(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240046
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】複合シール材及びこの複合シール材を配置するための治具
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20171120BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20171120BHJP
F16J 15/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F16J15/10 Y
F16J15/00 C
F16J15/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-171233(P2014-171233)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44785(P2016-44785A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130178
【氏名又は名称】株式会社コスモ計器
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】特許業務法人 銀座総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 貢
(72)【発明者】
【氏名】山田 高
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/115064(WO,A1)
【文献】
特開平08−277939(JP,A)
【文献】
実開昭49−067060(JP,U)
【文献】
特開2013−174251(JP,A)
【文献】
実開昭62−044998(JP,U)
【文献】
特開昭63−280967(JP,A)
【文献】
特開2012−071708(JP,A)
【文献】
特開2012−221840(JP,A)
【文献】
特開2008−169331(JP,A)
【文献】
特開平08−235937(JP,A)
【文献】
特開2005−024084(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3188884(JP,U)
【文献】
実開昭63−048901(JP,U)
【文献】
特開平09−314722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能なJIS A硬度50〜99度の架橋ゴムまたはエラストマー製の紐状芯材の外周を、弾性変形可能なアスカーC硬度1〜30度のゲル材にて形成した被覆シールにて被覆し、この被覆シールと紐状芯材とを固着することなく接触させたことを特徴とする複合シール材。
【請求項2】
弾性変形可能なJIS A硬度50〜99度の架橋ゴムまたはエラストマー製の紐状芯材の外周を、弾性変形可能なアスカーC硬度1〜30度のゲル材にて形成した被覆シールにて被覆し、この被覆シールと紐状芯材とを固着することなく接触させた複合シール材を装着する取付溝を、ワークと対応する接続面に設け、この取付溝の一部に複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部を形成したことを特徴とする複合シール材を配置するための治具。
【請求項3】
複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部は、ワークと接続する接続面の範囲内に形成し、治具の外部と接続することのないよう形成したことを特徴とする請求項2の複合シール材を配置するための治具。
【請求項4】
複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部は、ワークと接続する接続面の範囲外まで延長し、治具の外部と接続し得る位置まで形成した事を特徴とする請求項2の複合シール材を配置するための治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキング材、ガスケット材等として用いる複合シール材及びこの複合シール材を配置するための治具に係るもので、ワークと治具間に於けるシール性を、簡易且つ確実に向上させようとするものである。特に、常温域の鋳物肌面のシール、段差がある物のシール、仕上げ加工前の荒面状態でのシール等に用いる場合、好都合なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークとシール治具間に於けるシール性を保つためのパッキンやガスケットには、ゴム材、ゲル材、金属等、そのシール箇所の状況、目的に応じて種々のものが用いられてきた。例えば弾性変形が容易で治具やワークの接触面が粗面であっても馴染み易いゲル材を用いたり、ゴム材やエラストマーを用いる事が行われている。
【0003】
また、特許文献1に示す如く補強芯材と被覆シール材を接着剤で接着固定し、片方又は両方の表面が被覆シール材になるように積層したものが知られている。この被覆シール材としてはゴム、膨張黒鉛シート等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−314722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シール材としては、シール箇所の状況、目的に応じて種々のものが用いられてきたが、一つのシール材で条件の異なる多くのシール部に対応できる汎用性を備えたものが、生産コスト、設置作業性等の面から好ましいものである。従来用いられていた、ゲル材をシール材として用いたものは、ゲル材の粘着性と柔軟な軟弾性とにより、治具やワークにある程度の粗面があったり、複雑な形状をしたものであっても接地面に良く馴染み、良好なシール性を保持する利点がある。
【0006】
しかし、
図8に示す如く、治具(1)とワーク(2)に強い圧力が加えられたり、ゲル材(3)に強い外圧が加えられると、弾性変形容易なゲル材(3)は治具(1)とワーク(2)の隙間から逃げてしまい、確実なシールが困難となる欠点を有していた。また、ゲル材(3)のこの欠点を補充するため、
図9に示す如くウレタン材でゲル材(3)を保持するための保持枠(4)を形成し、この保持枠(4)内にゲル材(3)を収納して設置する事が知られている。この保持枠(4)を用いる事によりゲル材(3)の形状が保たれ、治具(1)とワーク(2)に圧力が加えられてもゲル材(3)が逃げを生じる事がなく、シール漏れを発生させることがない。しかしながら、この方法では、保持枠(4)を設置場所ごとに形成しなければならず、多くの費用と手数が必要となる。
【0007】
また、特許文献1に示す如く、補強芯材とシール材を接着剤で接着固定し、片方又は両方の表面がシール面になるように積層したものに於いては、補強芯材とシール材の接着に多くの手数を要するものとなる。また、補強芯材とシール材を接着固定してしまうと、治具の取付溝(5)に対応する形状に成形している場合はともかく、湾曲等が少しでも異なる取付溝(5)に設置しようとすると、補強芯材とシール材の間に不規則な変形を生じたり、シール性を損なうものと成る。特許文献1に示すシール材は、極めて限定された目的箇所に使用するものとしては適当なものであっても、汎用性に乏しいものである。
【0008】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、複雑な形状の取付溝にも、単純な形状の取付溝にも1種類の複合シール材で対応することを可能とし、汎用性の広い複合シール材の提供を可能とする。また、ワークと治具に強い圧着力が加わった場合にも複合シール材の逃げを生じる事が無く、確実なシール性を発揮することができる。また、ワークと治具に多少の粗面があっても、ゲル材製の被覆シールが良く馴染んで確実なシール性を確保することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の如き課題を解決するため、弾性変形可能なJIS A硬度50〜99度の架橋ゴムまたはエラストマー製の紐状芯材の外周を、弾性変形可能なアスカーC硬度1〜30度のゲル材にて形成した被覆シールにて被覆し、この被覆シールと紐状芯材とを固着することなく接触させて紐状の複合シール材を形成するものである。
【0010】
また、本発明は弾性変形可能なJIS A硬度50〜99度の架橋ゴムまたはエラストマー製の紐状芯材の外周を、弾性変形可能なアスカーC硬度1〜30度のゲル材にて形成した被覆シールにて被覆し、この被覆シールと紐状芯材とを固着することなく接触させた複合シール材を装着する取付溝を、ワークと対応す
る接続面に設け、この取付溝の一部に複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部を形成した複合シール材を配置するための治具に係るものである。
【0011】
また、複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部は、ワークと接続する接続面の範囲内に形成し、治具の外部と接続することのないよう形成したものであっても良い。
【0012】
また、複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部は、ワークと接続する接続面の範囲外まで延長し、治具の外部と接続し得る位置まで形成したものであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く、弾性変形可能なゴム製またはエラストマー製の紐状芯材の外周を、弾性変形可能なゲル材にて形成した被覆シールにて被覆して構成したものであるから、複合シール材は紐状に形成され、治具の複雑な形状の取付溝にも、単純な形状の取付溝にも、取付溝の寸法に適合すれば、紐状に形成した1種類の複合シール材で対応することが可能で、汎用性の高い複合シール材の提供を可能とすることができる。また、ゴム製またはエラストマー製の紐状芯材の外周を、ゲル材にて形成した被覆シールにて被覆したものであるから、複合シール材は保形性と密着シール性を合わせ持つことが可能であり、ワークと治具に強い圧着力が加わった場合にも、紐状芯材の保形性によりゲル材で形成した被覆シールの逃げを生じる事が無く、確実なシール性を発揮することができる。また、ワークと治具に多少の粗面があっても、紐状芯材外周のゲル材で形成した被覆シールが良く馴染んで確実なシール性を確保することを可能にするものである。
【0014】
また、紐状芯材は、JIS A硬度50〜99度の架橋ゴム又はエラストマーであり、JIS A硬度が50未満であると、圧力を加えた場合に、複合シール材としての変形が大きくなりすぎ、外周のゲル材である被覆シールを治具とワークの間から外部に逃がしてしまい、シール性を損なう可能性があるが、このような事態を防止できる。また、紐状芯材はJIS A硬度が99度よりも固くなると被覆シールの保形性は良くなるが固くなり、ワークと治具間に形成される取付溝が複雑な形状の場合対応できない可能性があるが、本発明の複合シール材は、このような事態を防止できる。
【0015】
また、被覆シールは、アスカーC硬度1〜30度のゲル材であり、アスカーC硬度が1未満であると、被覆シールの形状を保つことが困難となり、治具とワークへの加圧によって被覆シールが逃げてしまうものと成る可能性があるが、このような事態を防止できる。また、被覆シールのアスカーC硬度が30度よりも固くなると、治具とワークへの密着シール性が悪くなり、粗面等が存在した場合にシール漏れを生じる可能性があるが、このような事態も本発明の複合シール材ではゲル材により形成した被覆シールの存在により防止できるものと成る。
【0016】
また、被覆シールは、紐状芯材の外周を被覆して紐状の複合シール材を形成するから、紐状芯材と被覆シールは接着剤等で固定しなくとも、両者は分離することが無く一体に構成することが可能となり、接着剤による接着作業等の余分な手数を一切不要とする。また、被覆シールと紐状芯材を固定しないことにより、被覆シールと紐状芯材に無理な変形力が加えられた場合にも、相互に位置を移動しながら無理な変形力に、複合シール材は柔軟に対応することが可能となり、ワークと治具のシール性を向上することができる。
【0017】
また、複合シール材の取付溝は、ワークと対応する接続面に設け、この取付溝の一部に複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部を形成したものであ
り、複合シール材は、ゲル材製の被覆シールが密接するから、特別の構成や加工を施さなくとも、優れたシール性を発揮することができる。そのため、取付溝の長さと同一径か、長い複合シール材を備えるだけで、取付溝の形状等が異なる場合にも複合シール材の使用が汎用的に可能となる。即ち、複合シール材は、その材質から切断が容易であるため、長尺の複合シール材を備えていれば、直径が対応する、長さや形状の異なる全ての取付溝に設置が可能となり、汎用性の高い複合シール材を提供することが可能となる。
【0018】
また、平行接続部を、ワークと治具が接続する接続面の範囲内に形成し、治具の外部と接続することのないよう形成することにより、ワークと治具の接続後は、外部から複合シール材に接触することはなく、外部接触による複合シール材の破損を生じる事がない。
【0019】
また、複合シール材の両端方向を平行に密接し得る平行接続部は、ワークと接続する接続面の範囲外まで延長し、治具の外部と接続し得る位置まで形成したものであるから、治具にワークを密着させる過程で、外気を巻き込むことがあっても、複合シール材の両端部は接続面から外れた位置にあるため、紐状芯材と被覆シール材との間に外気を導入してしまうことはない。そのため、外気の巻き込みによって外形が変化する不都合を確実に防止する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で使用する弾性変形可能なゲル材製の被覆シールは、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体及びパラフィン系オイルを主成分としている。また、上記付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体、及び/又はポリスチレンブロックと水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体から成るものである。即ち、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、SとIとから成るブロック共重合体、SとBとから成るブロック共重合体、又は上記各ブロック共重合体の複合体である。
【0021】
また、上記ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリイソプレンブロック(I)とから成るブロック共重合体としては、具体的には飽和型のジブロック及びトリブロックタイプのスチレンエチレンプロピレン(SEP)や、スチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)が好適に用いられる。また、ポリスチレンブロック(S)と水添又は非水添のポリブタジエンブロック(B)とから成るブロック共重合体としては、具体的にはスチレンエチレンブタジエン(SEB)やスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)が好適に用いられる。
【0022】
そして、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、SEP、SEPS、SEB、SEBSをそれぞれ単体で使用することも可能であり、また、SEP、SEPS、SEB、SEBSを2種以上複合させて使用することも可能である。また、この付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、(S−I)や(S−B)で表されるジブロックのもの、あるいはS−(I−S)nやS−(B−S)n、(但し、n=1〜5)の一般式で表されるトリブロック及びそれ以上のものである。
【0023】
また、本発明の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、全体の数平均分子量が5000〜500000の範囲が好ましい。また、Sブロック単位の含有量は5〜70wt%であり、且つIブロック単位又はBブロック単位の二重結合の70%以上が水添されたものが好ましい。また、Sブロック単位の重量平均分子量としては5000〜125000、Iブロック単位又はBブロック単位の重量平均分子量としては15000〜250000のものが好ましい。
【0024】
また、紐状芯材としては、架橋ゴム、エラストマーを使用することができる。架橋ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンゴム(EPM)、プロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハイパロン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CHR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、チオールゴム(T)、シリコーンゴム(Si)、フッ素ゴム(FPM)等を使用することができる。
【0025】
また、エラストマーは、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル
系を用いる事が出来る。具体的にはスチレン系として
、ラバロン
(登録商標)
、タフテック
(登録商標)。オレフィン系として
、サーモラン
(登録商標)
、ミラストマー
(登録商標)。ポリエステル系として
、ハイトレル
(登録商標)
、プリマロイ
(登録商標)等を任意に選択して用いる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】紐状の複合シール材を治具の取付溝に装着し、ワークと密着した状態の断面図。
【
図2】紐状の複合シール材を治具の取付溝に装着し、ワークと密着する前の状態を示す断面図。
【
図3】紐状の複合シール材を複雑な形状の取付溝に装着する状態の斜視図。
【
図4】複合シール材の製造装置の一例を示す断面図。
【
図5】複合シール材の接続の一例を示す実施例2の斜視図。
【
図6】複合シール材の接続の一例を示す実施例3の平面図。
【
図8】従来例を示すもので、ゲル材のみから成るシール材の使用例を示す断面図。
【
図9】従来例を示すもので、保持枠にてゲル材のみから成るシール材を保持した状態の断面図。
【実施例1】
【0027】
以下本発明の一実施例を図面に於いて説明すると、(10)は紐状芯材で、弾性変形可能なJIS A硬度50〜99度の架橋ゴムまたはエラストマー製の紐状に形成する事が可能である。本実施例に於いては紐状芯材(10)をJIS A硬度70度のニトリルゴム(NBR)にて直径3φにて形成した。また、この紐状芯材(10)の外周をアスカーC硬度でC04、C15、C20、C30のゲル材を任意に選択して形成した被覆シール(11)により被覆した。
【0028】
この紐状芯材(10)への被覆シール(11)による被覆は、
図4に示す如く、紐状芯材(10)を成形型(12)に挿通し、この成形型(12)のノズル部(13)から突出し、一定の速度で移動させながら、紐状芯材(10)とは別経路で導入したゲル材(14)を、ノズル部(13)で紐状芯材(10)の外周に接触させることにより、紐状芯材(10)の外周をゲル材(14)製の被覆シール(11)により被覆するものである。この被覆シール(11)とニトリルゴム(NBR)製の紐状芯材(10)とは、被覆シール(11)のゲル材(14)が油性のものであるため固着されることはなく、紐状芯材(10)と被覆シール(11)とは一定の範囲で位置移動が可能なものと成っている。
【0029】
上述の如く構成した複合シール材(15)を治具(16)の取付溝(17)に装着するには、
図3に示す如く治具(16)の取付溝(17)に紐状の複合シール材(15)を挿入するのみでよい。この挿入は複合シール材(15)が紐状に形成されているから、取付溝(17)の形状が複雑なものであっても、単純なものであっても、取付溝(17)の溝幅と、長さが適合するものであれば、複合シール材(15)は1種類のものを用いる事ができる。そのため、従来の如く取付溝(17)の形状毎に複合シール材(15)を用意する必要が無く、汎用性の高いものと成る。また、治具(16)の取付溝(17)に複合シール材(15)を挿入すると
図2に示す如く、複合シール材(15)の一部が取付溝(17)から突出するが、ワーク(18)を圧着することにより、
図1に示す如く取付溝(17)の内面に複合シール材(15)は弾性変形して治具(16)とワーク(18)に密着し、確実なシール機能を生じるものと成る。そして、ワーク(18)や治具(16)に多少の粗面が形成されていても、ゲル
材(14)製の被覆シール(11)が馴染むことによりシール性を損なうことはない。
【実施例2】
【0030】
また、上記の実施例では、複合シール材(15)の両端は、治具(16)の取付溝(17)の寸法に対応して予め連結され、環状に形成している。そのため、紐状の複合シール材(15)は対応する長さ寸法の取付溝(17)にのみ取り付けが可能で、長さ方向の寸法が異なる取付溝(17)は設置する事ができない。しかし、異なる実施例2では、複合シール材(15)の両端は連結せず直線状のまま使用することも可能である。この場合は、
図5に示す如く、治具(16)の取付溝(17)の一部に、複合シール材(15)を平行に密接し得る平行接続部(19)を形成する。この平行接続部(19)は、ワーク(18)と治具(16)が接続する接続面(20)の範囲内に形成し、治具(16)の外部と接続することのないよう形成している。
【0031】
この平行接続部(19)に、複合シール材(15)の両端を連結しない状態で平行に密接して配置する。複合シール材(15)の被覆シール(11)はゲル
材(14)で形成されているから、特別の構成や加工を施さなくとも、密接した場合に優れたシール性を発揮することができる。このように、治具(16)の取付溝(17)に複合シール材(15)を平行に密接し得る平行接続部(19)を設けることにより、予測される長さの取付溝(17)よりも長い長尺状の複合シール材(15)を備えるだけで、長さの異なる各種の取付溝(17)に使用が可能となる。即ち、複合シール材(15)は、その材質から切断が容易であるため、長尺の複合シール材(15)を備えていれば、直径が対応する全ての取付溝(17)に設置が可能となり、汎用性の高い複合シール材(15)を提供することが可能となる。
【0032】
また、平行接続部(19)を、ワーク(18)と治具(16)が接続する接続面(20)の範囲内に形成し、治具(16)の外部と接続することのないよう形成することにより、ワーク(18)と治具(16)の接続後は、外部から複合シール材(15)に接触することはなく、外部接触による複合シール材(15)の破損を生じる事がない。
【実施例3】
【0033】
上記の実施例2
に於いては、平行接続部(19)を、ワーク(18)と治具(16)が接続する接続面(20)の範囲内に形成し、治具(16)の外部と接続することのないよう形成するが、実施例3では、複合シール材(15)の両端方向を平行に密接し得る平行接続部(19)は、ワーク(18)と接続する接続面(20)の範囲外まで延長し、治具(16)の外部と接続し得る位置まで形成するものである。上記の実施例2
に於いて、取付溝(17)に複合シール材(15)を装着した治具(16)にワーク(18)を密着させると、この密着時に外気を巻き込み、紐状芯材(10)と被覆シール(11)との間に外気を取り込んでしまう可能性がある。これは、紐状芯材(10)と被覆シール(11)とが固着することなく接触させたことから生じるものである。被覆シール(11)はゲル
材(14)で形成されているため、弾性変形が容易であるから多少の外気を紐状芯材(10)と被覆シール(11)との間に取り込んでも、この外気の流入に伴う変形は吸収することができ、実用上の支障は無い。しかし好ましくは外気の取り込みは無いのが理想的である。
【0034】
そこで、実施例3では紐状芯材(10)と被覆シール(11)との間に外気を取り込むことがないようにするものである。実施例3では
図6に示す如く、治具(16)の表面に形成する取付溝(17)の平行接続部(19)部分を、治具(16)の端面、即ち治具(16)の外部と接続し得る位置まで形成している。この治具(16)の表面にはワーク(18)を接続して被覆するが、ワーク(18)と治具(16)の接続面(20)の範囲外まで平行接続部(19)を延長している。
【0035】
上述の如く構成した平行接続部(19)に複合シール材(15)装着し、その両端部(21)を治具(16)の外方に突出すれば、治具(16)にワーク(18)を密着させる過程で、外気を巻き込むことがあっても、複合シール材(15)の両端部(21)は接続面(20)から外れた位置にあるため、紐状芯材(10)と被覆シール材(15)との間に外気を導入してしまうことはない。この実施例3の形態と、前記の実施例2の形態とは、複合シール材(15)、治具(16)とワーク(18)の使用目的に応じて任意に選択することができるものである。
【符号の説明】
【0036】
10 紐状芯材
11 被覆シール
14 ゲル材
15 複合シール材
16 治具
17 取付溝
18 ワーク
19 平行接続部
20 接続面