特許第6239947号(P6239947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239947
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】通船ゲート装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/40 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   E02B7/40
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-237482(P2013-237482)
(22)【出願日】2013年11月16日
(65)【公開番号】特開2015-96691(P2015-96691A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111395
【氏名又は名称】ノダック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸治
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201001(JP,A)
【文献】 特開昭57−155414(JP,A)
【文献】 特開2002−021054(JP,A)
【文献】 特開昭58−013811(JP,A)
【文献】 米国特許第07037039(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0022402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20−7/54、8/02−8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船が通るゲート間隙を開閉する扉体と、
扉体に取り付けられ、船の通過時にその一部が押し当てられる押し当て部であって、船の進行方向に直交する横向きの回動軸周りに倒伏回動自在に設けられた押し当て部と、
扉体の閉鎖状態でロックし、押し当て部の倒伏回動動作に応動してロックを解除して扉体を開閉可能とするロック装置と、を含み、
扉体は、観音開き状に開閉する第1、第2の扉体で構成され、
ロック装置は、第1、第2の扉体のそれぞれに前記回動軸に直交する横向きの揺動軸周りに揺動自在に設けられ、扉体の閉鎖時には相互に係合部どうしを係合、離脱自在に係合させて該閉鎖状態をロックするとともに、通船時には少なくとも一方の扉体の押し当て部の倒伏回動動作に応動して相互の係合部どうしを離脱させるように揺動する第1、第2のシーソー体を有することを特徴とする通船ゲート装置。
【請求項2】
第1のシーソー体の係合部は、第1のシーソー体の一端部に設けられたピンを有し、
第2のシーソー体の係合部は、第2のシーソー体の一端部に設けられ該ピンを受けるピン受部を有することを特徴とする請求項記載の通船ゲート装置。
【請求項3】
第1、第2シーソー体は、揺動軸周りの重量バランスにより、係合部どうしを係合する方向に付勢されることを特徴とする請求項1又は2記載の通船ゲート装置。
【請求項4】
開いた扉体を自動的に閉鎖する自動閉鎖装置を含み、
扉体の自動閉鎖に連係して第1、第2シーソー体の係合部どうしを自動的に係合して扉体を閉鎖状態でロックする自動ロック構造を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通船ゲート装置。
【請求項5】
押し当て部は、横長の船当着面が形成されたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の通船ゲート装置。
【請求項6】
押し当て部とロック装置とが組み付けられ、扉体に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の通船ゲート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや貯水池、河川等に設置される流木止め設備等に設けられる通船ゲート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムや貯水池等に流木やゴミなどが流れ入るのを防止するために設置される流木止め設備には、作業船や監視船が通過することができるように通船ゲートが設けられている。通船ゲートは、通常は扉が閉鎖状態でロックされて流木等が流れるのを防止するとともに、船が通過する際にはロックが解除されて扉が開放され、船が通過した後再び扉を閉鎖してロックされるようになっている。通船ゲートは、手動又は自動で扉をロック、解除するものが知られている。手動ロック式の通船ゲートは、例えば、2つの扉を跨るようにかんぬき状のロック部材が設けられ、通船時に手動でロック部材を操作してロックを解除し、通船後に手動でロック部材を操作してロックするものであった(例えば、特許文献1「従来の技術」参照)。しかしながら、手動ロック式の通船ゲートでは、ロック解除作業の際に船を扉体のロック装置の近傍に寄せて一旦停止させる必要があるので高い操船技術が必要で煩雑な作業となり、操船者とロック解除作業者の複数の人手がいるとともに時間がかかるうえ、作業者の落水事故や船の接触・衝突事故等が生じる問題があった。
【0003】
一方、自動ロック式の通船ゲートとしては、例えば、船舶の推進力だけで解錠して扉を開き、船の通過後に自動で扉を閉鎖してロックすることができる自動ロック装置を備えたものが提案されている。例えば、特許文献1記載の自動ロック式通船ゲートは、開閉部分における固定側に、被固定側となる扉体にまで延び出ていて被固定側の溝と係脱させ得る可倒式のロック部材を備え、扉体には、通船時において扉体に対するロック部材の係合を自動的に解き、通船後のロック部材を自動的に係合させる自動ロック手段を備えている。自動ロック手段は、船舶が船舶保護材を押したとき扉体に対して摺動させ得るスライドアームと、スライドアームに取り付けられたブイプレートと、ロック部材と係合する押上部材と、ブイプレートに備えられている圧縮ばねと、通船後の閉扉時においてロック部材を扉体の溝に導く案内部材と、で構成され、ブイプレートの傾斜面を押上部材と係合させている。そして、通船時には、船が船舶保護部材を押した際にスライドアームがブイプレートをスライドさせ、ブイプレートが押上部材を押上げ、ロック部材を溝から離脱させることで、ロックを解除し扉体を開閉自在として通船を可能とするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−132140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の通船ゲート装置では、船の進行方向すなわち扉体に垂直方向にスライドさせるスライドアーム等のスライド構成でロックを解除する構造であるから、スライドアームを直線状にスライドさせるために船を真っ直ぐ押し当てる必要があるので該船が押し当たる船舶保護材の範囲を該スライドアーム近傍のみに設けざるを得なかった。したがって、扉体のロックを解除する際に船を押し当てる範囲が比較的狭いことから、該狭い範囲に船を導くために高い操船技術が要求されるとともに、船が扉体に接触や衝突して事故を起してしまうおそれが高かった。また、船が当たる位置が船舶保護部材のスライドアームの接続位置から離れていたり、角度がずれた場合には、直線方向に案内されるスライドアームに対して斜め方向や捻り状に無理に力が加わり、スライドアームやブイプレート等がスムーズにスライドされず、ロックを円滑に解除できず事故を起したり、装置が故障してしまうおそれがあり、実用性に劣る問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、船の通過に伴って自動的にロックを解除する通船ゲート装置であって、扉体のロックを確実に解除して通船を確実、迅速、安全に行える実用性が高い通船ゲート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、船BTが通るゲート間隙を開閉する扉体12と、扉体12に取り付けられ、船BTの通過時にその一部が押し当てられる押し当て部14であって、船BTの進行方向に直交する横向きの回動軸38周りに倒伏回動自在に設けられた押し当て部14と、扉体12の閉鎖状態でロックし、押し当て部14の倒伏回動動作に応動してロックを解除して扉体12を開閉可能とするロック装置16と、を含み、扉体は、観音開き状に開閉する第1、第2の扉体12で構成され、ロック装置16は、第1、第2の扉体12のそれぞれに前記回動軸38に直交する横向きの揺動軸52周りに揺動自在に設けられ、扉体12の閉鎖時には相互に係合部どうしを係合、離脱自在に係合させて該閉鎖状態をロックするとともに、通船時には少なくとも一方の扉体12の押し当て部14の倒伏回動動作に応動して相互の係合部(48、49)どうしを離脱させるように揺動する第1、第2のシーソー体54、55を有する通船ゲート装置10から構成される。押し当て部14の大きさや形状等は任意の構成でもよい。押し当て部14を大きく形成することで船を該押し当て部に当てやすく、利便性、安全性を向上できる。
【0008】
また、第1のシーソー体54の係合部(48)は、第1のシーソー体54の一端部に設けられたピン60を有し、第2のシーソー体55の係合部(49)は、第2のシーソー体55の一端部に設けられ該ピン60を受けるピン受部62を有することとしてもよい。
【0009】
また、第1、第2シーソー体54、55は、揺動軸52周りの重量バランスにより、係合部(48、49)どうしを係合する方向に付勢されることとしてもよい。
【0010】
また、開いた扉体12を自動的に閉鎖する自動閉鎖装置30を含み、扉体12の自動閉鎖に連係して第1、第2シーソー体54、55の係合部(48、49)どうしを自動的に係合して扉体12を閉鎖状態でロックする自動ロック構造70を有することとしてもよい。
【0011】
また、押し当て部14は、横長の船当着面40が形成されたこととしてもよい。
【0012】
また、押し当て部14とロック装置16とが組み付けられ、扉体12に着脱可能に取り付けられることとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の通船ゲート装置によれば、船が通るゲート間隙を開閉する扉体と、扉体に取り付けられ、船の通過時にその一部が押し当てられる押し当て部であって、船の進行方向に直交する横向きの回動軸周りに倒伏回動自在に設けられた押し当て部と、扉体の閉鎖状態でロックし、押し当て部の倒伏回動動作に応動してロックを解除して扉体を開閉可能とするロック装置と、を含むことから、押し当て部の倒伏回動動作でロックを解除するので、該押し当て部に船が押し当たる位置及び範囲や角度等が限定されにくく、ロック解除の確実性を保持でき円滑にロック解除できる。その結果、例えば、押し当て部を大きく設けても確実なロック装置の解除操作を実現して、確実、迅速、安全にゲートを通船でき、実用性を向上できる。
【0014】
また、扉体は、観音開き状に開閉する第1、第2の扉体で構成され、ロック装置は、第1、第2の扉体のそれぞれに前記回動軸に直交する横向きの揺動軸周りに揺動自在に設けられ、扉体の閉鎖時には相互に係合部どうしを係合、離脱自在に係合させて該閉鎖状態をロックするとともに、通船時には少なくとも一方の扉体の押し当て部の倒伏回動動作に応動して相互の係合部どうしを離脱させるように揺動する第1、第2のシーソー体を有する構成とすることにより、押し当て部の倒伏回動動作をロック解除操作に変換する構造を簡単な構造で具体的に実現できる。さらに、観音開き状の扉体のいずれか一方の押し当て部を船で押し当てることにより、両側の扉体を同時にロック解除して開閉自在とできるので、利便性が高く、より確実、迅速、安全に通船することができる。
【0015】
また、第1のシーソー体の係合部は、第1のシーソー体の一端部に設けられたピンを有し、第2のシーソー体の係合部は、第2のシーソー体の一端部に設けられ該ピンを受けるピン受部を有する構成とすることにより、簡単な構成でロック装置を具体的に実現できる。
【0016】
また、第1、第2シーソー体は、揺動軸周りの重量バランスにより、係合部どうしを係合する方向に付勢される構成とすることにより、簡単な構成でロック装置を具体的に実現できる。また、扉体の閉鎖状態でのロックをスムーズに行える。
【0017】
また、開いた扉体を自動的に閉鎖する自動閉鎖装置を含み、扉体の自動閉鎖に連係して第1、第2シーソー体の係合部どうしを自動的に係合して扉体を閉鎖状態でロックする自動ロック構造を有する構成とすることにより、通船後に自動的に扉体が閉鎖されてロック装置が自動的にロックされるので利便性が高い。
【0018】
また、押し当て部は、横長の船当着面が形成された構成とすることにより、扉体のロック解除のために船を押し当てる範囲を広く確保できるので、利便性がよく、事故防止や安全面の向上を図ることができる。
【0019】
また、押し当て部とロック装置とが組み付けられ、扉体に着脱可能に取り付けられる構成とすることにより、通船ゲート装置を簡単に施工できる。特に、既設の通船ゲートに、予め押し当て部とロック装置とを組み付けておいたものを、後付け的に取り付けるだけで省力、短期間で施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る通船ゲート装置の正面図である。
図2図1の通船ゲート装置の平面図及び作用説明図である。
図3】流木止め設備の概略平面図である。
図4図1の通船ゲート装置の押し当て部及びロック装置部分の拡大図である。
図5図4の平面図である。
図6図5のA−A線断面図の上部側を示す要部説明図である。
図7図4の一部を切り欠いて省略して示した斜視図である。
図8図6のB−B線断面図である。
図9図6のC−C線断面図である。
図10】一方の扉体の押し当て部に船が押し当てた際の作用説明図である。
図11】一方の扉体の押し当て部に船が押し当てた際の作用説明図である。
図12】他方の扉体の押し当て部に船が押し当てた際の作用説明図である。
図13】他方の扉体の押し当て部に船が押し当てた際の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下添付図面を参照しつつ本発明の通船ゲート装置の実施形態について説明する。本発明に係る通船ゲート装置は、ダムや貯水池等に設置される流木止め設備や網場に設けられ、船の通過に伴って自動的にロックを解除して扉体を押し開ける自動ロック解除式の通船ゲートである。図1ないし図13は、本発明の通船ゲート装置の一実施形態を示している。図1図2に示すように、本実施形態において、通船ゲート装置10は、扉体12と、扉体12に取り付けられた押し当て部14と、ロック装置16と、を含む。図3に示すように、流木止め設備80は、例えば、ネット等をフロートで水中に浮力支持させてあり、その中間位置に通船ゲート装置10が設置される。
【0022】
図1図2に示すように、通船ゲート装置10は、例えば、流木止め設備のネットに連結される枠体18であって、船が通過するゲート間隙を形成する枠体18を有している。枠体18は、例えば、正面視で、略U字型に形成されその中央部分にゲート間隙17を形成しており、左右両端部側をネットに接続している。枠体18は、両端部側にフロート20が取り付けられ、該フロート20で水面側に半没状に浮力支持されている。枠体18には、両端部側の上端部に作業用の足場22が設けられている。
【0023】
扉体12は、枠体18に形成されるゲート間隙17を開閉自在に閉鎖するように該枠体18に取り付けられている。図1図2に示すように、本実施形態では、扉体12は、例えば、観音開き状に開閉する左右2枚で1対の扉体(第1、第2扉体)からなり、常時は閉鎖され、通船時に開かれる。第1、第2扉体12は、例えば、従来の通船ゲートの扉体と同じ構成であり、それぞれ枠体18に縦軸周りに回動自在にヒンジ部で枢支されている。第1、第2扉体12は、例えば、扉フレーム24にネット26を張設して設けられるとともに、複数のフロート28が取り付けられている。図6に示すように、第1、第2扉体12の扉フレーム24は、例えば、互いに近接する自由端側の上部側隅部が段下がり状に凹設されている。
【0024】
本実施形態では、第1、第2扉体12を閉鎖方向に付勢する自動閉鎖装置30が設けられている。自動閉鎖装置30は、通船時に開かれた第1、第2扉体12を自動的に閉鎖するようになっている。自動閉鎖装置30は、例えば、第1、第2扉体12にワイヤ等の索条32を介して吊り下げられた錘34を含む。索条32は、下端に錘34が固定されるとともに、枠体18に設けられた通係部36を通して、その上端を第1、第2扉体12の開閉自由端側に取り付けられている。自動閉鎖装置30は、第1、第2扉体12が開いた状態から錘34の沈下に伴って索条32を介して該扉体12を枠体18に引き寄せて自動的に該扉体12を閉鎖させる。なお、自動閉鎖装置30は、バネや扉体のヒンジ構成等により第1、第2扉体12を自動的に閉鎖する構造でもよい。
【0025】
図1図2図4図7に示すように、押し当て部14は、扉体12に取り付けられ、船の通過時にその船の一部が押し当てられる扉体側の受け部である。押し当て部14は、扉体12の閉鎖状態で船の進行方向(ゲート間隙を通過する方向)に直交する方向、すなわち、扉体12の扉面と略平行な方向、に横向きに設置された回動軸38周りに倒伏回動自在に設けられる。押し当て部14は、該押し当て部14と連係する後述のロック装置16とともに扉体のロック施錠、開錠を行う施錠装置39を構成する。本実施形態では、押し当て部14は、例えば、横長の矩形板状に形成されるとともに一端部を略く字状に曲折して設けられた板状部材からなり、金属製のベース板にゴム等の緩衝材を張設して横長に船当着面40が設けられている。押し当て部14は、第1、第2扉体12のそれぞれの上部側で前後両面側に立てて対向して配置されている。図1上では、押し当て部14は、例えば、その横方向の長さが各扉体の横幅の約2/3程度の長さに設定されている。なお、押し当て部14の大きさは任意でよいが、ある程度大きく設ける方が通船時の船の押し当てる範囲を広く確保でき、利便性、安全性を向上できる。
【0026】
図7図8図9に示すように、押し当て部14とその回動軸38は、扉体12に取り付けられた上向きコ字板状のベースフレーム42を介して支持されている。ベースフレーム42は、例えば、上向きコ字板状に形成されており、扉体12の扉フレーム24の一部を挟み付けるように扉フレーム24の下側からあてがわれて係合するブラケット44とボルトナット連結されて、扉体12に着脱可能に取り付けられている。ベースフレーム42の両側の上端にそれぞれ回動軸38が扉体12の扉面と平行状に横向きに支持されている。押し当て部14の船当着面40とは逆の背面側には、2個1対の板状の支持腕46がベース板から斜め下方に向けて突設されており、支持腕46の下端部に回動軸38の両端が接続されて押し当て部14が枢支されている。押し当て部14は、常時は船当着面40を略鉛直状に立てた状態で保持され(図8図9参照)、船の一部が押し当てられた際にその力を受けて回動軸38周りに船の進行方向に向けて倒伏回動するようになっている(図10図12参照)。なお、押し当て部14の回転範囲や角度を規制するストッパー等を設けることとしてもよい。
【0027】
図6図7に示すように、ロック装置16は、扉体12の閉鎖状態でロックするとともに、押し当て部14の回動軸38周りの倒伏回動動作に応動してロックを解除して扉体12を開閉可能とするロック手段である。ロック装置16は、例えば、第1、第2扉体12のそれぞれに取り付けられ互いに係合、離脱自在に係合して閉鎖状態の扉体12をロックする第1、第2ロック係合部48、49と、第1、第2扉体12に取り付けられているいずれかの押し当て部14の倒伏回動動作を第1、第2ロック係合部48、49の係合、離脱動作に変換する変換機構50と、を備えている。
【0028】
具体的には、ロック装置16は、第1、第2の扉体12のそれぞれに揺動自在に設けられた第1、第2シーソー体54、55と、押し当て部14の倒伏回動動作に応動させて第1、第2シーソー体54、55を揺動させる連係部56と、を有する。第1、第2シーソー体54、55は、押し当て部14の回動軸38とは直交する横向きの揺動軸52周りに揺動自在に設けられる。第1シーソー体54に第1ロック係合部48が設けられるとともに、第2シーソー体55に第2ロック係合部49が設けられている。第1、第2シーソー体54、55は、係合部が設けられた一端部どうしを互いに近接するように配置され、第1、第2扉体12の閉鎖時には相互にロック係合部48、49どうしを係合、離脱自在に係合させて該閉鎖状態をロックするようになっている。さらに、第1、第2シーソー体54、55は、通船時には少なくとも一方の扉体12の押し当て部14の倒伏回動動作に応動して相互のロック係合部54、55どうしを離脱させるように揺動する。すなわち、第1、第2シーソー体54、55と連係部56とが変換機構50を構成している。このように第1、第2扉体12にそれぞれ押し当て部14を配置すると同時にロック装置16をそれぞれの押し当て部14に応動させて解除作動させる構成であるので、少なくともいずれか一方の扉体12の押し当て部14を船で押すことにより、両側の扉体を同時に開錠することができる。
【0029】
図6図7図8に示すように、第1シーソー体54は、例えば、中間位置で2箇所略直角状に曲折し段差状に横長に設けられた桿状の揺動部材からなり、中間位置を揺動軸52で枢支されている。第1シーソー体54は、例えば、押し当て部14を支持するベースフレーム42に立設された中空のケーシング58の対向側壁に揺動軸52を支持させ、シーソー体の一部分が該ケーシング58の内部に配置されている。第1シーソー体54の一端側に設けられる第1ロック係合部48は、例えば、シーソー体の長手方向から直角状に下方に向けて突設されたピン60を有する。第1シーソー体54は、ピン60により揺動軸52周りの重量バランスでピン60を下方向に向けて揺動させるように付勢される。
【0030】
図6図7図9に示すように、第2シーソー体55は、例えば、横方向に長い直線状の揺動部材からなり、中間位置を揺動軸52で枢支されている。第2シーソー体55は、例えば、押し当て部14を支持するベースフレーム42に立設された中空のケーシング58の対向側壁に揺動軸52を支持させ、シーソー体の一部分が該ケーシング58の内部に配置されている。第2シーソー体55の一端側に設けられる第2ロック係合部49は、第1シーソー体54側のピン60を受けるピン受部62を有する。ピン受部62は、例えば、中央にピン60が挿入される孔63等の凹部が形成され、外形輪郭形状が上に向けて次第に狭くなるテーパ状の円錐台形状のコマ部材からなる。ピン受部62は、外面に上り傾斜面を形成している。第2シーソー体55のピン受部62と揺動軸52の間位置には、後述の連係部56を受ける受片67が立設されている。第2シーソー体55の他端側にはウェイト66が取り付けられており、第2シーソー体55は、揺動軸52周りの重量バランスでピン受部62を上方向に向けて揺動させるように付勢される。すなわち、上述のような重量バランスの第1シーソー体54と第2シーソー体55とは、それぞれ揺動軸52周りの重量バランスにより、相互のロック係合部48、49どうし、すなわちピン60とピン受部62、を係合する方向に付勢されている。
【0031】
図5図7図8図9に示すように、連係部56は、例えば、押し当て部14の回動軸38周りの倒伏回動動作に対応して同回動軸38周りに揺動する第1、第2係合突起64、65を含む。第1、第2係合突起64、65は、例えば、一方に長い棒状又は長板状部材からなり、それぞれ押し当て部14の支持腕46間に架設された固定板68から回動軸38に直交する横方向に突設されている。
【0032】
第1シーソー体54と係合する第1係合突起64は、例えば、第1シーソー体54においてピン60とは揺動軸52を挟んで反対側となる他端側に上方から当着して係合している。図10図11に示すように、押し当て部14が倒伏回転動作すると、第1係合突起64は第1シーソー体54の他端側を押下げてピン60側を上昇させるように揺動させる。第1係合突起64は、扉体12の前後両面に対向する押し当て部14から互いに差違え状に突出されて第1シーソー体54に係合している。なお、ケーシング58の側壁には係合突起64を貫通させる孔が形成されている。
【0033】
第2シーソー体55と係合する第2係合突起65は、例えば、第2シーソー体55においてピン受部62と揺動軸52との中間位置に上方から当着して係合している。図12図13に示すように、押し当て部14が倒伏回転動作すると、第2係合突起65は第2シーソー体55を押下げてピン受部62側を下降させるように揺動させる。第2係合突起65は、扉体12の前後両面に対向するそれぞれの押し当て部14から差違え状に突出されて第2シーソー体55に係合している。なお、上記同様にケーシング58の側壁には係合突起65を貫通させる孔が形成されている。
【0034】
本実施形態では、第1、第2扉体12の自動閉鎖に連係して第1、第2シーソー体54、55のロック係合部48、49どうしを自動的に係合して扉体12を閉鎖状態でロックさせる自動ロック構造70を有する。自動ロック構造70は、例えば、第1、第2シーソー体54、55の重量バランスによる付勢構成と、第2シーソー体55のピン受部62に形成された傾斜面と、を含む。自動ロック構造70は、通船後に開いていた第1、第2扉体12が閉鎖されると、その扉体12の閉動作に応じて第1シーソー体54のピン60が第2シーソー体55のピン受部62の傾斜面に沿って上り移動案内された後、ピン60がピン受部62の孔63に落ちて係合し、自動的に扉体を閉鎖状態でロックすることができる。
【0035】
第1、第2扉体12の各扉体において、押し当て部14と、ロック装置16の構成部材である第1、第2シーソー体54、55及び第1、第2係合突起64、65)と、はベースフレーム42等を介して各扉体ごとに一体的に組み付けられている。ベースフレーム42は上述のようにブラケット44とともにボルトナット連結されて扉体12に着脱可能に取り付けられるので、押し当て部14とロック装置16とを組み付けて構成する開錠装置39は、各扉体12に対して着脱可能に取り付けられる。これにより、既設の通船ゲートに上述のような開錠装置39を取り付けることで、簡単に本実施形態にかかる通船ゲート装置10を施工することもできる。また、ブラケットをボルトナットで取り付けるので、例えば、ピン60とピン受部62との相互の位置関係等を簡単に調整できる。なお、ベースフレーム42を扉体12に溶接等で固定することとしてもよい。
【0036】
次に本実施形態に係る通船ゲート装置10の作用及びゲートの通船方法について説明する。図1図6に示すように、常時は、第1、第2扉体12は閉鎖され、ロック装置16は、第1扉体12に取り付けられた第1シーソー体54のピン60と第2扉体12に取り付けられた第2シーソー体55のピン受部62とを係合させて、閉鎖状態でロックされている。船BTが通船ゲート装置10を通過する際には、例えば、図2に示すように、船BTが実線で表した位置で進行して来た場合には、図上、左側の第1扉体12の押し当て部14に船BTの船首が押し当てられる。図10図11に示すように、該押し当て部14は、回動軸38周りに倒伏回転動作するとともに、その倒伏回転動作に応動してロック装置16の第1シーソー体54を揺動させてピン60を上昇させて第2シーソー体55のピン受部62から離脱させてロックが解除される。さらに、船BTが進むとロックが解除された両扉体を押し開きながら、通船することができる。
【0037】
一方、船BTが通船ゲート装置10を通過する際に、例えば、図2に示すように、船BTが二点鎖線で表した位置で進行して来た場合には、図上、右側の第2扉体12の押し当て部14に船BTの船首が押し当てられる。図12図13に示すように、該押し当て部14は、回動軸38周りに倒伏回転動作するとともに、その倒伏回転動作に応動してロック装置16の第2シーソー体55を揺動させてピン受部62を下降させて第1シーソー体54のピン60と離脱させてロックが解除される。上記同様にさらに船BTが進むとロックが解除された両扉体を押し開きながら、通船することができる。
【0038】
このようにして、観音開き状に設置されている第1、第2扉体12の少なくともいずれか一方の扉体の押し当て部14に船を押し当てて倒伏回動動作させることにより、その動作に応動してロック装置16を解除し両側の扉体を開閉自在として、通船することができる。なお、船が両側の扉体12の押し当て部14に同時に押し当たると第1、第2シーソー体54、55がともに揺動してロックが解除される。ロック装置16による扉体12のロックの解除動作を押し当て部14の横向きの回転軸38周りの倒伏動作に応動させる構成であるので、船が押し当てられた際に容易に作動させることができ、しかも船が押し当たる位置や角度等が限定されにくい。その結果、確実、迅速、安全に通船ゲート装置を通船することができる。また、押し当て部14を横長に設けて船の押し当てる範囲を広く設けた場合でも確実にロック解除動作させることができ、実用性が高いゲート装置を実現できる。
【0039】
すなわち、本実施形態に係るゲートの通船方法では、船BTが通るゲート間隙を開閉可能に閉鎖する扉体12に、船の進行方向に直交する横向きの回動軸38周りに倒伏回動自在に設けられた押し当て部14の倒伏回動動作に応動して、扉体12のロック状態を解除しゲート間隙を通船させる。これにより、押し当て部14に船が押し当てられた際に、確実かつスムーズに扉体12のロックを解除して、迅速、安全に通船ゲートを通過することができる。
【0040】
通船ゲート装置10を船が通過した後には、押し当て部14は回動軸周りに逆方向に回動して元の位置に戻る。そして、自動閉鎖装置30の錘34により第1、第2扉体12が自動に閉鎖される。その際、第1、第2扉体12の閉動作に応じて第1シーソー体54のピン60が第2シーソー体55のピン受部62の傾斜面に沿って上り移動された後、ピン60がピン受部62の孔63に落ちて再び係合し、自動的に扉体12を閉鎖状態でロックする。
【0041】
以上説明した本発明の通船ゲート装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の通船ゲート装置及びゲートの通船方法は、ダムや貯水池等の流木止め設備や網場に設けられる通船ゲートに好適に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
10 通船ゲート装置
12 扉体
14 押し当て部
16 ロック装置
30 自動閉鎖装置
38 回動軸
40 施錠装置
48 第1ロック係合部
49 第2ロック係合部
52 揺動軸
54 第1シーソー体
55 第2シーソー体
60 ピン
62 ピン受部
70 自動ロック構造
BT 船
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
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図13