(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施の形態に係る懸架装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る懸架装置は、シリンダ1Aとこのシリンダ1Aに出入りするピストンロッド2Aとを備えて車体と車輪との間に介装される緩衝器DAと、この緩衝器DAのストロークを検出するストローク検出装置3Aとを備えるとともに、上記緩衝器DAのストロークに伴い伸縮する懸架ばね(メインスプリング)S1Aと、この懸架ばねS1Aと直列に配置されて上記懸架ばねS1Aよりもばね定数が大きく設定されるサブスプリングS2とを備えている。そして、上記ストローク検出装置3Aは、上記サブスプリングS2の変形量を検出するストロークセンサ30と、当該検出された値から上記緩衝器DAのストロークを求めるストローク演算手段31とを備えている。
【0015】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る懸架装置は、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークである。当該フロントフォークの構成は周知であるので、詳細に図示しないが、前輪の両側に起立する一対の緩衝器(一方の緩衝器DAのみを図示し、他方の緩衝器を省略する)と、これらの緩衝器DAを連結するとともに車体の骨格となる車体フレームに連結される車体側ブラケット(図示せず)と、上記各緩衝器DAの下端部を前輪の車軸に連結する車輪側ブラケット(図示せず)とを備えており、一対の緩衝器DAで前輪を両側から支えている。なお、懸架装置は、一本の緩衝器DAで前輪を片持ち支持するフロントフォークや、後輪を懸架するリアクッションであってもよく、また、自動車等の鞍乗型車両以外の懸架装置であってもよい。
【0016】
本実施の形態において、一対の緩衝器DAは共通の構成を備えているので、以下、一方の緩衝器DAについてのみ詳細に説明する。なお、緩衝器DAの構成は適宜変更することが可能であり、一対の緩衝器DAの一方と他方が異なる構成を備えるとしてもよい。
【0017】
上記緩衝器DAは、本実施の形態において、車体側チューブ4と車輪側チューブ5とからなるテレスコピック型のチューブ部材Tを備えており、当該チューブ部材Tが緩衝器DAの外殻となる。そして、車体側チューブ4が車輪側チューブ5よりも大径に形成されるとともに、車体側チューブ4の外周に車体側ブラケット(図示せず)が固定され、車輪側チューブ5の下端部に車輪側ブラケット(図示せず)が固定されているので、路面凹凸による衝撃が入力されると、車輪側チューブ5が車体側チューブ4に出入りして緩衝器DAがストロークする。なお、車輪側チューブ5が車体側チューブ4よりも大径に形成されて、車輪側チューブ5に車体側チューブ4が出入りするとしてもよい。
【0018】
チューブ部材Tにおいて、車体側チューブ4の上側開口はキャップ部材40で塞がれ、車輪側チューブ5の下側開口は、車輪側ブラケット(図示せず)で塞がれ、車体側チューブ4と車輪側チューブ5の重複部の間に形成される筒状隙間は車体側チューブ4の下端部内周に保持されて車輪側チューブ5の外周面に摺接する環状のシール部材41で塞がれているので、チューブ部材Tは密閉され、内部に収容される液体や気体が外側に漏れないようになっている。
【0019】
また、緩衝器DAは、車輪側ブラケット(図示せず)の底部に起立し車輪側チューブ5の軸心部に起立するシリンダ1Aと、キャップ部材40に吊り下げられた状態に保持されてシリンダ1Aに出入りするピストンロッド2Aと、シリンダ1Aとピストンロッド2Aの相対移動を抑制する減衰力を発生する減衰力発生手段(図示せず)とを備えている。さらに、キャップ部材40とシリンダ1Aとの間には、緩衝器DAを伸長方向に附勢して車体を弾性支持する懸架ばねS1Aと、この懸架ばねS1Aと直列に配置されるサブスプリングS2とが設けられており、ストローク検出装置3AでサブスプリングS2の変形量を検出し、当該検出された値から緩衝器DAのストロークを算出できるようになっている。
【0020】
本実施の形態において、懸架ばねS1Aは、本発明に係るメインスプリングに相当し、コイルばねからなる。また、サブスプリングS2は、懸架ばねS1Aよりもばね定数が大きく設定されるとともに、軸方向長さが短いコイルばねからなる。そして、懸架ばね(メインスプリング)S1AとサブスプリングS2との間には、ピストンロッド2Aの外周に配置され軸方向に移動可能な環状の中間ばね受座20が介装されている。つまり、懸架ばねS1AとサブスプリングS2は、当該中間ばね受座20を挟んで軸方向に直列に連なっており、懸架ばねS1Aは、中間ばね受座20とシリンダ側に固定される下側ばね受座10との間に介装され、サブスプリングS2は、中間ばね受座20とキャップ部材40に固定される上側ばね受座42との間に介装されている。
【0021】
懸架ばねS1AとサブスプリングS2の変形量の関係は、懸架ばねS1Aの変形量をa1、サブスプリングS2の変形量をa2、懸架ばねS1Aのばね定数をk1、サブスプリングS2のばね定数をk2とすると、a1/a2=k2/k1となる。また、サブスプリングS2のばね定数k2は、懸架ばねS1Aのばね定数k1よりも大きく設定されており(k1<k2)、例えば、懸架ばねS1Aのばね定数k1の3〜70倍程度とされる。このため、サブスプリングS2の変形量a2は、懸架ばねS1Aの変形量a1の、1/3〜1/70程度に小さくなる。
【0022】
ストローク検出装置3Aは、本実施の形態において、サブスプリングS2の変形量a2を検出するストロークセンサ30と、当該ストロークセンサ30で検出された値(a2)から緩衝器DAのストロークを算出するストローク演算手段31と、中間ばね
受座20に保持されて当該中間ばね
受座20の変位をストロークセンサ30に伝える延長ロッド32とを備えている。中間ばね受座20とストロークセンサ30は、接合されていることが好ましいが、この限りではない。
【0023】
ストロークセンサ30は、キャップ部材40に保持される筒状のセンサシリンダ30aと、上記延長ロッド32と直列に配置されてセンサシリンダ30aに出入りするセンサロッド30bとを備えるとともに、センサシリンダ30aに対するセンサロッド30bの変位(ストロークセンサ30のストローク)を電気信号として出力するように設定されている。なお、ストロークセンサ30の構成は、適宜変更することが可能である。
【0024】
ストロークセンサ30のストロークは、サブスプリングS2の変形量a2に等しく、懸架ばねS1Aの変形量a1は、a1=k2・a2/k1で求めることができる。そして、緩衝器DAのストロークは、懸架ばねS1AとサブスプリングS2の変形量a1,a2の合計に等しく、a1+a2で求めることができる。本実施の形態において、当該演算を行うストローク演算手段31は、車載のコントロールユニットからなる。
【0025】
図1に記載の形態において、チューブ部材T内には、シリンダ1Aの外側に気体が封入されて気室RGが形成されており、当該気室RGの圧力がセンサロッド30bをセンサシリンダ30a側に押すように作用する。気室RGの容積は、緩衝器DAのストロークに伴い膨縮し、気室RGの圧力が変化するので、当該気室RGの圧力によるセンサロッド30bを押す力も緩衝器DAのストロークに応じて変化する。このため、サブスプリングS2のばね定数k2を大きめにするか、サブスプリングS2の最大変形量を大きく設定し、ストローク演算手段31で懸架ばねS1Aの変形量a1を求める際に、センサロッド30bが気室RGの圧力によって押される分を差し引く補正をすることで、正確に緩衝器DAのストロークを求めることができる。
【0026】
なお、気室RGの圧力によりセンサロッド30bがセンサシリンダ30a側に押されないように設定されるか、気室RGの圧力により押されてもセンサロッド30bが動かないように保持されている場合には、上記補正は不要である。
【0027】
以下、本実施の形態に係る懸架装置の作動について説明する。
【0028】
車輪側チューブ5が車体側チューブ4から退出するとともにピストンロッド2Aがシリンダ1Aから退出して、緩衝器DAが伸長方向にストロークすると、懸架ばねS1AとサブスプリングS2が伸長する。このとき、中間ばね受座20がキャップ部材40から離れて、センサロッド30bがセンサシリンダ30aから退出し、ストロークセンサ30がサブスプリングS2の変形量a2を検出する。そして、ストローク演算手段31がストロークセンサ30で検出された値(a2)を基に、緩衝器DAのストロークを求める(=a1+a2,a1=k2・a2/k1、センサロッド30bが気室RGの圧力によって押される分を差し引く補正)。
【0029】
反対に、車輪側チューブ5が車体側チューブ4に進入するとともにピストンロッド2Aがシリンダ1Aに進入して、緩衝器DAが圧縮方向にストロークすると、懸架ばねS1AとサブスプリングS2が収縮する。このとき、中間ばね受座20がキャップ部材40に接近して、センサロッド30bがセンサシリンダ30aに進入し、ストロークセンサ30がサブスプリングS2の変形量a2を検出する。そして、ストローク演算手段31がストロークセンサ30で検出された値(a2)を基に、緩衝器DAのストロークを求める(=a1+a2,a1=k2・a2/k1、センサロッド30bが気室RGの圧力によって押される分を差し引く補正)。
【0030】
以下、本実施の形態に係る懸架装置の作用効果について説明する。
【0031】
本実施の形態において、緩衝器DAは、車体側チューブ4と車輪側チューブ5とからなるテレスコピック型のチューブ部材Tを備えており、シリンダ1A及びピストンロッド2Aは、上記チューブ部材T内に配置され、上記チューブ部材Tと上記シリンダ1Aとの間には、気体が封入されて気室RGが形成されている。そして、ストロークセンサ30は、センサシリンダ30aと、このセンサシリンダ30aに出没し上記気室RGの圧力により上記センサシリンダ30a側に押されるセンサロッド30bとを備えており、ストローク演算手段31でメインスプリングである懸架ばねS1Aの変形量a1を求める際に、上記気室RGの圧力で上記センサロッド33bが上記センサシリンダ30a側に押される分を差し引く補正をする。
【0032】
上記構成によれば、緩衝器DAのストロークを正確に求めることが可能となるが、気室RGの圧力によりセンサロッド30bがセンサシリンダ30a側に押されないように設定されるか、気室RGの圧力により押されてもセンサロッド30bが動かないように保持されている場合には、上記補正をせずに上記効果を奏することができる。
【0033】
また、本実施の形態において、メインスプリングは、緩衝器DAを伸長方向に附勢して車体を弾性支持する懸架ばねS1Aである。
【0034】
上記構成によれば、懸架ばねS1AとサブスプリングS2の変形量a1,a2の合計から緩衝器DAのストロークを求めることができる。
【0035】
また、上記構成によれば、本実施の形態のように、緩衝器DAが、シリンダ1Aを車輪側に連結するとともにピストンロッド2Aを車体側に連結した正立型緩衝器である場合、ストロークセンサ30をばね上に配置することが容易であり、このようにすることで、ストロークセンサ30に路面凹凸による衝撃が伝わることを抑制できる。しかし、緩衝器DAの構成は、上記の限りではなく、シリンダ1Aを車体側に連結するとともにピストンロッド2Aを車輪側に連結した倒立型緩衝器であってもよい。
【0036】
また、本実施の形態において、懸架装置は、シリンダ1Aとこのシリンダ1Aに出入りするピストンロッド2Aとを備えて車体と車輪との間に介装される緩衝器DAと、この緩衝器DAのストロークを検出するストローク検出装置3Aとを備えるとともに、上記緩衝器DAのストロークに伴い伸縮する懸架ばね(メインスプリング)S1Aと、この懸架ばねS1Aと直列に配置されて上記懸架ばねS1Aよりもばね定数が大きく設定されるサブスプリングS2とを備えている。そして、上記ストローク検出装置3Aは、上記サブスプリングS2の変形量a2を検出するストロークセンサ30と、当該検出された値(a2)から上記緩衝器DAのストロークを求めるストローク演算手段31とを備えている。
【0037】
上記構成によれば、サブスプリングS2のばね定数k2の方が懸架ばねS1Aのばね定数k1よりも大きく設定されているので、サブスプリングS2の変形量a2は懸架ばねS1Aの変形量a1よりも小さくなる。したがって、ストロークセンサ30を利用して緩衝器DAのストロークを検出したとしても、緩衝器DAのストロークよりもストロークセンサ30のストロークが小さくて済むので、ストロークセンサ30を小型化することが可能となる。
【0038】
つづいて、本発明の他の実施の形態に係る懸架装置について説明する。当該懸架装置において、一実施の形態に係る懸架装置と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図2に示すように、本実施の形態に係る懸架装置は、一実施の形態と同様に、鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークであり、前輪の両側に起立する一対の緩衝器(一方の緩衝器DBのみを図示し、他方の緩衝器を省略する)と、これらの緩衝器DBを連結するとともに車体の骨格となる車体フレームに連結される車体側ブラケット(図示せず)と、上記各緩衝器DBの下端部を前輪の車軸に連結する車輪側ブラケット50とを備えており、一対の緩衝器DBで前輪を両側から支えている。なお、懸架装置は、一本の緩衝器DBで前輪を片持ち支持するフロントフォークや、後輪を懸架するリアクッションであってもよく、また、自動車等の鞍乗型車両以外の懸架装置であってもよい。
【0039】
本実施の形態においても、一対の緩衝器DBは共通の構成を備えているので、以下、一方の緩衝器DBについてのみ詳細に説明する。なお、緩衝器DBの構成は適宜変更することが可能であり、一対の緩衝器DBの一方と他方が異なる構成を備えるとしてもよい。
【0040】
上記緩衝器DBは、本実施の形態においても、一実施の形態と同様に、車体側チューブ4と車輪側チューブ5とからなるテレスコピック型のチューブ部材Tを備えており、当該チューブ部材Tが緩衝器DBの外殻となり、密閉されている。
【0041】
また、緩衝器DBは、キャップ部材40に保持されて車体側チューブ4の軸心部に起立するシリンダ1Bと、このシリンダ1Bの下側開口を塞ぐ環状のロッドガイド11と、車輪側ブラケット50の底部に起立してロッドガイド11で軸支されながらシリンダ1Bに出入りするピストンロッド2Bと、このピストンロッド2Bの上端部に固定されシリンダ1B内に摺動可能に挿入されるピストン6と、シリンダ1Bの反ピストンロッド側の軸心部に起立するベースロッド7と、このベースロッ
ド7の下端部に固定されるベース部材8と、ベースロッド7とシリンダ1Bとの間に摺動可能に挿入される環状のフリーピストン9とを備えている。
【0042】
さらに、ロッドガイド11と車体側ブラケット50との間には、緩衝器DBを伸長方向に附勢して車体を弾性支持する懸架ばねS1Bが設けられ、キャップ部材40とフリーピストン9との間には、フリーピストン9を
図2中下側に附勢する加圧ばねS3と、この加圧ばねS3と直列に配置されるサブスプリングS4とが設けられており、ストローク検出装置3BでサブスプリングS4の変形量を検出し、当該検出された値から緩衝器DBのストロークを算出できるようになっている。
【0043】
上記緩衝器DBにおけるシリンダ1B内には、作動液が充填される液室Lが形成されており、この液室Lは、ピストン6で区画される伸側室L1及び圧側室L2と、当該圧側室L2とベース部材8で区画される液溜室L3とからなる。作動液として、作動油と称される油や、水、水溶液等の液体が利用される。上記液溜室L3は、フリーピストン9で気体が封入される気室Gと区画されている。また、シリンダ1Bとチューブ部材Tとの間には、リザーバRが形成されており、このリザーバRには、作動液と、気体が封入されている。
【0044】
シリンダ1Bは、
図3に示すように、
図3中下側に配置されてピストン6が摺接するピストン側シリンダ12と、
図3中上側に配置されてベース部材8が固定されるとともに、フリーピストン9が摺接するベース側シリンダ13とからなり、当該ベース側シリンダ13の下端部内周にピストン側シリンダ12が螺合されている。ベース側シリンダ13の上部には、内周が他の部分の内周と比較して大径に形成される拡径部13aが設けられるとともに、当該拡径部13aの下部にシリンダ1B内外を連通する通孔13bが形成されている。
【0045】
もどって、
図2に示すように、伸側室L1と圧側室L2とを区画するピストン6には、伸側室L1と圧側室L2を連通する伸側ピストン通路6aと圧側ピストン通路6bが形成されるとともに、伸側ピストン通路6aを伸側室L1から圧側室L2に移動する作動液の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する伸側減衰弁60と、圧側ピストン通路6bを圧側室L2から伸側室L1に移動する作動液の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する圧側逆止弁61が積層されている。本実施の形態において、伸側減衰弁60が伸側ピストン通路6aを通過する作動液に与える抵抗は比較的大きく、圧側逆止弁61が圧側ピストン通路6bを通過する作動液に与える抵抗は比較的小さくなるように設定されている。しかし、ピストン6に積層される弁の仕様は所望の減衰力の特性に応じて適宜変更できる。
【0046】
圧側室L2と液溜室L3とを区画するベース部材8には、圧側室L2と液溜室L3を連通する伸側ベース部材通路8aと圧側ベース部材通路8bが形成されるとともに、伸側ベース部材通路8aを液溜室L3から圧側室L2に移動する作動液の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する伸側逆止弁80と、圧側ベース部材通路8bを圧側室L2から液溜室L3に移動する作動液の流れを許容し、この反対方向の流れを阻止する圧側減衰弁81が積層されている。本実施の形態において、伸側逆止弁80が伸側ベース部材通路8aを通過する作動液に与える抵抗は比較的小さく、圧側減衰弁81が圧側
ベース部材通路8bを通過する作動液に与える抵抗は比較的大きくなるように設定されている。しかし、ベース部材8に積層される弁の仕様も所望の減衰力の特性に応じて適宜変更できる。
【0047】
液溜室L3と気室Gとを区画するフリーピストン9は、
図3に示すように、環状に形成される本体部9aと、この本体部9aの外周に取り付けられる上下一対の環状の外周シール9b,9cと、本体部9aの内周に取り付けられる環状の内周シール9dとを備えており、ベース部材
8とキャップ部材40との間を軸方向に移動できる。内周シール9dは、常にベースロッド7の外周面に摺接しており、フリーピストン9の内周を塞いでいる。上側の外周シール9bは、常に拡径部13aの内周面に摺接しており、フリーピストン9の外周を塞いでいる。他方、下側の外周シール9cは、拡径部13aに達するまでの間、ベース側シリンダ13の内周面に摺接し、フリーピストン9の外周を塞いでいるものの、拡径部13aに達すると、拡径部13aとの間を完全には塞がず作動液が漏れ出るようになっている。そして、当該漏れ出た作動液は、通孔13bを通ってリザーバRに移動できる。このようにすることで、シリンダ1B内圧が過剰になることを防ぐことができる。
【0048】
フリーピストン9を
図2,3中下側に附勢する加圧ばねS3は、フリーピストン9を介して液室Lを加圧している。また、本実施の形態において、当該加圧ばねS3は、本発明に係るメインスプリングに相当し、コイルばねからなる。また、加圧ばねS3と直列に設けられるサブスプリングS4は、加圧ばねS3よりもばね定数が大きく設定される皿ばねからなり、加圧ばねS3よりも軸方向長さが極めて短い。そして、加圧ばね(メインスプリング)S3とサブスプリングS4との間には、ベースロッド7の外周に配置され軸方向に移動可能な環状の中間ばね受座70が介装されている。つまり、加圧ばねS3とサブスプリングS4は、当該中間ばね受座70を挟んで軸方向に直列に連なっており、加圧ばねS3は、中間ばね受座70とフリーピストン9に固定される下側ばね受座90との間に介装され、サブスプリングS4は、中間ばね受座70とキャップ部材40との間に介装されている。
【0049】
加圧ばねS3とサブスプリングS4の変形量の関係は、加圧ばねS3の変形量をa3、サブスプリングS4の変形量をa4、加圧ばねS3のばね定数をk3、サブスプリングS4のばね定数をk4とすると、a3/a4=k4/k3となる。また、サブスプリングS4のばね定数k4は、加圧ばねS3のばね定数k3よりも大きく設定されており(k3<k4)、例えば、加圧ばねS3のばね定数k3の3〜70倍程度とされる。このため、サブスプリングS4の変形量a4は、加圧ばねS3の変形量a3の、1/3〜1/70程度に小さくなる。
【0050】
サブスプリングS4の変形量a4から緩衝器DBのストロークを算出するストローク検出装置3Bは、本実施の形態においても一実施の形態と同様に、サブスプリングS4の変形量a4を検出するストロークセンサ33と、当該ストロークセンサ33で検出された値(a4)から緩衝器DBのストロークを算出するストローク演算手段34と、中間ばね受け座70に保持されて当該中間ばね受け座70の変位をストロークセンサ33に伝える延長ロッド35とを備えている。中間ばね受座70とストロークセンサ33は、接合されていることが好ましいが、この限りではない。
【0051】
ストロークセンサ33は、キャップ部材40に保持される筒状のセンサシリンダ33aと、上記延長ロッド35と直列に配置されてセンサシリンダ33aに出入りするセンサロッド33bとを備えるとともに、センサシリンダ33aに対するセンサロッド33bの変位(ストロークセンサ33のストローク)を電気信号として出力するように設定されている。なお、ストロークセンサ33の構成は、適宜変更することが可能である。
【0052】
ストロークセンサ33のストロークは、サブスプリングS4の変形量a4に等しく、加圧ばねS3の変形量a3は、a3=k4・a4/k3で求めることができる。また、緩衝器DBのストロークは、ピストンロッド2Bのシリンダ1Bに対する変位に等しく、当該ピストンロッド2Bの変位をN、フリーピストン9の変位をM、ピストンロッド2Bの断面積をX1、液溜室L3の断面積(下側の外周シール9cが摺接するベース側シリンダ13の内径を直径とする円の面積から、内周シール9dが摺接するベースロッド7の外径を直径とする円の面積を引いた面積)をX2とすると、N=M×X2/X1で求めることができる。そして、フリーピストン9の変位Mは、加圧ばねS3とサブスプリングS4の変形量a3,a4の合計に等しく、a3+a4で求めることができるので、サブスプリングS4の変形量a4から緩衝器DBのストロークを求めることができる。本実施の形態において、当該演算を行うストローク演算手段34は、車載のコントロールユニットからなる。
【0053】
図3に記載の形態において、気室Gの圧力がセンサロッド33bをセンサシリンダ33a側に押すように作用する。気室Gの容積は、緩衝器DBのストロークに伴うフリーピストン9の変位により膨縮し、気室Gの圧力が変化するので、当該気室Gの圧力によるセンサロッド33bを押す力も緩衝器DBのストロークに応じて変化する。このため、サブスプリングS4のばね定数k4を大きめにするか、サブスプリングS4の最大変形量を大きく設定し、ストローク演算手段34で加圧ばねS3の変形量a3を求める際に、センサロッド33bが気室Gの圧力によって押される分を差し引く補正をすることで、正確に緩衝器DBのストロークを求めることができる。
【0054】
なお、気室Gの圧力によりセンサロッド33bがセンサシリンダ33a側に押されないように設定されるか、気室Gの圧力により押されてもセンサロッド33bが動かないように保持されている場合には、上記補正は不要である。
【0055】
以下、本実施の形態に係る緩衝器DBの作動について説明する。
【0056】
車輪側チューブ5が車体側チューブ4から退出するとともにピストンロッド2Bがシリンダ1Bから退出して、緩衝器DBが伸長方向にストロークすると、縮小される伸側室L1の作動液は、伸側減衰弁60を開き、伸側ピストン通路6aを通って圧側室L2に移動するので、緩衝器DBは、伸側減衰弁60の抵抗に起因する伸側減衰力を発生する。
【0057】
また、緩衝器DBが伸長方向にストロークする場合、シリンダ1Bから退出したピストンロッド体積分(=N×X1)、シリンダ内容積が増加するので、この分の作動液が伸側逆止弁80を開き、伸側ベース部材通路8aを通って液溜室L3から圧側室L2に移動する。このため、フリーピストン9が
図2,3中下側に移動して、加圧ばねS3とサブスプリングS4が伸長する。このとき、中間ばね受座70がキャップ部材40から離れて、センサロッド33bがセンサシリンダ33aから退出し、ストロークセンサ33がサブスプリングS4の変形量a4を検出する。そして、ストローク演算手段34がストロークセンサS4で検出された値(a4)から、緩衝器DBのストロークを求める(N=M×X2/X1,M=a3+a4,a3=k4・a4/k3、センサロッド33bが気室Gの圧力によって押される分を差し引く補正)。
【0058】
反対に、車輪側チューブ5が車体側チューブ4に進入するとともにピストンロッド2Bがシリンダ1Bに進入して、緩衝器DBが圧縮方向にストロークすると、縮小される圧側室L2の作動液は、圧側逆止弁61を開き、圧側ピストン通路6bを通って伸側室L2に移動する。
【0059】
また、緩衝器DBが圧縮方向にストロークする場合、シリンダ1Bに進入したピストンロッド体積分(=N×X1)、シリンダ内容積が減少するので、この分の作動液が圧側減衰弁81を開き、圧側ベース部材通路8bを通って圧側室L2から液溜室L3に移動する。このため、緩衝器DBは、圧側逆止弁61及び圧側減衰弁81の抵抗に起因する圧側減衰力を発生する。このとき、フリーピストン9は
図2,3中上側に移動して、加圧ばねS3とサブスプリングS4が圧縮されるので、中間ばね受座70がキャップ部材40に接近して、センサロッド33bがセンサシリンダ33aに進入し、ストロークセンサ33がサブスプリングS4の変形量a4を検出する。そして、ストローク演算手段34がストロークセンサ33で検出された値(a4)から、緩衝器DBのストロークを求める(N=M×X2/X1,M=a3+a4,a3=k4・a4/k3、センサロッド33bが気室Gの圧力によって押される分を差し引く補正)。
【0060】
つづいて、本実施の形態に係る懸架装置の作用効果について説明する。
【0061】
本実施の形態において、サブスプリングS4は、皿ばねからなる。
【0062】
上記構成によれば、サブスプリングS4がコイルばねからなる場合と比較して、サブスプリングS4の軸方向長さを短くすることができ、緩衝器DBが軸方向に嵩張ることを抑制できる。しかし、サブスプリングS4は、一実施の形態と同様に、コイルばねからなるとしてもよく、また、一実施の形態のサブスプリングS2を皿ばねに変更してもよい。
【0063】
また、本実施の形態において、シリンダ1B内には、フリーピストン9で液室Lと区画され、気体が封入される気室Gが形成されている。そして、ストロークセンサ33は、センサシリンダ33aと、このセンサシリンダ33aに出没し、上記気室Gの圧力により上記センサシリンダ33a側に押されるセンサロッド33bとを備えており、ストローク演算手段34でメインスプリングである加圧ばねS3の変形量a3を求める際に、上記気室Gの圧力で上記センサロッド33bが上記センサシリンダ33a側に押される分を差し引く補正をする。
【0064】
上記構成によれば、緩衝器DBのストロークを正確に求めることが可能となるが、気室Gの圧力によりセンサロッド33bがセンサシリンダ33a側に押されないように設定されるか、気室Gの圧力により押されてもセンサロッド33bが動かないように保持されている場合には、上記補正をせずに上記効果を奏することができる。
【0065】
また、本実施の形態において、緩衝器DBは、シリンダ1B内に形成されて作動液が充填される液室Lと、ピストンロッド2Bの上端部(先端部)に保持されて液室Lを伸側室L1と圧側室L2とに区画するピストン6と、シリンダ1B内の反ピストンロッド側に摺動可能に挿入されてシリンダ1B内に上記液室Lを区画するフリーピストン9とを備えており、メインスプリングは、上記フリーピストン9を介して液室Lを加圧する加圧ばねS3である。
【0066】
上記構成によれば、サブスプリングS4の変形量a4から、加圧ばねS3の変形量a3を求めることができる。そして、加圧ばねS3とサブスプリングS4の変形量a3,a4の合計から、フリーピストン9の変位Mを求め、このフリーピストンMの変位から緩衝器DBのストロークを求めることができる。なお、懸架装置が加圧ばねS3を備える場合、この加圧ばねS3の変形量a3を直接ストロークセンサ33で検出し、この値から緩衝器DBのストロークを求めても、緩衝器DBのストロークを直接ストロークセンサ33で検出する場合と比較して、ストロークセンサ33を小型化できるが、上記構成にすることで、更にストロークセンサ33を小型化できる。
【0067】
また、上記構成によれば、本実施の形態のように、緩衝器DBが、シリンダ1Bを車体側に連結するとともにピストンロッド2Bを車輪側に連結した倒立型緩衝器である場合、ストロークセンサ33をばね上に配置することが容易であり、このようにすることで、ストロークセンサ33に路面凹凸による衝撃が伝達されることを抑制できる。しかし、このような倒立型の緩衝器DBであっても、一実施の形態と同様に、懸架ばねS1Bに直列にサブスプリングを設け、当該サブスプリングの変形量から懸架ばねS1Bの変形量を求めるとしてもよい。また、上記フリーピストン9を備える緩衝器DBであっても、シリンダ1Bを車輪側に連結するとともにピストンロッド2Bを車体側に連結して倒立型に設定するとしてもよい。
【0068】
また、本実施の形態において、シリンダ1Bとこのシリンダ1Bに出入りするピストンロッド2Bとを備えて車体と車輪との間に介装される緩衝器DBと、この緩衝器DBのストロークを検出するストローク検出装置3Bとを備えるとともに、上記緩衝器のストロークに伴い伸縮する加圧ばね(メインスプリング)S3と、この加圧ばねS3と直列に配置されて上記加圧ばねS3よりもばね定数が大きく設定されるサブスプリングS4とを備えている。そして、上記ストローク検出装置3Bは、上記サブスプリングS4の変形量a4を検出するストロークセンサ33と、当該検出された値(a4)から上記緩衝器DBのストロークを求めるストローク演算手段34とを備えている。
【0069】
上記構成によれば、サブスプリングS4のばね定数k4の方が加圧ばねS3のばね定数k3よりも大きく設定されているので、サブスプリングS4の変形量a4は加圧ばねk3の変形量a3よりも小さくなる。したがって、ストロークセンサ33を利用して緩衝器DBのストロークを検出したとしても、緩衝器DBのストロークよりもストロークセンサ33のストロークが小さくて済むので、ストロークセンサ33を小型化することが可能となる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。