(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240060
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】被保持部材の仮止め具および保持具
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20171120BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20171120BHJP
F16B 21/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F16B5/02 R
F16B35/04 L
F16B21/18 F
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-256017(P2014-256017)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-114233(P2016-114233A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 修二
(72)【発明者】
【氏名】松野 浩人
【審査官】
保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−127863(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/027080(WO,A1)
【文献】
特開2009−127829(JP,A)
【文献】
特開2012−167716(JP,A)
【文献】
特開2013−139631(JP,A)
【文献】
特開2009−180234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B5/00−5/12
21/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部とこの棒状部の根本側に一体的に設けられていてベースに一体的に固定される頭部を有し、前記棒状部の先端側には、外周面にねじ溝が形成されているねじ加工部が設けられ、前記棒状部の根本側には、前記ねじ溝が形成されていないねじ非加工部が設けられていて、前記ねじ非加工部のねじ加工部側端部には、前記ねじ加工部に形成されているねじ山に向けて外径が拡大するねじ非加工拡径部が設けられているとともに、このねじ非加工拡径部の最も径が小さい部分である小径部位に連接して同小径部位と同径のねじ非加工小径部が設けられているスタッドと、
このスタッドの前記棒状部に組付けられて前記スタッドの頭部との間で被保持部材を保持する保持具を備えた被保持部材の仮止め具であって、
前記保持具には、前記棒状部を受け入れるスタッド受入穴と、前記棒状部が前記スタッド受入穴に受け入れられたときに、前記ねじ溝に嵌合する爪部を有して前記ねじ加工部に対して弾性的に係合可能な第1の係止部と、前記棒状部の前記ねじ非加工部に係合する爪部を有して前記ねじ非加工部に対して弾性的に係合可能な第2の係止部が設けられていて、
前記スタッドと前記保持具にて前記被保持部材が固定保持されている固定保持状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工小径部に係合し、前記保持具が前記固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工拡径部に係合するように設定されている被保持部材の仮止め具。
【請求項2】
棒状部とこの棒状部の根本側に一体的に設けられていてベースに一体的に固定される頭部を有し、前記棒状部の先端側には、外周面にねじ溝が形成されているねじ加工部が設けられ、前記棒状部の根本側には、前記ねじ溝が形成されていないねじ非加工部が設けられていて、前記ねじ非加工部のねじ加工部側端部には、前記ねじ加工部に形成されているねじ山に向けて外径が拡大するねじ非加工拡径部が設けられているとともに、このねじ非加工拡径部の最も径が小さい部分である小径部位に連接して同小径部位と同径のねじ非加工小径部が設けられているスタッドの前記棒状部に組付けられて前記スタッドの頭部との間で被保持部材を保持する保持具であって、
前記保持具には、前記棒状部を受け入れるスタッド受入穴と、前記棒状部が前記スタッド受入穴に受け入れられたときに、前記ねじ溝に嵌合する爪部を有して前記ねじ加工部に対して弾性的に係合可能な第1の係止部と、前記棒状部の前記ねじ非加工部に係合する爪部を有して前記ねじ非加工部に対して弾性的に係合可能な第2の係止部が設けられていて、
前記スタッドと前記保持具にて前記被保持部材が固定保持されている固定保持状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工小径部に係合し、前記保持具が前記固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工拡径部に係合するように設定されている保持具。
【請求項3】
前記第1の係止部が有する爪部は、前記スタッド受入穴の周方向にて一対で設けられていて、その配置は前記ねじ溝のピッチに合わせて相互に半ピッチずらして設けられている請求項2に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部とこの棒状部の根本側に一体的に設けられてい
てベースに一体的に固定される頭部からなるスタッドと、このスタッドの前記棒状部に組付けられて前記スタッド
の頭部との間で被保持部材(例えば、取付部品等の部材)を保持する保持具を備えた被保持部材の仮止め具およびこの仮止め具における前記保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した被保持部材の仮止め具は、例えば、車両の組立に際して、該当部品(被保持部材)を仮止めする場合において用いられていて、スタッドに対する保持力を高めるように構成した保持具が、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−185902号公報
【発明の概要】
【0004】
上記引用文献1に記載されている保持具では、スタッドに形成されているねじ溝に嵌合する爪部を有してスタッドの棒状部に対して弾性的に係合するスタッド係止部を多数(2対4個)設けて、スタッドに対する保持力を高めるようにしている。かかる保持具では、各スタッド係止部の爪部がすべてスタッドのねじ溝に嵌合しているため、各スタッド係止部の爪部にてスタッドに対して所期の係合力が得られるときには、保持具の緩み防止力が得られる。しかし、各スタッド係止部がクリープ劣化等により、各スタッド係止部のスタッドに対する係合力が低下すると、保持具がスタッドのねじ溝に対して回転するようになって、スタッドから離脱する(外れる)おそれがある。
【0005】
本発明は、上記した課題に対処すべくなされたもの(保持具のスタッドからの離脱を防止すること)であり、
棒状部とこの棒状部の根本側に一体的に設けられてい
てベースに一体的に固定される頭部からなり、前記棒状部の先端側には、外周面にねじ溝が形成されているねじ加工部が設けられ、前記棒状部の根本側には、前記ねじ溝が形成されていないねじ非加工部が設けられていて、前記ねじ非加工部のねじ加工部側端部には、前記ねじ加工部に形成されているねじ山に向けて外径が拡大するねじ非加工拡径部が設けられているとともに、このねじ非加工拡径部の最も径が小さい部分である小径部位に連接して同小径部位と同径のねじ非加工小径部が設けられているスタッドと、
このスタッドの前記棒状部に組付けられて前記スタッド
の頭部との間で被保持部材を保持する(仮止めする)保持具を備えた被保持部材の仮止め具であって、
前記保持具には、前記棒状部を受け入れるスタッド受入穴と、前記棒状部が前記スタッド受入穴に受け入れられたときに、前記ねじ溝に嵌合する爪部を有して前記ねじ加工部に対して弾性的に係合可能な第1の係止部と、前記棒状部の前記ねじ非加工部に係合する爪部を有して前記ねじ非加工部に対して弾性的に係合可能な第2の係止部が設けられていて、
前記スタッドと前記保持具にて前記被保持部材が固定保持されている固定保持状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工小径部に係合し、前記保持具が前記固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工拡径部に係合するように設定されていることに特徴がある。
【0006】
また、本発明は、上記した課題に対処すべくなされたものであり、
棒状部とこの棒状部の根本側に一体的に設けられてい
てベースに一体的に固定される頭部からなり、前記棒状部の先端側には、外周面にねじ溝が形成されているねじ加工部が設けられ、前記棒状部の根本側には、前記ねじ溝が形成されていないねじ非加工部が設けられていて、前記ねじ非加工部のねじ加工部側端部には、前記ねじ加工部に形成されているねじ山に向けて外径が拡大するねじ非加工拡径部が設けられているとともに、このねじ非加工拡径部の最も径が小さい部分である小径部位に連接して同小径部位と同径のねじ非加工小径部が設けられているスタッドの前記棒状部に組付けられて
前記スタッドの頭部との間で被保持部材を保持する保持具であって、
前記保持具には、前記棒状部を受け入れるスタッド受入穴と、前記棒状部が前記スタッド受入穴に受け入れられたときに、前記ねじ溝に嵌合する爪部を有して前記ねじ加工部に対して弾性的に係合可能な第1の係止部と、前記棒状部の前記ねじ非加工部に係合する爪部を有して前記ねじ非加工部に対して弾性的に係合可能な第2の係止部が設けられていて、
前記スタッドと前記保持具にて前記被保持部材が固定保持されている固定保持状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工小径部に係合し、前記保持具が前記固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、前記第1の係止部が前記ねじ加工部に係合するとともに、前記第2の係止部が前記ねじ非加工拡径部に係合するように設定されていることに特徴がある。
【0007】
本発明による「被保持部材の仮止め具」と「保持具」においては、仮に、保持具に設けられている第1の係止部のクリープ劣化等により、スタッドの棒状部に形成されているねじ溝に対する第1の係止部の係合力が低下して、保持具がスタッドから外れる方向に回転したとしても、保持具が固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、保持具における第1の係止部がスタッドのねじ溝に係合した状態で、保持具における第2の係止部がスタッドにおけるねじ非加工小径部からねじ非加工拡径部に係合する(乗り上げる)ようになる。この場合には、第2の係止部がねじ非加工小径部からねじ非加工拡径部に乗り上げることにより、スタッドの棒状部に対する第2の係止部の係合力が増大して、保持具(第1の係止部および第2の係止部)のスタッド(棒状部)に対する係合力(回転規制力)が増大する。このため、その後においては、保持具のスタッドに対する回転が抑制されて、保持具の緩み防止がなされ、保持具のスタッドからの離脱が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による「被保持部材の仮止め具」が車両の組立に際して使用されている一実施形態を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明による「被保持部材の仮止め具」のスタッドに保持具が組付けられて、被保持部材が固定保持されている状態(固定保持状態)を概略的に示した縦断断面図である。
【
図5】
図2および
図3に示した実施形態において、保持具が固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態(解除保持状態)を概略的に示した縦断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図6は本発明の一実施形態を概略的に示している。この実施形態では、車両の組立に際して、ブレーキペダルユニットを固定するためのモジュールブラケット10(ベース)に対してブレーキペダルブラケット20(被保持部材)を仮止めする場合において、スタッド30と保持具40を備えた「被保持部材の仮止め具」が用いられている。なお、モジュールブラケット10は車体に対して固定されるように構成されている。
【0010】
スタッド30は、棒状部31と、棒状部31の根本部位(図示下方部位)に一体的に設けられている頭部32を有している。スタッド30は、頭部32にてモジュールブラケット10に溶接により一体的に固定されている。棒状部31は、ねじ加工部31Aとねじ非加工部31Bからなる。ねじ加工部31Aは、棒状部31の先端側(図示上方側)に設けられていて、所定の径を有し、その外周面には所定ピッチのねじ溝31a1が形成されている。
【0011】
ねじ非加工部31Bは、棒状部31の根本側(図示下方側)から先端側に向かう順に形成されたねじ非加工大径部31b1、ねじ非加工小径部31b2及びねじ非加工拡径部31b3によって構成されている。ねじ非加工大径部31b1は、ねじ加工部31Aとほぼ同径の円柱形状を有する。ねじ非加工小径部31b2は、ねじ非加工拡径部31b3の最も径が小さい小径部位に連接して設けられていて、同小径部位と同径の円柱形状を有する。ねじ非加工拡径部31b3は、ねじ溝31a1が形成されているねじ部31a(ねじ加工部31A)のねじ山31a2に向けて外径が拡大する円錐台形状を有する。
【0012】
上記したスタッド30は、所定の形状に成形された素材において、素材状態の棒状部31の一部(ねじ加工部31A)にねじ溝31a1が加工されることにより製作されている。
【0013】
保持具40は、
図2および図3からも明らかなように、スタッド30の棒状部31に組付けられてスタッド30の頭部32との間でブレーキペダルブラケット20(被保持部材)を保持する保持具であり、樹脂製であって、スタッド受入穴41と第1の係止部42と第2の係止部43が設けられているとともに、ストッパ片44とストッパ突起45が設けられている。スタッド受入穴41は、保持具40の軸心部に設けられていて、図示下方が開口しており、スタッド30の棒状部31を内部に受け入れることが可能に構成されている。
【0014】
第1の係止部42は、
図2、
図4および
図5において左右一対で設けられていて、保持具40がスタッド30の棒状部31に嵌合されて、棒状部31がスタッド受入穴41に受け入れられたとき、スタッド30のねじ溝31a1に嵌合する爪部42aを有していて、棒状部31に対して弾性的に係合している。なお、図示左右の爪部42aの高さ(配置)は、ねじ溝31a1のピッチに合わせて、相互に半ピッチずらされて形成されている。
【0015】
第2の係止部43は、
図3および
図6において左右一対(
図4において上下一対)で設けられていて、棒状部31のねじ非加工部31Bに係合する爪部43aを有しており、棒状部31に対して弾性的に係合している。図示左右の爪部43aの高さ(配置)は、略同一とされていて、
図3の状態(スタッド30と保持具40にて被保持部材20が固定保持されている固定保持状態)では各爪部43aがねじ非加工小径部31b2に係合し、
図6の状態(保持具40が
図3の固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態)では各爪部43aがねじ非加工拡径部31b3に係合する(乗り上げる)ように設定されている。
【0016】
ストッパ片44とストッパ突起45は、保持具40がスタッド30の棒状部31に嵌合されて
図2および
図3の固定保持状態となるときに、ブレーキペダルブラケット20に当接して機能するものであり、それぞれ周方向にて等間隔で6個形成されている。なお、各ストッパ片44は、ブレーキペダルブラケット20との衝突を緩衝する機能を有している。また、各ストッパ突起45は、保持具40と棒状部31の最大嵌合量を規定する機能を有している。
【0017】
上記した実施形態では、車両の組立に際して、
図1および
図2に示したように、保持具40がスタッド30の棒状部31に嵌合されて、モジュールブラケット10(ベース)に対してブレーキペダルブラケット20(被保持部材)が仮止めされる。なお、保持具40は、モジュールブラケット10とブレーキペダルブラケット20が車体に最終的に組付け固定された後においても外されることはない。
【0018】
ところで、この実施形態では、仮に、保持具40に設けられている第1の係止部42のクリープ劣化等により、スタッド30の棒状部31に形成されているねじ溝31a1に対する第1の係止部42の係合力が低下して、
図2および
図3の状態から保持具40がスタッド30から外れる方向に回転したとしても、保持具40が固定保持状態から外れる方向に所定量移動した状態では、
図5および
図6に示したように、保持具40における第1の係止部42がスタッド30のねじ溝31a1に係合した状態で、保持具40における第2の係止部43がスタッド30におけるねじ非加工小径部31b2からねじ非加工拡径部31b3に係合する(乗り上げる)ようになる。
【0019】
この場合には、第2の係止部43がねじ非加工小径部31b2からねじ非加工拡径部31b3に乗り上げることにより、スタッド30の棒状部31に対する第2の係止部43の係合力が増大して、保持具40(第1の係止部42および第2の係止部43)のスタッド30(棒状部31)に対する係合力(回転規制力)が増大する。このため、その後においては、保持具40のスタッド30に対する回転が抑制されて、保持具40の緩み防止がなされ、保持具40のスタッド30からの離脱が防止される。
【0020】
また、この実施形態では、所定の形状に成形されたスタッド素材において、素材状態の棒状部31の一部(ねじ加工部31A)にねじ溝31a1が加工されることにより製作されているシンプルなスタッド30のねじ非加工部31Bに、第2の係止部43を弾性的に係合させることにより得られる係合力により、保持具40のスタッド30に対する回転が抑制されていて、安価に実施することが可能である。
【0021】
上記した実施形態においては、第1の係止部42と第2の係止部43をそれぞれ一対で設けて本発明を実施したが、本発明の実施に際して、第1の係止部42と第2の係止部43の個数は適宜増減可能であって、上記した個数に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
10…モジュールブラケット(ベース)、20…ブレーキペダルブラケット(被保持部材)、30…スタッド、31…棒状部、31A…ねじ加工部、31a…ねじ部、31a1…ねじ溝、31a2…ねじ山、31B…ねじ非加工部、31b1…ねじ非加工大径部、31b2…ねじ非加工小径部、31b3…ねじ非加工拡径部、32…頭部、40…保持具、41…スタッド受入穴、42…第1の係止部、42a…爪部、43…第2の係止部、43a…爪部