(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240031
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】モータ放熱構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/22 20060101AFI20171120BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
H02K9/22 ZZHV
H05K7/20 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-123418(P2014-123418)
(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公開番号】特開2016-5331(P2016-5331A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】柳生 寿美夫
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
【審査官】
マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−069556(JP,U)
【文献】
実開昭48−042009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/22
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のモータ架台(2)にマウント具(3)を介してモータ(4)を装着しており、このモータ(4)のモータハウジング(5)とモータ架台(2)との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント(6)を設け、
前記モータハウジング(5)とモータ架台(2)との間にモータ架台(2)からのモータハウジング(5)の離間距離を規制する規制具(7)を設け、
前記接続エレメント(6)は、断面が楕円形又は円形でかつ軸心が前記モータ支持方向と直交する方向を向く筒部(6a)と、この筒部(6a)の前記モータ支持方向の一方側と他方側に固定されていて前記規制具(7)に嵌合するとともにモータハウジング(5)とモータ架台(2)とに面接触する面接部(6b)とを有していることを特徴とするモータ放熱構造。
【請求項2】
機器のモータ架台(2)にマウント具(3)を介してモータ(4)を装着しており、このモータ(4)のモータハウジング(5)とモータ架台(2)との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント(6)を設け、
前記モータハウジング(5)とモータ架台(2)との間にモータ架台(2)からのモータハウジング(5)の離間距離を規制する規制具(7)を設け、
前記接続エレメント(6)は、蛇腹形状でかつ軸心が前記モータ支持方向を向く筒部(6a)と、この筒部(6a)の前記モータ支持方向の一方側と他方側に固定されていて前記規制具(7)に嵌合するとともにモータハウジング(5)とモータ架台(2)とに面接触する面接部(6b)とを有していることを特徴とするモータ放熱構造。
【請求項3】
機器のモータ架台(2)にマウント具(3)を介してモータ(4)を装着しており、このモータ(4)のモータハウジング(5)とモータ架台(2)との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント(6)を設け、
前記モータハウジング(5)とモータ架台(2)との間にモータ架台(2)からのモータハウジング(5)の離間距離を規制する規制具(7)を設け、
前記接続エレメント(6)は、筒部(6a)と、この筒部(6a)の前記モータ支持方向の一方側と他方側に設けられていて前記規制具(7)に嵌合するとともにモータハウジング(5)とモータ架台(2)とに面接触する面接部(6b)とを有し、
前記規制具(7)は、前記筒部(6a)の前記一方側の面接部(6b)と前記他方側の面接部(6b)とを貫通していることを特徴とするモータ放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独の駆動源として又はエンジンとともにハイブリッドの駆動源として産業機器に適用されるモータに適用可能なモータ放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や、農機、建機、ユーティリティビークル等の産業機器に適用されるモータ(モータ・ジェネレータを含む。)は、シリーズハイブリッド式又はパラレルハイブリッド式駆動源として機器に搭載されており、特許文献1においては、モータはエンジン及び油圧ポンプと組み合わせてエンジンユニットとし、モータ側の2つのマウント部及びエンジン側の2つのマウント部を介して車体フレームに搭載支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−211469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータは過熱防止のため外部空冷あるいは液冷方式が採用される。小型かつ高出力PMモータにおいては、単位体積当たりの冷却必要量が大きくなるため、冷却効率の高い液冷方式が採用される。しかしながら、冷却水が得られない場合には空冷を採用されることになるが、十分な冷却が行えずに高出力でのモータ(連続)使用時間が制約される等、使い勝手が悪い状況が生じる。
【0005】
一方空冷方式としては、コイルおよびステータからの発熱を熱伝導にてモータケーシングへ伝播させ、その熱をモータケーシング外周に設けた放熱フィン等から自然対流、あるいは強制対流にて除熱する方法が採られている。この発熱をモータケーシング外周から放熱させる場合、放熱フィンがモータケーシングから大きくはみ出して、車両へ搭載するのに許容できない大きさになる場合がある。
【0006】
放熱フィンからの放熱は、自然対流による熱伝達率は低く、ファンを搭載して強制対流させると熱伝達率を高めることはできるが、十分な冷却能力を得ることは困難になっている。
前記従来技術においては、モータは車体フレームに搭載支持されているだけで、車体フレームとの間でモータの過熱を防止する手段、放熱効率を向上する手段は設けられていない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにしたモータ放熱構造を提供することを目的とする。
本発明は、モータとそれを装着する機器との間に接続エレメントを設けることにより、モータの放熱効率を向上できるようにしたモータ放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、機器のモータ架台2にマウント具3を介してモータ4を装着しており、このモータ4のモータハウジング5とモータ架台2との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント6を設
け、前記モータハウジング5とモータ架台2との間にモータ架台2からのモータハウジング5の離間距離を規制する規制具7を設け、前記接続エレメント6は、断面が楕円形又は円形でかつ軸心が前記モータ支持方向と直交する方向を向く筒部6aと、この筒部6aの前記モータ支持方向の一方側と他方側に固定されていて前記規制具7に嵌合するとともにモータハウジング5とモータ架台2とに面接触する面接部6bとを有していることを特徴とする。
【0009】
第2に、機器のモータ架台2にマウント具3を介してモータ4を装着しており、このモータ4のモータハウジング5とモータ架台2との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント6を設け、前記モータハウジング5とモータ架台2との間にモータ架台2からのモータハウジング5の離間距離を規制する規制具7を設け、前記接続エレメント6は、蛇腹形状でかつ軸心が前記モータ支持方向を向く筒部6aと、この筒部6aの前記モータ支持方向の一方側と他方側に固定されていて前記規制具7に嵌合するとともにモータハウジング5とモータ架台2とに面接触する面接部6bとを有していることを特徴とする。
【0010】
第3に、機器のモータ架台2にマウント具3を介してモータ4を装着しており、このモータ4のモータハウジング5とモータ架台2との間に熱伝導可能でかつモータ支持方向に弾性変形可能な接続エレメント6を設け、前記モータハウジング5とモータ架台2との間にモータ架台2からのモータハウジング5の離間距離を規制する規制具7を設け、前記接続エレメント6は、筒部6aと、この筒部6aの前記モータ支持方向の一方側と他方側に設けられていて前記規制具7に嵌合するとともにモータハウジング5とモータ架台2とに面接触する面接部6bとを有し、前記規制具7は、前記筒部6aの前記一方側の面接部6bと前記他方側の面接部6bとを貫通していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータとそれを装着する機器との間に接続エレメントを設けることにより、機器がヒートシンクとなってモータの放熱効率を向上できる。
即ち、
本発明は、モータハウジング5とモータ架台2との間に熱伝導可能な接続エレメント6を設けているので、モータ架台2がヒートシンクとなり、モータハウジング5の熱がモータ架台2に伝播され、放熱面積の増大により、モータ4の放熱効率を向上でき、モータ4の制振も可能になる。
【0012】
また、モータ架台2からのモータハウジング5の離間距離を規制する規制具7に接続エレメント6を嵌合しているので、接続エレメント6の構成及び組み付けが容易にできる。
また、接続エレメント6は筒部6aと面接部6bとを有し、筒部6aが断面楕円形又は円形であるので簡単かつ容易に製造でき、面接部6bにより接続面積を大きくして、熱伝導を良好にできる。
【0013】
また、接続エレメント6は筒部6aと面接部6bとを有し、筒部6aが蛇腹形状であるので簡単かつ容易に製造でき、面接部6bにより接続面積を大きくして、熱伝導を良好にできる
。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態を示す全体平面図である。
【
図5】接続エレメントの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4に示す第1実施形態において、符号2は自動車、ユーティリティビークル等の車体フレームや、農機、建機等の機体フレームであって、モータ4を装着するモータ架台であり、このモータ架台2に、モータ4を有する駆動ユニット9がマウント具3を介して取り付けられている。
【0016】
前記駆動ユニット9は、エンジン10のフライホィールハウジング11にモータ4のモータハウジング5を連結し、このモータハウジング5に油圧ポンプ12を連結しており、エンジン10のクランク軸、モータ4のロータ軸心及び油圧ポンプ12の入力軸は同心に配置され、エンジン10とモータ4とは択一的又は同時に油圧ポンプ12の入力軸を駆動し、エンジン10はロータを駆動して、モータ4にジェネレータ作用をさせることができる。
【0017】
前記モータ4のモータハウジング5には、底部5aから離れた側部5bであって、油圧ポンプ12を挟んで2カ所に脚形状の取付部5cを有し、エンジン10はクランク軸の延長位置付近の1カ所に脚形状の取付部5cを有し、この計3カ所の取付部5cは二等辺三角形の配置になっている。
モータ架台2には前記3カ所の取付部5cに対応して立ち上がったステー部15が設けられており、この各取付部5cとステー部15との間にマウント具3と規制具7とが設けられている。
【0018】
マウント具3は取付部5cとステー部15とに貫通するボルト3aと、このボルト3aに嵌合していて取付部5cとステー部15との間に位置する弾性支持体3bとを有し、駆動ユニット9を弾性的に支持し、駆動ユニット9の振動がモータ架台2に伝播するのを防止している。
図2のマウント具3のボルト3aの軸心はステー部15の上面に垂直であって上下向きになっていて、駆動ユニット9の上下方向の支持のみをしているが、2本又は3本のボルト3aの上部が近づくように傾斜させて、取付部5c及びステー部15もそのボルト3aと直交する姿勢に傾斜させ、駆動ユニット9を上下方向の支持だけでなく、前後、左右の方向も支持するように構成してもよい。
【0019】
規制具7はステー部15に垂直に植設されたスタッドボルト7aを取付部5cに貫通し、スタッドボルト7aの先端側に螺合したナット7bで取付部5cが抜け出す方向に移動するのを規制している。即ち、規制具7はストッパボルトであり、モータ架台2からのモータハウジング5の離間距離を規制している。
この規制具7のスタッドボルト7aの軸心は、マウント具3のボルト3aの軸心と平行であり、マウント具3で駆動ユニット9を弾性的に支持しながら、取付部5cがステー部15から離れるのを制限している。
【0020】
前記規制具7のスタッドボルト7aには接続エレメント6が嵌合されていて、上下端面がモータ架台2のステー部15とモータハウジング5の取付部5cとに面接触し、熱接続を可能にしている。
この接続エレメント6は、熱伝導性及び強靱性の高い金属で形成されており、モータハウジング5からモータ架台2へ熱伝導ができ、マウント具3によるモータ支持方向に伸縮弾性変形ができるものである。
【0021】
前記接続エレメント6は筒部6と上下の面接部6bとを有している。筒部6は可撓性を持たせるために断面が楕円形又は円形であり、軸心が横向き(スタッドボルト7aに対して直交)になっており、その外周が円弧形状であるので、上下に円盤形状の面接部6bを固着している。この面接部6bは中央に規制具7に嵌合する貫通孔を有し、上面接部6bの上面と下面接部6bの下面(外面)はモータハウジング5とモータ架台2とに面接触する。
【0022】
接続エレメント6の筒部6は断面円形のパイプ材を輪切りにして形成することができる。筒部6には断面六角形又は八角形のパイプ材も使用できるが、外周が円形の方が伸縮変形が容易でありかつ耐久性も高い。
前記接続エレメント6はモータハウジング5の熱を取付部5c及びステー部15を介してモータ架台2に伝導し、モータ架台2をヒートシンクにしてモータ4で発生する熱を放熱する。
【0023】
即ち、接続エレメント6はモータ4の振動に対応して弾性変形しながら制振し、モータ4からモータ架台2への固体同士の熱伝導を行わせ、モータ4の発熱をモータ架台2から放熱する。モータ4が放熱フィンを備えていると、放熱フィンによる空冷に加えて、接続エレメント6が第2の熱伝導径路となり、固体熱伝導冷却をすることになる。
なお、接続エレメント6は取付部5c及びステー部15からはみ出す大きさにでき、それ自体が自然冷却のための放熱フィンの役目もする。
【0024】
図5は接続エレメント6の変形例を示しており、この接続エレメント6は蛇腹管を軸心に対して直交断面で切って筒部6を形成し、筒部6の軸心を縦向きにして軸方向両端に面接部6bを設けている。
この変形例の接続エレメント6は、モータハウジング5からモータ架台2へ熱伝導ができ、しかも、マウント具3によるモータ支持方向に対して蛇腹形状による伸縮弾性変形ができるようになっている。
【0025】
図6は第2実施形態を示しており、接続エレメント6はモータハウジング5の底部5aとモータ架台2との間に配置されている。前記モータハウジング5はフライホィールハウジング11よりも小径であり、モータ架台2に装着される取付部5cから離れている底部5aはモータ架台2との間に大きな空間が存在し、その空間を利用して接続エレメント6
が配置されている。
【0026】
この接続エレメント6は、第1実施形態で示した断面が楕円形又は円形でかつ軸心が横向きの筒部6aと、この筒部6aの上下に固定されていてモータハウジング5とモータ架台2とに面接触する面接部6bとを有している。接続エレメント6は前記変形例の蛇腹管を使用したものでもよい。
第2実施形態の接続エレメント6の上下面接部6bは、下面接部6bの下面はモータ架台2に面接触する平坦面であるが、上面接部6bの上面はモータハウジング5の円形外周面に面接触する凹状円弧面に形成されおり、モータハウジング5の熱が効率良く伝導される形状になっている。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、
図1〜6示すように構成することが最良である。しかし、前記実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
例えば、接続エレメント6は円形管を輪切りにし、軸心を横向きにして、その上下部をプレス加工で平坦に形成するとともに貫通孔を穿孔して面接部6bを形成し、筒部6と上下の面接部6bとを一体成形してもよい。
【0028】
また、接続エレメント6をマウント具3の弾性支持体3bに嵌装し、その上下の面接部6bを取付部5cとステー部15とに面接触させてもよい。
【符号の説明】
【0029】
2 モータ架台
3 マウント具
4 モータ
5 モータハウジング
5a 底部
5b 側部
6 接続エレメント
6a 筒部
6b 面接部
7 規制具
7a スタッドボルト
7b ナット