(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るバイアス推定装置及び方法について、
図1〜
図6を参照して説明する。本実施形態に係るバイアス推定装置及び方法は、センサの計測値に基づいてバイアスを推定する。バイアスとは、計測値に含まれる定常的な誤差のことである。バイアスの推定対象となるセンサには、温度センサや湿度センサなどの任意のセンサが含まれる。
【0009】
まず、第1実施形態に係るバイアス推定装置について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るバイアス推定装置の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、このバイアス推定装置は、計測データ記憶部1と、データ抽出部2と、基準データ記憶部3と、対象データ記憶部4と、基準モデル構築部5と、基準モデル記憶部6と、暫定バイアス生成部7と、補正計測値算出部8と、類似度算出部9と、類似度選択部10と、スコア算出部11と、推定バイアス決定部12と、推定バイアス記憶部13と、を備える。
【0010】
計測データ記憶部1は、複数回の計測によって得られたセンサの計測値を記憶する。各回の計測によって得られた計測値は、関連情報と対応づけられた計測データとして、計測データ記憶部1に記憶される。したがって、計測データ記憶部1には、複数の計測データからなる計測データ群が記憶される。
【0011】
図2は、計測データ記憶部1に記憶された計測データ群の一例を示す図である。
図2において、計測データ群は計測番号1〜6の6個の計測データからなる。各計測データには、4個のセンサA〜Dの計測値と、これらの計測値と対応づけられた3個の関連情報A〜Cと、が含まれる。このように、各計測データには、複数のセンサの計測値が含まれてもよい。関連情報は、例えば、計測日時や計測状況であるが、これに限られない。以下では、計測データに含まれる計測値全体を計測値部分、関連情報全体を関連情報部分という。
【0012】
データ抽出部2は、計測データ記憶部1に記憶された計測データ群の中から、基準データと、対象データと、を抽出する。
【0013】
基準データとは、センサ又はセンサの計測対象機器が正常であり、計測値にバイアスがほとんど、或いは、全く含まれていないことが想定される計測データである。基準データに含まれる計測値は、バイアスを推定するための基準、すなわち、バイアスが0である場合の計測値として用いられる。データ抽出部2は、基準データとして、例えば、センサの点検直後の所定期間の計測データを抽出する。ここで、基準データとして抽出する期間は、任意に設定可能である。データ抽出部2により抽出された複数の基準データ(基準データ群)は、基準データ記憶部3に記憶される。
【0014】
対象データとは、バイアスの推定対象又は後述する故障診断対象となる計測データである。バイアス推定装置は、対象データに含まれる計測値のバイアスを推定する。データ抽出部2は、対象データとして、例えば、直近の所定期間の計測データを抽出する。ここで、対象データとして抽出する期間は、任意に設定可能である。データ抽出部2により抽出された複数の対象データ(対象データ群)は、対象データ記憶部4に記憶される。
【0015】
基準モデル構築部5は、基準データ記憶部3に記憶された基準データ群に基づいて、基準モデルを構築する。基準モデルは、類似度算出部9において、ある計測データの計測値部分と基準値データ群の計測値部分の類似度を算出することに利用可能な数理モデルである。
【0016】
基準モデル構築部5は、類似度の算出に利用可能であるという条件を満たすならば、主成分分析やニューラルネットワークなど、任意の方法により基準モデルを構築することができる。基準モデル構築部5による基準モデルの構築方法については後述する。基準モデル構築部5により構築された基準モデルは、基準モデル記憶部6に記憶される。
【0017】
暫定バイアス生成部7は、暫定バイアスを生成する。暫定バイアスとは、バイアスの暫定的な推定値である。このバイアス推定装置は、複数の暫定バイアスを、後述するスコアによって評価し、暫定バイアスの中から推定バイアスを決定する。推定バイアスとは、バイアス推定装置の推定結果として得られるバイアスの推定値のことである。
【0018】
暫定バイアス生成部7は、対象データに含まれる計測値ごとに、各計測値と同じ次元を有する暫定バイアスを生成する。すなわち、対象データにn個の計測値が含まれ、計測値部分がn次元のベクトルで表現される場合、暫定バイアスもn次元のベクトルとなる。このとき、センサiの計測値は、計測値部分のi番目の要素となり、センサiの暫定バイアスは、暫定バイアスのi番目の要素となる。
【0019】
例えば、対象データが
図2に示す計測データである場合、対象データの計測値部分は、4つの計測値からなるため、4次元のベクトルで表現される。この場合、暫定バイアスも4次元のベクトルで表される。例えば、センサA(i=1)の計測値は、計測値部分の1番目の要素となり、センサAの暫定バイアスは、暫定バイアスの1番目の要素となる。
【0020】
暫定バイアス生成部7は、遺伝的アルゴリズムや粒子群最適化など、任意の方法により暫定バイアスを生成することができる。暫定バイアス生成部7による暫定バイアスの生成方法については後述する。
【0021】
補正計測値算出部8は、対象データ記憶部4に記憶された対象データに含まれる計測値を、暫定バイアス生成部7により生成された暫定バイアスによって補正することにより、補正計測値を算出する。補正計測値とは、各センサの計測値から各センサの暫定バイアスを差し引いたものである。これにより、補正計測値算出部8は、補正計測値と関連情報とを含む補正データを生成する。
【0022】
補正計測値はセンサ毎に算出されるため、補正データの計測値部分は、対象データの計測値部分と同じ次元を有する。すなわち、対象データの計測値部分がn次元である場合、補正データの計測値部分もn次元となる。また、補正計測値算出部8は、各対象データに対して補正データを生成するため、対象データ群に含まれる対象データと同数の補正データ(補正データ群)が生成される。
【0023】
類似度算出部9は、基準モデル記憶部6に記憶された基準モデルと、補正計測値算出部8によって生成された補正データと、に基づいて、類似度を算出する。算出された類似度が高いほど、補正データに含まれる補正計測値が、バイアスが0である場合の計測値に類似していることを意味する。
【0024】
そして、ここでは、対象データの計測値はバイアスが0である場合の計測値にバイアスが加わったものと考えている。よって、対象データの計測値から暫定バイアスを差し引いた結果である補正計測値の類似度が高いことは、対象データに発生しているバイアスと暫定バイアスが近いことを意味する。
【0025】
類似度算出部9は、補正データごとに類似度を算出する。類似度算出部9は、補正データの関連情報と、補正データの類似度と、を対応づけることにより、類似度と関連情報とを含む類似度データを生成する。類似度算出部9は、補正データごとに類似度データを生成するため、補正データ群に含まれる補正データと同数の類似度データ(類似度データ群)が生成される。なお、類似度算出部9による類似度の算出方法は任意である。類似度算出部9による類似度の算出方法については後述する。
【0026】
類似度選択部10は、類似度算出部9によって補正データ毎に算出された複数の類似度の中から、値の大きさに応じて一部の類似度を選択する。類似度選択部10により選択された類似度は、後述するスコアの算出に用いられる。類似度選択部10による類似度の選択方法については後述する。
【0027】
スコア算出部11は、類似度選択部10により選択された類似度に基づいて、スコアを算出する。スコアは、補正データ群に含まれる補正計測値全体の基準モデルに対する類似度を、所定の基準に基づいて評価したものである。スコアの例としては、選択された類似度の平均値、中央値、最頻値などがあるが、これに限られない。スコア算出部11によるスコアの算出方法については後述する。
【0028】
推定バイアス決定部12は、スコア算出部7により算出されたスコアに基づいて、暫定バイアス生成部7により生成された複数の暫定バイアスの中から、推定バイアスを決定する。具体的には、推定バイアス決定部12は、所定の終了条件を満たすまで、暫定バイアス生成部7に暫定バイアスを繰り返し生成させ、生成された複数の暫定バイアスの中でスコアが最大の暫定バイアスを、推定バイアスとして決定する。すなわち、推定バイアス決定部12は、スコアが最大となる暫定バイアスを探索することにより、推定バイアスを決定する。推定バイアス決定部12により決定された推定バイアスは、このバイアス推定装置によるバイアスの推定結果として、推定バイアス記憶部13に記憶される。
【0029】
次に、本実施形態に係るバイアス推定装置のハードウェア構成について、
図3を参照して説明する。本実施形態に係るバイアス推定装置は、
図3に示すように、コンピュータ装置100により構成される。コンピュータ装置100は、CPU101と、入力インターフェース102と、表示装置103と、通信装置104と、主記憶装置105と、外部記憶装置106とを備え、これらはバス107により相互に接続されている。
【0030】
CPU(中央演算装置)101は、主記憶装置105上で、バイアス推定プログラムを実行する。バイアス推定プログラムとは、バイアス推定装置の上述の各機能構成を実現するプログラムのことである。CPU101が、バイアス推定プログラムを実行することにより、各機能構成は実現される。
【0031】
入力インターフェース102は、キーボード、マウス、及びタッチパネルなどの入力装置からの操作信号を、バイアス推定装置に入力する。入力インターフェース102は、例えば、USBやイーサネット(登録商標)であるが、これに限られない。基準データや対象データの期間などの情報は、この入力インターフェース102を介してバイアス推定装置に入力することができる。
【0032】
表示装置103は、バイアス推定装置から出力される映像信号を表示する。表示装置103は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、CRT(ブラウン管)、及びPDP(プラズマディスプレイ)であるが、これに限られない。推定バイアス記憶部13に記憶された推定バイアスなどの情報は、この表示装置103により表示することができる。
【0033】
通信装置104は、バイアス推定装置が外部装置と無線又は有線で通信するための装置である。通信装置104は、例えば、モデムやルータであるが、これに限られない。計測データ、基準データ、対象データなどの情報は、この通信装置104を介して外部装置から入力することができる。この場合、バイアス推定装置は、計測データ記憶部1、データ抽出部2、基準データ記憶部3、及び対象データ記憶部4を備えなくてもよい。
【0034】
主記憶装置105は、バイアス推定プログラムの実行の際に、バイアス推定プログラム、バイアス推定プログラムの実行に必要なデータ、及びバイアス推定プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。バイアス推定プログラムは、主記憶装置105上で展開され、実行される。主記憶装置105は、例えば、RAM、DRAM、SRAMであるが、これに限られない。計測データ記憶部1、基準データ記憶部3、対象データ記憶部4、基準モデル記憶部6、及び推定バイアス記憶部13は、主記憶装置105上に構築されてもよい。
【0035】
外部記憶装置106は、バイアス推定プログラム、バイアス推定プログラムの実行に必要なデータ、及びバイアス推定プログラムの実行により生成されたデータなどを記憶する。これらのプログラムやデータは、バイアス推定プログラムの実行の際に、主記憶装置105に読み出される。外部記憶装置106は、例えば、ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、及び磁気テープであるが、これに限られない。計測データ記憶部1、基準データ記憶部3、対象データ記憶部4、基準モデル記憶部6、及び推定バイアス記憶部13は、主記憶装置105上に構築されてもよい。
【0036】
なお、バイアス推定プログラムは、コンピュータ装置100に予めインストールされていてもよいし、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていてもよい。また、バイアス推定プログラムは、インターネット上にアップロードされていてもよい。
【0037】
次に、本実施形態に係るバイアス推定方法について、
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係るバイアス推定装置の動作を示すフローチャートである。このバイアス推定装置は、複数回の探索により推定バイアスを決定する。以下では、バイアス推定装置の動作について、具体例を用いて詳細に説明する。
【0038】
まず、1回目の探索が開始すると、ステップS1において、基準モデル構築部5は、基準モデルを構築する。まず、データ抽出部2が計測データ記憶部1から基準データ及び対象データを抽出し、基準データ記憶部3及び対象データ記憶部4にそれぞれ格納する。基準データ記憶部3及び対象データ記憶部4に記憶された基準データ群及び対象データ群の計測値部分は、それぞれ以下のように表される。
【0040】
上記の式において、Kは基準データの数、Nは対象データの数、nはセンサの数である。また、各計測値部分の各要素(例えば、x
1)は、n個の計測値からなるn次元ベクトルである。
【0041】
次に、基準モデル構築部5は、基準データ記憶部3から基準データ群を取得し、主成分分析により、基準データ群の計測値部分の主成分と、各主成分に対応する固有値とを求める。主成分及び固有値は以下の式で表される。
【0043】
上記の式において、主成分のi番目の要素p
iと固有値のi番目の要素λ
iとは対応する。基準モデル構築部5は、値が大きい順に上位85%の固有値を抽出し、抽出した固有値に対応する主成分から、以下の基準モデルPを構築する。
【0045】
こうして構築された基準モデルPは、基準モデル記憶部6に記憶される。なお、基準モデルは、上記のPに限られず、他の方法で構築されてもよい。また、抽出される固有値は、上位85%に限られない。
【0046】
ステップS2において、暫定バイアス生成部7は、以下のように、変数b,b
f,MS,TS,ICを初期化する。
【0048】
bは、暫定バイアス生成部7が生成した最新の暫定バイアス用の変数である。b
fは、スコアが最大の暫定バイアス用の変数である。上述の通り、暫定バイアスは対象データの計測値部分と同じ次元を有するから、変数b,b
fは、n次元のベクトルとなる。変数b,b
fのi番目の要素は、センサiの暫定バイアスである。
【0049】
また、MSは、最大のスコア用の変数である。-Infは、数値計算上の負の無限大である。TSは、スコア算出部11が算出した最新のスコア用の変数である。ICは、インクリメント用の変数である。変数ICは、処理の終了条件の判定に利用される。
【0050】
ステップS3において、補正計測値算出部8は、補正データを生成する。上述の通り、補正データは、対象データの計測値から暫定バイアスを差し引くことにより生成される。したがって、補正データ群は、以下のように表される。
【0052】
ステップS4において、類似度算出部9は、補正データ群に含まれる各補正データの基準モデルに対する類似度を算出する。まず、類似度算出部9は、各補正データの基準モデルに対する誤差を算出する。誤差は、以下のように表される。
【0054】
次に、類似度算出部9は、上記の誤差に基づいて、各補正データの基準モデルに対する類似度を算出する。類似度は、以下のように表される。
【0056】
これにより、各補正データの類似度s
iが算出され、類似度データ群Sが生成される。なお、類似度は、上記のs
iに限られず、他の方法により算出されてもよい。
【0057】
ステップS5において、類似度選択部10は、類似度データ群Sの中から、値が大きい順に10%の類似度s
iを選択する。選択された複数の類似度s
iは、変数Rに代入される。
【0058】
ステップS6において、スコア算出部11は、暫定バイアスbのスコアTSを算出する。本実施例では、スコアTSとして、変数Rに含まれる類似度s
iの平均値が算出される。すなわち、スコアTSは、類似度データ群Sにおける上位10%の類似度s
iの平均値となる。このようにスコアTSを算出することにより、センサの計測値が以下に述べる状況下において、バイアスの推定精度を向上させることができる。
【0059】
対象データ群の計測値が、
図5に示すように、外的要因によって乱高下する不定部分と、基準データ群の計測値でも頻繁に観察されるパターンである安定部分と、に分けられる状況を考える。
【0060】
この状況下では、安定部分と比べて不安定部分からバイアスを正しく推定することは難しい。なぜならば、外的要因がバイアスを打ち消す方向に働いている可能性があるからである。このため、スコアTSによる暫定バイアスbの推定精度を向上させるためには、安定部分の類似度s
iを用いてスコアTSを算出するのが好ましい。
【0061】
ここで、安定部分の類似度s
iは、類似度データ群Sに含まれる類似度s
iのうち、値が大きい類似度s
iである傾向が強いと考えられる。これは、安定部分は、基準データ群及び対象データ群の両方に含まれるため、基準モデルに対する類似度s
iが高くなるためである。
【0062】
これに対して、類似度データ群Sに含まれる類似度s
iのうち、値が小さい類似度s
iは、不定部分の類似度s
iである傾向が強いと考えられる。これは、対象データ群に含まれる不定部分と類似した不定部分が基準データ群に含まれるとは限らないためである。
【0063】
したがって、本実施例のように、類似度データ群Sに含まれる類似度s
iのうち、値が大きい類似度s
i、すなわち、安定部分の類似度s
iを用いてスコアTSを算出することにより、不定部分による影響を抑制し、バイアスの推定精度を向上させることができる。
【0064】
ステップS7において、推定バイアス決定部12は、スコア算出部11により算出されたスコアTSと、最大スコアMSとを比較する。1回目の探索では、上述の通り、最大スコアMSは負の無限大で初期化されているため、MS<TSとなり(ステップS7のYES)、処理はステップS8に進む。
【0065】
ステップS8において、推定バイアス決定部12は、以下のように変数IC,MS,b
fを更新する。
【0067】
すなわち、変数ICを初期化し、最大スコアMSをスコアTSに設定し、最大スコアMSに対応する暫定バイアスb
fを、スコアTSに対応する暫定バイアスbに設定する。これにより、1回目の探索が終了する。
【0068】
その後、ステップS9において、推定バイアス決定部12は、暫定バイアス生成部7に、新たな暫定バイアスbの生成を要求する。暫定バイアス生成部7は、新たに設定されたb
fに、所定のノイズを付加することにより、新たな暫定バイアスbを生成する。そして、バイアス推定装置は、2回目の探索を開始する。
【0069】
なお、新たな暫定バイアスbを生成するためのノイズとして、例えば、平均ゼロかつ標準偏差εの正規分布N(0,ε)から生成したn次元の乱数ベクトルを用いることができる。
【0070】
これに対して、2回目以降の探索において、スコアTSが最大スコアMS以下の場合(ステップS7のNO)、処理はステップS10に進む。
【0071】
ステップS10において、推定バイアス決定部12は、以下のように変数ICを更新する。
【0073】
すなわち、推定バイアス決定部12は、変数ICを1追加する。この際、最大スコアMS及び最大スコアMSに対応する暫定バイアスbfは、更新されない。
【0074】
そして、ステップS11において、推定バイアス決定部12は、変数ICが100を超えたか判定し、IC≦100の場合(ステップS11のNO)、処理はステップS9に進む。これに対して、IC>100の場合(ステップS11のYES)、処理はステップS12に進む。
【0075】
ステップS12において、推定バイアス決定部12は、その時点で設定された暫定バイアスb
fを、このバイアス推定装置の推定結果、すなわち、推定バイアスとして決定する。
【0076】
すなわち、このバイアス推定装置は、暫定バイアスの生成と、スコアによる評価を繰り返し、終了条件が満たされるまでの間、スコアが最大となる暫定バイアスを探索し、スコアが最大の暫定バイアスを推定バイアスとして出力する。
【0077】
こうして決定された推定バイアスは、推定バイアス記憶部13に記憶される。推定バイアス記憶部13に記憶された推定バイアスは、表示装置103により表示することができる。
【0078】
ここで、
図6は、表示装置103に表示された推定結果の一例を示す図である。上述の通り、推定バイアス(暫定バイアス)は計測値と同一の次元を有する。このため、
図6に示すように、推定バイアスは、センサ(センサA〜D)ごとの計測値のバイアスの値として表示することができる。
【0079】
以上説明した通り、本実施形態に係るバイアス推定装置及び方法は、安定部分の類似度を用いてスコアを算出し、このスコアが最大となる暫定バイアスを、推定バイアスとして決定することができる。このため、外的要因による推定精度の低下を抑制し、バイアスの推定精度を向上させることができる。
【0080】
また、推定結果として得られる推定バイアスは、計測値と同じ次元を有するため、ユーザは、推定結果に基づいてバイアスの発生状況を容易に把握することができる。このため、ユーザは、意思決定や故障診断などのために、推定結果を容易に活用することができる。
【0081】
なお、ステップS5において、類似度選択部10が選択する類似度は、上位10%に限られない。類似度選択部10は、例えば、上位20%の類似度や、所定の閾値以上の類似度を選択してもよい。
【0082】
また、ステップS6において、スコア算出部11が算出するスコアは、選択された類似度の平均値に限られない。スコアは、選択された類似度の中央値や最頻値であってもよい。
【0083】
さらに、ステップS11における終了条件は、IC>100に限られず、IC>10やIC>1000であってもよい。また、終了条件は、探索の総回数により定められていてもよい。この場合、ステップS8において、ICをリセットせず、IC=IC+1とすればよい。
【0084】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るバイアス推定装置及び方法について、
図7を参照して説明する。本実施形態では、基準モデルはニューラルネットワークを用いて構築される。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0085】
図7は、本実施形態で利用するニューラルネットワークの構造を示す図である。このニューラルネットワークは、入力層及び出力層が、計測データの計測値部分と同一のn次元を有する。ニューラルネットワークのその他の構造上の制約、すなわち、中間層の構造は、用途に応じて任意に設定可能である。このニューラルネットワークとして、例えば、M. A. Kramer, “Nonlinear principal component analysis using autoassociative neural networks,” AIChE Journal, vol. 37, no. 2, pp. 233-243, 1991.に記載の、Autoassociative Neural Networkを用いることができる。
【0086】
本実施形態に係るバイアス推定装置において、基準モデル構築部5は、
図7のニューラルネットワークに、基準データ群の計測値部分を学習させる。具体的には、基準データ群の計測値部分を入力信号及び教師信号として入力し、ある基準データ群の計測値部分を入力したときに、入力値と同一の出力値が得られるように学習を行う。また、基準モデル構築部5は、入出力を同一にする目的の他に、ニューラルネットワークのパラメータが極端な値を取らないように学習させるなど、用途に応じた目的を加えて学習を行ってもよい。本実施形態では、こうして学習させたニューラルネットワークを、基準モデルとして利用する。
【0087】
ここで、本実施形態に係るバイアス推定方法について説明する。まず、ステップS1において、基準モデル構築部5は、基準モデルfを構築する。基準モデルfは、学習済みのニューラルネットワークを関数で表したものである。この基準モデルfは、入力と出力が同一の次元となる。
【0088】
その後、ステップS3までは第1実施形態と同様である。すなわち、ステップS3において、補正計測値算出部8は、以下の補正データ群を生成する。
【0090】
ステップS4において、類似度算出部9は、補正データ群に含まれる各補正データの基準モデルに対する類似度を算出する。まず、類似度算出部9は、各補正データの基準モデルに対する誤差を算出する。本実施形態において、誤差は、以下のように表される。
【0092】
次に、類似度算出部9は、上記の誤差に基づいて、各補正データの基準モデルに対する類似度を算出する。類似度は、第1実施形態と同様、以下のように表される。
【0094】
これにより、各補正データの類似度s
iが算出され、類似度データ群Sが生成される。以降の各ステップは、第1実施形態と同様である。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、ニューラルネットワークを用いて基準モデルを構築することができる。また、ニューラルネットワークの学習の目的を変化させることにより、用途に応じた基準モデルを容易に構築することができる。
【0096】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るバイアス推定装置及び方法について説明する。本実施形態では、スコアは、類似度の最大値及び中央値を用いて算出される。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態に係るバイアス推定装置において、類似度選択部10は、類似度算出部9により算出された類似度の中から、値が最大値の類似度と、中央値の類似度と、を選択する。スコア算出部11は、類似度選択部10により選択された2つの類似度に基づいて、スコアを算出する。
【0098】
ここで、本実施形態に係るバイアス推定方法について説明する。本実施形態に係るバイアス推定装置の動作は、ステップS1〜ステップS4までは、第1実施形態と同様である。ステップS4において、第1実施形態と同様、以下の類似度群Sが得られたものとする。
【0100】
本実施形態では、ステップS5において、類似度選択部10は、この類似度群Sの中から、最大値s
aと中央値s
bとを選択する。
【0101】
そして、スコア算出部11は、類似度選択部10により選択された2つの類似度s
a,s
bに基づいて、以下のようにスコアを算出し、変数TSに代入する。
【0103】
このようにスコアを算出することにより、以下に示す状況において、バイアスの推定精度を向上させることができる。
【0104】
外的要因の計測値への影響が、基準モデルに対する類似度を下げる状況を考える。この状況下で、適切なバイアス推定が実施された場合、類似度群Sにおける中央値s
bからの外れ値は、中央値s
bより低い側に多く分布し、中央値s
bより高い側の外れ値は、中央値s
bの近くに分布することが予想される。したがって、類似度群Sにおける中央値s
bと最大値s
aとの差が大きい場合、バイアス推定が不適切である可能性が高いと考えられる。そこで、中央値s
bと最大値s
aとの差に関する量をスコアに含めることにより、バイアスの推定精度を向上させることができる。
【0105】
ただし、中央値s
bと最大値s
aが近くても、類似度そのものが小さいと正しい推定とは考えられないため、中央値s
bと最大値s
aの差を小さくしつつ、中央値s
bと最大値s
aの値も大きくするため、平方根の差をスコアとしている。
【0106】
以上説明した通り、本実施形態によれば、類似度群Sの中央値s
bと最大値s
aとに基づいて、スコアを算出することができる。本実施形態のスコアは、単独で利用してもよいし、第1実施形態で説明したスコアと併用してもよい。
【0107】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るバイアス推定装置及び方法について、
図8〜
図10を参照して説明する。本実施形態では、計測データに質的変数が含まれ、この質的変数を量的変数に変換してバイアスを推定する。
【0108】
ここで、
図8は、本実施形態に係るバイアス推定装置の機能構成を示すブロック図である。
図8に示すように、このバイアス推定装置は、データ変換部14をさらに備える。他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0109】
データ変換部14は、計測データ記憶部1に記憶された計測データ群に含まれる質的変数を量的変数に変換する。質的変数とは、物体名(「人」、「車」など)や状態(「在」「不在」など)のような、量では表せない変数である。
【0110】
図9は、質的変数を含む計測データ群の一例を示す図である。
図9に示すように、この計測データ群の各計測データには、計測日時、物体名、X座標、及びY座標が含まれる。計測日時は関連情報部分であり、物体名、X座標、及びY座標は、計測値部分である。このような計測データは、例えば、画像センサから取得される。
【0111】
図9における物体名は、画像センサに写っている物体の名前を示し、X座標及びY座標は、画像センサに写っている物体の位置を、画像上の一点を原点とするデカルト座標系で表現した座標を示す。「人」や「車」などの物体名は、量では表せないため、物体名は質的変数である。一方、X座標やY座標は量で示せるため、量的変数である。すなわち、
図9の計測データ群には、量的変数と質的変数とが混在している。
【0112】
データ変換部14は、計測データ記憶部1から、
図9のような計測データ群を取得し、計測データ群に含まれる質的変数を量的変数に変換する。データ変換部14による質的変数から量的変数への変換は、one-hot表現などの、任意の方法により実現できる。データ変換部14により変換された計測データは、新たな計測データとして、計測データ記憶部1に記憶される。バイアス推定装置は、データ変換部14により変換された計測データを用いて、計測値として質的変数を出力するセンサのバイアスを推定することができる。
【0113】
例えば、画像センサにおいて、基準状態では「人」が計測されることが多く、バイアスが発生すると「車」が計測されることが多くなる場合、データ変換部14によって「人」と「車」とを量的変数に変換して、それぞれの計測頻度を算出することにより、画像センサのバイアスを間接的に推定することができる。
【0114】
ここで、質的変数から量的変数への変換方法について、
図10を参照して説明する。
図10は、データ変換部14の動作を示すフローチャートである。
【0115】
まず、ステップS13において、データ変換部14は、計測データ記憶部1から計測データ群を取得し、取得した計測データ群の計測値部分を、質的変数部分と量的変数部分とに分割する。ここで、データ変換部14が取得した計測データ群の計測値部分は、n個のセンサのN回分の計測値により構成されたN行n列のテーブルで表現されるものとする。
【0116】
データ変換部14は、計測値部分を示すN行n列のテーブルから、質的変数である計測値の列を抜き出して、N行m列のテーブルXcを作成する。mは、質的変数である計測値の列の数である。また、データ変換部14は、計測値部分を示すN行n列のテーブルから、量的変数である計測値の列を抜き出して、N行(n−m)列のテーブルXvを作成する。n−mは、量的変数である計測値の列の数である。これにより、計測データ群の計測値部分は、質的変数を示すテーブルXcと、量的変数を示すテーブルXvと、に分割される。
【0117】
ステップS14において、データ変換部14は、テーブルXcをone-hot表現に変換して、N行h列のテーブルXwを作成する。hは、テーブルXcに含まれる質的変数の種類数に依存する。例えば、テーブルXcがN行1列のテーブルであり、質的変数の種類が「人」及び「車」の2種類である場合、テーブルXwは、N行2列のテーブルとなる。
【0118】
ステップS15において、データ変換部14は、テーブルXwとテーブルXvとを連結し、テーブルXzを作成する。テーブルXzは、N行(n−m+h)列のテーブルとなる。
【0119】
ステップS16において、データ変換部14は、テーブルXzの元となった計測データ群の関連情報の計測日時を利用して、テーブルXzの各行を、任意の期間(例えば、1時間や1日)ごとにグループ化する。テーブルXzを1日毎にグループ化した場合、i番目のグループをXz[i]とすると、例えば、1/1〜1/2のグループがXz[0]、1/2〜1/3のグループがXz[1]となる。
【0120】
次に、データ変換部14は、各グループXz[i]内の計測値の平均値を列ごとに算出し、各列の平均値を格納した1行(n−m+h)列のテーブルを作成する。このテーブルは、グループXz[i]に対して1つずつ作成される。そして、データ変換部14は、作成したテーブルを連結したテーブルZを作成する。グループXz[i]がM個作成された場合、テーブルZはM行(n−m+h)列のテーブルとなる。
【0121】
ステップS17において、データ変換部14は、テーブルZの元となった計測データ群の関連情報を利用して、テーブルZに対応した関連情報を作成する。例えば、テーブルZの1行目が1/1〜1/2の計測値の平均である場合、「計測期間:1/1〜1/2」のような関連情報を作成し、テーブルZの1行目の関連情報として対応づける。これにより、テーブルZを計測値部分、テーブルZに対応づけた関連情報を関連情報部分として有する、新たな計測データ群が作成される。作成された新たな計測データ群は、計測データ記憶部1に記憶される。
【0122】
以上のような構成により、本実施形態によれば、画像センサのように計測値が質的変数であるセンサのバイアスを推定することができる。また、計測データの計測値部分に、質的変数と量的変数が混在する場合であっても、質的変数を量的変数に変換し、各センサのバイアスを推定することができる。
【0123】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る故障診断装置及び方法について、
図11〜
図15を参照して説明する。本実施形態では、上述の各実施形態に係るバイアス推定装置及び方法により推定された推定バイアスに基づいて、センサの故障を診断する。ここで、
図11は、この故障診断装置の機能構成を示すブロック図である。
図11に示すように、この故障診断装置は、バイアス推定装置と、閾値記憶部15と、故障診断部16と、診断結果記憶部17と、を備える。
【0124】
バイアス推定装置は、上述の各実施形態に係るバイアス推定装置から任意に選択可能である。
図11において、バイアス推定装置の構成は、推定バイアス記憶部13以外は図示省略されている。
【0125】
閾値記憶部15は、センサにバイアス故障が発生しているか判定するための閾値を記憶する。この閾値は、各センサの計測値と同じ単位を有し、センサの仕様書などに応じてユーザにより設定される。閾値は、センサ名や計測値の単位と対応付けられた閾値データとして、閾値記憶部15に記憶される。
【0126】
ここで、
図12及び
図13は、閾値記憶部15に記憶された閾値データの一例を示す図である。
図12において、各閾値データは、センサ名と、閾値と、単位とを含む。すなわち、
図12の閾値データでは、各センサに対して、1つの閾値が設定されている。例えば、センサAの閾値は1℃である。
【0127】
これに対して、
図13において、各閾値データは、センサ名と、季節と、閾値と、単位とを含む。すなわち、
図13の閾値データでは、各センサに対して複数の季節が設定され、季節ごとに閾値が設定されている。例えば、センサAの夏の閾値は1℃であり、センサAの冬の閾値は3℃である。このように、各センサに対して、季節などの関連情報を対応させ、それぞれの関連情報ごとに閾値を設定してもよい。これにより、故障診断の精度を向上させることができる。
【0128】
故障診断部16は、推定バイアス記憶部13に記憶された各センサの推定バイアスと、閾値記憶部15に記憶された各センサの閾値と、に基づいて、各センサにバイアス故障が発生しているか診断する。故障診断部16は、推定バイアスが閾値より大きい場合、センサにバイアス故障が発生していると診断する。故障診断部16による診断結果は、診断結果記憶部17に記憶される。
【0129】
故障診断装置の各機能構成は、バイアス推定装置と同様、コンピュータ装置100に、故障診断プログラムを実行させることにより実現できる。
【0130】
次に、本実施形態に係る故障診断方法について、
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係る故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【0131】
ステップS18において、故障診断部16は、閾値記憶部15から、診断対象となるセンサの閾値を抽出する。診断対象となるセンサがn個の場合、n個の閾値が抽出される。故障診断部16は、抽出したn個の閾値を、閾値用の変数Hに代入する。
【0132】
ステップS19において、故障診断部16は、推定バイアス記憶部13から、診断対象となるセンサの推定バイアスを抽出する。診断対象となるセンサがn個の場合、n個の推定バイアスが抽出される。故障診断部16は、抽出したn個の推定バイアスの絶対値を、推定バイアス用の変数baに代入する。推定バイアスの絶対値を取ることにより、推定バイアスの正負を考慮せずに故障を診断することができる。
【0133】
ステップS20において、故障診断部16は、Hとbaとを比較して、センサにバイアス故障が発生しているか診断する。故障診断部16は、baがHより大きいセンサをバイアス故障ありと診断し、baがH以下のセンサを正常と診断する。故障診断部16による診断結果は、診断結果記憶部17に記憶される。診断結果記憶部17に記憶された診断結果は、表示装置103により表示することができる。
【0134】
ここで、
図15は、表示装置103により表示された診断結果の一例を示す図である。
図15において、各センサの診断結果は、センサ名、推定バイアス、閾値、及び単位を含む。例えば、センサAは推定バイアスが2℃であり、閾値が1℃であるため(H<ba)、故障と診断されている。
【0135】
以上説明した通り、本実施形態によれば、上述のバイアス推定装置及び方法によって推定された推定バイアスを用いてセンサのバイアス故障を診断することができる。
【0136】
なお、ステップS19において、変数baに、推定バイアスの絶対値ではなく、推定バイアスの値をそのまま代入してもよい。この場合、センサの閾値を上限値又は下限値の一方だけ設定してもよい。また、センサの閾値を上限値と下限値の2つ設定してもよい。この場合、故障診断部16は、推定バイアスの値が閾値の上下限値の範囲外の場合に、バイアス故障ありと診断すればよい。
【0137】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る故障診断装置及び方法について、
図16を参照して説明する。本実施形態では、スコアに基づいてセンサ、又はセンサの計測対象である機器の故障を診断する。ここで、
図16は、この故障診断装置の機能構成を示すブロック図である。
図16に示すように、この故障診断装置は、計測データ記憶部1と、データ抽出部2と、基準データ記憶部3と、対象データ記憶部4と、基準モデル構築部5と、基準モデル記憶部6と、類似度算出部9と、類似度選択部10と、スコア算出部11と、閾値記憶部15と、故障診断部16と、診断結果記憶部17と、を備える。この故障診断装置は、センサのバイアスを推定しないため、第5実施形態に係る故障診断装置とは異なり、暫定バイアス生成部7、補正計測値算出部8、推定バイアス決定部12、及び推定バイアス記憶部13を備えなくてもよい。
【0138】
本実施形態において、類似度算出部9は、基準モデル記憶部6に記憶された基準モデルと、対象データ記憶部4に記憶された対象データと、に基づいて類似度を算出する。ここでは、算出された類似度が低いほど、何らかの故障が発生している可能性が高いことを意味する。
【0139】
類似度算出部9は、対象データごとに類似度を算出する。類似度算出部9は、対象データの関連情報と、対象データの類似度と、を対応づけることにより、類似度と関連情報とを含む類似度データを生成する。類似度算出部9は、対象データごとに類似度データを生成するため、対象データ群に含まれる対象データと同数の類似度データ(類似度データ群)が生成される。なお、類似度算出部9による類似度の算出方法は、上述の通りである。
【0140】
類似度選択部10は、類似度算出部9によって対象データ毎に算出された複数の類似度の中から、値の大きさに応じて一部の類似度を選択する。類似度選択部10により選択された類似度は、スコアの算出に用いられる。類似度選択部10による類似度の選択方法は上述の通りである。
【0141】
スコア算出部11は、類似度選択部10により選択された類似度に基づいて、スコアを算出する。スコアは、対象データ群に含まれる計測値全体の基準モデルに対する類似度を、所定の基準に基づいて評価したものである。スコアの例としては、選択された類似度の平均値、中央値、最頻値などがあるが、これに限られない。スコア算出部11によるスコアの算出方法は上述の通りである。
【0142】
閾値記憶部15は、センサ又はセンサの計測対象である機器に何らかの故障が発生しているか判定するための閾値を記憶する。この閾値は、スコアの閾値であり、ユーザにより任意に設定される。閾値は、診断対象となっているセンサ群の種類やパターンなどで条件付けられた閾値データとして、閾値記憶部15に記憶される。例えば、診断対象のセンサ群が温度計と湿度計を含むなら閾値は1、温度計のみなら閾値は2、のようにする。閾値記憶部15から閾値を抽出する際、診断対象となっているセンサ群が記憶されている条件のうちの1つだけと一致した場合は、対応する閾値を抽出結果とする。複数の条件と一致した場合は、所定の基準によって閾値を生成する。生成する閾値は、例えば、一致した条件に対応する閾値の最大値、最小値、平均値などであるが、これらに限らない。また、診断対象のセンサ群がどのようなパターンであっても必ず一致するという条件と、それに対応する閾値を記憶させておいてもよい。
【0143】
故障診断部16は、スコア算出部11により算出されたスコアと、閾値記憶部15から診断対象のセンサ群に基づいて抽出したスコアの閾値と、を用いて、センサ又はセンサの計測対象である機器に何らかの故障が発生しているか診断する。故障診断部16は、算出されたスコアが閾値より小さい場合、センサ又はセンサの計測対象である機器に何らかの故障が発生していと診断する。故障診断部16による診断結果は、診断結果記憶部17に記憶される。
【0144】
この故障診断装置は、上述のステップS1,S4〜S6,S18,S20の処理を実行することにより、センサ又はセンサの計測対象である機器に何らかの故障が発生していることを診断できる。
【0145】
すなわち、ステップS1において、基準モデル構築部5は、基準モデルを構築する。ステップS4において、類似度算出部9は、対象データ群に含まれる各対象データの基準モデルに対する類似度を算出する。ステップS5において、類似度選択部10は、類似度データ群Sの中から、値が大きい順に10%の類似度s
iを選択する。ステップS6において、スコア算出部11は、対象データ群のスコアTSを算出する。ステップS18において、故障診断部16は、閾値記憶部15から、診断対象のセンサ群に基づいてスコアの閾値を抽出する。ステップS20において、故障診断部16は、スコアと閾値とを比較して、センサ又はセンサの計測対象である機器に故障が発生しているか診断する。
【0146】
以上説明した通り、本実施形態によれば、対象データ群のスコアを用いてセンサ又はセンサの計測対象である機器の故障を診断することができる。
【0147】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。