(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して、詳細に説明する。
図1および
図2は、本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池装置の要部(発電室)の基本構造を示す。本装置の要部を取り囲む枠体1の内部には、水素富化ガスと酸化剤とを用いて発電する燃料電池セル集合体11aを備える。
【0011】
燃料電池セル集合体11aは、固体酸化物からなる電解質の両面にアノード(燃料極)及びカソード(酸化剤極)を積層してなる複数の固体酸化物形燃料電池セルが電気的に直列および/または並列に接続されている。燃料電池セル集合体11aの下端部は、台座11bに支持されている。本実施形態では、燃料電池セル11aを支持する台座11bは、マニホールド部として機能する。固体酸化物形燃料電池セルの形状及び配列は任意に選択できるため、図中の燃料電池セル集合体11aは、それらを省略して概略的に示したものである。
【0012】
燃料電池セル集合体11aの上方には、改質器12が備えられ、該改質器12は、原燃料供給管15から供給される水素含有燃料を改質して水素富化ガスを生成する。改質器12での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。水蒸気改質を用いる場合は、改質器12内(又は改質器12とは別)に水気化部を設け、枠体1外部から供給される水を加熱し気化させることによって水蒸気を生成する。水素含有燃料(原燃料)としては、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料としては、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられ、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0013】
水素富化ガスは、水素富化ガス供給管16を介して台座11b内に供給され、燃料電池セル集合体11aの各アノードに供給される。燃料電池セル集合体11aのカソード(酸化剤極)には酸化剤が供給される。燃料電池セル集合体11aの発電に寄与しなかった水素富化ガスおよび酸化剤(以下、オフガスと呼ぶ)は、燃料電池セル集合体11aと改質器12との間のオフガス燃焼部21で燃焼される。枠体1と燃料電池セル集合体11aとの間には、枠体1外への放熱を抑制する断熱材13が配設される。これにより、枠体1の内部は高温状態に維持され、燃料電池セル集合体11aの発電が行われる。また、改質器12は、水素富化ガスの生成に必要な温度に保たれる。オフガスの燃焼によって生じた排ガスは、枠体1外部の排ガス通路(図示せず)を介して固体酸化物形燃料電池装置の外部に排出される。
【0014】
かかる燃料電池装置の基本構造において、断熱材13と燃料電池セル集合体11aの間に、燃料電池セル集合体11aの側面に部分的に対向し、かつ燃料電池セル集合体11aに接触しない位置に伝熱部(伝熱板)14を配設する。
【0015】
ここで、燃料電池セル集合体11aは、発電により発熱し全域で温度上昇するが、上側は、オフガス燃焼部21に近接しているため、より高温となるのに対し、下側は、水素富化ガスおよび酸化剤の流れの上流位置に相当するため、上側に比較して低温となる。また、燃料電池セル集合体11aの下側は、非発熱体であり熱容量の大きい金属製の台座11bに連結されているため、このことによっても、燃料電池セル集合体11aの上側に比較して低温となる。また、燃料電池セル集合体11aの上側の端部は、両端面からの放熱の影響により、熱が籠り放熱しにくい燃料電池セル集合体11aの上側の中央部に比較して低温となる。その温度勾配は、いずれかの側面から見た場合に、上側の中央部が高温領域、上側の両端部が中温領域、下側が低温領域に大別される。さらに、枠体1の外部から原燃料が供給される原燃料供給管15や水素富化ガス供給管16の近傍は、中央部に比較して低温となる。すなわち、発電時の燃料電池セル集合体11aの表面温度の温度勾配は、枠体1内に配置される各種構成部品のレイアウトに拠っても影響を受ける。
【0016】
伝熱部14は、燃料電池セル集合体11aの上側の両端部(中温領域)の一部に対向せず、燃料電池セル集合体11aの上側の中央部(高温領域)から下側(低温領域)にかけて連続して対向した形状をしている。具体的には、高温領域に相当する燃料電池セル集合体11aの上辺中央部から、低温領域に相当する側辺下方にかけて傾斜によって連続させる。燃料電池セル集合体11aの表面の熱は、輻射伝熱により伝熱部14を介して、燃料電池セル集合体11aの上側の中央部(高温領域)から下側(低温領域)に伝達される。これにより、燃料電池セル集合体11aの高温領域の熱が、中温領域の熱より優先して低温領域に伝達されることになり、燃料電池セル集合体11aの高温領域と低温領域の温度勾配が緩和される。伝熱部14は、燃料電池セル集合体11aの複数面に対向して配置してもよく、また一側面にのみ対向して配置してもよい。さらには、燃料電池セル集合体11aの同一の面に対向する伝熱部14を複数に分割して配置してもよい。
【0017】
伝熱部14の高さは、改質器12の底部高さより低いことが好ましい。改質器12には燃料電池装置の外部から原燃料が供給されるため、燃料電池セル集合体11aの高温領域と比較して低温傾向にある。特に、改質器12での改質方式が水蒸気改質反応(吸熱反応)である場合、改質器12の周辺部からの吸熱量が大きい。そこで、伝熱部14の高さを改質器12の底部より低く設定することにより、燃料電池セル集合体11aの高温領域から低温領域へ効果的に熱伝達を行うことができる。特に、伝熱部14の高さH1を燃料電池セル集合体11aの高さH2と略同等とすることがより好ましい。伝熱部14は、燃料電池セル集合体11aの高温領域からの輻射熱を最大限受熱することができる。これにより、燃料電池セル集合体11aの下側へ供給される熱量を可能な限り大きくして燃料電池セル集合体11aの下側の温度上昇を促進することができ、ひいては燃料電池セル集合体11aの温度勾配を緩和することができる。また、中温領域における熱の受け渡しを抑制し、かつ、高温領域から低温領域に熱を受け渡すことにより、上側および下側の温度がそれぞれ中温に近づくため、前後方向の温度勾配も抑制することができる。
【0018】
<変形例1−1>
伝熱部14の形状は、
図2に示した形状に限らない。例えば、
図3(a)に示すように、燃料電池セル集合体11aの高温領域と低温領域にかけて、傾斜ではなく段差(階段状)を有して連続させてもよい。また、
図3(b)に示すように、段差と傾斜とを組み合わせによって連続させてもよい。これらは、発電時における燃料電池セル集合体11aの温度勾配傾向に応じて任意に形状を定めることが好ましい。また、
図3(c)に示すように、伝熱部14の一部に開口部14cを備えてもよい。これによると、伝熱部14の強度を維持することができる。なお、伝熱部14の各辺の形状や角部処理は、直線に限定されず、曲線によって連続させてもよい。
【0019】
<変形例1−2>
燃料電池セル集合体11aの下側の温度勾配は、中央と比較して両端の温度が低い傾向にある。つまり、燃料電池セル集合体11aの下側中央は、中温領域に大別される場合がある。そこで、
図4(a)〜(f)に示すように、燃料電池セル集合体11aの下側両端と伝熱部14とを対向させ、燃料電池セル集合体11aの下側の中央部と伝熱部14とを非対向にしてもよい。これにより、高温領域の熱を優先的に燃料電池セル集合体11aの下側両端に伝達させることができる。例えば、水素富化ガス供給管16が配置される側の端が他端より燃料電池セル集合体11aの温度が低い傾向にある場合は、非対向の部分を他端側に偏在させて、水素富化ガス供給管16が配置される側の端の伝熱面積を大きくしてもよい。
【0020】
伝熱部14は、燃料電池セル集合体11aの下側に配置された断熱材13に立設させる他、台座11bに立設させてもよい。また、
図1に示すように、伝熱部14の下方を屈曲させ、燃料電池セル集合体11aに対向する第1の伝熱部14aと、台座11bに接触する第2の伝熱部14bとを含んで形成されていてもよい。これにより、伝熱部14自体の設置安定性を高められる。また、燃料電池セル集合体11aの高温領域から輻射により受け取った熱を、第2の伝熱部14bの端部から台座11bに伝熱させて、台座11bの温度を上昇させることができる。台座11b自体の温度を上昇させることは、燃料電池セル集合体11aの下側温度の上昇につながる。これにより、燃料電池セル集合体11aの高温領域と低温領域との温度勾配を緩和することができる。
【0021】
[第2の実施形態]
図5及び
図6に、本発明に係る第2の実施形態を示す。なお、第1の実施形態と共通する事項については説明を省略する。
【0022】
第2の実施形態においては、伝熱部14は、燃料電池セル集合体11aを挟んで両側面側に配置される。
図5において、燃料電池セル集合体11aの左側(以下、単に左側という)に配置した伝熱部14Lの高さをH1、燃料電池セル集合体11aの高さをH2、燃料電池セル集合体11aの右側(以下、単に右側という)に配置した伝熱部14Rの高さをH3とする。例えば、燃料電池セル集合体11aの左側側面の温度勾配が右側側面の温度勾配と比較して大きい場合、伝熱部14の形状を下記(1)式のように設定する。
H1≒H3>H2・・・(1)
このようにすれば、温度勾配が相対的に大きい燃料電池セル集合体11aの左側側面の高温部から伝熱部14Lへの輻射を介して低温部に伝達される熱量が、温度勾配が相対的に小さい燃料電池セル集合体11aの右側側面の高温部から伝熱部14Rへの輻射を介して低温部へ伝達される熱量より大きくなるため、燃料電池セル集合体11aの左右方向の温度勾配も緩和することができる。
このように、燃料電池セル集合体11aの各側面における温度勾配に応じて伝熱部14の高さを変えることにより、燃料電池セル集合体11aと伝熱部14との輻射熱量を調節することが好ましい。
【0023】
<変形例2−1>
また、
図6に示すように、伝熱部14L,14Rの長手方向において以下のように各長さL1a,L1b、L2a,L2bを定義し、これらの長さの関係を後述のように設定する。
L1a:左側の伝熱部14Lにおいて、上辺の各端をそれぞれ底辺の反対側の各端と結ぶ2つの直線が交差する点(以下、適宜交点とも呼ぶ)O1から、図示前側(以下単に前側という)の側辺までの距離
L1b:同じく、交差する点O1から図示後側(以下単に後側という)の側辺までの距離
L2a:右側の伝熱部14Rにおいて、上辺の各端をそれぞれ底辺の反対側の各端と結ぶ2つの直線が交差する点O2から、前側の側辺までの距離
L2b:同じく、交差する点O2から後側の側辺までの距離
【0024】
改質器12への原燃料供給管15が、改質器12の前側に接続されている場合、伝熱部14の形状を下記(2)式のように設定する。
L1a>L1b又は/及びL2a>L2b・・・(2)
改質器12での改質方式が水蒸気改質反応(吸熱反応)である場合、改質器12の周辺部からの吸熱量が大きい。特に、原燃料供給管15が接続される側の端は、他端と比較して優先的に吸熱反応が起こるため、吸熱量が大きい。そのため、燃料電池セル集合体11aの前側は、燃料電池セル集合体11aの後側と比較して低温になる傾向にある。その影響を受けて燃料電池セル集合体11aの高温領域の位置が、後側に偏在する。そこで、上記(1)式のような関係になるように伝熱部14の形状を設定することによって、比較的温度が低い部分からの輻射熱量を減らし、比較的温度が高い部分からの輻射熱を燃料電池セル集合体11aの下側に伝達することができる。これにより、燃料電池セル集合体11aの上下方向の温度勾配だけでなく、前後方向の温度勾配も緩和することができる。
【0025】
<変形例2−2>
改質器12への原燃料供給管15が、改質器12の前側かつ右側寄りに接続されている場合、伝熱部14の形状を下記(3)式のように設定する。
1>L1b/L1a>L2b/L2a・・・(3)
燃料電池セル集合体11aの前側の改質器12の前側は、左側と比較して右側の方が低温となる傾向にある。そこで、前側の端面までの距離L1a,L2aを、後側の端面までの距離L1b,L2bより大きくし、かつ、伝熱部14Rの交点O2から前側端面までの距離L1aを、伝熱部14Lの交点O1から後側端面までの距離L1bより大きくする。
【0026】
これにより、燃料電池セル集合体11aの左側面部と右側面部のそれぞれの高温領域から伝熱部14L,14Rへの輻射効率を高めることができる。ひいては、燃料電池セル集合体11aの左右方向および前後方向の温度勾配を緩和できる。
【0027】
<変形例2−3>
また、
図6(a)及び(b)に示される伝熱部14L,14R各部の面積A1a,A1b、A2a,A2bを下記のように定義する。
A1a:伝熱部14Lにおいて、上辺の各端をそれぞれ底辺の反対側の各端と結ぶ2つの直線を交差させ、該交差する点O1を通る上下方向の垂直線X1に対して前側の面積
A1b:同じく、交差する点O1を通る上下方向の垂直線X1に対して後側の面積
A2a:伝熱部14Rにおいて、上辺の各端をそれぞれ底辺の反対側の各端と結ぶ2つの直線を交差させ、該交差する点O2を通る上下方向の垂直線X2に対して前側の面積
A2b:同じく、交差する点O2を通る上下方向の垂直線X2に対して後側の面積
これら面積を用いて伝熱部14の形状を下記(4)式のように設定してもよい。
A1a>A1bかつA2a>A2b・・・(4)
これにより、原燃料供給15が接続される側とは反対側に偏在する燃料電池セル集合体11aの高温領域から伝熱部14へ効率よく輻射させることができ、燃料電池セル集合体11aの温度勾配を緩和することができる。
【0028】
また、改質器12の吸熱部が前側かつ右側に偏在する場合には、上記(4)式に下記(5)式の設定を加えた構成とする。
<変形例2−4>
A1a>A1bかつA2a>A2b・・・(4)
A1a>A2a又はA2a>A2b・・・(5)
このようにすれば、燃料電池セル集合体11aの左側部と右側部とで異なる高温領域の位置に、それぞれ対向する伝熱部14L,14Rを近づけられる。ひいては、燃料電池セル集合体11aの上下方向、左右方向、および前後方向の温度勾配も緩和することができる。なお、「改質器12の吸熱部が前側かつ右側に偏在する場合」とは、例えば改質器12の内部流路が折り返し構造となっている場合が挙げられる。
【0029】
なお、第2実施形態においては、伝熱部14における第2の伝熱部14bを、燃料電池セル集合体11aの下側に配置された断熱材13と台座11bとの間に配置した構造を示した。これにより、第2の伝熱部14bから台座11bへの伝熱面積を大きく確保することができる。ひいては、燃料電池セル集合体11aの下側温度の上昇に寄与し、燃料電池セル集合体11aの温度勾配を効果的に緩和することができる。また、伝熱部14自体の設置安定性をさらに高めることもできる。なお、当該形状の伝熱部14を第1実施形態に適用し、または、第1実施形態の伝熱部14を第2実施形態に適用してもよい。
【0030】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。例えば、燃料電池セル集合体11aを構成する複数の固体酸化物形燃料電池セルの隙間に伝熱部14を挿入してもよい。また、伝熱部14の変形を抑制するために、伝熱部14に凹状又は凸状の加工を施してもよい。或いは、伝熱部14と燃料電池セル集合体11aとの接触抑制、または、酸化剤の流路形成を目的として、伝熱部14と燃料電池セル集合体11aとの間に、部分的に絶縁部材を介装してもよい。
【0031】
また、改質器12は枠体1内部に備えなくてもよい。例えば、枠体1外部に改質器を備え、そこで生成された水素富化ガスを燃料供給配管から燃料電池セル集合体11aに供給する形態がある。または、改質器に代えて、燃料供給配管と燃料電池セル集合体の間に、脱水素反応部、および脱水素反応部から脱水素化物を排出する脱水素化物排出管を備え、燃料供給配管から脱水素反応部に水素を吸蔵した有機ハイドライドを供給し、脱水素反応によって生成した水素リッチガスを燃料電池セル集合体に供給する形態がある。あるいは、固体酸化物形燃料電池装置の外部から水素リッチガスを水素富化ガス供給管16に供給する形態がある。