特許第6239981号(P6239981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6239981
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】走行車両および作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/067 20060101AFI20171120BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20171120BHJP
   E02F 9/06 20060101ALI20171120BHJP
   B62D 55/116 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B62D33/067 Z
   A01D34/86
   E02F9/06
   B62D55/116
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-1657(P2014-1657)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-128952(P2015-128952A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原 貴徳
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−116315(JP,A)
【文献】 実開昭62−074059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/067
A01D 34/86
E02F 9/06
B62D 55/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機構が備えられる第1フレームと、オペレータの搭乗部が備えられる第2フレームとが、前後方向に延びる軸である前後軸の周りに相対的に回動自在とされ、前記第2フレームを水平に保持することができる水平保持装置を有する走行車両において、
前記走行車両が水平面上に配置されている状態に対して、前記第1フレームと前記第2フレームとの前記前後軸の周りの相対角度が所定の角度以上になったか否かを検出する角度検出機構と、
前記角度検出機構により、前記相対角度が前記所定の角度になったことを検出されたときに警報を発する警報装置と、
を有し、
前記角度検出機構は、
モーメンタリー型のスイッチと、
カム機構と、
を有し、
前記カム機構は、
カム面が形成されるカム部材と、
前記カム面の移動に従って移動させられるカムフォロアと、
前記カムフォロアの移動を前記スイッチの操作部に伝達する伝達機構と、
を有し、
前記カム面は、前記相対角度が前記所定の角度以上になったときに、前記伝達機構が前記操作部を動作させることができるように、前記相対角度に応じて前記カムフォロアを移動させることができる形状であり、
前記モーメンタリー型スイッチと、前記カム部材を除くカム機構と、は前記第1フレームまたは前記第2フレームのいずれか一方の側に備えられ、
前記カム部材は、前記一方に対して他方の側に備えられる、
ことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
請求項1に記載の走行車両において、
前記角度検出機構は、前記走行車両に備えられるエンジンの後方に配置されている、
ことを特徴とする走行車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の走行車両において、
前記スイッチの前記操作部の動作方向は、前記前後軸に平行な方向に配置され、
前記カムフォロアを回転可能に支持する軸であるカムフォロア軸は、前記前後軸に平行に配置され、
前記伝達機構は、前記カムフォロア軸が取り付けられるカムフォロア取付部材を有し、
前記カムフォロア取付部材は、前記カムフォロアの移動方向に平行な面に垂直な軸であって前記カムフォロア軸と交差しない軸であるカムフォロア取付部材支持軸の周りに回動可能に支持され、
前記カムフォロア取付部材が、前記カムフォロア取付部材支持軸の周りに回動し前記操作部を動作させる、
ことを特徴とする走行車両。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の走行車両において、
前記角度検出機構は、前記第1フレームおよび前記第2フレームに対して取り付けられている、
ことを特徴とする走行車両。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の走行車両に作業装置が取り付けられたことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両および作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車両には、たとえば、特許文献1に開示されるように、クローラーが取り付けられるロアフレームと、搭乗部が取り付けられるアッパーフレームとが、互いに相対的に左右方向に搖動可能であり、走行車両が左右に傾斜する斜面を走行する際、ロアフレームが左右方向に傾斜しても、アッパーフレームを水平に保持する構成を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−250638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アッパーフレームが走行路を左右方向の傾斜角度によらず、水平を保持されるため、オペレータが走行路の左右の傾斜が急峻であることに気付かず、走行車両が横転する危険がある。このような危険を防ぐため、たとえば、振り子式の角度表示装置を走行車両に取り付け、この角度表示装置で走行車両の傾斜を、オペレータに認識させることも考えられる。しかしながら、角度表示装置による場合は、オペレータが常に角度表示装置に注意を払っている必要があり、走行車両の操作に際して、他の注意すべき事項への気配りが疎かになる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、オペレータが、走行車両が走行する走行路の傾斜を認識し易い走行車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、走行機構が備えられる第1フレームと、オペレータの搭乗部が備えられる第2フレームとが、前後方向に延びる軸である前後軸の周りに相対的に回動自在とされ、第2フレームを水平に保持することができる水平保持装置を有する走行車両において、走行車両が水平面上に配置されている状態に対して、第1フレームと第2フレームとの前後軸の周りの相対角度が所定の角度以上になったか否かを検出する角度検出機構と、角度検出機構により、相対角度が所定の角度になったことを検出されたときに警報を発する警報装置と、を有し、角度検出機構は、モーメンタリー型のスイッチと、カム機構と、を有し、カム機構は、カム面が形成されるカム部材と、カム面の移動に従って移動させられるカムフォロアと、カムフォロアの移動をスイッチの操作部に伝達する伝達機構と、を有し、カム面は、相対角度が所定の角度以上になったときに、伝達機構が操作部を動作させることができるように、相対角度に応じてカムフォロアを移動させることができる形状であり、モーメンタリー型スイッチと、カム部材を除くカム機構と、は第1フレームまたは第2フレームのいずれか一方の側に備えられ、カム部材は、一方に対して他方の側に備えられることとする。
【0007】
また、本発明にかかる走行車両において、角度検出機構は、走行車両に備えられるエンジンの後方に配置されていることとする。
【0009】
また、本発明にかかる走行車両において、スイッチの前記操作部の動作方向は、前後軸に平行な方向に配置され、カムフォロアを回転可能に支持する軸であるカムフォロア軸は、前後軸に平行に配置され、伝達機構は、カムフォロア軸が取り付けられるカムフォロア取付部材を有し、カムフォロア取付部材は、カムフォロアの移動方向に平行な面に垂直な軸であってカムフォロア軸と交差しない軸であるカムフォロア取付部材支持軸の周りに回動可能に支持され、カムフォロア取付部材が、カムフォロア取付部材支持軸の周りに回動し前記操作部を動作させることとする。
【0010】
また、本発明にかかる走行車両において、角度検出機構は、第1フレームおよび第2フレームに対して取り付けられていることとする。
【0011】
また、本発明にかかる走行車両において、水平保持装置は、第1フレームの左右方向の傾斜に対して第2フレームを回動させる際に、0.2秒以上2.5秒以下の作動遅れを有することとする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明にかかる作業車両は、上述の走行車両に作業装置を取り付けられたこととする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の走行車両によれば、オペレータは、走行車両が走行する走行路の傾斜を認識し易い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】作業車両を右斜め前方から見た斜視図である。
図2】作業車両の左側面図である。
図3】走行車両の正面図である。
図4】走行車両の背面図である。
図5】車両下部と車両上部の搖動状態を示す図である。
図6】水平保持装置および傾斜警報装置の構成を示す図である。
図7】ロアフレームおよびアッパーフレームの構成を説明する図である。
図8】アッパーフレームにエンジンを搭載した状態を示す図である。
図9図7のA部分の拡大図である。
図10】フレーム相対角度の変化と、カムフォロアの移動との様子を示す図である。
図11】走行車両の変形例1の構成を示す図である。
図12】走行車両の変形例3の構成を示す図である。
図13】走行車両の変形例4の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る作業車両1および走行車両2の構成について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、作業車両1の前進方向を前方(図中の矢印X1方向)、後進方向を後方(図中の矢印X2方向)、作業車両1から前方に向かって右手方向を右方(図中の矢印Y1方向)、左手方向を左方(図中の矢印Y2方向)、作業車両1の接地面に対して作業車両1側を上方(図中の矢印Z1方向)、その反対側を下方(図中の矢印Z2方向)として説明する。
【0016】
(作業車両1および走行車両2の全体構成)
図1,2は、作業車両1の外観の構成を示す図である。図1は、作業車両1を右斜め前方から見た斜視図である。図2は、作業車両1の左側面図である。作業車両1は、走行車両2に作業装置3を装着したものであり、作業装置3の機能に応じた作業を行うことができる。本実施の形態に示される作業装置3は、ハンマーナイフ型草刈機としている。作業装置3としては、ハンマーナイフ型草刈機の他、除雪機、採土用のバケット、集草機(ヘーメーカ)、肥料散布機(ブロードキャスタ)等を装着することができる。
【0017】
図3,4は、作業車両1から作業装置3を取り外した状態の走行車両2の外観の構成を示す図である。図3は、走行車両2の正面図である。図4は、走行車両2の背面図である。
【0018】
走行車両2は、車両下部4と、車両上部5とを有する。車両下部4と車両上部5とは、図5の上段(A)、中段(B)および下段(C)に示すように、前後軸Xを中心に互いに相対的に左右方向に搖動可能である。図5(A)は、走行車両2が、左側に向かって高くなるように傾斜している路面G上を走行している状態を示している。図5(B)は、走行車両2が水平な路面G上を走行している状態を示している。そして、図5(C)は、走行車両2が、右側に向かって高くなるように傾斜している路面G上を走行している状態を示している。作業装置3は、車両下部4側に取り付けられる。したがって、走行車両2に作業装置3が装着されている場合、作業装置3は左右方向については、路面Gの傾斜に併せて車両下部4と一体に傾斜する。
【0019】
図5(A)(B)(C)に示すように、走行車両2には、水平保持装置6(図6参照)が備えられている。水平保持装置6は、車両下部4が左右方向に傾斜する路面G上を走行する場合、車両上部5を水平に保持する。図6に示すように、水平保持装置6は、油圧シリンダー7(図3図7参照)と、図示を省略する油圧ポンプを備える油圧ポンプユニット8と、車両上部5の水平に対する傾斜を検出する傾斜センサー9と、油圧ポンプユニット8の駆動を制御する制御部10とを有する。
【0020】
油圧ポンプユニット8の油圧ポンプは、エンジン11(図8)を動力源として駆動される。制御部10は、たとえば、マイクロコンピュータ等を備える。制御部10は、傾斜センサー9からの検出信号に基づき、油圧ポンプユニット8を駆動制御し、油圧シリンダー7を作動させ、車両下部4と車両上部5とを前後軸Xを中心として相対的に回動させる。つまり、車両下部4が左右方向に傾斜する路面G上を走行する場合であっても、制御部10は、車両上部5が水平に保持されるように油圧シリンダー7の作動を制御する。
【0021】
(車両下部4の構成)
図7,8に示すように、車両下部4は、第1フレームとしてのロアフレーム12を有し、このロアフレーム12の左右に走行機構としてのクローラー13,13が転動可能に取り付けられている。クローラー13,13は、図示を省略する油圧モーターにより回転される駆動輪14(図2参照)により転動され、クローラー13,13の転動により走行車両2は走行する。該油圧モーターは、エンジン11を動力源とする図示を省略する油圧ポンプにより駆動される。
【0022】
ロアフレーム12は、クロスメンバー15A,15Bと、センターメンバー16(図1参照)と、図示外のサイドメンバーとを有する。サイドメンバーは、長手方向を前後に向けられ、センターメンバー16と左右に配置される2つのクローラー13,13との間にそれぞれ配置される。クロスメンバー15A,15Bは、左右に配置される図示外のサイドメンバーに渡されている。センターメンバー16は、左右方向の中央に配置され、クロスメンバー15Aとクロスメンバー15Bとに渡されている。
【0023】
クロスメンバー15Aの中央には、第2フレームとしてのアッパーフレーム17を支持する支持フレーム18(図3,7参照)が上方に向けて取り付けられている。支持フレーム18は、クロスメンバー15Aに直交するように取り付けられている。また、クロスメンバー15Bの中央にも、アッパーフレーム17を支持する支持フレーム19(図4,5,7,8参照)が上方に向けて取り付けられている。支持フレーム19は、クロスメンバー15Bに直交するように取り付けられている。
【0024】
(車両上部5の構成)
図7に示すように、車両上部5は、ロアフレーム12の上方に配置されるアッパーフレーム17を有する。アッパーフレーム17は、左右に配置される2本のサイドメンバー20A,20Bと、サイドメンバー20Aとサイドメンバー20Bとに渡されるクロスメンバー21A,21B,21C,21Dとを有し、全体としてラダーフレームの形状を呈している。
【0025】
クロスメンバー21A,21Bには、クロスメンバー21A,21Bに直交し上方に向けて設けられるアーム部22Aが取り付けられている。クロスメンバー21Cは、クロスメンバー21Cに直交し上方に向けて設けられるアーム部22Bが取り付けられている。アーム部22Aは、軸部23Aを介して支持フレーム18に支持される。また、アーム部22Bは、軸部23Bを介して支持フレーム19に支持される。つまり、アッパーフレーム17は、軸部23A,23Bを介して、ロアフレーム12の支持フレーム18,19の部分に支持させる。
【0026】
軸部23Aの後端は、アーム部22Aの上部に固定され、前端側は、支持フレーム18の上部に設けられる軸受部24に回動自在に支持される。軸部23Bの前端は、アーム部22Bの上部に固定され、後端側は、支持フレーム19の上面19A(図9参照)に設けられる軸受部25に回動自在に支持される。したがって、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とは、軸部23Aと軸部23Bとを通る前後軸Xを回動中心として相対的に回動自在とされる。
【0027】
アッパーフレーム17には、図8に示すようにエンジン11が搭載される。また、アッパーフレーム17には、エンジン11の他、走行車両2を走行させたり作業装置3を動作させるための図示外の機構や制御部が搭載される。これらの機構や制御部は、FRP等で構成されるカバー26(図1,2等参照)により覆われている。
【0028】
また、アッパーフレーム17の後端には、作業車両1を操縦するオペレータが搭乗する搭乗部27が取り付けられている。カバー26の後面には、搭乗部27に搭乗したオペレータが、走行車両2を操縦できるように、操作パネルや操作レバー等を備える操作部28(図1,2等参照)が備えられている。
【0029】
(車両上部5の水平保持制御)
図3,7に示すように、水平保持装置6の油圧シリンダー7の下端は、ロアフレーム12のクロスメンバー15Aに取り付けられ、油圧シリンダー7の上端側となるピストンロッド7Aは、アッパーフレーム17のアーム部22Aから右方に突出する突出部22A1に取り付けられている。突出部22A1は、前後軸Xから右方に偏倚した位置に配置され、ピストンロッド7Aの伸縮方向は、前後軸Xと交差しないように配置される。したがって、油圧シリンダー7のピストンロッド7Aが伸縮させられることで、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とは、前後軸Xの回りに相対的に回動することができる。
【0030】
制御部10は、傾斜センサー9からの検出信号に基づき、アッパーフレーム17が水平になるように、油圧ポンプユニット8を駆動制御し油圧シリンダー7を動作(ピストンロッド7Aの伸縮)させる。したがって、作業車両1が左右方向に傾斜する斜面を走行する場合であっても、車両上部5は水平に保持され、搭乗部27も水平に保持される。
【0031】
(傾斜警報装置29)
上述のように、作業車両1は、水平保持装置6を備えることで、左右方向に傾斜する斜面を走行している場合でも、搭乗部27が水平に保持される。そのため、オペレータは、作業車両1の左右方向への傾斜の程度を認識し難く、作業車両1が傾斜の限界を超え横転してしまう事故を招く虞がある。そこで、作業車両1は、図6に示すように傾斜警報装置29を備える。
【0032】
傾斜警報装置29は、角度検出機構30と、警報器31(図1,2,3参照)と、制御部10とを有する。角度検出機構30は、ロアフレーム12とアッパーフレーム17との前後軸Xの周りの相対角度(以下、「フレーム相対角度」と記載する)が所定の角度以上になったか否かを検出できる。制御部10は、角度検出機構30によりフレーム相対角度が所定の角度以上になったことを検出すると、たとえば、回転灯、フラッシュランプ等の光を発する装置で構成される警報器31を作動させる。警報器31は、光を発するものの他、ブザー等の警報音を発する装置で構成してもよい。オペレータの視線が路面や作業対象物に傾注しているときは、回転灯等が視界に入り難い場合もある。警報器31が警報音を発する装置で構成された場合には、オペレータの視線方向に関わらず、フレーム相対角度が所定の角度以上になったか否かを、オペレータに認識させることができる。 警報器31を、警報音を発する装置で構成した場合には、走行車両2の走行音等の周囲の騒音により、オペレータが警報音を聞き取り難くなる場合も有り得る。これに対し、警報器31が光を発する装置で構成された場合には、周囲の騒音に拘わらず、オペレータは、フレーム相対角度が所定の角度以上になったか否かを認識できる。なお、警報器31が、警報音を発する装置および光を発する装置の両方を備える構成とされることで、オペレータに対し、より確実にフレーム相対角度が所定の角度以上になったか否かを認識させることができる。
【0033】
上述したように、作業車両1は水平保持装置6を備えている。そのため、作業車両1が左右方向に傾斜する斜面を走行している場合でも、アッパーフレーム17は、水平保持装置6により水平が保持される。つまり、フレーム相対角度は、作業車両1が走行する斜面の左右方向の傾斜角度に相当する。したがって、角度検出機構30により検出されるフレーム相対角度である所定の角度を、作業車両1が安全に走行できる斜面の左右方向の傾斜角度(以下、「安全傾斜角度」と記載する)に設定することで、作業車両1が走行している斜面の左右方向の傾斜角度が、安全傾斜角度か否かをオペレータに知らせることができる。
【0034】
(角度検出機構30)
図9,10を参照しながら、角度検出機構30の構成について説明する。角度検出機構30は、図7に示す部分Aに設けられている。図9は、図7に示す部分Aを拡大して示す図である。図9に示すように、角度検出機構30は、モーメンタリー型(自動復帰型)のスイッチ32と、カム機構33とを有する。カム機構33は、カム部材34と、カムフォロア35と、伝達機構36とを有する。
【0035】
(スイッチ32)
スイッチ32は、モーメンタリー型のスイッチであり、操作部37が押下されている間はオン状態となり、押下している力を解放すると自動的に復帰しオフ状態となる。スイッチ32は、配線32Aを介して制御部10に電気的に接続されている。スイッチ32は、L字型ブラケット38を介して、支持フレーム19の上面19Aに固定されている。L字型ブラケット38は、L字の一方の面部をボルト39により支持フレーム19の上面19Aに固定され、上面19Aに対して上方に立ち上がる他方の面部にスイッチ32が取り付けられている。スイッチ32は、操作部37の押下方向、すなわち操作部37の動作方向を前後軸Xと平行になるようにL字型ブラケット38に取り付けられている。
【0036】
(カム機構33)
(カム部材34)
カム機構33のカム部材34は、カム面34Aを有する。そして、カム部材34は、前後軸Xに対してスイッチ32の配置される側にカム面34Aが配置されるようにアーム部22Bに取り付けられる。カム面34Aは、3種類のカム面34A1,34A2,34A3を有する。カム面34A2は、カム面34A1の下方に配置され、カム面34A3は、カム面34A1の上方に配置される。カム面34A1,34A2,34A3は、共に前後軸Xを中心とする円弧に沿う面であり、カム面34A2,34A3の方がカム面34A1に比べて半径が大きい。すなわち、カム面34A2,34A3の方がカム面34A1に比べて前後軸Xからの距離が遠い位置に配置される。なお、カム面34A2とカム面34A3とは、カム面34A1を挟んで対称の形状である。
【0037】
(カムフォロア35)
カムフォロア35は、カムフォロア軸40の周りに回転自在に取り付けられている。カムフォロア軸40は、前後軸Xに平行に配置され、伝達機構36の軸支持部41に取り付けられている。
【0038】
(伝達機構36)
伝達機構36は、カムフォロア取付部材としての軸支持部41と、カムフォロア取付部材支持軸としての軸部42と、この軸部42を上面19Aに取り付ける軸受部43とを有する。軸部42は、軸受部43を介して上面19Aに取り付けられている。軸部42は、上面19Aに垂直に配置される。軸部42には、軸支持部41の一端41Aが取り付けられ、軸支持部41は軸部42を中心に回動自在とされている。軸支持部41の他端41Bには、カムフォロア軸40が取り付けられている。つまり、軸支持部41は、カムフォロア軸40を軸部42の周りに回動可能に支持する。
【0039】
軸部42は、前後軸Xとスイッチ32との間に配置されている。軸支持部41の左右方向(一端41A−他端41Bの方向)の長さは、軸支持部41が軸部42を中心に回動され、他端41Bが後方に移動したときに、軸支持部41の後面が操作部37に当接できる長さに設定されている。つまり、軸支持部41の他端41Bと、スイッチ32の操作部37とは、前後方向において互いに重なる位置に配置されている。
【0040】
ロアフレーム12とアッパーフレーム17とが前後軸Xの周りに相対的に回動すると、カムフォロア35とカム部材34のカム面34Aとは、相対的に移動し、カムフォロア35は、カム面34Aの形状に従って従動する。カム面34Aは、カム面34A1の部分では、カムフォロア35を移動させない形状であり、カム面34A2,34A3の部分で、カムフォロア35を右方に移動させるように形成されている。
【0041】
カムフォロア35が右方に移動されると、軸支持部41は、軸部42の周りに上方から見て時計回りに回動し、軸支持部41の他端41Bが後方に移動し、操作部37を動作することができる。したがって、カム面34A2,34A3の形成位置を、安全傾斜角度に対応させることで、作業車両1が安全傾斜角度を超えた斜面を走行しているか否かをオペレータに知らせることができる。
【0042】
具体的には、安全傾斜角度を、たとえば、水平に対して±28度に設定することができる。図10は、フレーム相対角度の変化と、カムフォロア35の移動との様子を示す図である。図10の上段(A)は、作業車両1が水平な路面Gを走行している状態(図5(B)参照)を示す。この状態では、カムフォロア35はカム面34A1に当接しているので、軸支持部41の他端41Bは後方に移動せず、操作部37は動作されない。
【0043】
図10の中段(B)は、作業車両1が、左側に向かって高くなる傾斜角度28度の路面G上を走行している状態(図5(A)参照)を示している。この状態では、カムフォロア35はカム面34A2に当接し右方へ移動させられる。カムフォロア35の右方への移動により、軸支持部41が軸部42の周りに上方から見て時計回りに回動させられ、軸支持部41の他端41Bが後方に移動する。これにより操作部37が動作させられる。
【0044】
図10の下段(C)は、作業車両1が、右側に向かって高くなる傾斜角度28度の路面G上を走行している状態(図5(C)参照)を示している。この状態では、カムフォロア35はカム面34A3に当接し右方へ移動させられ、カム面34A2に当接したときと同様に、軸支持部41の他端41Bが後方に移動し、操作部37が動作させられる。
【0045】
カム面34A1のカム角R1(前後軸Xからカム面34A1に対する臨み角)は、作業車両1の左右方向の安全傾斜角度の合計の角度である。作業車両1が水平な路面G上にあるとき、カムフォロア35はカム面34A1の上下方向の中央Cに位置し、カム角R1は、中央Cから前後軸Xを中心にして上下にそれぞれ安全傾斜角度S1,S2の角度を有する。安全傾斜角度S1,S2は、作業車両1の幅員や重心の高さ等により決定される値であり、本実施の形態では、一例として、それぞれ28度としている。
【0046】
ところで、水平保持装置6は、ロアフレーム12とアッパーフレーム17との前後軸Xの周りへの回動角度を所定の回動許容角度に制限している。つまり、仮に、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とが前後軸Xの周りに回動角度の制限なく回動できるとすると、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とが衝突したり、あるいは各フレームに搭載される部材が衝突してしまう。そこで、水平保持装置6により、ロアフレーム12とアッパーフレーム17との前後軸Xの周りへの回動角度を、ロアフレーム12とアッパーフレーム17等とが衝突しない範囲である回動許容角度に制限している。言い換えれば、回動許容角度は、アッパーフレーム17を水平に保持することができる斜面の左右方向の傾斜角度の範囲でもある。なお、回動角度の制限は、たとえば、油圧シリンダー7の駆動量(ピストンロッド7Aの伸縮量)を制限することで行うことができる。
【0047】
カム面34A2は、前後軸Xに対して中央Cから下方に安全傾斜角度S1以下の範囲にカム角R2で形成される。また、カム面34A3は、前後軸Xに対して中央Cから上方に安全傾斜角度S2以上の範囲にカム角R3で形成される。カム角R1(安全傾斜角度S1+安全傾斜角度S2)+カム角R2+カム角R3は、少なくとも回動許容角度以上に設定されている。つまり、カム面34A2は、作業車両1が安全傾斜角度S1を超えた斜面を走行しているときも、カムフォロア35を右方へ移動させることができ、これにより軸支持部41の他端41Bは操作部37を動作させ続けることができる。また、カム面34A3は、作業車両1が安全傾斜角度S2を超えた斜面を走行しているときも、カムフォロア35を右方へ移動させることができ、これにより軸支持部41の他端41Bは操作部37を動作させ続けることができる。したがって、作業車両1が安全傾斜角度S1,S2を超えた傾斜の斜面を走行している間は、傾斜警報装置29は、警報器31を作動させ続けることができる。
【0048】
(本実施の形態の主な効果)
上述したように、走行車両2は、クローラー13,13(走行機構)が備えられるロアフレーム12(第1フレーム)と、オペレータの搭乗部27が備えられるアッパーフレーム17(第2フレーム)とを有する。そして、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とは、前後方向に配置される軸部23Aと軸部23Bとを通る軸である前後軸Xの周りに相対的に回動自在である。走行車両2は、水平保持装置6によりアッパーフレーム17を水平に保持することができる。走行車両2は、角度検出機構30を有する。角度検出機構30は、水平保持装置6により水平に保持されているアッパーフレーム17とロアフレーム12との前後軸Xの周りの相対角度が所定の角度以上になったか否かを検出することができる。所定の角度は、たとえば、安全傾斜角度であり、本実施の形態においては水平に対して±28度とされている。そして、走行車両2は、角度検出機構30により、フレーム相対角度が安全傾斜角度である±28度になったことを検出されたときに、警報を発する警報装置としての警報器31を備えている。
【0049】
走行車両2が上述の構成を備えることで、オペレータは、走行車両2が走行している路面Gが安全傾斜角度を超えた斜面となったことを警報により知ることができる。この警報により、オペレータは、走行車両2が走行している路面Gが安全傾斜角度を超えた斜面であることを容易に知ることができ、走行車両2の横転を防止できる。
【0050】
ところで、たとえば、ロアフレーム12に傾斜センサーを備え、この傾斜センサーにより検出されるロアフレーム12の傾斜角度(左右方向の傾斜)に基づき、警報器31を作動させる構成とすることもできる。しかしながら、傾斜センサーは、傾斜センサー自身の傾斜角度を、静電容量の変化や、重力加速度の変化を電気的に検出するものであり、ノイズや振動による誤差を生じる虞がある。また、構造が複雑であり高価になりやすい。
【0051】
これに対し、ロアフレーム12とアッパーフレーム17との前後軸X周りの相対的な角度(フレーム相対角度)を検出することで、高価で構造が複雑な傾斜センサーを用いることなく、警報器31を作動させることができる。
【0052】
角度検出機構30は、ロアフレーム12またはアッパーフレーム17のいずれか一方の側であるロアフレーム12に備えられるスイッチ32と、前記一方に対して他方の側となるアッパーフレーム17に備えられるカム機構33とを有する。カム機構33は、カム面34Aが形成されるカム部材34と、カム部材34の移動に従って移動させられるカムフォロア35と、このカムフォロア35の移動をスイッチ32の操作部37に伝達する伝達機構36とを有する。カム部材34は、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とのフレーム相対角度が所定の角度である安全傾斜角度S1,S2以上になったときに、伝達機構36が操作部37を動作させることができるように、安全傾斜角度S1,S2に応じてカムフォロア35を移動させることができる形状である。
【0053】
上述のように、角度検出機構30は、スイッチ32とカム機構33により構成されている。ロアフレーム12とアッパーフレーム17とのフレーム相対角度が安全傾斜角度S1,S2以上になったか否かを、スイッチ32とカム機構33という簡単な構成により検出することができる。フレーム相対角度が、安全傾斜角度S1,S2以上になったか否かは、スイッチ32のオン・オフにより判断できるので、外乱ノイズによる誤作動の虞がない。
【0054】
スイッチ32の操作部37の動作方向は、前後軸Xに平行な方向に配置されている。また、カムフォロア35を回転可能に支持する軸であるカムフォロア軸40も、前後軸Xに平行に配置されている。伝達機構36は、カムフォロア軸40が取り付けられる軸支持部41を有する。この軸支持部41は、軸部42の周りに回動可能に支持される。軸部42は、カムフォロア35の移動方向に平行な面である上面19Aに垂直であり、カムフォロア軸40と交差しない。したがって、カムフォロア35がカム面34Aの形状に従って移動すると、軸支持部41は軸部42の周りに回動する。軸支持部41が軸部42の周りに回動すると、軸支持部41の他端41Bにより操作部37が動作(押下)される。これにより、スイッチ32がオン状態となり、警報器31が作動する。
【0055】
上述の構成よれば、操作部37の動作方向およびカムフォロア軸40が前後軸Xに平行に配置することができるため、走行車両2の大型化を抑えることができる。
【0056】
(変形例1)
図11に走行車両2の変形例1を示す。上述の実施の形態と同様の部材については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。図11に示すように、走行車両2は、スイッチ32の操作部37(図示外)の動作方向を左右方向とし、カム部材34のカム面34Aを後方に向くように、そして、カムフォロア軸40(図示外)を左右方向に配置する構成としてもよい。しかしながら、かかる構成とした場合には、スイッチ32の取り付けのため、たとえば、支持フレーム19の上面19Aを前方に延設するなどの構造とする必要がある。したがって、かかる構成とする場合に比べて、上述の実施の形態の構成のように、スイッチ32の操作部37の動作方向を、前後軸Xに平行な方向に配置とし、カムフォロア軸40も、前後軸Xに平行に配置とすることで、走行車両2の構成の複雑化を抑えながら小型化を図ることができる。
【0057】
(変形例2)
なお、上述の実施の形態およびその変形例1において、カム面34Aのカム面34A1とカム面34A2,34A3の凹凸の関係を逆にし、スイッチ32を上下に1つずつ配置し、フレーム相対角度が安全傾斜角度を超えたときに、カム面34A1の部分でスイッチ32を作動させる構成としてもよい。
【0058】
上述の実施の形態およびその変形例1で示す走行車両2に備えられる角度検出機構30は、ロアフレーム12およびアッパーフレーム17に対して取り付けられている。つまり、角度検出機構30のうち、スイッチ32およびカム機構33の伝達機構36は、ロアフレーム12の一部である支持フレーム19に取り付けられている。また、角度検出機構30のうち、カム機構33のカム部材34は、アッパーフレーム17の一部であるアーム部22Bに対して取り付けられている。
【0059】
このように、角度検出機構30をロアフレーム12およびアッパーフレーム17に対して取り付けることで、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とのフレーム相対角度が安全傾斜角度以上になったか否かを検出する精度を向上させることができる。
【0060】
(変形例3)
これに対し、走行車両2は、図12に示す変形例3の構成としてもよい。図12に示す走行車両2は、カム機構33のうちアッパーフレーム17側に取り付けられるカム部材34がエンジン11に対して取り付けられた構成となっている。カム部材34は、ブラケット44を介してエンジン11に取り付けられている。
【0061】
走行車両2において、エンジン11とアッパーフレーム17との間には、エンジン11の振動がアッパーフレーム17に伝達しないようにゴム製のマウント部材が配置されている。したがって、エンジン11は、アッパーフレーム17に対して振動する。そのため、カム部材34を、エンジン11に対して取り付ける構成とした場合には、エンジン11の振動により、フレーム相対角度が安全傾斜角度以上になったか否かの検出精度が低下する虞がある。しかしながら、図9,10に示すように、角度検出機構30をロアフレーム12およびアッパーフレーム17に対して直接取り付ける構造とすることで、フレーム相対角度が安全傾斜角度以上になったか否かの検出精度を向上させることができる。
【0062】
(変形例4)
上述の実施の形態およびその変形例1から3に示す走行車両2の構成は、角度検出機構30がエンジン11の後方に配置されている。これに対し、走行車両2は、図13に示す変形例4の構成としてもよい。図13に示す走行車両2は、角度検出機構30をエンジン11(図示外)の前方に配置する構成となっている。図13において、カム部材34は、カム面34Aを上方に向けて、アーム部22Aの上面に取り付けられている。スイッチ32および伝達機構36は、軸受部24の上面に取り付けられている。上述の構成において、ロアフレーム12とアッパーフレーム17とが前後軸Xを中心に相対的に回動すると、カムフォロア35がカム面34Aの形状に従って従動し、カム面34A2,34A3(図示外)の部分で、カムフォロア35は上方に移動させられる。カム面34A1の部分では、カムフォロア35は移動しない。
【0063】
カムフォロア35が上方に移動されると、軸支持部41は、軸部42の周りに右方から見て時計回りに回動し、軸支持部41の他端41Bが前方に移動し、スイッチ32の操作部37(図示外)を動作することができる。
【0064】
変形例4の走行車両2においても、スイッチ32の操作部37の動作方向は、前後軸Xに平行に配置され、また、カムフォロア軸40も前後軸Xに平行に配置されている。そして、軸部42は、カムフォロア35の移動方向である上下方向に平行な面に垂直でありカムフォロア軸40と交差しないように配置されている。走行車両2を変形例4の構成とした場合にも、操作部37の動作方向およびカムフォロア軸40が前後軸Xに平行に配置することができるため、走行車両2の大型化を抑えることができる。
【0065】
しかしながら、変形例4に示す走行車両2のように、エンジン11の前方に角度検出機構30が配置されている構成に比べて、上述の実施の形態および変形例1から3に示す走行車両2のように、角度検出機構30は、エンジン11の後方に配置することが好ましい。走行車両2の前方には、作業装置3が装着される。そのため、作業装置3が行う作業により飛散した粉塵や泥などが角度検出機構30に付着等し、フレーム相対角度の検出精度が低下する虞がある。たとえば、泥がカム面34Aに付着した場合には、カムフォロア35を正常に移動させることができなくなる虞がある。したがって、角度検出機構30をエンジン11の後方に配置することで、作業装置3が行う作業により飛散した粉塵や泥などが角度検出機構30に付着等することをエンジン11により防ぐことができる。
【0066】
水平保持装置6は、ロアフレーム12の左右方向の傾斜に対してアッパーフレーム17を回動させる際に、0.2秒以上2.5秒以下の作動遅れを有することが好ましい。アッパーフレーム17の回動が、ロアフレーム12の左右方向の傾斜に対して過敏に行われると、安全傾斜角度の前後で、カムフォロア35がカム面34A2またはカム面34A3の近傍でスイッチ32にチャタリングを発生させ、警報器31の点滅が頻繁になりオペレータの危険認識に混乱を起こす虞がある。これに対し、走行車両2の走行速度が、10キロ/時以下である場合は、ロアフレーム12の左右方向の傾斜に対するアッパーフレーム17の回動の作動遅れを、0.2秒以上とすることで、スイッチ32のチャタリングを防止することができる。また、作動遅れが2.5秒を超えないようにすることで、走行車両2の傾斜が、安全傾斜角度を大きく超えてしまう前に警報を発することができる。作動遅れは、0.5秒以上とすることで、スイッチ32のチャタリングの発生をより効果的に防止することができる。また、作動遅れは、1秒を超えないようにすることで、走行車両2の傾斜が、安全傾斜角度を超えてしまう状況をより早期にオペレータに知らせることができ、走行車両2の転倒事故をより一層確実に防止できる。なお、作動遅れは、制御部10によるソフト的な制御により実現することができる他、油圧シリンダー7や油圧ポンプユニット8のオイルの弾性や流れの制御により実現することができる。
【0067】
上述の実施の形態およびその変形例においては、スイッチ32をロアフレーム12側に備え、カム部材34をアッパーフレーム17側に備える構成を示しているが、スイッチ32をアッパーフレーム17側に備え、カム部材34をロアフレーム12側に備える構成としてもよい。
【0068】
角度検出機構30は、カム機構を用いることなく、たとえば、角度によって位置が変化する部材の位置を光センサー、静電容量センサーあるいは磁気センサーにより検出し、検出状態に基づき、フレーム相対角度の検出を行う構成としてもよい。
【0069】
X1 … 前後軸
S1,S2 … 安全傾斜角度(所定の角度)
1 … 作業車両
2 … 走行車両
3 … 作業装置
6 … 水平保持装置
11 … エンジン
12 … ロアフレーム(第1フレーム)
13 … クローラー(走行機構)
17 … アッパーフレーム(第2フレーム)
27 … 搭乗部
30 … 角度検出機構
31 … 警報器(警報装置)
32 … スイッチ(モーメンタリー型のスイッチ)
33 … カム機構
34 … カム部材
34A … カム面
35 … カムフォロア
36 … 伝達機構
37 … 操作部
40 … カムフォロア軸
41 … 軸支持部(カムフォロア取付部材)
42 … 軸部(カムフォロア取付部材支持軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
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図13