(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る化粧建築板1は、基材11に塗装を行うことで得られる化粧建築板1であって、有機顔料と光触媒材料とを含有する着色塗膜13を備える。
【0015】
化粧建築板1では、基材11上に、着色層12と、着色塗膜13と、有機クリヤー層14とが順次積層され、着色塗膜13が着色層12の一部を覆う。
【0016】
化粧建築板1では、基材11上に、有機層15と、無機層16と、着色塗膜13とが順次積層されてもよい。
【0017】
化粧建築板1における有機クリヤー層14の再塗装時期判定方法は、着色塗膜13の表色値の許容範囲を設定し、着色塗膜13の表色値を測定し、着色塗膜13の表色値が前記許容範囲内である場合を、有機クリヤー層14の再塗装が不要と判定し、着色塗膜13の色が前記許容範囲外である場合を、有機クリヤー層14の再塗装が必要と判定する。
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
第一の実施形態の化粧建築板1は、
図1に示すように、基材11と着色塗膜13を備える。
【0020】
化粧建築板1は、着色塗膜13以外の一以上の層を更に備えてもよい。本実施形態では、基材11と着色塗膜13との間に、シーラー塗膜11a及び着色層12が順次積層される。また、着色塗膜13上に、有機クリヤー層14が形成される。
【0021】
基材11は、例えば、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に対して、無機充填剤、繊維質材料等を配合し、これを成形後、養生硬化させることで得られる。水硬性膠着材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム及び石膏からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。また、無機充填剤は、例えば、フライアッシュ、ミクロシリカ及び珪砂からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。また、繊維質材料は、例えば、パルプ、合成繊維等の無機繊維、スチールファイバー等の金属繊維からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。また、成形方法は、例えば、押出成形、注型成形、抄造成形、プレス成形等から選択される。窯業系基材11の成形後には、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生等を行う。尚、基材11は、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板等から選択されてもよい。
【0022】
シーラー塗膜11aは、基材11の表面上に形成され、基材11の表面上に凹凸等がある場合の目止め及び基材11と着色層12との密着性の確保を為す。
【0023】
シーラー塗膜11aは、シーラー塗料から形成される。シーラー塗料としては、低分子量の樹脂や小粒径のエマルションからなる浸透性タイプの下塗り材等を用いることができる。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂に、酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、炭酸カルシウム等の顔料、有機溶媒、消泡剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製されたシーラー塗料を用いることができる。
【0024】
シーラー塗膜11aは、例えば、基材11の表面上にシーラー塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。シーラー塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等から選択される。シーラー塗料の塗布量は、50〜170g/m
2の範囲内であることが好ましい。シーラー塗料の焼付乾燥は、80〜120℃で1〜3分間の範囲内で行うことが好ましい。
【0025】
着色層12は、例えば、アクリル樹脂系の塗料(以下、着色塗料という)から形成される。特に、着色塗料は、下地の隠蔽力が高く、耐久性に優れ、種類豊富な色揃えを有し、外観意匠性向上に寄与可能なアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、有機顔料又は無機顔料あるいはその両方、有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製されたエナメル塗料を用いることができる。
【0026】
着色塗料は、エナメル塗料である場合、顔料を含有してもよい。顔料は、有機顔料又は無機顔料あるいはその両方であってもよい。有機顔料は、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー及びアニリンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。また、無機顔料は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン(チタンホワイト)、紺青、群青、酸化鉄、アルミペースト、ブロンズ粉及びカーボンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0027】
着色層12は、例えば、シーラー塗膜11aの表面上に着色塗料を塗布後、必要により、焼付乾燥して形成される。着色塗料の塗布方法は、例えば、インクジェット、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーターからなる群から選択される。着色塗料をインクジェットで塗布する場合、必要に応じて受理層を形成してもよい。着色塗料の塗布量は75〜140g/m
2の範囲内であることが好ましい。塗布した着色塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜120℃で1〜3分間の範囲内で行うことが好ましい。
【0028】
本実施形態では、着色塗膜13は、着色層12の表面上に形成され、着色層12の一部を覆う。
【0029】
着色塗膜13は、着色塗膜塗料から形成される。着色塗膜塗料は、有機顔料及び光触媒材料を含有する。特に、着色塗膜塗料は、有機顔料及び光触媒材料を含有するアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、有機顔料及び光触媒材料を配合し、更に必要に応じて有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製されたエナメル塗料を着色塗膜塗料として用いることができる。
【0030】
有機顔料は、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー及びアニリンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。光触媒材料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム及び酸化タングステンからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0031】
着色層12の形成に用いた着色塗料が有機顔料を含有する場合、この着色塗料に光触媒材料を添加して調整された塗料を着色塗膜塗料として用いてもよい。この場合、着色層12と着色塗膜13の色に差が生じにくい。
【0032】
着色塗膜13は、例えば、着色層12の表面上に着色塗膜塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。着色塗膜塗料の塗布方法は、着色層12の任意の場所に塗布することのできる塗布方法から選択される。着色塗膜塗料の塗布方法として、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーターからなる群から選択される。着色塗膜塗料の塗布量は50〜140g/m
2の範囲内であることが好ましい。塗布した着色塗膜塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜120℃で1〜3分間の範囲内で行うことが好ましい。
【0033】
着色塗膜13の位置及び大きさは、化粧建築板1の外観上、着色塗膜13が目立たなくなるように、決定されることが好ましい。具体的には、例えば、着色塗膜13が、着色層12の表面上の小さな領域に、ごく少量の着色塗膜塗料を塗布し、その後焼付乾燥して形成される。塗布面積は、1cm×1cm程度の範囲内であることが好ましい。
【0034】
着色塗膜13が光触媒材料を含有するため、着色塗膜13に光が照射されると、光触媒材料の作用によって着色塗膜13中の有機顔料の酸化が促進される。このため、光触媒材料を含有しない着色層12と比べて、着色塗膜13の変退色は非常に早く進行する。
【0035】
着色塗膜13は、光触媒材料を1〜10質量%の範囲で含有することが好ましい。光触媒材料の含有量が1質量%以上であると、有機顔料の酸化が生じやすい。光触媒材料の含有量が10質量%以下であると、着色塗膜13が、着色層12から剥がれにくい。
【0036】
有機クリヤー層14は、着色層12及び着色塗膜13の表面上に有機クリヤー塗料を塗布して形成される。有機クリヤー塗料は、例えば、アクリル系樹脂塗料、アクリルシリコン系樹脂塗料及びフッ素系樹脂塗料から選択される。有機クリヤー塗料は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることができる。有機クリヤー塗料は、例えば、アクリル樹脂系塗料に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を添加することで調整される。
【0037】
有機クリヤー層14は、例えば、着色層12及び着色塗膜13の表面上に有機クリヤー塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。有機クリヤー塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等から選択される。このとき、有機クリヤー塗料の塗布量は、40〜100g/m
2の範囲内であることが好ましい。また、有機クリヤー塗料の焼付乾燥は、80〜120℃で60秒以上行うことが好ましい。
【0038】
上記のようにして形成された化粧建築板1では、当初は有機クリヤー層14が、着色層12及び着色塗膜13を保護することで、これらの変退色が生じにくい。しかしながら、この化粧建築板1を、長期間に亘って使用すると、有機クリヤー層14は摩耗するなどして経年劣化する。そうすると、特に、着色塗膜13は、光触媒材料を含有するため、着色層12より早い時期に、変退色が生じる。
【0039】
この効果を利用すると、化粧建築板1の使用者は、着色塗膜13の表色値を測定し、着色塗膜13に変退色が生じているか否かを判定することにより、有機クリヤー層14の劣化の程度を判定することができる。使用者が、有機クリヤー層14が経年劣化していると判定した後、有機クリヤー層14を再塗装することにより、着色層12の変退色を未然に防ぐことができる。
【0040】
本実施形態に係る化粧建築板1における有機クリヤー層14の再塗装時期判定方法について、詳しく説明する。
【0041】
この再塗装時期判定方法では、着色塗膜13の表色値の許容範囲を設定し、着色塗膜13の表色値を測定し、着色塗膜13の表色値が前記許容範囲内である場合を、有機クリヤー層14の再塗装が不要と判定し、着色塗膜13の表色値が前記許容範囲外である場合を、有機クリヤー層14の再塗装が必要と判定する。
【0042】
表色値として、着色層12及び着色塗膜13の変退色の指標となり得る、適当な値が選択される。例えば、表色値として標準色との色差が選択される。標準色としては、例えば、変退色が生じていない状態での着色塗膜13の色が挙げられる。色差(ΔL
*)は、例えば次の式で定義される。
ΔL
*=L
*1−L
*0
L
*0は、着色塗膜13の標準色のL
*値である。ここで、L
*とは、JIS Z 8729に規定されるL
*a
*b
*表色系のL
*値のことである。標準色の表色値の測定時期は、着色塗膜13に変退色が生じていなければ、特に限定されるものではないが、例えば、化粧建築板1の使用開始時に測定される。L
*1は、変退色が進行した着色塗膜13のL
*値である。
【0043】
本実施形態においては、色差をΔL
*としたが、これに限られるものではなく、例えばΔE
*であってもよい。
【0044】
表色値の許容範囲は、各層の構成に応じて、適宣特定される。具体的には、例えば、化粧建築板1の促進耐候性試験を行い、化粧建築板1の着色層12が変退色せず、着色塗膜13の変退色が生じた状態における、着色塗膜13の表色値を測定し、この値を許容範囲のしきい値とする。
【0045】
有機クリヤー層14の再塗装時期判定に当たって、使用者は、化粧建築板1を屋外に設置し、定期的若しくは不定期に、着色塗膜13の表色値を測定する。そして、表色値が許容範囲内である場合、使用者は、有機クリヤー層14の再塗装が不要であると判定し、引き続き、表色値の測定を継続する。
【0046】
また、表色値が許容範囲外である場合、使用者は、有機クリヤー層14が経年劣化し、再塗装が必要であると判定する。この場合、使用者が、有機クリヤー層14の再塗装を行うことにより、着色層12の変退色を未然に防ぐことができる。
【0047】
続いて、化粧建築板1の第二の実施形態を説明する。
【0048】
この実施形態の化粧建築板1では、
図2に示すように、基材11上に、有機層15と、無機層16と、着色塗膜13とが順次積層される。着色塗膜13は、有機顔料と光触媒材料とを含有する。
【0049】
化粧建築板1は、有機層15、無機クリヤー層17及び着色塗膜13以外の一以上の層を更に備えてもよい。本実施形態では、基材11と有機層15との間に、シーラー塗膜11aが形成される。また、着色塗膜13上に無機クリヤー層17が形成される。
【0050】
基材11及びシーラー塗膜11aとしては、第一の実施形態に係る化粧建築板1の基材、シーラー塗膜と同じものを用いることができる。
【0051】
有機層15は、有機系の塗料(以下、有機系塗料という)から形成される。有機系塗料は、下地の隠蔽力が高く、耐久性に優れ、種類豊富な色揃えを有し、外観意匠性向上に寄与可能なアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック、硫酸バリウム等の顔料、有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製された有機系塗料を用いることができる。
【0052】
有機層15は、例えば、シーラー塗膜11aの表面上に有機系塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。有機系塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等から選択される。このとき、有機系塗料の塗布量は、50〜170g/m
2の範囲内であることが好ましい。また、有機系塗料の焼付乾燥は、80〜120℃で1〜3分間の範囲内で行うことが好ましい。
【0053】
無機層16は、無機系の塗料(以下、無機質塗料という)から形成される。無機質塗料は、適宜のものを用いることができる。具体的には、無機質塗料として、例えば、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えて調整されるケイ素アルコキシド系塗料を用いることができる。
【0054】
無機層16は、例えば、有機層15の表面上に無機質塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。無機質塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーターからなる群から選択される。無機質塗料の乾燥後の塗布量は4〜25g/m
2の範囲内であることが好ましい。無機質塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜160℃の範囲内で、60秒以上行うことが好ましい。
【0055】
着色塗膜13は、着色塗膜塗料から形成される。着色塗膜塗料は、有機顔料及び光触媒材料を含有する。特に、着色塗膜塗料は、有機顔料及び光触媒材料を含有するアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、有機顔料、有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製したものをエナメル塗料として用いることができる。
【0056】
有機顔料は、例えば、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー、アニリンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0057】
光触媒材料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化カドミウム、酸化タングステンからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0058】
着色塗膜13が含有する光触媒材料の含有量は、5〜10質量%の範囲内であることが好ましい。光触媒材料の含有量が5質量%以上であることにより、色彩の変化を促進させることができる。光触媒材料の含有量が10質量%以下であることにより、着色塗膜13の剥離を長期間抑制することができる。
【0059】
また、着色塗膜塗料は、有機顔料だけでなく、更に無機顔料を含有してもよい。無機顔料は、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン(チタンホワイト)、紺青、群青、酸化鉄、アルミペースト、ブロンズ粉及びカーボンブラックからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
【0060】
着色塗膜13は、例えば、無機層16の表面上に着色塗膜塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。着色塗膜塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーターからなる群から選択される。着色塗膜塗料の塗布量は40〜170g/m
2の範囲内であることが好ましい。塗布した着色塗膜塗料は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜120℃で1〜3分間の範囲内で行うことが好ましい。
【0061】
本実施形態では、着色塗膜13は、無機層16の表面上に形成され、無機層16の全体を覆う。このため、着色塗膜13は、有機層15と直接接することがないため、光触媒作用による有機層15の劣化及び着色塗膜13の剥がれを防止することができる。
【0062】
無機クリヤー層17は、無機系のクリヤー塗料(以下、無機クリヤー塗料)から形成される。無機クリヤー塗料は、適宜のものを用いることができる。具体的には、例えば、無機クリヤー塗料として、オルガノシランのシリカ分散オリゴマー溶液に、ポリオルガノシロキサンや、アルキルチタン酸塩等の縮合反応触媒を加え、或いは更にシリカを加えて調整されたケイ素アルコキシド系塗料を用いることができる。
【0063】
無機層16の形成に用いた無機質塗料がクリアー塗料である場合、この無機質塗料を無機クリヤー塗料として用いてもよい。
【0064】
無機クリヤー層17は、例えば、着色塗膜13の表面上に無機クリヤー塗料を塗布後、焼付乾燥して形成される。無機クリヤー塗料の塗布方法は、例えば、スプレーガン、ロールコーター、フローコーター、カーテンコーター等から選択される。このとき、無機クリヤー塗料の乾燥後の塗布量は、4〜25g/m
2の範囲内であることが好ましい。塗布した無機質塗料の焼付乾燥は、例えば、ジェット乾燥機を用いて、80〜160℃、60秒以上の範囲内で行うことが好ましい。
【0065】
着色塗膜13上に無機クリヤー層17を形成することにより、化粧建築板1の耐候性を向上することができる。
【0066】
上記のように形成された化粧建築板1では、着色塗膜13が光触媒材料と有機顔料を含有するため、着色塗膜13に紫外線が照射されると、光触媒材料により、有機顔料が酸化される。有機顔料が酸化されると、着色塗膜13が変退色することで、着色塗膜13による化粧建築板1の意匠が変化する。
【0067】
本実施形態は、光触媒作用による着色塗膜13の変退色を積極的に利用することで、時間の経過とともに意匠が変化する化粧建築板1を提供することができる。
【0068】
以下、本発明の効果を検証するために行った試験について説明する。
【0069】
(試験1)
試験1における化粧建築板(化粧建築板Aとする)は、
図1に示すように、基材11上に、シーラー塗膜11a、着色層12、着色塗膜13、有機クリヤー層14を順次積層することによって製造した。
【0070】
ここで、基材11としては、セメント基板を用い、これにシーラー塗装を施したものを用いた。
【0071】
また、着色層12は、アクリル系エマルション(AcEm)をベースにし、有機顔料を含有するアクリル樹脂塗料から形成された。この塗料はアクリルエマルション樹脂100重量部に対し、有機顔料(フタロシアニングリーンからなる)33重量部、添加剤(増粘剤、艶消し剤からなる)13重量部、水26重量部を加え、混合攪拌して調製した。
【0072】
そして、この塗料をスプレー塗装し、110℃、60秒間の条件で加熱成膜することで厚み50μmの着色層12を形成した。
【0073】
また、着色塗膜13は、着色層12に用いたアクリル樹脂塗料に光触媒材料としてTiO
2溶液を5重量部加えたものを用いた。そしてこの塗料を、外観上目立たないように、着色層12の極小さな領域に一ポイントだけ、はけにより塗装を施した。これを110℃、60秒間以上の条件で加熱成膜することで厚み25μmの着色塗膜13を形成した。
【0074】
更に、アクリル系エマルションをベースにしたクリアー塗料を着色層12及び着色塗膜13に塗布し、加熱成膜することで、有機クリヤー層14を形成した。
【0075】
以上のようにして、化粧建築板Aを作製した。
【0076】
続いて、化粧建築板Aを用いて、大気曝露試験を行った。化粧建築板Aの着色塗膜及び着色層の表色値を測定するに当たり、コニカミノルタホールディングス(株)製色彩色差計「CR−400」を用いた。
【0077】
大気曝露試験は、化粧建築板を南面に20°傾斜させて設置し、4年間曝露試験を行った。試験においては、まず、化粧建築板Aの着色塗膜及び着色層のL
*値を測定し、これを基準値L
*0とした。そして、1年ごとに化粧建築板Aの着色塗膜及び着色層のL
*値を測定し、L
*0を差し引くことにより、色差ΔL
*を算出した。
【0080】
表1及び
図3から、化粧建築板Aの着色塗膜のΔL
*の値は、着色層と比べて、非常に大きくなっている。つまり、化粧建築板Aの着色塗膜は、化粧建築板Bの着色層と比べて、変退色が非常に進行しやすいことがわかる。
【0081】
このことから、本発明の化粧建築板における、着色塗膜の表色値を測定することにより、有機クリヤー層の再塗装時期を判定することができる。
【0082】
(試験2)
試験2における化粧建築板(化粧建築板Cとする)は、
図2に示すように、基材11上に、シーラー塗膜11a、有機層15、無機層16、着色塗膜13、無機クリヤー層17を順次積層することによって製造した。
【0083】
ここで、基材11として、セメント基板を用い、これにシーラー塗装を施したものを用いた。
【0084】
続いて、有機物であるアクリル系エマルション(AcEm)をベースにしたアクリル樹脂塗料を基材11に塗布し、加熱成膜して有機層15を形成した。
【0085】
そして、有機層15に無機質塗料を塗布し、無機層16を形成した。無機質塗料は次のように形成した。
【0086】
まず攪拌機、加温ジャケット、コンデンサーおよび温度計を取付けたフラスコ中にメタノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業社製「MA−ST」;粒子径10〜20mμ、固形分30%)100重量部、メチルトリメトキシシラン68重量部、水10.8重量部を投入して攪拌しながら65℃の温度で約5時間かけて部分加水分解反応を行い冷却し、固形分が36%のA成分を調製した。
【0087】
また、攪拌機、加温ジャケット、コンデンサー、滴下ロートおよび温度計を取付けたフラスコにメチルトリイソプロポキシシラン220重量部とトルエン150重量部との混合液を計り取り、1%塩酸水溶液108部を上記混合液に20分で滴下してメチルトリイソプロポキシシランを加水分解した。滴下40分後に攪拌を止め、二層に分離した少量の塩酸を含んだ下層の水・イソプロピルアルコールの混合液を分液し、次に残ったトルエンの樹脂溶液の塩酸を水洗で除去し、さらにトルエンを減圧除去した後、イソプロピルアルコールで希釈し平均分子量約2000のシラノール基含有オルガノポリシロキサンのイソプロピルアルコール40%溶液であるB成分を調製した。
【0088】
また、C成分として、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランを用いた。
【0089】
そして、上記A成分を70重量部、B成分を30重量、C成分を1重量部を混合攪拌し、これをスプレー塗布し、120℃で30分間硬化させて、厚み10μmの無機層16を形成した。
【0090】
着色塗膜13は、アクリル系エマルション(AcEm)をベースにしたアクリル樹脂塗料から形成された。この塗料は、有機顔料及び光触媒材料を含有する。
【0091】
この塗料はアクリルエマルション樹脂100重量部に対し、有機顔料(フタロシアニングリーンからなる)33重量部、光触媒材料(酸化チタン)5重量部、添加剤(増粘剤、艶消し剤からなる)13重量部、水26重量部を加え、混合攪拌して調製した。
【0092】
そして、この塗料をスプレー塗装し、110℃、60秒間の条件で加熱成膜することで厚み25μmの着色塗膜13を形成した。
【0093】
無機クリヤー層17は、無機層16に用いた塗料と同じ塗料を着色塗膜13に塗布し、その後加熱成膜することで形成された。
【0094】
また、比較用の化粧建築板(化粧建築板Dとする)も作製した。化粧建築板Dは基材11上に、シーラー塗膜11a、有機層15、無機層16、着色塗膜13、無機クリヤー層17を順次積層することによって製造した。
【0095】
この化粧建築板Dの作製にあたり、塗料に光触媒材料を添加せずに、着色塗膜13を形成した。それ以外は、化粧建築板Cと同様にして化粧建築板Dを作製した。
【0096】
そして、化粧建築板C及び化粧建築板Dについて、大気曝露試験を行った。
【0097】
大気曝露試験は、化粧建築板C及びDを南面に20°傾斜させて設置し、2年間曝露試験を行った。試験において、コニカミノルタホールディングス(株)製色彩色差計「CR−400」を用いて、着色塗膜の色差ΔE
*を半年ごとに測定した。ここでΔE
*は、次の式で定義されるΔ。
ΔE
*=[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2
また、ΔL
*、Δa
*、Δb
*は次の式で定義される。
ΔL
*=L
*1−L
*0
Δa
*=a
*1−a
*0
Δb
*=b
*1−b
*0
上記式におけるL
*0、a
*0、b
*0は曝露試験開始時の着色塗膜のL
*の測定値である。上記式におけるL
*1、a
*1、b
*1は、曝露試験中の着色塗膜のL
*値、a
*値、b
*値である。ここでL
*、a
*、b
*とは、JIS Z 8729に規定されるL
*a
*b
*表色系のL
*値、a
*値、b
*値のことである。
【0100】
表2及び
図4から、2年間曝露した化粧建築板Cの着色塗膜は、化粧建築板Dの着色塗膜と比べて、ΔE
*が4.9大きくなっている。つまり、化粧建築板Cの着色塗膜は、化粧建築板Dの着色塗膜と比べて、色彩に変化が生じやすいことがわかる。つまり、化粧建築板Cのように、光触媒材料を含有する着色塗膜を全面に形成することにより、通常より早く化粧建築板の色彩の変化が生じるため、使用者は、早期に色彩が変化する化粧建築板により外観意匠の変化を楽しむことができる。