(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、産業界で広く用いられているインバータ装置では、パルス幅変調(PWM)方式を用いた可変電圧可変周波数(以下、可変電圧可変周波数をVVVFと称する。)制御により直流電力を交流電力に変換する方式が広く利用されている。
【0003】
例えば鉄道車両の分野では、VVVFインバータ装置を用いて電動機を駆動することで車両を加速させると共に、ブレーキ時に電動機を発電機として動作させることにより運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、架空電車線(以下、架空電車線を電車線と称する。)へ戻す回生ブレーキ制御が広く用いられている。
【0004】
また、蓄電装置を応用して、回生ブレーキにより得られる回生電力を充電することで蓄電し、この蓄電電力を車両の加速時の電力に活用したり、補機用電源、例えば空調装置や車内の照明用の電力に活用したりして、更なる省エネルギー化を実現させる技術が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、蓄電電力を補助電源装置の電力として活用するシステムが開示されている。特許文献1に開示されているシステムは、回生電力貯蔵装置に補助電源装置が直列に接続されており、回生電力貯蔵装置及び補助電源装置の電流リップル低減用リアクトルを共用し、回生電力貯蔵装置の電力貯蔵部を介して補助電源装置へ直流電力を供給する構成を有する。
【0006】
このような構成とすることにより、補助電源装置と回生電力貯蔵装置と並列に接続する場合に比べ、電流リップル低減用リアクトルを省略でき、さらに、回生電力貯蔵装置から補助電源装置に電力を供給する場合に、回生電力貯蔵装置から放電するための整流器のスイッチング動作が不要になり装置を小型化することができる。また、補助電源装置の入力電源が電力貯蔵部となるため、安定した入力電源として補助電源装置に電力を供給することができ、電車線停電時や、整流器(DC−DC変換回路)の故障時にも補助電源装置に電力を供給することができる。
【0007】
また、電力変換装置およびDC−DC変換回
路は、一般に電力用半導体素子を用いたスイッチング素子で構成される。PWM方式による電力変換では、スイッチング素子のスイッチングにより直流電力を交流電力に変換するが、この電力変換の際に、高調波ひずみが発生することから、電力変換装置(インバータ回路)による高調波ひずみは、リアクトルとキャパシタからなるフィルタ回路で吸収するとともに、DC−DC変換回路による高調波ひずみも、リアクトルとキャパシタからなるフィルタ回路で吸収する構成とすることで、直流電車線への高調波ひずみの流入を防いでいる。
【0008】
また、上記した電力変換装置は、車両を加速する力行時に、直流電車線から集電装置を通して直流電力を入力し、リアクトル、キャパシタを介して電力変換装置(インバータ回路)に電力を供給した後、直流電力を三相交流電力に変換することで電動機を駆動し、車両を加速させる。
【0009】
また、車両を減速する回生ブレーキ時に、電動機より発生する回生電力を力行時と同経路により直流電車線に電力を戻すことで、回生電力は、同一線路上の他の車両の力行電力として用いられる。一方、上記の回生ブレーキ時において、電動機より発生した回生電力を蓄電装置により吸収し、補助電源装置の電力として電力を有効利用できる装置構成としている。とくに、直流電車線の負荷が小さく、直流電車線へ回生電力を戻せない軽負荷状態の場合、通常の電力変換装置(インバータ回路)は回生電流すなわち回生電力を絞り、空気ブレーキによりブレーキがかかる(軽負荷回生動作)が、この直流電車線へ戻せなくなった分の回生電力を蓄電装置により吸収することで、この軽負荷回生動作時の回生電力を有効利用することができる。
【0010】
また、特許文献2には、蓄電電力の出力側に補助電源装置を備えることが開示されており、DC−DC変換回路(昇降圧チョッパ)と、蓄電装置と、補助電源装置が並列に接続され、また、インバータとDC−DC変換回路(昇降圧チョッパ)は別ユニットとしてインバータの直流出力側で接続された構成となっている。特許文献2には、補助電源装置に接続される蓄電装置の入出力特性について開示されており、入出力特性は蓄電装置の蓄電量に対して一定の特性となっている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)本実施の形態の概要
まず、
図10を参照して、従来の電力変換装置について説明する。
図10に示す従来の電力変換装置は、直流電車線111、集電装置112、主開閉器113、充電抵抗114、開閉器115、直流リンク部116、電動機117、電力変換装置(インバータ回路)118、接触器119a〜119c、直流リップル低減用リアクトル120a、120c、フィルタコンデンサ121a〜121c、補助電源装置123、回生電力貯蔵装置124、DC−DC変換回路125、リアクトル126、接触器127及び蓄電装置128から構成される。
【0019】
図10に示す回路は、回生電力貯蔵装置124に補助電源装置123が直列に接続されており、回生電力貯蔵装置124及び補助電源装置123の電流リップル低減用リアクトル120cを共用し、回生電力貯蔵装置124の電力貯蔵部を介して補助電源装置123へ直流電力を供給する構成となっている。
【0020】
これにより、補助電源装置123と回生電力貯蔵装置124を直流リンク部116で並列に接続する場合に比べ、電流リプル低減用リアクトルを省略でき、さらに回生電力貯蔵装置124から補助電源装置123に電力を供給する場合に、回生電力貯蔵装置124から放電するための整流器のスイッチング動作が不要になり装置を小型化できる効果がある。また、補助電源装置123の入力電源が電力貯蔵部となるため、安定した入力電源として補助電源装置123に電力を供給することができ、電車線停電時や、整流器(DC−DC変換回路)の故障時にも補助電源装置に電力を供給することができる。
【0021】
ここで、電力変換装置(インバータ回路)118及びDC−DC変換回路125は、一般的に電力用半導体素子を用いたスイッチング素子で構成される。PWM方式による電力変換では、スイッチング素子のスイッチングにより直流電力を交流電力に変換する。この電力変換の際に、高調波ひずみが発生することから、電力変換装置(インバータ回路)118による高調波ひずみは、リアクトルとキャパシタからなるフィルタ回路で吸収するとともに、DC−DC変換回路125による高調波ひずみも、リアクトルとキャパシタからなるフィルタ回路で吸収する構成とすることで、直流電車線への高調波ひずみの流入を防いでいる。
【0022】
電力変換装置118は、車両を加速する力行時に、直流電車線111から集電装置112を通して直流電力を入力し、リアクトル120a、キャパシタ121aを介して電力変換装置(インバータ回路)118に電力を供給した後、直流電力を三相交流電力に変換することで電動機117を駆動し、車両を加速させる。
【0023】
また、車両を減速する回生ブレーキ時に、電動機117より発生する回生電力を前記力行時と同経路により直流電車線に電力を戻すことで、回生電力は、同一線路上の他の車両の力行電力として用いられる。また、回生ブレーキ時において、電動機117より発生した回生電力を蓄電装置128により吸収し、補助電源装置123の電力として電力を有効利用できる装置構成としている。
【0024】
直流電車線111の負荷が小さく、直流電車線111へ回生電力を戻せない軽負荷状態の場合、通常の電力変換装置(インバータ回路)118は回生電流すなわち回生電力を絞り、空気ブレーキによりブレーキがかかる(軽負荷回生動作)。この直流電車線111へ戻せなくなった分の回生電力を蓄電装置128により吸収することで、この軽負荷回生動作時の回生電力を有効利用することができる。
【0025】
また、上記したように、蓄電電力の出力側に補助電源装置を備え、DC−DC変換回路(昇降圧チョッパ)と、蓄電装置と、補助電源装置が並列に接続され、また、インバータとDC−DC変換回路(昇降圧チョッパ)は別ユニットとしてインバータの直流出力側で接続された構成としている電力変換装置もある。この電力変換装置において、補助電源装置に接続される蓄電装置の入出力特性は、蓄電装置の蓄電量に対して一定の特性となっている。
【0026】
しかし、上記した電力変換装置では、蓄電装置を受電するためのDC−DC変換回路や直流電車線と接続される側の入力部にフィルタ回路が必要であり、システム全体の機器サイズが大型化するという問題があった。また、蓄電装置の電力を補助電源装置の電源電力として使用する場合、蓄電装置の入出力特性は、回生電力を有効利用できる特性となっていないため、回生電力を有効利用することができないという問題があった。すなわち、上記した電力変換装置には、以下の4つの課題がある。
【0027】
図10の電力変換装置では、蓄電装置128を充電するためのDC−DC変換回路125や直流電車線111と接続される側の入力部にフィルタ回路が必要であり、システム全体の機器サイズが大型化する。また、インバータ回路118とDC−DC変換回路125のそれぞれの入力部にフィルタ回路があるため、これらのフィルタ回路の間で共振現象を起こし、大きな還流電流が流れる可能性がある。
【0028】
また、インバータと昇降圧チョッパを別ユニットとして接続した場合には、それぞれのユニットの入力部に入力電圧の変動を抑えるために少なくともキャパシタが必要となる。そこで、本実施の形態の第1の課題は、システム全体としての小型化を実現することを目的としている。
【0029】
また、蓄電装置の充電特性が低く、インバータからの回生電力を戻す先が無いときには、蓄電量に余裕があるにも関わらず回生電力を十分に回収することができず、回生電力を有効に利用することができない。特に、車両が電車の場合には、蓄電装置の充電特性が、停車中や惰行走行中に電車線から充電するときに急速に充電できる特性とはなっていない。車両の停車中や惰行中に急速に充電できないということは、限られた停車時間や惰行時間内で十分な充電ができず、補助電源装置の負荷が大きい場合、結果として蓄電量の低下を招き、補助電源装置の停電につながる。
【0030】
一方、蓄電量に余裕があるときに、積極的に充電するようにすることが必ずしも省エネにとって最適な動作とは限らない。例えば、補助電源装置の負荷が小さいときは、補助電源装置からの放電電力量が小さいため、蓄電装置の蓄電量は回生動作のたびに大きく上昇していき、蓄電量が大きくなり、結果的に回生電力を吸収できない状態となる。
【0031】
そこで、本実施の形態の第2の課題は、蓄電装置の充電特性を補助電源装置の負荷の大きさに応じた充電条件特性として、省エネ効果を上げることを目的としている。具体的に、補助電源装置の電源として、かつ、回生電力の有効利用のために使用される蓄電装置の充電条件を、補助電源装置に必要な電力量を確保しつつ、回生電力の吸収効果を十分に出してシステムの省エネ効果を上げる構成とする。
【0032】
また、補助電源装置の入力部に並列に接続されたキャパシタは、通常、容量が大きく、接触器の投入時に蓄電装置と接続された瞬間、蓄電装置の電圧が前記キャパシタに印加され、電力貯蔵部とキャパシタ間に過大電流が流れてしまう。そこで、本実施の形態の第3の課題は、この過大電流を防ぐ回路構成とし、かつ回路構成に応じた接触器の投入シーケンスとすることを目的としている。
【0033】
また、蓄電装置が故障等により開放し、電車線から補助電源装置の電力を供給する非常時には、DC−DC変換回路は定電圧制御を行うこととなる。そこで、本実施の形態の第4の課題は、蓄電装置の故障時にDC−DC変換回路が補助電源装置の負荷変動に追従する構成として、非常時でも安全に電力変換させることを目的している。
【0034】
(1−2)電力変換装置の構成
図1について、本実施の形態にかかる電力変換装置の主回路の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、電力変換装置は、直流電車線1、集電装置2、リアクトル3、インバータ回路(図中INVと表記)5とDC−DC変換回路6の一体ユニット21、電動機17、蓄電装置10、蓄電装置10と並列に接続されるキャパシタ8、リアクトル7、インバータ回路5とDC−DC変換回路6の一体ユニット21内、補助電源装置22などから構成される。
【0036】
一体ユニット21内には、キャパシタ4、DC−DC変換を行うためのスイッチング素子18a、18bなどが含まれる。また、一体蓄電装置23には、遮断器9a、9b、9c及び9d、抵抗19bも含まれる。
【0037】
補助電源装置(SIV)22内には、コンデンサ11、インバータ回路12、交流リアクトル13、交流コンデンサ14及びトランス15などが含まれる。補助電源装置22には、負荷16が接続される。統合制御装置31は、インバータ回路5やDC−DC変換回路6、蓄電装置10の一体蓄電装置23内の各装置と、補助電源装置22等を統括して制御する。
【0038】
図1に示す電力変換装置の動作例について説明する。まず車両が回生ブレーキにより減速する場合について説明する。
【0039】
回生ブレーキによって電動機17から発生する回生電力は、インバータ回路5とキャパシタ4からDC−DC変換回路6、リアクトル7、キャパシタ8、遮断器9c、9b、9aを介して蓄電装置10に充電される。蓄電装置10の充電特性を超える電力は、インバータ回路5とキャパシタ4、リアクトル3を介して、集電装置2から直流電車線1に出力される。蓄電装置10に蓄えられた電力は、遮断器9a、9b、9dを介して、補助電源装置22に供給される。
【0040】
補助電源装置22は、蓄電装置10の蓄電電力をキャパシタ11、インバータ回路12、交流リアクトル13、交流コンデンサ14、トランス15を介して、補機16に電力を供給する。統合制御装置31は、全体の状態を監視して、インバータ回路5を回生動作させたり、DC−DC変換回路6を降圧チョッパ動作させたり、蓄電装置10へ充電制御したり、補助電源装置22内のインバータ回路12を動作させたなど、各機器の制御を行う。
【0041】
なお、車両が長時間停車する場合など、蓄電装置10からの蓄電量が低下する場合には、直流電車線1から集電装置2、リアクトル3、キャパシタ4を介して、DC−DC変換回路6を降圧チョッパ動作させ、蓄電装置10へ充電制御して、蓄電装置10の蓄電量の低下を防ぐ。
【0042】
図1に示す回路構成において、インバータ回路5とDC−DC変換回路6を一体ユニット21で構成することにより、インバータ回路5とDC−DC変換回路6の配線を短くすることができ、インバータ回路5とDC−DC変換回路6の配線に含まれる配線インダクタンスを小さくすることができる。配線インダクタンスを小さくするための、一体ユニット21の機器構成例を
図2に示す。
【0043】
図2は、DC−DC変換回路6やインバータ回路5に代表される電力変換装置の機器構成の一例を示す斜視図である。
図2は、電力変換装置のキャパシタ51、スイッチング素子52、バスバー53及び54を示している。ここで、
図2のキャパシタ51は、
図1のキャパシタ4に相当し、
図2のスイッチング素子52は、
図1のスイッチング素子18a、18bとインバータ回路5を構成するスイッチング素子に相当し、一体ユニット21として構成したものが
図2である。
【0044】
図2に示すように、キャパシタ51とスイッチング素子52を直近に配置する構成とし、最短経路でバスバーで接続し、さらに電源の正極用のバスバー53と負極用のバスバー54を、絶縁確保の上、重ね合わせる構成として
いる。このような構成とすることにより、
図1における配線イダクタンスを含めたスイッチング回路のインダクタンスを、インバータ回路と同じ値程度に小さくすることを可能としている。
【0045】
上記構成によって、インバータ回路5とDC−DC変換回路6を別々のユニットで組み、電線で接続する場合に比べ、インバータ回路5とDC−DC変換回路6間の配線インダクタンスや、スイッチング素子を含めた回路のインダクタンスを、インバータ回路5とDC−DC変換回路6間を電線で接続する場合に比べ、数十〜数百分の一にすることができる。
【0046】
また、キャパシタ4と配線インダクタンスによる共振周波数を、インバータ回路5やDC−DC変換回路6の動作周波数よりも高い周波数に設定できる。このため、上記したような回生ブレーキ時に、インバータ回路5や、DC−DC変換回路6がスイッチング動作するが、これらのスイッチング動作周波数に対し、回路の共振周波数が十分に高く、インバータ回路5とDC−DC変換回路6の接続される直流部の電流や電圧の共振を防ぐことができる。
【0047】
さらに、回路のインダクタンスを小さくしたことで、DC−DC変換回路6のスイッチング素子18a、18bのスイッチング時におけるサージ電圧も抑制することができ、サージ電圧の電源回路重畳も少なくなる効果がある。また、インバータ回路5とDC−DC変換回路6間の配線インダクタンスを小さくすることにより、キャパシタを共用化することができる。キャパシタの共用化によって装置台数が削減した結果、冷却器を小型化して、システム全体の装置を小型化がすることができる。
【0048】
また、後述するキャパシタ4の電圧に応じて、蓄電装置10への充電条件を決定するために、キャパシタ4の電圧を統合制御装置31に入力している。このように、一体ユニットによるキャパシタ共通化と統合制御装置31による制御装置の統合化により、制御に使用する配線数を削減することができ、キャパシタ電圧を統合して扱うことで制御性能を向上させることができる。
【0049】
ところで、本実施形態では、
図3に示すように、DC−DC変換回路6の充電動作条件を補助電源装置22の負荷の大きさと、蓄電装置10の蓄電量とに応じて変化させる構成としている。
【0050】
蓄電装置10の必要動作時間を一定とすると、補助電源装置22が動作するために必要な蓄電装置10の蓄電量は、補助電源装置22の負荷の大きさにより変わってくる。上記第2の課題に示したように、回生電力を常に蓄電装置10に充電するようにするには、補助電源装置22の負荷が小さい場合、蓄電装置10の蓄電量がすぐに増加する。蓄電量が高い状態では、回生電力を吸収できず、軽負荷回生動作時に回生電力を吸収するという本構成による効果を十分に活かしきれない。
【0051】
このため、
図3に示すように補助電源装置22の負荷が小さいときは、蓄電量が低い段階から充電動作を開始するキャパシタ4の電圧Ecを高めに設定し、軽負荷回生動作に入る場合のみ充電動作させることで、軽負荷回生動作時の回生吸収効果を高めるようにしている。軽負荷状態になったか否かは、キャパシタ4の電圧検出値Ecを利用し、電圧が規定値よりも上昇した場合に軽負荷状態と判断することができる。
【0052】
また、補助電源装置22の負荷が大きいときは、蓄電装置10の必要動作時間を確保するため、蓄電量を高めにしておく必要がある。このため、蓄電量が高い範囲を除き電圧Ecがある程度低い状態から充電動作を可能としておく。
【0053】
このように、
図3に示すような設定をすることにより、補助電源装置22に必要な蓄電量を確保しながら、軽負荷回生動作時の回生吸収効果を高めることができる。ここで、蓄電量が高い場合は、蓄電量に応じて充電電流を絞る構成を設けることで、過充電を防ぐことができる。また、充電動作を開始する電圧Ecは、インバータ回路5が軽負荷回生で回生電流を絞り始める電圧よりも低い値に設定する。
【0054】
なお、補助電源装置22の負荷の大きさは、補助電源装置22の入力直流電圧と直流電流により直流電力を演算してもよいし、出力交流電圧と交流電流から交流電力を演算してもよい。また、電力演算を行わずに、車両の乗車率や季節の条件によって補助電源装置22の負荷率がある程度予測できるのであれば、それらの情報により、補助電源装置22の負荷の大きさを判断して、
図3の設定値を切替える方式としてもよい。
【0055】
次に、第3の課題
に対する本実施の形態の動作について説明する。本構成は、通常動作においては上述した動作を行うが、通常動作に移るまでの初期動作シーケンスとして、キャパシタ8やキャパシタ11の初期充電動作を行う必要がある。
【0056】
キャパシタ8やキャパシタ11の初期充電動作は、蓄電装置10を電源として、蓄電装置10と接続される遮断器9a〜9dを投入することで行われる。
【0057】
図1に示す構成の場合、次の順序で遮断器9a〜9dを投入する。すなわち、遮断器9aを投入(オン)した後、遮断器9cを投入(オン)し、キャパシタ8の充電電圧が蓄電装置10の電圧程度まで充電された後、遮断器9cを開放(オフ)する。そして、遮断器9dを投入(オン)し、キャパシタ11の充電電圧が蓄電装置10の電圧程度まで充電された後、遮断器9cを投入(オン)し、遮断器9bを投入(オン)する順序とする。
【0058】
図4に、上記した遮断器9a〜9dの投入順序シーケンスを示す。ここで、遮断器9cと9dの投入順序は逆でもよい。例えば、遮断器9aを投入(オン)した後、遮断器9dを投入(オン)し、キャパシタ8の充電電圧が蓄電装置10の電圧程度まで充電された後、遮断器9dを開放(オフ)する。そして、遮断器9cを投入(オン)し、キャパシタ11の充電電圧が蓄電装置10の電圧程度まで充電された後、遮断器9dを投入(オン)し、遮断器9bを投入(オン)の順序としてもよい。
【0059】
これにより、上記第3の課題に示した、キャパシタ充電時の過大電流を防ぐことができる。なお、遮断器9bに並列に接続される抵抗19bは、キャパシタの初期充電時の過大電流を抑制するための電流制限抵抗である。この電流制限抵抗の設置箇所は、後述する第2の実施の形態で説明する
図8のように設置してもよいが、
図1に示す構成の場合、制限抵抗の数を減らすことができる。
【0060】
図5に、本実施の形態の別方式での主回路構成例を示している。
図1の構成とは、DC−DC変換回路6の下アームがスイッチング素子からダイオード19に置き換わっている点で異なる。
【0061】
補助電源装置22への電力供給のためだけに蓄電装置10を使用する場合、DC−DC変換回路6は降圧チョッパ動作のみできればよいため、
図5の構成で十分である。この構成とすることにより、
図1で示されるDC−DC変換回路6の下アームのスイッチング素子18bのドライブ回路(図示せず)を省略することができ、さらなる機器の小型化が可能となる。
【0062】
また、
図6に、本実施の形態の別方式での制御装置の構成例を示している。
図1とは、統合制御装置31に代えて、一体蓄電装置の制御を行う制御装置A32と、補助電源装置22の制御を行う制御装置B33としている点で異なる。
【0063】
図6に示す構成の場合、上記した
図3で設定された条件で蓄電装置10の充電動作を行うため、制御装置B33から制御装置A32に、補助電源装置22の負荷電力情報Psの信号を送る構成とする。一体蓄電装置と補助電源装置を分離した構成として制御装置を設ける場合には、
図6に示す構成とする。
【0064】
図7は、本実施の形態の蓄電装置10の充放電特性を示す図である。蓄電装置10の蓄電電力を補助電源装置22への電力供給のためだけに使用する場合、充電特性は
図7の充電特性Aに示すように、蓄電量の高い領域を除いて、高入力特性として、インバータ回路5からの回生電力を最大限回収できるようにする。一方、放電特性は蓄電量の低い領域を除いて、負荷16の負荷電力に従って一定特性とする。
【0065】
また、蓄電装置10の蓄電量が大きく低下し、回生動作中以外に直流電車線1から蓄電装置10の充電動作を行う場合、車両の惰行走行中は充電特性Bのような入力特性、車両の停車中は充電特性Cのような入力特性とし、車両が惰行中か停車中かで充電特性の最大値を変えるようにする。
【0066】
これは、車両が停車中の場合には、直流電車線1の集電点が変わらず、充電特性を高い特性としている場合、この集電点に長時間大電流が流れ、直流電車線1が発熱することを防ぐためである。特に直流電車線1がカテナリちょう架式の場合、直流電車線1が溶断されてしまう可能性がある。
【0067】
一方、車両が惰行走行中の場合には、直流電車線1の集電点が移動して変化するため、車両が停車中のときのように、大電流を流し続けても発熱し直流電車線1が溶断するようなことはない。このため、車両の停車中は惰行中よりも充電特性を低く設定する。
【0068】
このように充電特性を設定することにより、直流電車線1を溶断させることなく、かつ車両の停車中や惰行中の限られた時間内で急速に充電することができ、蓄電装置の充電量低下を防ぐことができる。
【0069】
さらに、DC−DC変換回路6は、蓄電装置10の故障時等に、蓄電装置10を遮断器9a、9bで開放させ、直流電車線1から電源を供給する。そして、DC−DC変換回路6が定電圧制御を行って、補助電源装置22に電力を供給するとき、DC−DC変換回路6の出力電圧制御応答を、補助電源装置22すなわちインバータ回路12の出力電圧制御応答よりも早くなるように設定する。これにより、補助電源装置22の負荷変動に対してもDC−DC変換回路6の電圧制御を追従させることでき、電力供給を安定に行うことが可能となる。
【0070】
(1−3)本実施の形態の効果
上記実施の形態によれば、インバータ回路5(本発明の第1の電力変換手段の一例)と、DC−DC変換回路6(本発明の第2の電力変換手段の一例)の間の配線インダクタンスが小さくなり、配線インダクタンスとキャパシタ4(本発明の第1のキャパシタの一例)の容量で定まる共振周波数が大きくなり、インバータ回路5とDC−DC変換回路6とが並列接続される直流部の共振現象を防ぐことができる。また、リアクトル3とキャパシタ4の共用化によって装置の台数を削減することができる。また、インバータ回路5とDC−DC変換回路6を同一の冷却器上に実装することで小型化でき、システム全体の装置を小型化がすることができる。
【0071】
さらに、インバータ回路5、DC−DC変換回路6及び蓄電装置10を統合制御装置31(本発明の制御手段の一例)で統括して制御する構成を採ることで、電圧検出信号等の検出信号を統合制御装置31内で統括的に扱うことができる。これにより、各電力変換手段の制御信号の配線数を減らせるとともに、制御性能を向上させることができる。
【0072】
また、第1〜第4の遮断器(遮断器9a、9b、9c及び9d)投入時におけるインバータ回路12(本発明の第3の電力変換手段の一例)の入力側のキャパシタ11(本発明の第3のキャパシタ)や、DC−DC変換回路6(第2の電力変換手段)に並列接続されるキャパシタ8(本発明の第2のキャパシタの一例)初期充電時の過大電流を防ぐことができる。
【0073】
また、第3の電力変換手段すなわち補助電源装置の負荷の大きさと、第1の直流電圧に応じて、蓄電手段の充電条件を決定することで、第3の電力変換手段に必要な電力量を確保しつつ、必要なときのみ回生電力を蓄電手段に吸収することで、軽負荷回生時の回生吸収効果をより高め、より最適な省エネシステムとすることができる。
【0074】
また、車両の力行、惰行、停車、回生の状態に応じて充電特性を変えることで、車両の停車中や惰行走行中に電車線を溶断させることなく、急速に充電でき、蓄電量の低下を防ぐことができる。
【0075】
さらに、DC−DC変換回路6(第2の電力変換手段)は、蓄電手段の開放時の定電圧制御応答を、第3の電力変換手段の制御応答よりも早く設定することで、インバータ回路12(第3の電力変換手段)の負荷変動時にも安定的に第3の電力変換手段、すなわち補助電源装置に電力を供給できるようになる。
【0076】
(2)第2の実施の形態
以下では、第1の実施の形態と異なる構成について説明し、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
図8に、本実施の形態の電力変換装置を示す。
図8では、第1の実施の形態の
図1で示した抵抗19bに代えて、遮断器9cと並列に抵抗19c、遮断器9dと並列に抵抗19dを接続する。
【0078】
図8に示す構成の場合、第1の実施の形態の
図1に比して、抵抗の数が増えるが、遮断器の投入順序変わるため、キャパシタの充電を完了し、通常動作に移行するまでの時間を早めることができる。
【0079】
すなわち、本実施の形態の遮断器の投入順序は、まず、遮断器9a及び9bを同時に投入(オン)した後、キャパシタ8及びキャパシタ11を同時に充電動作し、充電電圧が蓄電装置10の電圧程度となったら遮断器9c及び9dをそれぞれ投入(オン)する投入順序となる。これにより、キャパシタの充電を完了し通常動作に移行するまでの時間を早くすることができる。また、遮断器9a及び9bを同時に投入した後、遮断器9c及び9dを同時に投入するため、第1の実施の形態に比べて遮断器の投入シーケンスを簡略化することができる。
【0080】
(3)第3の実施の形態
以下では、第1の実施の形態と異なる構成について説明し、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0081】
図9に、本実施の形態の電力変換装置を示す。
図9では、第1の実施の形態の
図1で示したキャパシタ8を省略した構成となっている。
【0082】
図1に示すキャパシタ8は、DC−DC変換回路6とリアクトル7によるスイッチング動作による電流のスイッチングリプルを吸収し、蓄電装置10の電流リプルを抑制することを目的としている。
【0083】
本実施の形態では、キャパシタ11と共用化して、DC−DC変換回路6とリアクトル7によるスイッチング動作による電流のスイッチングリプルを吸収する構成としている。この構成では、キャパシタ8を省略できるため、第1の実施形態と比して装置全体を小型化することができるが、リアクトル7とキャパシタ11間の配線インダクタンスを小さく設定する必要がある。このため、リアクトル7とキャパシタ11間の配線インダクタンスを小さく設定できる場合に本実施の形態の構成とすることが望ましい。