塗装は、正電極に対して、製品側を負電極として通電するものであるが、負電極に対して、製品側を正電極として通電するアニオン型の電着塗装であっても良い。このアニオン型の電着塗装の場合、塗装色の安定性や焼付温度を低く設定できる特徴を備えているが、この種のセンサキャップ１６においては、防錆力と密着力に優れた強力な塗装膜が形成できるエポキシ樹脂系等からなるカチオン電着塗装の方が好ましい。

【0045】

本実施形態では、カチオン電着塗装の下地処理（前処理）としてリン酸亜鉛処理が施されている。このリン酸亜鉛処理により素材となる鋼材の表面が化学反応で粗面化されるため、塗料の食い付きが良くなって付着性が向上する。さらに、リン酸亜鉛処理の後にシーラー処理が施されていても良い。このシーラーは、一種の金属表面処理剤であり、例えば、３０秒〜２分程度の短時間の浸漬、あるいは、スプレー処理を行うことにより、化成皮膜を形成することができる、所謂化成処理で、優れた塗膜密着性が確保できると共に、素材の保護皮膜が形成でき、強固な防錆機能と導電性を発揮することができる。換言すると、カチオン電着塗装の下地処理としてリン酸亜鉛処理が施されると共に、その上にシーラー処理が施されることによってリン酸亜鉛皮膜の微細な表面の平滑化により塗料電着時の空気の巻き込みを防止することができる。この空気の巻き込みがあると、塗膜にクレータ（凹凸等の不均一な表面）等の表面欠陥が生じることがあり好ましくない。

【0046】

このように、本実施形態では、センサキャップ１６の外方部材２との当接部分にカチオン電着塗装からなる防錆皮膜が形成されると共に、カチオン電着塗装の下地処理としてリン酸亜鉛処理が施されているので、塗料の付着性が向上し、外方部材２への圧入時に防錆皮膜が容易に剥がれ落ちることなく、嵌合面の微小な凹凸を埋めて滑らかな表面を維持できると共に、センサキャップ１６の嵌合部１６ａが長期間に亘って発錆するのを防止することができ、外方部材２の外側嵌合面２０および端面２ｄとの間で良好な気密性が得られる。

【0047】

前述した保護カバー１５の板厚ｔ１は、センサキャップ１６の板厚ｔ２よりも薄く設定されている。具体的には、センサキャップ１６の板厚ｔ２が１．０〜１．５ｍｍに対して、保護カバー１５の板厚ｔ１が０．２〜１．０ｍｍに設定されている。これにより、エアギャップを小さく設定することが可能になり、検出精度を高めることができる。また、軽量化を図ることができると共に、加工性が向上して低コスト化を図ることができる。なお、この板厚ｔ１が０．２ｍｍ未満では、保護カバー１５の形状を精度良く成形するのが難しくなると共に、１．０ｍｍを超えると、エアギャップが大きくなって所望の磁気特性を得ることができず検出精度が低下する。

【0048】

また、本実施形態では、センサキャップ１６の底部１６ｃの径方向外方側にドレーン２６が形成されている。このドレーン２６は、嵌合部１６ａと底部１６ｃの路面に近い側の膨出部２７に形成されている。膨出部２７は、底部１６ｃからインナー側に所定の寸法Ｌだけ突出して形成されている。この膨出部２７は、図４に拡大して示すように、ナックル９が外方部材２の端面２ｄと面一ではなく、インナー側に突出している場合に有効である。すなわち、センサキャップ１６の膨出部２７にドレーン２６を径方向に貫通して形成することにより、センサキャップ１６内に外部から雨水等の異物が浸入したとしても、この膨出部２７部分に流動落下し、矢印にて示すように、ナックル９に妨害されることなく容易に異物を外部に効果的に排出することができる。

【0049】

図５（ａ）に、前述した保護カバー１５の変形例を示す。この保護カバー２８は、基本的には弾性部材１８の形状が異なるだけで、前述したものと金属部分の構成が同じであるので、同じ符号を付して重複した説明を省略する。保護キャップ２８は、段付き部１５ｂと接合部１５ｃにＮＢＲ等の合成ゴムからなる弾性部材２９が加硫接着によって一体に接合されている。この弾性部材２９は、図５（ｂ）に示すように、嵌合部１５ａの外径より径方向外方に突出し、先端部がインナー側に傾斜する環状突起２９ａを備えている。そして、この環状突起２９ａが、保護カバー２８の嵌合時、外方部材２のシール嵌合面１９ｃに弾性変形して圧着される。

【0050】

本実施形態では、弾性部材２９の環状突起２９ａがリップ形状に形成されているので、外方部材２が負荷される荷重によって楕円形状に変形した場合等に追従することができ、安定した気密性を提供することができる。

【0051】

図６（ａ）に、前述した保護カバー２８の変形例を示す。この保護カバー３０は、基本的には弾性部材２９の形状が異なるだけで、前述したものと金属部分の構成が同じであるので、同じ符号を付して重複した説明を省略する。保護キャップ３０は、段付き部１５ｂと接合部１５ｃにＮＢＲ等の合成ゴムからなる弾性部材３１が加硫接着によって一体に接合されている。この弾性部材３１は、図６（ｂ）に示すように、嵌合部１５ａの外径より径方向外方に突出する環状突起１８ａと、この環状突起１８ａのインナー側に、径方向外方に突出し、先端部がインナー側に傾斜するリップ形状をなす環状突起２９ａを備えている。そして、これらの環状突起２８ａ、２９ａが、保護カバー３０の嵌合時、外方部材２のシール嵌合面１９ｃに弾性変形して圧着される。こうした構成により、弾性部材３１の２つの環状突起１８ａ、２９ａの相乗効果によって保護カバー３０の気密性を一層高めることができる。

【0052】

図７（ａ）に、前述した保護カバー３０の変形例を示す。この保護カバー３２は、基本的には弾性部材３１の形状が異なるだけで、前述したものと金属部分の構成が同じであるので、同じ符号を付して重複した説明を省略する。保護キャップ３２は、段付き部１５ｂと接合部１５ｃにＮＢＲ等の合成ゴムからなる弾性部材３３が加硫接着によって一体に接合されている。この弾性部材３３は、図７（ｂ）に示すように、嵌合部１５ａの外径より径方向外方に突出し、外周面がインナー側に向って漸次拡径するテーパ面に形成された環状突起３３ａを備えている。そして、この環状突起３３ａが、保護カバー３２の嵌合時、外方部材２のシール嵌合面１９ｃに弾性変形して圧着される。

【0053】

本実施形態では、弾性部材３３の環状突起３３ａが、前述した環状突起１８ａとリップ形状の環状突起２９ａを一体化させた形状に形成され、そのシメシロが大きく設定されているので、保護カバー３１の気密性を一層高めることができる。

【0054】

以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。

【産業上の利用可能性】

【0055】

本発明に係る車輪用軸受装置は、従動輪用で、第１乃至３世代構造の内輪回転タイプの車輪用軸受装置に適用することができる。

【符号の説明】

【0056】

１ 内方部材
２ 外方部材
２ａ 外側転走面
２ｂ 車体取付フランジ
２ｃ パイロット部
２ｄ 外方部材のインナー側の端面
３ 転動体
４ ハブ輪
４ａ、５ａ 内側転走面
４ｂ 小径段部
４ｃ 加締部
５ 内輪
６ 車輪取付フランジ
６ａ ハブボルト
６ｂ 車輪取付フランジのインナー側の基部
７ 保持器
８ シール
９ ナックル
１０ 芯金
１１ シール部材
１１ａ サイドリップ
１１ｂ ダストリップ
１１ｃ グリースリップ
１２ パルサリング
１３ 支持環
１３ａ 円筒部
１３ｂ 立板部
１４ 磁気エンコーダ
１５、２８、３０、３２ 保護カバー
１５ａ、１６ａ 嵌合部
１５ｂ 段付き部
１５ｃ 接合部
１５ｄ 遮蔽部
１５ｅ 屈曲部
１５ｆ、１６ｃ 底部
１６ センサキャップ
１６ｂ 鍔部
１７ 嵌挿孔
１８、２９、３１、３３ 弾性部材
１８ａ、２９ａ、３３ａ 環状突起
１９ａ 内側嵌合面
１９ｂ 段部
１９ｃ シール嵌合面
２０ 外側嵌合面
２１ 回転速度センサ
２２ 穿孔
２３ 固定ナット
２４ 取付部材
２５ 取付ボルト
２６ ドレーン
２７ 膨出部
５１ 外方部材
５１ａ 外側転走面
５１ｂ 端部内周面
５２ ボール
５３ 内輪
５３ａ 内側転走面
５４ 加締部
５５ 磁気エンコーダ
５６ 支持環
５７ 保護カバー
５７ａ 嵌合部
５７ｂ 縮径部
５７ｃ 遮蔽部
５７ｄ 段付き部
５７ｅ 底部
５８ 回転速度センサ
５８ａ 検出部
５９ シール部材
５９ａ 凸部
５９ｂ 環状部
Ｋ ナックル
Ｌ 膨出部の底部からの突出量

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】