(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る封止用樹脂について、
図1および
図2を参照しつつ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る封止用樹脂の概略を示した断面図であり、封止用樹脂が電子部品を封止している状態を示している。
図2は、本発明の一実施形態に係る封止用樹脂の一部を拡大して示した断面図であり、樹脂および無機粒子の様子を示している。
【0011】
封止用樹脂1は、電子部品2を封止するものである。封止用樹脂1は、
図1に示すように、半田ボール等を用いて実装された電子部品2を覆うように配線基板3上に配されている。なお、
図1に示す状態では、封止用樹脂1は硬化した状態である。
【0012】
封止用樹脂1は、
図2に示すように、樹脂4と樹脂4中に充填された複数の無機粒子5とを有している。そして、樹脂4は、母材樹脂41および樹脂粒子42を有しており、無機粒子5は、第1無機粒子51および第2無機粒子52を有している。
【0013】
樹脂4は、例えば封止用樹脂1の5質量%以上30質量%以下を占めている。複数の無機粒子5は、例えば封止用樹脂1の70質量%以上95質量%以下を占めている。なお、
図2は、電子部品2を封止する前の状態を示している。
【0014】
封止用樹脂1を構成する樹脂4は、電子部品2を封止するものである。樹脂4は、熱硬化性樹脂からなる。樹脂4は、電子部品2の封止前は完全には硬化してない状態であり、電子部品2を封止するときに熱硬化させる。なお、樹脂4の熱伝導率は、例えば0.1W/(m・K)以上0.4W/(m・K)以下に設定される。
【0015】
樹脂4は、前述した通り、複合材料において主体となる素材であるマトリックス(母材)に相当する母材樹脂41および複合材料における分散材に相当する複数の樹脂粒子42を有している。すなわち、樹脂4は、母材樹脂41および母材樹脂41中に分散された複数の樹脂粒子42を有している複合材料である。
【0016】
母材樹脂41は、電子部品2を封止する主体となる素材である。母材樹脂41は、樹脂4の主要部になり、樹脂4に充填された複数の無機粒子5は、母材樹脂41に充填されている。母材樹脂41は、例えばエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等からなる。本実施形態では、母材樹脂41は、エポキシ樹脂で形成されている。母材樹脂41を形成するエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含んでいればよく、例えばビフェニル型、ビスフェノール型、グリシジルエステル型または多官能型等のエポキシ樹脂、あるいはこれらのエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせたエポキシ樹脂で形成される。
【0017】
母材樹脂41は、電子部品2を封止する前は未硬化の状態である。具体的には、電子部品2を封止する前の母材樹脂41の未硬化の状態は、いわゆるBステージの状態である。また、母材樹脂41が融解する温度は、例えば60℃以上120℃以下に設定される。なお、樹脂粒子42にも、紫外線等の照射によって硬化する光硬化樹脂を用いてもよい。
【0018】
樹脂粒子42は、後に詳述するように、第1無機粒子51同士の間隙の一部に存在して、無機粒子5の第2無機粒子52を第1無機粒子51同士の間隙の一部において密集させ
る機能を有する。樹脂粒子42は、例えば第1無機粒子51同士の間隙に1つ存在していたり、複数が疎らに存在していたりする。樹脂粒子42は、例えばエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等で形成される。本実施形態では、樹脂粒子42はエポキシ樹脂で形成されている。樹脂粒子42を形成するエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を含んでいればよく、例えばビフェニル型、ビスフェノール型、グリシジルエステル型または多官能型等のエポキシ樹脂、あるいはこれらのエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせたエポキシ樹脂で形成される。なお、樹脂粒子42にも、紫外線等の照射によって硬化する光硬化樹脂を用いてもよい。
【0019】
樹脂粒子42が融解する温度は、母材樹脂41が融解する温度よりも大きい。これにより、封止用樹脂1の製造過程において樹脂粒子42を塊状の部材として封止用樹脂1内に存在させることができる。樹脂粒子42が融解する温度は、例えば120℃以上180℃以下に設定されている。なお、樹脂粒子42が融解する温度は、樹脂粒子42の材料として分子量が母材樹脂41を形成した樹脂よりも大きいものを選択することによって、母材樹脂41が融解する温度よりも高くすることができる。
【0020】
無機粒子5は、封止用樹脂1の放熱性を向上させるものとして機能する。また、無機粒子5は、封止用樹脂1の熱膨張量を低減するものとしても機能する。無機粒子5は、前述した通り、第1無機粒子51および第2無機粒子52を有している。具体的には、無機粒子5は、母材樹脂41中に充填された、樹脂粒子42よりも粒径が大きい複数の第1無機粒子51と、第1無機粒子51同士の間隙に充填された、第1無機粒子51および樹脂粒子42よりも粒径が小さい複数の第2無機粒子52とを有している。
【0021】
第1無機粒子51は、封止用樹脂1の母材樹脂41中に充填されており、封止用樹脂1の放熱性を向上させるものである。第1無機粒子51は、樹脂4(母材樹脂41および樹脂粒子42)よりも熱伝導率が高く設定されている。すなわち、第1無機粒子51は、樹脂4よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。また、第1無機粒子51は、具体的には、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の材料で形成される。中でも、放熱性の観点からは酸化アルミニウムで形成されることが好ましい。上記材料の熱伝導率は、例えば1.3W/(m・K)以上300W/(m・K)以下の材料からなる。
【0022】
第2無機粒子52は、樹脂4(母材樹脂41および樹脂粒子42)よりも熱伝導率が高く設定されている。すなわち、第2無機粒子52は、樹脂4よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。また、第2無機粒子5は、具体的には、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の材料で形成される。中でも、放熱性の観点からは酸化アルミニウムで形成されることが好ましい。上記材料の熱伝導率は、例えば1.3W/(m・K)以上300W/(m・K)以下の材料からなる。
【0023】
第1無機粒子51は、例えば球状の粒子である。第1無機粒子51の平均粒径は、例えば1μm以上55μm以下である。
【0024】
第2無機粒子52は、第1無機粒子51同士の間隙において封止用樹脂1の母材樹脂41中に充填されており、第1無機粒子51とともに封止用樹脂1の放熱性を向上させるものである。第2無機粒子52は、例えば球状の粒子である。第2無機粒子52の平均粒径は、例えば10nm以上300nm以下に設定される。
【0025】
なお、これらの第1無機粒子51および第2無機粒子52の平均粒径は、粒子の上下(Z)方向に沿った断面について、SEM等を用いて20個以上50個以下の第1無機粒子
51または第2無機粒子52を含むように拡大した断面を観察し、この拡大した断面において各粒子の最大径を測定し、その最大径の平均値を算出することによって求められる。
【0026】
母材樹脂41中に充填された複数の第1無機粒子51同士間の間隙には、第2無機粒子52が充填されている。さらに複数の第1無機粒子51同士間の間隙には、第2無機粒子52とともに樹脂粒子42も存在している。すなわち、第2無機粒子52が充填された第1無機粒子51同士間の間隙に、さらに樹脂粒子42が存在していることから、第1無機粒子51同士間の間隙には樹脂粒子42に押し出されるようにして第2無機粒子52が密集している。
【0027】
電子部品2の封止前の封止用樹脂1が前述の構成を有していることによって、電子部品2の封止後においても、封止用樹脂1は、複数の第1無機粒子51同士の間隙において第2無機粒子52を密集させることができる。すなわち、封止用樹脂1で電子部品2を封止した後においても、複数の樹脂粒子42が粒状のまま存在したり、または樹脂溜まりを形成したりして、依然として複数の第1無機粒子51同士の間隙において第2無機粒子52を密集させることができる。その結果、密集した複数の第2無機粒子52を熱伝導の経路として、複数の第1無機粒子51同士間での熱伝導を良好にすることができる。したがって、電子部品2が発する熱を封止用樹脂1を介して放出しやすくなる。
【0028】
樹脂粒子42は、電子部品2を封止する前は未硬化の状態であることが好ましい。この場合、母材樹脂41と樹脂粒子42との接着強度を向上させることができ、電子部品2の封止時に母材樹脂41と樹脂粒子42との界面に気泡が入ることを抑制することができる。なお、母材樹脂41と樹脂粒子42との接着が確保されていれば、電子部品2を封止する前において、樹脂粒子42は硬化した状態でも構わない。この場合、樹脂粒子42が既に硬化していることから、封止用樹脂1の製造過程における温度制御が容易になる。
【0029】
樹脂4における母材樹脂41の含有割合は、樹脂4における樹脂粒子42の含有割合よりも大きい。これにより、電子部品2の封止時において、封止用樹脂1の流動性を確保することができ、電子部品2を確実に封止することができる。樹脂4における母材樹脂41の含有割合は、例えば樹脂4の70質量%以上97質量%以下に設定される。樹脂4における樹脂粒子42の含有割合は、例えば樹脂4の3質量%以上30質量%以下を占めている。
【0030】
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組合せ等が可能である。
【0031】
前述した本発明の実施形態では、複数の無機粒子5を無機絶縁材料から形成した場合を記載したが、複数の無機粒子5を例えば炭化珪素または金属材料等の高熱伝導の材料から形成してもよい。なお、この場合には、封止用樹脂1の絶縁性を確保するために、複数の無機粒子5に表面を酸化させた絶縁膜(図示せず)を形成してもよい。
【0032】
<封止用樹脂の製造方法>
以下、本発明の実施形態に係る封止用樹脂1の製造方法について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0033】
(1)樹脂4(母材樹脂41および樹脂粒子42)を準備する。母材樹脂41として、未硬化状態の熱硬化性樹脂を準備する。具体的には、母材樹脂41は、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂等からなる。本実施形態では、母材樹脂41としてエポキシ樹脂を使用する。母材樹脂41は、例えば塊状または粉末状に形成される。母材樹脂41が粉末状で
ある場合は、後の工程において複数の無機粒子5と混合しやすくなる。
【0034】
また、樹脂粒子42として、未硬化状態の熱硬化性樹脂からなる粒子を準備する。樹脂粒子42が未硬化状態の樹脂である場合には、後の工程において、母材樹脂41と樹脂粒子42との接着強度を向上させることができる。樹脂粒子42は、具体的には、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂等で形成される。本実施形態では、樹脂粒子42は、エポキシ樹脂で形成されている。なお、本実施形態では、樹脂粒子42として未硬化状態の樹脂を使用しているが、母材樹脂41との接着を確保できれば、樹脂粒子42は硬化した状態の樹脂であっても構わない。
【0035】
樹脂粒子42は、母材樹脂41よりも融解する温度が高く設定されている。樹脂粒子42は複数ある。すなわち、複数の樹脂粒子42が集合することで、樹脂の粉末となっている。その結果、後の工程において、樹脂粒子42は、封止用樹脂1内において、母材樹脂41中に塊状の部材として存在することができる。なお、樹脂粒子42が融解する温度は、樹脂粒子42の材料として分子量が母材樹脂41の材料よりも大きいものを選択することによって、母材樹脂41が融解する温度よりも高くすることができる。
【0036】
本実施形態では、樹脂粒子42は、加熱によって母材樹脂41よりも先に熱硬化し始める。すなわち、樹脂粒子42は、母材樹脂41よりも融解する温度は高いが、熱硬化が開始する温度は低い材料からなる。これにより、後の工程において、母材樹脂41よりも先に樹脂粒子42を熱硬化させ始めることができ、樹脂粒子42を粒状の塊として存在させやすくなる。なお、このとき、後の工程において、樹脂粒子42は母材樹脂41に比べて流動化しないまま熱硬化することになる。なお、熱硬化が開始する温度は、樹脂4に混ぜる硬化剤などを選択することによって調整することができる。
【0037】
樹脂粒子42の大きさは、本工程においては、当初は第1無機粒子51の粒径よりも大きく設定される。樹脂粒子42は、第1無機粒子51と比較してヤング率が小さい材料であることから、後の混合工程において例えば複数の無機粒子5(複数の第1無機粒子51および複数の第2無機粒子52)に削られたり、または一部が流動化したりして小さくなる。しかしながら、樹脂粒子42の大きさが第1無機粒子51の粒径よりも大きいことで、後の工程を経ても、樹脂粒子42を塊状の部材として存在させることができる。そして、樹脂粒子42の大きさを第1無機粒子51よりも小さく、かつ第2無機粒子52よりも大きくすることができる。その結果、第1無機粒子51同士の間隙の一部において複数の第2無機粒子52とともに存在することによって、その間隙において複数の第2無機粒子52を密集させることができる。なお、このとき、本工程において、樹脂粒子42の大きさは、当初は例えば0.02mm以上1mm以下に設定される。また、本工程において、樹脂粒子42の量等を調整することによって、第1無機粒子51同士の間隙に存在する樹脂粒子42の数や大きさなどを調整することができる。
【0038】
(2)複数の無機粒子5(第1無機粒子51および第2無機粒子52)を準備する。複数の無機粒子5は、従来周知の方法で準備する。例えば、第1無機粒子51に酸化ケイ素からなるものを用いる場合であれば、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)などのケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させることによって、複数の第1無機粒子51を作製することができる。また、例えば、第2無機粒子52に酸化ケイ素からなるものを用いる場合であれば、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)などのケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を低減しつつ800℃以上1500℃以下に加熱することによって、複数の第2無機粒子52を作製することができる。
【0039】
(3)樹脂4および複数の無機粒子5を混合する。具体的には、樹脂4および複数の無
機粒子5を硬化剤および硬化促進剤と共に例えばミキサ内で混ぜ、その後に母材樹脂41、複数の樹脂粒子42および複数の無機粒子5を加熱しつつ混練することによって混合する。
【0040】
樹脂4等の加熱温度は、母材樹脂41が軟化する温度以上樹脂粒子42の樹脂粒子が融解する温度以下に設定される。これにより、ミキサ内において、樹脂粒子42の形状を保ちつつ母材樹脂41を軟化させて、母材樹脂41内に複数の無機粒子5および複数の樹脂粒子42を充填することができる。これにより、母材樹脂41内の充填物が密に配置されて、母材樹脂41中の第1無機粒子51同士の間隙に第2無機粒子52を充填し、さらにその間隙に樹脂粒子42を存在させることができる。
【0041】
なお、母材樹脂41等を加熱する温度は、母材樹脂41が融解する温度でも構わない。この場合には、母材樹脂41の溶融粘度をさらに低くすることができる。その結果、母材樹脂41等の混合作業を効率的に行なうことができる。なお、このとき、母材樹脂41等の加熱温度は、例えば60℃以上120℃以下の温度に設定される。
【0042】
なお、硬化剤としては、例えばメチルテトラヒドロフタル酸無水物またはアミドアミン等を用いることができる。また、硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、イミダゾールまたはテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等を用いる。また、本工程では、添加剤として、ワックス、消泡剤、レベリング剤、着色剤、難燃助剤または酸化防止剤等を添加してもよい。また、本工程においては、無機粒子5の分散性を向上させるために、シランカップリング剤等を使用して表面処理してもよい。
【0043】
樹脂4および複数の無機粒子5の加熱は、母材樹脂41が半硬化の状態(いわゆるBステージ)になるまで行なう。また、このとき、本実施形態の樹脂粒子42は、母材樹脂41よりも先に熱硬化が開始しているため、母材樹脂41よりも熱硬化が進んだ状態である。なお、樹脂粒子42は、完全に硬化していないことが好ましい。これにより、後の電子部品を封止する過程において、母材樹脂41と樹脂粒子42との接着強度を向上させることができる。なお、樹脂粒子42は、いわゆるBステージとCステージとの間の状態にある。
【0044】
(4)工程(3)で混合した原料を冷却して固化させる。次いで、この固化物を、この粉末をプレスして任意のサイズのタブレットを作製する。以上のようにして、封止用樹脂1が製造される。
【0045】
(5)最後に、工程(1)〜工程(5)で製造された封止用樹脂1を使用して電子部品2を封止する。具体的には、封止用樹脂1を、配線基板3に実装された電子部品2とともに金型内に配する。その後、例えばトランスファー成形、射出成形、圧縮成形等によって、金型を例えば150℃以上で加熱して、封止用樹脂1の母材樹脂41を流動化させて電子部品2を封止用樹脂1で覆い、この封止用樹脂1を熱硬化させることによって、電子部品2を封止することができる。