特許第6240072号(P6240072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240072
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】シクロスポリン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 3/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C07K7/64
   A61K38/12
   A61P31/12
   A61P29/00
   A61P35/00
   A61P21/00
   A61P25/00
   A61P3/14
【請求項の数】10
【全頁数】99
(21)【出願番号】特願2014-527635(P2014-527635)
(86)(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公表番号】特表2014-531417(P2014-531417A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012066726
(87)【国際公開番号】WO2013030208
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】102011111991.8
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501497655
【氏名又は名称】マックス プランク ゲゼルシャフト ツゥアー フェデルゥン デル ヴィッセンシャフテン エー フォー
(73)【特許権者】
【識別番号】513050132
【氏名又は名称】リード ディスカバリー センター ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー グンター
(72)【発明者】
【氏名】マレセビッチ ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】エルドマン フランク
(72)【発明者】
【氏名】キューリング ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ブクリンスキー ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】コンスタント ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】リューター ゲルド
(72)【発明者】
【氏名】ヌスバウマー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ディンケル クラウス
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/012073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00−7/66
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化合物、または、薬学的に許容できる塩、若しくはその互変異性体、エナンチオマー、または他の立体異性体からなるシクロスポリン誘導体
【化1】
式中、Lは結合、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH=CH−、−CH=CHCH−、−CHCH=CH−、−CHCHCH=CH−、−CHCH=CHCH−、−CH=CHCHCH−、−OCH−、−OCHCH−、−OCHCHCH−、−OCHCH=CH−、−CONH−、−CONHCH−、または−CONHCHCH−、−CONHCHCHOCHCH−、または−CONHCHCHOCHCHOCHCH−を表し;
は、極性の脱プロトン化できる基P、または生理学的条件下で基Pに変換されることができる基P’、または、極性のプロトン化できる基P、または生理学的条件下で基Pに変換されることができる基P’を表し;
は、H、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−OH、(C1〜C6)−アルキルチオ、(C1〜C6)−アルキルスルホニル、−SH、−CF、−COOH、−COO((C1〜C6)アルキル)、−CONH、−CONH((C1〜C6)アルキル)、−CON((C1〜C6)アルキル)、ニトロ、ハロゲン、シアノ、アミノ、(C1〜C6)アルキル−アミノ、または(C1〜C6)ジアルキル−アミノを表し;
およびRは、独立して互いに、H、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−CF、ハロゲンを表し、または、RおよびRが環のオルト位に置かれる場合、RおよびRは共に−OCHO−基、または−OCHCHO−基を形成することができる。
【請求項2】
は、−COOH、−CONH、−CONHNH、−SOH、−SONH、−COOCH、−COOCHCH、−COOCHCHCH、−COOCHCHCHCH、−COOCHCH(CHCH、−COOCH(CH-、−COOC(CH、−COOCHCHN(CH、−COOCHCH(モルホリン−4−イル)および次のグループ
【化2】
からなる群から選択される、
請求項1記載のシクロスポリン誘導体
【請求項3】
Lは、結合、−CH−、−CHCH−、−CH=CH−、−CONH−、および−OCH−からなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項4】
は、H、−COOH、−CH、−OCH、F、Cl、Br、およびCNからなる群から選択される、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項5】
およびRは、独立して互いにHまたはFである、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項6】
前記化合物は、次の
【化3A】
【化3B】
【化3C】
【化3D】
【化3E】
【化3F】
【化3G】
化合物の一つである、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項7】
末端原子は存在せず、この位置でトレーサーが結合される、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体を含むトレーサー結合化合物。
【請求項8】
医学分野で使用のための請求項1〜のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項9】
a)ウイルス感染症
b)急性および慢性炎症性疾患
c)癌
d)変性性筋疾患
e)神経変性疾患、および
f)カルシム恒常性の障害と関連する疾患、
の治療および/または診断のための、請求項1〜6,8のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体
【請求項10】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のシクロスポリン誘導体の調製のための
次の式
【化4】
のシクロスポリン誘導体の使用であって、
式中、Rは、次の式
【化5】
の残基を表し、
式中、PGは、アルコールの保護基であり、Wは、HまたはOHを表し、前記残基は、波線で描かれる末端での結合を介して連結される、前記シクロスポリン誘導体の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、下記に示す式Iの化合物およびトレーサー結合化合物に関し、それらは共にシクロスポリン誘導体である。本発明に係る化合物は、免疫抑制効果を示さず、医学、特に、ウイルス感染症、炎症性疾患、癌、変性筋肉疾患、神経変性疾患、及びカルシウム恒常性障害と関連する損傷の治療において使用される。さらに、本発明は、本発明に係る化合物、および任意選択的に種々の添加剤を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、多細胞物体の細胞外空間において活性化剤の蓄積方法に関する。本発明の更なる目的は、本発明に係る化合物の調製のための様々なシクロスポリン誘導体の使用である。
【0002】
生物学的活性化分子、いわゆる「活性化剤」は、一般的に薬学的な活性化剤であり、生体細胞の外部と同様に内部に大抵は効果を有する。それによって、従来特に現れていた問題は、細胞の内部にのみ効果を有すべき活性化剤が、細胞膜を通って移動する前にすでに細胞外空間に望まない副作用を引き起こすということである。このことにおいては、全く同一の活性化剤は、細胞の内側と外側で異なる効果を有するという付加的な問題を引き起こす。実際の効果は、従って、二つの要素として所望の細胞内効果および所望されない細胞外効果を含む。細胞への輸送は、通常細胞外空間を通過することを含むので、細胞内効果を達成するために、しばしば細胞外(側)効果もまた、必然的に受け入れられている。
【0003】
同様に、細胞外効果のみを所望とすることができ、細胞内効果を所望としないとすることができる。特に、医学の分野において、様々な活性化剤が、細胞内で所望の効果を引き起こさないだけでなく、毒ですらあり、または他の害となる効果を引き起こすということが知られている。細胞に移動される活性化剤の「ロス」を補うために特異的な細胞外効果を達成するために実際に必要な量よりはるかに高い量を適用しなければいけないということが起こる。
【0004】
活性化剤は、細胞外のおよび/または細胞内の「分子」または「構造」に影響することができる。当該生物学的分子は、例えば、酵素、阻害剤、活性化剤、受容体が可能である。「構造」は例えば、細胞外マトリックスとして理解されることができ、全体は高分子からなり、組織および器官の細胞の細胞膜の外側に位置する。
【0005】
様々な公表された文献は、シクロスポリンが細胞外効果と同様に細胞内効果を有することが可能であることを示す。シクロスポリンは、シクロフィリンのようなタンパク質に、細胞外で結合すると同様に細胞内で結合する。このようなタンパク質は、化学論文に、およびWO2010/012073等のような特許文献に総合的に記載される。シクロスポリンおよびそれらの誘導体は、治療的に使用され得る様々な効果を有する。したがって、シクロスポリンおよびそれらの誘導体は、神経保護/神経発生、シャペロン活性、HIV−感染、癌、またはアルツハイマー病に影響し得る。これらの化合物の所望の効果の例は、PPlase−阻害である。しかしながら、PPlase(ペプチジル−プロリル−イソメラーゼ)−阻害剤は、個々のPPlase−ファミリー間を区別することが可能である(Nature Chemical Biology.3(10):619−29,2007;Cellular&Molecular Life Sciences.63(24):2889−900,2006;Current Topics in Medicinal Chemistry.3(12):1315−47,2003;Advances in Protein Chemistry.59:243−82,2001)。
【0006】
PPlase−阻害剤は、配列が類似しているファミリーメンバーのため、しばしば類似の阻害強度を有する。一つのファミリー内のPPlaseは、異なる生物化学反応に影響を与えることができるので、適用される活性化剤の診断に関する効果または薬理学的効果は、異なる分配場所で達成される濃度に直接依存する。したがって、例えば治療的に使用されるシクロスポリンAのようないくつかのPPlase−阻害剤(例えば、Biopolymers 84(2006)125−146;Chemical&Pharmaceutical Bulletin.54(3):372−376,2006;Chemistry&Biology.10(1):15−24,2003;Nucleic Acids Research.29(3):767−773,2001)は、わずかに水に溶けるだけである(DE19859910)。
【0007】
菌類トリポクラジウムインフラタム(Tolypocladium inflatum)からもともと単離されたシクロスポリンAは、例えば、免疫応答の抑制のために医学的応用で使用される。本発明に関して、シクロスポリンは11個のアミノ酸の環状ペプチド(ウンデカペプチド)である。Helvetica Chimica Acta 65(1982),1655〜1677に記載されるようにシクロスポリンA〜Iの全て、およびそれらの誘導体、ならびにChimica Acta 70(1987),13〜36に記載されるようにシクロスポリンK〜Zのすべて、およびそれらの誘導体が含まれる。シクロスポリンは、本発明によると、WO99/18120に記載されるように、重水素で置換されてもよい。
【0008】
シクロスポリンA(シクロスポリンもまた)は、環状オリゴペプチドであり、細胞内カルシニューリン阻害効果を有する。そのように効果的な、シクロスポリンは、免疫抑制の選択的および可逆的メカニズムによって特徴づけられる。シクロスポリンは、ある種のサイトカインの生産によってT−リンパ球の活性化を選択的に阻止し、これらT細胞の調節に関与する。したがって、特に、例えば異種組織の拒絶に責任がある細胞障害性Tリンパ球の増殖を抑制するということを同時に引き起こしてインターロイキン−2の合成を阻害する。シクロスポリンは、シクロスポリン結合タンパク質のファミリーに属するいわゆるシクロフィリンまたはイムノフィリンに結合することによって細胞内に効く。本発明によると、本発明の化合物がこの細胞内効果を有さないと好ましい。
【0009】
シクロフィリンの阻害剤は、例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎または気腫のような気道の疾患の治療(Expert Opinion on Investigational Drugs 12(2003)647−653,Biodrugs 8(1997)205−215,American Journal of Respiratory Cell&Molecular Biology 20(1999)481−492)、糖尿病のような代謝性疾患の治療(Transplantation Proceedings 37(2005)1857−1860,Molecular Pharmacology 60(2001)873−879)、消化管の炎症性疾患の治療(Bone Marrow Transplantation 26(2000):545−551,Pharmaceutical Research 20(2003)910−917)、免疫システムの障害の治療(Immunology Letters 84(2002)137−143,Acta Biochimica Polonica 49(2002)233−247)、
炎症の治療(Journal of Periodontal Research 42(2007)580−588,Journal of Neurology,Neurosurgery&Psychiatry 76(2005)1115−1120,Transplant Immunology 12(2004):151−157)、循環器疾患の治療(Journal of Hypertension 17(1999)1707−1713,Drug&Chemical Toxicology 21(1998)27−34)、神経学的疾患の治療(Annals of Vascular Surgery.20(2006) 243−249)、血管形成の機能障害に関連する疾患の治療(Blood Purification.25(2007)466−472,International Angiology 24(2005)372−379,Nefrologia.23(2003):44−48)、臓器移植の場合において免疫応答の抑制のための治療(Bone Marrow Transplantation.38(2006)169−174),Biodrugs.14(2000)185−193,Clinical Immunotherapeutics.5(1996)351−373)、および自己免疫疾患の治療(Immunology&Immunopathology.82(3):197−202,1997)、
関節炎性疾患の治療(British Journal of Rheumatology.36(1997)808−811,Biodrugs.7(1997)376−385)、皮膚炎の治療(Veterinary Dermatology 17(2006)3−16)、乾癬の治療(Journal of Dermatological Treatment 16(2005)258−277,Hautarzt 44(1993)353−360)、アレルギーの治療(Cornea 27(2008)625,Journal of Small Animal Practice 47(2006)434−438,Clinical&Experimental Ophthalmology 34(2006)347−353)、多発性硬化症の治療(Immunopharmacology&Immunotoxicology 21(1999)527−549,Journal of Neuroimaging 7(1997)1−7)、心筋梗塞などのような虚血によって引き起こされる疾患の治療(Annals of Thoracic Surgery 86(2008)1286−1292,Acta Anaesthesiologica Scandinavica 51(2007)+909−913)、
膵臓の梗塞の治療(Pancreas 32(2006)145−151)、または脳卒中の治療(Annals of Vascular Surgery 20(2006)243−249,Neurological Research 27(2005)827−834)、糸球体腎炎などのような腎臓病の治療(Nephrology Dialysis Transplantation 19(2004)3207,Nephron 91(2002)509−511)、腫瘍の治療(Journal of Investigative Dermatology 128(2008)2467−2473,Endocrinology 148(2007)4716−4726)、多発性骨髄腫のための治療(Leukemia 12(1998)505−509,Leukemia&Lymphoma 16(1994)167−170)、急性もしくは慢性白血病のための治療(Cancer Chemotherapy&Pharmacology 52(2003)449−452,Cancer 97(2003)1481−1487)、
筋肉変性のための治療(Neuroscience Research Communications 31(2002)85−92、悪液質の治療(International Journal of Cardiology 85(2002)173−183,Drugs 58(1999)953−963,1999)、ライター症候群の治療(Rheumatology 40(2001)945−947),骨吸収の疾患の治療(European Journal of Pharmacology 564(2007)226−231, Biochemical & Biophysical Research Communications 254(1999)248−252)、アルツハイマー病の治療(Biochemical & Biophysical Research Communications 248(1998)168−173,Chinese Medical Journal 115(2002)884−887)、マラリアの治療(Molecular & Biochemical Parasitology 99(1999)167−181)、敗血症および毒性ショック症候群の治療(Journal of Pharmacology&Experimental Therapeutics 311(2004)1256−1263)、
筋肉痛の治療(British Journal of Dermatology 147(2002)606−607),例えばHIV−1、HIV−2、HIV−3(Journal of Infectious Diseases 194(2006)1677−1685,Molecular Medicine Today1(1995)287−291,1995)、サイトメガロウイルス(Journal of Virology 81(2007)9013−9023)もしくはアデノウイルス(Ophthalmologe 105(2008)592−594,Ophthalmologe 97(2000)764−768)などのようなウイルス感染症の治療(Expert Opinion on Emerging Drugs 13(2008)393−416)、および髪の成長を保持するための治療(Archives of Dermatological Research 296(6):265−269,2004,Annales de Dermatologie et de Venereologie 127(2000)769)のような非常に広い治療範囲を有する。治療応用の広い範囲に基づいて、シクロフィリンの阻害剤は医学の分野で重要な物質種類である。
【0010】
シクロスポリンおよびシクロスポリンの誘導体を前記疾患の治療に使用する場合、シクロスポリンおよびシクロスポリンの誘導体は、所望の治療効果に加えて、免疫抑制効果を有し、免疫抑制効果は、いくつかのこれまで公知のシクロスポリン誘導体の欠点になる。このような場合において、しかしながら、免疫抑制効果は、除外されるべき望まれない副作用である。シクロスポリンおよびシクロスポリンの誘導体はシクロフィリンを阻害し得るということは公知である。しかし、シクロスポリン化合物が細胞に入ると、その後シクロスポリン化合物およびシクロフィリンの複合体は、セリン−スレオニン−ホスファターゼカルシニューリンを阻害し得る。カルシニューリンの阻害は、その後、免疫抑制の望まない副作用を誘導する。しかし、細胞外空間にシクロフィリンも存在し、シクロスポリン化合物によるシクロフィリンの阻害は、所望の治療効果を誘導する。したがって、所望の治療目的に関わる効果、および細胞に入ることができないという両方を示すシクロスポリン化合物を与えることが可能である場合、望まれない副作用を避ける可能性がある。
【0011】
したがって、本発明の場合、免疫抑制の副作用が起こらずに所望の治療効果を有する新規シクロスポリン誘導体を提供することが目的である。特に、治療的に有効であるが細胞に入ることができない活性化剤を与えることが本発明の目的である。
【0012】
特に、免疫抑制性でなく次の疾患に対して治療的に有効である活性化剤を与えることが本発明の一つの目的である:
a)ウイルス感染症
b)急性および慢性炎症性疾患
c)癌
d)変性性筋疾患
e)神経変性疾患、および
f)カルシム恒常性の障害と関連する疾患、
ここで、ウイルス感染症は、HIV、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルスのようなウイルスによって引き起こされることができ、
ここで、炎症性疾患は、好ましくは、喘息、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、多種化学物質過敏症、炎症性腸疾患、敗血症、血管平滑筋細胞の炎症、動脈瘤、骨盤部位の炎症、再潅流傷害、慢性関節リウマチ、脈管炎、乾癬及び潰瘍性大腸炎を含み、
ここで、癌は、好ましくは、肺がん、膀胱ガン、肝がん、膵がん及び乳がんを含む、
ここで、変性性筋疾患は、好ましくは、筋ジストロフィー、コラーゲンIV−筋疾患および心筋再潅流傷害であり、
ここで、神経変性疾患は、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多系統委縮症、多発性硬化症、脳灰白髄炎、脳卒中、糖尿病性神経障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷および脳硬化症から選択され、
ここで、カルシウム恒常性の障害と関連する疾患は、好ましくは、心筋梗塞、脳卒中、急性肝臓毒性、胆汁うっ滞および移植された臓器の再潅流傷害に関する。
【0013】
驚くべきことに、適切なイミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはチアゾール誘導体と共にシクロスポリンのアミノ酸1の誘導体化は、当該変化させたシクロスポリンが細胞透過性を変更するというように、シクロスポリンの特徴を変化し得るということが明らかにされている。特に、本発明にかかる上記イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはチアゾール誘導体において、例えば酸基等の化学基を導入することは、細胞外空間に蓄積しない、細胞へ入らないというようにシクロスポリンの特徴を変化し得る。
【0014】
適切なイミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、またはチアゾール誘導体と共にシクロスポリンの誘導体化によって得られる必須の特徴は、さらにヒトシクロフィリンのペプチジル−プロリル−シス/トランス−イソメラーゼ活性を阻害し、好ましくは、<100nMolのIC50値を有し、セリン−スレオニン−ホスファターゼカルシニューリンを阻害することなく、細胞に入らないように得られた新規シクロスポリン−誘導体の能力である。
【0015】
上述の目的は、次の式Iの化合物の提供によって達成される。
【0016】
【化1】
【0017】
ここで、Aは次の式IIのアミノ酸であり、
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、波線部分で終わる結合は、部分BおよびKとの連結を表し、Rは次の式IIIの群であり、および
【0020】
【化3】
【0021】
は、次の式IVの群に対応し、または、
【0022】
【化4】
【0023】
は、次の式Vの群に対応し、または、
【0024】
【化5】
【0025】
は、次の式VIの群に対応し、または、
【0026】
【化6】
【0027】
は、次の式VIIの群に対応し、または、
【0028】
【化7】
【0029】
は、次の式VIIIの群に対応し、ここで、残基L−RおよびRを、同じ、もしくは異なるフェニル環に結合することができ、または、
【0030】
【化8】
は、次の式IXの群に対応し、ここで、残基L−RおよびRを、同じ、もしくは異なる環Qもしくは環Qに結合することができ、または、
【0031】
【化9】
は、次の式Xの群に対応し、ここで、残基L−RおよびRを、同じ、もしくは異なる環Qもしくは環Qに結合することができ、または、
【0032】
【化10】
は、次の式XIの群に対応し、ここで、残基L−RおよびRを、同じ、もしくは異なる環Qもしくは環Qに結合することができ、または、
【0033】
【化11】
は、次の式XIIの群に対応し、ここで、残基L−RおよびRを、同じ、もしくは異なるフェニル環に結合することができ、または、
【0034】
【化12】
は、次の式XIIIの群に対応し
【0035】
【化13】
ここで、式IV〜式XIIIにおける波線部分で終わる結合は、Rが結合された式IIIのCH基に結合し、;
ここで、式IIの群は、式IIのCOによって、式Iにおけるアルファ−アミノ酸Bにアミド結合の形成を介して共有結合され、式IIにおけるN−Rは、Kのカルボキシル基にアミド結合の形成を介して共有結合され、ここで、
Bは、次の式から選択されるアミノ酸であり:
アルファ−アミノブタン酸;
アラニン;
スレオニン;
バリン;
ノルバリン;および
ヒドロキシル基修飾側鎖を有するアルファ−アミノブタン酸、アラニン、スレオニン、バリン、またはノルバリン;
Cはサルコシンを示し;
Dは次の群から選択されるアミノ酸であり:
ロイシン;
N−メチルロイシン;
バリン;
ガンマ−ヒドロキシ−N−メチルロイシン;および、
ガンマ−ヒドロキシロイシン;
Eは次の群から選択されるアミノ酸であり:
バリン;
ノルバリン;および
ヒドロキシル基で置換された側鎖の炭素原子の一つを有する修飾バリンまたはノルバリン;
Fは次の群から選択されるアミノ酸であり:
ロイシン;
N−メチルロイシン;
ガンマ−ヒドロキシ−N−メチルロイシン;および、
ガンマ−ヒドロキシロイシン;
Gはアルファ−アミノブタン酸またはアラニンであり;
HはD−アラニン、またはD−セリンであり;
IおよびJはアミノ酸であり、独立して次の群から互いに選択され、
ロイシン;
N−メチルロイシン;
ガンマ−ヒドロキシ−N−メチルロイシン;および、
ガンマ−ヒドロキシロイシン;
KはN−メチルバリンまたはバリンであり、
ここで、アミノ酸B〜Kは、互いにアミド結合の形成を介して連結され、
ここで、使用される記号および指標は次の意味を有する:
XはO、S、またはN−Rを表し;
YはO、S、N−R、−CH−、または−CHCH−を表し;
AはCHまたはNを表し、
Lは結合、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CH=CH−、−CH=CHCH−、−CHCH=CH−、−CHCHCH=CH−、−CHCH=CHCH−、−CH=CHCHCH−、−OCH−、−OCHCH−、−OCHCHCH−、−OCHCH=CH−、−CONH−、−CONHCH−、−CONHCHCH−、−CONHCHCHOCHCH−、−CONHCHCHOCHCHOCHCH−を表し;
は、隣接環の二つの原子と共に、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール基からなる芳香環または複素環を表し;
は、隣接環の二つの原子と共に、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール基からなる芳香環または複素環を表し;
は、それが配置されているものにおいて真ん中に位置されている6員環を表し;
はHまたはCHを表し;
は、−COOH基で置換されることもできるH、(C1〜C4)−アルキル、またはベンジルを表し;
は、極性の脱プロトン化できる基P、または生理学的条件下で基Pに変換されることができる基P’、または、極性のプロトン化できる基P、または生理学的条件下で基Pに変換されることができるP’基を表し;
は、H、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−OH、(C1〜C6)−アルキルチオ、(C1〜C6)−アルキルスルホニル、−SH、−CF、−COOH、−COO((C1〜C6)アルキル)、−CONH、−CONH((C1〜C6)アルキル)、−CON((C1〜C6)アルキル)、ニトロ、ハロゲン、シアノ、アミノ、(C1〜C6)アルキル−アミノ、(C1〜C6)ジアルキル−アミノを表し;Rは、特にRが環Q、環Q、環Qのヘテロ原子に結合する場合に、自由電子対の形態で存在することができ;
およびRは、独立して互いに、H、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−CF、ハロゲンを表し、または、RおよびRが環のオルト位に置かれる場合、RおよびRは共に−OCHO−基、または−OCHCHO−基を形成することができ;RおよびRは独立して互いに、特にRまたはRが環Qのヘテロ原子に結合する場合、自由電子対の形態で存在することもできる。
【0036】
は、H、−OH、−OCOOR12、−OCOR13、−OCONR1415、−O−(テトラヒドロピラン−2−イル)、−O−(テトラヒドロフラン−2−イル)、−O−CHR16−OR17、−SiR181920を表し;
10およびR11は独立して互いにH、(C1〜C6)−アルキル、−CF、ハロゲンを表し、または、共に−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、もしくは−CHCHCHCHCH−基を形成することができ;
12は、(C1〜C6)−アルキル、ベンジル、またはフェニルを表し、ここでアルキル基は任意選択的にフッ素または塩素で置換されることができ、ベンジルおよびフェニルは任意選択的に(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−CF、シアノ、ニトロ、またはハロゲンから選択された一つ以上の置換基と置換され;
13は、H、またはR12を表し、
14およびR15は、独立して互いにH、(C1〜C6)−アルキル、ベンジル、またはフェニルを表し、ここでベンジルおよびフェニルは任意選択的に(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、−CF、シアノ、ニトロ、またはハロゲンから選択された一つ以上の置換基と置換されることができ;
16は、Hまたは(C1〜C6)−アルキルを表し;
17は、(C1〜C6)−アルキル、ベンジル、またはフェニルを表し;ならびに、
18、R19、およびR20は、独立して互いに(C1〜C6)−アルキル、ベンジル、またはフェニルを表す。
【0037】
本発明は薬学的に許容できる塩、ならびに式Iの化合物の互変異性体、エナンチオマー、および他の立体異性体を含む。
本発明によると、アミノ酸の名前が、フィッシャーによる命名法の接頭辞D−またはL−を用いないで使用される場合、D体L体両方の可能性がある;しかし好ましくは、環境中に天然に存在する異性体(大抵はL−異性体)である。対応する命名法の接頭辞が使用される場合、対応する異性体が、本発明によると好ましい。
【0038】
およびP基は、イオン性基、すなわちアニオン性基Pもしくはカチオン性基P、または溶液中で容易にイオン性基PもしくはPに解離する基のいずれかである。好ましくは、これらの基はpH6〜8の範囲で部分的にまたは完全にイオン型で存在する。P基は、強塩基で切断されることができる水素原子を有する極性基であることもでき、ここで水素原子は、好ましくはヘテロ原子に結合される。
【0039】
酸P基の例は次の通りである:
a)−COOH、−SOH、−CONH、−CONHNH、−SO2NH、−PO、−PO(OH)(NH)、−CO(NHOH)、−CO(NH(O−C1〜C4−アルキル))、−CSNH、−NHCONH,−N(OH)CONH、−NHCO(NHOH)、−NHCSNH、−CSNHNH
b)
【0040】
【化14】
およびR=−(C1〜C4)−アルキル、−O(C1〜C4)−アルキル、−NH(C1〜C4)−アルキル、−NH(C1〜C4−アルケニル)、(置換された)アリール、(置換された)O−アリール、(置換された)NH−アリール、−CFおよび他のフッ素化(C1〜C4−アルキル)基;
c)
【0041】
【化15】
およびR=−OH、−CN、−NO
d)
【0042】
【化16】
およびR=(C1〜C4−アルキル)、(置換された)アリール、−CFおよび他のフッ素化(C1〜C4−アルキル)基;
e)
【0043】
【化17】
およびR=−(C1〜C4−アルキル)、−O(C1〜C4−アルキル)、−NH(C1〜C4−アルキル)、−NH(C1〜C4−アルケニル)、(置換された)アリール、(置換された)O−アリール、(置換された)NH−アリール、−CFおよび他のフッ素化(C1〜C4−アルキル)基;
f)
【0044】
【化18A】
【0045】
【化18B】
式中のR=H、−(C1〜C4−アルキル)、−CF、および他のフッ素化(C1〜C4−アルキル)基。
g)Lが共有単結合であり、−OHまたは−SHが、置換基として環Q、環Q、または環Qに存在できるだけであることにより窒素原子の近くに位置している炭素原子に結合されるという条件において、−OHおよび−SH。
【0046】
本発明によると、P基は次の基の一つであると特に好ましく、好ましくは式IV〜XIIの複素環に対して共有結合を介して直接結合される;
が−OHまたは−SHを表し、Lは共有単結合であり、−OHまたは−SHが置換基として環Q、環Q、または環Qの窒素原子の近くに位置している炭素原子に結合されるという条件において、−COOH、−OH、−SH、−CONH、−CONHNH、−SOH、−SONH、および基
【0047】
【化19】
塩基P基の例は次の通りである:
a)
【0048】
【化20】
式中、R、R、およびRは、Hおよび−(C1〜C4−アルキル)を表し、RおよびRは、ともに−(CHCH)−または−(CHCHCH)−であることができ、窒素原子を有するRおよびRはピロリジン、ピペリジン、またはモルホリンであることができ;
b)
【0049】
【化21】
式中、R、R、RおよびRは、Hおよび−(C1〜C4−アルキル)を表し、RおよびR、RおよびR、ならびにRおよびRは、ともに−(CHCH)−または−(CHCHCH)−であることができ、窒素原子を有するRおよびRはピロリジン、ピペリジン、またはモルホリンであることができ;
c)−NH、(C1〜C6)アルキル−アミノ、(C1〜C6)ジアルキル−アミノ、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンまたはピペラジンから選択されるアミノ酸であり、(C1〜C6)アルキル、−(C1〜C6)アルカノイル、ベンジル、ベンゾイルまたはフェニルと4位で置換されることができ、ここで、これらの置換基は任意選択的に−COOH基を有することができる。
【0050】
本発明によると、P基は次の基の一つであると特に好ましく、式IV−XIIの複素環に対して共有結合を介して直接結合される:
【0051】
【化22】
およびP基は
【0052】
【化23】
基であることもできる。
【0053】
式中Rはアミノ酸またはアミノ酸アミドであり、アミノ酸またはアミノ酸アミドのアミノ基または2〜10個のアミノ酸からなるペプチドを介して結合され、Rの末端アミノ酸はアミノ酸アミドであることもできる。好ましいペプチド基は、D−グルタミン酸、L−グルタミン酸、D−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸、D−グルタミン、L−グルタミン、D−アスパラギン、L−アスパラギン、D−システインスルホン酸、L−システインスルホン酸、D−アルギニンまたはL−アルギニンから選択された少なくとも一つのアミノ酸基を含む。好ましくは次の式のペプチド基である。
【0054】
【化24A】
【0055】
【化24B】
本発明において、用語「アミノ酸」は、アミノ基、及びカルボン酸基、またはスルホン酸基を含む任意の有機化合物を含む。本願において、天然に存在するアミノ酸が好ましい。
【0056】
基P’およびP’は、生理学的条件下で基PおよびPにそれぞれ
変換されることができる基である。基P’およびP’を含む化合物は、「プロドラッグ」と呼ばれる。当該化合物は必ずしも細胞非透過性でなくてもよいが、投与後、好ましくは経口投与後に細胞非透過性誘導体に理想的に変形し、作用部位の細胞に透過することができない。
【0057】
例えば、カルボン酸エステルをカルボン酸(P=−COOH)のプロドラッグとして使用することができる(K.Beaumont,ら.,Current Drug Metabolism 4(2003),461−485)。カルボン酸エステルP’=−COORの例は残基Rを含む。
a)(C1〜C6−アルキル)、(C2〜C6−アルケニル)、フェニル、またはベンジル、ここで芳香環はさらなる置換基、好ましくは−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CH(CH)CHCH、−CHCH=CH、ベンジルを有することができ;
b)(C1〜C6−アルキル)、(C1〜C6−アルキル)の水素原子はハロゲン、好ましくは−CF、−CHCClによって置換され;
c)(C1〜C6−アルキル)、(C1〜C6−アルキル)の水素原子は、−OH、(C1〜C6−アルコキシ)、または置換アミノ基、好ましくは−CHOCH、−CHCHOCH、−CHCHOH、−CHCHN(CH、−CHCH(モルホリン−4−イル);
d)
【0058】
【化25】
式中、RはHまたは(C1〜C4−アルキル)を表し、Rは(C1〜C4−アルキル)または(C3〜C6−シクロアルキル)を表し、好ましくは、R=H、−CH、−CHCH、−CH(CHであり、R=−CH、−CHCH、−CH(CH、−C(CH、シクロヘキシルであり;
e)
【0059】
【化26】
’基は次の基の一つであると特に好ましい:
−COOCH、−COOCHCH、−COOCHCHCH、−COOCHCHCHCH、−COOCHCH(CHCH,−COOCH(CH、−COOC(CH、−COOCHCHN(CHまたは−COOCHCH(モルホリン−4−イル)。
【0060】
アセチル化された誘導体P’を、アミジンおよびグアニジンのような塩P基のプロドラッグとして使用することができ、ここで、P’=
【0061】
【化27】
であり、
ここで、Z=O、S、NHまたはNCHであり、R=(C1〜C4−アルキル)、(C3〜C6−シクロアルキル)、またはベンジルであり、および好ましくはZ=Oであり、R=−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、ベンジルである。
【0062】
は次からなる残基の群から選択されると特に好ましい:−COOH、−OH、−SH、−CONH、−CONHNH、−SOH、−SONH、−COOCH、−COOCHCH、−COOCHCHCH、−COOCHCHCHCH、−COOCHCH(CHCH、−COOCH(CH、−COOC(CH、−COOCHCHN(CHもしくは−COOCHCH(モルホリン−4−イル)、または次の基
【0063】
【化28】
は、一般式Iの本発明の化合物において−CHを表すとさらに好ましい。
【0064】
好ましくは、基Rは、−OH、−OCOCH、−OCOOCH、−OCHOCH、−Si(CHおよび−Si(CHC(CHからなる群から選択される。Rは−OHを表すと特に好ましい。
【0065】
二価の基Lは、結合、好ましくは共有単結合、−CH−、−CHCH−,−CH=CH−、−CONH−、および−OCH−からなる群から好ましくは選択される。Lが共有単結合を表すと特に好ましい。
【0066】
は、−COOH、−SOH、−SONH、テトラゾール−5−イル、−C=NH(NH)、または−NH−C=NH(NH)を表し、二価の基Lは共有結合であると更に好ましい。
【0067】
はHまたはCHを表と特に好ましく、Hを表すとさらに好ましい。
さらに、XはN−Rを表すと好ましく、XはNHを表すとさらに好ましい。
環Q1は、特に好ましくはベンゼン、ピリジン、またはピリミジンであり、最強に好ましくはベンゼンである。
【0068】
環Q2、およびQ3は、独立して互いに好ましくはベンゼンである。ある化合物が環Q2、およびQ3の両方を含む場合、環Q2、およびQ3の両方はベンゼンであると最も好ましい。
【0069】
二価の分子Yは、特に好ましくはO、S、−CH−、または−CHCH−である。
さらに、RがH、−COOH、CH、OCH、F、Cl、Br、およびCNからなる群から選択されると好ましい。特に好ましくは、RがH又はFを表し、さらに好ましくはHを表す。
【0070】
R4およびR5は、独立して互いにHまたはFであると特に好ましく、さらに好ましくはHである。
基AはCHを表すと特に好ましい。
【0071】
基R10およびR11は互いに独立してHまたはCHであると特に好ましく、さらに好ましくはHである。
さらに、基Rは、式IV、V、VII、IX、またはXIであると好ましい。基Rは式IVの基であると特に好ましい。
【0072】
基R8が式IVの基である場合、好ましい実施形態においてQ1は、ベンゼンを表し、XはNHを表し、Lは共有単結合、または−CH=CH−である。Rは、−COOH、−CONH、−CONHNH、−SOH、−SONH、−COOCH、−COOCHCH、−COOCHCHCH、−COOCHCHCHCH、−COOCHCH(CHCH、−COOCH(CH、−COOC(CH、−COOCHCHN(CH、もしくは−COOCHCH(モルホリン−4−イル)、または次の群の一つである。
【0073】
【化29】
はH、−COOH、−COOMe、またはFを表し、好ましくはHであり、RはH、またはFを表し、好ましくはHであり、RはHを表す。
【0074】
基が式IVの基である場合、更に好ましい実施形態においてQはピリジンまたはピリミジンを表し、XはNHを表す。したがって、Qはピリミジンであると特に好ましく、Lは共有単結合であり、RはSH、OH、またはNHを表し、好ましくはSHまたはOHを表し、RはH、SH、OH、またはNHを表し、好ましくはH、SH、またはOHを表し、RおよびRは好ましくは表されない(ピリミジン環のヘテロ原子が、この部位に置かれるため)。
【0075】
基が式IX、X、またはXIの基である場合、更に好ましい実施形態においてXはNHを表し、AはCHを表し、Qはベンゼンを表し、Lは共有単結合を表し、Rは−SOH、または−COOHを表し、RはHを表す。
【0076】
基が式XIIIの基である場合、更に好ましい実施形態においてR、R10、およびR11はHを表す。
式Iの骨格は次の式に対応する置換されたシクロスポリンAであるとさらに好ましい。
【0077】
【化30】
式中Rは上記または下記で定義されたのと同じ定義を有し、
さらに、式Iの化合物は次の式の置換されたシクロスポリンA誘導体であると特に好ましい。
【0078】
【化31】
本発明によると、異なる実施形態において列挙された上記式Iの化合物の全ての特徴を、相互排他的でないという条件で互いに組み合わせることができる。言及された実施形態において、上述の式Iの化合物の残基が、言及された実施形態で明確に定義されない場合、本発明に係るすべての特異的な一般的または特定の定義を備えることができる。
【0079】
上述の式Iの化合物の例として、次の化合物が列挙される:
Ac−CsA−アルデヒド、TBDMS−CsA−アルデヒド、およびAc−CsA−酸、それらは、シクロスポリンA由来の式Iの化合物の合成のための出発物質として役に立つことができ:
化合物1、2および3:Ac−CsA−アルデヒド、TBDMS−CsA−アルデヒド、およびAc−CsA−酸(CsAはシクロスポリンAを意味する)(以下同様)
【0080】
【化32】
式中、Rは次の構造に対応し:
【0081】
【化33】
式中、化合物1の場合において、PGはアセチル基(Ac)、およびW=Hを表し、化合物2の場合において、PGは、tert−ブチルジメチルシリル基(TBDMS)、およびW=Hを表し、化合物3の場合において、PGはアセチル基およびW=OHを表す。
【0082】
本発明において、次に化合物4〜68は式Iの化合物として特に好ましい。
化合物4:
【0083】
【化34】
化合物5:
【0084】
【化35】
化合物6:
【0085】
【化36】
化合物7:
【0086】
【化37】
化合物8:
【0087】
【化38】
化合物9:
【0088】
【化39】
化合物10:
【0089】
【化40】
化合物11:
【0090】
【化41】
化合物12:
【0091】
【化42】
化合物13:
【0092】
【化43】
化合物14:
【0093】
【化44】
化合物15:
【0094】
【化45】
化合物16:
【0095】
【化46】
化合物17:
【0096】
【化47】
化合物18:
【0097】
【化48】
化合物19:
【0098】
【化49】
化合物20:
【0099】
【化50】
化合物21:
【0100】
【化51】
化合物22:
【0101】
【化52】
化合物23:
【0102】
【化53】
化合物24:
【0103】
【化54】
化合物25:
【0104】
【化55】
化合物26:
【0105】
【化56】
化合物27:
【0106】
【化57】
化合物28:
【0107】
【化58】
化合物29:
【0108】
【化59】
化合物30:
【0109】
【化60】
化合物31:
【0110】
【化61】
化合物32:
【0111】
【化62】
化合物33:
【0112】
【化63】
化合物34:
【0113】
【化64】
化合物35:
【0114】
【化65】
化合物36:
【0115】
【化66】
化合物37:
【0116】
【化67】
化合物38:
【0117】
【化68】
化合物39:
【0118】
【化69】
化合物40:
【0119】
【化70】
化合物41:
【0120】
【化71】
化合物42:
【0121】
【化72】
化合物43:
【0122】
【化73】
化合物44:
【0123】
【化74】
化合物45:
【0124】
【化75】
化合物46:
【0125】
【化76】
化合物47:
【0126】
【化77】
化合物48:
【0127】
【化78】
化合物49:
【0128】
【化79】
化合物50:
【0129】
【化80】
化合物51:
【0130】
【化81】
化合物52:
【0131】
【化82】
化合物53:
【0132】
【化83】
化合物54:
【0133】
【化84】
化合物55:
【0134】
【化85】
化合物56:
【0135】
【化86】
化合物57:
【0136】
【化87】
化合物58:
【0137】
【化88】
化合物59:
【0138】
【化89】
化合物60:
【0139】
【化90】
化合物61:
【0140】
【化91】
化合物62:
【0141】
【化92】
化合物63:
【0142】
【化93】
化合物64:
【0143】
【化94】
化合物65:
【0144】
【化95】
化合物66:
【0145】
【化96】
化合物67:
【0146】
【化97】
化合物68:
【0147】
【化98】
本願において、上記および下記に列挙された基は、波線部分における末端の位置で結合している。
【0148】
化合物4〜68の互変異性型が可能であるなら、前記互変異性型も示される互変異性体に含まれるべきであり、本願の目的となるべきである。
本発明によると、化合物5、13、20、22、28、31、33、34、35、37、42、43、45、46、および48、特に化合物5および33は特に好ましいとが証明されている。
【0149】
本願で使用される用語(C1〜C4)−アルキル、(C1〜C6)−アルキルはそれぞれ、1〜4個の炭素原子、1〜6個の炭素原子を有する直線、または分岐したアルキル基として理解することができ、より好ましくは、1〜4個のC原子、さらにより好ましくは1〜3個のC原子を有するアルキル基として理解することができる。個々の−CH−または−CH−基をN、NH、O、またはSによって置き換えることができる。同様に、アルキル基の一つ以上のH原子を、フッ素原子によって置き換えることができる。当該基の例は、次の通りである:メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチル−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、2、2−(ジ−エチル)−エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび2,2,2−(トリフルオロエチル)、ここで、メチルおよびエチルが好ましい。
【0150】
本願の範囲内で、用語(C2〜C6)−アルケニルを、2〜6個のC原子、好ましくは2〜4個のC原子、特に好ましくは2〜3個のC−原子を有する炭化水素単位の直線または分岐した基として理解することができる。ここで、1つまたは複数の二重結合、好ましくは1つの二重結合がC原子間に存在する。個々の−CH−または−CH−基を、N、NH、O、またはSによって置き換えることができる。また、アルケニル基の1つまたは複数のH−原子を、フッ素原子によって置き換えることができる。当該基の例は次の通りである:エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル。エテニルおよびプロペニル残基が特に好ましい。
【0151】
本発明の範囲内で、用語−NH(C1〜C4−アルケニル)を、上記で定義された(C1〜C4)−アルケニルが−NH−単位を介して結合されるものとして理解することができる。(C1〜C4)−アルケニルに関して同じ好適なものがここでも適用される。
【0152】
本発明の範囲内で使用される用語(C3〜C6)−シクロアルキルを、3〜6個の環状C原子を有する環状炭化水素基として理解することができる。個々の−CH−基を、N、NH、O、またはSによって置換することができる。また、アルキル基の1つまたは複数の水素原子をフッ素原子に置換することもできる。当該基の例は、次の通りである:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル。シクロヘキシルが特に好ましい。
【0153】
本発明の範囲内で使用される用語(C1〜C6)−アルコキシ、−O(C1〜C4−アルキル)を、それぞれ上記で定義された(C1〜C6)−アルキルが酸素原子を介して結合されるものと、(C1〜C4)−アルキルが酸素原子を介して結合されるものとして理解することができる。ここでメトキシ、およびエトキシが特に好ましい。
【0154】
本発明の範囲内で使用される用語(C1〜C6)−アルキルチオは、上記で定義された(C1〜C6)−アルキルが、硫黄原子を介して結合されるものとして理解することができる。ここで、メチルチオおよびエチルチオが特に好ましい。
【0155】
本発明の範囲内で使用される用語(C1〜C6)−アルキルスルホニルを、上記で定義された(C1〜C6)−アルキルがスルホニル基を介して結合されるものとして理解することができる。ここで、メチルスルホニルおよびエチルスルホニルが特に好ましい。
【0156】
本発明によると、用語−COO((C1〜C4)アルキル)を、上記で定義された(C1〜C4)−アルキルが−COO基を介して結合され、(C1〜C4)−アルキルが酸素原子に結合しているものとして理解することができる。ここで−COO−メチルおよび−COO−エチルが特に好ましい。
【0157】
本発明によると、用語(C1〜C6)アルキル−アミノ、−NH(C1〜C4−アルキル)を、それぞれ、−NH−単位を介して結合する上記で定義された(C1〜C6)−アルキル、−NH−単位を介して結合する上記で定義された(C1〜C4)−アルキルとして理解することができる。実施例はメチルアミノおよびエチルアミノを含む。
【0158】
本発明によると、用語(C1〜C6)ジアルキル−アミノを、上記で定義された二つの(C1〜C6)−アルキルを有する第二級アミンとして理解することができる。実施例はジメチルアミノおよびジエチルアミノを含む。
【0159】
用語(置換された)アリールを、本発明の範囲内で、芳香族環原子数が好ましくは5個、それぞれ6〜10個、さらに好ましくは5〜6個有する単環式のまたは多環式の(好ましくは、単環式の、二環式の、または三環式の)芳香族炭化水素基、または複素環式芳香族炭化水素残基として理解することができる。芳香族炭化水素残基、または複素環式芳香族炭化水素残基は更なる置換を行うことができる。
【0160】
本願において、用語、芳香族単位、複素環式芳香族単位は、それぞれ、ベンゼンのような単一の芳香環として、ピリジン、ピリミジン、チオフェンなどのような単一の複素環式芳香族として理解され、またはナフタレン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、およびインドールなどの縮合アリール基または縮合ヘテロアリール基として理解される。したがって、本発明によると、芳香族、または複素環式芳香族の例は:ベンゼン、ナフタレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジンおよびインドリジンである。
好ましくは、したがって、ベンゼン、ナフタレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピリミジン、ピラジン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジンであり、特に好ましくはベンゼンである。
【0161】
本発明によると、用語(置換された)O−アリール、(置換された)NH−アリールを、それぞれ、酸素原子を介して結合する上記で定義された(置換された)アリールとして、−NH−単位を介して結合する上記で定義された(置換された)アリールとして理解することができる。
【0162】
置換されたアリールの置換基は、例えば:メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、−OH、−SH、−NH、−CN、または−NOであることができる。
【0163】
上記のように、本発明の更なる実施形態は、トレーサー結合化合物に関し、該トレーサー結合化合物は、上記の式Iの化合物および、共有結合を介して互いに連結されるトレーサー化合物(トレーサー)を含む。式Iの化合物の末端原子の代わりに、または末端基の代わりに、トレーサーへの結合が、おそらくリンカーを通って存在するという方法で、式Iの化合物の連結は存在する。
【0164】
トレーサーは好ましくは式Iの化合物に共有結合している。しかしながら、トレーサーは、本発明の目的に好適となるように、原則として、当業者に公知の任意の手法で活性化剤に結合され得る。特に好ましくは、トレーサーは式Iの化合物にリンカーを介して共有結合しているということである。
【0165】
本発明の範囲内で、リンカーは、本発明の目的に好適となるように、当業者に知られている任意の基であることができる。好ましくは、プロテアーゼ切断部位のない基に関する。特に好ましくは、リンカーは、4〜40原子、好ましくは5〜30原子、最も好ましくは6〜20原子の原子間距離を形成する基から選択される。
【0166】
本発明によると、用語「トレーサー」には、染料、電位感受性指示薬、pH指示薬、カルシウム感受性指示薬、放射性元素、NMR標識、または電子スピン標識などのような物質が含まれ、用語「トレーサー」は、科学的文献(WO/2005/022158,EP0649022,US6,596,499,US7,090,995,US4,672,044)に複数回記述された。本発明によると、用語トレーサーは、活性化剤分子に共有結合する個々の原子または分子を含む。したがって、一つのトレーサー、さらに複数のトレーサーは活性化剤に直接共有結合することができる。
【0167】
トレーサー、さらに複数のトレーサーを、多機能性リンカーに結合することもでき、または、トレーサー、さらに複数のトレーサーを酸性ペプチド内にもしくは酸性ペプチドの末端に共有結合させることができる。
【0168】
本発明の範囲内で、「染料」は、染料によって放出される放射線の検出によって、または染料によって吸収されない電磁波放射線によって光学的に確認され得る物質である。これらは、例えば、フルオレセインイソシアネート(FIC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、(ジメチルアミノ)ナフタレン−S−スルホニルクロリド(DANSC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リサミンローダミンB200−スルホニルクロリド(RB200SC)などのような染料を含む。多数の適切な分子の記述を、DeLuca,“Immunofluorescence Analysis”に、“Antibody As A Tool“,Marchalonisら.,Eds.,John Wiley & Sons,Ltd.,pp.189−231,(1985).に模範的にみることができる。
【0169】
本発明の範囲内で、「電位感受性指示薬」は、適用される電位差により、または本願の電位により、電位感受性指示薬の物理学的、光学的、または触媒的特性を変更し、検出可能シグナルを引き起こす物質である。DIBACなどのような電位感受性指示薬(Japanese Journal of Pharmacology 86(2001)342−350,American Journal of Physiology−Heart&Circulatory Physiology 287(2004)H985−H993)は当業者に公知である。
【0170】
本発明の範囲内で、「pH指示薬」はpH値により、pH指示薬の物理学的、光学的、または触媒的特性を変更し、検出可能シグナルを引き起こす物質である。当該指示薬染料は例えば、フェノールレッド、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、他多数のように、当業者に公知である。
【0171】
本発明の範囲内で、「カルシウム感受性指示薬」は、カルシウムの存在で、カルシウム感受性指示薬の物理学的、光学的、または触媒的特性を変更し、検出可能シグナルを引き起こす物質である。当業者に公知のカルシウム感受性指示薬は例えば、エクオリン、FURA−2などのような他のカルシウム感受性染料である。
【0172】
本発明に係る「放射性元素」は、例えば、次の放射性同位体124I、125I、128I、131I、132I、または51Cr等のようなガンマ放射線を発生し、ここで125Iが特に好ましい。他には例えば11C、18F、15O、または13Nを、それらの陽電子放射および適切な検出器(陽電子放射X線撮影法)などによって検出することができ、例えば111Inを、電子捕獲によって検出することができる。
【0173】
本発明によると、「NMR標識」は、奇数の核数(陽子および中性子の合計)を有する原子を含む物質である。例えば13C、15N、または19Fなどの当該原子核は、核スピン、およびそれ故の核磁気モーメントを有する。
【0174】
「電子スピンラベル」は、本発明の範囲内で、電子スピン共鳴を用いて「電子常磁性共鳴」の測定に役立つ。したがって、試料の電磁波吸収が外部電磁場で測定される。それ故に永久磁気モーメントを有する分子(不対電子)を検出することができる(Physics in Medicine&Biology.43(1998)U3−U4,Clinical Chemistry&Laboratory Medicine.46(2008)1203−1210)。
【0175】
トレーサーの使用は、上記の式Iのトレーサー結合化合物が、診断法(既往歴調査、身体検査、X線/MRIなどの画像技術の使用、または血液もしくは他の体液の臨床検査値を伴う分析など)に使用される場合、特に有利である。本発明に係る式Iの化合物が更に一つまたは複数のトレーサーを含む場合、活性化剤の分布容積を、前記トレーサーに基づいて検出することができる。トレーサーはさらに活性化剤を定量化するために使用することができる。
【0176】
実施例として、本発明に係る当該言及されるトレーサー結合化合物は、例えば次の化合物69であり:
【0177】
【化99】
式中Rは次の構造に対応する:
【0178】
【化100】
本発明の他の実施形態は、医学の分野で使用するための上記式Iの化合物または本発明に係るトレーサー結合化合物に関する。言い換えると、それぞれ一般式Iの化合物は、医学の分野において薬学的に活性な物質として薬として使用され、本発明に係るトレーサー結合化合物は、医学の分野において診断薬として使用される。本発明の化合物にとって適切となるように、本発明の化合物を当業者に公知の任意の薬物の製造に使用することができる。好ましくは、本発明の化合物は、非免疫抑制剤の製造に使用される。薬物は、免疫システムの機能を減少させない場合、非免疫抑制剤であると考慮される。
【0179】
本発明に係る薬物または化合物は、それぞれ、(以下ではただ薬物と呼ばれる)、意図される目的のために適切となるように当業者に公知の任意の形態で投与することができる。例えば、薬物を、注射、注入、錠剤、クリーム、ゲル、軟膏、スプレー、カプセル、シロップ、エマルション、粉、粉末(flour)、坐薬または類似物からなる群から選択される形態で使用することができる。本願において、薬物をスプレー、軟膏、注射、または錠剤の形態で使用すると特に好ましい。したがって、添加剤は剤形中の薬物を投与可能に変換させるので非常に頻繁に必要とされる。
【0180】
したがって、本発明の一つの更なる実施形態は、上記式Iの化合物、および好ましくは一つまたは複数の添加剤を含む医薬品に関する。
添加剤の選択は、剤形の型に特に依存する。当該添加物は、生理学的に許容でき、添加剤自体は薬学的に活性でないことが好ましい。
【0181】
医薬品は、それぞれ適切となるような当業者に公知の医薬品であることができる。好ましい実施形態において、医薬品は、スプレー、軟膏、注射、または錠剤である。
上記式Iの化合物の適用範囲は、本発明に係る医薬品および本発明に係るトレーサー結合化合物が、病気を治療および診断だが、化粧品にもなることができる。治療は、主にヒトおよび動物の病気の治療を意味するとして理解される。
【0182】
上記式Iに係る化合物、本発明に係る医薬品、および本発明に係るトレーサー結合化合物の特別な利点は、細胞懸濁液、組織培養物、移植物、または全哺乳動物上またはその中における物質の適用を伴って、動物およびヒトの薬において特有のものである。
【0183】
本発明はさらに、上記式Iの化合物それぞれの使用、つまり本発明に係る医薬品の使用、特に、診断のための薬剤としての本発明に係るトレーサー結合化合物の使用に関する。
更なる実施形態において、本発明は、次の病気の治療のための、上記式Iに係る化合物、または本発明に係る医薬品に関する:
a)ウイルス感染症
b)急性および慢性炎症性疾患
c)癌
d)変性性筋疾患
e)神経変性疾患、および
f)カルシム恒常性の障害と関連する疾患
言い換えると、本発明はまた、上記a)〜f)で言及される病気の治療のための薬剤の製造のために上記式Iの化合物、または、本発明の医薬品を使用することに関する。さらに言い換えると、本発明は、上記式Iまたは本発明の医薬品を含む/上記式Iまたは本発明の医薬品からなる薬の治療有効量の投与を含む治療の必要な個体において、上記a)〜f)で言及される病気の一つを治療するための方法に関する。治療される個体は、好ましくは、哺乳類である。哺乳類はヒトおよび動物であってよい。
【0184】
他の実施形態において、本発明は次の病気の診断のための本発明に係るトレーサー結合化合物に関する:
a)ウイルス感染症
b)急性および慢性炎症性疾患
c)癌
d)変性性筋疾患
e)神経変性疾患、および
f)カルシム恒常性の障害と関連する疾患
言い換えると、本発明はまた、上記a)〜f)で言及された病気の診断のための薬剤の製造のために本発明のトレーサー結合化合物を使用することに関する。さらに言い換えると、本発明は、本発明のトレーサー結合化合物を含む/本発明のトレーサー結合化合物からなる薬の治療有効量の投与を含む治療の必要な個体において、上記a)〜f)で言及された病気の一つを診断するための方法に関する。治療される個体は、好ましくは、哺乳類である。哺乳類はヒトおよび動物であってよい。
【0185】
本発明によると、上記ウイルス感染症は、好ましくは、HIV、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルスのようなウイルスによって引き起こされる。
【0186】
本発明によると、上記炎症性疾患は、好ましくは、喘息、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、多種化学物質過敏症、炎症性腸疾患、敗血症、血管平滑筋細胞の炎症、動脈瘤、骨盤部位の炎症、再潅流傷害、慢性関節リウマチおよび脈管炎を含む。
【0187】
本発明によると、上記癌は、好ましくは、肺がん、膀胱ガン、肝がん、膵がんおよび乳がんであるが、これに限定されるものではない。
本発明によると、上記、変性性筋疾患は、好ましくは、筋ジストロフィー、コラーゲンIV−筋疾患および心筋再潅流傷害である。
【0188】
本発明によると、上記神経変性疾患は、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多系統委縮症、多発性硬化症、脳灰白髄炎、脳卒中、糖尿病性神経障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷および脳硬化症から選択される。
【0189】
本発明によると、上記カルシウム恒常性の障害と関連する疾患は、好ましくは、心筋梗塞、脳卒中、急性肝臓毒性、胆汁うっ滞および移植された臓器の再潅流傷害である。
本発明の上記式Iの化合物は、非免疫抑性であり、細胞外シクロスポリンの酵素活性の細胞外の有効な阻害剤である。そのようなものとして、本発明の上記式Iの化合物は、シクロスポリン媒介急性および慢性疾患の治療ならびに/または予防に適切である。化合物は、好ましくは、持続性もしくは慢性炎症性疾患、神経原性炎症ならびに線維症および浮腫形成に関連する炎症の治療または予防に適切であるが、それだけではない。これには、急性炎症性過剰反応(熱、術後炎症)、胃腸炎(大腸炎、アディソン病)、敗血症、呼吸器系の疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患)、炎症性脈管障害(アテローム性動脈硬化症、再潅流傷害)、慢性関節リウマチ、炎症性皮膚病(乾癬、アトピー性皮膚炎)、眼病(角結膜炎)ならびに末梢神経系および中枢神経系の炎症性疾患(パーキンソン病、脳卒中、多発性硬化症)を含むが限定されない。
【0190】
他の態様において、本発明は、次のステップを含む、多細胞性物体の細胞内空間における活性化剤の蓄積方法に関する:
−前記式Iに係る化合物または本発明に係るトレーサー結合化合物を提供すること;
−前記化合物の一つを多細胞性物体と接触させること。
【0191】
特に、本発明の方法の範囲内の蓄積はインビトロ(in vitro)蓄積に関する。これは、多細胞性物体は、生体から分離された物体であることを意味する。
「細胞外空間」は、サイトゾルおよびサイトゾルを囲む膜の外側にある全ての場所に関するべきである。例えば、細胞懸濁中に存在する培地も含む。
【0192】
多細胞性物体は、少なくとも二つの同一または異なる生体細胞からなる任意の物体であることができる。
用語「生体細胞」は、したがって、ヒト、動物、ならびに植物、および細菌性細胞、ならびに単細胞生物を含む。生体細胞が、細菌性細胞、または単細胞生物である場合、用語「多細胞性物体」は、例えば細胞コロニー、または細菌培養物等のような複数の細胞の集塊に関する。生体細胞がヒトまたは動物細胞の場合、用語「多細胞性物体」は、移植物、特に、臓器移植物、細胞移植物、四肢移植物、もしくは組織移植物、血液、血漿などの血液分画などのような分離された身体部分、または二次元組織培養または細胞のスフェロイド培養物等のような、ヒトおよび/もしくは動物細胞のインビトロ(in vitro)培養物に関する。生体細胞が植物細胞である場合、用語「多細胞性物体」は、例えば、葉、根、幹などのような植物の一部に関するが全植物にも関する。
【0193】
本発明によると、多細胞性物体は、分離された臓器もしくは身体部分、血液もしくは血液分画、細胞培養物、または植物である。
さらに本発明は、下記に示される式XIVの化合物の使用に関し、下記に示される式XIVの化合物は、上記式Iによる化合物の調製または本発明によるトレーサー結合化合物の調製のために、シクロスポリンAから由来し、化合物1〜3を包含する。言い換えると、本発明は、式XIVの化合物を使用して、上記式Iに係る当該化合物、または本発明に係るトレーサー結合化合物の調製方法にも関する。
【0194】
式XIVの化合物:
【0195】
【化101】
式中、Rは次の式の残基を表す:
【0196】
【化102】
式中、Rは−CHO、または−COOHを表し;および
式中、PGはアルコール保護基を表す。保護基PGは、分子中の他の官能基の変形中に変化されないで残るので、または未保護のヒドロキシル基が分子中の他の官能基の変形を妨げないので、ヒドロキシル基を保護することができる。上記保護基、並びに上記保護基の導入および上記保護基の開裂のための方法は、P.G.M.WutsおよびT.W.Greene:「Protective Groups in Organic Synthesis」,4.版,2006;章「Protection for the hydroxyl group」に記載される。好ましい保護基は、エーテル、特に、例えば、メトキシメチルエーテル、メチルチオメチルエーテル、ベンジルオキシメチルエーテル、tert−ブトキシメチルエーテル、2−メトキシエトキシメチルエーテル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルエーテル、2,2,2−トリクロロエトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテル、1−エトキシエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシエチルエーテル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチルエーテル、2,2,2−トリクロロエチルエーテル、2−(トリメチルシリル)エチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、4−メトキシベンジルエーテル、3,4−ジメトキシベンジルエーテル、ジフェニルメチルエーテルまたはトリフェニルメチルエーテル等のような置換されたエーテル、
例えば、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、tert−ブチルジメチルシリルエーテル、tert−ブチルジフェニルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、またはジフェニルメチルシリルエーテル等のようなシリルエーテル、
例えば、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ピバル酸または安息香酸のエステル等のようなエステル、
例えば、メチルカーボネート、9−フルオレニルメチルカーボネート、エチルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート、2−(トリメチルシリル)エチルカーボネート、イソブチルカーボネート、アリルカーボネート、2−プロペニルカーボネート、4−ニトロフェニルカーボネート、ベンジルカーボネート、4−メトキシベンジルカーボネート、または3,4−ジメトキシベンジルカーボネート等のようなカーボネートである。
【0197】
特に好ましくは、メトキシメチルエーテル、またはテトラヒドロピラニルエーテルのようなエーテル、トリメチルシリル(TMS)エーテル、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)エーテル、またはtert−ブチルジメチルシリルエーテル(TBDMS)のようなシリルエーテル、またはアセチルのようなエステル保護基である。特に好ましくは、TBDMS及びアセチルである。
【0198】
一般式IのシクロスポリンA誘導体は、式IV〜式XIIIである置換基Rを有し、式XIVおよび、適切な芳香族第一級アミン、ヘテロ芳香族第一級アミン、脂肪族第一級アミン、またはヘテロ脂肪族第一級アミンの化合物から出発して調製されることができる。適切な芳香族第一級アミン、ヘテロ芳香族第一級アミン、脂肪族第一級アミン、またはヘテロ脂肪族第一級アミンの化合物は、炭素原子に隣接して未置換または置換されたアミノ基(X=NR)、ヒドロキシル基(X=O)、またはチオール基(X=S)を有する。好ましくは式XIV(R=−CHO)であるアルデヒドを使用することができる。アミンを有する式XIVであるアルデヒドの反応の場合において、前記反応は、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、アセトニトリルまたは酢酸エチルなどのような不活性溶媒中で、または、前記溶媒の混合物中でも、任意選択的に水の存在下でも行われる。好ましい溶媒はメタノール、アセトニトリル、またはDMFである。反応は、室温でまたは反応混合物が沸点に達するまでの昇温で行うことができる。
【0199】
任意選択的に、酸化剤が反応を完結するために添加される。酸化剤の例は、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−14−ベンゾキノン(DDQ)のようなキノン;ジアセトキシヨードベンゼン;ベンゾフロキサン;ニトロベンゼン;ジメチルスルホキシド(DMSO);例えばバリウムマンガネート、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四酢酸鉛、ピリジニウムクロロクロメート、スカンジウム(III)トリフレート、イッテルビウム(III)トリフレート、銅(II)トリフレート、マンガントリアセテートなどのようなより高い酸化状態を有する金属を有する金属化合物;
例えば、ヨウ素、tert−ブチルハイポクロライト等のようなハロゲン;
オキソン、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、モノ過硫酸カリウム;N−ブロモスクシンイミド;N−クロロスクシンイミド;N−ヨードスクシンイミドのようなより高い酸化状態を有する硫黄化合物、または空気中の酸素である。
【0200】
好ましい酸化剤は、N−ブロモスクシンイミド、または大気中の酸素である。式XIV(R=−COOH)であるカルボン酸を有するアミンの反応を、ポリリン酸などの強酸の存在下で、特に昇温下で行うことができる。一つの好ましい変形例において、反応は二つのステップで行われる。最初のステップは、アミドを、式XIVのカルボン酸およびアミンから出発して水の脱離を伴って得る。前記アミドを用いて、二番目のステップでは、式Iの複素環化合物を、水の脱離を繰り返して調製する。アミドの調製のために、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)などのような塩基の存在下で、例えば、(ベンゾトリアゾール−1−イル)−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)等の脱水条件下アミド結合を形成する当業者に公知の試薬を使用してよい。二番目のステップは、例えば、チオニルクロリド、またはPOCl3のような無機酸クロリドと加熱することによって、トルエンもしくはキシレンのような溶媒中にp−トルエンスルホン酸のような酸の存在下で加熱することによって、酢酸もしくはプロピオン酸のような有機カルボン酸中で加熱することによって、または例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などのような水脱離試薬の存在下で、行うことができる。式Iの化合物は、当業者に公知の有機合成の標準反応を用いて式IV〜式XIIIであるR基に結合している置換基R、R、R、R、R10、またはR11を変換することによって、式Iの他の化合物に変換されてもよい。例えば、ニトロ基を、アミノ基に還元にすることができる。アミノ基を、スルホニルクロリドを用いてスルホンアミドに変換することができ、アシルクロリド、または他の活性化カルボン酸誘導体を用いてアミドに変換することができる。カルボン酸R=−COOHを、アルキルハロゲン化物を用いてカルボン酸R=−COOHのエステルに変換することができる。また、同じ反応条件下で、X=NHを有する式Iの化合物を、化合物X=N(C1〜C4−アルキル)またはN−ベンジルに変換することができる。さらに、カルボン酸R=−COOHを、標準的なアミドカップリング条件下で第一級または第二級アミンを用いて対応するカルボン酸アミドに変換することができる。
【0201】
本発明の一つの実施形態(i)は、本発明に係る式Iの化合物または本発明に係るトレーサー結合化合物を含む医薬品に関する。
本発明の他の実施形態(ii)は、式Iに係る化合物または実施形態(i)に係る本発明の医薬品を含む薬の治療有効量の投与を含む治療の必要な個体において、次の疾患a)〜f)の治療/診断のための方法に関する:
a)ウイルス感染症
b)急性および慢性炎症性疾患
c)癌
d)変性性筋疾患
e)神経変性疾患、および
f)カルシム恒常性の障害と関連する疾患
本発明の他の実施形態(iii)は、HIV、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルスのようなウイルスによって引き起こされるウイルス感染症、喘息、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、多種化学物質過敏症、炎症性腸疾患、敗血症、血管平滑筋細胞の炎症、動脈瘤、骨盤部位の炎症、腹膜炎、再潅流傷害、慢性関節リウマチおよび脈管炎、肺がん、膀胱ガン、肝がん、膵がん、乳がん、筋ジストロフィー、コラーゲンIV−筋疾患、心筋再潅流傷害、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、多系統委縮症、多発性硬化症、脳灰白髄炎、脳卒中、糖尿病性神経障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、脳硬化症、心筋梗塞、脳卒中、急性肝臓毒性、胆汁うっ滞、移植された臓器の再潅流傷害、喘息、乾癬、アトピー性皮膚炎および潰瘍性大腸炎の治療のための実施形態(ii)に係る方法に関する。
【0202】
本発明の他の実施形態(IV)は、次のステップを含む、多細胞性物体の細胞外空間における活性化剤/診断薬の蓄積方法に関する:
−式Iに係る本発明の化合物または本発明に係るトレーサー結合化合物を提供すること;
−前記化合物の一つを多細胞性物体と接触させること。
【0203】
本発明の他の実施形態(V)は、次の式の化合物を反応させることによって、本発明に係るシクロスポリンAの誘導体の調製方法に関する。
【0204】
【化103】
式中、Rは次の式の残基を表し:
【0205】
【化104】
式中、PGは、アルコール保護基を表し、Wは、HまたはOHであり、各残基は、波線が引かれている末端での結合を介して連結される。
【0206】
本発明の他の実施形態(Vi)は、トレーサー含有化合物を有する式Iに係る化合物の反応によるトレーサー結合化合物の調製方法に関する。
[図および実施例]
本発明は、次の図および実施例を基に今より詳細に記載される。図および実施例は、例示となる特徴を有するだけであり、本発明の範囲を少しも制限することはない。
【図面の簡単な説明】
【0207】
図1】化合物5および化合物33の対応する濃度を、コントロールの存在に対してプロットした二つの図を示す図である。言い換えると、図1は、化合物5および化合物33、ならびにシクロスポリンAのジャーカット(JurKat)細胞における細胞透過性を示す。
図2】増殖アッセイにおけるシクロスポリンAと比較した化合物5の免疫抑制効果の検証を示す図である。
図3】気管支洗浄における好酸性顆粒球(好酸球)の数に対する化合物5の200μgの影響を示す図である。
図4】肺組織における好酸性顆粒球(好酸球)の数に対する化合物5の200μgの影響を示す図である。
図5】気管支洗浄におけるCD4陽性T細胞の数に対する化合物5の影響を示す図である。
図6】肺組織におけるCD4陽性T細胞の数に対する化合物5の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0208】
[実施例]
次の略語が実施例中で使用される:
CsA シクロスポリンA
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DCM ジクロロメタン
DIC N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−(ジメチルアミノ)ピリジン
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DTT ジチオスレイトール
EDO エチレンジオキシド
ES 電子スプレー
FACS 蛍光標示式細胞分取器
FCS ウシ胎児血清
FITC フルオレセインイソチオシアネート
Fmoc フルオレニルメトキシカルボニル
FSC 前方散乱
HATU 2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBSS ハンクス緩衝塩類溶液
HOAc 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
MS 質量スペクトル
MTT (メチルチアゾール−2−イル)−ジフェニルテトラゾリウムブロミド
NMP N−メチルピロリドン
OVA オバルブミン
f 2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル
PBS リン酸緩衝食塩水
PMA ホルボールミリステートアセテート
PyBOP (ベンゾトリアゾール−1−イル)オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
SSC 側方散乱
TAMRA テトラメチル−6−カルボキシローダミン
TBDMS tert−ブチルジメチルシリル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Trt トリチル
実施例1:化合物1(アセチル−CsA−アルデヒド)の合成:
水(7ml)中に過ヨウ素酸ナトリウム(1.03mg;4.81mmol)を有する溶液を、アセトニトリル(30ml)および水(4ml)の混合物中にアセチルシクロスポリンA(3.0g;2.4mmol)およびルテニウム(III)クロリドハイドレート(25mg;0.125mmol)を有する溶液に、慎重に滴下した。続いて、混合物を室温で一晩撹拌した。その後、酢酸エチル(225ml)を加えて、飽和食塩液(3×111ml)を用いて抽出した。有機相をMgS0で、続いて真空で乾燥させた。化合物1を、フラッシュクロマトグラフィ(300gのシリカゲル、0.043〜0.063mm;溶媒:酢酸エチル中に0.1%酢酸)用いて、副生成物として形成されるアセチル−CsAカルボン酸(化合物3)から分離することができた。化合物1の1.76g(60%)の収量を得た。
実施例2:化合物2(TBDMS−CsA−アルデヒド)の合成:
ステップ1:
乾燥メチレンクロリド(20ml)中にシクロスポリンA(4.0g;3.33mmol)を有する溶液を窒素保護雰囲気下で、−20℃に冷却した。続いて、この温度で、2,6−ルチジン(1.43g;13.3mmol)、およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.76g;6.66mmol)を、順にゆっくり加えた。室温で一晩撹拌後に、シリル化合物の同一量を、再び加え、さらに3時間撹拌した。溶媒を真空内で除去し、残渣をクロマトグラフ(シリカゲル;ジクロロメタン/メタノール100:0〜90:10)で分析し、4.2gTBDMS−CsAを得た。
ステップ2:
アセトニトリル(80ml)および水(10ml)の混合物中にTBDMS−CsA(4.2g;3.19mmol)を有する溶液に、ルテニウム(III)クロリドハイドレート(33mg;0.16mmol)を加えた。続いて、水(30ml)中に過ヨウ素酸ナトリウム(1.36g;6.36mmol)を有する溶液を滴下でゆっくり加えた。一晩撹拌後ろ過し、ろ液を真空で大部分濃縮し、酢酸エチルと混合した。有機相を飽和食塩液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。残渣をクロマトグラフ(勾配:シクロヘキサン/酢酸エチル)で分析し、TBDMS−CsA-アルデヒドを得て、更なる洗浄なしで次の反応に使用した。収量:78g(二つのステップで64%);MS(ES)C661211113Si計算値1304、測定値1305(M+H)
実施例3:化合物3(アセチル−CsA−カルボン酸)の合成:
化合物を文献の手順(Bioconjugate Chem (1992),32−36)に従って、過ヨウ素酸ナトリウム/過マンガン酸カリウム用いてアセチル−シクロスポリンAの酸化によって合成した。
実施例4:化合物4の合成
20mlMeOH中に50mg(0.041mmol)の化合物1および11.25mgのcis−ジアミノビオチンを有する溶液を還流下で1h加熱し、続いて一晩室温で撹拌した。メタノールの蒸発後、残渣を10mlのDCM中にとり、9mgのN−ブロモスクシンイミドと処理し、その後1時間撹拌した。アセチル保護生成物を、続いて分取HPLCによって分離し、凍結乾燥した。その後、アセチル保護基を50%テトラヒドロフラン中に3mlの0.1MLiOHを有する溶液を用いて除去し、最終生成物を分取HPLCによって単離した。収量:10mg(18%)。
実施例5:化合物5の合成
方法A
MeOH(10ml)中に化合物1の100mg(0.081mmol)および3,4−ジアミノ安息香酸190mg(1.215mmol、15eq)を有する溶液を、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)、12〜48時間撹拌した。その後、ろ過し、固体を10mlのMeOHで洗浄した。メタノール溶液1.5mlを次のステップのために分離し、ろ液の残りを真空で濃縮した。続いてアセチル化合物を、分取HPLC(カラムRP C18 250x25mm;勾配 水+0.05%TFA/アセトニトリル+0.05%TFA)によって精製し、白色固体として凍結乾燥後得た。収量:70mg(69%)。
【0209】
1.5mlで0.2MのLiOHを前記アセチル合成物(〜6.1μmol)の1.5mlのメタノール溶液に加え、加水分解の完結まで混合した(約3時間;分析的HPLCによって管理)。希塩酸を用いて酸性にした後、化合物5を分取HPLC(カラムRP C18 250x25mm;勾配 水+0.05%TFA/アセトニトリル+0.05%TFA)によって精製し、凍結乾燥し、白色固体として単離した。収量:7mg(87%)。
方法B
ステップ1
過剰量の3,4−ジアミノ安息香酸(4.86g;31.9mmol)を、メタノール(10ml)中にTBDMS−CsA−アルデヒド(2.78g;2.13mmol)を有する溶液に加え、混合物を通る弱い気流を向けて混合物を一晩撹拌した。混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、残渣を次のステップにおいて更なる洗浄なしで使用した。MS(ES)C731251314Si 計算値1436、測定値1437(M+H)
ステップ2
前のステップの残渣を、THF(15ml;15mmol)中にテトラブチルアンモニウムフルオリドを有する1M−溶液と混合し、混合物を、TBDMS−化合物をもはや検出することができなくなるまで2.5時間撹拌した。溶液を溶媒の分離なしで、RP−HPLC(カラムC18;勾配 HO(0.1%TFA)/MeOH(0.1%TFA))による分離のために直接使用し、化合物5を無色固体として凍結乾燥後得た。収量:909mg(二つのステップで32%);MS(ES)C671111314 計算値1322、測定値1323(M+H)
実施例6:化合物6の合成
DMF(3ml)中にアセチル−CsA−カルボン酸(50mg;0.04mmol)、メチル3−アミノ−4−ヒドロキシベンゾエート(10mg;0.06mmol)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(23mg;0.044mmol)、およびDIPEA(21μl)を有する混合物を一晩撹拌し、その後、中間体カルボキサミドを分取HPLCによって精製した。そのアミドをトルエン(10ml)に溶解し、チオニルクロリド(3μl)で処理し、溶液を数時間還流下で加熱した。チオニルクロリド(10μl)を新たに加え、次に24時間更に加熱した後、HPLC分析は、約80%のベンゾキサゾールへの変換を示した。溶媒を真空で除去し、残渣をMeOH(1ml)および0.2MNaOH(1ml)で処理した。混合物を5℃に冷却し、一晩撹拌した。混合物を塩酸の18%溶液(100μl)で酸性化し、化合物6を分取HPLCによって単離した。
実施例7:化合物7および化合物8の合成
方法A
乾燥THF中に化合物5(10mg;0.00732mmol)を有する溶液を、17mgCHIおよび5〜6mgベンジルトリエチルアンモニウムクロリドで処理し、室温で一晩振とうした。水の追加後、pHを約2〜3に調整し、続いて溶液を真空下で凍結乾燥した。0.1MLiOH(4ml)およびMeOH(4ml)を加え、混合物を2時間撹拌した。化合物7、さらに化合物8もまた分取HPLCよって単離した。収量:化合物7:3.5mg(36%)および化合物8:1mg(9%)。
方法B
化合物7を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、およびメチル3,4−ジアミノベンゾエート(38mg;0.23mmol);収量:52.3mg(17%)、無色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例8:化合物9の合成
方法A:
化合物9を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、およびエチル3,4−ジアミノベンゾエート(42mg;0.23mmol);収量:46mg(15%)、無色固体;MS(ES)C691151314 計算値1350、測定値1351(M+H)
方法B:
25mgの化合物5を、乾燥THFで溶解し、20mg臭化エチル、8mgKCO、および5〜6mgベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを用いて処理し、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)、12〜48時間振とうした。その後、混合物を真空で濃縮し、分取HPLCによって単離した。アセチル基を2時間以内に、室温で50%THF中、4mlの0.1M NaOHで脱離し、最終生成物を分取HPLCによって単離した。収量:10mg(40%)。
実施例9:化合物10の合成
化合物10を、1−ブロモ2−エチルブタンをアルキル化剤としてエチルブロミドの代わりに使用することが相違する他は、実施例8(方法B)における化合物9のように調製した。
実施例10:化合物11の合成
7mgの化合物11を、実施例7(方法A)示された手順に従って、25mgの化合物5および添加された1−ブロモブタンから出発して調製した。収量:7mg(28%)
実施例11:化合物12の合成
5mgの化合物12を、実施例7(方法A)示された手順に従って、25mgの化合物5および添加されたイソ−ブチルブロミドから出発して調製した。収量:5mg(20%)
実施例12:化合物13の合成
ジペプチドH−D−Glu(Ot−Bu)−D−Glu(Ot−Bu)−OHを、標準的なフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)−ペプチド−合成を介して2−クロロ-トリチルクロリド樹脂に結合し、続いてDMF(1ml)およびDCM(1ml)の混合物中に13mgの化合物5および4mgHATUを有する溶液に152mgのジ゛ペプチド樹脂を加え、次にDIPEA(10μl)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、その後、固体をろ過し、DMF(3×)で洗浄し、次にDCM(3×)で洗浄した。化合物13を、2mlの100%トリフルオロ酢酸(TFA)とともに5℃で2時間撹拌することによって、樹脂から切り離した。真空でTFA除去後、最終生成物を分取HPLCによって精製した。収量:4mg(27%)
実施例13:化合物14の合成:
MeOH(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(化合物1;20mg)、およびtert−ブチル−3−(3,4−ジアミノ−フェニル)−アクリレート(50mg;0.21mmol)を有する溶液を、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)室温で振とうした。反応混合物を5℃で冷却し、0.2MのNaOH(1ml)を加え、加水分解の完結まで(分析的HPLCによる管理)5℃で振とうした。その後、反応混合物を、18%塩酸(100μl)を用いて酸性化し、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:5mg(22.2%)。
実施例14:化合物15の合成:
トリフルオロ酢酸(1ml)を、〜2.5mgの化合物14に加えた。混合物を30分間室温で振とうした。真空でTFAの蒸発後、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:0.3mg(11.1%)。
実施例15:化合物16の合成:
MeOH(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(化合物1;10mg;8μmol)、および4,5−ジアミノ−2,6−ジメルカプトピリミジン(6.9mg;40μmol)を有する溶液を、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)室温で振とうした。アセテート加水分解、反応混合物の後処理、および化合物16の精製を、化合物14で記載されたのと同じ方法で行った。収量:3.1mg(28.8%)。
実施例16:化合物17の合成:
DMF(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(化合物1;10mg;8μmol)、および4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン(3.2mg;18μmol)を有する溶液を、100℃で一晩撹拌した。真空で溶媒の除去後、アセテート加水分解、反応混合物の後処理、および化合物17の精製を、化合物14で記載されたのと同じ方法で行った。収量:1.5mg(14%)。
実施例17:化合物18の合成
MeOH(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(化合物1;10mg;8μmol)、および5,6−ジアミノ−1H−ピリミジン−4−オンヘミスルフェート(7.3mg;21μmol)を有する溶液を、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)室温で振とうした。アセテート加水分解、反応混合物の後処理、および化合物18の精製を、化合物14で記載されたのと同じ方法で行った。収量:0.83mg(8%)。
実施例18:化合物19の合成:
化合物19を、3,4−ジアミノ安息香酸ヒドラジド(4.4mg;26μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:2.5mg(23.4%)。
実施例19:化合物20の合成:
化合物20を、2,3−ジアミノ−4,5−ジフルオロ−ベンゼンスルホン酸(3.4mg;15μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:2.5mg(22.4%)。
実施例20:化合物21の合成
化合物21を、2,3−ジアミノ−5−フルオロ−安息香酸(3.8mg;22μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:7.6mg(70.9%)。
実施例21:化合物22の合成
方法A:
化合物22を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、および3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸(51.8mg;0.275mmol);収量:116.1mg(37%)、無色固体;MS(ES)C661111315S 計算値1358、測定値1359(M+H)
方法B:
1mlMeOH中に10mg(8μmol)の化合物1および4.9mg(26μmol)3,4−ジアミノベンゼンスルホン酸を有する溶液を、反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)室温で振とうした。反応混合物を5℃に冷却し、0.2MのNaOH(1ml)をアセチル保護基の切断のために加えた。反応混合物を加水分解の完結まで(分析的HPLCによる管理)5℃で振とうした。その後、100ml18%HClを加え、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:2.3mg(21.1%)。
実施例22:化合物23の合成
方法A
3,4−ジアミノベンズアミドを次の文献手順(J.Med.Chem.48(2005),1873−1885)にしたがって得て、そのジアミン(35mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.30mmol)と反応させた。収量:43.7mg(14%)、茶色がかった固体;MS(ES)C671121413 計算値1321、測定値1322(M+H)
方法B
化合物23を、3,4−ジアミノベンゾニトリル(2.3mg;17μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:0.4mg(3.8%)。
実施例23:化合物24の合成
DMF(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(化合物1;10mg;8μmol)、および5,6−ジアミノウラシルスルフェート(3.2mg;14μmol)を有する溶液を、100℃の温度で一晩撹拌した。真空での溶媒除去後、アセテート加水分解、反応混合物の後処理、および化合物24の精製を、化合物14で記載されたのと同じ方法で行った。収量:1.7mg(16.2%)。
実施例24:化合物25の合成:
化合物25を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:イソ−プロピル3,4−ジアミノベンゾエートを次の文献の手順(US2007/0032525)で調製し、そのエステル(45mg;0.23mmol)をTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。;収量:99.1mg(32%)、無色固体;MS(ES)C701171314 計算値1364、測定値1365(M+H)
実施例25:化合物26の合成
ステップ1
3,4−ジアミノ安息香酸(300mg;1.97mmol)に、濃硫酸(2ml)を加えて、続いて2−(ジメチルアミノ)エタノール(176mg;1.97mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、続いて氷上に置き、20%水酸化ナトリウム溶液を用いて、pH14にした。その後、酢酸エチルで抽出し、有機相をMgSOで乾燥させ、乾燥のために蒸発させ、2−(ジメチルアミノ)−エチル3,4−ジアミノベンソエート(154mg;35%)を含む残渣を、次のステップにおいて更なる精製なしで使用した。
ステップ2
化合物26を、TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、および2−(ジメチルアミノ)−エチル3,4−ジアミノベンゾエート(52mg;0.23mmol)から出発して化合物5(方法B)と同じ方法で調製した。収量:4.3mg(1.3%)、無色固体;MS(ES)C711201414 計算値1393、測定値1394(M+H)
実施例26:化合物27の合成:
ステップ1
2−(モルホリン−4−イル)エチル3,4−ジアミノベンゾエートを、3,4−ジアミノ安息香酸(300mg;1.97mmol)および、2−(モルホリン−4−イル)エタノール(258mg;1.97mmol)から出発して実施例25のステップ1で記載されるように調製した。収量:61mg(12%)。
ステップ2
化合物27を、TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、および2−(モルホリン−4−イル)−エチル−3,4−ジアミノ安息香酸(61mg;0.23mmol)から出発して化合物5(方法B)と同じ方法で調製した。収量:8.5mg(2.6%)、無色固体;MS(ES)C731221415 計算値1435、測定値1436(M+H)
実施例27:化合物28の合成:
化合物28を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、および2,3−ジアミノ安息香酸(35mg;0.23mmol);収量:65mg(21%)、無色固体;MS(ES)C671111314 計算値1322、測定値1323(M+H)
実施例28:化合物29の合成
化合物29を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、およびメチル2,3−ジアミノベンゾエート(38mg;0.23mmol);収量:50.8mg(17%)、無色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例29:化合物30の合成:
ジメチル3,4−ジアミノホスフェートを次の文献の手順(J.Heterocyclic Chem.10(1973),891〜898)で調製し、そのエステル(30mg;0.13mmol)を、化合物5(方法B)で記載されたのと同じ方法で、TBDMS−CsA−アルデヒド(175mg;0.13mmol)と反応させた。;収量:38.6mg(21%)、無色固体;MS(ES)C701151316 計算値1394、測定値1395(M+H)
実施例30:化合物31の合成:
ステップ1
エタノール(5ml)中でナトリウム(181mg,7.87mmol)から調製されたNa−エタノレートのエタノール溶液を、エタノール(3.5ml)および水(0.15ml)中にジメチル3,4−ジアミノフタレート(820mg;3.66mmol)を有する懸濁液に加え、混合物を、2時間還流加熱した。冷却後、固体をろ過し、水(7ml)で溶解し、溶液を1MのHClを用いて中和した。その後、混合物を凍結乾燥し、残渣をメタノール(50ml)と共に撹拌した。更新されたろ過後、ろ液を真空で濃縮し、残渣から4,5−ジアミノフタル酸を、RP−HPLC(カラムC18;勾配HO/MeOH 95:5)および凍結乾燥後に得た。収量:553mg(77%)。
ステップ2
化合物31を、TBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)、および4,5−ジアミノフタル酸(45mg;0.23mmol)から出発して化合物5(方法B)と同じ方法で調製した。収量:16.5mg(5.3%)、無色固体;MS(ES)C681111316 計算値1366、測定値1367(M+H)
実施例31:化合物32の合成:
ジメチル3,4−ジアミノホスフェートを次の文献手順(J.Heterocyclic Chem.10(1973),891−898)にしたがって調製し、そのエステル(51mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:63.9mg(20%)、無色固体;MS(ES)C701151316 計算値1394、測定値1395(M+H)
実施例32:化合物33の合成
5−(3,4−ジアミノフェニル)テトラゾールジヒドロクロリドを次の文献手順(EP1944311)にしたがって調製し、そのテトラゾール(57mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:32.9mg(11%)、無色固体;MS(ES)C671111712 計算値1346、測定値1346(M+H)
実施例33:化合物34の合成:
化合物34を、次の量で次の物質を使用したことが相違する他は、化合物5(方法B)のように調製した:TBDMS−CsA−アルデヒド(174mg;0.13mmol)、および3,4−ジアミノベンゼンスルホンアミド(25mg;0.13mmol);収量:14.5mg(8%)、無色固体;MS(ES)C661121414S 計算値1357、測定値1358(M+H)
実施例34:化合物35の合成:
3,4−ジアミノベンズアミジンを次の文献手順(WO1999/24395)にしたがって調製し、そのアミジン(35mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:86.9mg(29%)、無色固体;MS(ES)C671131512 計算値1320、測定値1321(M+H)
実施例35:化合物36の合成:
3−アミノ−4−(メチルアミノ)安息香酸を次の文献手順(WO2005/030704)にしたがって調製し、そのジアミン(39mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:87.7mg(29%)、無色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例36:化合物37の合成:
4−アミノ−3−(メチルアミノ)安息香酸を次の文献手順(WO2000/020400)にしたがって調製し、そのジアミン(39mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:80.2mg(26%)、無色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例37:化合物38の合成:
N−(3,4−ジアミノフェニル)トリフルオロアセトアミドを次の文献手順(WO2004/039318)にしたがって調製し、そのジアミン(51mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.23mmol)と反応させた。収量:23.7mg(7.4%)、無色固体;MS(ES)C681131413 計算値1389、測定値1390(M+H)
実施例38:化合物39の合成:
化合物39を、3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリドジハイドレート(18.3mg;46μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:4.5mg(40.6%)。
実施例39:化合物40の合成:
化合物40を、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンテトラヒドロクロリド(5.4mg;19μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:4.3mg(41.1%)。
実施例40:化合物41の合成:
化合物40を、4−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1,2−ジアミノベンゼン(4.1mg;20μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:2.3mg(20.9%)。
実施例41:化合物42の合成:
ジクロロメタン(5ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(25mg;20μmol)、及びエチレンジアミン(1.5μl)を有する溶液を、室温で1時間撹拌し、その後5℃で20分間撹拌した。続いてN−ブロモスクシンイミド(4mg)を加え、溶液を一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣を酢酸エチル(30ml)中に入れた。その後、続いて飽和NaHCO−(2×10ml)、5%KHSO−(2×10ml)、および飽和塩化ナトリウム溶液(2×10ml)で洗浄した。MgSOで乾燥後、溶媒を真空で除去し、続いて、残渣を、0.1MのNaOH(4ml)溶液と共に同量のテトラヒドロフランの溶液中に入れた。それを反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)、2〜5時間撹拌した。生成物を、分取HPLCによって分離した。収量:7mg(28%)。
実施例42:化合物43の合成:
アセチル−CsA−カルボン酸(50mg;0.04mmol)、L−セリンメチルエステル塩酸塩(7mg)、および(ベンゾトリアゾール−1−イル)オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)(23mg;0.044mmol)を、DMF(3ml)中で溶解し、続いて、DIPEA(21μl)で処理した。室温で50分間撹拌後、中間生成物を分取HPLCによって分離した。収量:27mg(50%)。
【0210】
27mgのアミド−中間生成物をトルエン(20ml)に溶解し、その後、トリエチルアミン(20μl)およびメタンスルホニルクロリド(10μl)を加えた。真空で溶媒の除去後、残留物を0.2MのNaOH(2ml)およびTHF(2ml)で処理し、混合物を反応の完結まで(分析的HPLCによる管理)撹拌した。最終生成物を、分取HPLCによって単離した。収量:7mg(27%)。
実施例43:化合物44の合成:
化合物44を、(R,R)−(−)−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン塩酸塩(3.3mg;22μmol)をジアミンとして使用したことが相違する他は、実施例17に記載されたのと同じ方法で調製した。収量:5.8mg(56.4%)。
実施例44:化合物45の合成:
DMF(1ml)中にアセチル−CsA−アルデヒド(11mg;8.8μmol)、および5,6−ジアミノ−ナフタレン−1−スルホン酸(2.8mg;12μmol)を有する混合物を、室温で一晩振とうした。溶媒を真空で除去し、MeOH(1ml)および0.2MのNaOH(1ml)を残渣に加えた。反応混合物を、5℃で一晩振とうし、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:8.0mg(71.0%)。
実施例45:化合物46の合成:
N−(3,4−ジアミノフェニル)グアニジン塩酸塩を次の文献手順(WO1998/045275)にしたがって調製し、そのジアミン(62mg:0.307mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(400mg;0.307mmol)と反応させた。収量:121.7mg(30%)、無色固体;MS(ES)C671141612 計算値1335、測定値1336(M+H)
実施例46:化合物47の合成:
ステップ1
DCM(300ml)中に2,4−ジアミノニトロベンゼン(8g;52.2mmol)、およびDIPEA(9.9g;76.6mmol)を有する溶液を0℃に冷却し、この温度で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(23g;81.5mmol)を90分以内で滴下した。その後、一晩撹拌し、DCMで希釈し、飽和NaHCO溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空で蒸発させた。残渣を、エーテル(3×400ml)と共に撹拌した。混合された上清溶液を濃縮し、DCMを用いたシリカゲルでのクロマトグラフィー精製後、N−(4−アミノ−3−ニトロフェニル)トリフルオロメタンスルホンアミドを得た。;収量:12.2g(82%)。
ステップ2
上記ニトロ化合物(12.2g;42.8mmol)のMeOH(150ml)溶液に、10%Pd−C(1.2g)を加えた。混合物を一晩H雰囲気下室温で撹拌し、固体をろ過し、MeOHと一緒にした。真空濃縮、シリカゲルでのクロマトグラフィー(勾配:DCM/MeOH)により、N−(3,4−ジアミノフェニル)−トリフルオロメタンスルホンアミドを得た。収量:3.87g(35%)。
ステップ3
化合物47を、N−(3,4−ジアミノフェニル)−トリフルオロメタンスルホンアミド(40mg;0.157mmol)、およびTBDMS−CsA−アルデヒド(205mg;0.157mmol)から出発して化合物5(方法B)と同じ方法で得た。収量:14mg(6.3%)、赤みを帯びた固体;MS(ES)C671111414S 計算値1425、測定値1426(M+H)
実施例47:化合物48の合成:
ステップ1
100%スルホン酸(5ml)中に1,2−ジアミノ−3−フルオロベンゼン(100mg;0.8mmol)を有する溶液を、30分間150℃でマイクロ波により加熱し、反応の進行をHPLCにより監視した。その後、溶液を200gの氷中で撹拌し、40%NaOH溶液で中和した。凍結乾燥された残渣を、アセトニトリル(100ml)中に懸濁した。ろ過、および続く溶媒の除去後、3,4−ジアミノ−5−フルオロ−ベンゼンスルホン酸を、水(5ml)に溶解し、ダウエックス(Dowex)Clで精製した。収量:148mg(90%)。
ステップ2
DMF(3ml)中にAc−CsA−アルデヒドの溶液(化合物1;12mg;〜10μmol)を有する溶液を、DMF(1ml)中、3,4−ジアミノ−5−フルオロ−ベンゼンスルホン酸(3.6mg;17.5μmol)に加えた。水(0.1ml)中にモノ過硫酸カリウム(6.1mg;〜10μmol)を有する溶液を付加した後、混合物を撹拌した。反応は3時間後に完結し、残渣を分取HPLCによって精製した。収量:7mg(49%)。
【0211】
MeOH(1ml)、および氷冷0.2MのNaOH(1ml)を、精製された分画に加え、混合物を一晩、5℃で振とうした。その後、混合物を酸性化し、残物を分取HPLCで精製した。収量:4.9mg(72%)。
実施例48:化合物49の合成:
ステップ1:ヘキサペプチドH−(L−Pro)−OHの合成
ヘキサペプチドH−(L−Pro)−OHを標準的なFmoc固相ペプチド合成プロトコルによって2−クロロ−トリチルクロリド樹脂上で調製した。あらゆる合成サイクルにおいて、Fmoc保護されたL−プロリンを、DMF中、PyBOPおよびDIPEAで活性化し、2時間カップリングさせた。Fmoc保護基を、DMF中ピペリジン20%溶液と共に5分間攪拌し、15分間アミンと共に撹拌することによって切断した。最後のカップリングの後、ペプチドを、100%TFAを用いて樹脂から切断し、分取HPLCによって精製した。
ステップ2
DIPEA(5μl;29μmol)を、NMP(1ml)中に化合物5(10mg;7.6μmol)、およびHATU(3.3mg;8.7μmol)を有する溶液に加えた。混合物を、5分間振とうして、続いてH−(L−Pro)−OH(10mg;16μmol)と処理した。混合物を2時間振とうした後、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:8.7mg(60%)。
実施例49:化合物50の合成:
ステップ1:ヘキサペプチドH−(L−Ala)−OHの合成
ヘキサペプチドを、実施例48のステップ1で記載されたようにH−(L−Pro)−OHの調製プロトコルに類似してFmoc保護されたL−アラニンから出発して合成した。
ステップ2
化合物50を、実施例48(ステップ2)で記載されたのと同じ方法で、化合物5(10mg;7.6μmol)およびH−(L−Ala)−OH(10mg;23μmol)から出発して得た。収量:8.1mg(61%)。
実施例50:化合物51の合成:
ステップ1:ヘキサペプチドH−(β−Ala)−OHの合成
ヘキサペプチドを、実施例48のステップ1で記載されたようにH−(L−Pro)−OHの調製プロトコルに類似してFmoc保護されたβ−アラニンから出発して合成した。
ステップ2
化合物51を、実施例48(ステップ2)で記載されたのと同じ方法で、化合物5(10mg;7.6μmol)およびH−(β−Ala)−OH(10mg;23μmol)から出発して得た。収量:4.2mg(32%)。
実施例51:化合物52の合成:
DIPEA(5μl;29μmol)を、NMP(1ml)中に化合物5(10mg;7.6μmol)、およびHATU(3.3mg;8.7μmol)を有する溶液に加え、混合物を、5分間振とうした。2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアミン(2.3μl;21μmol)の添加後、混合物をさらに2時間振とうし、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:7.9mg(75%)。
実施例52:化合物53の合成:
化合物53を、実施例51で記載された方法にしたがって、化合物5(10mg;7.6μmol)および4−(2−アミノエチル)モルホリン(2.1μl;16μmol)から出発して得た。収量:9.0mg(83%)。
実施例53:化合物54の合成:
ステップ1:N−(2−(ピペラジン−1−イル)エチル)−トリチルアミン
DCM(20ml)中に1−(2−アミノエチル)−ピペラジン(100μl;0.76mmol)、およびトリエチルアミン(106μl;0.76mmol)を有する溶液を、5℃で冷却し、トリチルクロリドで処理した。混合物を、20℃で一晩撹拌し、溶媒除去後、生成物を分取HPLCによって精製した。収量:84mg(30.%)。
ステップ2:4−[4−(2−アミノエチル)ピペラジン−1−イル]−4−オキソ−ブタン酸
DMF(2ml)中にN−(2−(ピペラジン−1−イル)エチル)−トリチルアミン(55mg;0.15mmol)を有する溶液に無水コハク酸(30mg;0.30mmol)およびDIPEA(51μl;0.3mmol)を加えた。混合物を2時間撹拌し、生成物4−オキソ−4−{4−[2−(トリチル−アミノ)エチル]ピペラジン1−イル}−ブタン酸を分取HPLCによって精製した。凍結乾燥後、TFA(2ml)を、この生成物に加え、混合物を30分間撹拌した。TFAを真空で蒸発し、残渣を分取HPLCによって精製した。収量:25mg(36%)。
ステップ3
NMP(1ml)中に化合物5(10mg;7.6μmol)、HATU(8mg;8.7μmol)、およびDIPEA(10μl;29μmol)を有する溶液を5分間振とうした。4−[4−(2−アミノエチル)ピペラジン−1−イル]−4−オキソ−ブタン酸(24mg;106μmol)の添加後、混合物をさらに2時間振とうした。生成物を分取HPLCによって精製した。収量:18mg(67%)。
実施例54:化合物55の合成:
3−アミノ−2−(メチルアミノ)安息香酸を、次の文献手順(WO2008/008431)にしたがって調製し、その酸(38mg:0.23mmol)を化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(300mg;0.323mmol)と反応させた。収量:60.3mg(20%)、無色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例55:化合物56の合成:
ステップ1
3−(N−アセチルーN−メチルーアミノ)−2−ニトロ安息香酸を次の文献手順(WO1998/24771)にしたがって調製し、その酸(5.35g:22.46mmol)を6NのHCl(46ml)と共に120℃でカリウスチューブ(Bombenrohr)内で90分間加熱した。溶媒を留去した後、メタノールで希釈し、珪藻土に吸着し、シリカゲルでクロマトグラフィーにより精製し(CHCl/MeOH 19:1+0.5%HOAc)、3.4g(77%)の3−(メチルアミノ)−2−ニトロ安息香酸を得た。
ステップ2
乾燥MeOH(100ml)中に上記ニトロ化合物(3.35g;17.1mmol)およびヒドラジンハイドレート(2.5ml;51.2mmol)を有する溶液に、同じ溶媒にNi−ラネーを懸濁した液を少量ずつ丁寧に混合した。混合物を30分間50℃で撹拌し、濃縮し、残部をメタノールを用いてシリカでろ過し、1.24g(44%)の2−アミノ−3−(メチルアミノ)安息香酸を暗色固体として得た。
ステップ3
上記ステップの安息香酸(32mg;0.19mmol)を、化合物5(方法B)に記載されたのと同じ方法でTBDMS−CsA−アルデヒド(250mg;0.19mmol)と反応させた。収量:89mg(35%)、褐色固体;MS(ES)C681131314 計算値1336、測定値1337(M+H)
実施例56:化合物57の合成:
ジペプチドH−L−Glu(OCHPh)−L−Glu(OCHPh)−NHを、標準的なフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)−ペプチド−合成(PyBOP/DIPEAを用いてFmoc−L−Glu(OCHPh)−OHの活性化、ならびにDMF中、2%DBUおよびDMF中2%ピペリジンを用いてFmoc基の切断)を用いて、リンク(Rink)アミド樹脂に結合した。DMF(2ml)中に化合物5(16mg;0.012mmol)、HATU(7mg;0.18mmol)、およびDIPEA(6μl)の溶液を樹脂に加えた。一晩振とう後、反応生成物を、TFA/DCM 1:1(2ml)を用いて室温で1時間処置することによって樹脂から切り離した。ろ過およびトルエンで希釈した後、溶媒を真空下で除去した。最終生成物を分取HPLCによって残渣から分離した。収量:6mg(28%)。
実施例57:化合物58の合成:
化合物58を、Fmoc−L−Leu−OH、Fmoc−L−Arg(Pf)−OH、化合物5(35mg;0.0265mmol)、HATU(11mg;0.029mmol)、およびDIPEA(9μl)から出発して実施例56に記載された方法で得た。DMFおよびDCMを用いて樹脂を洗浄した後、化合物58をTFAを用いて切断し、残部から分取HPLCによって得た。収量:2mg(5%)。
実施例58:化合物59の合成:
化合物59を、Fmoc−L−Pro−OH、Fmoc−L−Asn(Trt)−OH、および化合物5(35mg;0.0265mmol)から出発して実施例57で記載されたのと同じ方法で得た。収量:28mg(69%)。
実施例59:化合物60の合成:
化合物60を、Fmoc−L−Cys(Trt)−OH、Fmoc−L−Ala−OH、および化合物5(35mg;0.0265mmol)から出発して実施例57で記載されたのと同じ方法で得た。樹脂から最終的な化合物の切断を、TFA(3ml)を含むDTT(100mg)を用いて行った。収量:12mg(30%)。
実施例60:化合物61の合成:
化合物61を、Fmoc−L−Cys(Trt)−OH、および化合物5(35mg;0.0265mmol)から出発して実施例59で記載されたのと同じ方法で得た。収量:4.4mg(11%)。
実施例61:化合物62の合成:
化合物62を、Fmoc−L−Ser(t−Bu)−OH、Fmoc−L−Glu(Ot−Bu)−OH、および化合物5(35mg;0.0265mmol)から出発して実施例57で記載されたのと同じ方法で得た。収量:11.6mg(28%)。
実施例62:化合物63の合成:
化合物63を、Fmoc−L−Glu(Ot−Bu)−OH、および化合物5(35mg;0.0265mmol)から出発して実施例57で記載されたのと同じ方法で得た。収量:13mg(31%)。
実施例63:化合物64の合成:
NMP(1ml)中に化合物5(10mg;7.6μmol)を有する溶液に、HATU(3.3mg;8.7μmol)、およびDIPEA(5μl)を加えた。混合物を2分間撹拌後、1−(2−アミノエチル)−ピペラジン(1.2mg;9.4μmol)を加え、混合物を3時間振とうした。化合物64を分取HPLCによって分離した。収量:3.7mg(34%)。
実施例64:化合物65の合成:
DIC(2μl)、およびDMAP(1.4mg;11.4μmol)を、DCM(1ml)中に化合物5(10mg;7.6μmol)を有する溶液に加えた。30分間撹拌後、溶媒を真空で除去した。残渣を、NMP(1ml)中、サリチル酸(2mg;14.5μmol)の溶液を用いて処理し、混合物を一晩振とうし、その後化合物65を分取HPLCによって分離した。収量:1.5mg(13%)。
実施例65:化合物66の合成
ステップ1
N−(トリチル)−2−(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチルアミンを次の文献手順(Eur.J.Org.Chem.2009,3953−3963)にしたがって調製した。
ステップ2
化合物5(50mg;0.038mmol)、およびPyBOP(19.7mg;0.038mmol)を、NMP(3ml)で溶解し;DIPEA(19.3μl)、およびステップ1のアミン(17.7mg;0.045mmol)を加えた。反応混合物を、1時間撹拌し、酢酸エチル(50ml)で希釈し、続いて5%KHSO−、5%NaHCO−、および飽和塩化ナトリウム溶液を用いて2回洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、真空で濃縮して、TFA(2ml)と反応させた。室温で15分後、反応混合物を濃縮し、化合物66を分取HPLCによって単離した。収量:29mg(52%)。
実施例66:化合物67の合成:
DIPEA(10μl)を、NMP(1ml)中にシス,シス−1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸(22mg;0.1mmol)、化合物66(7.3mg;0.005mmol)、およびPyBOP(3mg;0.0058mmol)を有する溶液に加えた。混合物を、室温で2時間撹拌し、化合物67を分取HPLCによって単離した。収量:5mg(61%)。
実施例67:化合物68の合成:
DIPEA(10μl)を、NMP(1ml)中に無水コハク酸(20mg;0.2mmol)、および化合物66(7.3mg;0.005mmol)を有する溶液に加えた。化合物68を分取HPLCによって単離した。収量:2.9mg(37%)。
実施例68:色素分子を用いて化合物5の誘導体化による化合物60の調製:
a)TAMRA−EDO(トレーサー)の合成
DMF(5ml)中に5(6)−カルボキシテトラメチルローダミン(20mg;46.5μmol)を有する溶液を、予備活性化のために2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(19mg;8.3μmol)を用いて処理し、5分間撹拌した。その後、この溶液に2,2−(エチレンジオキシ)エチルジアミン(68μl;465μmol)を加えた。2時間の撹拌後、生成物を分取HPLCによって単離した。収量:15mg(57.6%)。
b)化合物69の合成:
化合物5(10mg;7.56μmol)を、DMF(1ml)中に溶解し、予備活性のためにHATU(3.2mg;8.3μmol)、およびDIPEA(3.9μl;22.6μmol)の添加後、5分間撹拌した。DMF(1ml)中にTAMRA−EDO(8.5mg;15.12μmol)の溶かした溶液を加えた。2時間撹拌後、生成物(化合物69)を分取HPLCによって単離した。収量:7mg(50%)。
実施例69:シクロスフィリンCyp18wtのペプチジル−プロリル−シス/トランス−イソメラーゼ(PPlase)の阻害
測定は、10℃のキュベット温度でUV/Vi分光計で行われた。その装置は、キネティックモードにおいて390nmで作動される。(測定バッファ:35mMのHEPES/NaOH pH7.8(AppliChem A1069))。35mMのHEPES/NaOH pH 7.8および各試験物質の異なる濃度で溶解される0.58nM組換え型ヒト野生型Cyp18(Cyp18wt)、2.33nMウシ血清アルブミン(BSA)、および1mg/mlキモトリプシン(メルク(Merck))を、必要に応じて、キュベットの中に入れた。32μmolMの最終基質濃度になるように基質としてSuc−Ala−Ala−Pro−Phe−4−ニトロアニリド(バッヘム(Bachem)社、10mg/ml DMSO)のストック溶液を用いて反応を開始した。吸光時間曲線は、反応の急速相の終了後、すなわち、一次反応の反応速度式にしたがって、およそ60秒後に評価された。阻害剤のIC50値は、キュベット中で阻害剤濃度の機能で測定される阻害された反応(%阻害)に対する比率で、非阻害された反応の一次速度定数から生じる。試験化合物のIC50値の結果を表1に列挙する。
実施例70:カルシニューリンのホスファターゼ活性の阻害
阻害剤の存在下および不存在下で脱リン酸化するカルシニューリン活性の測定をシンチレーション近接アッセイ(R. Baumgrassら,J.Biol.Chem.276(2001),47914−47921も参照)で行った。測定を、サンプルバッファー(40mM Tris−HCl,pH7.5,100mM NaCl,6mM MgCl,0.5mMジチオトレイトール,1mM CaCl,0.1mg/mlウシ胎児血清)中、50nMカルモジュリンおよび1.32nMカルシニューリンの存在下で30℃で20分間、96ウェルマイクロタイタープレート(コースター(costar)社,ボーデンハイム、ドイツ)で、33Pで標識された10pMolのビオチン化されたホスホペプチドAsp−Leu−Asp−Val−Pro−Ile−Pro−Gly−Arg−Phe−Asp−Arg−Arg−Val−pSer−Val−Ala−Ala−Glu(MW=2192.0)(RII−ペプチド)のインキュベーションによって行った。分析/ウェルの全容積は100μlであった。反応時間の後、反応混合物の90μl分量を、ストレプトアビジンで被覆されたシンチレーションキャビティに移し、20分間22℃でインキュベートした。洗浄ステップの後、RIIホスホペプチド関連33P放射活性をマイクロベータトップカウンター(MicroBeta Top Counter)(ワラク(Wallac)社)で測定し、酵素活性を、三回の測定値の平均値±SDとして示した。非阻害された脱リン酸化活性は、100%で設定された。潜在的なシクロフィリン−阻害剤−複合体のカルシニューリン−阻害を、10〜50μMの一定の阻害剤濃度(DMSO中、典型的なストック溶液1mM)で10nM〜50μMのCyp18濃度の存在で測定した。試験化合物の結果を表1に列挙する。
実施例71:細胞内NFAT−レポーター−遺伝子アッセイにおける免疫抑制効果の検証
T−細胞受容体の抗原特異刺激はNFAT(活性化T細胞核因子)などのような転写因子の活性化を引き起こす。NFTA−活性化は、インターロイキン−2の発現に、ひいては免疫応答の一端としてT−細胞の増殖に必須である。安定なNFAT−レポーター−遺伝子細胞系列は、NFAT−経路の調節剤の分析することで化合物の免疫抑制効果の評価を可能にする。
【0212】
安定にトランスフェクトされたレポーター−遺伝子細胞系列GloResponse NFAT−RE−luc2P HEK293(プロメガ社(Promega Corp.)、米国)をDMEM(10%FCS;2mMグルタミン;200μg/ml ハイグロマイシン)中で培養し、96−ウェルプレート(200,000細胞/フェル)に播種した。2−ポイント−決定(5μMおよび10μM)またはIC50−決定(4.1nM〜1μM濃度系列)において試験される化合物を細胞にそれぞれ加えた。未修飾シクロスポリンAを免疫抑制リファレンス化合物として使用した。その後すぐに細胞を5nMのPMAおよび2μMのイオノマイシンで刺激し、16時間(37℃、細胞インキュベーター)にわたってインキュベートした。この二重刺激はT−細胞受容体刺激を刺激し、NFAT活性化に続くルシフェラーゼ−レポーター−遺伝子の発現を引き起こす。Bright−Glo ルシフェラーゼ−アッセイ−システム(プロメガ社(Promega Corp.)、米国)による生物発光の測定によって16時間後にルシフェラーゼの量を定量的に決定した。処理されたビヒクル(1%DMSO)の平均ルシフェラーゼ値とPMA/イオノマイシン刺激された細胞を用いての平均ルシフェラーゼ値とを、正の対照と基準値として使用した。試験化合物の結果を表1に列挙した。
【0213】
次の表1において、シクロスポリンAと比較して本発明に係る化合物4〜68が、Cyp18およびカルシニューリンの阻害活性ならびにNFAT−レポーター−遺伝子アッセイにおける活性に関して列挙される。
【0214】
【表1A】
【0215】
【表1B】
【0216】
【表1C】
【0217】
実施例72:ジャーカット(Jurkat)細胞における細胞透過性の測定
細胞培養のジャーカット(Jurkat)細胞を収集し遠心分離した。培地を捨て、細胞を一度RPMI(フェノールレッドを含まない、10%FCS、Hepes、ゲンタマイシン)で洗浄した。細胞を1.0×10〜3.0×10細胞/mlの細胞濃度に調整して培地中に再懸濁し、続いて37℃、5〜10%CO2、および100%湿度で蛍光CsA誘導体(0.5μM〜2.0μM)とインキュベートした。細胞をその後、遠心分離し、培地を捨て、細胞ペレットを培地で一度洗浄し、細胞を新しい培地中で再懸濁した。続いて細胞を分析される試験化合物の対応する濃度(0.01μM〜100μM)で30分〜4時間インキュベートし、その後再度遠心分離した。培地を捨て、1mlのPBSで一度洗浄し、500μlのPBS中で再懸濁した。置換された蛍光CsA−誘導体の定量化によってFACS−測定を用いて分析を行った。リファレンス(阻害剤なし)は、したがって100%に設定された。この試験システムにおける化合物5およびシクロスポリンAの結果は、化合物5はCsAと比較して細胞透過性でないということを示す(図1)。
実施例73:Caco2細胞膜における細胞透過性の測定
試験物質を、10mMDMSO溶液からpH7.4のHBSSバッファ中最終濃度が5μMになるように希釈した。続いて、インキュベーションを2時間37℃、5%COで、トランスウェル膜で10日間成育されたCaco2−細胞の分化単層上で行う。試験物質の濃度をスターティングウェルおよびレシービングウェルにおいて決定した。基底外側方向(A−B)およびその逆(B−A)への頂端における明らかな透過性(Papp)を、次の式:Paap=1/AC(dQ/dt)によって計算した。式中Aは、トランスウェル膜の部位であり、Cはt=0時点での物質濃度であり、dQ/dtは時間毎に移動された物質の量を表す。試験化合物の結果を表2に列挙する。
実施例74:PAMPA細胞膜における細胞透過性の測定(並行人口膜透過性アッセイ Parallel Artificial Membrance Permeability Assay)
試験物質を、10mMDMSO溶液からpH7.4のHepesバッファ中最終濃度が500μMになるように希釈し、ドデカン中に10%の1,2−ジオレイル−sn−グリセル(glycer)−3−ホスホコリンおよび0.5%(w/v)コレステロールを有する膜形成溶液で被覆されたトランスウェル膜に移した。液体チャンバーで室温で16時間のインキュベーション後、ろ過後の溶液の吸光度を、10nmおきに250〜500nmの範囲で測定した。「フラックス」率を250nmと500nmの間のグラフの積分から算出し、人口膜を用いない並行反応において測定された吸光度で標準化した。試験化合物の結果を表2に列挙する。
【0218】
【表2】
【0219】
実施例75:増殖アッセイにおける免疫抑制効果の検証
マウスの脾臓から免疫細胞を単離するために、チャールス リバー ラボラトリーズ(CHARLES RIVER Laboratories)から得たC57BL/6株を使用した。切断前に、14週歳の動物を、COで満たされたタンクに15分にわたって置いた。マウスの生きている徴候をもはや見ることができなくなった後、頸椎脱臼および脾臓の除去を伴う切開を行った。脾臓細胞の単離は、組織を押しつぶし、1mlシリンジのピストンの後方を用いて細胞を平らにすることによって、5mlのHBSS(PAA)中で室温で行われた。続いて、細胞は40μm細胞ふるいを通って注がれて分離された。ふるいを5mlのHBSSで再度洗浄した。免疫細胞の分離のために、密度勾配を使用した。ここで、5mlのリンパ球分離培地(メディアテック社(Mediatech,Inc.))を5mlの細胞懸濁液と共に層状にした。更なるステップを製造者の指示にしたがって行った。
【0220】
試験化合物による脾臓細胞増殖の阻害評価をマイクロタイタープレート(96ウェルプレート)で三回行った。そのために、RPMI−1640培地(PAA)中、2μMの試験される化合物または適切なコントロール(培地、DMSO、CsA)を、90μl中に3.04×10細胞と共にインキュベートした(全容積100μl)。増殖活性を、PBS(シグマ(Sigma))中0.01mg/mlのコンカナバリンA(ConA)の添加によって行った。続いて、細胞を37℃で72時間インキュベートした。続いて、増殖を比色分析によって決定した。そのために、11μlのMTT試薬(5mg/mlメチルチアゾリルジフェニルテトラゾリウムブロミド;シグマ)を細胞に加え、さらに5時間37℃でインキュベートした。続いて、培地を捨て、細胞を100μlのDMSO中で再懸濁し、マルチプレートリーダー(VERSmax;モレキュラーデバイス)を用いて550nmおよび630nmで吸収を測定した。シクロスポリンAと比較して化合物5の試験結果を模範として図2に示す。
実施例76:喘息評価:
水酸化アルミニウムと共にオボアルブミンの適用によってオボアルブミンに対する免疫応答を引き起こす。免疫応答は、移入されたT−ヘルパー細胞群(CD4+)および移入された好酸性顆粒球を用いて追跡され得る。雌のマウス(BALB/c−株)を、0日でマウスにつき200μlの全用量でリン酸塩バッファ(PBS)((OVA)プラス100μl水酸化アルミニウム)中で溶解した50μgのオボアルブミンの腹膜内(i.p.)適用によって感作した。PBS中100μgのOVA(50μl全容積)を、7〜10日に軽い麻酔(イソフルラン)下でオボアルブミン感受性マウスに鼻腔内投与した。これらの動物を、PBS中200μgの試験化合物(i.p.)、PBS(希釈剤)だけ、または更なる添加剤なし(−)で、7、9、および11日にそれぞれ添加して得られた群に分けた。12日目に、すべての動物を、CO暴露によって犠牲にし、気管支管細胞を、気管に導入されるカニューレを用いて各1mlの冷却したPBSで3回洗浄する気管支洗浄(BAL)によって得た。その後、BALによって得られた細胞を、(a)サイ−クローム(Cy−chrome)抱合型抗マウスCD4抗体、および(b)FITC抱合型抗マウスCD62L抗体を用いて二度染色した。続いて、細胞をFACSによって分析した。エフェクター/メモリーCD4T細胞を、エフェクター/メモリーCD4T細胞の迷光特性(FSC/CCS)を用いてCD4/CD62Lリンパ球および好酸性細胞として区別した。化合物5で得られた結果を図3〜6に要約する。
【0221】
図3は、オボアルブミン感作による気管支粘膜に移され、肺リンス液(洗浄)中に検出されることができる好酸性顆粒球(好酸球)の数における化合物5の影響を示す。化合物5の投与は、好酸性顆粒球の数を非常に重大に減少らした。
【0222】
図4は、オボアルブミン感作による気管支粘膜に移された肺組織の好酸性顆粒球(好酸球)の数における化合物5の影響を示す。200μgの化合物5の投与は、好酸性顆粒球の数を非常に重大に減らした。
【0223】
図5は、オボアルブミン感作による気管支粘膜に移され、気管支洗浄(BAL)による肺リンス液(洗浄)中に洗い出されることができるCD4陽性T−細胞の数における化合物5の影響を示す。ここでも、化合物5の200μgの投与は、CD4陽性T−細胞の数を非常に重大に減らした。
【0224】
図6は、オボアルブミン感作による気管支粘膜に移され、気管支粘膜で検出されることができる肺組織のCD4陽性T−細胞の数における化合物5の影響を示す。化合物5の200μgの投与は、CD4陽性T−細胞の数を非常に重大に減らした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6