(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記消去部は、用紙の搬送路を挟んで配置した熱源とプレスローラを有し、前記プレスローラと前記熱源との間に前記用紙を搬送して前記用紙の両面を加熱する請求項1記載の画像消去装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る画像消去装置(以下、消去装置と呼ぶ)の構成図である。消去装置10は、操作ボタン及び表示部を含む操作パネル11と、給紙部12、読取部であるスキャナ13を備える。さらに消去装置10は、第1〜第5の搬送路141〜145と、第1の排紙カセット15及び第2の排紙カセット16を備えている。
【0011】
各搬送路141〜145は、用紙を搬送するため複数の搬送ローラ17を有し、複数の搬送ローラ17は、それぞれモータによって駆動する。また搬送路142と搬送路144に用紙の搬送を振り分けるため、ゲート18を設けている。さらに搬送路142には消去部20を設けている。
【0012】
第1の搬送路141は、給紙部12から用紙Sをスキャナ13に搬送する。第2の搬送路142は、用紙Sをスキャナ13から消去部20に向けて矢印A方向に搬送する。第3の搬送路143は、用紙Sを消去部20から再度スキャナ13に搬送する。第4の搬送路144は、用紙Sをスキャナ13から第1の排紙カセット15に搬送する。第5の搬送路145は、用紙Sをスキャナ13から第2の排紙カセット16に搬送する。
【0013】
第1の排紙カセット15は、例えば画像を消去処理した後に再利用が可能な用紙を保存するリユースカセット(Reuse Cassette)である。第2の排紙カセット16は、再利用が難しく、通常、廃棄してリサイクルする用紙(再利用不可の用紙)を保存するリジェクトカセット(Reject Cassette)である。以下の説明では、第1の排紙カセット15をリユースカセット15、第2の排紙カセット16をリジェクトカセット16と呼ぶ。
【0014】
図1の消去装置10は、概ね以下の消去処理を行う。先ず、操作部11によって、用紙Sの消色及び読み取りのモードが選択される。その後、給紙部12から第1の搬送路141を介して読取部であるスキャナ13に用紙Sが搬送される。スキャナ13は、第1のスキャナ131と第2のスキャナ132を含み、用紙Sの両面を読み取る。スキャナ13は画像をスキャンし、用紙Sの画像を消色する前に画像データを読み取る。さらにスキャナ13は、用紙Sの印字率及びプリント状況を読み取る。
【0015】
スキャナ13で読み取ったプリント状況から、用紙Sの状態を読取り、用紙Sに破れやシワ等の変形、欠損がある場合は、再利用不可と判断する。再利用不可と判断された用紙Sは、第5の搬送路145を介してリジェクトカセット16に搬送される。また印字率が高い用紙は消色時にカールしやすいため、再利用不可と判断し、リジェクトカセット16に搬送する。また用紙Sに印字されている画像の色を判別し、消色性の色剤以外で印字された用紙もリジェクトカセット16に搬送する。消色性の色剤としては、消色性のトナーや消色性のインクがあるが、以下の説明では、消色性のトナーを使用して画像を形成した例を説明する。
【0016】
そして、破れやシワがなく、消色性のトナーで印字された用紙Sが、第2の搬送路142により消去部20に搬送される。消去部20は、ヒートローラ(熱源)21とプレスローラ22を含む第1の消去部と、プレスローラ23とヒートローラ24(熱源)を含む第2の消去部を有し、ヒートローラ21とプレスローラ22の間、及びプレスローラ23とヒートローラ24の間に用紙Sを搬送して加熱する。ヒートローラ21、24は、内部に熱源を備え、外周に温度検知部を備えている。熱源としては、例えばランプを用いている。
【0017】
消去部20に搬送された用紙Sは、消去部20を通過する際に加熱され、用紙Sに形成された画像を熱によって消色する。消去部20は、画像形成時よりも高い温度、例えば150〜200℃で用紙Sを加熱加圧して、用紙Sの画像を消色する。即ち、用紙Sの画像形成には消色可能なトナーが用いられ、トナーは所定の温度に達することで消色される。したがって、所定の温度で加熱する消去部20に予め設定した搬送速度で用紙Sを搬送させることにより消色することができる。
【0018】
消去部20を通過した用紙Sは第3の搬送路143により、再度スキャナ13に搬送する。スキャナ13は、消色性のトナーで形成された画像が確実に消色されたかを確認するため、再度プリント状況を読み取り、用紙Sを分別する。
【0019】
スキャナ13で再度、読取った結果、画像が消去され再利用可能と判断した用紙Sはリユース用紙として、第4の搬送路144を介してリユースカセット15に搬送される。またスキャナ13で読み取ったプリント状況から、画像領域に非消色性のトナーで形成した画像、或いは手書きした画像が残っている用紙や、更には破れやシワを生じた用紙は、再利用不可と判断して第5の搬送路145を介してリジェクトカセット16に搬送される。
【0020】
図2は、消去装置10の制御系を示すブロック図である。消去装置10は、各部を統括的に制御するシステム制御部100を備える。システム制御部100は、例えばコントローラであるCPU101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリーメモリ)103、HDD(ハードディスクドライブ)104、ネットワークインターフェース(I/F)105等を含む。
【0021】
またシステム制御部100には、操作パネル11、給紙部12、スキャナ13、消去部20、搬送部140がバス106を介して接続している。操作部11は、表示器111を含み、搬送部140は、各搬送路141乃至145に配置されている複数の搬送ローラ17を回転させるためのモータ(図示せず)を含む。
【0022】
CPU101は、ROM103に記憶されている制御プログラムを実行することにより各種の処理機能を実現する。RAM102は、ワーキングメモリとして機能するメインメモリである。ROM103は、消去装置10の動作を制御し、かつ各種の処理機能を実現するための制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。例えば、ROM103は、用紙をリユースするかリジェクトするかを判断する基準情報や、色判別の色相角の情報、消去部20の設定温度情報などを保持する。
【0023】
HDD104は、データ記憶用の大容量のメモリであり、各種の情報を記憶することができる。例えば、スキャナ13で読み取った画像データ等を記憶する。ネットワークインターフェース(I/F)105は、ローカルエリアネットワークを介して画像形成装置や他の外部装置(PC等)と通信を行うインターフェースである。
【0024】
図3は、消去装置10のCPU101が行う判別機能を図式化したものである。判別機能をCPU101とは異なるデバイス、例えばASIC(Application Specified IC)等の素子で実現させてもよい。以下、判別機能を判別部130として説明を続ける。判別部130は、スキャナ13に接続されたシェーディング補正部131と、色変換部132と、色相判別部133とを含む。
【0025】
スキャナ13は、CCDラインセンサを含み、画像を読み取ってRGB信号を生成する。シェーディング補正部131は、CCDの感度ムラや光源のムラに起因する画像の濃淡や色のズレなどを補正する。色変換部132は、シェーディング補正後の画像データ(RGB信号)を、例えば、明度と色相及び彩度で色を表すLab信号に変換する。Labは、CIEの定めた規格化された色を表す尺度であり、Labを用いることで、色をより正確に判別することができる。
【0026】
図4は、Labのカラーモデルを概略的に示す説明図である。Labは、
図4に示すように、色の明るさを表す「明度」(上下方向の軸)と、明度を表す軸Lに対しての距離で色の鮮やかさを現す「彩度」、及び色空間を表す「色相」の3つのパラメータで表現することができる。a,bで色相と彩度を表現し、aは赤〜緑の軸、bは黄〜青の軸を表し、彩度は周辺に行くほど高くなる。明度Lの値は0〜100で表され、0は黒、100は白を表す。またa,bの値は、128〜−128で表される。
【0027】
色相判別部133は、用紙に印字された画像(文字、図形等)の色を判別するものであり、色変換部132によってLabに変換した信号に対して、a,b信号を用いて色相角θを算出する。色相角は、(1)式にて算出する。
【数1】
【0028】
図5は、ab色空間上の色相角の説明図である。a,b信号を用いて色相角を算出することにより、
図5に示す様に、θ1〜θ2の角度の範囲であれば、青色と判別することができる。但し、トナーが付着していない用紙の白地(以下、下地部と呼ぶ)は判別から除外する。
【0029】
例えば、青色の判別では、L値が80以上であれば下地部と判別する。またa,bがともに±10以内(
図5の円Bで示す範囲)は、黒又はグレーと判別し、色相角がθ1〜θ2の範囲内であれば青色(消色性トナー)と判別する。そして、それぞれ判別された画素をカウントとして、青色とその他の色を判別する。
【0030】
一般的に、消色性トナーは青色が用いられている。一方、通常のカラー複写機では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのトナーが用いられ、モノクロ複写機ではモノクロトナーが用いられている。本実施形態では、消色性トナーが青色単色であることを利用し、用紙に付着しているトナーの色を判別することで、消色性トナーで画像が形成されたか、非消色性のトナーで画像が形成されたかを判別する。
【0031】
判別結果に基づいて、消色性のトナーによって印字された用紙S(第1の用紙)のみが消去部20に搬送され、画像の消去が行われる。また非消色性のトナーによって印字された用紙S(第2の用紙)は、消去部20に搬送されることなく、第5の搬送路145を介してリジェクトカセット16に搬送される。
【0032】
したがって、通常の非消色性のトナーによって印字された用紙Sが消去部20に搬送されることがないため、消去部の熱によってトナーが溶けるということもない。よって、消去部20のプレスローラ22、23やヒートローラ21、24、又は用紙の剥離爪に説けたトナーが付着し、紙詰まりが発生するという問題を解消することができる。
【0033】
次に一実施形態に係る消去装置10における用紙Sの画像消去の動作と用紙Sの搬出動作について説明する。
【0034】
図6は、CPU101の制御のもとに行われる用紙Sの画像消去と排出動作を示すフローチャートである。
【0035】
図6の動作A1(Act.1)でCPU101は、給紙部12に用紙Sを給紙するように指示をする。CPU101は、動作A2で、搬送部140に対して第1の搬送路141を介して用紙Sをスキャナ13へ搬送するように指示をする。CPU101は、動作A3で、スキャナ13に用紙Sを読取るように指示をする。動作A3では、破れやシワのある用紙について調べる。破れやシワのある用紙は再利用できないので調べる必要がある。次にCPU101は、動作A4で、用紙Sに定着している消耗剤であるトナーの種類を調べる。即ち、
図5で説明した色相角についての判別処理をCPU101は実行する。
【0036】
CPU101は、動作A5で、動作A3または動作A4の結果に基づいて用紙Sの画像を消去するか否かの判別を行う。例えば、動作A3に基づいて破れやシワのある用紙の画像は消去しない。また動作A4に基づいて画像が非消色性のトナーで印字されていると判別した用紙の画像は消去しない。CPU101は、消去しない用紙Sと判別した場合、即ち動作A5の判断がNO場合、動作A11に移行して、搬送部140に対しリジェクトカセット16へ搬送するように指示をする。
【0037】
一方、用紙Sが破れやシワが無く、かつ、画像が消色性のトナーで印字されていると判別した場合、即ち動作A5の判断がYESの場合、CPU101は、動作A6で、用紙Sを第2の搬送路142を介して消去部20に送るように指示をする。消去部20に送られてきた用紙Sは、消去部20で画像の消去が行われる。画像が消去されたあと、CPU101は、動作A7で、用紙Sを第3の搬送路143を介して再度スキャナ13に搬送するように指示をする。CPU101は、動作A8で、スキャナ13に用紙Sを再度読取るように指示をする。CPU101は、動作A9で用紙Sが再利用可能か否かを判断する。即ち、動作A9では、用紙Sの破れやシワの有無を判断する。
【0038】
破れやシワが無く、画像が消去された用紙は動作A9で再利用可能と判断されると、即ちA9でYESの場合、CPU101は、動作A10で搬送部140に対して用紙Sを第4の搬送路144を介してリユースカセット15に搬送するように指示をする。また破れやシワがある用紙は、再利用不可と判断して、CPU101は、動作A11で、搬送部140に対して用紙Sを第5の搬送路145を介してリジェクトカセット16へ搬送するように指示をする。動作A5で消し残りの可能性がある用紙Sは、消去部20へ搬送させる前にリジェクトカセット16へ搬送するよう指示しているので、動作A9の判断では、画像の消し残り用紙は存在しない。
【0039】
図7は、
図6の動作A4において、用紙の画像を消去するか否かを判断する際の色判別の動作を示すフローチャートである。
【0040】
給紙部12から用紙が供給されると、スキャナ13は用紙Sを読取り、RGB信号を生成し、CPU101へ送信する。CPU101によって、RGB信号は、シェーディング補正部131を介して色変換部132に供給され、色変換部132は、シェーディング補正後の画像データをLabの信号に変換する。
【0041】
色相判別部133は、Labに変換した信号をもとに、ab信号を用いて色相角θを算出する。色相角θの算出は、(1)式を用いて行う。色相角に変換することにより、
図5に示す様に、θ1〜θ2の角度の範囲であれば、青色と判別できる。以下、色相判別部133は、CPU101と協働して色判別を行う。
【0042】
即ち、トナーが付着していない用紙の白地部は判別から除外する必要がある。そこでCPU101は、動作A21において、L値が80以上か否かを判別する。CPU101は、L値が80以上であれば、即ち動作A21の判断がYESであれば、下地部と判別して動作A27に進む。またL値が80以内、即ち動作A21の判断がNOであれば、動作A22進む。
【0043】
CPU101は、動作A22で、a,bの値をもとに、a,bがともに±10以内か否かを判別する。a,bがともに±10以内、即ち動作A22の判断がYESであれば、CPU101は、黒又はグレーと判別して動作A25に進み、黒又はグレーの画素をカウントする。また動作A22でa,bの値が±10より大きいと判別した場合、即ち動作22の判断がNOの場合、CPU101は、動作A23で色相角を判別する。動作A23において、色相角がθ1〜θ2の範囲内であれば、CPU101は、青色(消色性トナーで印字)と判別し、動作A26で、青色と判別された画素をカウントする。
【0044】
動作A23において、色相角がθ1〜θ2の範囲外、即ち動作A23の判断がNOであれば、青色以外の色と判別し、動作A24で、青色以外の画素をカウントする。
【0045】
動作A24、A25,A26のカウント結果をもとに動作A27では、1ページ分のカウントが終わったか否かを判断する。終わっていなければ動作A21に戻って同様の動作を繰り返す。1ページ分のカウントが終わっていると判断したならば、このフローの処理を抜ける。
【0046】
尚、動作A24,A25では、予めしきい値(Th1)を設定し、カウント値がTh1以上であるならば、読み取った用紙は、消色せずにリジェクトカセット16に排紙する。また、動作A26では、予めしきい値(Th2)を設定する。動作A24,A25のカウント値がTh1未満で、かつ動作A26でのカウント値がTh2画素以上であれば、消色するものとして、第2の搬送路142を介して用紙を消去部20に搬送し、消色を行う。
【0047】
しきい値Th1、Th2を設定することで、例えば小さな消し残りがある場合や、消色性のトナー画像の面積がごく小さい場合などは、無視することができる。
【0048】
尚、判別に用いる色相角θ1、θ2は、消色性トナーの色に合わせて決定し、しきい値Th1、Th2は、用紙に印字された画像の印字率などにより決定し、例えば印字率が高いときはしきい値Th1、Th2を高くし、印字率が低いときはしきい値Th1、Th2を低くするとよい。
【0049】
以上述べたように、用紙の画像読取り時に消色可能な用紙であるかを判断することで、消色性トナーで印字された用紙のみを消去部に搬送することができる。したがって、消色性トナー以外で印字された用紙を消去部に搬送することを防ぎ、消色部にトナーが付着するのを防止することができる。
【0050】
尚、本実施形態では、用紙が消色性のトナーで印字されているか非消色性のトナーで印字されているかを判別するため、色変換部130でLab変換する例を説明したが、RGB信号を用いて判別することもでき、図示した例に限るものではない。
【0051】
また消去装置10の機能を画像形成装置(MFP等)の内部に構成しても良い。この場合、画像形成装置を消去装置と定義する。なお、画像形成装置の定義は、熱によって溶ける性質であるトナーなどの消耗剤を用いて画像を形成する場合だけである。熱によって溶ける性質でないインクを用いて画像を形成する装置は、本実施形態では画像形成装置の範疇に含まない。
【0052】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。