(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液晶パネルの法線方向から見た方位角方向において、前記液晶パネルのコントラストの視野角依存性を示す複数の等コントラスト曲線のうち、少なくともコントラストが相対的に高い等コントラスト曲線が回転非対称の形状を有し、
前記液晶パネルの視野角が相対的に狭い方位角方向は、前記回転非対称の形状を有する複数の等コントラスト曲線において極角が最も小さい方位角方向である請求項1に記載の液晶表示装置。
前記射出角度制御部材は、光透過性を有する基材と、前記基材の一面に形成された光拡散部と、前記基材の一面のうち前記光拡散部の形成領域以外の領域に形成された遮光部と、を備え、
前記光拡散部が、前記基材側に光射出端面を有し、
前記光拡散部が、前記基材側と反対側に前記光射出端面の面積よりも大きい面積の光入射端面を有し、
前記光拡散部の前記光入射端面から前記光射出端面までの高さが前記遮光部の高さよりも高く、
前記光拡散部が形成されていない領域の光拡散部間の間隙に、前記光拡散部の屈折率よりも小さい屈折率を有する物質が存在している請求項1ないし7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、
図1〜
図13Bを用いて説明する。
本実施形態では、透過型の液晶パネルを備えた液晶表示装置の例を挙げて説明する。
なお、以下の全ての図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0029】
図1は、本実施形態の液晶表示装置を斜め上方(視認側)から見た斜視図である。
本実施形態の液晶表示装置1は、
図1に示すように、バックライト2(照明装置)と、第1偏光板3と、液晶パネル4と、第2偏光板5と、光制御フィルム7(射出角度制御部材)と、から構成されている。
図1では、液晶パネル4を模式的に1枚の板状に図示しているが、その詳細な構造については後述する。
【0030】
観察者は、光制御フィルム7が配置された
図1における液晶表示装置1の上側から表示を見ることになる。以下の説明では、光制御フィルム7が配置された側を視認側と称し、バックライト2が配置された側を背面側と称する。また、以下の説明において、x軸は液晶表示装置の画面の水平方向、y軸は液晶表示装置の画面の垂直方向、z軸は液晶表示装置の厚さ方向、と定義する。
【0031】
本実施形態の液晶表示装置1においては、バックライト2から射出された光を液晶パネル4で変調し、変調した光によって所定の画像や文字等を表示する。また、液晶パネル4から射出された光が光制御フィルム7を透過すると、射出光の配光分布が光制御フィルム7に入射する前より広がった状態となって光が光制御フィルム7から射出される。これにより、観察者は広い視野角を持って表示を視認できる。
【0032】
以下、液晶パネル4の具体的な構成について説明する。
ここでは、アクティブマトリクス方式の透過型液晶パネルを一例に挙げて説明するが、本実施形態に適用可能な液晶パネルはアクティブマトリクス方式の透過型液晶パネルに限るものではない。本実施形態に適用可能な液晶パネルは、例えば半透過型(透過・反射兼用型)液晶パネルであっても良く、更には、各画素がスイッチング用薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,以下、TFTと略記する)を備えていない単純マトリクス方式の液晶パネルであっても良い。
【0033】
図3は、液晶パネル4の縦断面図である。
液晶パネル4は、
図3に示すように、TFT基板9と、カラーフィルター基板10と、液晶層11と、を有している。TFT基板9は、スイッチング素子基板として液晶パネル4に備えられている。カラーフィルター基板10は、TFT基板9に対向して配置される。液晶層11は、TFT基板9とカラーフィルター基板10との間に挟持される。液晶層11は、TFT基板9と、カラーフィルター基板10と、TFT基板9とカラーフィルター基板10とを所定の間隔をおいて貼り合わせる枠状のシール部材(図示せず)と、によって囲まれた空間内に封入されている。本実施形態の液晶パネル4は、例えばTN(Twisted Nematic)モードで表示を行う。液晶層11には、誘電率異方性が正の液晶が用いられる。TFT基板9とカラーフィルター基板10との間には、これら基板間の間隔を一定に保持するための球状のスペーサー12が配置されている。
【0034】
本発明の液晶表示装置は、表示モードとして、上記のTNモードに限らず、後の実施形態で例示するVA(Vertical Alignment,垂直配向)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード等を用いることができる。ただし、本実施形態では、TNモードの液晶パネルを用いた例を挙げる。
【0035】
TFT基板9には、表示の最小単位領域である画素(図示せず)がマトリクス状に複数配置されている。TFT基板9には、複数のソースバスライン(図示せず)が、互いに平行に延在するように形成されるとともに、複数のゲートバスライン(図示せず)が、互いに平行に延在し、かつ、複数のソースバスラインと直交するように形成されている。したがって、TFT基板9上には、複数のソースバスラインと複数のゲートバスラインとが格子状に形成され、隣接するソースバスラインと隣接するゲートバスラインとによって区画された矩形状の領域が一つの画素となる。ソースバスラインは、後述するTFTのソース電極に接続され、ゲートバスラインは、TFTのゲート電極に接続されている。
【0036】
TFT基板9を構成する透明基板14の液晶層11側の面に、半導体層15、ゲート電極16、ソース電極17、ドレイン電極18等を有するTFT19が形成されている。透明基板14には、例えばガラス基板を用いることができる。透明基板14上に、例えばCGS(Continuous Grain Silicon:連続粒界シリコン)、LPS(Low−temperature Poly−Silicon:低温多結晶シリコン)、α−Si(Amorphous Silicon:非結晶シリコン)等の半導体材料からなる半導体層15が形成されている。また、透明基板14上に、半導体層15を覆うようにゲート絶縁膜20が形成されている。ゲート絶縁膜20の材料としては、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、もしくはこれらの積層膜等が用いられる。
ゲート絶縁膜20上には、半導体層15と対向するようにゲート電極16が形成されている。ゲート電極16の材料としては、例えばW(タングステン)/TaN(窒化タンタル)の積層膜、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)等が用いられる。
【0037】
ゲート絶縁膜20上に、ゲート電極16を覆うように第1層間絶縁膜21が形成されている。第1層間絶縁膜21の材料としては、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、もしくはこれらの積層膜等が用いられる。第1層間絶縁膜21上に、ソース電極17およびドレイン電極18が形成されている。ソース電極17は、第1層間絶縁膜21とゲート絶縁膜20とを貫通するコンタクトホール22を介して半導体層15のソース領域に接続されている。同様に、ドレイン電極18は、第1層間絶縁膜21とゲート絶縁膜20とを貫通するコンタクトホール23を介して半導体層15のドレイン領域に接続されている。ソース電極17およびドレイン電極18の材料としては、上述のゲート電極16と同様の導電性材料が用いられる。第1層間絶縁膜21上に、ソース電極17およびドレイン電極18を覆うように第2層間絶縁膜24が形成されている。第2層間絶縁膜24の材料としては、上述の第1層間絶縁膜21と同様の材料、もしくは有機絶縁性材料が用いられる。
【0038】
第2層間絶縁膜24上に、画素電極25が形成されている。画素電極25は、第2層間絶縁膜24を貫通するコンタクトホール26を介してドレイン電極18に接続されている。よって、画素電極25は、ドレイン電極18を中継用電極として半導体層15のドレイン領域に接続されている。画素電極25の材料としては、例えばITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide、インジウム亜鉛酸化物)等の透明導電性材料が用いられる。この構成により、ゲートバスラインを通じて走査信号が供給され、TFT19がオン状態となったときに、ソースバスラインを通じてソース電極17に供給された画像信号が、半導体層15、ドレイン電極18を経て画素電極25に供給される。また、画素電極25を覆うように第2層間絶縁膜24上の全面に配向膜27が形成されている。この配向膜27は、液晶層11を構成する液晶分子を水平配向させる配向規制力を有している。なお、TFTの形態としては、
図3に示したボトムゲート型TFTであっても良いし、トップゲート型TFTであっても良い。
【0039】
一方、カラーフィルター基板10を構成する透明基板29の液晶層11側の面には、ブラックマトリクス30、カラーフィルター31、平坦化層32、対向電極33、配向膜34が順次形成されている。ブラックマトリクス30は、画素間領域において光の透過を遮断する機能を有している。ブラックマトリクス30は、Cr(クロム)やCr/酸化Crの多層膜等の金属、もしくはカーボン粒子を感光性樹脂に分散させたフォトレジストで形成されている。カラーフィルター31には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の色素が含まれている。TFT基板9上の一つの画素電極25にR,G,Bのいずれか一つのカラーフィルター31が対向して配置されている。平坦化層32は、ブラックマトリクス30およびカラーフィルター31を覆う絶縁膜で構成されている。平坦化層32は、ブラックマトリクス30およびカラーフィルター31によってできる段差を緩和して平坦化する機能を有している。平坦化層32上には対向電極33が形成されている。対向電極33の材料としては、画素電極25と同様の透明導電性材料が用いられる。また、対向電極33上の全面に、水平配向規制力を有する配向膜34が形成されている。カラーフィルター31は、R、G、Bの3色以上の多色構成としても良い。
【0040】
図2に示すように、バックライト2は、発光ダイオード、冷陰極管等の光源36と、アクリル樹脂等からなる導光体37と、リフレクター35と、反射シート38と、プリズムシート42と、を備えている。光源36は、平面形状が矩形状の導光体37の一つの端面37aに配置され、導光体37の端面37aに向けて光を射出する。導光体37は、端面37aから入射した光を内部で伝搬させつつ、前面37bから射出させる。リフレクター35は、光源36から射出される光のうち、導光体37の端面37a以外の方向に向けて射出される光を、導光体37の端面37aに向けて反射させる。反射シート38は、導光体37の背面37cから射出される光を反射させ、導光体37の背面37cから再入射させる。プリズムシート42は、互いに平行に配置された複数の三角柱状のプリズム構造体42aを備えている。プリズムシート42は、導光体37の前面37bからの光が入射したとき、この光の進行方向を液晶パネル4の法線方向に近い方向に変えて射出させる。本実施形態のバックライト2は、光源36が導光体37の端面37aに配置されたエッジライト型のバックライトである。
【0041】
本実施形態のバックライト2は、光の射出方向を制御して指向性を持たせたバックライト、いわゆる指向性バックライトである。具体的には、導光体37の厚みが、光源36が配置された端面37aから反対側の端面37dに向けて漸次薄くなっている。すなわち、導光体37の前面37bと背面37cとは互いに平行でなく、導光体37を側面から見た形状は楔状である。導光体37の端面37aから入射した光は、導光体37の前面37bと背面37cとの間で反射を繰り返しつつ内部をy軸方向に進行する。仮に導光板が平行平板であったとすると、導光板の前面および背面に対する光の入射角は何回反射を繰り返しても一定である。これに対して、本実施形態のように、導光体37が楔状である場合、導光体37の前面37bおよび背面37cで光が1回反射する毎に入射角が小さくなる。
【0042】
このとき、例えば導光体37を構成するアクリル樹脂の屈折率が1.5、空気の屈折率を1.0とすると、導光体37の前面37bにおける臨界角、すなわち導光体37を構成するアクリル樹脂と空気との界面における臨界角は、Snellの法則から42°程度となる。導光体37に入射した直後の光が前面37bに入射した際、前面37bへの光Lの入射角が臨界角である42°よりも大きい間は全反射条件を満たすため、光Lは前面37bで全反射する。その後、光Lが前面37bと背面37cとの間で全反射を繰り返し、前面37bへの光Lの入射角が臨界角である42°よりも小さくなった時点で全反射条件を満たさなくなり、光Lは外部空間に射出される。したがって、光Lは、導光体37の前面37bに対して略一定の射出角度をもって射出する。このように、バックライト2は、yz平面内において狭い配光分布を有し、yz平面内での指向性を持つ。一方、バックライト2は、xz平面内においてはyz平面内での配光分布よりも広い配光分布を有し、xz平面内での指向性を持たない。
【0043】
バックライト2と液晶パネル4との間には、偏光子として機能する第1偏光板3が設けられている。ここで、x軸方向の正方向を基準として反時計回りに角度を表すとすると、第1偏光板3の透過軸P1は135°−315°方向に設定されている。液晶パネル4と光制御フィルム7との間には、検光子として機能する第2偏光板5が設けられている。第2偏光板5の透過軸P2は、第1偏光板3の透過軸P1と直交するように配置されており、45°−225°方向に設定されている。第1偏光板3の透過軸P1と第2偏光板5の透過軸P2とは、クロスニコルの配置となっている。
【0044】
次に、光制御フィルム7について詳細に説明する。
図5は、光制御フィルム7をバックライト方向から見た斜視図である。
光制御フィルム7は、
図5に示すように、基材39と、基材39の一面(視認側と反対側の面)に形成された複数の光拡散部40と、基材39の一面に形成された遮光層41(遮光部)と、から構成されている。光制御フィルム7は、光拡散部40が設けられた側を第2偏光板5に向け、基材39の側を視認側に向けて第2偏光板5上に配置される。光制御フィルム7は、接着剤層(図示せず)を介して第2偏光板5に固定される。
【0045】
基材39には、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)フィルム等の透明樹脂製の基材が好ましく用いられる。基材39は、製造プロセスにおいて、後で遮光層41や光拡散部40の材料を塗布する際の下地となるものであり、製造プロセス中の熱処理工程における耐熱性と機械的強度とを備える必要がある。したがって、基材39には、樹脂製の基材の他、ガラス製の基材等を用いても良い。ただし、基材39の厚さは耐熱性や機械的強度を損なわない程度に薄い方が好ましい。その理由は、基材39の厚さが厚くなる程、表示のボヤケが生じる虞があるからである。また、基材39の全光線透過率は、JIS K7361−1の規定で90%以上が好ましい。全光線透過率が90%以上であると、十分な透明性が得られる。本実施形態では、一例として厚さが100μmの透明樹脂製基材を用いる。
【0046】
光拡散部40は、例えばアクリル樹脂やエポキシ樹脂等の光透過性および感光性を有する有機材料で構成されている。また、光拡散部40の全光線透過率は、JIS K7361−1の規定で90%以上が好ましい。全光線透過率が90%以上であると、十分な透明性が得られる。光拡散部40は、水平断面(xy断面)の形状が円形であり、光射出端面となる基材39側の面40aの面積が小さく、光入射端面となる基材39と反対側の面40bの面積が大きく、基材39側から基材39と反対側に向けて水平断面の面積が徐々に大きくなっている。すなわち、光拡散部40は、基材39側から見たとき、いわゆる逆テーパ状の円錐台状の形状を有している。
【0047】
光拡散部40は、光制御フィルム7において光の透過に寄与する部分である。すなわち、光拡散部40に入射した光は、光拡散部40のテーパ状の側面40cで全反射しつつ、光拡散部40の内部に略閉じこめられた状態で導光し、射出される。複数の光拡散部40は、基材39の主面の法線方向から見てランダムに配置されている。
【0048】
光制御フィルム7は、基材39が視認側に向くように配置されるため、円錐台状の光拡散部40の2つの対向面のうち、面積の小さい方の面が光射出端面40aとなり、面積の大きい方の面が光入射端面40bとなる。また、光拡散部40の側面40cの傾斜角(光射出端面40aと側面40cとのなす角)は一例として80°程度である。ただし、光拡散部40の側面40cの傾斜角度は、光制御フィルム7から射出する際に入射光を十分に拡散することが可能な角度であれば、特に限定されない。
【0049】
遮光層41は、基材39の光拡散部40が形成された側の面のうち、複数の光拡散部40の形成領域以外の領域に形成されている。遮光層41は、一例として、ブラックレジスト、黒色インク等の光吸収性および感光性を有する有機材料で構成されている。その他、Cr(クロム)やCr/酸化Crの多層膜等の金属膜を用いても良い。遮光層41の層厚は、光拡散部40の光入射端面40bから光射出端面40aまでの高さよりも小さく設定されている。本実施形態の場合、遮光層41の層厚は一例として150nm程度であり、光拡散部40の光入射端面40bから光射出端面40aまでの高さは一例として25μm程度である。複数の光拡散部40間の間隙は、基材39の一面に接する部分には遮光層41が存在し、その他の部分には空気43が存在している。
【0050】
なお、基材39の屈折率と光拡散部40の屈折率とは略同等であることが望ましい。その理由は、例えば基材39の屈折率と光拡散部40の屈折率とが大きく異なっていると、光入射端面40bから入射した光が光拡散部40から射出しようとする際に光拡散部40と基材39との界面で不要な光の屈折や反射が生じて、所望の視野角が得られない、射出光の光量が減少する、等の現象が生じる虞があるからである。
【0051】
本実施形態の場合、隣接する光拡散部40間には空気43が介在している。そのため、光拡散部40を例えば透明アクリル樹脂で形成したとすると、光拡散部40の側面40cは透明アクリル樹脂と空気43との界面となる。ここで、光拡散部40の周囲を他の低屈折率材料で充填しても良い。しかしながら、光拡散部40の内部と外部との界面の屈折率差は、外部にいかなる低屈折率材料が存在する場合よりも空気43が存在する場合が最大となる。したがって、Snellの法則より、本実施形態の構成においては臨界角が最も小さくなり、光拡散部40の側面40cで光が全反射する入射角範囲が最も広くなる。その結果、光の損失がより抑えられ、高い輝度を得ることができる。
【0052】
図6の矢印LBおよびLCに示すように、光拡散部40の側面40cに対して臨界角を超える角度で入射した入射光は、側面40cで全反射して光拡散部40を透過して観察者側へ射出される。また、
図6の矢印LAに示すように、側面40cに入射することなく光拡散部40を透過する入射光は、そのまま観察者側へ射出される。一方、
図6の矢印LDで示すように、光拡散部40の側面40cに対して臨界角以下の角度で入射した入射光は全反射せず、光拡散部40の側面40cを透過する。このとき、光拡散部40の形成領域以外の領域に遮光層41が設けられているため、光拡散部40の側面40cを透過した光は遮光層41で吸収される。そのため、表示のボヤケが生じたり、コントラストが低下したりすることはない。しかしながら、光拡散部40の側面40cを透過する光が増えると、光量のロスが生じ、輝度の高い画像が得られない。そこで、光拡散部40の側面40cに臨界角以下で入射しないような角度で光を射出するバックライト、いわゆる指向性を有するバックライトを用いることが好ましい。
【0053】
図3に戻って、TFT基板9に設けられた配向膜27には、配向制御方向が135°−315°方向となるように、ラビング等の配向処理がなされている。
図4A及び
図4Bでは、配向膜27の配向制御方向を矢印H1で示す。一方、カラーフィルター基板10の配向膜34には、配向制御方向が45°−225°方向となるように、ラビング等の配向処理がなされている。
図4A及び
図4Bでは、配向膜34の配向制御方向を矢印H2で示す。
【0054】
画素電極25と対向電極33との間に電圧が印加されていないときには、
図4Aに示すように、液晶層11を構成する液晶分子Mが2つの配向膜27,34間で90°ツイストした状態となる。このとき、135°−315°方向の透過軸P1を有する第1偏光板3を透過した直線偏光の偏光面が液晶層11の持つ旋光性により90°回転し、45°−225°方向の透過軸P2を有する第2偏光板5を透過する。その結果、電圧無印加時には白表示となる。
【0055】
画素電極25と対向電極33との間に電圧が印加されたときには、
図4Bに示すように、液晶層11を構成する液晶分子Mが2つの配向膜27,34間で電界に沿った方向に立ち上がった状態となる。このとき、135°−315°方向の透過軸P1を有する第1偏光板3を透過した直線偏光の偏光面は回転しないため、45°−225°方向の透過軸P2を有する第2偏光板5を透過しない。その結果、電圧印加時には黒表示となる。以上のように、画素毎に電圧の印加/無印加を制御することにより白表示と黒表示とを切り替え、画像を表示することができる。
【0056】
ところが、以下に説明するように、表示画像のコントラスト比は見る角度により異なる。
ここで、
図7に示すように、液晶表示装置1の画面の法線方向Eを基準とした観察者の視線方向Fのなす角度を極角θとし、x軸の正方向(0°方向)を基準とした観察者の視線方向Fを画面上に射影したときの線分Gの方向のなす角度を方位角φとする。
【0057】
図8Aに示すように、液晶表示装置1の画面において水平方向(x軸方向)を方位角φ:0°−180°方向とし、垂直方向(y軸方向)を方位角φ:90°−270°方向とする。このとき、等コントラスト曲線は、
図8Bに示すようになる。4本の等コントラスト曲線は、外側から内側に向かうにつれてコントラスト比が高くなっており、コントラスト比はそれぞれ50,100,500,1000である。4本の等コントラスト曲線は全て回転非対称の形状であり、特にコントラスト比が高い等コントラスト曲線は、方位角φ:0°−180°方向に延び、方位角φ:90°−270°方向につぶれた形状をなしている。なお、コントラスト比は、表示画像における白表示の輝度値/黒表示の輝度値のことである。コントラスト比が大きい程、表示画像の視認性が良いと判断できる。
【0058】
図8Bの方位角φ:0°−180°方向と方位角φ:90°−270°におけるコントラスト分布をグラフで示したものが、
図8Cである。
図8Cの横軸は、極角[°]である。
図8Cの縦軸は、コントラスト比である。方位角φ:0°−180°方向のコントラスト分布を実線101で示す。方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布を1点鎖線102で示す。
【0059】
図8Cに示すように、方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布は1つのピークを有し、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に狭い。これに対して、方位角φ:0°−180°方向のコントラスト分布は、2つのピークを有し、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に広い。すなわち、方位角φ:90°−270°方向の視野角は相対的に狭く、方位角φ:0°−180°方向の視野角は相対的に広い。さらに、方位角φ:90°方向と方位角φ:270°方向とを比べると、方位角φ:90°方向の視野角は相対的に狭く、方位角φ:270°方向の視野角は相対的に広い。
【0060】
前述したように、本実施形態のバックライト2は、yz平面内での配光分布は相対的に狭く、xz平面内での配光分布は相対的に広い。言い換えると、バックライト2は、yz平面内での指向性は相対的に高く、xz平面内での指向性は相対的に低い。このことを、方位角φを用いて視覚化したものが
図9Bである。すなわち、
図9Bは、本実施形態のバックライト2の等輝度曲線である。8本の等輝度曲線は、外側から内側に向かうにつれて輝度が高くなっており、輝度はそれぞれ2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000,9000[cd/m
2]である。8本の等輝度曲線は全て回転非対称の形状であり、方位角φ:0°−180°方向に延び、方位角φ:90°−270°方向につぶれた形状をなしている。このとき、
図9Aに示すように、光源36が方位角φ:270°方向に位置し、導光体37が方位角φ:90°方向に位置するように、バックライト2を配置している。
【0061】
図9Bの等輝度曲線に対して、方位角φ:0°−180°方向と方位角φ:90°−270°方向における輝度分布を極座標で表現したものが、
図9Cである。方位角φ:0°−180°方向における輝度分布を実線111で示す。方位角φ:90°−270°方向における輝度分布を一点鎖線112で示す。
図9B及び
図9Cから判るように、方位角φ:90°−270°方向においては、輝度が高い角度範囲が相対的に狭い。これに対して、方位角φ:0°−180°方向においては、輝度が高い角度範囲が相対的に広い。すなわち、バックライト2から方位角φ:90°−270°方向に射出される光の量は相対的に少なく、方位角φ:0°−180°方向に射出される光の量は相対的に多い。さらに、方位角φ:90°方向と方位角φ:270°方向とを比べると、方位角φ:90°方向に射出される光の量は相対的に少なく、方位角φ:270°方向に射出される光の量は相対的に多い。
【0062】
本実施形態の液晶表示装置1においては、液晶パネル4の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が最も少ない方位角φ:90°方向と、が一致するように、液晶パネル4とバックライト2を配置している。この構成により、液晶パネル4の視野角が相対的に狭い方位角方向には、バックライト2からの光があまり入射しないことになる。その結果、黒表示部の光漏れが抑えられ、液晶表示装置1を斜め方向から見たときの階調反転を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態の液晶表示装置1は光制御フィルム7を備えているため、光制御フィルム7に入射した光は、光制御フィルム7に入射する前よりも角度分布が広がった状態で光制御フィルム7から射出される。したがって、観察者が液晶表示装置1の正面方向(法線方向)から視線を傾けていっても良好な表示を視認することができる。特に本実施形態の場合、光拡散部40の平面形状が円形であるため、液晶表示装置1の画面44の法線方向を中心とした全ての方位に角度分布が広がる。そのため、観察者は全ての方位で良好な表示を視認できる。すなわち、光制御フィルム7の使用によって視野角特性に優れた液晶表示装置を実現できる。
【0064】
一般に、ストライプや格子等のような規則性のあるパターン同士を重ね合わせた場合、各パターンの周期が僅かにずれると、干渉縞模様(モアレ)が視認されることが知られている。例えば、複数の光拡散部がマトリクス状に配列された光制御フィルムと複数の画素がマトリクス状に配列された液晶パネルとを重ね合わせたとすると、光制御フィルムの光拡散部による周期パターンと液晶パネルの画素による周期パターンとの間でモアレが発生し、表示品位を低下させる虞がある。これに対し、本実施形態の液晶表示装置1においては、複数の光拡散部40が平面的にランダムに配置されているため、液晶パネル4の画素の規則的配列との間で干渉によるモアレが生じることがなく、表示品位を維持することができる。
【0065】
上記実施形態では、複数の光拡散部40の配置をランダムとしたが、必ずしも複数の光拡散部40の配置がランダムである必要はなく、複数の光拡散部40の配置が非周期的であれば、モアレの発生を抑えることができる。さらに、状況や用途に応じて多少のモアレの発生が許容される場合には、複数の光拡散部40が周期的に配置されていても良い。例えば複数の光拡散部40が光制御フィルム7の全面にマトリクス状に配置された構成としても良い。
【0066】
なお、本実施形態では、液晶パネル4の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が最も少ない方位角φ:90°方向と、を一致させた。この構成に代えて、液晶パネル4の向きを変えずに、例えば法線方向を中心としてバックライト2を180°回転させても良い。すなわち、液晶パネル4の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が方位角φ:90°方向の次に少ない方位角φ:270°方向と、を一致させても良い。この場合、液晶パネル4の方位角φ:90°方向とバックライト2の方位角φ:90°方向とを一致させる場合と比べると、視野角特性の改善効果は多少劣る。しかしながら、液晶パネル4の方位角φ:90°方向とバックライト2の方位角φ:0°方向もしくは180°方向とを一致させる場合と比べれば、視野角特性は格段に向上する。
【0067】
[光制御フィルムの第1変形例]
上記実施形態の液晶表示装置に用いた光制御フィルムに代えて、以下に示す光制御フィルムを用いても良い。
図10は、第1変形例の光制御フィルム7Dを示す断面図である。
【0068】
上記実施形態の光制御フィルム7の場合、複数の光拡散部40は全て同一の形状であった。これに対して、本変形例の光制御フィルム7Dでは、
図10に示すように、複数の光拡散部40Dにおいて、光射出端面40Daの寸法(遮光層41Dの開口部の寸法)が異なり、側面40Dcの傾斜角度も異なっている。すなわち、複数の光拡散部40D全体を見ると、複数の光拡散部40Dの光射出端面40Daが複数種類の寸法を有し、複数の光拡散部40Dの側面40Dcが複数種類の傾斜角度を有している。また、複数の光拡散部40Dで側面40Dcの傾斜角度が異なることに伴って、光入射端面40Dbの寸法も異なっている。
【0069】
上述したように、光拡散部40Dに入射した光は、光拡散部40Dの側面40Dcで全反射し、入射前よりも角度分布が広がった状態で光拡散部40Dから射出される。よって、光拡散部40Dから射出される光の角度分布は、光拡散部40Dの側面40Dcの傾斜角度の分布に依存することになる。そのため、上記実施形態のように、光拡散部40の側面40cの傾斜角度が一定であったとすると、特定の光射出角度では輝度が高くなり、特定の観察角度では明るい表示が視認できる。その反面、角度を変えて表示装置を観察した際に、観察角度によっては表示ムラが観察される虞がある。
【0070】
これに対して、本変形例の光制御フィルム7Dによれば、複数の光拡散部40Dの側面40Dcの傾斜角度が互いに異なっているので、光の全反射角度の範囲を、側面40Dcの傾斜角度が異なる複数の光拡散部40Dの間で補間し合って広げることができる。その結果、角度を変えて液晶表示装置を観察した際に観察角度に応じて輝度がなだらかに変化し、視野角特性を向上することができる。
【0071】
さらに、複数の光拡散部をランダムに配置する場合、同じ大きさの光拡散部を配置しようとすると、光拡散部同士が干渉して光拡散部を配置できない箇所が多くなる。その場合、光制御フィルム全体における光拡散部の占める割合が小さくなるため、バックライトから射出された光のうち、光拡散部を透過せず、遮光層に吸収される光の割合が多くなる。
その結果、バックライトからの光の利用効率が低下し、正面輝度も低下する。その点、本変形例の場合、例えば大きな光拡散部40D間の隙間を小さな光拡散部40Dで埋めるなどして、光制御フィルム7D全体における光拡散部40Dの占める割合を高めることができる。これにより、バックライトからの光の利用効率を向上させ、正面輝度を高めることができる。ただし、側面の傾斜角度を同一にし、少なくとも一部の光拡散部の大きさを他の光拡散部と異ならせ、少なくとも2種類の大きさを設定するだけでも、正面輝度向上の効果は得られる。
【0072】
なお、本変形例では、光拡散部40Dの側面40Dcの傾斜角度を複数種類としたため、輝度がなだらかに変化するので好ましい。ただし、少なくとも一部の光拡散部の傾斜角度を他の光拡散部と異ならせ、少なくとも2種類の傾斜角度を設定するだけでも、視野角特性の向上効果は得られる。
【0073】
また、全ての光拡散部40Dの光射出端面40Daおよび光入射端面40Dbの平面形状を円形としたが、必ずしも全て円形にする必要はない。例えば、光拡散部を八角錐台形状とし、光入射端面、光射出端面の平面形状をともに八角形としても良い。その場合、光拡散部には互いに対向する一対の辺からなる4組の辺が存在するため、光が4つの方位角方向に集中して拡散する。そのため、液晶表示装置で視野角特性が特に重要視されている、画面の水平方向、垂直方向、および斜め方向において視野角拡大効果が発揮される。なお、光拡散部の平面的な形状は八角形に限ることなく、その他の多角形を採用することができる。その場合、多角形の形状および辺の配置に応じて光が特定の方向に集中して拡散するため、特定の観察方位において優れた視野角拡大効果を発揮する液晶表示装置が提供できる。さらに、光拡散部の平面的な形状としては、円形、多角形の他、楕円形としてもよい。また、隣接した光拡散部と一部が繋がっていても、一部が欠けていても、視野角特性向上の効果は得られる。
【0074】
[光制御フィルムの第2変形例]
図11は、第2変形例の光制御フィルム7Eを示す断面図である。
上記実施形態においては、一つの光拡散部に着目したときに、光拡散部の側面は一定の傾斜角度を有していた。これに対して、本変形例の光制御フィルム7Eは、
図11に示すように、各光拡散部40Eの側面40Ecが光射出端面40Eaから光入射端面40Ebにかけて凸状になだらかに湾曲しており、傾斜角度が場所によって異なっている。つまり、光拡散部40Eの側面40Ecの傾斜角度は、光射出端面40Eaから光入射端面40Ebにかけて変化している。
【0075】
光拡散部の側面の傾斜角度が一定である場合、画面の水平方向もしくは垂直方向に沿って観察角度を変えたときに、観察角度によっては表示ムラが視認される場合がある。この表示ムラ対策として、第1変形例の光制御フィルム7Dでは複数の光拡散部40D全体で側面が複数種類の傾斜角度を有していた。これに対して、本変形例の光制御フィルム7Eでは、個々の光拡散部40Eにおいても、側面40Ecの場所によって傾斜角度が異なっている。そのため、側面の傾斜角度が一定である場合に比べて光の反射角度分布が広がる。これにより、観察角度に応じて輝度がなだらかに変化し、視野角特性を向上できる
【0076】
[光制御フィルムの第3変形例]
図12は、第3変形例の光制御フィルム7Fを示す斜視図である。
図13A及び
図13Bは、本変形例の光制御フィルム7Fの作用を説明するための図である。
【0077】
本変形例の光制御フィルム7Fでは、
図12に示したように、上記実施形態の光制御フィルム7に加えて、光拡散フィルム50(光散乱層)が、基材39の視認側の面に粘着層51により固定されている。光拡散フィルム50は、例えばアクリル樹脂等のバインダー樹脂の内部に多数のアクリルビーズ等の光散乱体52が分散されたものである。光拡散フィルム50の厚みは、一例として20μm程度である。球状の光散乱体52の球径は、一例として0.5μm〜20μm程度である。粘着層51の厚みは、一例として25μm程度である。光拡散フィルム50は、等方拡散材として機能する。すなわち、光拡散フィルム50は、光制御フィルム7の光拡散部40で射出角度が制御された光を等方的に拡散し、さらに広角に広げる機能を果たす。
【0078】
光散乱体52は、アクリルビーズに限らず、アクリル系ポリマー、オレフィン系ポリマー、ビニル系ポリマー、セルロース系ポリマー、アミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、イミド系ポリマーなどからなる樹脂片、ガラスビーズ等の透明な物質で構成されていてもよい。また、これら透明な物質以外でも、光の吸収の無い散乱体、反射体を用いることができる。あるいは、光散乱体52を光拡散部40内に拡散させた気泡としてもよい。個々の光散乱体52の形状は、例えば、球形、楕円球形、平板形、多角形立方体など、各種形状に形成することができる。光散乱体52のサイズも均一あるいは不均一になるように形成されていればよい。
【0079】
本変形例において、光拡散フィルム50は、防眩処理層(アンチグレア層)をも兼ねている。防眩処理層は、例えば基材39にサンドブラスト処理やエンボス処理等を施すことによって形成することもできる。しかしながら、本変形例においては、基材39に複数の光散乱体52を含む層を形成することにより防眩処理を施している。この構成によれば、光拡散フィルム50が防眩処理層として機能するので、新たに防眩処理層を設ける必要がない。これにより、装置の簡素化、薄型化を図ることができる。
【0080】
なお、本変形例では、光拡散フィルム50が粘着層51の外側に配置されているが、この構成に限らない。例えば粘着層51自体が光拡散性を有していてもよい。この構成は、例えば粘着層51に多数の光散乱体を分散させることで実現できる。粘着層51としては、ゴム系やアクリル系、シリコーン系やビニルアルキルエーテル系、ポリビニルアルコール系やポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系やセルロース系等の粘着剤など、接着対象に応じた粘着性物質を用いることができる。特に、透明性や耐候性等に優れる粘着性物質が好ましく用いられる。粘着層51は、使用するまでの間、セパレータ等で保護しておくことが好ましい。
【0081】
本変形例の光制御フィルム7Fの場合、
図13Aに示すように、光制御フィルム7Fの最表面には光拡散フィルム50が配置されている。そのため、光拡散部40の光入射端面40bに入射する光LA,LB,LCは、光拡散部40により射出角度が制御された後、光拡散フィルム50により等方的に拡散する。その結果、光拡散フィルム50からは様々な角度の光が射出される。
また、
図13Bに示すように、光制御フィルム7Fは、光拡散フィルム50が、前記光拡散フィルム50の光拡散部40と反対側の面50fから入射し、バインダー樹脂などの基材と光散乱体52との界面で反射するか、もしくは光散乱体52で屈折して進行方向が変更された光が、前方散乱するように構成されている。なお、
図13Bにおいて、前方散乱する光を実線の矢印で示す。比較のため、後方散乱する光を破線の矢印で示したが、この種の光を生じないようにする。このような全反射条件は、例えば、光拡散フィルム50に含まれる光散乱体52の粒子の大きさを適宜変更することにより、満足させることができる。
【0082】
このように、本変形例の光制御フィルム7Fの場合、光制御フィルム7Fの最表面に光拡散フィルム50が配置されているため、光の拡散角度を一定の方向に集中させないようにできる。その結果、光制御フィルム7Fの光拡散特性をよりなだらかにすることができ、広い視野角で明るい表示が得られる。
【0083】
[光制御フィルムの第4変形例]
図14は、第4変形例の光制御フィルム7Gを示す斜視図である。
上記実施形態および各変形例の光制御フィルムでは、複数の光拡散部が基材上に点在していた。これに対して、本変形例の光制御フィルム7Gでは、
図14に示すように、複数の遮光部41Gが基材39の一面に点在して配置され、複数の遮光部41Gが形成された領域以外の領域全体が一つの光拡散部40Gとなっている。基材39側に光射出端面40Gaを有し、基材39側と反対側に光射出端面40Gaの面積よりも大きい面積の光入射端面40Gbを有する点、光拡散部40Gの光入射端面40Gbから光射出端面40Gaまでの高さが遮光部41Gの高さよりも高い点、光拡散部40G間の間隙に空気が存在している点は、上記実施形態および各変形例と同様である。本変形例の光制御フィルム7Gでは、光拡散部40G間の間隙が円錐台状の形状となっており、その部分に空気が存在している。また、遮光部の平面的な形状としては、円形の他、多角形や楕円形としてもよい。また、隣接した遮光部と一部が繋がっていても、一部が欠けていてもよい。また、全ての遮光部が同じサイズ、同じ形状でもよいし、一部の遮光部のサイズや形状が異なっていてもよい。
【0084】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図15、
図16A及び
図16Bを用いて説明する。
本実施形態の液晶表示装置の基本構成は、第1実施形態と同一であり、位相差フィルムを備えた点が第1実施形態と異なる。
図15において、第1実施形態で用いた
図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
本実施形態の液晶表示装置61は、
図15に示すように、第1偏光層3と液晶パネル4との間に第1位相差フィルム62を備え、第2偏光層5と液晶パネル4との間に第2位相差フィルム63を備えている。本実施形態の場合、第1位相差フィルム62と第2位相差フィルム63とは同一の位相差フィルムを用いている。具体的には、第1位相差フィルム62および第2位相差フィルム63は、面内の位相差値R0が60nmであり、厚み方向の位相差値Rthが120nmである2軸性の位相差フィルムである。第1位相差フィルム62の光学軸をK1とし、第2位相差フィルム63の光学軸をK2とする。その他の構成は第1実施形態と同一である。バックライト2も第1実施形態と同じものを用いる。
【0086】
本実施形態の場合、第1位相差フィルム62および第2位相差フィルム63が備えられたことにより液晶層11による位相差が補償され、視野角特性が改善されている。
【0087】
図16Aは、本実施形態の液晶表示装置61の等コントラスト曲線である。6本の等コントラスト曲線は、外側から内側に向かうにつれてコントラスト比が高く、コントラスト比はそれぞれ5,10,50,100,500,1000である。4本の等コントラスト曲線は全て回転非対称の形状であり、方位角φ:0°−180°方向に延び、方位角φ:90°−270°方向につぶれた形状をなしている。ただし、本実施形態の等コントラスト曲線を、位相差補償を行っていない第1実施形態の等コントラスト曲線(
図8B参照)と比べると、コントラスト比が高い領域が方位角φ:0°−180°方向に拡大している。すなわち、本実施形態の場合、方位角φ:0°−180°方向の視野角特性が第1実施形態に比べて改善されている。
【0088】
図16Aの方位角φ:0°−180°方向と方位角φ:90°−270°方向におけるコントラスト分布をグラフで示したものが、
図16Bである。
図16Bの横軸は、極角[°]である。
図16Bの縦軸は、コントラスト比である。方位角φ:0°−180°方向のコントラスト分布を実線121で示す。方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布を1点鎖線122で示す。
【0089】
方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布は1つのピークを有し、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に狭い。これに対して、方位角φ:0°−180°方向のコントラスト分布は2つのピークを有し、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に広い。すなわち、方位角φ:90°−270°方向の視野角は相対的に狭く、方位角φ:0°−180°方向の視野角は相対的に広い。さらに、方位角φ:90°方向と方位角φ:270°方向とを比べると、方位角φ:90°方向の視野角は相対的に狭く、方位角φ:270°方向の視野角は相対的に広い。
【0090】
本実施形態の液晶表示装置61においても、第1実施形態と同様、液晶パネル4の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が最も少ない方位角φ:90°方向と、が一致するように、液晶パネル4とバックライト2を配置している。この配置により、液晶パネル4の視野角が相対的に狭い方位角方向には、バックライト2からの光があまり入射しないことになる。その結果、黒表示部の光漏れが抑えられ、液晶パネルを斜め方向から見たときの階調反転を抑制することができる。また、本実施形態の液晶表示装置61は光制御フィルム7を備えているため、光制御フィルム7に入射した光の角度分布が全方位に広がる。その結果、視野角特性に優れた液晶表示装置を実現できる。特に、第1位相差フィルム62および第2位相差フィルム63を用いて位相差補償を行ったことにより、第1実施形態に比べて視野角特性がより向上する。
【0091】
本実施形態の液晶表示装置61においても、第1実施形態と同様、液晶パネル4の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が方位角φ:90°方向の次に少ない方位角φ:270°方向と、を一致させても良い。
【0092】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図17、
図18A及び
図18Bを用いて説明する。
本実施形態の液晶表示装置の基本構成は第2実施形態と同一であり、VAモードの液晶パネルを備えた点が第2実施形態と異なる。
図17において、第2実施形態で用いた
図15と共通の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0093】
本実施形態の液晶表示装置71は、
図17に示すように、バックライト2と、第1偏光板3と、第1位相差フィルム72と、VAモードの液晶パネル75と、第2位相差フィルム73と、第2偏光板5と、光制御フィルム7と、を備えている。第1位相差フィルム72および第2位相差フィルム73は、面内の位相差値R0が60nmであり、厚み方向の位相差値Rthが110nmである2軸性の位相差フィルムである。その他の構成は第1、第2実施形態と同一である。バックライト2も第1、第2実施形態と同じものを用いる。
【0094】
一般に、VAモードの液晶パネルは、画面の正面方向(法線方向)で液晶層がほとんど複屈折性を示さず、かつ、第1偏光板の透過軸と第2偏光板の透過軸とがクロスニコルの配置であるため、略完全な黒表示が実現される。そのため、VAモードの液晶パネルは、他の表示モードに比べてコントラスト比が高い、という特長を持っている。ところが、VAモードの液晶パネルを画面の斜め方向から見た場合には、液晶層が複屈折性を示すこと、および、第1偏光板の透過軸と第2偏光板の透過軸とが完全には直交しないことに起因して、黒表示時の光漏れが発生し、コントラスト比が低下する。その結果、VAモードの液晶パネルでは視野角が狭くなるため、位相差フィルムを組み合わせることで広視野角化を図っている。
【0095】
図18Aは、本実施形態の液晶表示装置71の等コントラスト曲線である。4本の等コントラスト曲線は、外側から内側に向かうにつれてコントラスト比が高く、コントラスト比はそれぞれ50,100,500,1000である。4本の等コントラスト曲線は回転非対称の形状であり、特に方位角φ:45°−225°方向および方位角φ:135°−315°方向に、コントラスト比が高い領域が大きく広がっている。本実施形態の等コントラスト曲線を、第1、第2実施形態のTNモードの等コントラスト曲線(
図8B、
図16A参照)と比べると、視野角特性が改善されていることが判る。
【0096】
図18Aの方位角φ:45°−225°方向と方位角φ:90°−270°方向におけるコントラスト分布をグラフで示したものが、
図18Bである。
図18Bの横軸は、極角[°]である。
図18Bの縦軸は、コントラスト比である。方位角φ:45°−225°方向のコントラスト分布を実線131で示す。方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布を1点鎖線132で示す。
【0097】
方位角φ:90°−270°方向のコントラスト分布は、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に狭い。これに対して、方位角φ:45°−225°方向のコントラスト分布は、コントラスト比が高い角度範囲が相対的に広い。すなわち、方位角φ:90°−270°方向の視野角は、相対的に狭く、方位角φ:45°−225°方向の視野角は、相対的に広い。さらに、方位角φ:90°方向と方位角φ:270°方向とを比べると、方位角φ:90°方向の視野角は相対的に狭く、方位角φ:270°方向の視野角は相対的に広い。
【0098】
本実施形態の液晶表示装置71においても、第1、第2実施形態と同様、液晶パネル75の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が最も少ない方位角φ:90°方向と、が一致するように、液晶パネル75とバックライト2を配置する。この配置により、液晶パネル75の視野角が相対的に狭い方位角方向には、バックライト2からの光があまり入射しない。その結果、黒表示部の光漏れが抑えられ、液晶パネル75を斜め方向から見たときの階調反転を抑制することができる。また、本実施形態の液晶表示装置71は光制御フィルム7を備えているため、光制御フィルム7に入射した光の角度分布が全方位に広がる。その結果、視野角特性に優れた液晶表示装置を実現できる。特にVAモードの液晶パネル75を用いたことにより、第1、第2実施形態に比べて視野角特性が全体的に向上する。
【0099】
本実施形態の液晶表示装置71においても、第1、第2実施形態と同様、液晶パネル75の視野角が最も狭い方位角φ:90°方向と、バックライト2から射出される光の量が方位角90°方向の次に少ない方位角φ:270°方向と、を一致させても良い。
【0100】
なお、本発明の態様における技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の態様における趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、バックライトとして、導光体の端面に光源が配置されたエッジライト型のバックライトを用いたが、この構成に代えて、光源が導光体の直下に配置された直下型のバックライトを採用しても良い。
【0101】
上記実施形態では、楔形の導光体を用いることによりバックライトに指向性を付与する例を示したが、バックライトに指向性を付与する手段としては、例えば導光体の下面に複数のプリズム構造体を形成する等、他の手段を用いても良い。さらに、特に指向性を付与する手段を持たないバックライトを用いた場合であっても、バックライトから射出する光の輝度分布の狭い方向、すなわち光量の少ない方向を液晶パネルの視野角が狭い方向に一致させれば良い。
【0102】
液晶パネルの視野角が相対的に狭い方位角方向と、バックライトからの光の量が相対的に少ない方位角方向とは、完全に一致する必要はなく、概ね一致していれば良い。一般に液晶表示装置の組み立て工程において、液晶パネルとバックライトとの位置合わせの回転方向のずれは3°程度以内と考えられる。したがって、液晶パネルの視野角が相対的に狭い方位角方向と、バックライトからの光の量が相対的に少ない方位角方向とは3°程度ずれている場合も、本発明の態様における技術範囲に含まれる。
【0103】
また、上記実施形態における光制御フィルムの基材の視認側に、反射防止層、偏光フィルター層、帯電防止層、防眩処理層、防汚処理層のうちの少なくとも一つを設けた構成としても良い。この構成によれば、基材の視認側に設ける層の種類に応じて、外光反射を低減する機能、塵埃や汚れの付着を防止する機能、傷を防止する機能等を付加することができ、視野角特性の経時劣化を防ぐことができる。
【0104】
また、上記実施形態では、光拡散部の形状を円錐台状もしくは多角錐台状としたが、光拡散部の側面の傾斜角度は光軸を中心として必ずしも対称でなくても良い。上記実施形態のように光拡散部の形状を円錐台状もしくは多角錐台状とした場合には、光拡散部の側面の傾斜角度が光軸を中心として対称となるため、光軸を中心として対称的な角度分布が得られる。これに対し、表示装置の用途や使い方に応じて意図的に非対称な角度分布が要求される場合、例えば画面の上方側だけ、あるいは右側だけに視野角を広げたい等の要求がある場合には、光拡散部の側面の傾斜角度を非対称にしても良い。
【0105】
その他、液晶表示装置の各構成部材の材料、数、配置等に関する具体的な構成は上記実施形態に限ることなく、適宜変更が可能である。例えば上記実施形態では、液晶パネルの外側に偏光板や位相差フィルムを配置する例を示したが、この構成に代えて、液晶パネルを構成する一対の基板の内側に偏光層や位相差層を形成しても良い。
【実施例】
【0106】
本発明者らは、本発明の態様の効果を検証するために、本発明の態様における液晶表示装置と従来例の液晶表示装置とで階調反転の発生状況を比較した。また、本発明の態様における液晶表示装置と比較例の液晶表示装置とで正面コントラスト比を比較した。以下、これらの比較結果について説明する。
【0107】
[階調反転の発生状況]
実施例1として、TNモードの液晶パネルを用い、液晶パネルの視野角が最も狭い方位角方向とバックライトからの光の量が最も少ない方位角方向とを一致させた第1実施形態と同様の液晶表示装置を準備した。一方、従来例として、TNモードの液晶パネルを用い、光制御フィルムを備えておらず、液晶パネルの視野角が相対的に狭い方位角方向とバックライトからの光の量が相対的に多い方位角方向とを一致させた液晶表示装置を準備した。そして、実施例1の液晶表示装置と従来例の液晶表示装置とで実際の表示状態を比較した。
【0108】
図19A及び
図19Bは、実施例1の液晶表示装置で表示を行った際の画面を撮影した写真である。
図19Aは、画面の正面方向から撮影した写真であり、
図19Bは、画面の下方斜め45°(極角で45°)方向から撮影した写真である。
図20A及び
図20Bは、従来例の液晶表示装置で表示を行った際の画面を撮影した写真である。
図20Aは、画面の正面方向から撮影した写真であり、
図20Bは、画面の下方斜め45°(極角で45°)方向から撮影した写真である。
【0109】
図20A及び
図20Bから判るように、従来例の液晶表示装置では、画面の正面方向から画面を見たときは特に問題ないが、画面の下方斜め45°方向から画面を見たとき、階調反転が発生し、画像の視認性が極めて悪化している。これに対し、
図19A図19Bから判るように、実施例1の液晶表示装置では、画面の下方斜め45°方向から画面を見たとき、画面の正面方向から画面を見たときに比べてコントラストは若干低下するものの、階調反転は発生しておらず、画像の視認性が確保できていることが判った。
【0110】
[正面コントラスト比]
射出光量が異なる3種類の指向性バックライトと、等方散乱層付きの光制御フィルムを貼り合わせた液晶パネルと、をそれぞれ組み合わせ、3種類の液晶表示装置を作製した。
【0111】
実施例2として、バックライトの射出光が最も少ない方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向を一致させた液晶表示装置を作製した。
【0112】
実施例3として、バックライトの射出光が2番目に少ない方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向を一致させた液晶表示装置を作製した。
【0113】
比較例として、バックライトの射出光が多い方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向を一致させた液晶表示装置を作製した。
【0114】
図21Aは、実施例2のバックライトの配光特性を示す等輝度曲線である。8本の等輝度曲線は、外側から内側に向かうにつれて輝度が高くなっており、輝度はそれぞれ1000,2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000[cd/m
2]である。
図21Bは、実施例2のTN液晶パネルにおけるコントラスト比1000の等コントラスト曲線を示している。
【0115】
図22Aは、実施例3のバックライトの配光特性を示す等輝度曲線である。8本の等輝度曲線は、外側から内側に向かうにつれて輝度が高くなっており、輝度はそれぞれ1000,2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000[cd/m
2]である。
図22Bは、実施例3のTN液晶パネルにおけるコントラスト比1000の等コントラスト曲線を示している。
【0116】
図23Aは、比較例のバックライトの配光特性を示す等輝度曲線である。8本の等輝度曲線は、外側から内側に向かうにつれて輝度が高くなっており、輝度はそれぞれ1000,2000,3000,4000,5000,6000,7000,8000[cd/m
2]である。
図23Bは、比較例のTN液晶パネルにおけるコントラスト比1000の等コントラスト曲線を示している。
【0117】
実施例2、実施例3、および比較例の液晶表示装置について、画面の正面方向でのコントラスト比を測定した。測定結果を[表1]に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
表1から判るように、バックライトの射出光が最も少ない方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向とを一致させた実施例2では、TN液晶パネルの視野角が狭い方位角方向にバックライトから入射する光の量が少ない。そのため、液晶表示装置の正面コントラスト比が500:1と高い値を示した。同様に、バックライトの射出光が2番目に少ない方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向とを一致させた実施例3では、TN液晶パネルの視野角が狭い方位角方向にバックライトから入射する光の量が少ない。そのため、実施例2に比べると若干劣るものの、液晶表示装置の正面コントラスト比が400:1と高い値を示した。
【0120】
これに対して、バックライトの射出光が多い方位角方向と、TN液晶パネルのコントラスト比が1000以上の領域が最も狭い方位角方向を一致させた比較例では、TN液晶パネルの視野角が狭い方位角方向にバックライトから入射する光の量が多い。そのため、コントラスト特性を低下させる光が等方散乱層付きの光制御フィルムによって全方位に拡散される。その結果、液晶表示装置の正面コントラスト比が150:1と、実施例2、実施例3と比べて低い値を示した。