特許第6240009号(P6240009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240009電力管理システム、電力管理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240009
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電力管理システム、電力管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20171120BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20171120BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20171120BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20171120BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J13/00 301A
   G06Q50/06
   G06Q50/16
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-57994(P2014-57994)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-186277(P2015-186277A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】梅岡 尚
【審査官】 高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−143815(JP,A)
【文献】 特開2002−233077(JP,A)
【文献】 特開2013−169137(JP,A)
【文献】 特開2012−196123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q50/06,
G06Q50/16,
H02J3/00−7/12,
H02J7/34−7/36,
H02J13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家設備と貯えた電力を商用電力系統に逆潮流させることができる蓄電部電力需要家ごとに設けられ、前記需要家設備は、前記商用電力系統から解列された状態で自律運転可能な電力供給設備を含み、
該蓄電部から該商用電力系統に向かう第1接続線から分岐され、前記需要家設備に接続される第2接続線の電力の計測点に設けられ、前記第2接続線を介して、前記電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測する需要家設備電力計測部と、
前記需要家設備と前記蓄電部とが前記商用電力系統から遮断された状態で、前記電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量にする電力量算出部と
を備えることを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記電力量算出部は、前記蓄電部を前記商用電力系統から遮断した状態で、前記需要家設備電力計測部によって計測された電力量であって、前記第2接続線を介して前記電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量にすることを特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記蓄電部は、前記商用電力系統から受電した電力を充電し、
前記需要家設備電力計測部は、前記第2接続線を介して、前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測し、
前記電力量算出部は、前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量にることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記電力量算出部は、前記蓄電部を前記商用電力系統から遮断した状態で、前記需要家設備電力計測部によって計測された電力量であって、前記第1接続線側から負荷設備側に向かって供給される電力の前記第2電力量を、前記電力需要家が買電する電力の電力量にすることを特徴とする請求項3に記載の電力管理システム。
【請求項5】
商用電力系統から解列された状態で自律運転可能な電力供給設備を含む需要家設備と貯えた電力を前記商用電力系統に逆潮流させることができる蓄電部電力需要家ごとに設け、
該蓄電部から該商用電力系統に向かう第1接続線から分岐した第2接続線の電力の計測点に需要家設備電力計測部を設け、
前記第2接続線を介して電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測し、
前記電力供給設備と前記蓄電部が前記商用電力系統から遮断された状態で、前記電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量する
ことを特徴とする電力管理方法。
【請求項6】
前記蓄電部は、商用電力系統から受電した電力を充電し、
前記第2接続線は、前記電力需要家の需要家設備に接続され
前記需要家設備電力計測部は、前記第2接続線を介して前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測し、
前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量する
ことを特徴とする請求項5に記載の電力管理方法。
【請求項7】
蓄電部から商用電力系統に向かう第1接続線から分岐された第2接続線の電力の計測点に設けられた需要家設備電力計測部から、前記第2接続線を介して電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測するステップと、
電力需要家ごとに設けられた前記電力供給設備と前記蓄電部が前記商用電力系統から遮断され、前記電力供給設備に含まれて自律運転状態で発電する電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量するステップと
を含むことを特徴とするコンピュータにより実行可能なプログラム。
【請求項8】
前記需要家設備電力計測部から、前記第2接続線を介して前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測するステップと、
前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量するステップと
を含むことを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム、電力管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電などの自然エネルギーを利用した発電装置と蓄電池を備えたエネルギー管理システムが知られるようになっている。また、複数の電力需要家からなるコミュニティにおいて電力管理を行う電力管理システムも知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、蓄電システムと太陽光発電設備とのシステムを備えることにより、電力需要家の太陽光発電設備から発生する余剰電力を複数の蓄電システムに貯めておき、必要時にその電力を放電して使えることが示されている。
また、一般的に、電気事業者と電力需要家との間の電力需給契約における電力料金は、商用電力系統からの受電点に対応させて設けられた積算電力量計の計測値に基づいて算出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−030334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の積算電力量計を用いた一般的な電力量の計測方法では、受電した電力は当該電力需要家の負荷で消費され、太陽光発電設備などで発電した電力の一部が電気事業者に供給されることを前提としており、蓄電システムに蓄えた電力を電力需要家が提供する際の電力量の計測方法ではない。また、特許文献1には、複数の電力需要家からなる区域内において、蓄電システムを用いて電力を融通することが示されているが、電力需要家が融通する電力量を計測する方法について記載されていない。そのため、上記のように、複数の電力需要家からなる区域内において、特許文献1のような蓄電システムを用いて電力を融通しようとしても、対価を算出するための電力量を計測することができないという問題がある。
【0005】
上述の課題を鑑み、本発明は、蓄電池から商用電力系統に電力を融通する場合に、融通した電力量の対価を算出するための電力量を測定できる電力管理システム、電力管理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様による電力管理システムは、需要家設備と貯えた電力を商用電力系統に逆潮流させることができる蓄電部電力需要家に設けられ、前記需要家設備は、前記商用電力系統から解列された状態で自律運転可能な電力供給設備を含み、該蓄電部から該商用電力系統に向かう第1接続線から分岐され、前記需要家設備に接続される第2接続線の電力の計測点に設けられ、前記第2接続線を介して、前記電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測する需要家設備電力計測部と、前記需要家設備と前記蓄電部とが前記商用電力系統から遮断された状態で、前記電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量にする電力量算出部とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記電力管理システムにおいて、前記電力量算出部は、前記蓄電部を前記商用電力系統から遮断した状態で、前記需要家設備電力計測部によって計測された電力量であって、前記第2接続線を介して前記電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量にすることを特徴とする。
【0008】
上記電力管理システムにおいて、前記蓄電部は、前記商用電力系統から受電した電力を充電し、前記需要家設備電力計測部は、前記第2接続線を介して、前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測し、前記電力量算出部は、前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量にことを特徴とする。
【0009】
上記電力管理システムにおいて、前記電力量算出部は、前記蓄電部を前記商用電力系統から遮断した状態で、前記需要家設備電力計測部によって計測された電力量であって、前記第1接続線側から負荷設備側に向かって供給される電力の前記第2電力量を、前記電力需要家が買電する電力の電力量にすることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様による電力管理方法は、商用電力系統から解列された状態で自律運転可能な電力供給設備を含む需要家設備と貯えた電力を前記商用電力系統に逆潮流させることができる蓄電部電力需要家に設け、該蓄電部から該商用電力系統に向かう第1接続線から分岐した第2接続線の電力の計測点に需要家設備電力計測部を設け、前記第2接続線を介して電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測し、前記電力供給設備と前記蓄電部が前記商用電力系統から遮断された状態で、前記電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量することを特徴とする。
【0011】
上記電力管理方法において前記蓄電部は、商用電力系統から受電した電力を充電し、前記第2接続線は、前記電力需要家の需要家設備に接続され、前記需要家設備電力計測部は、前記第2接続線を介して前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測し、前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様によるプログラムは、蓄電部から商用電力系統に向かう第1接続線から分岐された第2接続線の電力の計測点に設けられた需要家設備電力計測部から、前記第2接続線を介して電力供給設備から前記第1接続線側に向かう方向に供給される電力の第1電力量を計測するステップと、電力需要家ごとに設けられた前記電力供給設備と前記蓄電部が前記商用電力系統から遮断され、前記電力供給設備に含まれて自律運転状態で発電する電力供給設備から供給され前記蓄電部に蓄電させる電力の前記第1電力量を、前記電力需要家が売電する電力の電力量するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
上記プログラムにおいて前記需要家設備電力計測部から、前記第2接続線を介して前記第1接続線側から前記電力需要家の負荷設備に向かう方向に供給される電力の第2電力量を計測するステップと、前記第2電力量を前記電力需要家が買電する電力の電力量するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力需要家側に設けた蓄電池から商用電力系統に電力を融通する場合に、融通した電力量に応じた対価を算出するための電力量を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態における想定されるケースと、そのケースに対応する電力購入量及び電力販売量の計算式を示す説明図である。
図3】本発明の第1の実施形態において想定されるケースに対応する電力の流れを示す説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態において想定されるケースに対応する電力の流れを示す説明図である。
図5】本発明の第1の実施形態における電力料金の算出処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施形態における課金の対象にする電力量を算出する処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示すブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態における想定されるケースに対応する電力購入量及び電力販売量の計算式を示す説明図である。
図9】本発明の第2の実施形態において想定されるケースに対応する電力の流れを示す説明図である。
図10】本発明の第2の実施形態における電力料金の算出処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第2の実施形態における課金の対象にする電力量を算出する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示すブロック図である。本実施形態における電力管理システムは、例えば、一定範囲の区域における複数の電力需要家(以下、単に「需要家」という。)に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などといわれるものに対応する。なお、このような電力管理システムは、例えば、商用電力系統2に係る電気事業者(上位の電気事業者)から電力の供給を受け、需要家に電力を小売りする電気事業者(小売事業者)によって運用されるものであってもよい。以下の説明において、このような電力管理システムを用いて需要家に電力を小売りする電気事業者のことを、単に小売事業者といい、小売事業者に電力を供給する電気事業者のことを上位の電気事業者という。また、需要家が小売事業者等から電力を購入する場合を「買電」といい、需要家が小売事業者等に電力を売る場合を「売電」という。また、上位の電気事業者側と小売事業者側のことを区別することなく総じて示す場合、需要家施設の「外部」ということがある。
【0017】
本実施形態の電力管理システム100は、図1において電力管理区域1として示す一定範囲の区域における需要家施設10ごとの電気設備を対象として電力管理を行う。需要家施設10は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。
商用電力系統2からの電力を需要家施設10毎に分配するように系統電力線3が構成されており、これらの需要家施設10には、それぞれ、商用電力系統2からの電力が系統電力線3を介して供給される。
【0018】
需要家施設10の例えば外壁には、系統電力電力量計51、電力経路分岐部52、需要家設備電力量計53が設置される。また、需要家施設10の外側に、蓄電システム54が設けられる。また、系統電力電力量計51と電力経路分岐部52との間に、自動開閉器56が設けられる。
【0019】
系統電力電力量計51は、系統電力線3から入出力される電力を計測する電力量計である。系統電力電力量計51は、系統電力線3側から受電する電力(順潮流)と共に、系統電力線3側に送電する電力(逆潮流)を計測できる。系統電力電力量計51の計測値は、ネットワーク70を介して、通信により電力料金算出部72に転送できる。系統電力電力量計51の計測値を電力料金算出部72に転送する際には、電力量の計測値と共に、どの需要家の電力量かを識別するために、メータIDが送られる。
【0020】
系統電力電力量計51は、ある時間間隔で、電力量の計測値を記録する構成とされている。一般的には、30分間隔に、電力量の計測値が記録され、30分前に記録された電力量の計測値との差分が当該30分間の積算電力量になる。0時〜24時まで30分間隔での順潮流、逆潮流の電力量の計測値が記録される。
【0021】
なお、系統電力電力量計51は、系統電力線3側から受電する電力(順潮流)の電力量計と、系統電力線3側に送電する電力(逆潮流)の電力量計とを、別々に設けるようにしても良い。また、系統電力電力量計51の計測値は、PLC(電力線通信)で電力料金算出部72に転送しても良い。なお、この通信に用いる方式に制限はなく、一般的な通信方式を利用することができる。
【0022】
蓄電システム54は、余剰電力を蓄積し、また、蓄積した電力を放電して出力する。蓄電システム54に使用する蓄電池としては、例えばリチウムイオン電池などの各種電池を採用することができる。蓄電システム54には、交流の充電電力を直流に変換し、また、直流の放電電力を商用電力系統と同じ電圧、周波数、相数の交流に変換する回路が含まれる。蓄電システム54は、蓄電システム制御部60の制御の下、予め定められた一定の電力量で充電するCP(Constant Power)充電モードや、予め定められた一定の電力量で放電するCP(Constant Power)放電モード、需要家の負荷63が消費する電力量の変動に追従する電力量で放電する負荷追従モード、余剰電力の電力量の変動に追従する電力量で充電する余剰電力追従モードなどが設定できる。なお、区域内の少なくとも1以上の需要家施設10に蓄電システム54が設置されているものとする
【0023】
自動開閉器56は、商用電力系統2からの電力の供給を、商用電力系統2の状態などに応じて遮断する。自動開閉器56を遮断状態にして、系統電力線3との電力系路とを切り離すことで、商用電力系統2を停電させるような事故が生じた場合に、その事故のの事故点に電力を供給することなく安全性を担保できる。例えば、商用電力系統2の停電の検出は、発電設備62や蓄電システム54などに設けられた単独運転検出機能や系統保護機能、低電圧検出リレーなどで検知することができる。これらの停電検出の方法によって停電が検出された後に発せられる信号に連動させて、自動開閉器56を遮断させることができる。このように商用電力系統2の停電時には、商用電力系統2から遮断された状態になるが、需要家単体で電力の自給自足を可能にする。
【0024】
電力経路分岐部52は、系統電力線3側に送受電する経路(第1接続線)を需要家施設10内に引き込む場合に、系統電力線3側に送受電する経路(第1接続線)を、蓄電システム54に充放電する経路と、需要家施設10内に送受電する経路(第2接続線)とに分岐する。需要家施設10内に送受電する経路(第2接続線)の先には、負荷63が接続される。電力経路分岐部52を介して、他の需要家施設10に向けて電力を供給する経路を形成できる(以下、需要家施設ごとの説明をする場合、需要家施設10に代えて「需要家施設11」という。)。需要家施設11では、この電力を、需要家施設11における負荷63に供給したり、需要家施設11における蓄電システム54に蓄電したりすることができる。
【0025】
需要家設備電力量計53は、需要家施設10の電力を積算する電力量計である。需要家設備電力量計53は、需要家施設10の電力線引き込み口と、電力経路分岐部52との間の計測点に設けられる。需要家設備電力量計53は、外部から受電する電力(順潮流)と共に、外部に送電する電力(逆潮流)を計測できる。需要家設備電力量計53の計測値は、ネットワーク70を介して、通信により電力料金算出部72に転送できる。需要家設備電力量計53の計測値を電力料金算出部72に転送する際には、電力量の計測値と共に、どの需要家の電力量かを識別するために、メータIDが送られる。
【0026】
なお、需要家設備電力量計53は、外部から受電する電力(順潮流)の電力量計と、外部に送電する電力(逆潮流)の電力量計とを、別々に設けるようにしても良い。また、需要家設備電力量計53の計測値は、PLC(電力線通信)で電力料金算出部72に転送しても良い。なお、この通信に用いる方式に制限はなく、一般的な通信方式を利用することができる。
【0027】
需要家施設10内には、電力経路分岐部61と、発電設備62と、負荷63と、蓄電システム制御部60が設けられる。
【0028】
電力経路分岐部61は、需要家施設10内の電路(以下、単に「電力経路」という。)を分岐する。電力経路分岐部61は、分電盤64に繰り込まれている。電力経路分岐部61は、外部からの電力を負荷63に供給するように電力経路を形成することができる。また、電力経路分岐部61は、発電設備62により発生された電力を負荷63に供給するように電力経路を形成することができる。また、電力経路分岐部61は、発電設備62からの電力を外部に出力するように、電力経路を形成することができる。
【0029】
発電設備62は、需要家施設10側で発電する設備である。発電設備62としては、太陽光発電、燃料電池、ガスエンジン発電機などが想定される。一つの需要家施設10に複数の発電設備62があっても良く、又は、複数の種類の発電設備があっても良い。発電設備62には、発電設備62の電力を、商用電力系統と同じ電圧、周波数、相数の交流に変換する回路が含まれる。
【0030】
負荷63は、需要家施設10において、電力を消費する機器や設備などを一括して示したものである。負荷63としては、照明器具、冷蔵庫、テレビ、冷暖房器具等、各種の電化製品が含まれる。
【0031】
蓄電システム制御部60は、蓄電システム54の制御を行う。また、蓄電システム制御部60は、融通区域内電力管理部71とネットワーク70を介して通信可能な状態に接続されている。蓄電システム制御部60は、融通区域内電力管理部71から受信した蓄電システムの充放電の計画に従って、充電・放電の開始や停止を指示したり、充電・放電電力の電力量を指示したりするなどの指令を蓄電システム54に伝達し、蓄電システム54を動作させる。
【0032】
なお、蓄電システム制御部60は、例えば、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)のゲートウェイに組み込むようにしても良い。また、蓄電システム制御部60は、需要家施設10の外に設けるようにしても良い。
【0033】
融通区域内電力管理部71は、ネットワーク70を介して、各需要家施設10の蓄電システム制御部60と接続される。ネットワーク70としては、既存のインターネット網を利用することなどが考えられる。融通区域内電力管理部71は、少なくともその電力管理区域1における、充電又は放電する需要家施設10の蓄電システム54を決定し、充放電の計画又は、充電・放電の開始や停止を蓄電システム制御部60に指令する機能を有する。蓄電システム制御部60への指令内容は、この他、充電・放電電力や充放電モードなども考えられる。
【0034】
電力料金算出部72は、各需要家施設10の系統電力電力量計51及び需要家設備電力量計53の計測値を取得できる。電力料金算出部72は、系統電力電力量計51で計測された電力量の計測値と、需要家設備電力量計53で計測された電力量の計測値とから、需要家施設10における電力購入量及び電力販売量を決定する。そして、電力料金算出部72は、求められた電力購入量及び電力販売量に、予め決められた単価を乗算することで課金額を決定する。なお、電力料金算出部72は、HEMSゲートウェイに組み込まれていても良いし、電力管理システム100内の何れかの装置にこの機能を有するように構成することなども考えられる。
【0035】
本実施形態では、各需要家施設10内の発電設備62と、需要家施設の外に設けられた蓄電システム54を利用して、一定範囲の区域における複数の需要家に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理する電力管理システムが構築される。この実施形態では、蓄電システム54が外にあるので、蓄電システム54のメンテナンス等を需要家の家内に入らずに行うことができ、家人の都合や工事日程に束縛されずに、メンテナンス等を行うことができる。なお、蓄電システム54の置き場としては、需要家の住宅の敷地、店舗との敷地や屋根等が考えられる。また、蓄電システム54の所有権としては、各需要家が持ち主となる場合と、サービス事業者が持ち主となることが考えられる。なお、蓄電システム54や発電設備62は、全ての需要家施設10に存在しなくても良い。
【0036】
次に、本発明の第1の実施形態での電力料金の算出について説明する。本実施形態では、需要家施設10の外部に、蓄電システム54が設置される。そして、複数の需要家施設10からなる電力管理区域1において、電力がやり取りされる。本実施形態における電力料金算出部72では、このような電力管理区域1に属する需要家施設10に対して、公平性の高い電力料金算出を行っている。
【0037】
次に、本実施形態における電力料金の算出について説明する。上述のように、本実施形態では、複数の需要家施設10からなる電力管理区域1において、電力が融通される。本実施形態における電力料金算出部72では、このような電力管理区域1に属する需要家施設10に対して、公平性の高い電力料金算出を行っている。
【0038】
図1に示したような電力管理システム100では、各需要家施設10の蓄電システム54に充電される電力は、当該需要家施設10の発電設備62で発電された電力であるとは限られない。また、蓄電システム54から放電される電力は、当該需要家施設10の負荷63で使われるとは限られない。例えば、図1に示すように構成した電力管理システム100では、需要家施設10の発電設備62によって発電された電力に余剰電力が生じた場合、その余剰電力は、系統電力線3を経由して、別の需要家施設10(11)に送られ、別の需要家施設10(11)の負荷(負荷63に相当)で使用され、若しくは、別の需要家施設10(11)の蓄電システム(蓄電システム54に相当)に充電される可能性がある。また、需要家施設11の発電設備62によって発電された電力に余剰電力が生じた場合、その余剰電力は、系統電力線3を経由して、当該需要家施設10に送られ、当該需要家施設10の負荷63で使用され、若しくは、当該需要家施設10の蓄電システム54に充電される可能性がある。このことを考慮すると、系統電力電力量計51の電力量だけで電力料金を算出する方法では、余剰電力がどこにどの程度供給されたかの情報さえ正確に掌握することができず、系統電力電力量計51の電力量だけで電力料金を算出したとても、算出された電気料金の信頼度が低くなることから、公平性の高い電力料金を得ることができない。
【0039】
そこで、本実施形態では、蓄電システム54に蓄電された時点で、需要家から小売事業者等の電気事業者等に売電したと考えて、売電した電力料金を算出している。
ここで、比較のため本実施形態と異なる一般的な場合を例示する。一般的な場合には、需要家施設10の需要家は、当該需要家施設10の発電設備62や蓄電システム54を物理的に所有しており、蓄電システム54の物理的な所有者と、蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者とを区別して考えることはない。
これに対して、本実施形態では、公平性の高い電力料金を算出できるように、蓄電システム54の物理的な所有者と、蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者とを区別して考えている。そして、蓄電システム54に蓄電される電力については、蓄電システム54の物理的な所有者とは無関係に、蓄電システム54に電力が蓄電された時点で、電力売買があったと考える。ここで、蓄電システム54の物理的な所有者と蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者が異なる場合を例示する。例えば、蓄電システム54の物理的な所有者が需要家であり、蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者は、他の需要家や電気事業者(小売事業者)である場合が挙げられる。また、蓄電システム54の物理的な所有者と蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者が同一となる場合を例示する。例えば、蓄電システム54の物理的な所有者と、蓄電システム54に蓄電されている電力の利用権の所有者の双方が、同一の電気事業者(小売事業者)である場合が挙げられる。
【0040】
すなわち、本実施形態では、需要家は、当該需要家施設10の蓄電システム54に電力を充電する場合も、系統電力線3を介して、当該需要家施設10から別場所に電力を送電した場合も、同様に、これらの電力は、売電されたものとする。そして、蓄電システム54に充電された電力は、蓄電システム54の物理的な所有者を問わず、例えば、電気事業者に売電されたものとする。また、需要家は、当該需要家施設10の蓄電システム54から放電された電力を使う場合も、系統電力線3を介して、別場所からの電力を受電する場合も、同様に、その電力は買電されたものとする。
【0041】
以上のような考え方に基づき、本実施形態では、系統電力電力量計51の他に、需要家設備電力量計53が需要家施設10に設置され、公平性の高い電力売買量を算出できるようにしている。
以下、図2から図4を参照して、想定されるケース毎に、電力購入量及び電力販売量の算出について説明する。
【0042】
図2は、想定されるケースと、そのケースに対応する電力購入量及び販売量の計算式とを示す説明図である。ここで、k1は、系統電力電力量計51で計測される順潮流(系統電力線3側から受電する電力)の電力量計測値である。k2は、系統電力電力量計51で計測される逆潮流(系統電力線3側に送電する電力)の電力量計測値である。h1は、需要家設備電力量計53で計測される順潮流(外部から受電する電力)の電力量計測値である。h2は、需要家設備電力量計53で計測される逆潮流(外部に送電する電力)の電力量計測値である。Pは、需要家と、小売事業者等の電気事業者との間で売電又は買電する電力量である。図3図4は、図2に示す想定されるケースに対応する電力の流れを示す説明図である。
【0043】
図2に示すように、蓄電システム54に、系統電力線3を介して入力される別場所からの電力と発電設備62の余剰電力とを蓄電システム54の充電電力とする場合には、売電となり、売電の電力量Pは、「P=h2」として求められる(ケース(1))。なお、このとき、負荷63は、当該需要家施設10の発電設備62により賄われる。
【0044】
図3(A)は、ケース(1)における電力の流れを説明するものである。このケース(1)では、蓄電システム54に電力を充電しているので、売電である。蓄電システム54に充電される電力は、系統電力線3を介して入力される別場所からの電力と発電設備62の余剰電力である。蓄電システム54の電力と系統電力のとは同じ所有者なので、発電設備62からの余剰電力だけが、売電量となる。したがって、売電される電力量Pは、
P=h2
として求められる。
【0045】
次に、図2に示すように、発電設備62の余剰電力と、蓄電システム54の放電電力を系統電力線3を介して別場所で使う場合には、売電となり、売電の電力量Pは、「P=h2」として求められる(ケース(2))。
【0046】
図3(B)は、ケース(2)における電力の流れを説明するものである。このケース(2)では、系統電力線3には、発電設備62の余剰電力と蓄電システム54の放電電力とが送られる。蓄電システム54の電力と系統電力とは同じ所有者なので、売買にはならない。発電設備62からの余剰電力だけが、売電量となる。したがって、売電される電力量Pは、
P=h2
として求められる。
【0047】
次に、図2に示すように、系統電力線3を介して入力される別場所からの電力で蓄電システム54を充電し、負荷63は、発電設備62からの電力と別場所からの電力とで賄う場合には、買電となり、買電の電力量Pは、「P=h1」として求められる(ケース(3))。
【0048】
図3(C)は、ケース(3)における電力の流れを説明するものである。このケース(3)では、外部からの電力を受電しているので、買電である。図3(C)に示すように、系統電力線3を介して別場所から送られてくる電力量は、蓄電システム54の蓄電にも使用されるが、別場所から送られてくる系統電力と蓄電システム54に送られる電力量は、所有者が同じなので、考慮する必要はない。需要家施設10で受電する電力だけが、買電量となる。したがって、買電される電力量Pは、
P=h1
として求められる。
【0049】
次に、図2に示すように、蓄電システム54から放電される電力を系統電力線3を介して別場所で使う場合には、買電となり、買電の電力量Pは、「P=h1」として求められる(ケース(4))。なお、このとき、負荷63は、蓄電システム54からの電力と当該需要家施設10の発電設備62により賄われる。
【0050】
図4(A)は、ケース(4)における電力の流れを説明するものである。このケース(4)では、蓄電システム54からの電力を受電しているので、買電である。蓄電システム54からの電力は、需要家施設10側に送られる電力と別場所に送る電力になるが、蓄電システム54から別場所に送る電力は、所有者が同じなので、考慮する必要はない。したがって、買電される電力量Pは、
P=h1
として求められる。
【0051】
次に、図2に示すように、負荷63を、発電設備62からの発電電力と、系統電力線3を介して入力される別場所からの電力で賄う場合には、買電となり、買電の電力量Pは、「P=h1」として求められる(ケース(5))。
【0052】
図4(B)は、ケース(5)における電力の流れを説明するものである。このようなケース(5)では、外部からの電力を受電しているので、買電である。買電される電力量Pは、
P=h1
として求められる。
【0053】
次に、図2に示すように、発電設備62で発電された余剰電力を、蓄電システム54で充電し、且つ、系統電力線3を介して別場所でも使う場合には、売電となり、売電の電力量Pは、「P=h2」として求められる(ケース(6))。
【0054】
図4(C)は、ケース(6)における電力の流れを説明するものである。ケース(6)では、蓄電システム54に充電をし、且つ、外部の電力を供給しているので、売電となる。系統電力線3を介して別場所に送る電力も、蓄電システム54に充電する電力も区別しないで考えることから、売電のための電力量Pは、
P=h2
として求められる。
【0055】
次に、図5図6を参照して、電力料金算出部72による電力料金の算出処理について説明する。図5は、電力料金算出部72による電力料金の算出処理を示すフローチャートである。
【0056】
図5に示すように、電力料金算出部72は、ネットワーク70を介して、需要家施設10の系統電力電力量計51の電力量を取得し(ステップS1)、需要家設備電力量計53の電力量を取得する(ステップS2)。そして、電力料金算出部72は、図2に示した算出式に基づいて、課金の対象にする電力量を算出し(ステップS3)、この課金の対象にする電力量に所定値を乗算して、電力料金を算出する(ステップS4)。
【0057】
図6は、ステップS103における課金の対象にする電力量を算出する処理を示すフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、電力料金算出部72は、需要家設備電力量計53の計測値h1とh2とに基づいて、需要家設備電力量計53で計測された電力量が、外部から需要家施設10に供給される順潮流の電力であるか、需要家施設10から外部に供給する逆潮流の電力であるかを判定する(ステップS101)。ステップS101で、需要家設備電力量計53で計測された電力量が需要家施設10から外部に供給する逆潮流の電力であると判定された場合(ステップS101:No)には、電力料金算出部72は、系統電力電力量計51で計測された計測値k1とk2とに基づいて、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2から供給される順潮流の電力であるか、商用電力系統2に供給する逆潮流の電力であるかを判定する(ステップS102)。
【0059】
ステップS102において、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2から供給される順潮流の電力の場合(ステップS102:Yes)には、電力料金算出部72は、図2におけるケース(1)であるとして、売電の電力量Pを「P=h2」として算出する(ステップS103)。
【0060】
ステップS102において、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2に供給する逆潮流の電力の場合(ステップS102:No)には、電力料金算出部72は、図2におけるケース(2)であるとして、売電の電力量Pを「P=h2」として算出する(ステップS104)。
【0061】
ステップS101において、需要家設備電力量計53で計測された電力量が外部から需要家施設10に供給される順潮流の電力であると判定された場合(ステップS101:Yes)には、電力料金算出部72は、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2から供給される順潮流の電力であるか、商用電力系統2に供給する逆潮流の電力であるかを判定する(ステップS105)。
【0062】
ステップS105において、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2に供給する逆潮流の電力の場合(ステップS105:No)には、電力料金算出部72は、図2におけるケース(4)であるとして、買電の電力量Pを「P=h1」として算出する(ステップS106)。
【0063】
ステップS105において、系統電力電力量計51で計測された電力量が商用電力系統2から供給される順潮流の電力の場合(ステップS105:Yes)には、電力料金算出部72は、図2におけるケース(3)、(5)であるとして、買電の電力量Pを「P=h1」として算出する(ステップS104)。
以上に示したように、本実施形態の電力管理システム100は、電力需要家側に設けた蓄電システムから商用電力系統102に電力を融通する場合に、融通した電力量の対価を算出するための電力量を測定することができる。ここでは、需要家設備電力量計53の計測値h1とh2と、系統電力電力量計51で計測された計測値k1とk2とに基づいて、需要家が小売事業者に売電する場合を2つの場合に分け、需要家が小売事業者から買電する場合を2つの場合に分けた例を示した。このように4つの場合に分けたことにより、上位の電気事業者と小売事業者との間の電力の供給状況に応じて、小売事業者と需要家との間で売買される電力の単価を変えることができる。例えば、ステップS103とステップS104において算出された売電力量Pの単価を異なる値に設定することができる。このように場合分けに応じて、小売事業者と需要家との間で売買される電力に異なる単価を設定することにより、目的に応じた料金体系を定めることができ、その料金体系に基づいて課金することが容易になる。
なお、上記のフローチャートに示す手順は、さらに簡素化させることができる。例えば、図2に示すケース分けを売電と買電の2つに分けるように簡素化することにより、上記のステップS102とステップS105の処理を省略し、ステップS103とステップS104の処理を纏め、ステップS106とステップS107の処理を纏めることができる。この場合には、小売事業者と需要家との間で売買される電力の単価を予め定めておくことにより、当該売買される電力の電気料金を需要家設備電力量計53の計測値h1とh2に応じて課金することができる。なお、この場合、上位の電気事業者と小売事業者との間で売買される電力については、系統電力電力量計51で計測された計測値k1とk2に基づいて課金するようにしてもよい。
【0064】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態における電力管理システムの全体構成例を示す構成図である。本実施形態の電力管理システム100Aは、図7において電力管理区域101として示す一定範囲の区域における需要家施設110ごとの電気設備を対象として電力管理を行う。
商用電力系統2からの電力を需要家施設110毎に分配するように系統電力線103が構成されており、これらの需要家施設110には、それぞれ、商用電力系統102からの電力が系統電力線3を介して供給される。
【0065】
なお、系統電力電力量計151、電力経路分岐部152、需要家設備電力量計153、蓄電システム154、自動開閉器156、蓄電システム制御部160、電力経路分岐部161、発電設備162、負荷163、分電盤164、ネットワーク170、融通区域内電力管理部171、電力料金算出部172は、第1の実施形態における、系統電力電力量計51、電力経路分岐部52、需要家設備電力量計53、蓄電システム54、自動開閉器56,蓄電システム制御部60、電力経路分岐部61、発電設備62、負荷63、分電盤64、ネットワーク70、融通区域内電力管理部71、電力料金算出部72に対応しており、その説明を省略する。
【0066】
本実施形態の電力管理システム100Aは、第1の実施形態の電力管理システム100と異なり、開閉動作記憶部181を備える。開閉動作記憶部181には、需要家施設110内の各部と系統電力線103との間の接続状態が自動開閉器156により遮断された状態であるか否かを示す自動開閉器156の開閉情報が記憶される。この開閉情報がネットワーク170を介して、電力料金算出部172に転送される。電力料金算出部172は、この開閉動作記憶部181からの自動開閉器156の開閉情報を使って、需要家施設110における電力購入量及び電力販売量を決定できる。
【0067】
図8は、自動開閉器156がオフ(自動開閉器156が開かれて回路が遮断状態に保持されている状態)の場合において、想定されるケースと、そのケースに対応する電力購入量及び販売量の計算式とを示す説明図である。図9は、図8に示す想定されるケースに対応する電力の流れを示す説明図である。
例えば、商用電力系統102が停電したことにより自動開閉器156がオフにされた場合には、需要家施設110内で供給可能な電力を利用して、需要家毎に需要家単体で電力の自給自足を可能にする。
【0068】
図9に示すように、自動開閉器156がオフの場合には、需要家施設110は系統電力線103と切り離されている。例えば、上記の場合には、図9(A)に示すように、発電設備162からの余剰電力の売電先は、当該需要家施設110の蓄電システム154だけとなる。この電力量は、需要家設備電力量計153により電力量h2として計測される。本実施形態では、蓄電システム154が充電される時点で売電があったとされている。したがって、自動開閉器156がオフの場合には、売電される電力量Pは、
P=h2
として求められる。
【0069】
また、同じく上記の場合には、需要家が電力を購入できる相手先は、当該需要家施設110の蓄電システム154からだけとなる。蓄電システム154から放電された電力量は、需要家設備電力量計153で計測値h1として計測される。したがって、自動開閉器156がオフの場合には、買電される電力量Pは、
P=h1
として求められる。
【0070】
図10は、電力料金算出部172による電力料金の算出処理を示すフローチャートである。
【0071】
図10に示すように、電力料金算出部172は、ネットワーク170を介して、需要家施設110の系統電力電力量計151の計測値を取得し(ステップS201)、需要家設備電力量計153の計測値を取得する(ステップS202)。また、電力料金算出部172は、ネットワーク170を介して、自動開閉器156の開閉情報を取得する(ステップS203)。そして、電力料金算出部172は、取得した自動開閉器156の開閉情報から、自動開閉器156がオフかオンか否かを判定する(ステップS204)。
【0072】
ステップS204で、自動開閉器156がオンの場合には、各計測値に基づいて、開閉器オン時の課金の対象にする電力量を算出する(ステップS205)。この開閉器オン時の課金の対象にする電力量の算出は、図6に示した第1の実施形態に示す処理と同様であり、その説明を省略する。ステップS204で、自動開閉器156がオフの場合には、各計測値に基づいて、開閉器オフ時の課金の対象にする電力量を算出する(ステップS206)。ステップS205又はステップS206で、課金の対象にする電力量が算出された後、電力料金算出部172は、この電力量に所定値を乗算して、電力料金を算出する(ステップS207)。
【0073】
図11は、ステップS206における開閉器オフ時の課金の対象にする電力量を算出する処理を示すフローチャートである。以下に示す処理は、自動開閉器156がオフであることから、上位の電気事業者と小売事業者との間で電力の供給が行われない条件の基で実施される。
【0074】
電力料金算出部172は、需要家設備電力量計153で計測された電力量が外部(小売事業者)から需要家施設10に供給される順潮流であるか、需要家施設10から外部(小売事業者)に供給する逆潮流であるかを判定する(ステップS301)。外部(小売事業者)から需要家施設10に供給される順潮流であると判定された場合(ステップS301:Yes)には、電力料金算出部172は、買電の電力量Pを、「P=h1」として算出する(ステップS302)。需要家施設10から外部(小売事業者)に供給する逆潮流であると判定された場合(ステップS301:No)には、電力料金算出部172は、売電の電力量Pを、「P=h2」として算出する(ステップS303)。
【0075】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態では、停電時に、自動開閉器156がオフした場合にも、電力の購入又は販売量を計算できる。
【0076】
なお、上述の第2の実施形態では、開閉動作記憶部181は、自動開閉器156の開閉情報を記憶しているが、自動開閉器156をオン/オフする条件や指令信号等の情報を記憶するようにしても良い。また、自動開閉器156より系統電力線103側の系統電源の電圧を計測し、この系統電源の電圧が所定電圧に満たない時間を開閉動作記憶部181に記憶しても良い。
【0077】
以上に示したように、本実施形態の電力管理システム100Aは、電力需要家側に設けた蓄電システムから商用電力系統102に電力を融通する場合に、融通した電力量の対価を算出ための電力量を測定することができる。なお、電力管理システム100Aは、自動開閉器156を遮断状態にしている期間に発電設備162が発電した電力を一時的に蓄電システムに蓄えることができる。また、その蓄えた電力を自動開閉器156の遮断状態が解除された後に、他の需要家に融通するための電力として利用することができる。これにより、自動開閉器156を遮断状態にしている期間の余剰電力を無駄なく利用することを可能にし、更に適正な課金方法で電力料金を算出することが可能になる。
【0078】
また、上記の電力管理システム100(100A)を適用することにより以下の効果を期待できる。例えば、蓄電システムに充電可能な電力容量や太陽光発電設備の発電量によって、発電電力を蓄電システムに貯めきれない場合が、電力需要家ごとに生じる場合がある。一方で、太陽光発電設備で発電できる電力量に対し日中の電気消費量が多い電力需要家や、太陽光発電設備で発電できる電力量が比較的少ない電力需要家では、太陽光発電の余剰電力はほとんど発生せず、蓄電設備を設けたとしも十分な充電量を確保することができない場合がある。このような場合、太陽光発電が発電状態にある時間帯を除く時間帯に、太陽光発電によって発電した電力を利用することができない。このように、実際に設けられた設備の容量や各種条件により、太陽光発電で発電可能な電力が有効に利用されない場合に、これらの蓄電池に貯めきれないことが見込まれる余剰電力を、貯める電力量に余裕がある蓄電システムを設けている電力需要家に送り、その蓄電システムに貯めることで無駄なく余剰電力を利用することができる。電力管理システム100(100A)はこのような場合の電力融通についても、その電力量を測定することができる。
【0079】
また、ある住戸で発電された太陽光発電電力の所有者は、通常、その太陽光発電設備の所有者である。この太陽光発電電力を他の住戸の蓄電システムに充電し、その電力を更に別の住戸で使用する場合、太陽光発電電力の所有者は、これを使用した住戸の住人から、提供した電力の対価を受けられると考えられる。このような場合にも、電力管理システム100(100A)を適用することで、太陽光発電電力の所有者は、提供した電力の対価を、提供した電力を使用した住戸の住人から受けることが可能になる。
また、以上の例は、二つの住戸間の電力融通であるが、もっと多くの住戸や住戸以外の店舗、マンション、オフィスビル、工場などとの間で蓄電池を利用した電力融通により、電力を融通し合える区域内において、電力をより有効に利用することが可能である。
【0080】
なお、電力管理システム100(100A)の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0081】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記の実施形態において蓄電システム54(154)を需要家の敷地などに配置するような構成を例示したが、配置する場所に制限はなく他の需要家の敷地などに配置してもよい。ただし、上記の実施形態と異なる場所に蓄電システムを配置した場合には、蓄電システム54(154)がない構成になる。例えば、上記の実施形態と異なる場所として、系統電力電力量計51(151)を越えて商用電力系統2側や、他の需要家の敷地などが挙げられる。蓄電システム54(154)がない構成では、蓄電システムに貯えた電力がある状態であったとしても、商用電力系統2が事故などで停電した場合には、その蓄えた電力を当該需要家の負荷63(163)に供給させることができなくなるという制限があるが、蓄電システムを配置する場所を適宜選択することができる。
また、上記の実施形態においては、電力管理システムは、商用電力系統2に係る電気事業者(上位の電気事業者)から電力の供給を受け、需要家に電力を小売りする電気事業者(小売事業者)によって運用される場合を例示した。このように、上記の小売事業者が上位の電気事業者と異なる場合に限られず、小売事業者は、上位の電気事業者であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,101:電力管理区域
100,100A:電力管理システム
2,102:商用電力系統
3,103:系統電力線
10,110:需要家施設
51,151:系統電力電力量計
52,152:電力経路分岐部
53,153:需要家設備電力量計(需要家設備電力計測部)
54,154:蓄電システム(蓄電部)
56,156:自動開閉器
60,160:蓄電システム制御部
61,161:電力経路分岐部
62,162:発電設備(電力供給設備)
63,163:負荷
70,170:ネットワーク
71,171:融通区域内電力管理部
72,172:電力料金算出部(電力量算出部)
181:開閉動作記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11