(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240011
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】長尺材のロール曲げ装置及び曲げ加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 5/14 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
B21D5/14 B
B21D5/14 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-62077(P2014-62077)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182121(P2015-182121A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 朋夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 新
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭35−008473(JP,B1)
【文献】
特開2013−226568(JP,A)
【文献】
米国特許第04154077(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/14
B21D 7/024
B21D 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の先方に配置したロール曲げ装置であって、
前記押出機から押し出されたアルミニウム押出材からなるワークの一方の側面に配置した旋回中心ローラー及び駆動ローラーと、
前記ワークの他方の側面であって前記旋回中心ローラーと駆動ローラーとの間に配置した曲げ込みローラーとを備え、
前記駆動ローラーは前記旋回中心ローラーの軸部(O)を旋回中心とした旋回角度(θ1)を旋回制御する旋回制御手段を有し、
前記曲げ込みローラーは前記旋回中心ローラーの軸部(O)を旋回中心とした旋回角度(θ2)を旋回制御する旋回制御手段を有し、
前記旋回中心ローラーの回転速度に対して駆動ローラーの回転速度が速くなるように制御するテンション力付加制御手段を有することを特徴とするロール曲げ装置。
【請求項2】
押出機から押し出されたアルミニウム押出材からなるワークの一方の側面に配置した旋回中心ローラー及び駆動ローラーと、
前記ワークの他方の側面であって前記旋回中心ローラーと駆動ローラーとの間に配置した曲げ込みローラーとを備え、
前記駆動ローラーは前記旋回中心ローラーの軸部(O)を旋回中心とした旋回角度(θ1)を旋回制御する旋回制御手段を有し、
前記曲げ込みローラーは前記旋回中心ローラーの軸部(O)を旋回中心とした旋回角度(θ2)を旋回制御する旋回制御手段を有し、
前記旋回角度(θ1)と(θ2)を調整しつつ、前記駆動ローラーの回転速度を旋回中心ローラーの回転速度より速くなるように制御することでワークにテンション力を付加しながら曲げ加工することを特徴とする長尺材の曲げ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺材のロール曲げに関する。
【背景技術】
【0002】
ローラーを3以上備えた3点ロール曲げ加工方法が知られている。
例えば、特許文献1にはワークを曲げロール1,2とセンターロール3との間に通した状態で曲げロール1,2をセンターロール3の外周面に沿って変位動せしめ、ワークをセンターロール3の外周形状に沿う曲がり形状に曲げ加工する技術を開示する。
しかし、このような曲げ加工技術にあっては、
図6に示すようにローラー101とローラー102との間にローラー103を押し込むように動くので、ワーク1の供給側1aがローラー103側に向けて曲がるように作用する。
このようにワークの供給角が変位すると長尺材の供給が安定せず、曲げ品質が安定しない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−9037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、曲げ品質に優れたロール曲げ装置及びそれを用いた曲げ加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るロール曲げ装置は、長尺材からなるワークの一方の側面に配置した旋回中心ローラー及び駆動ローラーと、前記ワークの他方の側面であって前記旋回中心ローラーと駆動ローラーとの間に配置した曲げ込みローラーとを備え、前記駆動ローラー及び曲げ込みローラーを旋回中心ローラーに対して旋回制御する旋回制御手段を有することを特徴とする。
この場合に長尺材に負荷される曲げ応力の中立軸を変化及び調整する目的で、旋回中心ローラーの回転速度に対して駆動ローラーの回転速度が速くなるように制御するテンション力付加制御手段を有するようにしてもよい。
【0006】
したがって、本発明に係る長尺材の曲げ加工方法は、長尺材からなるワークの一方の側面に配置した旋回中心ローラー及び駆動ローラーと、前記ワークの他方の側面であって前記旋回中心ローラーと駆動ローラーとの間に配置した曲げ込みローラーとを備え、駆動ローラーと曲げ込みローラーとを旋回中心ローラーに対してワークの曲げ曲率に対応するように旋回させながら曲げ加工することを特徴とする。
この場合にも駆動ローラーの回転速度を旋回中心ローラーの回転速度より速くなるように制御することでワークにテンション力を付加しながら曲げ加工してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る曲げ加工装置にあっては、曲げ深さに影響を受けることなく旋回中心ローラーに対して接線接続するように直線的に供給できるので、供給側に対する曲がりや反りの発生が抑えられる。
これにより、長尺材の供給ラインがコンパクト化,シンプル化が可能になり、例えば長尺材の押出装置との連続ライン化も可能である。
また、旋回中心ローラーにワークからの反発力が生じにくく、長尺材の旋回中心ローラーへの噛み込みも低減でき、さらにはアルミニウム押出材等の押出機から押し出される軟弱なワークであっても連続的に曲げ加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】駆動ローラー及び曲げ込みローラーを旋回中心ローラーに対して公転制御した例を示す。
【
図5】関連装置を組み込みユニット化した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る曲げ装置及び曲げ加工方法を以下、図面に基づいて説明する。
図1に3点ローラーの場合の各ローラーの動きを模式的に示す。
長尺材からなるワーク1の1方の側面に接触するように、旋回中心ローラー11と駆動ローラー12を配置し、ワーク1の他方の側面に接触するように曲げ込みローラー13を配置する。
実質的に3点ローラーであれば他のローラーが追加されていてもよい。
ワーク1は、旋回中心ローラー11及び駆動ローラー12と、曲げ込みローラー13との間を通すことになる。
ワーク1は、
図1の矢印で表現した方向に速度V
1にて供給する。
ワーク1の曲がり深さは、曲げ込みローラー13の押し込みにより決定されるが、曲げ深さに合せて駆動ローラー12が旋回中心ローラー11の軸部Oを旋回中心にして旋回角度θ
1の量を旋回制御する旋回制御手段を有する。
曲げ込みローラー13も旋回中心ローラーの軸部Oを旋回中心にして旋回角θ
2の量を旋回制御する旋回制御手段を有する。
また、本実施例では、旋回中心ローラー11の回転速度W
0よりも駆動ローラー12の回転速度W
1の方が速くなるように制御することで、ワークの曲げ部にテンション力が付加されるようにしたテンション力付加制御手段を有する。
このようにすると、ワークの曲げの曲率を変化させながら連続的に曲げ加工することもでき、例えばワーク1を押出機から押し出された押出材として連続生産も可能である。
また、エンコーダー等のワーク供給速度センサー14を設けて押出スピードに追随連続制御することもできる。
【0010】
次に旋回制御手段の例について説明する。
図2は、3つのローラー11〜13をテーブル20に配置し、旋回中心ローラー11の軸部Oがテーブル20の旋回中心になるようにこのテーブル20を制御した例である。
図3は、個々のローラーをそれぞれの駆動源11a,12a,13aを用いて回転又は/及び送り制御した例を示す。
図4は、旋回中心ローラー側に旋回制御の駆動源11b,11c,11dを設け、駆動源11cにてベルト又はチェン12bを介して駆動ローラー12を公転制御し、駆動源11dにてギヤ13bを介して曲げ込みローラー13を公転制御した例である。
図5は、アルミニウム押出材の押出機の先方に曲げ装置を配置し、矯正ローラー15,ガイドローラー16,温度センサー33,冷却手段32,ワークと同期移動するフライングソー31等の各種補助装置をテーブル20に組み込みユニット化した例を示す。
このように補助装置をテーブル20に組み込むと、連続的に曲げ加工しながら定尺切断できる。
【符号の説明】
【0011】
1 ワーク
1a ワーク
11 旋回中心ローラー
12 駆動ローラー
13 曲げ込みローラー