特許第6239938号(P6239938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239938
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20171120BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02C7/18 C
   F01D25/12 E
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-229510(P2013-229510)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-90086(P2015-90086A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】宇留野 智紀
(72)【発明者】
【氏名】林 明典
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏和
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−079484(JP,A)
【文献】 特開2009−079789(JP,A)
【文献】 特開2001−020703(JP,A)
【文献】 特開2011−220328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F01D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼空気と燃料とを燃焼して燃焼ガスを生成する円筒状の内筒と、前記内筒の外側に同心円状に配置された外筒と、前記外筒の上流側端部に設けたエンドカバーと、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とで形成される燃焼用空気が流れる環状流路とを備えたガスタービン燃焼器において、
前記内筒の外周面と内周面との間の内筒壁の内部に、横断面視で上流側に端部を配置したコ字状の流路が形成され、
前記流路は、前記内筒の軸方向に平行な方向に形成され一端側に前記内筒壁の外側に開口する供給孔が設けられた第1流路と、前記第1流路の他端側とその他端側で連通し、その一端側に前記内筒壁の内側に開口する噴出孔が設けられた第2流路とを備え、
前記供給孔から流入した燃焼用空気の一部は、前記第1流路を前記燃焼ガスの流れ方向と同じ方向に向かって流れ、その後、折り返して前記第2流路を前記燃焼ガスの流れ方向と反対方向に向かって流れ、前記噴出孔から前記内筒の内部に噴出することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービン燃焼器において、
前記流路を構成する前記第1流路の長さを、前記第2流路の長さよりも長く形成したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記供給孔から流入した燃焼用空気の一部が前記燃焼ガスの流れ方向と同じ方向に向かって流れる前記第1流路と折り返して前記燃焼ガスの流れ方向と反対方向に向かって流れる前記第2流路との前記内筒の方向の間に前記噴出孔を形成したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
燃焼空気と燃料とを燃焼して燃焼ガスを生成する円筒状の内筒と、前記内筒の外側に同心円状に配置された外筒と、前記外筒の上流側端部に設けたエンドカバーと、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とで形成される燃焼用空気が流れる環状流路とを備えたガスタービン燃焼器において、
前記内筒の外周面と内周面との間の内筒壁の内部に、横断面視で上流側に端部を配置したコ字状の流路が形成され、
前記流路は、前記内筒の軸方向に延在して形成され一端側に前記内筒壁の外側に開口する供給孔が設けられた第1流路と、前記第1流路の他端側とその他端側で連通し、その一端側に前記内筒壁の内側に開口する噴出孔が設けられた第2流路とを備え、
前記第1流路および前記第2流路は、前記内筒の軸方向に対し斜めに傾斜する方向に形成されており、
前記供給孔から流入した燃焼用空気の一部は、前記第1流路を前記燃焼ガスの流れ方向と同じ方向に向かって流れ、その後、折り返して前記第2流路を前記燃焼ガスの流れ方向と反対方向に向かって流れ、前記噴出孔から前記内筒の内部に噴出することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第1流路と前記第2流路とを備えた流路からなる前記燃焼用空気の一部が流れる流路構造を、前記内筒壁内の周方向に複数形成したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記内筒の下流側に配置され、前記内筒の下流端が内挿するように嵌合される尾筒を備え、
前記第1流路と前記第2流路とを備えた流路からなる前記燃焼用空気の一部が流れる流路構造を、前記尾筒に内挿される前記内筒の下流端の壁内に形成したことを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用のガスタービン燃焼器においては、環境負荷の低減が求められており、燃焼によって生じる窒素酸化物(NOx)の排出量低減が重要な課題となっている。NOx排出量の低減は、ガスタービン燃焼器内における局所的な高温領域の発生を抑制することで図れる。具体的には、燃料と空気を燃焼前に混合し、燃料と空気の混合比を理論混合比よりも低い状態で燃焼させればよい。したがって、NOx排出量の低減には、燃焼用空気の量を増やして混合比を下げることが効果的である。
【0003】
ところで、ガスタービン燃焼器は、一般に、燃料と空気とを混合した混合気を生成する混合器と、混合器の下流に配置され混合気を燃焼させる内筒とを備えている。内筒の内部では、燃焼反応が行われるため、内筒壁は高温の燃焼ガスに曝される。このため、従来のガスタービン燃焼器においては、燃焼用空気の一部を使って内筒壁面に膜状の冷却空気を流す膜冷却構造が採用されていた。
【0004】
一般に、圧縮機から燃焼器に供給される圧縮空気は、内筒壁の冷却空気と燃焼用空気とに分配されている。このため、内筒壁の冷却空気の量を増やすと、燃焼用空気の量が減ってしまいNOx排出量の低減が困難になる。そこで、内筒壁内に冷却空気の通路を形成し、冷却空気が通路を通ることでの対流冷却と、通路を出た空気を膜冷却に使用し、冷却効果を高めて冷却空気を削減する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−79789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、産業用ガスタービンは、排出する二酸化炭素の量を削減するために高効率化が望まれている。このため、燃焼器出口(ガスタービン入口)における燃焼ガス温度の高温化が図られており、燃焼器内筒の冷却性能の向上が必須になってきている。また、燃焼ガス温度の高温化は、NOx排出量を増加させる要因となるので、燃焼用空気量を増大させるために、冷却空気量を減少させる必要が生じる。これらの課題を解決するために燃焼器内筒の冷却性能の更なる向上が望まれている。
【0007】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたものであって、その目的は、ガスタービン燃焼器の内筒の冷却性能の向上とNOx排出量の低減とを可能としたガスタービン燃焼器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、燃焼空気と燃料とを燃焼して燃焼ガスを生成する円筒状の内筒と、前記内筒の外側に同心円状に配置された外筒と、前記外筒の上流側端部に設けたエンドカバーと、前記内筒の外周面と前記外筒の内周面とで形成される燃焼用空気が流れる環状流路とを備えたガスタービン燃焼器において、前記内筒の外周面と内周面との間の内筒壁の内部に、横断面視で上流側に端部を配置したコ字状の流路が形成され、前記流路は、前記内筒の軸方向に平行な方向に形成され一端側に前記内筒壁の外側に開口する供給孔が設けられた第1流路と、前記第1流路の他端側とその他端側で連通し、その一端側に前記内筒壁の内側に開口する噴出孔が設けられた第2流路とを備え、前記供給孔から流入した燃焼用空気の一部は、前記第1流路を前記燃焼ガスの流れ方向と同じ方向に向かって流れ、その後、折り返して前記第2流路を前記燃焼ガスの流れ方向と反対方向に向かって流れ、前記噴出孔から前記内筒の内部に噴出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスタービン燃焼器の内筒の冷却性能を向上させたので、冷却空気量の減少がなされ、燃焼空気量を増やすことができる。この結果、NOx排出量の低減を可能とした高信頼性のガスタービン燃焼器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態の要部の側断面図をガスタービンプラント全体の模式図と併せて表した概略構成図である。
図2】本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態を構成する内筒と尾筒の配置構成を示す概略構成図である。
図3図2のZ部を拡大して示す内筒と尾筒の縦断面図である。
図4図2のA−A線における内筒の横断面図である。
図5図4のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図6図4のC−C線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図7】従来のガスタービン燃焼器を構成する内筒と尾筒の縦断面図である。
図8】本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図である。
図9図8のA−A線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図10図8のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図11】本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態を構成する内筒の噴出孔から内筒下流端までの長さに対する冷却効率を示す特性図である。
図12】本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図である。
図13図12のA−A線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図14図12のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図15図12のC−C線における内筒と尾筒の縦断面図である。
図16】本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のガスタービン燃焼器の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態の要部の側断面図をガスタービンプラント全体の模式図と併せて表した概略構成図である。
図1に示すガスタービンプラントは、主として、空気を圧縮して高圧の圧縮空気12を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される圧縮空気12から分配された燃焼用空気14と燃料とを混合して燃焼させて燃焼ガス16を生成する燃焼器3と、燃焼器3で生成した燃焼ガス16が導入されるタービン2と、タービン2の駆動により回転され電力を発生する発電機4とを備えている。なお、圧縮機1とタービン2と発電機4とは回転軸で連結されている。
【0013】
燃焼器3は、燃焼空気14と燃料とを燃焼して燃焼ガス16を生成する内筒5と、内筒5の下流に位置し、ガスタービン2と内筒5とを接続する尾筒6と、内筒5と尾筒6を収納した外筒7と、外筒7の上流側端部に設けたエンドカバー8と、内筒5の上流側に配置された拡散燃焼バーナ19と予混合燃焼バーナ20とを備えている。拡散燃焼バーナ19は燃料ノズル9を、予混合燃焼バーナ20は燃料ノズル10をそれぞれ備えている。
【0014】
内筒5と尾筒6との接続部は、内筒5の下流側端部が尾筒6の上流側端部に内挿され、内筒5の下流側端部の外周側に設けられた板ばねのシール部品100で嵌合状態を保持している。
【0015】
圧縮機1から吐出された圧縮空気12は、内筒5と尾筒6と外筒7とで形成される環状の流路を通って、その一部は内筒5や尾筒6の冷却空気13として使用され、残りの空気は燃焼空気14として、拡散燃焼バーナ19や予混合燃焼バーナ20に供給される。この燃焼空気14と各バーナに設置された燃料ノズル9、10から噴射した燃料とを混合して燃焼させることで、内筒5内に拡散火炎17と予混合火炎18とが形成される。
【0016】
次に、内筒壁の構造について図2乃至図6を用いて説明する。図2は本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態を構成する内筒と尾筒の配置構成を示す概略構成図、図3図2のZ部を拡大して示す内筒と尾筒の縦断面図、図4図2のA−A線における内筒の横断面図、図5図4のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図、図6図4のC−C線における内筒と尾筒の縦断面図である。図2乃至図6において、図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0017】
図2に示すZ部は、内筒5と尾筒6との接続部であって、上述したように内筒5の下流側端部の外周側に設けられた板ばねのシール部品100が、内筒5と尾筒6との嵌合状態を保持している。
【0018】
図3は、内筒5と尾筒6との接続部の拡大縦断面図である。図3において、101は尾筒壁を、102は内筒壁を、105は内筒壁102の内部に設けられた冷却空気の流路を、106はリップをそれぞれ示している。
【0019】
図4乃至図6に示すように、内筒壁102の内部には、横断面視で上流側に端部を配置したコ字状のリターンフロー形状に形成した冷却空気の流路105が、内筒壁102の径方向に複数形成されている。1つの流路105の一方の端部には、図5に示す内筒5の外側に開口する供給孔104が設けられ、流路105の他方の端部には、図6に示す内筒5の内側に開口する噴出孔107が設けられている。
【0020】
換言すると、流路105は、燃焼器3の軸方向に平行な方向に形成され、一端側に供給孔104が設けられた第1流路105aと、燃焼器3の軸方向に平行な方向に形成され、一端側に噴出孔107が設けられた第2流路105bと、燃焼器3の周方向に平行に形成され、第1流路105aの他端側と第2流路105bの他端側とを連通する第3流路105cとを備えている。なお、図6において、X1は噴出孔107の中心点を、X3は内筒5の下流端を示し、L3は噴出孔107の中心点X1から内筒5の下流端X3までの距離を示している。
【0021】
図5に示すように、尾筒6の尾筒壁101の外側を下流側から上流側へ圧送される圧縮空気12は、冷却空気13として内筒5の外側に開口する供給孔104から第1流路105aに流入し、内筒5の下流端まで流れ、その後、第3流路105cを通過して第2流路105bを折り返して、図6に示すように上流側に流れ、噴出孔107から内筒5の内部に噴出する。噴出孔107から出た冷却空気13は、リップ106にガイドされることにより、内筒壁102の壁面に沿って、燃焼ガス16と同じ方向に流れる。
【0022】
次に、本実施の形態と比較するために、内筒壁の内部に流路を持たない内筒5と尾筒6との接続部を有する燃焼器について図7を用いて説明する。図7は従来のガスタービン燃焼器を構成する内筒と尾筒の縦断面図である。図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0023】
図7において、200は内筒5の内筒壁を、201は冷却空気13を内筒5の内部に導入する冷却孔をそれぞれ示している。図7に示す従来技術は、内筒壁200の壁面の冷却方法として膜空気冷却方式を採用した場合の構造であり、冷却孔201から流入した冷却空気13はリップ106によって、内筒壁面に沿った流れ方向に流れを形成する。
【0024】
このように構成された従来技術では、内筒壁200の外表面には、シール部品100が設置され、さらに、その外側には尾筒壁101が覆っている。一般には、内筒5と尾筒6の外側を流れる圧縮空気12によって対流冷却の効果が得られるが、尾筒壁101に覆われた内筒壁200の部位では、対流冷却の効果を得られない。このため、膜冷却のみで内筒壁200の部位を冷却する必要が生じる。
【0025】
冷却孔201の中心から内筒壁下流端までの距離Lは、一般に比較的長く形成されている。また、内筒壁下流端の近傍は、シール部品100と尾筒壁101とが外側を覆っているので、冷却孔201を設けることができない。このため、内筒壁200の下流端までを膜冷却で十分に冷却するためには、冷却孔201の径を大きくし、冷却空気13の量を増やさなければならない。この場合、冷却空気13の量の増加により、燃焼空気14の量が減少するので、NOx排出量が増加するという問題が生じる。
【0026】
このような問題に対して、本発明の第1の実施の形態によれば、図4乃至図6に示すように、供給孔104から流入した冷却空気13は、内筒壁102の内部に形成した第1流路105aを燃焼ガス16の流れ方向と同方向に向かって内筒5の下流端付近まで流れ、その後、第3流路105cを通過して第2流路105bを折り返して反対方向に向かって流れ、噴出孔107から内筒5の内部に噴出する。噴出孔107から出た冷却空気13は、リップ106にガイドされることにより、内筒壁102の壁面に沿って、燃焼ガス16と同じ方向の流れを形成する。
【0027】
上述した本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態によれば、ガスタービン燃焼器3の内筒5の冷却性能を向上させたので、冷却空気13の量の減少がなされ、燃焼空気14の量を増やすことができる。この結果、NOx排出量の低減を可能とした高信頼性のガスタービン燃焼器を提供できる。
【0028】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態によれば、冷却空気13が内筒壁102の内部を通ることで、対流冷却によって冷却性能を向上できる。特に、内筒壁102の下流端付近は、第3流路105cが内筒5の周方向に形成されていて、周方向に向かって冷却空気13が流れるため、内筒壁102の下流端付近は周方向に亘って冷却することができる。
【0029】
さらに、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態によれば、噴出孔107から内筒5の内部に噴出した冷却空気13は膜冷却用の空気として活用できるので、二重の冷却効果で内筒5の信頼性を向上できる。
【0030】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第1の実施の形態によれば、少ない冷却空気13で従来技術と同等以上の冷却性能を得ることができるので、燃焼空気14の量を増加することができる。このことにより、NOx排出量の低減と、燃焼ガス16の温度を下げることが可能になる。燃焼ガス16の温度低下により内筒5以外の構成部品についても信頼性を向上できる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、流路105を横断面視で上流側に端部を配置したコ字状に形成した例を説明したが、これに限るものではない。燃焼器3の上流外側から冷却空気13が流入され内筒壁102内部を下流方向に向かう一の流路と、折り返して冷却空気13が上流方向に向かい、内筒5の内側に冷却空気13を噴出する噴出孔がその上流端側に設けられた他の流路とを備えたリターンフローの形状であれば、V字状やU字状に形成しても良い。
【0032】
また、本実施の形態においては、内筒5の下流端部の内筒壁102の内部に流路105を設けた例を説明したが、本発明を内筒5の下流端部以外の部分に適用することが可能であることは言うまでもない。
【実施例2】
【0033】
以下、本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。図8は本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図、図9図8のA−A線における内筒と尾筒の縦断面図、図10図8のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図、図11は本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態を構成する内筒の噴出孔から内筒下流端までの長さに対する冷却効率を示す特性図である。図8乃至図11において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0034】
図8乃至図10に示す本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、図8乃至図10に示すように、第1の実施の形態と同様の冷却空気の流路105を内筒壁102に構成するが、1つの流路105において、一端側に供給孔104が設けられた第1流路105aの供給孔104の中心点から内筒5の下流端までの長さをL1として、一端側に噴出孔107が設けられた第2流路105bの噴出孔107の中心点X2から内筒5の下流端X3までの長さL2としたときに、L1>L2となるように各流路を形成したことが異なる。
【0035】
このように構成した本実施の形態の冷却効果について、図11を用いて説明する。図11において、横軸は噴出孔107の中心点から内筒5の下流端X3までの距離Lを示し、X1は図6に示す第1の実施の形態における噴出孔107の中心点を示す。また、X2は図10に示す第2の実施の形態における噴出孔107の中心点を、X3は図6及び図10に示す内筒5の下流端をそれぞれ示している。また、縦軸は冷却効率を示している。したがって、特性線(a)は第1の実施の形態における冷却効率の特性を、特性線(b)は本実施の形態における冷却効率の特性をそれぞれ示している。
【0036】
ここで、冷却効率ηは以下の式(1)で表す。
η=Tg−Tm/Tg−Ta・・・・(1)
ここで、Tgは燃焼ガス温度、Tmは壁面温度、Taは冷却空気温度とする。
【0037】
一般に、冷却効率ηは、冷却空気の流量、温度が一定である場合、噴出孔107の中心点からの距離Lが長くなれば、長くなるほど低下する傾向を示す。第1の実施形態の特性線(a)と本実施形態の特性線(b)とを比較すると、本実施形態の噴出孔107の中心点X2から内筒壁102の下流端位置X3までの距離L2は、第1の実施の形態の距離L3よりも短いので、内筒壁102の下流端位置X3における膜冷却効率は、本実施の形態の効率η2が、第1の実施の形態の効率η3よりも高くなる。
【0038】
このことにより、本実施の形態においては、第1の実施の形態に比べて内筒壁102の下流端における冷却強化に効果がある。この結果、より信頼性の高い燃焼器内筒を提供することができる。
【0039】
上述した本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第2の実施の形態によれば、内筒壁102の下流端位置における冷却効率を高めることができるので、信頼性の高い燃焼器内筒を提供できる。
【実施例3】
【0041】
以下、本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態を図面を用いて説明する。図12は本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図、図13図12のA−A線における内筒と尾筒の縦断面図、図14図12のB−B線における内筒と尾筒の縦断面図、図15図12のC−C線における内筒と尾筒の縦断面図である。図12乃至図15において、図1乃至図11に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
図12乃至図15に示す本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態は、大略第1及び第2の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、図12乃至図15に示すように、第2の実施の形態と同様の冷却空気の流路105を内筒壁102に構成するが、1つの流路105において、噴出孔107側の第2流路105bの上流側端部に内筒壁102の径方向に延伸する第4流路105dを設けた点と、この第4流路105dの両端部のそれぞれに噴出孔107を設けた点が異なる。
【0043】
内筒壁102の軸方向に伸びる第1流路105aと第2流路105bとの方向の間に一の噴出孔107が配置され、内筒壁102の軸方向に伸びる第2流路105bと隣接する他の流路105の第1流路105aとの方向の間に他の噴出孔107が配置されている。
【0044】
このように構成した本実施の形態によれば、図13図14で示す第1流路105aと第2流路105bとは内部を冷却空気13が流れることでの対流冷却の効果が得られる。さらに、図12図15で示す第4流路105dの両端部の噴出孔107から噴出する冷却空気13は、内筒5の軸方向に伸びる流路105の間を膜冷却空気となって内筒壁102の内周に沿って流れるため、対流冷却と膜冷却の両方の効果で内筒壁102の周方向全周に亘って冷却することができる。この結果、内筒壁102の周方向での壁面温度の分布が小さくなるので、より信頼性の高い燃焼器内筒を提供できる。
【0045】
上述した本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第3の実施の形態によれば、対流冷却と膜冷却の両方の効果で内筒壁102の周方向全周に亘って冷却することができる。この結果、内筒壁102の周方向での壁面温度の分布が小さくなるので、より信頼性の高い燃焼器内筒を提供できる。
【実施例4】
【0047】
以下、本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態を図面を用いて説明する。図16は本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態を構成する内筒と尾筒の接続部に設けた流路を示す横断面図である。図16において、図1乃至図15に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図16に示す本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態は、大略第1の実施の形態と同様の機器で構成されるが、以下の構成が異なる。本実施の形態においては、図16に示すように、第1の実施の形態と同様の冷却空気の流路105を内筒壁102に構成するが、第1流路105aと第2流路105bとを内筒5の軸線Lに対し径方向にα°傾けて形成した点が異なる。
【0049】
このように構成した本実施の形態によれば、流路105は内筒5の軸線Lに対し径方向に傾いて形成しているので、流路105内を流れる冷却空気13の対流冷却の効果で、内筒壁102の周方向全周に亘って冷却することができる。この結果、内筒壁102の周方向での壁面温度の分布が低減可能となるので、より信頼性の高い燃焼器内筒を提供できる。
【0050】
上述した本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上述した本発明のガスタービン燃焼器の第4の実施の形態によれば、内筒壁102の周方向全周に亘って冷却することができるので、内筒壁102の周方向での壁面温度の分布が低減可能となる。この結果、より信頼性の高い燃焼器内筒を提供できる。
【0052】
また、本発明は上述した第1乃至第4の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 圧縮機
2 タービン
3 燃焼器
4 発電機
5 内筒
6 尾筒
7 外筒
12 圧縮空気
13 冷却空気
14 燃焼空気
16 燃焼ガス
101 尾筒壁
102 内筒壁
104 供給孔
105 流路
105a 第1流路
105b 第2流路
105c 第3流路
105d 第4流路
107 噴出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
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図16