(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
断熱性能を有する部材として、グラスウール、ロックウール等が多く用いられている。しかしながら、これらの部材を用いる場合、部材の厚みが厚くなるという問題点がある。
これらの欠点を克服するために、種々の研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008−49981号公報)には、コスト上昇の原因とならずに高い防音性、断熱性が得られる中空形材について開示されている。
特許文献1(特開2008−49981号公報)記載の中空形材は、表裏の板間が複数の中空部を有して連結された中空形材であって、中空部による減圧空間または真空空間を設けたものである。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−42651号公報)には、合成樹脂による一体型真空パネルを成形することにより品質の安定した建材用真空パネルを供給すると共に産業廃棄物である廃プラの大量処理に寄与する真空パネル単位体について開示されている。
特許文献2(特開2003−42651号公報)記載の真空パネル単位体は、合成樹脂により成形された筒状単位体の端面に閉塞部材を設け内部を真空状態に保持したものである。
【0005】
さらに特許文献3(特開2004−9493号公報)には、資源の再利用と環境汚染並びに環境破壊の防止を図り、機械的強度に優れ緩衝性や断熱性を備え、耐水性、防音性等にも優れた非塩素系合成樹脂素材によって形成した板状中空構造体とその製造方法の提供について開示されている。
特許文献3(特開2004−9493号公報)記載の板状中空構造体とその製造方法の提供は、厚さ方向に所定の間隔を隔てて平行配置された非塩素系合成樹脂素材からなる表面シート層と背面シート層と、これらのシート層間に介在された非塩素系合成樹脂素材からなる中間層とからなり、該中間層が、横幅方向において凹凸形状に形成され、前記表背両シート層と前記凹凸形状部分とのそれぞれの接当面が融着されて一体連結され、同表背両シート層との間に多数の縦溝状の中空部Sが形成されているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、真空パネルは、生産工程が複雑であり、生産効率が悪いという欠点を有する。その結果、真空パネルの製造コストが高くなるという問題点がある。
【0008】
また、特許文献1記載の中空形材は吸引口を有し、特許文献2記載の真空パネルは閉塞栓を有する。そのため、これらの吸引口または閉塞栓から外気が侵入し、中空部が外気と連通し、中空部の真空度が低下し、断熱効率が低下するという問題がある。
さらに、特許文献3記載の板状中空構造体は、中空部を有するパネルを押出生産するため、押出方向の端部は開放された状態であり、中空部を外気が通り抜け、外気の流れによる熱交換が発生する。その結果、断熱効率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、断熱効率を維持することができる密閉中空部を含む樹脂製品および密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)
一局面に従う密閉中空部を含む樹脂製品は、樹脂の内部に閉塞して形成された密閉中空部を含むものである。
【0011】
この場合、完全な密閉中空部を有する樹脂製品を形成することができるため、断熱効率の低下を防止することができる。すなわち、シール部または栓部が存在しないため、外気が侵入するおそれがなく、外気の流れによる熱交換を防止でき、栓部との嵌合寸法が不要となるため、厚みを薄くすることもできる。
【0012】
(2)
第2の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品は、一局面に従う密閉中空部を含む樹脂製品において、密閉中空部は、樹脂の内部に形成された空間を閉塞して形成されてもよい。
【0013】
この場合、樹脂の内部に形成された空間を閉塞して形成されるので、完全な密閉中空部を有する樹脂製品を形成することができる。そのため、断熱効率の低下を防止することができる。
【0014】
(3)
第3の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品は、一局面に従うまたは第2の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品において、密閉中空部は、押出成形により樹脂の内部に連続形成された空間を所定の間隔で閉塞して形成してもよい。
【0015】
この場合、完全な密閉中空部を有する樹脂製品を形成することができるため、断熱効率の低下を防止することができる。すなわち、シール部または栓部が存在しないため、外気が侵入するおそれがなく、外気の流れによる熱交換を防止でき、栓部との嵌合寸法が不要となるため、厚みを薄くすることもできる。また、基本的に押出成形で製造することができるため、コスト向上を抑制することができ、連続した大量生産も可能である。
また、押出成形に限定されず、他の任意の成形手法、例えば、ブロー成形、真空成形等を用いてもよい。
具体的に、ブロー成形においては、パリソンを金型で挟み込んだ後、任意の行程において空間を閉塞するためのプレス処理を行ってもよく、真空成形においては、加熱成形後、冷却前において、空間を閉塞するプレス処理を行ってもよい。
【0016】
(4)
第4の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品は、一局面に従うまたは第2、第3の密閉中空部を含む樹脂製品において、樹脂は、少なくとも一部にガスバリア樹脂を用いてもよい。
【0017】
この場合、ガスバリア樹脂を用いるので、ガスバリア性を高めることができる。すなわち、密閉中空部と外気とのガス交換を、長期間にわたって遮断することができる。
ここでいうガスバリア樹脂とは、温度20℃、湿度50%以下の条件に置いて、
窒素および酸素に対する透過係数が、各々100(cc・20μm/m2・day・atm)以下の樹脂が望ましい。
【0018】
(5)
他の局面に従う密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、連続形成された空間を含む樹脂を金型から押出す押出工程と、押出工程により押し出された樹脂の連続形成された空間のうち少なくとも1つ以上の空間を所定の時間毎に閉塞して密閉中空部を形成する閉塞工程と、を含むものである。
【0019】
この場合、押出工程および閉塞工程により、完全な密閉中空部を有する樹脂製品を形成することができるため、断熱効率の低下を防止することができる。特に、基本的に押出成型で製造することができるため、コスト上昇を抑制することができ、大量生産も可能となる。
【0020】
(6)
第6の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、他の局面に従う密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、押し出された樹脂を所定の温度まで冷却する冷却工程と、を含み、押出工程、閉塞工程および冷却工程のうち少なくとも1つは、減圧空間内で行われるものである。
【0021】
この場合、押出工程、閉塞工程および冷却工程をいずれかが減圧空間内で行われるので、連続形成された空間が真空状態の場合でも、樹脂が大気圧にさらされないため、連続形成された空間が大気圧で押し潰されることを防止できる。また、完全な密閉中空部を有する樹脂製品を形成することができるため、断熱効率の低下を防止することができる。特に、基本的に押出成形で製造することができるため、コスト上昇を抑制することができ、大量生産も可能となる。
なお、所定の温度とは、0℃以上50℃以下の範囲であることが好ましく、18℃以上30℃以下であることがより好ましい。
【0022】
(7)
第7の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、他の局面に従う密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、金型は、連続形成された空間と、金型周囲の外気とを連通する孔を有してもよい。
【0023】
この場合、連通する孔により当該空間に外気が流入され、圧力差により当該空間が押し潰されることを防止することができる。また、ガス注入等の特別な工程を必要としないので、低コスト化を図ることができる。
なお、連通する孔は、例えば空間が複数個ある場合に、複数個全ての孔が連通している場合だけでなく、複数個のうち一部のみ孔が連通している場合であってもよい。
【0024】
(8)
第8の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第7の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、孔から連続形成された空間へ流体を注入する第1注入工程をさらに含んでもよい。
【0025】
この場合、アルゴンガス、または炭酸ガスなどに代表される低熱伝導率の気体を注入することで、密閉中空部内に低熱伝導率の気体を充満させた樹脂製品を連続的に生産することができる。従って、連続形成された空間の気体が空気の場合よりも断熱性能の高い樹脂製品を連続的に生産することができる。
【0026】
(9)
第9の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第8の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、第1注入工程は、流体として所定のガスを用い、樹脂は、少なくとも一部に温度20℃および湿度50%以下の条件における所定のガスに対する透過係数が、温度20℃および湿度50%以下の条件における窒素に対する透過係数の50倍以上の樹脂からなってもよい。
【0027】
この場合、所定のガスに対する透過係数が、窒素に対する透過係数の50倍以上の樹脂を用いることにより、密閉中空部の所定のガスは早く樹脂製品外に放出されるが、外気の侵入は遅くなる。その結果、密閉中空部は早く低真空状態となり、長期間保持される。
【0028】
(10)
第10の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第9の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、所定のガスは、ヘリウムガスからなってもよい。
【0029】
この場合、ヘリウムガスを用いるので、樹脂の透過性能が高く、密閉中空部のヘリウムガスは早く樹脂製品外に放出されるが、外気の侵入は遅くなるというメリットがある。その結果、密閉中空部は早く低真空状態となり、長期間保持されるので、空気および他のガスを密閉した場合よりも、断熱性能の高い樹脂製品を連続的に生産することができる。
【0030】
(11)
第11の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第8の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、第1注入工程は、流体として、水および水蒸気の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0031】
この場合、第1注入工程の流体として、水および水蒸気の少なくともいずれかを用いることにより、密閉中空部における真空度を得ることができる。
例えば、100℃の飽和水蒸気を1気圧環境下で、注入した場合、成形後に温度が低下し、20℃の飽和水蒸気圧は0.03気圧以下であるため、成形完了時点で、密閉中空部は97%以上の真空度を得ることができる。また、水の沸点は100℃であるため、100℃以下になるまでは、大気圧の影響を受けないという利点も奏する。したがって、固化温度が100℃近辺の樹脂を用いることが好ましい。また、水は安価であり、かつ安全に利用することができるというメリットがある。
なお、水に限定されず、火気関係の問題を除去できれば、エタノール、メタノール、ガソリン等、様々な物質を用いてもよい。
また、第1注入工程は、生産前の前処理段階の工程であってもよく、生産中の工程であってもよい。
【0032】
(12)
第12の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第7の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、孔から連続形成された空間へ状態変化(相変化)を伴う物質を注入する第2注入工程をさらに含んでもよい。
【0033】
この場合、成形中の温度低下に伴って、密閉中空部内では注入した物質の状態変化(相変化)が生じ、密閉中空部内は、注入した物質の飽和蒸気圧まで減圧される。20℃の飽和蒸気圧が小さな物質を用いることにより、密閉中空部は、成形完了時点において高真空状態にすることができる。
また、減圧は、物質の沸点以下で始まるため、物質の沸点以上の温度では樹脂が大気圧にさらされず、連続形成された空間が大気圧で押し潰されることを防止できる。そのため、用いる物質としては、20℃の飽和蒸気圧が小さく、沸点が常温以上、樹脂の固化温度以下の物質を利用することにより、効果を高めることができる。
【0034】
(13)
第13の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法は、第12の発明にかかる密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法において、第2注入工程は、物質として、水、氷および水蒸気の少なくともいずれかを用いてもよい。
【0035】
この場合、第2注入工程の物質として、水、氷および水蒸気の少なくともいずれかを用いることにより、密閉中空部における真空度を得ることができる。
例えば、100℃の飽和水蒸気を1気圧環境下で、注入した場合、成形後に温度が低下し、20℃の飽和水蒸気圧は0.03気圧以下であるため、成形完了時点で、密閉中空部は97%以上の真空度を得ることができる。また、水の沸点は100℃であるため、100℃以下になるまでは、大気圧の影響を受けないという利点も奏する。したがって、固化温度が100℃近辺の樹脂を用いることが好ましい。また、水は安価であり、かつ安全に利用することができるというメリットがある。
なお、水に限定されず、火気関係の問題を除去できれば、エタノール、メタノール、ガソリン等、様々な物質を用いてもよい。
また、第2注入工程は、生産前の前処理段階の工程であってもよく、生産中の工程であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0038】
(密閉中空部を含む平面パネル)
図1は、本実施の形態にかかる密閉中空部を含む平面パネル100の一例を示す模式的斜視図であり、
図2は、
図1の平面パネル100のA−A線断面図を示す模式的断面図であり、
図3は、
図1の平面パネル100のB−B線断面図を示す模式的断面図である。
【0039】
図1に示すように、本実施の形態にかかる密閉中空部を含む平面パネル100は、厚みのある板状部材からなる。また、
図2に示すように、A−A線断面においては、密閉中空部200が形成されず、
図3に示すように、B−B線断面においては、密閉中空部200がy方向に複数並列して形成されている。
【0040】
すなわち、
図1に示す平面パネル100は、x方向に延在した密閉中空部200が、複数y方向に並列配置され、かつ平面パネル100の端部において密閉中空部200が密閉された状態で形成されている。
【0041】
本実施の形態にかかる平面パネル100は、例えば、z方向の厚みが15mm、x方向の長さが1820mm、y方向の長さは、910mmである。
また、密閉中空部200は、例えば、z方向の高さが13mm、y方向の長さが20mmである。なお、密閉中空部200の詳細については、後述する。
【0042】
(密閉中空部を含む円筒パイプ)
また、
図4は、本実施の形態にかかる密閉中空部を含む円筒パイプ400の一例を示す模式的斜視図であり、
図5は、
図4の円筒パイプ400のC−C線断面図を示す模式的断面図であり、
図6は、
図4の円筒パイプ400のD−D線断面図を示す模式的断面図である。
【0043】
図4および
図5に示すように、本実施の形態にかかる密閉中空部を含む円筒パイプ400は、内側筒410および外側筒420の2重の筒状体からなる。なお、本実施の形態においては、説明上、内側筒410および外側筒420を設けることとしているが、これに限定されず、内側筒410および外側筒420を同じ素材から形成し、後述する密閉中空部200を形成してもよい。
【0044】
また、
図5に示すように、C−C線断面においては、内側筒410と外側筒420とのいずれにも密閉中空部200が形成されず、
図6に示すように、D−D線断面においては、内側筒410には密閉中空部200が形成されず、外側筒420に密閉中空部200が複数並列形成されている。
【0045】
すなわち、
図4に示す円筒パイプ400は、x方向に延在した密閉中空部200が、外側筒420内に周状に並列配置され、かつ円筒パイプ400の端部において密閉中空部200が密閉された状態で形成されている。
本実施の形態にかかる円筒パイプ400の場合は、流体が通る部分の、内側筒410の内周側を閉塞するのではなく、円筒パイプ400の内側筒410の外周側に設けられた断熱用の密閉中空部200を閉塞するものである。
【0046】
(密閉中空部の詳細説明)
図7は、密閉中空部200の概略を説明するための模式的断面図であり、
図8は、密閉中空部200の概略の他の例を説明するための模式的断面図である。
【0047】
図7および
図8の密閉中空部200は、汎用樹脂210、汎用発泡樹脂220、およびガスバリア樹脂230の少なくとも1つまたは複数により形成される。
例えば、
図7の断面に示すように、y方向には、汎用樹脂210が形成され、z方向には、汎用発泡樹脂220により矩形状が形成され、形成された矩形状内をガスバリア樹脂230で覆っている。そのガスバリア樹脂230の内部に密閉中空部200が形成される。
【0048】
さらに、例えば、
図8の断面に示すように、y方向には、汎用樹脂210が形成され、z方向には、汎用発泡樹脂220により矩形状が形成され、汎用樹脂210の外側をガスバリア樹脂230で覆っている。その汎用樹脂210および汎用発泡樹脂220により形成された矩形状内に密閉中空部200が形成されてもよい。
【0049】
ここで、本実施における汎用樹脂210は、PVC(ポリ塩化ビニル)からなる。汎用発泡樹脂220は、発泡PVC(発泡ポリ塩化ビニル)からなる。また、ガスバリア樹脂230は、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂からなる。
【0050】
なお、汎用樹脂210は、大気圧を受ける部位であるため、コストが安く、弾性率および強度の大きな樹脂が望ましい。
また、汎用発泡樹脂220は、熱橋に相当する部位であるため、熱伝導率の低い樹脂が望ましい。さらに、ガスバリア樹脂230は、ガスバリア性能の高い樹脂が望ましい。
【0051】
なお、汎用発泡樹脂220を用いずに、その部分に汎用樹脂210を用いてもよく、汎用樹脂210は、高密度ポリエチレン(HDPE)からなってもよい。
さらに、汎用樹脂210は、高密度ポリエチレン(HDPE)からなり、ガスバリア樹脂230がエチレン-ビニルアルコール共重合樹脂からなる場合、水蒸気および窒素、酸素などの主要ガスに対するバリア性能を高くすることができる。
【0052】
また、汎用樹脂210および汎用発泡樹脂220を用いずに、その部分にガスバリア樹脂230を用いてもよく、ガスバリア樹脂230は、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂でもよく、高いガスバリア性能を有する他の樹脂であってもよい。
【0053】
なお、上記の樹脂に限定されず、汎用樹脂210、汎用発泡樹脂220およびガスバリア樹脂230は、押出成形可能な全ての樹脂が適用可能であり、複数種類の樹脂を併用してもよく、ガスバリア性能が高く、水蒸気バリア性能が高く、熱橋部の熱伝導率が低く、
弾性率または強度が大きく、総合的に安い樹脂の組み合わせが最適と考えられる。
また、透明樹脂を用いれば、透明パネルが生産でき、窓の内側に用いることも可能となる。
【0054】
なお、透明樹脂として、アクリル、ポリカーボネート、PET、塩化ビニルなどを用いることができ、汎用樹脂210として、塩化ビニル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を用いることができる。
また、ガスバリア樹脂230として、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリルコポリマー、ビニリデンクロライドコポリマー、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアリレート、ポリクロロトリフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等を用いることができる。
【0055】
なお、本実施の形態においては、密閉中空部200を含む平面パネル100または密閉中空部200を含む円筒パイプ400について説明を行ったが、これに限定されず、曲面パネル、異形断面パイプ等、押出成形が可能で、かつ密閉中空部200を形成できる全ての樹脂製品に適用してもよい。
【0056】
(複数段重ねタイプ)
次に、
図9は、密閉中空部200を複数段形成した平面パネル100aの一例を説明するための模式的断面図である。
【0057】
図9に示す平面パネル100aは、密閉中空部200を熱橋の位置をずらしてz方向に重ねてもよい。その結果、熱橋長さを延長させることができ、断熱効率をより高くすることができる。
なお、
図9に示した2段タイプではなく、3段、4段、任意の数重ねたタイプであってもよいし、熱橋の位置をずらさずに、重ねてもよい。
【0058】
なお、本実施の形態においては、密閉中空部200の断面が矩形状からなることとしているが、これに限定されず、多角形、円、三角形、ハニカム状、楕円等、任意の形状からなってもよい。
また、中空厚みを6mm前後にすることで、密閉中空部にガスが存在する場合の対流が抑制でき、断熱性能を向上させることができる。
【0059】
(密閉中空部200を含む平面パネル100の製造方法)
図10から
図15は、密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程の一例を示す模式図である。
図10から
図15に示すように、製造装置500は、押出成形機510、金型520、プレス圧縮機530を含む。
【0060】
図10に示すように、押出成形機510から金型520を介して、単なる空間を有する樹脂製品が押し出される。すなわち、密閉中空部200を含む平面パネル100が形成される前の状態である。
【0061】
次に、
図11に示すように、プレス圧縮機530により押し出された樹脂が上下方向(矢印Zの方向)へ短時間のプレス圧縮処理が行われる。
その結果、密閉中空部200を有する平面パネル100の片側端部が、押し潰されて形成され始める。
【0062】
次いで、
図12に示すように、プレス圧縮機530が上下方向(矢印-Zの方向)へ移動される。続いて、
図13に示すように、押出成形機510から金型520を介して密閉中空部200を含む平面パネル100の製品寸法だけ押出される。例えば、平面パネル100は、金型から1820mm押し出される。それにより、
図1の平面パネル100の寸法が形成される。なお、この間、プレス圧縮機530は、動作しない。
当然ながら、上記間隔を1820mmではなく、任意の長さに設定してもよい。その結果、平面パネル100の製品長さを自由自在に調整することができ、平面パネル100の寸法バリエーションを容易に多く持つことができる。
【0063】
最後に、
図14に示すように、1820mm押し出した後に、プレス圧縮機530により上下方向(矢印Zの方向)へ短時間のプレス圧縮処理が行われる。その結果、密閉中空部200を有する平面パネル100のもう片方の端部が押し潰されて、密閉中空部200が完全に閉塞される。最後に、
図15に示すように、プレス圧縮機530が上下方向(矢印-Zの方向)へ移動される。
この
図10から
図15の工程を繰り返すことで、連続して、密閉中空部200を含む平面パネル100を連続して押出生産することができる。
【0064】
なお、本実施の形態においては、プレス圧縮機530を用いることとしているが、これに限定されず、空間を閉塞して密閉中空部200を形成できるものであればよい。
【0065】
また、
図4から
図6に示した円筒パイプ400の場合には、通常の円筒パイプの金型の出口からコアのみ延長した部分をプレス内型とし、プレス外型を設けて、プレス外型のみ周方向から軸心方向に対して、圧縮稼動すれば実現することができる。
【0066】
(減圧空間内での製造工程)
また、
図16は、密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程の他の例を示す模式図である。以下、
図16の密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程が主に、
図10から
図15の密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程と異なる点について説明を行う。
【0067】
図16に示すように、密閉中空部200を含む平面パネル100を形成する工程を、減圧空間内で実施してもよい。
すなわち、密閉中空部200を含む平面パネル100のプレス圧縮機530による閉塞工程、冷却工程、引き取り工程までの任意の工程を、真空ポンプにより真空状態にした減圧空間内で実施してもよい。なお、
図16における破線は、閉じられた閉空間を意味し、閉空間内が減圧されている。
【0068】
これにより、平面パネル100が溶融状態であっても、大気圧により変形することを防止でき、すなわち、密閉中空部200が大気圧により潰されることを防止できる。
【0069】
(孔形成工程またはガス注入工程)
図17は、密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程のさらに他の例を示す模式図である。
【0070】
図17に示す密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程が、主に、
図10から
図16の密閉中空部200を含む平面パネル100の製造工程と異なる点について説明を行う。
【0071】
図17に示すように、金型520の外表面から、外型であるダイと内型であるコアをつなぐブリッジを通して、孔540を形成し、金型外表面と樹脂の内部に形成される空間を孔540により連通させてもよい。本実施の形態においては、24個のコアを用いているので、24個の空間と金型外表面を連通した。なお、全ての空間を連通させずに、任意の空間のみ連通させてもよい。
【0072】
すなわち、プレス圧縮機530の稼動後、密閉中空部200は真空状態となる。そのため、外気と密閉中空部200との間に内外圧力差が生じる。そのため、製造工程において、外気と通じる孔540を形成することで、孔540から外気が自然流入し、圧力のバランスを取ることができる。これにより、平面パネル100の樹脂が溶融状態であっても、密閉中空部200が大気圧により潰されることを防止できる。さらに流入する外気を乾燥させる乾燥工程を追加してもよい。その結果、空気封入後に密閉中空部200の内部に水滴が発生するのを防止することができる。
【0073】
また、
図17に示すように、孔540のコア面側とは逆側、すなわち、外気を吸入する部分に、流体注入機550を設けてもよい。
具体的に、流体注入機550は、アルゴンガスまたは炭酸ガスなどの熱伝導率の低い気体のガスボンベを含む。流体注入機550を用いることで、密閉中空部200の内圧を大気圧より高めることができる。これにより外力による変形を抑えることができるため、
図7の汎用樹脂210のZ方向厚みを薄くすることができる。
【0074】
なお、流体注入機550に高樹脂透過性ガスであるヘリウムガスのガスボンベを含んでもよい。ヘリウムガスの場合は、樹脂透過性が極めて高いため、短時間で密閉中空部200から、放出される。その結果、密閉中空部200は、低真空状態にすることができる。
【0075】
また、ヘリウムガスの代わりに、水素等の軽くて分子サイズが小さく、結果として樹脂透過性が高いガスを用いてもよい。また、流体を注入する注入工程は、流体の昇温工程を含んでもよい。高温の流体の場合には、20℃前後の常温状態で注入するよりも分子数が少なくて済むため、ヘリウムガスのように早く抜きたい場合に効果がある。
【0076】
また、流体注入機550に水蒸気発生機を含んでもよい。水蒸気発生機は水から水蒸気への相変化を促す工程、例えば、水を加熱して沸騰させる工程を含んでもよい。
例えば、100℃の飽和水蒸気を1気圧で注入した場合、成形中に温度が低下し、100℃以下になると、密閉中空部200の水蒸気は、一部が水になり、密閉中空部200はその温度の飽和水蒸気圧まで減圧される。
【0077】
その結果、水蒸気は、20℃環境下で0.03気圧以下まで減圧され、97%以上の真空度を得ることができる。
また、100℃以下になるまでは、大気圧の影響を受けないため、固化温度が100℃以上の樹脂を用いると、固化後にのみ大気圧を受ける。さらに、注入する物質としては水に限らず、その他の成形中に状態変化を伴う任意の物質を用いてもよい。
例えば、1気圧環境下で、成形温度(200℃前後)では気体であり、常温(20℃前後)では液体であるエタノール、メタノール、ガソリンなど様々な物質を用いてもよい。しかしながら、火気や人体への安全面で問題が有る物質が多く、水が最適である。注入する物質と樹脂の組み合わせとしては、注入する物質の沸点以上の固化温度を有する樹脂が望ましい。
【0078】
以上のように、本発明にかかる密閉中空部200を含む平面パネル100は、シール部または、栓部分が存在しないため、当該箇所から外気と連通するおそれがない。しかし、シール部または、栓部分を有しなくても、透過によるガス交換が少なからず発生する。
また、密閉中空部200が真空の場合、断熱性能を高く持続させるために、密閉中空部200への外気の侵入を遮断する必要がある。
さらに、密閉中空部200にアルゴンガス、または炭酸ガスに代表される低熱伝導率ガスが密閉されている場合、断熱性能を高く持続させるために、外部へのガス拡散を遮断する必要がある。
最後に、密閉中空部200にヘリウムガスに代表される高樹脂透過性ガスが密閉されている場合、密閉中空部200を早く低真空状態にするために、外部へのガス拡散を促進する必要がある。
以上の要求を満たすためには、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂に代表されるようなガスバリア性能の高いガスバリア樹脂230を用いることで可能となる。すなわち、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂は、空気の主成分である窒素または酸素に対するバリア性能は高いが、ヘリウムガスに対するバリア性能は低いという特徴があるからである。
【0079】
以上から、
図7に示すように、ガスバリア樹脂230を設けることで、外部から密閉中空部200への外気の侵入を防止、アルゴンガスまたは炭酸ガスの内部から外部への拡散を防止、ヘリウムガスの外部拡散は防止せず、拡散後に生ずる低真空状態を維持するために外部からのガス侵入を防止することができる。
ヘリウムを早く外部に放出するためには、押出成形後、任意の期間、樹脂製品を高温槽に保管する事が望ましい。また、高温槽内を減圧する事により、ヘリウムの内外分圧差を大きくできるため、さらに素早く放出することができる。
【0080】
また、孔540からゲッター剤を投入してもよい。ここで、ゲッター剤とは、所定の流体を吸収するものである。ゲッター剤としては、空気の主成分である窒素または酸素、または水または水蒸気を吸収するものが望ましいが、これに限定されない。具体的には、シリカゲル等が代表例として挙げられる。
ゲッター剤を孔540へ投入する場合には、プレス圧縮機530の稼動間隔と孔540への投入間隔とを同期させることで、製品毎に等量のゲッター剤を投入できる。
さらには、ゲッター機能を有する樹脂を用いても良い。具体的には、シリカおよび/またはゼオライトなどを混ぜ込んだ樹脂である。
【0081】
なお、本実施の形態においては、汎用樹脂210、汎用発泡樹脂220、ガスバリア樹脂230からなることとしているが、これに限定されず、ガスバリア性能の高い材料で複合化してもよく、平面パネル100にアルミ箔、アルミフィルム、アルミ板を貼り合せてもよい。
【0082】
さらに、鉄またはガラス等を複合化させてもよい。複合化の方法としては、接着、蒸着、融着など何でもよい。また、複合化は押出成形中に行ってもよく、後加工で行ってもよい。
【0083】
以上のように、完全な密閉中空部200を有する平面パネル100を形成することができるため、断熱効率の低下を防止することができる。すなわち、シール部または栓部が存在しないため、外気が侵入するおそれがなく、外気の流れによる熱交換を防止でき、栓部との嵌合寸法が不要となるため、厚みを薄くすることもできる。また、基本的に押出成形で製造することができるため、コスト向上を抑制することができ、連続した大量生産も可能である。
【0084】
本発明においては、密閉中空部200が『密閉中空部』に相当し、平面パネル100、100a、円筒パイプ400が『樹脂製品』に相当し、少なくとも、
図13の工程および押出成形機510、金型520が『押出工程』に相当し、少なくとも
図11、
図12、
図14、
図15およびプレス圧縮機530が『閉塞工程』に相当し、
図10から
図17が『密閉中空部を含む樹脂製品の生産方法』に相当し、
図16の破線内が『減圧空間内』に相当し、孔540が『孔』に相当し、ガスバリア樹脂230が『ガスバリア樹脂』に相当し、流体注入機550が『第1注入工程または第2注入工程』に相当する。
【0085】
また、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。