(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)成分が、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)と、必要に応じて(a)成分および/または(c)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)と、必要に応じて(a)成分および/または(b)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
(B)成分が、アルケニル基およびヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a1)と、必要に応じて(a1)成分および/または(c)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)と、必要に応じて(a)成分および/または(b)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンであることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
(B)成分が、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a2)と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)と、アルケニル基を1分子中に1個有する化合物(c1)とをヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンであることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。
(B)成分が、ヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a3)と、アルケニル基を1分子中に1個有する化合物(c1)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)が、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する環状シロキサンまたは直鎖状ポリシロキサンであることを特徴とする請求項5または7に記載の硬化性組成物。
ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)が、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項10に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0038】
<半導体発光装置>
本発明の半導体発光装置は、半導体からなる発光素子を後述の蛍光体と、(A)多面体構造ポリシロキサンを含有しないLED封止剤(100重量部)と、(B)多面体構造ポリシロキサン(0.1〜25重量部)を含有する硬化性組成物からなる蛍光体層で封止して得られる。発光素子を硬化性組成物で封止する方法としては、特に限定されないが、例えば、LED用パッケージに発光素子を実装し、硬化性組成物を注入・硬化して封止してもよいし、LED用パッケージを用いずに、プレス成形・トランスファー成形などの手法により、LED用基盤に実装したLEDを硬化性組成物で直接封止してもよい。ここで、LED用パッケージやLED用基盤としては、特に限定されず、汎用されているもの等を用いることができる。
【0039】
<半導体からなる発光素子>
本発明の半導体発光装置に用いられる半導体からなる発光素子としては、特に限定されず、半導体発光装置のLEDとして汎用されているもの等を用いることができる。例えば、放射した光により蛍光体を励起して可視光を発光させるものであり、青色発光タイプのLEDや紫外発光タイプのLEDなどが挙げられる。本発明の半導体発光装置においては、1つの半導体発光装置あたりに複数個の同一または異なる種類のLEDを実装してもよい。
【0040】
<蛍光体>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は蛍光体を含有し、蛍光体層を形成する。蛍光体は上記発光素子の発する光を吸収して異なる波長の光を発生するものであり、本発明の半導体発光装置に用いられる蛍光体としては、特に限定されず、一般的に公知の無機蛍光体や有機蛍光体を用いることができ、本発明の半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意のものを選択することができる。具体的に、例えば、YAG系蛍光体、LuAG系蛍光体、TAG系蛍光体、BOS系蛍光体、オルトシリケートアルカリ土類系蛍光体、α−サイアロン系蛍光体、β−サイアロン系蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体、ニトリドおよびオキシニトリド系蛍光体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら蛍光体は1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いることができる。
【0041】
本発明に用いる蛍光体の粒径には特に制限はないが、中央粒径(D50)が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。中央粒径(D50)が小さいと、組成物中で蛍光体が凝集してしまう場合があり、中央粒径(D50)が大きいと、蛍光体の塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる場合がある。また蛍光体の粒度分布(QD)は、組成物中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上あり、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。また、蛍光体の形状は、特に限定されず、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0042】
本発明における蛍光体の使用量には特に制限は無く、半導体発光装置が必要とする発光色を得るために任意の量を使用することができるが、あえて例示するならば、硬化性組成物中に好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下である。蛍光体の使用量が少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色が得られなくなる場合があり、蛍光体の使用量が多いと、組成物のハンドリング性が低下したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなったりする可能性がある。
【0043】
<多面体構造ポリシロキサンを含有しないLED封止剤(A)>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物の主成分は多面体構造ポリシロキサンを含有しないLED封止剤であり、公知の多面体構造ポリシロキサンを含有しないLED封止剤を使用できる。LED封止剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、ハイブリット樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
(A)成分の硬化反応としては、炭素−炭素二重結合基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル化反応、エポキシ基を有する化合物と酸無水物基を有する化合物の硬化反応などが挙げられる。
(A)成分の硬化反応としては、得られる硬化物の耐熱性、耐光性が優れる観点から炭素−炭素二重結合基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル化反応が好ましい。
メチルシリコーン樹脂の具体例としては、例えば、東レダウコーニング製のOE−6351、OE−6336、EG−6301、JCR−6140、JCR−6126、JCR−6122、JCR−6101、JCR−6115、JCR−6250、JCR−6109、JCR−6110、信越化学製のKER−2500、KER−2600、KER−2700などが挙げられる。
フェニルシリコーン樹脂の具体例としては、例えば、東レダウコーニング製のOE−6450、OE−6550、OE−6520、OE−6665、OE−6650、OE−6636、OE−6635、OE−6630、OE−6662、OE−6652、OE−7620、OE−7630、OE07640、JCR−6175、信越化学製のLPS−3600シリーズ、ASP−1111、ASP−1031、ASP−1120、KER−6000、KER−6100、KER−6110、KER−6150、KER−6200、KER−6075−F、KER−6020−Fなどが挙げられる。
ハイブリット樹脂の具体例としては、例えば、信越化学製のSCR−1011、SCR−1012、SCR−1016などが挙げられる。
【0044】
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ダイセル化学製のCELVENUSシリーズ、日東電工製のNTシリーズなどが挙げられる。
【0045】
(A)成分としては、耐熱性、耐光性、耐冷熱衝撃性をバランス良く備えているという観点からメチルシリコーン樹脂が好ましい。
(A)成分としては、耐熱性、耐光性、ガスバリア性をバランス良く備えているという観点からフェニルシリコーン樹脂が好ましい。
メチルシリコーン樹脂とは、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物を主成分とする硬化性組成物である。
主成分は2種以上であり、アルケニル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物から構成されるメチルシリコーン樹脂が、2液型硬化性組成物の保管安定性が良い点で好ましい。
メチルシリコーン樹脂のポリシロキサン単位としては[SiO
4/2]
、[(CH
3)SiO
3/2]
、[(CH
3)
2SiO
2/2]
、[(CH
3)
3SiO
1/2]のメチルシロキサン単位により構成される。
メチルシリコーン樹脂のアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
フェニルシリコーン樹脂とは、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物を主成分とする硬化性組成物である。
主成分は2種以上であり、アルケニル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物から構成されるフェニルシリコーン樹脂が、2液型硬化性組成物の保管安定性が良い点で好ましい。
【0046】
フェニルシリコーン樹脂は下式のシロキサン単位から主に構成される、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物を主成分とする硬化性組成物である。フェニルシリコーン樹脂のシロキサン単位としては、必ずフェニルシロキサン単位を含む。
【0048】
主成分は2種以上であり、アルケニル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有するポリシロキサン化合物から構成されるフェニルシリコーン樹脂が、2液型硬化性組成物の保管安定性が良い点で好ましい。(フェニルシリコーン樹脂のシロキサン単位としては、必ずフェニルシロキサン単位を含む。)
フェニルシリコーン樹脂のアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
また、(A)成分100重量部に対して、(B)成分0.1〜25重量部含有させることにより、蛍光体を含有する硬化性組成物をLEDにディスペンスする際の液詰まりを防止できる。
(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、1.0重量部以上がさらにより好ましい。0.1重量部未満の場合、LEDにディスペンスする際の液詰まりを抑制する効果が得られない。一方、25重量部以下が好ましく、15重量部以下がより好ましく、5重量部以下がさらにより好ましい。25重量部を超えると硬化物にタックが生じたり、耐熱性、耐光性、ガスバリア性が低下する。
【0049】
<多面体構造ポリシロキサン(B)>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は多面体構造ポリシロキサンを含有する。多面体構造ポリシロキサンとは多面体構造ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンである。
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサンとしては、公知の多面体構造ポリシロキサンを広く使用することができ、一般式[RSiO
3/2]
aや一般式[R
3SiO−SiO
3/2]
a(Rは任意の有機基、アルケニル基、水素原子であり、同一であっても異なっていてもよい。;aは6〜24の整数)で表されるシロキサン骨格から構成される多面体構造ポリシロキサンが例示されるが、その構造中に[R
2SiO
2/2]単位や[R
3SiO
1/2]単位を含む部分開裂型の多面体構造ポリシロキサンであってもよい。
本発明に用いられる多面体構造ポリシロキサン骨格を有するポリシロキサンは、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)と、必要に応じて(a)成分および/または(c)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)と、必要に応じて(a)成分および/または(b)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンであることが、得られる硬化物の耐熱性、耐光性、ガスバリア性が良く、しかもLEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される点から好ましい。
【0050】
多面体構造ポリシロキサン(B)は、前述の(A)成分に混ぜて硬化させた場合に、得られる硬化物の強度や耐熱性、耐光性、ガスバリア性、タックの観点から、1分子中にヒドロシリル基および/またはアルケニル基を平均して1つ以上含有することが好ましい。
【0051】
多面体構造ポリシロキサン(B)は、LED封止剤(A)がフェニルシリコーン樹脂などの有機基を有するLED封止剤の場合は、有機基を有する多面体構造ポリシロキサンが好ましい。有機基を有する多面体構造ポリシロキサンの場合、蛍光体との吸着性が向上し、蛍光体の凝集が抑制されるためにLEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される。
好ましい有機基としては脂環式の脂肪族炭化水素基、アリール基が挙げられる。これらの好ましい有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数の低い直鎖状の脂肪族炭化水素基と比べて、LEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される効果が高い。
好ましい脂環式の脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、イソボルニル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンタニル基、1−アダマンチル基、トリシクロペンタニル基、トリシクロペンテニル基、2,2-ジメチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ノルボルニル基などが挙げられる。好ましいアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、3−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、3−ブチルフェニル基、4−ブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、3−tブチルフェニル基、4−tブチルフェニル基、3−ペンチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、ビフェニル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基等が挙げられる。中でも、耐熱・耐光性の観点から、フェニル基が好ましい例として挙げられる。これらは、単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
(A)成分がメチルシリコーン樹脂の場合は、上記、好ましい有機基を有する多面体構造ポリシロキサンの相溶性が悪い場合があるため、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数の低い直鎖状の脂肪族炭化水素基を有する多面体構造ポリシロキサンが好ましい場合がある。
(A)成分がフェニルシリコーン樹脂の場合は、上記、好ましい有機基を有する立体構造ポリシロキサンの方が、蛍光体との吸着性が向上し、蛍光体の凝集が抑制されるためにLEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される場合がある。
【0052】
<アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)>
本発明の半導体発光装置に用いられるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)は、分子中にアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物であれば、特に限定はない。
アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物としては、具体的に例えば、以下の式
[R
7SiO
3/2]
x[R
8SiO
3/2]
y
(x+yは6〜24の整数;xは1以上の整数、yは0または1以上の整数;R
7はアルケニル基、水素原子;R
8は、任意の有機基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物を好適に用いることができ、さらには、以下の式
[AR
22SiO−SiO
3/2]
a[R
33SiO−SiO
3/2]
b
(a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;Aは、アルケニル基、水素原子;R
2は、アルキル基またはアリール基;R
3は、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基)で表されるシロキサン単位から構成されるアルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物が好ましいものとして例示される。
【0053】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0054】
R
2は、アルキル基またはアリール基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR
1としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
【0055】
R
3は、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基である。アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示され、また、アリール基としては、フェニル基、トリル基等のアリール基が例示される。本発明におけるR
2としては、耐熱性・耐光性の観点から、メチル基が好ましい。
aは1以上の整数であれば、特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサンによる蛍光体の凝集抑制効果の観点から、3以上が好ましく、6以上がさらに好ましい。また、bは、0または1以上の整数であれば、特に制限はない。
【0056】
aとbの和(=a+b)は、6〜24の整数であるが、化合物の安定性、得られる硬化物の安定性の観点から、6〜12、さらには、6〜10であることが好ましい。
【0057】
(a)成分の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成することができる。合成方法としては、例えば、R
9SiX
a3(式中R
9は、上述のR
7、R
8を表し、X
aは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって得られる。または、R
9SiX
a3の加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより閉環し、多面体構造ポリシロキサンを合成する方法も知られている。
【0058】
その他にも、例えば、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子とアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合した多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能となる。本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカを含有する物質からも、同様の多面体構造ポリシロキサンを得ることが可能である。
【0059】
また、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)のうち、アルケニル基とヒドロシリル基の両方を有する(a)成分を「アルケニル基およびヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a1)」、ヒドロシリル基を有さずアルケニル基を有する(a)を「アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a2)」、アルケニル基を有さずヒドロシリル基を有する(a)を「ヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a3)」と記載することもある。
【0060】
<ヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)>
本発明の半導体発光装置に用いられる、ヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)は、分子中に2個以上のヒドロシリル基またはアルケニル基を有していれば特に制限はないが、得られる多面体構造ポリシロキサンの透明性、耐熱性、耐光性の観点から、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物であることが好ましく、さらには、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する環状シロキサンあるいは直鎖状ポリシロキサンであることが好ましい。特に耐熱性、耐光性、ガスバリア性の観点からは、環状シロキサンであることが好ましい。
【0061】
ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する直鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリメチルフェニルシロキサンなどが例示される。
【0062】
特に、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する直鎖状ポリシロキサンとしては、反応させる際の反応性や得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、ジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリシロキサン、さらにはジメチルハイドロジェンシリル基で分子末端が封鎖されたポリジメチルシロキサンを好適に用いることができ、具体的に例えば、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサンなどが、好ましい例として例示される。
【0063】
ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロヘキサシロキサンなどが例示される。本発明における環状シロキサンとしては、工業的入手性および反応性、あるいは、得られる硬化物の耐熱性、耐光性等の観点から、具体的に例えば、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを好適に用いることができる。
【0064】
これら(b)成分である、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)のうち、アルケニル基を有さずヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物を「ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)」と記載する場合がある。
【0065】
<アルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)>
本発明の半導体発光装置に用いられるアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)は、アルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物であれば特に限定はされず、前述のヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)、または、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造または多分岐構造ポリシロキサン化合物(a)とヒドロシリル化反応する。
【0066】
(c)成分としては、有機基を有する化合物であることが、得られる多面体構造ポリシロキサン(B)の蛍光体との吸着性が向上し、蛍光体の凝集が抑制されるためにLEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される点から好ましい。
好ましい有機基としては前述の脂環式の脂肪族炭化水素基、アリール基が挙げられる。これらの好ましい有機基は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数の低い直鎖状の脂肪族炭化水素基と比べて、LEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制される効果が高い。
【0067】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等が例示されるが、耐熱性・耐光性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0068】
アルケニル基を1分子中に1個有する化合物の具体例としては、例えば、トリメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン等の炭素数の低いアルキル基を有する化合物、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン等のアリール基を有する化合物、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシアリルシラン、ジメトキシメチルアリルシラン、メトキシジメチルアリルシラン、トリエトキシアリルシラン、ジエトキシメチルアリルシラン、エトキシジメチルアリルシラン等のアルコキシシリル基を有する化合物、カンフェン、ノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン等の脂環式の脂肪族炭化水素基を有する化合物などが挙げられる。
(c)成分は、耐熱性、耐光性の観点から、シラン、またはポリシロキサンを有するケイ素化合物を含有する基が好ましい。このような(c)成分が、アルケニル基を1分子中に1個有するシランである場合、例えば、トリメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルトリエチルシラン、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、ジエチルフェニルビニルシラン、エチルジフェニルビニルシラン、アリルジメチルフェニルシラン、アリルメチルジフェニルシラン、アリルトリフェニルシラン、アリルジエチルフェニルシラン、アリルエチルジフェニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシアリルシラン、ジメトキシメチルアリルシラン、メトキシジメチルアリルシラン、トリエトキシアリルシラン、ジエトキシメチルアリルシラン、エトキシジメチルアリルシラン等が例示される。中でも、LEDへディスペンスする際の液詰まりが抑制され、耐熱性、耐光性の観点から、ジメチルフェニルビニルシラン、メチルジフェニルビニルシラン、トリフェニルビニルシランが好ましい例として挙げられる。
【0069】
(c)成分がアルケニル基を1分子中に1個有するポリシロキサンである場合、アルケニル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサン、アルケニル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
【0070】
(c)成分が、アルケニル基を1分子中に1個有する直鎖構造のポリシロキサンである場合、具体的に例えば、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0071】
分子末端にアルケニル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、[SiO
4/2]単位、[SiO
3/2]単位、[SiO
2/2]単位、[SiO
1/2]単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルビニルシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
【0072】
(c)成分が、アルケニル基を1分子中に1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ビニル−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ビニル−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
(c)成分が、ヒドロシリル基を1分子中に1個有するシランである場合、例えば、トリメチルヒドロシラン、ジメチルフェニルヒドロシラン、メチルジフェニルヒドロシラン、トリフェニルヒドロシラン、トリエチルヒドロシラン、ジエチルフェニルヒドロシラン、エチルジフェニルヒドロシラン等が例示される。
【0073】
(c)成分がヒドロシリル基を1分子中に1個有するポリシロキサンである場合、ヒドロシリル基を1個有する直鎖構造のポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を1個有する環状シロキサン等が例示される。
ヒドロシリル基を1分子中に1個有するポリシロキサン化合物としては、例えば、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジメチルシロキサン、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたポリジフェニルシロキサン、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたジメチルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体、ジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端がそれぞれ1個ずつ封鎖されたメチルフェニルシロキサン単位とジフェニルシロキサン単位との共重合体等が例示される。
【0074】
分子末端にヒドロシリル基を1個有するポリシロキサンである場合、具体的に例えば、先に例示したジメチルヒドロシリル基とトリメチルシリル基で末端が1個ずつ封鎖されたポリシロキサン、[SiO
4/2]単位、[SiO
3/2]単位、[SiO
2/2]単位、[SiO
1/2]単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位および1つのジメチルハイドロジェンシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
(c)成分が、ヒドロシリル基を1分子中に1個有する環状シロキサンである場合、具体的に例えば、1−ハイドロジェン−1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロジェン−3−フェニル−1,3,5,5,7,7−ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロジェン−3,5−ジフェニル−1,3,5,7,7−ペンタメチルシクロテトラシロキサン、1−ハイドロジェン−3,5,7−トリフェニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
これら(c)成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、アルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)のうち、ヒドロシリル基を有さずアルケニル基を1分子中に1個有する化合物を「アルケニル基を1分子中に1個有する化合物(c1)」と記載することもある。
【0075】
<多面体構造ポリシロキサン(B)の合成>
本発明の半導体発光装置に用いられる多面体構造ポリシロキサン(B)は、後述のヒドロシリル化触媒の存在下、アルケニル基および/またはヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a)と、必要に応じて(a)成分および/または(c)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)と、必要に応じて(a)成分および/または(b)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)をヒドロシリル化反応することにより得られる。
【0076】
多面体構造ポリシロキサンを得る方法としては、特に限定されず種々設定できるが、予め(a)成分と(b)成分を反応させた後に(c)成分を反応させても良いし、予め(c)成分と(b)成分を反応させた後に(a)成分を反応させても良いし、(a)成分と(c)成分を共存させて(b)成分と反応させても良い。各反応の終了後に、例えば減圧・加熱条件下にて、揮発性の未反応成分を留去し、目的物あるいは次のステップへの中間体として用いても良い。(c)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成を抑制するためには、(a)成分と(b)成分を反応させ、未反応の(b)成分を留去した後、(c)成分を反応させる方法が好ましい。(c)成分と(b)成分のみが反応し、(a)成分を含まない化合物の生成の抑制は耐熱性の観点から好ましい。
【0077】
また、多面体構造ポリシロキサンを得る方法としては、(a)成分と(b)成分を反応させても良いし、(a)成分と(c)成分を反応させても良い。
【0078】
こうして得られた多面体構造ポリシロキサンは、反応に用いた(a)成分のアルケニル基またはヒドロシリル基が一部残存してもよい。
【0079】
(b)成分の添加量は、(a)成分が有するアルケニル基またはヒドロシリル基1個に対し、ヒドロシリル化反応する(b)成分のヒドロシリル基またはアルケニル基の数が2.5〜20個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないと、架橋反応によりゲル化が進行するため、多面体構造ポリシロキサンのハンドリング性が劣る場合があり、添加量が多いと、硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0080】
(c)成分の添加量は、(a)成分または(b)成分が有するヒドロシリル基またはアルケニル基1個に対し、ヒドロシリル化反応する(c)成分のアルケニル基またはヒドロシリル基の数が0.1〜1個になるように用いることが好ましい。添加量が少ないとLEDへディスペンスする際の液詰まりを抑制する効果が低くなる場合がある。添加量が多いと、得られる硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0081】
多面体構造ポリシロキサン(B)の合成時に用いるヒドロシリル化触媒の添加量としては特に制限はないが、反応に用いる(a)成分、(b)成分及び(c)成分のアルケニル基1モルに対して10
−1〜10
−10モルの範囲で用いるのがよい。好ましくは10
−4〜10
−8モルの範囲で用いるのがよい。ヒドロシリル化触媒が多いと、ヒドロシリル化触媒の種類によっては、短波長の光に吸収を示すため、着色原因になったり、得られる硬化物の耐光性が低下する場合があり、また、硬化物が発泡する場合がある。また、ヒドロシリル化触媒が少ないと、反応が進まず、目的物が得られない場合がある。ヒドロシリル化反応の反応温度としては、30〜400℃、さらに好ましくは、40〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、45〜140℃である。温度が低すぎると反応が十分に進行せず、温度が高すぎると、ゲル化が生じ、ハンドリング性が悪化する場合がある。
本発明の半導体発光装置に用いられる多面体構造ポリシロキサン(B)は、式
[XR
42SiO−SiO
3/2]
a[R
53SiO−SiO
3/2]
b
[a+bは6〜24の整数、aは1以上の整数、bは0または1以上の整数;R
4は、アルキル基またはアリール基;R
5は、アルケニル基、水素原子、アルキル基、アリール基、または、他の多面体骨格ポリシロキサンと連結している基、Xは、下記一般式(1)あるいは一般式(2)のいずれかの構造を有し、Xが複数ある場合は一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が異なっていても良くまた一般式(1)あるいは一般式(2)の構造が混在していても良い。
【0084】
{lは2以上の整数;mは0以上の整数;nは2以上の整数;Yは水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。;Zは、水素原子、アルケニル基、アルキル基、アリール基、もしくは、アルキレン鎖を介して多面体構造ポリシロキサンと結合している部位であり、同一であっても異なっていてもよい。ただし、YあるいはZの少なくとも1つは水素原子であり、少なくとも1つは下記一般式(3)の構造を有する。
−[CH
2]
l−R
6 (3)
(lは2以上の整数;R
6は有機ケイ素化合物を含有する基);R
6はアルキル基またはアリール基}]
で表されるシロキサン単位から構成される多面体構造ポリシロキサンであってもよい。
ここで、R
6はケイ素化合物を含有する基であれば特に限定はされないが、1分子中に少なくともアリール基を1個以上含有していることが、ガスバリア性や屈折率の観点から好ましく、さらには、該アリール基が直接ケイ素原子に結合していることが、耐熱性、耐光性の観点から、好ましい。
【0085】
このような多面体構造ポリシロキサンは、各種化合物、具体的には(A)成分との相溶性を確保でき、さらに分子内にヒドロシリル基を含有していることから、各種アルケニル基を有する化合物と反応させることが可能となる。
【0086】
また、多面体構造ポリシロキサンは、温度20℃において液状とすることも可能である。多面体構造ポリシロキサンを液状とすることで、ハンドリング性に優れることから好ましい。
【0087】
多面体構造ポリシロキサン(B)としては、(A)成分との相溶性が良く、耐熱性が良い点から、アルケニル基およびヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a1)と、必要に応じて(a1)成分および/または(c)成分とヒドロシリル化反応可能なヒドロシリル基またはアルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物(b)と、必要に応じて(a)成分および/または(b)成分とヒドロシリル化反応可能なアルケニル基またはヒドロシリル基を1分子中に1個有する化合物(c)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンが好ましい。
また、多面体構造ポリシロキサン(B)としては、(A)成分との相溶性が良く、耐熱性が良く、(B)成分の合成が容易である点から、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a2)と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)と、アルケニル基を1分子中に1個有する化合物(c1)とをヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン、ヒドロシリル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a3)と、アルケニル基を1分子中に1個有する化合物(c1)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサン、アルケニル基を有する多面体構造ポリシロキサン化合物(a2)と、ヒドロシリル基を1分子中に2個以上有する化合物(b1)をヒドロシリル化反応することにより得られる多面体構造ポリシロキサンがさらに好ましい。
【0088】
<有機化合物(D)>
本発明における(D)成分は、具体的に例えば、(A)成分との反応性を有し、耐熱性、耐光性、ガスバリア性を有する硬化物を与えることが可能となる。
本発明における有機化合物(D)は、下記一般式(1)で表される有機化合物あるいは、(D)成分の具体的な例として下記に示している有機化合物であれば特に限定はされない。
【0090】
(式中R
1は炭素数1〜50の一価の有機基または水素原子を表し、それぞれのR
1は異なっていても同一であってもよい。)
本発明における(D)成分は、得られる硬化物の強度やガスバリア性、耐熱性、耐光性等の観点から、1分子中にアルケニル基を平均して2個以上含有していることが好ましく、より好ましくは2個含有することが好ましい。また、ガスバリア性の観点から、数平均分子量900未満であることが好ましい。
【0091】
(D)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、等が例示され、これらは単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。
【0092】
上記具体例のうち、例えば組成物を基材と硬化させた場合の基材との接着性の観点からイソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、さらに、耐熱性・耐光性のバランスの観点から、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、例えば、耐クラック性の観点からジアリルモノメチルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0093】
<ヒドロシリル化触媒>
本発明で用いることができるヒドロシリル化触媒としては、通常ヒドロシリル化触媒として公知のものを選択でき、特に制限はない。
【0094】
具体的に例示すれば、白金−オレフィン錯体、塩化白金酸、白金の単体、担体(アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、例えば、Pt
n(ViMe
2SiOSiMe
2Vi)
n、Pt〔(MeViSiO)
4〕
m;白金−ホスフィン錯体、例えば、Pt(PPh
3)
4、Pt(PBu
3)
4;白金−ホスファイト錯体、例えば、Pt〔P(OPh)
3〕
4、Pt〔P(OBu)
3〕
4(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)
2、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。
【0095】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl
3、Rh/Al
2O
3、RuCl
3、IrCl
3、FeCl
3、AlCl
3、PdCl
2・2H
2O、NiCl
2、TiCl
4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)
2等が好ましい。
【0096】
<硬化遅延剤>
硬化遅延剤は、本発明で用いられる硬化性組成物の保存安定性の改良あるいは、硬化過程でのヒドロシリル化反応性を調整するために用いることができる成分である。本発明においては、硬化遅延剤としては、ヒドロシリル化触媒による付加型硬化性組成物で用いられている公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0097】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、具体的には3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示できる。
【0098】
有機リン化合物としては、具体的にはトリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示できる。
【0099】
有機イオウ化合物としては、具体的にはオルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示できる。
【0100】
窒素含有化合物としては、具体的にはN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が例示できる。
【0101】
スズ系化合物としては、具体的にはハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示できる。
【0102】
有機過酸化物としては、具体的にはジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。これらのうち、マレイン酸ジメチル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが、特に好ましい硬化遅延剤として例示できる。
【0103】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10
−1〜10
3モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜100モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0104】
<硬化性組成物>
本発明の半導体発光装置に用いられる有機変性された多面体構造ポリシロキサンを含有する硬化性組成物は、蛍光体、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒、硬化遅延剤等を混合することにより得ることができる。
蛍光体を硬化性組成物に混合・分散する方法としては、蛍光体の結晶構造に損傷を与えず蛍光体を均一に分散することが可能な方法であれば特に制限はなく、例えばミキサー、高速ディスパー、ホモジナイザー、3本ロール、2本ロール、ニーダー、ビーズミル等、従来公知の方法を用いることが出来る。上記の中でも特に、遊星攪拌ミキサー、3本ロール、2本ロール、など分散にあたり発熱の少ないものや混合機由来の金属磨耗粒子の混入が少ないものが好ましく、なかでも遊星攪拌ミキサーが蛍光体の損傷少なく脱泡しながら混合・分散できるので好ましい。これらの混合・分散方法は、一種のみ行ってもよく、また二種以上を組み合わせて行ってもよい。
本発明に用いられる硬化性組成物の粘度は、特に制限はないが、温度23℃において0.2Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらに好ましくは0.5Pa・s〜200Pa・sである。硬化性組成物の粘度が低いと、蛍光体が凝集してしまう恐れがあり、粘度が高いと、硬化性組成物のハンドリング性が悪化する恐れがある。
硬化性組成物を硬化させる際に温度を加える場合は、好ましくは、30〜400℃、さらに好ましくは50〜250℃である。硬化温度が高いと、得られる硬化物に外観不良が生じる傾向があり、低いと硬化が不十分となる。また、2段階以上の温度条件を組み合わせて硬化させてもよい。具体的には例えば、70℃、120℃、150℃の様に段階的に硬化温度を引き上げていくことで、良好な硬化物を得ることができ好ましい。
硬化時間は硬化温度、用いるヒドロシリル化触媒の量及び反応性基の量、その他、硬化性組成物の配合物の組み合わせにより適宜選択することができるが、あえて例示すれば、1分〜12時間、好ましくは10分〜8時間行うことにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0105】
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて接着性付与剤を添加することができる。
【0106】
接着性付与剤は、例えば、本発明におけるポリシロキサン系組成物と基材との接着性を向上する目的で用いるものであり、その様な効果があるものであれば特に制限はないが、シランカップリング剤が好ましい例として例示できる。
【0107】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0108】
好ましいシランカップリング剤としては、具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0109】
シランカップリング剤の添加量としては、硬化性組成物100重量部に対して、0.05〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0110】
また、接着性付与剤の効果を高めるために、公知の接着性促進剤を用いることもできる。接着性促進剤としては、エポキシ含有化合物、エポキシ樹脂、ボロン酸エステル化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
<分散剤>
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて分散剤として、無機フィラーを添加することができる。無機フィラーを用いることにより、硬化性組成物の流動性を改善することができる。また得られる成形体の強度、硬度、弾性率、熱膨張率、熱伝導率、放熱性、電気的特性、光の反射率、難燃性、耐火性、およびガスバリア性等の諸物性を改善することができる。
【0112】
無機フィラーは、無機物もしくは無機物を含む化合物であれば特に限定されないが、具体的に例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0113】
無機フィラーは、適宜表面処理をほどこしてもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、シランカップリング剤による処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0114】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種用いることができる。無機フィラーの平均粒径や粒径分布は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、平均粒径が0.005〜50μmであることが好ましく、さらには0.01〜20μmであることがより好ましい。同様に、BET比表面積についても、特に限定されるものでないが、ガスバリア性の観点から、70m
2/g以上であることが好ましく、100m
2/g以上であることがより好ましく、さらに200m
2/g以上であることが特に好ましい。
【0115】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、硬化性組成物100重量部に対して、0.1〜1000重量部、よりこの好ましくは、0.5〜500重量部、さらに好ましくは、1〜100重量部である。無機フィラーの添加量が多いと、流動性が悪くなる場合があり、無機フィラーの添加量が少ないと、所望の物性が得られない場合がある。
【0116】
無機フィラーを混合する手段としては、特に限定されるものではないが、具体的に例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げられる。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよく、また、常圧下で行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。混合する際の温度が高いと、成型する前に組成物が硬化する場合がある。
【0117】
また、本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0118】
本発明の半導体発光装置に用いられる硬化性組成物は、上記した成分をロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ真空処理、加熱処理を施したりしてもよい。
本発明の光半導体装置は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的に、例えば、受発光デバイス液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0119】
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0120】
<重量平均分子量>
合成した反応物の重量平均分子量は、東ソー製 HLC−8220GPC(カラム:TSKgel SuperHZM−N(4本)+同HZ1000(1本) 内径4.6mm×15cm、溶媒:トルエン、流速:0.35ml/min)を用い、標準ポリスチレン換算法により測定した。
【0121】
<多面体構造ポリシロキサン単位の分析>
(A)成分の多面体構造ポリシロキサン単位の分析は、VARIAN社製INOVA AS600を使用し、
29Si−NMRにより測定した。多面体構造ポリシロキサン単位を含有する場合はシャープなピークが見られる。
【0122】
<液詰まり発生時間>
ジェネライツ社製12mil×13mil角の青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)を実装したイーチュン社製リフレクター(品番:Top view SMD6721)を準備し、硬化性組成物を、シリンジに8g流し込み、武蔵エンジニアリング社製容積計量式デジタル制御ディスペンサー(MPP−1)を備えた卓上型ロボット(SHOTMASTER DS SERIES SM200DSS−3A)、武蔵エンジニアリング社製10mlシリンジ(品番:PSY−10E)、武蔵エンジニアリング社製10mlシリンジ用プランジャー(品番:FLP−10E)、武蔵エンジニアリング社製精密ソリッドノズル(品番:SHN−0.4N)を用いてLEDにディスペンスした。ディスペンスのトータル時間が2時間になるまでディスペンスを繰り返した。そして、ノズル内の液詰まりが発生した時間を液詰まり発生時間とした。2時間という記載は、2時間ディスペンスを繰り返しても液詰まりが発生しなかったことを表す。
【0123】
(製造例1)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
ジメチルビニルクロロシラン1932gとヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を8個有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサンであるオクタキス(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1226.3)を白色固体として842g得た。
【0124】
(製造例2)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
ジメチルビニルクロロシラン1149g、トリメチルシリクロリド830gおよびヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をメタノール中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ビニル基を4個有するアルケニル基を含有する多面体構造ポリシロキサンであるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1175.8)を白色固体として760g得た。
【0125】
(製造例3)
製造例1で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン化合物であるオクタキス(ビニルジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン30.0gをトルエン60.0gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)7.34μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン117.7g、トルエン39.2gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール14.0μl、マレイン酸ジメチル3.3μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサンを69.3g得た。
【0126】
(製造例4)
ビニルジフェニルメチルシラン2.85gをトルエン2.85gに溶解させた。得られた溶液に対し、製造例3で得られた液状の多面体構造ポリシロキサン10.0gとトルエン10.0gの溶液をゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、トルエンと未反応成分を留去し、液状の有機基を有する多面体構造ポリシロキサン(反応物1)を12.6g得た。GPC測定より反応物1は複数ピークを有し、最も高分子量側のピークの重量平均分子量は10,300であった。
【0127】
(製造例5)
製造例2で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン30.0gをトルエン123.0gに溶解させ、ビニルジフェニルメチルシラン31.5g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)1.46μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン24.6g、トルエン24.6gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール2.8μl、マレイン酸ジメチル0.65μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の有機基を有する多面体構造ポリシロキサン(反応物2)を80.8g得た。GPC測定より反応物2は複数ピークを有し、最も高分子量側のピークの重量平均分子量は12,200であった。
【0128】
(製造例6)
48%コリン水溶液(トリメチル−2ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)1803gにテトラエトキシシラン1459gを加え、室温で2時間激しく撹拌した。反応系内が発熱し、均一溶液になった段階で、撹拌を緩め、さらに12時間反応させた。次に、反応系内に生成した固形物に、メタノール1400mLを加え、均一溶液とした。
ジメチルクロロシラン1490gとヘキサン1400mLの溶液を激しく攪拌しながら、メタノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間反応させた後、有機層を抽出、濃縮することにより、固形物を得た。次に、生成した固形物をアセトニトリル中で激しく攪拌することにより洗浄し、ろ別することにより、Si原子16個と、ヒドロシリル基を8個有する多面体構造ポリシロキサンであるオクタキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン(Fw=1226.3)を白色固体として705g得た。
【0129】
(製造例7)
製造例6で得られたヒドロシリル基を含有する多面体構造ポリシロキサンであるオクタキス(ジメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン5.00gをトルエン5.00gで溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)1.01μLを加えた。このようにして得られた溶液をビニルジフェニルメチルシラン5.51g、トルエン5.51gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール1.94μl、マレイン酸ジメチル0.45μlを加え、トルエンと未反応成分を留去し、液状の有機基を有する多面体構造ポリシロキサン(反応物3)を10.2g得た。GPC測定より反応物3は一つのピークを有し、重量平均分子量は1700であった。
【0130】
(製造例8)
製造例2で得られたアルケニル基含有多面体構造ポリシロキサン化合物であるテトラキス(ビニルジメチルシロキシ)テトラキス(トリメチルシロキシ)オクタシルセスキオキサン30.0gをトルエン60.0gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有する白金ビニルシロキサン錯体、ユミコアプレシャスメタルズジャパン製、Pt−VTSC−3X)3.67μLを加えた。このようにして得られた溶液を、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン58.9g、トルエン19.6gの溶液にゆっくりと滴下し、105℃で2時間反応させた。反応終了後、エチニルシクロヘキサノール7.0μl、マレイン酸ジメチル1.7μlを加え、トルエンと未反応成分を留去することにより、液状の多面体構造ポリシロキサン(反応物4)を83.0g得た。GPC測定より反応物4は複数ピークを有し、最も高分子量側のピークの重量平均分子量は8,100であった。
【0131】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
LED封止剤(東レダウコーニング製、フェニルシリコーン樹脂、OE6630A/B:GPC測定より複数ピークを有し、最も高分子量側のピークの重量平均分子量が3,300、
29Si−NMR測定より多面体構造ポリシロキサン単位を含有しない、または、信越化学製、メチルシリコーン樹脂、KER2600A/B:GPC測定より複数ピークを有し、最も高分子量側のピークの重量平均分子量が84,800、重量平均分子量60,000を超える成分が20重量%以上であり、
29Si−NMR測定より多面体構造ポリシロキサン単位を含有しない)と、上記製造例の反応物1〜4の何れか一種を均一に混合し、この液に蛍光体を加えて撹拌した後、Thinky社製あわとり練太郎ARE−310を用いて撹拌3分、脱泡3分、撹拌3分し、さらにThinky社製あわとり練太郎ARV−310を用いて真空撹拌3分を順に行うことで、多面体構造ポリシロキサンと蛍光体を含有する硬化性組成物を作製した。
上記実施例および比較例の蛍光体として、電気化学工業製の緑色蛍光体GR240、三菱化学製の赤色蛍光体BR240、インテマティクス製の黄色蛍光体EY4750を使用した。
【0132】
表1〜3に各成分の使用量を纏めた。数値は重量を示す。なお、撹拌と脱泡の際に、硬化性組成物に熱がかからないように機械の放熱に留意した。別途、ジェネライツ社製12mil×13mil角の青色LEDチップ(品番:B1213AAA0 S46B/C−19/20)を実装したイーチュン社製リフレクター(品番:Top view SMD6721)を準備し、ここに得られた硬化性組成物を、上記の撹拌と脱泡から15分以内にシリンジに8g流し込み、武蔵エンジニアリング社製容積計量式デジタル制御ディスペンサー(MPP−1)を備えた卓上型ロボット(SHOTMASTER DS SERIES SM200DSS−3A)、武蔵エンジニアリング社製10mlシリンジ(品番:PSY−10E)、武蔵エンジニアリング社製10mlシリンジ用プランジャー(品番:FLP−10E)、武蔵エンジニアリング社製精密ソリッドノズル(品番:SHN−0.4N)を用いてLEDにディスペンスした。LED1個に対するディスペンス時間は5秒、2時間連続でディスペンスしてLED1440個をディスペンスした。ディスペンス後30分以内に、対流式オーブンで80℃30分、80℃から180℃まで60分間で昇温、180℃60分の条件で硬化した。最初にディスペンスした1〜32個目のLEDを、大塚電子社製全光束測定(φ300mm)システム(品番:HM−0930)を用いて、温度25℃、電流30mA、待機時間30秒の条件で通電して発光させ、その発光色の色度を測定し、測定したサンプル32個の発光色の色度の平均値を表1〜3に記載した。
【0133】
表中、a(x)は半導体発光装置の発光色のxy色度座標上におけるxの平均値、a(y)は半導体発光装置の発光色のxy色度座標上におけるyの平均値であり、これらの平均値の標本数は32である。
a(x)およびa(y)の値は所望の値であることが好ましく、蛍光体の種類と使用量などによりこれらの値を制御する。同種同量の蛍光体を使用する場合、a(x)およびa(y)の値が高いほど蛍光体の光変換効率が高くて好ましい。蛍光体の光変換効率が高いと、少量の蛍光体でa(x)およびa(y)を所望の値に制御できるので製造コストの削減になる。
【0134】
【表1】
【0135】
表1では、LED封止剤(A)がフェニルシリコーン樹脂であり、赤色と緑色の蛍光体を使用している。多面体構造ポリシロキサンを含まない比較例1に対して、多面体構造ポリシロキサン(反応物1)を添加した実施例1〜4、および多面体構造ポリシロキサン(反応物2)を添加した実施例5、および多面体構造ポリシロキサン(反応物3)を添加した実施例6はノズル内の液詰まり発生までの時間が長いか、ノズル内の液詰まりが発生しなかった。シリンジ先に装着されたノズル内で蛍光体が詰まった場合、ディスペンサーを止めてノズル内の液詰まりを取り除いてから復旧する必要があり、LEDの生産性がダウンする。そのため液詰まりが発生しない方が良い。
また反応物1の添加量1部(実施例1)で液詰まりの防止効果が見られた。また反応物1の添加量が10部(実施例3)では硬化物のタックは無かったが、20部(実施例4)では硬化物にタックが見られた。
【0136】
【表2】
【0137】
表2は、LED封止剤(A)がフェニルシリコーン樹脂であり、黄色蛍光体を使用している。多面体構造ポリシロキサンを含まない比較例2に対して、有機基を有する多面体構造ポリシロキサン(反応物1)を添加した実施例7は液詰まりが発生しなかった。
【0138】
【表3】
【0139】
表3は、LED封止剤(A)がメチルシリコーン樹脂であり、赤色と緑色の蛍光体を使用している。多面体構造ポリシロキサンを含まない比較例3に対して、多面体構造ポリシロキサン(反応物4)を添加した実施例8は液詰まりが発生しなかった。
【0140】
したがって、本発明の多面体構造ポリシロキサンを0.1〜25部含有する硬化性組成物はLEDにディスペンスする際の液詰まり発生までの時間が長い、もしくは液詰まりが発生しないため生産性に優れる。