特許第6239960号(P6239960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6239960レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法
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  • 特許6239960-レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239960
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物、樹脂成形品、および樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20171120BHJP
   C08L 25/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20171120BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20171120BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L25/00
   C08L55/02
   C08K7/14
   C08K3/00
   C08K5/49
   C08J7/06 A
   B32B15/08 Q
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-251655(P2013-251655)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108075(P2015-108075A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】田島 寛之
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−037986(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128219(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/076314(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102796372(CN,A)
【文献】 特開2012−087234(JP,A)
【文献】 特表2015−520775(JP,A)
【文献】 特表2016−503084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 51/00 − 51/10
C08L 55/00 − 55/04
C08J 5/00 − 5/02
C08J 5/12 − 5/22
C08J 7/04 − 7/06
B32B 1/00 − 43/00
C23C 18/00 − 20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂60〜83.5重量%と、スチレン系樹脂40〜16.5重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜20重量部と、窒化硼素30〜60重量部と、ガラス繊維10〜50重量部を含み、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、アンチモンおよびスズを含み、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と窒化硼素の重量比(窒化硼素/レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤)が3〜6である、レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体である、請求項1に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、コア/シェル型グラフト共重合体であるエラストマーを含む、請求項1または2に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマーが、ポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、および、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分を含むコア層と、コア層に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層とを有する、コア/シェル型グラフト共重合体である、請求項3に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤に含まれる金属成分のうち最も配合量が多い成分がスズである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、リン系安定剤および/または酸化防止剤を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
【請求項8】
さらに、表面にメッキ層を有する、請求項7に記載の樹脂成形品。
【請求項9】
前記メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、請求項に記載の樹脂成形品。
【請求項10】
機構部品である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項11】
携帯電子機器部品である、請求項7〜のいずれか1項に記載の樹脂成形品。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項13】
前記メッキ層が銅メッキ層である、請求項12に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに、前記熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品および、前記樹脂成形品の表面に、メッキ層を形成したメッキ層付樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンを含む携帯電話の開発に伴い、携帯電話の内部にアンテナを製造する方法が種々検討されている。特に、携帯電話に3次元設計ができるアンテナを製造する方法が求められている。このような3次元アンテナを形成する技術の1つとして、レーザーダイレクトストラクチャリング(以下、「LDS」ということがある)技術が注目されている。LDS技術は、例えば、LDS添加剤を含む樹脂成形品の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分のみを活性化させ、前記活性化させた部分に金属を適用することによってメッキ層を形成する技術である。この技術の特徴は、接着剤などを使わずに、樹脂基材表面に直接にアンテナ等の金属構造体を製造できる点にある。かかるLDS技術は、例えば、特許文献1〜4等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2011/095632号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2011/076729号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2011/076730号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO2012/128219号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年、LDS用熱可塑性樹脂組成物においても、熱伝導性を付与することが求められている。熱可塑性樹脂組成物に熱伝導性を付与するためには、一般的に、熱可塑性樹脂組成物に熱伝導性フィラーなどを配合することが行われている。しかしながら、アンチモンおよびスズを含むLDS添加剤を含むLDS用熱可塑性樹脂組成物においては、LDS添加剤が白系の色であるため、その白系の色の特性を生かそうとすると、黒系の色の熱伝導性フィラーを用いることが望ましくない。そこで、熱伝導性物質として、窒化硼素を配合することが考えられる。しかしながら、窒化硼素によって十分な熱伝導性を付与しつつ、メッキ性を維持しようとすると、窒化硼素やLDS添加剤を多く配合する必要があり、熱可塑性樹脂組成物における樹脂成分が相対的に少なくなってしまう。結果として、熱可塑性樹脂組成物中における、無機物質の割合が多くなり、機械的強度が劣ってしまったり、樹脂組成物の流動性が悪くなってしまったりする。
本発明は、かかる課題を解決することを目的としたものであって、熱伝導性に優れ、適切にメッキが形成でき、さらに、機械的強度および流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂と、アンチモンおよびスズを含むLDS添加剤と、窒化硼素を含む熱可塑性樹脂組成物において、LDS添加剤と窒化硼素の配合比率を所定の範囲とすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>〜<14>により、上記課題は解決された。
【0006】
<1>ポリカーボネート樹脂60〜100重量%と、スチレン系樹脂40〜0重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜20重量部と、窒化硼素30〜60重量部と、ガラス繊維10〜50重量部を含み、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、アンチモンおよびスズを含み、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と窒化硼素の重量比(窒化硼素/レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤)が2〜7である、レーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<2>スチレン系樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体である、<1>に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<3>さらに、エラストマーを含む、<1>または<2>に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<4>エラストマーが、ポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、および、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層と、コア層に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層を有する、コア/シェル型グラフト共重合体である、<3>に記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<5>レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤に含まれる金属成分のうち最も配合量が多い成分がスズである、<1>〜<4>のいずれかに記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<6>さらに、リン系安定剤および/または酸化防止剤を含む、<1>〜<5>のいずれかに記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物。
<7><1>〜<6>のいずれかに記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品。
<8>さらに、表面にメッキ層を有する、<7>に記載の樹脂成形品。
<9>機構部品である、<7>または<8>に記載の樹脂成形品。
<10>携帯電子機器部品である、<7>〜<9>のいずれかに記載の樹脂成形品。
<11>メッキ層がアンテナとしての性能を保有する、<8>〜<10>のいずれかに記載の樹脂成形品。
<12><1>〜<6>のいずれかに記載のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品の表面に、レーザーを照射後、金属を適用して、メッキ層を形成することを含む、メッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<13>メッキ層が銅メッキ層である、<12>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法。
<14><12>または<13>に記載のメッキ層付樹脂成形品の製造方法を含む、アンテナを有する携帯電子機器部品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
熱伝導性に優れ、適切にメッキが形成でき、さらに、機械的強度および流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供可能になった。さらに、前記熱可塑性樹脂組成物を用いた樹脂成形品および樹脂成形品の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を示す概略図である。図1中、1は樹脂成形品を、2はレーザーを、3はレーザーが照射された部分を、4はメッキ液を、5はメッキ層をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明のレーザーダイレクトストラクチャリング用熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂60〜100重量%と、スチレン系樹脂40〜0重量%を含む樹脂成分100重量部に対し、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤5〜20重量部と、窒化硼素30〜60重量部と、ガラス繊維10〜50重量部を含み、前記レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤が、アンチモンおよびスズを含み、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤と窒化硼素の重量比(窒化硼素/レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤)が2〜7であることを特徴とする。
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0011】
<樹脂成分>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分を含む。
本発明の樹脂組成物において、樹脂成分は、ポリカーボネート樹脂60〜100重量%と、スチレン系樹脂40〜0重量%を含み、ポリカーボネート樹脂70〜100重量%とスチレン系樹脂30〜0重量%を含むことがより好ましい。
樹脂成分は、他の樹脂成分を含んでいてもよい。しかしながら、前記他の樹脂は全樹脂成分の5重量%以下であることが好ましい。樹脂成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で用いるポリカーボネート樹脂としては特に制限されず、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートのいずれも用いることができる。中でも芳香族ポリカーボネートが好ましく、さらに、芳香族ジヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体がより好ましい。
【0013】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。さらに、難燃性が高い組成物を調製する目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、またはシロキサン構造を有する両末端フェノール性OH基含有のポリマーもしくはオリゴマー等を、使用することができる。
【0014】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂の好ましい例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体;が含まれる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、14,000〜30,000であるのが好ましく、15,000〜28,000であるのがより好ましく、16,000〜28,000であるのがさらに好ましい。粘度平均分子量が前記範囲であると、機械的強度がより良好となり、且つ成形性もより良好となるので好ましい。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の製造方法については、特に限定されるものではなく、本発明には、ホスゲン法(界面重合法)、および溶融法(エステル交換法)等の、いずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、本発明では、一般的な溶融法の製造工程を経た後に、末端基のOH基量を調整する工程を経て製造されたポリカーボネート樹脂を使用してもよい。
【0017】
さらに、本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、バージン原料としてのポリカーボネート樹脂のみならず、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0018】
その他、本発明で用いるポリカーボネート樹脂については、例えば、特開2012−072338号公報の段落番号0018〜0066の記載を参酌でき、その内容は本願明細書に組み込まれる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0020】
<スチレン系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、樹脂成分として、ポリカーボネート樹脂の他にスチレン系樹脂を含んでいてもよい。スチレン樹脂を配合することにより、流動性がより向上する傾向にある。
【0021】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体からなるスチレン系重合体、スチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体、ゴム質重合体の存在下でスチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体とを重合させた共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を言う。これらの中でも、ゴム質重合体の存在下にスチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いることが好ましい。
【0022】
スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。尚、これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0023】
上記のスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、へキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸アリールエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、マレイミド、N,N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物等が挙げられる。
【0024】
さらにスチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンランダム共重合体及びブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルとブタジエンとの共重合体、ポリブタジエン−ポリイソプレンジエン系共重合体、エチレン−イソプレンランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体及びブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体等のエチレン−プロピレン−非共役ジエンターポリマー、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレート又はメタクリレートゴムとからなる複合ゴム等が挙げられる。
【0025】
この様なスチレン系樹脂は、例えば、スチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、スチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)が好ましく、より好ましくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)である。特に好ましいのはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)およびアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)である。
【0027】
上記のスチレン系樹脂は、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合あるいは塊状・懸濁重合等の方法により製造されるが、本発明においては、スチレン系重合体、スチレン系ランダム共重合体またはスチレン系ブロック共重合体の場合は、塊状重合、懸濁重合又は塊状・懸濁重合により製造されたものが好適であり、スチレン系グラフト共重合体の場合は塊状重合、塊状・懸濁重合あるいは乳化重合によって製造されたものが好適である。
【0028】
本発明において、特に好適に用いられるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)とは、ブタジエンゴム成分にアクリロニトリルとスチレンをグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とアクリロニトリルとスチレンの共重合体の混合物である。ブタジエンゴム成分は、ABS樹脂成分100重量%中、5〜40重量%であることが好ましく、中でも10〜35重量%、特に13〜25重量%であることが好ましい。またゴム粒子径は0.1〜5μmであることが好ましく、中でも0.2〜3μm、さらに0.3〜1.5μm、特に0.4〜0.9μmであることが好ましい。ゴム粒子径の分布は、単一分布でも二山以上の複数の分布を有するもののいずれであってもよい。
【0029】
本発明において、特に好適に用いられるアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)とは、アクリロニトリルとスチレンを重合した共重合体であり、他の成分を含んでいてもよい。AS樹脂を構成するモノマーのうち、アクリルニトリルが10〜50モル%を占めることが好ましく、15〜40モル%を占めることがより好ましい。また、AS樹脂を構成するモノマーのうち、スチレンが50〜90モル%を占めることが好ましく、60〜85モル%を占めることがより好ましい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、スチレン系樹脂を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、組成物の合計の40重量%以上が樹脂成分であることが好ましく、50重量%以上が樹脂成分であることがより好ましく、60重量%以上が樹脂成分であることがさらに好ましい。
【0032】
<窒化硼素>
本発明の樹脂組成物は、窒化硼素を含む。窒化硼素を配合することによって、本発明の樹脂組成物の熱伝導性を大きく向上させることができる。
【0033】
本発明に用いる窒化硼素の形状は特に限定されず、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には、球状、線状(繊維状)、平板状(鱗片状)、曲板状、針状等が挙げられる。そして単粒体として、または顆粒状(単粒の凝集体)として用いてもよい。本発明では鱗片状のものを用いると、熱伝導性に優れた樹脂組成物が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。
【0034】
窒化硼素には、c−BN(閃亜鉛鉱構造)、w−BN(ウルツ鉱構造)、h−BN(六方晶構造)、r−BN(菱面体晶構造)など、複数の安定構造が知られている。本発明では、いずれの窒化硼素を用いてもよいが、なかでも、六方晶構造の窒化硼素を用いるのが熱伝導性が充分となりかつ樹脂成形体を得る際に用いる成形機や金型の摩耗が低減できるので、好ましい。また、窒化硼素には、球状のものと鱗片状のものがあり、本発明にはいずれも用いることができるが、鱗片状のものを用いると、より熱伝導性に優れた成形品が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。
【0035】
本発明で用いる窒化硼素の平均粒子径には制限はないが、好ましくは、1〜300μmであり、より好ましくは2〜200μm、さらには5〜100μmであることが好ましい。
窒化硼素としては、25℃における熱伝導率が30W/(m・K)以上であることが好ましく、中でも50W/(m・K)以上であるものが好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物における窒化硼素の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、30〜60重量部であり、30〜55重量部であることが好ましく、30〜50重量部であることがさらに好ましい。窒化硼素の含有量を30重量部以上とすることにより、熱伝導性がより向上し、60重量部以下とすることにより、流動性や成形加工性をより向上させることができる。
【0037】
<レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤(LDS添加剤)>
本発明で用いるLDS添加剤は、アンチモンおよびスズを含むことを特徴とする。好ましくは、LDS添加剤に配合される金属成分のうち最も配合量が多い成分がスズであり、次に配合量が多い成分がアンチモンである。さらに、鉛および/または銅を含むことが好ましい。鉛と銅は一方が含まれても良いし、両方が含まれていても良い。好ましい態様として、最も配合量が多い成分がスズであり、次に配合量が多い成分がアンチモンであり、その次に配合量が多い金属成分が鉛であり、鉛の次に配合量が多い金属成分が銅である態様が例示される。
本発明におけるLDS添加剤は、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ユーピロン(登録商標)、S−3000F)100重量部に対し、LDS添加剤と考えられる添加剤を4重量部添加し、波長1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sにて照射し、その後のメッキ工程は無電解のMacDermid社製M−Copper85のメッキ槽にて実施し、レーザー照射面に金属を適用したときに、メッキを形成できる化合物をいう。本発明で用いるLDS添加剤は、合成品であってもよいし、市販品を用いてもよい。また、市販品はLDS添加剤として市販されているものの他、本発明におけるLDS添加剤の要件を満たす限り、他の用途として販売されている物質であってもよい。
【0038】
本発明で用いるLDS添加剤に含まれる金属成分は、90重量%以上がスズであり、5重量%以上がアンチモンであり、微量成分として、鉛および/または銅を含むことが好ましく、90重量%以上がスズであり、5〜9重量%がアンチモンであり、0.01〜0.1重量%の範囲で鉛を含み、0.001〜0.01重量%の範囲で銅を含むことがより好ましい(但し、金属成分の合計が100重量%を超えることは無い、以下同じ)。
より具体的には、本発明で用いるLDS添加剤は、酸化スズ90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%を含むことが好ましく、また、酸化鉛0.01〜0.1重量%および/または酸化銅0.001〜0.01重量%含むことが好ましい。特に好ましい実施形態としては、酸化スズ90重量%以上と、酸化アンチモン3〜8重量%と、酸化鉛0.01〜0.1重量%と、酸化銅0.001〜0.01重量%含むLDS添加剤を用いる形態であり、よりさらに好ましい実施形態としては、酸化スズ93重量%以上と、酸化アンチモン4〜7重量%と、酸化鉛0.01〜0.05重量%と、酸化銅0.001〜0.006重量%含むLDS添加剤を用いる形態である。
【0039】
本発明で用いるLDS添加剤は、鉛および/または銅の他に、他の金属を微量含んでいてもよい。他の金属としては、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、クロム、マグネシウム、カルシウムなどが例示される。これら金属は酸化物として存在していてもよい。これら金属の含有量は、それぞれ、LDS添加剤に含まれる金属成分の、0.001重量%以下が好ましい。
【0040】
LDS添加剤の粒子径は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましい。このような構成とすることにより、メッキを適応した際のメッキ表面状態の均一性が良好になる傾向にある。
【0041】
本発明の樹脂組成物におけるLDS添加剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、5〜20重量部であり、5〜15重量部が好ましく、6〜12重量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、LDS添加剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、LDS添加剤と窒化硼素の重量比(窒化硼素/LDS添加剤)が2〜7であるが、3〜6が好ましく、く、4.5〜5.5がより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果をより効果的に発揮される傾向にある。
【0042】
<ガラス繊維>
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を含んでいてもよい。ガラス繊維としては、ガラス繊維、板状ガラス、ガラスビーズ、ガラスフレークが挙げられ、中でもガラス繊維が好ましい。
【0043】
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)がポリカーボネート樹脂に悪影響を及ぼさないので好ましい。
ガラス繊維とは、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状、多角形状で繊維状外嵌を呈するものをいう。
【0044】
本発明の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0045】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、更には2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0046】
ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0047】
本発明の樹脂組成物のメッキ性をより向上させるために、平均繊維長が300μm以下のガラス繊維を用いる形態が例示される。この形態で使用するガラス繊維としては、メッキ性を向上させる観点から、平均繊維長が200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。また、下限値としては、5μm以上が好ましく、より好ましくは7μm以上であり、さらに好ましくは、15μm以上である。また、ガラス繊維の平均繊維径は20μm以下が好ましく、5〜15μmがより好ましく、7〜15μmがさらに好ましく、9〜15μmが特に好ましい。平均繊維径が5μm未満であると、樹脂組成物の成形加工性が損なわれる場合があり、平均繊維径が20μmを超えると、樹脂成形品の外観が損なわれ、補強効果も十分ではない場合がある。なお、本発明において、平均繊維長は重量平均繊維長を表す。
【0048】
本発明の樹脂組成物におけるガラス繊維の配合量は、配合する場合、樹脂成分100重量部に対し、10〜50重量部であり、10〜40重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましく、12〜28重量部が特に好ましい。本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。ガラス繊維を配合することにより、機械的強度を向上できるとともに、メッキ性も向上する傾向にある。
【0049】
<エラストマー>
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを含有することも好ましい。エラストマーを含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性を改良することができる。
【0050】
本発明に用いるエラストマーは、なかでもゴム質重合体にこれと共重合可能な単量体成分とをグラフト共重合したグラフト共重合体が好ましい。グラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよいが、生産性や粒径を制御しやすい点より、乳化重合法が好ましく、多段乳化重合法がより好ましい。この多段乳化重合法としては、例えば、特開2003−261629号公報に記載している重合法が挙げられる。
【0051】
ゴム質重合体は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下が好ましく、更には−30℃以下が好ましい。ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、(部分)水添ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、(部分)水添ポリブタジエン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−イソブチルアクリレートを主成分とするアクリル系ゴム共重合体等のブタジエンとブタジエンと共重合し得る1種以上のビニル系単量体との共重合体等のブタジエン系ゴムや、ポリイソブチレン、ポリイソブチレン−スチレン共重合体、ポリイソブチレン−スチレンブロック共重合体等のイソブチレン系ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブチルアクリレートやポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2−エチルヘキシルアクリレート共重合体などのポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴムなどのシリコーン系ゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム、エチレン−プロピレンゴムやエチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴムなどのエチレン−αオレフィン系ゴム、エチレン−アクリルゴム、フッ素ゴムなど挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアルキルアクリレートゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムが好ましい。ここで、IPNとは、相互侵入高分子網目(Interpenetrating polymer network)をいう。
【0052】
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
【0053】
ゴム成分を共重合したグラフト共重合体は、耐衝撃性や表面外観の点からコア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましい。ここで、コア/シェル型グラフト共重合体とは、ゴム成分の周囲に、シェル成分をグラフト重合させてなるものをいい、必ずしも、コアとシェルが明確に区別できることを必須とするものではない。なかでもポリブタジエン含有ゴム、ポリブチルアクリレート含有ゴム、ポリオルガノシロキサンゴム、および、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分をコア層とコア層に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層とを有する、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コア/シェル型グラフト共重合体において、ゴム成分を40重量%以上含有するものが好ましく、60重量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸は、10重量%以上含有するものが好ましい。
【0054】
これらコア/シェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリルゴム共重合体(MA)、メチルメタクリレート−アクリルゴム−スチレン共重合体(MAS)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−(アクリル・シリコーンIPNゴム)共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0055】
このようなコア/シェル型グラフト共重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「パラロイド(登録商標、以下同じ)EXL2602」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、「パラロイドEXL2311」、「パラロイドEXL2313」、「パラロイドEXL2315」、「パラロイドKM330」、「パラロイドKM336P」、「パラロイドKCZ201」、三菱レイヨン社製の「メタブレン(登録商標、以下同じ)C−223A」、「メタブレンE−901」、「メタブレンS−2001」、「メタブレンSRK−200」、カネカ社製の「カネエース(登録商標、以下同じ)M−511」、「カネエースM−711」、「カネエースM−731」「カネエースM−600」、「カネエースM−400」、「カネエースM−580」、「カネエースMR−01」等が挙げられる。
【0056】
本発明におけるエラストマーの含有量は、配合する場合の下限値は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上である。上限値としては、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0058】
<リン系安定剤>
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を含むことが好ましく、有機リン系安定剤を含むことがより好ましい。有機リン系安定剤を配合することで、LDS添加剤によるポリカーボネート樹脂を分解しにくくし、本発明の効果がより効果的に発揮される。有機リン系安定剤としては、特開2009−35691号公報の段落番号0073〜0095の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。より好ましい有機リン系安定剤としては、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0059】
一般式(3)
O=P(OH)m(OR)3-m・・・(3)
(一般式(3)中、Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは0〜2の整数である。)
Rは炭素数1〜30のアルキル基または、炭素数6〜30のアリール基であることが好ましく、炭素数2〜25のアルキル基、フェニル基、ノニルフェニル基、ステアリルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルフェニル基、2,4−ジtert−ブチルメチルフェニル基、トリル基がより好ましい。
【0060】
中でも、下記一般式(3’)で表されるリン酸エステルが好ましい。
【0061】
O=P(OH)m'(OR’)3-m'・・・(3’)
一般式(3’)中、R’は炭素数2〜25のアルキル基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。m’は1または2である。ここで、アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などが挙げられ、テトラデシル基、ヘキサデシル基およびオクタデシル基が好ましく、オクタデシル基が特に好ましい。
【0062】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスフォナイト、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0063】
亜リン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物も好ましい。
一般式(4)
【化1】
(一般式(4)中、R'は、アルキル基またはアリール基であり、各々同一でも異なっていてもよい。)
R'は炭素数1〜25のアルキル基または、炭素数6〜12のアリール基であることが好ましい。R’がアルキル基である場合、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。R’がアリール基である場合、炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
【0064】
亜リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等の亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステル等が挙げられる。
【0065】
本発明の樹脂組成物がリン系安定剤を含む場合、リン系安定剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましく、0.08〜0.5重量部がさらに好ましい。0.01重量部以上とすることで、LDS添加剤によるポリカーボネート樹脂の分解をより効果的に抑制させることができ、5重量部以下とすることで、ガラス繊維とポリカーボネートとの密着強度を上げ、強度をより向上させることができる。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0067】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好ましく、より具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、および3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜5重量部であることが好ましく、0.05〜3重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は酸化防止剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0069】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤は、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、および数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、脂肪族カルボン酸、および脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましく用いられる。
【0070】
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。本明細書では、脂肪族カルボン酸の用語は、脂環式カルボン酸も包含する意味で用いる。脂肪族カルボン酸の中でも、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がより好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0071】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.01〜8重量部であることが好ましく、0.1〜6重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は離型剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0073】
<酸化チタン>
本発明の樹脂組成物は、酸化チタンを含むことが好ましい。
酸化チタンとしては、一般に市販されているもののなかで白色度と隠蔽性の点で、酸化チタンを80重量%以上含有するものを用いるのが好ましい。本発明で使用する酸化チタンとしては、例えば、一酸化チタン(TiO)、三酸化ニチタン(Ti23)、二酸化チタン(TiO2)などが挙げられ、これらのいずれを使用してもよいが、二酸化チタンが好ましい。また、酸化チタンとしては、ルチル型の結晶構造を有するものが好ましく使用される。
本発明の樹脂組成物が酸化チタンを含む場合、酸化チタンの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、0.5〜10重量部含有することが好ましく、1.0〜6重量部含有することがより好ましい。本発明の樹脂組成物は、酸化チタンを1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、合計量が上記範囲となる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、リン系安定剤以外の安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、防菌剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの成分については、特開2007−314766号公報、特開2008−127485号公報および特開2009−51989号公報、特開2012−72338号公報等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0075】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0076】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明の樹脂組成物を製造することもできる。
【0077】
樹脂成形品の製造方法は、特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0078】
次に、本発明の樹脂組成物を成形した樹脂成形品の表面にメッキを設ける工程を図1に従って説明する。図1は、レーザーダイレクトストラクチャリング技術によって、樹脂成形品1の表面にメッキを形成する工程を示す概略図である。図1では、樹脂成形品1は、平坦な基板となっているが、必ずしも平坦な基板である必要はなく、一部または全部が曲面している樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品は、最終製品に限らず、各種部品も含む趣旨である。本発明における樹脂成形品としては、携帯電子機器部品が好ましい。携帯電子機器部品は、高い耐衝撃特性と剛性、優れた耐熱性を併せ持つうえ、異方性が小さく、反りが小さいという特徴を有し、電子手帳、携帯用コンピューター等のPDA、ポケットベル、携帯電話、PHSなどの内部構造物および筐体として極めて有効であり、特に樹脂成形品がリブを除く平均肉厚が1.2mm以下(下限値は特に定めるものではないが、例えば、0.4mm以上)である平板形状の携帯電子機器用部品に適しており、中でも筐体として特に適している。
また、平均肉厚が1.6mmにおける樹脂成形品のUL−94試験の評価がV−0であることが求められる用途に適している。
【0079】
再び図1に戻り、樹脂成形品1にレーザー2を照射する。ここでのレーザーとは、特に定めるものではなく、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YAGレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではない。好ましい波長範囲は、200nm〜1200nmである。特に好ましくは800〜1200nmである。
レーザーが照射されると、レーザーが照射された部分3のみ、樹脂成形品1が活性化される。この活性化された状態で、樹脂成形品1をメッキ液4に適用する。メッキ液4としては、特に定めるものではなく、公知のメッキ液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀およびパラジウムの少なくとも1種を含むものが好ましく、銅を含むことがより好ましい。
樹脂成形品1をメッキ液4に適用する方法についても、特に定めるものではないが、例えば、メッキ液を配合した液中に投入する方法が挙げられる。メッキ液を適用後の樹脂成形品は、レーザー照射した部分のみ、メッキ層5が形成される。
本発明の方法では、1mm以下、さらには、150μm以下の幅の回路間隔(下限値は特に定めるものではないが、例えば、30μm以上)を形成することができる。メッキは、形成した回路の腐食や劣化を抑えるために、例えば無電解メッキを実施した後にニッケル、金で更に保護することも出来る。また、同様に無電解メッキ後に電解メッキを用い、必要な膜厚を短時間で形成することも出来る。
【0080】
本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、例えば、コネクタ、スイッチ、リレー、導電回路等の電子部品、ランプリフレクタ等の反射板、ギヤ、カム等のような摺動部品、エアインテークマニホールドなどの自動車部品、流し台などの水回り部品、種々の装飾部品、あるいは、フィルム、シート、繊維などの種々の用途に用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、成形方法にもよるが、白色度が高く、反射率に優れた成形品を与える。本発明の樹脂組成物から得られる成形品の白色度(ハンター式)は、通常92以上、好ましくは94以上である。また、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、耐熱性に優れるとともに、実際の使用環境下での光安定性に優れている。従って、本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、光を反射する機能を有する部品、特に、LED機器部品、好ましくは、LEDの反射板や導電回路として働く。メッキ層は、1層のみであってもよいし、多層構造であってもよい。
【0081】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−219620号公報、特開2011−195820号公報、特開2011−178873号公報、特開2011−168705号公報、特開2011−148267号公報の記載を参酌することができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0083】
<樹脂>
PC樹脂:ポリカーボネート樹脂、ユーピロンE−2000、三菱エンジニアリングプラスチックス製、ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量:27000
ABS樹脂:サンタックAT−08、日本エイアンドエル製
AS樹脂:テクノポリマー290FF、テクノポリマー製
【0084】
<窒化硼素(BN)>
PW50:窒化硼素、Zibo Jonye Ceramic Technologies製
【0085】
<LDS添加剤>
CP5C:Keeling&Walker社製、アンチモンドープ酸化スズ(酸化スズ95重量%、酸化アンチモン5重量%、酸化鉛0.02重量%、酸化銅0.004重量%からなる)
【0086】
<酸化防止剤>
Irg1076:BASF社製、Irganox1076
<リン系安定剤>
AX−71:ADEKA社製、モノ−およびジ−ステアリルアシッドホスフェートのほぼ等モル混合物
【0087】
<離型剤>
VPG861:ペンタエリスリトールテトラステアレート、コグニスオレオケミカルズジャパン社製
【0088】
<エラストマー>
M711:カネカ製、カネエース
【0089】
<ガラス繊維>
T−187:日本電気硝子社製、平均繊維長3mm、平均繊維径13μm、円形断面を有するガラス繊維(扁平率1)
【0090】
<酸化チタン>
CP−K:レジノカラー工業製、酸化チタン
【0091】
<コンパウンド>
後述する表に示す組成となるように、各成分をそれぞれ秤量し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0092】
<流動性の評価:Q値(単位:0.01cm3/sec)>
上記で得られたペレットを100℃で4時間以上乾燥した後、高荷式フローテスターを用いて、278℃、荷重160kgfの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:0.01cm3/sec)を測定して、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
【0093】
<引張り試験>
<<引張弾性率、引張破壊点強度、引張破壊点呼び歪>>
上記の方法で得られた樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度270〜290℃、金型温度100℃、射出時間2秒、成形サイクル40秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
得られたISO試験片を用い、ISO規格527−1及びISO527−2に準拠して23℃の温度で、引張弾性率(単位:MPa)、引張破壊点強度(単位:MPa)、引張破壊点呼び歪(単位:%)を測定した。
【0094】
<曲げ試験>
上記引張特性評価と同様にして製造した曲げ試験片(厚さ4mm)を用いて、ISO178に準拠して、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:MPa)、曲げ応力(単位:MPa)を測定した。
【0095】
<熱伝導率の測定(単位:W/m・K)>
上記で得られたISO多目的試験片を0.15〜0.5mm厚のスライス状に切削し、これを試料として、(株)アイフェイズ製温度波熱分析装置「ai−Phase Mobile1」を使用し、MD方向(成形時の樹脂流れ方向)及び厚み方向について、測定した。
【0096】
<LDS活性−Plating Index>
2mm厚さ/3mm厚さの2段プレートの表面に1064nmのYAGレーザーを用い、出力10W、周波数80kHz、速度3m/sの条件でレーザー照射を行い、続いて、MacDermid社製M−Copper85のメッキ層にて無電解メッキを行った。銅メッキの厚みより、以下の通りLDS活性を評価した。厚さが厚いほど、メッキ性が高いことを示している。
【0097】
結果を下記表に示す。
【表1】
【表2】
【0098】
上記表から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、流動性が高く、引張り試験、曲げ試験、熱伝導率およびメッキ性に優れたものが得られた。
図1