【文献】
Int. J. Immunopharmac.,1997年,Vol.19, No.9/10,p.547-550
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アジュバントが、TLR1/2もしくはTLR2/6のTLR2二量体と相互作用することにより、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させる、請求項1に記載の組成物。
B細胞エピトープが、例えばインフルエンザウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)または炭疽菌(Bacillus anthracis)を含むウイルスまたは細菌に由来する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
B細胞エピトープが、H5N1インフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質のエピトープ、百日咳トキソイドタンパク質のエピトープまたは炭疽菌組換え防御抗原のエピトープである、請求項7に記載の組成物。
抗原が、感染性疾患と関連する抗原;膜表面に結合したがん抗原;毒素;花粉などのアレルゲン;または循環中の抗原、例えばアミロイドタンパク質を隔離することが望ましい疾患と関連する抗原である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
感染性疾患;膜表面に結合したがん抗原を伴うがん;または、アルツハイマー病などの、循環中の抗原を隔離することが望ましい疾患もしくは障害の治療または予防のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ワクチンによって誘導される免疫の型は、ワクチンに含まれるアジュバントの型に大きく依存する。そのような応答の大きさおよび持続時間は、用いられるアジュバントの型、ならびに抗原およびアジュバントを免疫系に提示する組成物または方法に依存する。例えば、その後にin vivoで生成されて抗原提示細胞によって容易に提示される、対象の抗原のための遺伝子を送達するために、生弱毒化ウイルスを用いることができ;裸の抗原とアジュバントとがなし得るよりも優れた免疫応答を作動させるために、抗原提示細胞へ抗原およびアジュバントを直接に同時送達するために、リポソームを用いることができる。
【0029】
本発明は、予想外に強力な抗体応答を生成するために、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバントを用いるワクチン組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明のワクチン組成物は、単回投与と同じくらい少ない量で対象を病原因子から保護することが可能であったが、本明細書の例で示すように、対照ワクチンはそのような抗体レベルを生成することができず、ワクチン接種した対象を同じ程度に保護することができない。
【0030】
体液性免疫応答を誘導することができる抗原、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバント、リポソーム、および疎水性物質の連続相を含む担体を組み合わせた本発明の組成物は、水性アルミニウムをベースとした対照組成物より驚くほど高い抗体価を可能にした。さらに、本発明の組成物の単回投与はマウスを細菌抗原投与から効果的に防御し、肺から感染を完全に除去したが、そのことは水性アルミニウムをベースとした対照組成物では観察されなかった。
【0031】
本発明(例えば実施例1〜4)の記載される組成物の構成成分を用いる少なくとも1回の免疫により、頑強で持続性の体液性免疫応答を引き起こす能力は、広範囲の医療用途、例えば本明細書に記載されるものでのこれらの組成物の特定の有用性を例示する。本明細書の例で示すように、本発明の組成物は、少なくとも免疫から3週間後という早い時期に強力で強化された免疫応答をもたらすことができ、免疫応答は長寿命であり、抗体価は免疫から少なくとも24週間高いままである(例えば
図3)。
【0032】
抗原、リポソーム、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバント、および疎水性物質の連続相を含む担体を含んでいる本発明の組成物は、頑強で持続性の体液性免疫応答を引き起こすことができる。例えば、本明細書の実施例4に記載されるデータは、第1群のマウス(本発明のワクチン)によって生成された抗体価が、リポソームなし(第2群)、疎水性担体なし(第3群)、または脂質をベースとしたアジュバントなし(第4群)の対照群のマウスによって生成された抗体価より有意に高かったことを示す。
【0033】
したがって、脂質をベースとしたアジュバントを含有する本発明のワクチン組成物は、免疫された対象で高レベルの抗体産生を伴う強力な体液性免疫応答を生成することが可能である。
【0034】
本明細書に記載される組成物は、体液性免疫応答によって改善される疾患および/または障害(例えばB細胞および抗体産生が関与するもの)を
治療するか予防するために有用であり得る。組成物は、体液性免疫応答または抗体産生を誘導するために抗原を対象に投与することが望まれる、あらゆる場合に適用される。
【0035】
本明細書で用いるように、免疫応答を「誘導する」こととは、免疫応答を導き出し、および/または強化することである。免疫応答を誘導することは、前の免疫応答状態、例えば本発明の組成物の投与の前と比較して、免疫応答が宿主の利益になるように強化されるか、上昇するか、向上するか強化される場合を包含する。
【0036】
体液性免疫応答は、細胞媒介性免疫と対照的に、Bリンパ系の細胞(B細胞)で生産される分泌抗体によって媒介される。そのような分泌抗体は、抗原に、例えば外来物質および/または病原体(例えばウイルス、細菌など)の表面の抗原に結合し、破壊のために標識をつける。
【0037】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的または部分的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質である。認知された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεと分類され、それらは次に免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。一般的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、4つのポリペプチドを含有するタンパク質を含む。各抗体構造単位は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、各対は1つの「軽」および1つの「重」鎖を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う可変領域を規定する。抗体構造単位(例えばIgAおよびIgMクラスのもの)は、互いとの、および、例えばJ鎖ポリペプチドに結合するIgM五量体のように追加のポリペプチド鎖とのオリゴマー形に組み立てることもできる。
【0038】
抗体は、Bリンパ球(B細胞)と呼ばれる白血球のサブセットの抗原特異的糖タンパク質生成物である。B細胞の表面で発現される抗体による抗原の組込みは、活性化され、有糸分裂を経、最後に、抗原特異的抗体の合成および分泌を専門にする形質細胞に分化するようにB細胞を刺激することを含む、抗体応答を誘導することができる。
【0039】
B細胞は免疫応答の間の抗体の唯一の生産者であり、したがって効果的な体液性免疫の鍵となるエレメントである。大量の抗体を生産することに加えて、B細胞は抗原提示細胞の役割もし、T細胞、例えばヘルパーT CD4または細胞毒性CD8に抗原を提示することができ、このように免疫応答を増殖させる。B細胞、ならびにT細胞は、ワクチン効力のために必須である適応性免疫応答の一部である。ワクチン接種または自然感染のいずれかによって誘導される能動免疫応答の間、抗原特異的B細胞は活性化され、クローン的に増殖する。増殖の間、B細胞は発展し、エピトープに対してより高い親和性を有する。B細胞の増殖は、活性化ヘルパーT細胞によって間接に誘導すること、およびtoll様受容体(TLR)などの受容体の刺激を通して直接に誘導することもできる。
【0040】
抗原提示細胞、例えば樹状細胞およびB細胞は、ワクチン接種部位に引き寄せられ、ワクチンに含有される抗原およびアジュバントと相互作用することができる。アジュバントは細胞を刺激して活性化させ、抗原は標的の青写真(blueprint)を提供する。異なる型のアジュバントは、異なる刺激シグナルを細胞に送る。例えば、ポリI:C(TLR3アゴニスト)は、樹状細胞を活性化することができるがB細胞を活性化することはできない。Pam3Cys、Pam2CysおよびFSL−1などのアジュバントは、B細胞を活性化してその増殖を開始させるのが特に得意であり、それは抗体応答の生成を促進すると予想される(Moyleら、Curr Med Chem、2008年;So.、J Immunol、2012年)。
【0041】
本明細書で用いるように、用語「抗体応答」は、対象の体内への抗原の導入に応じて起こる、対象の体における抗原特異的抗体の量の増加を指す。
【0042】
抗体応答を評価する1つの方法は、特定の抗原と反応性である抗体の力価を測定することである。これは、当技術分野で公知の様々な方法、例えば動物から得られる抗体含有物質の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて実施することができる。例えば、特定の抗原に結合する血清抗体の力価は、抗原への曝露の前と後の両方において対象で判定することができる。抗原への曝露の後の抗原特異的抗体の力価における統計的に有意な増加は、対象が抗原への抗体応答を開始したことを示すであろう。
【0043】
抗原特異的抗体の存在を検出するために用いることができる他のアッセイには、それらに限定されずに、免疫学的アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA))、免疫沈降アッセイおよびタンパク質ブロット(例えばウェスタンブロット)アッセイ;ならびに中和アッセイ(例えば、in vitroかin vivoアッセイでのウイルス伝染力の中和)が含まれる。
【0044】
本発明の組成物は、強力な抗体応答を刺激することによって、体液性免疫応答を誘導することができる抗原と関連する疾患、障害または病気から対象を保護することが可能であろう。
【0045】
限定せずに、これには、例えば感染性疾患、抗体によって認識される膜表面に結合したがん抗原を伴うがん、循環中の抗原、例えばアミロイドタンパク質(例えばアルツハイマー病)を隔離すること;抗体で毒素を中和すること;抗体でウイルスもしくは細菌を中和すること;またはアレルギーの
治療のためにアレルゲン(例えば花粉)を中和することが望ましい疾患が含まれる。
【0046】
本明細書で言及する「体液性免疫応答」は、抗体産生およびそれに付随する副工程、例えばヘルパーT2(Th2)細胞の活性化およびサイトカイン生成、アイソタイプスイッチング、親和性成熟および記憶細胞の活性化に関する。それは、抗体のエフェクター機能、例えば毒素中和、古典的補体活性化、ならびに食作用および病原体除去の促進も指す。体液性免疫応答はCD4+Th2細胞によって助けられ、したがって、この細胞型の活性化または生成は本明細書で言及される体液性免疫応答の指標ともなる。
【0047】
本明細書で言及される「体液性免疫応答」は、ヘルパーT17(Th17)細胞の生成および/または活性化を包含することもできる。Th17細胞は、IL−17、IL−17FおよびIL−22などの宿主防御サイトカインの分泌によって特徴づけられるヘルパー−エフェクターTリンパ球のサブセットである。Th17細胞はTh1およびTh2細胞と発生的に異なるとみなされ、体液性免疫応答を促進すると、例えば、抗微生物免疫で重要な機能を提供し、感染から保護すると仮定されている。IL−22のそれらの生成は、上皮細胞を刺激して抗微生物性タンパク質を生産させると考えられ、IL−17の生成は、様々な細菌および真菌種による宿主感染から保護する好中球の動員、活性化および移動に関与することができる。
【0048】
体液性免疫応答は、有効な感染性疾患ワクチンの主な機構である。しかし、体液性免疫応答は、がんと闘うためにも有用であり得る。がん細胞を認識して破壊することができる細胞毒性CD8 T細胞応答を起こすように設計されるがんワクチンと異なり、B細胞によって媒介される応答は、一部の例では最大恩恵のために細胞毒性CD8 T細胞と協力することができる他の機構を通して、がん細胞を標的にすることができる。B細胞によって媒介される(例えば体液性免疫応答によって媒介される)抗腫瘍応答の機構の例には、限定されずに以下のものが含まれる:1)腫瘍細胞または腫瘍形成に影響する他の細胞の上で見出される表面抗原に結合するB細胞によって生成される抗体。例えば、そのような抗体は、免疫系が認識することができるさらなる抗原の放出を潜在的にもたらす、抗体依存性の細胞媒介細胞傷害性(ADCC)または補体結合を通して、標的細胞の殺滅を誘導することができる;2)腫瘍細胞の上の受容体に結合してそれらの刺激をブロックし、事実上それらの作用を中和する抗体;3)腫瘍または腫瘍関連細胞によって放出されるかそれに関連する因子に結合して、がんを支えるシグナル伝達または細胞経路をモジュレートする抗体;ならびに4)細胞内標的に結合し、現在未知の機構を通して抗腫瘍活性を媒介する抗体。
【0049】
ワクチン接種に続く体液性免疫の誘導を実証するために、いくつかの方法を用いることができる。これらは、以下の検出に大きく分類することができる:i)特異的抗原提示細胞;ii)特異的なエフェクター細胞およびそれらの機能;ならびにiii)サイトカインなどの可溶性媒介物の放出。
【0050】
i)抗原提示細胞:樹状細胞およびB細胞(および、より低い程度でマクロファージ)は、強化されたT細胞活性化を可能にする特別な免疫賦活性受容体を備え、プロフェッショナルな抗原提示細胞(APC)と呼ばれる。これらの免疫賦活性分子(副刺激分子とも呼ばれる)は、感染またはワクチン接種の後、CD4およびCD8細胞傷害性T細胞などのエフェクター細胞への抗原提示の過程でこれらの細胞の上で上方制御される。そのような副刺激分子(CD80、CD86、MHCクラスIまたはMHCクラスIIなど)は、APC(樹状細胞のためのCD11cなど)を特異的に確認する抗体に加えて、これらの分子に対する蛍光色素コンジュゲート抗体とフローサイトメトリーを用いて検出することができる。
【0051】
ii)CD4+「ヘルパー」T細胞:CD4+リンパ球またはヘルパーT細胞は、免疫応答媒介物であり、適応性の免疫応答能力を確立し、最大にするのに重要な役割をする。
これらの細胞は、細胞毒性または食細胞活性を有さず、感染細胞を死滅させるか病原体を除去することができないが、本質的には、これらの作業を実施するように他の細胞に指示することによって、免疫応答を「管理する」。各々異なる型の病原体を除去するように設計されているTh1およびTh2と命名されたプロフェッショナルなAPCによって、2種類のエフェクターCD4+ヘルパーT細胞応答を誘導することができる。
【0052】
ヘルパーT細胞は、MHCクラスII分子に結合した抗原を認識するT細胞受容体(TCR)を発現する。ナイーブなヘルパーT細胞の活性化はそれにサイトカインを放出させ、それは、それを活性化したAPCを含む多くの細胞型の活性に影響する。2つのTh細胞集団、Th1およびTh2は、生成されるエフェクタータンパク質(サイトカイン)のパターンが異なる。一般に、Th1細胞は、マクロファージおよび細胞傷害性T細胞の活性化によって細胞性免疫応答を支援するが、Th2細胞は、形質細胞への変換のためのB細胞の刺激および抗体の形成によって体液性免疫応答を促進する。Th2型の細胞によって調節される応答は、マウスのIgG1(ヒトではIgG2)の生成を主に強化することができる。Th1またはTh2応答と関連するサイトカインの測定は、良好なワクチン接種の尺度を与える。Th1−サイトカイン、例えばIFN−γ、IL−2、IL−12、TNF−αその他、またはTh2−サイトカイン、例えば中でもIL−4、IL−5、IL10のために設計された特異的なELISAによって、これを達成することができる。
【0053】
別のTh細胞集団は、Th17細胞である。Th17細胞と関連するサイトカインの測定は、良好なワクチン接種の尺度を与えることもできる。これは、例えば、IL−17、IL−17FおよびIL−22などのTh17サイトカインのために設計された特異的なELISAによって達成することができる。
【0054】
iii)所属リンパ節から放出されるサイトカインの測定は、良好な免疫の優れた指標を与える。抗原提示ならびにAPCおよび免疫エフェクター細胞、例えばCD4およびCD8 T細胞の成熟の結果、いくつかのサイトカインがリンパ節細胞によって放出される。抗原の存在下でこれらのLNCをin vitroで培養することによって、体液性免疫応答の検出のためにIL−4、IL−5およびIL10などの特定の重要なサイトカインの放出を測定することによって、抗原特異的免疫応答を検出することができる。標準として培養上清および組換えサイトカインを用いるELISAによって、これを行うことができる。
【0055】
それらに限定されないが、機能的抗体を検出するための赤血球凝集阻止(HAI)および血清中和阻止アッセイ;ワクチン接種の効力を判定するために、ワクチン接種をされる対象が関連病原体で抗原投与される抗原投与研究;ならびに、例えば活性化または記憶リンパ球の識別における、特異的細胞表面マーカーを発現する細胞の集団を判定するための蛍光活性化細胞分取(FACS)の使用を含む、当業者に公知であるいくつかのさらなる方法で、良好な免疫をさらに判断することができる。さらに、体液性免疫応答の刺激におけるワクチン効力は、免疫された対象の血清中の抗原特異的抗体レベルのELISA検出によって評価することができる。他の公知の方法を用いて、本発明の組成物による免疫が体液性(または抗体媒介性)の応答を導き出したかどうかを、当業者は判断することもできる。例えば、Current Protocols in Immunology Coliganら編、(Wiley Interscience、2007年)を参照。本明細書で用いる用語「感染性疾患」は、例えば、病原性生物因子の感染、存在および/または増殖からもたらされるあらゆる伝染病、接触感染症または伝染性疾患を指すことができる。限定せずに、感染性の病原体には、例えばウイルス、細菌、真菌、原生動物および寄生虫を含めることができる。感染性疾患の非限定例には、インフルエンザ(例えばインフルエンザウイルスによる感染)、呼吸器官感染症、例えば細気管支炎および肺炎(例えばRSウイルスによる感染)、百日咳、すなわち百日咳(例えば百日咳菌(Bordetella pertussis)による感染)、炭疽(例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)による感染)およびマラリア(例えば四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)または二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi)による感染)が含まれる。
【0056】
本明細書で用いるように、用語「がん」、「がん細胞」、「腫瘍」および「腫瘍細胞」(互換的に用いられる)は、細胞増殖の制御のかなりの喪失または不死化された細胞によって特徴づけられる異常増殖を示す細胞を指す。用語「がん」または「腫瘍」には、転移性だけでなく非転移性のがんまたは腫瘍が含まれる。がんは、悪性腫瘍の存在を含む、当技術分野で一般に容認されている基準を用いて診断することができる。
【0057】
本明細書で用いるように、「毒素」は、疾患もしくは病気を引き起こすことができる生細胞もしくは生物体(例えば植物、動物、微生物など)によって生成されるあらゆる物質、または感染性の物質、または有害作用が可能である組換えもしくは合成の分子を指す。毒素は、例えば、小分子、ペプチドまたはタンパク質であってもよい。毒素には、薬物物質、例えばコカインが含まれる。
【0058】
本明細書で用いるように、「アレルゲン」は、アレルギーを引き起こすことができるあらゆる物質を指す。アレルゲンは、限定されずに、植物、動物、真菌、昆虫、食品、薬物、ちりおよびダニの細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、多糖コンジュゲート、多糖のペプチドおよび非ペプチド模倣剤、ならびに他の分子、小分子、脂質、糖脂質および炭水化物に由来してもよい。アレルゲンには、それらに限定されないが、環境空気アレルゲン:植物花粉(例えばブタクサ/花粉症);雑草花粉アレルゲン;草花粉アレルゲン;ジョンソングラス;樹木花粉アレルゲン;ライグラス;クモ形動物アレルゲン(例えばチリダニアレルゲン);貯蔵ダニアレルゲン;スギ花粉/花粉症;カビ/カビ胞子アレルゲン;動物アレルゲン(例えば、イヌ、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ラット、マウスなどのアレルゲン);食品アレルゲン(例えば甲殻類;ナッツ類;柑橘類果実;小麦粉;コーヒー);昆虫アレルゲン(例えばノミ、ゴキブリ);毒:(膜翅目、ホホナガスズメバチ、ミツバチ、ジガバチ、スズメバチ、フシアリ);細菌性アレルゲン(例えば連鎖球菌性抗原;カイチュウ抗原などの寄生虫アレルゲン);ウイルス性抗原;薬物アレルゲン(例えばペニシリン);ホルモン(例えばインスリン);酵素(例えばストレプトキナーゼ);ならびに不完全抗原またはハプテンとして作用することができる薬物または化学物質(例えば酸無水物およびイソシアネート)が含まれる。
【0059】
ハプテンが本発明の組成物で用いられる場合、それは、担体、例えばタンパク質に結合してハプテン−担体付加物を形成することができる。ハプテン−担体付加物は体液性免疫応答を開始することが可能であるが、ハプテン自体は抗体産生を導き出さない。ハプテンの非限定例は、アニリン、ウルシオール(ツタウルシの毒素)、ヒドララジン、フルオレセイン、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびジニトロフェノールである。
【0060】
本明細書で言及される「
治療すること」もしくは「の
治療」、または「予防すること」もしくは「の予防」は、臨床結果を含む有益であるか、または所望の結果を得るためのアプローチを指す。有益であるか、または所望の臨床結果には、それらに限定されないが、1つまたは複数の症状または状態の軽減または改善、疾患の程度の低下、疾患の状態の安定化、疾患の発達の予防、疾患の拡散の予防、疾患進行の遅延または減速、疾患発症の遅延または減速、病原因子に対して防御免疫を付与すること、および疾患状態の改善または緩和が含まれる。「
治療すること」または「予防すること」は、
治療の不在下で予想されるものを越えて患者の生存期間を長くすることを意味することもでき、疾患の進行を一時的に阻止することを意味することもできるが、より好ましくは、それは、例えば対象で感染を予防することによって疾患の発生を予防することを含む。
【0061】
治療対象は、任意の脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトであってもよい。
【0062】
アジュバント
本発明の組成物の適当なアジュバントは、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバントである。一部の実施形態では、アジュバントは脂質をベースとしたアジュバントであり、それは少なくとも1つの脂質部分または脂質構成成分を含むいかなるアジュバントも包含する。
【0063】
本明細書で用いるように、表現「脂質部分」または「脂質構成成分」は、あらゆる脂肪酸(例えば脂肪アシル)またはその誘導体を指し、例えばトリグリセリド、ジグリセリドおよびモノグリセリドを含む。例示的脂肪酸には、限定されずに、パルミトイル、ミリストイル、ステアロイルおよびデカノイル基、または任意のC2〜C30の飽和または不飽和脂肪アシル基、好ましくは任意のC14〜C22の飽和または不飽和脂肪アシル基、より好ましくはC16の飽和または不飽和脂肪アシル基が含まれる。したがって、本明細書で言及されるように、表現「脂質をベースとしたアジュバント」は、脂肪アシル基またはその誘導体を含むあらゆるアジュバントを包含する。
【0064】
本発明の脂質をベースとしたアジュバントは最低でも少なくとも1つの脂質部分、または合成/半合成の脂質部分類似体を含有し、それはアミノ酸、オリゴペプチドまたは他の分子(例えば炭水化物、グリカン、多糖、ビオチン、ローダミンなど)に結合されてもよい。したがって、限定されずに、脂質をベースとしたアジュバントは、例えば、リポアミノ酸、リポペプチド、リポグリカン、リポ多糖またはリポタイコ酸であってもよい。さらに、ビルトインアジュバントの特性を有する抗原性化合物を作製するために、脂質部分または脂質部分を含有する構造は、抗原に共有結合または非共有結合で結合させることができる。例えば、限定されずに、脂質をベースとした部分は、非共有結合のために陽電荷を提供するために、カチオン(例えばニッケル)を含んでもよい。
【0065】
一部の実施形態では、脂質部分または脂質構成成分は、例えばグラム陽性菌またはグラム陰性菌、ロドシュードモナス・ビリディス(Rhodopseudomonas viridis)またはマイコプラズマからの細胞壁構成成分(例えばリポタンパク)などの、天然に存在するものでよい。他の実施形態では、脂質部分または脂質構成成分は、合成または半合成であってもよい。
【0066】
脂質をベースとしたアジュバントは、アジュバントの脂質部分または構成成分の少なくとも1つとして、パルミチン酸(PAM)を含んでもよい。そのような脂質をベースとしたアジュバントは、本明細書において「パルミチン酸アジュバント」と呼ばれる。パルミチン酸は、大腸菌(Escherichia coli)の免疫学的反応性のブラウンのリポタンパクで見出される低分子量の脂質である。パルミチン酸の他の一般的な化学名には、例えば、IUPAC命名法でのヘキサデカン酸、および1−ペンタデカンカルボン酸が含まれる。パルミチン酸の分子式は、CH
3(CH
2)
14CO
2Hである。当業者に理解されるであろうように、パルミチン酸の脂質鎖は変更されてもよい。パルミチン酸アジュバントとして本明細書で用いることができる例示的な化合物、およびそれらの合成方法は、例えば、米国特許出願公開US2008/0233143;US2010/0129385;およびUS2011/0200632に記載され、その開示は本明細書に組み込まれる。
【0067】
脂質部分について一般的に上で記載されるように、パルミチン酸アジュバントは、最低でも少なくとも1つのパルミチン酸部分を含有し、それはアミノ酸、オリゴペプチドまたは他の分子に結合されてもよい。ビルトインアジュバントの特性を有する抗原性化合物を作製するために、パルミチン酸部分またはパルミチン酸を含有する構造は、抗原に共有結合または非共有結合で結合させることができる。パルミチン酸部分またはパルミチン酸を含有する化学構造は、直鎖状および分枝状構造を含むアジュバントの様々な構造的構成を可能にするために、システインペプチド(Cys)にコンジュゲートさせることができる。向上した溶解性を有するアジュバント化合物を作製するために、システイン残基は、C末端でセリン(Ser)および/またはリシン(Lys)などの極性残基によって一般的に拡張されている。強化された免疫応答を起こさせるために、パルミチン酸含有アジュバント化合物は、抗原と混合するか、非共有結合性相互作用を通して抗原と会合させるか、あるいは、直接に、またはリンカー/スペーサーを使って抗原に共有結合させることができる。最も一般的には、前記のように複数の構成で用いることもできる、ジパルミトイル−S−グリセリル−システイン(PAM
2Cys)またはトリパルミトイル−S−グリセリル−システイン(PAM
3Cys)を作製するために、2つのパルミチン酸部分がグリセリル骨格およびシステイン残基に結合される。
【0068】
パルミチン酸アジュバントは、B細胞を活性化させ、抗体の急速な増殖および生成を引き起こすことが公知である。B細胞はワクチン製剤中のアジュバントと同時送達される抗原を認識し、親和性成熟を通して、抗原への特異性の増加を伴って増殖する。活性化B細胞は、細菌などの血液中に存在する可溶性標的に結合することができる可溶性免疫グロブリン抗体を大量に分泌することが公知である。抗体エフェクター機能は、i)オプソニン化;ii)抗体依存性の細胞媒介細胞傷害性(ADCC);iii)補体活性化;iv)中和である。大部分のB細胞は抗体分泌形質細胞に成熟するが、一部は免疫応答が感染を制御した後にも持続する記憶B細胞に分化するはずである。これは、病原体への以降の曝露に対する長期免疫を提供する。理想的には、予防ワクチンは、強力な記憶B細胞集団を誘導するべきである。
【0069】
したがって、一実施形態では、本発明の組成物のアジュバントは、パルミチン酸部分または構成成分を含んでいる任意の型のアジュバントである。パルミチン酸部分は、in vitroまたはin vivoでのその安定性を向上させるか、受容体(例えば下記のtoll様受容体)へのその結合を強化するか、その生物学的活性を強化するために、変更または操作することができる。
【0070】
特定の実施形態では、パルミチン酸アジュバントは、PAM
2Cysを含んでもよい。
【0071】
別の特定の実施形態では、パルミチン酸アジュバントは、PAM
3Cysを含んでもよい。
【0072】
別の特定の実施形態では、パルミチン酸アジュバントは、Pam−2−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)またはPam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)であってもよい。そのようなパルミチン酸アジュバントは、例えば研究試薬としてEMC Microcollections GmbH(Germany)およびInvivoGen(San Diego、California、USA)から入手できる。
【0073】
標識類似体を含むPam−2−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)およびPam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)の様々な類似体も、EMC Microcollectionsから入手できる。これらの類似体は本明細書に包含され、限定されずに、PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)(β−照射)、R−PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)、S−PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(フルオレセイン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(ローダミン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK−FLAG−タグ(配列番号1)、PHC−SKKKK(配列番号3)、PHC−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)(配列番号3)、PAM
3Cys−SSNAKIDQLSSDVQT(配列番号4)、PAM
3Cys−SSNKSTTGSGETTTA(配列番号5)、PAM
3Cys−SSTKPVSQDTSPKPA(配列番号6)、PAM
3Cys−SSGSKPSGGPLPDAK(配列番号7)、PAM
3Cys−SSGNKSAPSSSASSS(配列番号8)、PAM
3Cys−GSHQMKSEGHANMQL(配列番号9)、PAM
3Cys−SSSNNDAAGNGAAQT(配列番号10)、PAM
3Cys−KQNVSSLDEKNSVSV(配列番号11)、PAM
3Cys−NNSGKDGNTSANSAD(配列番号12)、PAM
3Cys−NNGGPELKSDEVAKS(配列番号13)、PAM
3Cys−SQEPAAPAAEATPAG(配列番号14)、PAM
3Cys−SSSKSSDSSAPKAYG(配列番号15)、PAM
3Cys−AQEKEAKSELDYDQT(配列番号16)、Pam
2Cys−SKKKK(RRおよびRS立体異性体の混合物)(配列番号1)、R−Pam
2Cys−SKKKK(RR立体異性体)(配列番号1)、S−Pam
2Cys−SKKKK(RS立体異性体)(配列番号1)、PamCys(Pam)−SKKKK(配列番号3)、Pam
2Cys−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)、Pam
2Cys−SKKKK(フルオレセイン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)、PAM
2Cys−SKKKK(ローダミン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)およびPAM
2Cys−SKKKK−FLAG−タグ(配列番号1)が含まれる。適切な場合には、パルミチン酸アジュバントまたはその類似体は、立体化学的に規定された化合物として、または立体異性体の混合物として用いることができる。
【0074】
アジュバントは、toll様受容体(TLR)を活性化するか、またはその活性を増加させるもの、好ましくはTLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるものである。本明細書で用いるように、TLRを「活性化する」かその「活性を増加させる」アジュバントにはいかなるアジュバントも含まれ、一部の実施形態では、TLRアゴニストとして作用する脂質をベースとしたアジュバントが含まれる。さらに、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させることは、いかなるモノマー、ホモダイマーまたはヘテロダイマー形でのその活性化を包含し、下記でさらに詳述されるように、TLR1またはTLR6とのヘテロダイマー(すなわちTLR1/2またはTLR2/6)としてのTLR2の活性化を特に含む。
【0075】
TLRは、樹状細胞(DC)およびマクロファージ、プロフェッショナルな抗原提示細胞などの白血球の上で主に見出される膜貫通型受容体の保存されたファミリーである。TLRは、病原体関連の分子パターン、例えば細菌性リポタンパクおよびリポペプチドならびにウイルスの二本鎖RNAを認識し、それに対する免疫応答を誘導するように特異的に発展した。10を超える異なるTLRがマウスおよびヒトで同定されているが、一部についてはリガンドおよびシグナル伝達経路がまだ知られていない(下記の表1を参照)。13個の同定されたTLRがヒトで存在し、1から13までの番号がつけられている。
【0077】
TLRはホモダイマーを一般的に形成するが、例外は、TLR1またはTLR6とヘテロダイマーを形成して異なるリガンド特異性をもたらすTLR2である。TLR2は下流シグナル伝達を媒介するので、これらのヘテロダイマーはTLR2としばしば総称される(Takeuchi, O.およびS. Akira、Cell、2010年、140巻(6号):805〜20頁)。DC上のTLRの刺激は、MHCおよび副刺激分子の上方制御をもたらし、それは、これらの細胞の抗原提示機能、ならびにTh1型サイトカインの生成および交差提示の促進を強化する(Lahiriら、Vaccine、2008年、26巻(52号):6777〜83頁;Weltersら、Vaccine、2007年、25巻(8号):1379〜89頁;Matsumotoら、Adv Drug Deliv Rev、2008年、60巻(7号):805〜12頁;Blander, J.M.、Ann Rheum Dis、2008年、67巻、増補3号:iii44〜9頁)。TLRを通しての刺激は免疫応答の増強に直接的な作用を有するので、TLRアゴニストは潜在的なアジュバントとして研究されている(Barchetら、Curr Opin Immunol、2008年、20巻(4号):389〜95頁)。
【0078】
TLRは、細胞活性化につながる下流シグナル伝達経路を促進するアダプター分子と関連するToll−インターロイキン1受容体(TIR)と呼ばれる保存されたサイトゾルドメインを有する。それらが関連するアダプタータンパク質、MyD88またはTRIFによって、TLRは大きく分類することができる。TLR4だけは、両方の経路でシグナル伝達することができる。両方のシグナル伝達経路は、転写因子NF−KBの活性化に収束する(Ouyangら、Biochem Biophys Res Commun、2007年、354巻(4号):1045〜51頁)。異なるTLRがいくつかの下流シグナル伝達分子を共有するが、各受容体は炎症誘発性媒介物の特異なプロファイルを生成することを、いくつかの研究は実証した(Weltersら、Vaccine、2007年、25巻(8号):1379〜89頁;Seyaら、Evid Based Complement Alternat Med、2006年、3巻(1号):31〜8頁および考察133〜7頁;Ghoshら、Cell Immunol、2006年、243巻(1号):48〜57頁;Re, F.およびStrominger, J.L.、J Immunol、2004年、173巻(12号):7548〜55頁;Avrilら、J Immunother、2009年、32巻(4号):353〜62頁)。TLR受容体の完全な下流経路は完全には解明されてないが、活性化の差は、リガンドの強度、受容体の細胞下の位置、細胞型およびインターフェロン調節因子(IRF)の存在の結果であり得る。
【0079】
パルミチン酸アジュバントは、toll様受容体2(TLR2)を通してシグナル伝達すると報告されている。例えば、PAM
2Cysは、ヘテロダイマーTLR2およびTLR6によって認識される。さらに例として、ヘテロダイマーTLR1およびTLR2によって認識されるPAM
3Cysは、体液性活性によって象徴される抗細菌性応答を誘発する。対照的に、ウイルスからの二本鎖RNAはTLR3によって認識され、通常インターフェロン放出およびT細胞活性を特徴とする、抗ウイルス性応答を誘導する。細胞性応答を媒介することは、TLR2と関連づけられている。
【0080】
Pam
3Cysは、様々な動物モデルおよびヒトでのフェーズI臨床試験で試験され、副作用は報告されていない(Moyle, P.M.およびToth. I.、Curr Med Chem、2008年、15巻(5号):506〜16頁;Wiedemannら、J Pathol、1991年、164巻(3号):265〜71頁)。マウスDC上のTLRアゴニストのスクリーニングにおいて、in vitroでのPam
3Cysによる刺激は、試験した他のTLRアゴニストと比較して少量のアジュバントだけで達成された、高レベルの炎症誘発性サイトカインIL−12p40、IL−6およびTNFαをもたらした(Weltersら、Vaccine、2007年、25巻(8号):1379〜89頁)。
【0081】
当業者によって認められるように、本発明は、TLRを活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバント、またはTLRへのアゴニストとして作用するアジュバント、特に脂質をベースとしたアジュバントを包含する。特定の実施形態では、脂質をベースとしたアジュバントは、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させる。限定せずに、そのような脂質をベースとしたアジュバントは、TLRを活性化するか、またはその活性を増加させるパルミチン酸アジュバント、例えばPAM
2CysまたはPAM
3Cysを含むパルミチン酸アジュバントであってもよい。
【0082】
本発明の組成物で脂質をベースとしたアジュバントとして用いることができる他の例示的なTLR2アゴニストには、限定されずに、細胞壁構成成分、例えばグラム陽性菌からのリポタイコ酸およびリポタンパク、ならびにマイコバクテリアからのリポアラビノマンナンが含まれる。いくつかのこれらの細胞壁構成成分は、M.スメグマチス(M. smegmatis)からのリポアラビノマンナン(LAM−MS)、M.スメグマチス(M. smegmatis)からのリポマンナン(LM−MS)、P.ジンジバリス(P. gingivalis)からのリポ多糖(LPS−PG Ultrapure)、および枯草菌(B. subtilis)(LTA−BS)および黄色ブドウ球菌(S. aureus)(LTA−SA)からのリポタイコ酸など、InvivoGen(San Diego、California、USA)から入手できる。一部の実施形態では、TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させる脂質をベースとしたアジュバントは、上記の細胞壁構成成分のいずれか1つまたは複数を含む加熱死菌を包含することができる。そのような加熱死菌は、例えば、InvivoGen(San Diego、California、USA)から入手できる。
【0083】
TLRアゴニストとして作用する合成リポタンパクも本発明に包含され、限定されずに、パルミチン酸アジュバントおよび上記の類似体、およびInvivoGen(San Diego、California、USA)およびEMC Microcollections GmbH(Germany)から入手できる合成ジアシル化リポタンパクFSL−1が含まれる。FSL−1(Pam2CGDPKHPKSF;配列番号2)は、マイコプラズマ・サリバリウム(Mycoplasma salivarium)の44kDaリポタンパクLP44のN末端部分を表す合成リポタンパクである。FSL−1はPAM
2Cysを含み、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)由来のリポペプチド、マクロファージ活性化リポペプチド−2(MALP−2)と類似したフレームワーク構造を有する。リポリ化(lipolyated)N末端ジアシル化システイン残基を含有するFSL−1およびMALP−2は、二量体TLR2およびTLR6 9TLR2/6)によって認識されると仮定される。合成MALP−2は、Enzo Life Sciences(Farmingdale、New York、USA)から入手できる。
【0084】
一実施形態では、本発明の脂質をベースとしたアジュバントは、FSL−1またはMALP−2を含むか、脂質をベースとしたアジュバントはFSL−1またはMALP−2である。適切な場合には、FSL−1またはMALP−2は、立体化学的に規定された化合物として、または立体異性体の混合物として用いることができる。FSL−1またはMALP−2は、標識されてもよい(例えばビオチン、フルオレセイン、ローダミンなど)。FSL−1は、9つの異なるFSL−1−Ala化合物を含むFSL−1 Alaスキャンコレクション(EMC Microcollections)としても入手できる。これらのFSL−1−Ala分子の各々は、個々に、または組合せで本明細書に包含される。
【0085】
本発明の脂質をベースとしたアジュバントのさらなる実施形態には、モノアシル化されたリポペプチドなどのTLR2リガンドの下部構造を含めることができる。限定せずに、これらには、例えば、Pam−Dhc−SKKKK(配列番号3)、Pam−CSKKKK(配列番号1)、Pam−Dhc−GDPKHPKSF(配列番号17)またはPam−CGDPKHPKSF(配列番号2)(EMC Microcollections)を含めることができる。
【0086】
TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させる他の脂質をベースとしたアジュバントは、例えば、InvivoGen(San Diego、California、USA)HEK−Blue(登録商標)TLR2活性化リポーター系を用いることにより確認することができる。この系は、ヒト(hTLR2)またはマウス(mTLR2)細胞のいずれかでTLR2を刺激する、潜在的なTLR2リガンドの能力の評価を可能にする。
【0087】
一部の実施形態では、本発明の組成物の脂質をベースとしたアジュバントは、TLR2だけ、ヘテロダイマーTLR1およびTLR2(TLR1/2)、および/またはヘテロダイマーTLR2およびTLR6(TLR2/6)を活性化するか、またはその活性を増加させるが、他のTLRを活性化しないものである。さらなる実施形態では、脂質をベースとしたアジュバントは、ヘテロダイマーTLR1/2および/またはTLR2/6だけを活性化するか、またはその活性を増加させるが、他のTLRを活性化しない。
【0088】
本発明の組成物は、少なくとも1つの他の適当なアジュバントと組み合わせた上記のアジュバントを含んでもよい。少なくとも1つの他のアジュバントの例示的な実施形態は、決してそれらに限定されないが、合成、非生物、または生物供給源に由来する有機および無機の化合物、ポリマー、タンパク質、ペプチド、糖(それらに限定されないが、それらの構成成分のビロゾーム、ウイルス様粒子、ウイルスおよび細菌を含む)を包含する。
【0089】
適合するアジュバントのさらなる例には、限定されずに、ケモカイン、Toll様受容体アゴニスト、コロニー刺激因子、サイトカイン、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS04、AS15、ABM2、Adjumer、アルガミュリン、AS01B、AS02(SBASA)、ASO2A、BCG、カルシトリオール、キトサン、コレラトキシン、CP−870,893、CpG、ポリIC、CyaA、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、ジブチルフタレート(DBP)、dSLIM、ガンマイヌリン、GM−CSF、GMDP、グリセロール、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISCOM、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、LPS、脂質コアタンパク質、MF59、モノホスホリルリピドA、Montanide(登録商標)IMS1312、Montanide(登録商標)をベースとしたアジュバント、OK−432、OM−174、OM−197−MP−EC、ONTAK、PepTelベクター系、他のパルミトイルをベースとした分子、PLG微粒子、レジキモド、スクアレン、SLR172、YF−17DBCG、QS21、QuilA、P1005、ポロキサマー、サポニン、合成ポリヌクレオチド、ザイモサン、百日咳毒素を含めることができる。
【0090】
したがって、組成物は1つまたは複数の薬学的に許容されるアジュバントを含むことができ、そこで、組成物のアジュバントの少なくとも1つはTLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバントである。
【0091】
別の実施形態では、アジュバント特性を提供するために、抗原は脂質部分、例えばパルミチン酸部分に結合することができる。当技術分野で公知であるように、組成物はさらなる薬学的に許容される賦形剤、希釈剤などを含むこともできる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、USA 1985)および1999年に発行されたThe United States Pharmacopoeia:The National Formulary(USP 24 NF19)を参照。
【0092】
一実施形態では、そのようなさらなる適当なアジュバントは、CpGを含有するオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)、例えば5’−TCCATGACGTTCC TGACGTT−3’(配列番号18)を含んでもよい。当業者は、標的種および効力に基づいて適切なCpGを選択することができる。
【0093】
用いられるアジュバントの量は、抗原の量およびアジュバントの型に依存する。当業者は、経験的な試験によって特定用途で必要なアジュバントの量を容易に判断することができる。
【0094】
抗原
本発明の組成物は、1つまたは複数の抗原を含む。本明細書で用いるように、用語「抗原」は、抗体に特異的に結合することができる物質を指す。組成物の適当な抗原は、対象で体液性免疫応答を誘導することが可能なものである。
【0095】
本発明の組成物で有益な抗原には、限定されずに、ポリペプチド、炭水化物、微生物またはその一部、例えば生きている、弱毒化された、不活性化された、または死滅させられた細菌、ウイルスまたは原生動物、またはその一部が含まれる。抗原は、例えば、病原性生物因子、毒素、アレルゲン、ペプチド、適当な天然、非天然、組換え型または変性されたタンパク質もしくはポリペプチド、またはその断片、または対象で体液性免疫応答を起こすことが可能であるエピトープであってもよい。
【0096】
本明細書および特許請求の範囲で用いるように、用語「抗原」には、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。ポリヌクレオチドを含有するワクチン組成物が対象に投与される、核酸をベースとしたワクチン接種戦略が公知である。ポリヌクレオチドによってコードされる抗原性ポリペプチドは、ワクチン組成物自体がポリペプチドを含有しているかのように、抗原性ポリペプチドが最終的に対象に存在するように対象で発現される。本発明のために、用語「抗原」は、文脈が指示する場合、抗原として機能するポリペプチドをコードするそのようなポリヌクレオチドを包含する。
【0097】
本発明で抗原として有用であり得るポリペプチドまたはその断片には、限定されずに、コレラトキソイド、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイド、B型肝炎表面抗原、血球凝集素(ヘマグルチニン)(例えばH5N1組換え血球凝集素タンパク質)、炭疽菌組換え防御抗原(List Biologics;Campbell、CA)、ノイラミニダーゼ、インフルエンザMタンパク質、PfHRP2、pLDH、アルドラーゼ、MSP1、MSP2、AMA1、Der−p−1、Der−f−1、アジポフィリン、AFP、AIM−2、ART−4、BAGE、αフェトプロテイン、BCL−2、Bcr−Abl、BING−4、CEA、CPSF、CT、サイクリンD1Ep−CAM、EphA2、EphA3、ELF−2、FGF−5、G250、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン、HER−2、腸管カルボキシルエステラーゼ(iCE)、IL13Rα2、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MART−1、MART−2、M−CSF、MDM−2、MMP−2、MUC−1、NY−EOS−1、MUM−1、MUM−2、MUM−3、百日咳トキソイドタンパク質、p53、PBF、PRAME、PSA、PSMA、RAGE−1、RNF43、RU1、RU2AS、SART−1、SART−2、SART−3、SAGE−1、SCRN1、SOX2、SOX10、STEAP1、サバイビン、テロメラーゼ、TGFβRII、TRAG−3、TRP−1、TRP−2、TERTおよびWT1に由来するものが含まれる。
【0098】
本発明で抗原として有益であるウイルスまたはその部分には、限定されずに、牛痘ウイルス、ワクシニアウイルス、偽牛痘ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス2、サイトメガロウイルス、ヒトアデノウイルスA〜F、ポリオーマウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、パルボウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、オルトレオウイルス、ロタウイルス、エボラウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス(例えばH5N1インフルエンザウイルス、インフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、インフルエンザC型ウイルス)、はしかウイルス、おたふくかぜウイルス、風疹ウイルス、肺炎ウイルス、ヒトRSウイルス、狂犬病ウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、ハンターンウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、ノロウイルス、フラビウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、黄熱ウイルスおよび水痘が含まれる。
【0099】
一実施形態では、本発明の組成物は、それを必要とする対象でインフルエンザウイルス感染を
治療および/または予防するために用いることができる。インフルエンザはオルソミクソウイルス科の一本鎖RNAウイルスであり、ウイルス粒子の外側の2つの大きな糖タンパク質、血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)に基づいてしばしば特徴づけられる。インフルエンザA型の多数のHAサブタイプが同定されている(Kawaokaら、Virology(1990)179巻:759〜767頁;Websterら、「Antigenic variation among type A influenza viruses」、127〜168頁。P. PaleseおよびD. W. Kingsbury(編)、Genetics of influenza viruses。Springer-Verlag、New York)。
【0100】
本発明で抗原として有益な細菌またはその部分には、限定されずに、炭疽菌(炭疽菌(Bacillus anthracis))、ブルセラ(Brucella)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、カンジダ(Candida)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、コレラ、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、クリプトコックス(Cryptococcus)、ジフテリア、大腸菌(Escherichia coli)O157:H7、腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli)、腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、髄膜炎菌(Meningococcus)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、百日咳(Pertussis)、肺炎(Pneumonia)、サルモネラ(Salmonella)、赤痢菌(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)および腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)が含まれる。
【0101】
あるいは、抗原は、原生動物起源、例えばマラリアを引き起こすプラスモディウム属(Plasmodium)(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)または二日熱マラリア原虫(Plasmodium knowlesi))のものであってもよい。
【0102】
あるいは、抗原は、天然に存在するか合成された毒素、例えば薬物物質(例えばコカイン)であってもよい。
【0103】
用語「ポリペプチド」は、長さ(例えば、少なくとも6、8、10、12、14、16、18または20アミノ酸)または翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関係なくアミノ酸の任意の鎖を包含し、例えば、天然のタンパク質、合成または組換えポリペプチドおよびペプチド、エピトープ、ハイブリッド分子、変異体、同族体、類似体、ペプトイド、ペプチド様物質などを含む。したがって、変異体または誘導体は、切断物および断片を含む欠失;挿入および付加、例えば保存的置換、部位特異的突然変異体および対立遺伝子の変異体;ならびに改変、例えばペプチドおよび翻訳後修飾に共有結合される1つまたは複数の非アミノアシル基(例えば、糖、脂質など)を有するペプトイドを含む。本明細書で用いるように、用語「保存されたアミノ酸置換」または「保存的置換」は、ペプチドの所与の位置での1つのアミノ酸の別のものへの置換を指し、置換は関連する機能の実質的な消失なしで果たすことができる。そのような変更を加えることにおいて、類似のアミノ酸残基の置換は、側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらのサイズ、電荷、疎水性、親水性などに基づいて果たすことができ、そのような置換は、ペプチドの機能に及ぼすそれらの影響について通常の試験によって検査することができる。保存的置換の具体的な非限定例には、以下の例が含まれる:
元の残基 保存的置換
Ala Ser
Arg Lys
Asn Gln、His
Asp Glu
Cys Ser
Gln Asn
Glu Asp
His Asn;Gln
Ile Leu、Val
Leu Ile;Val
Lys Arg;Gln;Glu
Met Leu;Ile
Phe Met;Leu;Tyr
Ser Thr
Thr Ser
Trp Tyr
Tyr Trp;Phe
Val Ile;Leu
【0104】
好ましい抗原配列と実質的な同一性を有するポリペプチドまたはペプチドを用いることができる。最適に整列させる(ギャップを許容する)ときに、それらが少なくともおよそ50%の配列同一性を共有するか、それらの配列が規定の機能的モチーフを共有するならば、2つの配列は実質的な同一性を有するとみなされる。代替の実施形態では、最適に整列させた配列は、それらが特定の領域で少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するならば、実質的に同一である(すなわち、実質的な同一性を有する)とみなすことができる。用語「同一性」は、2つのポリペプチド分子の間の配列類似性を指す。同一性は、整列させた配列中の各位置を比較することによって判定することができる。アミノ酸配列間の同一性の程度は、例えば特定領域における、配列によって共有される位置での同一であるか一致するアミノ酸の数の関数である。同一性の比較のための配列の最適アラインメントは、当技術分野で公知である様々なアルゴリズム、例えばhttp://clustalw.genome.ad.jpで入手できるClustalWプログラム、SmithおよびWaterman、1981年、Adv. Appl. Math 2巻:482頁のローカルホモロジーアルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、1970年、J. Mol. Biol. 48巻:443頁のホモロジーアラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁の類似性検索法、およびこれらのアルゴリズム(例えば、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、Madison、WI、U.S.A.に含まれるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピュータでの実行を用いて実行することができる。配列同一性は、Altschulら、1990年、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁(公表されたデフォルト設定を用いる)に記載される、BLASTアルゴリズムを用いて判定することもできる。例えば、National Center for Biotechnology Informationを通して(インターネットサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiを通して)入手できる「BLAST2配列」ツールを、以下のデフォルト設定で「blastp」プログラムを選択して用いることができる:予想閾値10;ワードサイズ3;マトリックスBLOSUM62;ギャップコスト存在11、エクステンション1。別の実施形態では、当業者は、所与の任意の配列を容易および適切に整列させ、単なる目視検査によって配列同一性および/または相同性を推測することができる。
【0105】
本発明の実施で用いられるポリペプチドおよびペプチドは、天然の供給源から単離されるか、合成であるか、または組換えで生成されたポリペプチドであってもよい。ペプチドおよびタンパク質は、in vitroまたはin vivoで組換えにより発現させることができる。本発明の実施で用いられるペプチドおよびポリペプチドは、当技術分野で公知の任意の方法を用いて作製することおよび単離することができる。本発明の実施で用いられるポリペプチドおよびペプチドは、当技術分野で周知である化学的方法を用いて、全体または一部を合成することもできる。例えば、Caruthers(1980)Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 215〜223頁;Hom(1980)Nucleic Acids Res. Symp. Ser. 225〜232頁;Banga, A. K、Therapeutic Peptides and Proteins, Formulation, Processing and Delivery Systems(1995)Technomic Publishing Co.、Lancaster、Paを参照。例えば、ペプチド合成は、様々な固相技術を用いて実施することができ(例えば、Roberge(1995)Science 269巻:202頁;Merrifield(1997)Methods Enzymol. 289巻:3〜13頁を参照)、自動化合成は、例えばABI 431Aペプチド合成機(Perkin Elmer)を製造業者によって提供される説明書に従って用いることによって達成することができる。
【0106】
一部の実施形態では、抗原は、例えば約25%〜50%の純度、約50%〜約75%の純度、約75%〜約85%の純度、約85%〜約90%の純度、約90%〜約95%の純度、約95%〜約98%の純度、約98%〜約99%の純度、または99%を超える純度の精製された抗原であってもよい。
【0107】
上記のように、用語「抗原」には、抗原として機能するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。本明細書および特許請求の範囲で用いるように、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さ(例えば9、12、18、24、30、60、150、300、600、1500ヌクレオチドまたはそれ以上)または鎖数(例えば一本鎖か二本鎖)のヌクレオチドの鎖を包含する。ポリヌクレオチドは、DNA(例えばゲノムDNAまたはcDNA)またはRNA(例えばmRNA)またはその組合せであってもよい。それらは天然または合成(例えば化学的合成)であってもよい。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド鎖中の1つまたは複数の窒素塩基、ペントース糖またはリン酸基の改変を含有することができると考えられる。そのような改変は当技術分野で周知であり、例えばポリヌクレオチドの安定性の向上のためであってもよい。
【0108】
ポリヌクレオチドは、様々な形で送達することができる。一部の実施形態では、裸のポリヌクレオチドは、線状で用いることができるか、発現プラスミドなどのプラスミドに挿入されてもよい。他の実施形態では、ウイルスまたは細菌ベクターなどの生きているベクターを用いることができる。
【0109】
RNAへのDNAの転写および/またはポリペプチドへのRNAの翻訳を助ける、1つまたは複数の調節配列が存在してもよい。場合によっては、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)分子であるポリヌクレオチドの場合、転写過程に関する調節配列(例えばプロモーター)は必要とされず、タンパク質発現はプロモーターの不在下で実行することができる。状況が必要とする場合は、当業者は適当な調節配列を含めることができる。
【0110】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは発現カセットに存在し、そこにおいてそれは、本発明の組成物が投与される対象でポリヌクレオチドを発現させる調節配列に作動可能に連結される。発現カセットの選択は、組成物が投与される対象ならびに発現されるポリペプチドに望まれる特徴に依存する。
【0111】
一般的に、発現カセットは、対象で機能し、構成的または誘導可能であってもよいプロモーター;リボソーム結合部位;必要に応じて開始コドン(ATG);対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;終止コドン;および、任意選択で3’末端領域(翻訳および/または転写ターミネーター)を含む。シグナルペプチドをコードする領域などのさらなる配列が含まれてもよい。対象のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、発現カセット中の他の調節配列のいずれかと同種または異種であってもよい。対象のポリペプチドと一緒に発現される配列、例えばシグナルペプチドコード領域は、一般的に発現されるタンパク質をコードするポリヌクレオチドに隣接して位置し、適切な読み枠に置かれる。発現されるタンパク質だけ、または発現される他の任意の配列(例えばシグナルペプチド)と一緒にコードするポリヌクレオチドで構成される読取り枠は、組成物が投与される対象で転写および翻訳が起こるように、プロモーターの制御下に置かれる。
【0112】
本明細書に記載される組成物による単回
治療で用いられる抗原の量は、抗原の型および対象のサイズによって異なってよい。当業者は、過度な実験なしで、特定用途で用いる抗原の有効量を判断することができる。本明細書で用いられる用語「有効量」は、所望の結果を達成するのに有効な、必要な投薬量および期間での量を意味する。
【0113】
別の実施形態では、抗原は体液性免疫応答を誘導することができるB細胞エピトープであるか、またはそれを含んでもよい。例えば、抗原は、ウイルス、例えばインフルエンザウイルスまたはRSウイルスに由来するB細胞エピトープであるか、またはそれを含んでもよい。
【0114】
別の実施形態では、B細胞エピトープは、H5N1インフルエンザウイルスの血球凝集素糖タンパク質に由来するエピトープであってもよい。
【0115】
別の実施形態では、抗原は、細菌、例えば百日咳菌(Bordetella pertussis)または炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来するB細胞エピトープであるか、またはそれを含んでもよい。
【0116】
別の実施形態では、B細胞エピトープは、百日咳菌(Bordetella pertussis)によって生成される百日咳トキソイドタンパク質のエピトープであってもよい。
【0117】
別の実施形態では、B細胞エピトープは、炭疽菌の組換え防御抗原のエピトープであってもよい。
【0118】
別の実施形態では、抗原は、感染性疾患と関連するB細胞エピトープであるか、またはそれを含んでもよい。
【0119】
別の実施形態では、抗原は、原生動物、例えばプラスモディウム属(Plasmodium)に由来するB細胞エピトープであるか、またはそれを含んでもよい。
【0120】
別の実施形態では、抗原は、がんまたは腫瘍関連のタンパク質、例えば、抗体が認識することが可能である膜表面に結合したがん抗原であってもよい。
【0121】
本発明の組成物の使用または投与によって
治療および/または予防することができるがんには、限定されずに、がん腫、腺がん、リンパ腫、白血病、肉腫、芽細胞腫、骨髄腫および胚細胞腫瘍が含まれる。一実施形態では、がんはウイルスなどの病原体に起因することができる。がんの発達と関連づけられるウイルスは当業者に公知であり、それらに限定されないが、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、ヒトヘルペスウイルス8、エプスタインバーウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス、C型肝炎ウイルスおよびヒトT細胞白血病ウイルス1が含まれる。本発明の組成物は、がんの
治療または予防のために、例えばがんの重症度の低減またはがん再発の予防で用いることができる。本発明の組成物から恩恵を受けることができるがんには、1つまたは複数の腫瘍特異抗原を発現するいかなる悪性細胞も含まれる。
【0122】
別の実施形態では、抗原は、抗体が中和することができる毒素またはアレルゲンであってもよい。一実施形態では、毒素は薬物物質、例えばコカインである。
【0123】
別の実施形態では、抗原は、循環中の抗原、例えばアミロイドタンパク質を隔離することが望ましい疾患(例えばアルツハイマー病)と関連する抗原であってもよい。したがって、本発明の組成物は、それを必要とする対象で神経変性疾患の
治療および/または予防で使用するために適当であり得、神経変性疾患は抗原の発現と関連している。対象は神経変性疾患を有してもよいか、または神経変性疾患を発症する危険があってもよい。本発明の組成物の使用または投与によって
治療および/または予防することができる神経変性疾患には、限定されずに、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)が含まれる。例えば、
【0124】
アルツハイマー病は、アルツハイマー病患者の脳での、βアミロイドプラークおよび/またはタウタンパクの結合によって特徴づけられる(例えば、GoedertおよびSpillantini、Science、314巻:777〜781頁、2006年を参照)。単純ヘルペスウイルス1型も、apoE遺伝子の感受性バージョンを持つ人々で原因となる役割を演ずると提案されている(ItzhakiおよびWozniak、J Alzheimers Dis 13巻:393〜405頁、2008年)。
【0125】
さらなる実施形態では、組成物は、体液性免疫応答を誘導するための抗原として、B細胞エピトープの混合物を含んでもよい。B細胞エピトープを連結させて、単一のポリペプチドを形成することができる。
【0126】
別の実施形態では、抗原は、標的の腫瘍細胞の上の特定の立体構造への特定の体液性免疫応答を誘導することができる、任意のペプチドまたはポリペプチドであってもよい。
【0127】
ヘルパーTエピトープ
ヘルパーTエピトープは、ヘルパーT活性を有するアミノ酸(天然または非天然のアミノ酸)の配列である。ヘルパーTエピトープは、免疫系の能力を確立し、最大にする重要な役割を果たすヘルパーTリンパ球によって認識され、他の免疫細胞を活性化し、指示すること、例えばB細胞抗体クラススイッチングに関与する。
【0128】
ヘルパーTエピトープは、連続的または不連続なエピトープからなることができる。したがって、ヘルパーTのあらゆるアミノ酸が必ずしもエピトープの一部とは限らない。したがって、ヘルパーTエピトープの類似体およびセグメントを含むヘルパーTエピトープは、免疫応答を強化するか刺激することが可能である。免疫優勢ヘルパーTエピトープは、広く多岐にわたるMHC型の動物およびヒト集団で広く反応性である(Celisら(1988)J. Immunol. 140巻:1808〜1815頁;Demotzら(1989)J. Immunol. 142巻:394〜402頁;Chongら(1992)Infect. Immun. 60巻:4640〜4647頁)。対象ペプチドのヘルパーTドメインは、約10〜約50アミノ酸、好ましくは約10〜約30アミノ酸を有する。複数のヘルパーTエピトープが存在するならば、各ヘルパーTエピトープは独立して作用する。
【0129】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、少なくとも1つのヘルパーTエピトープを含むこともできる。場合によっては、ヘルパーTエピトープは、抗原の一部を形成することができる。詳細には、抗原が十分なサイズであるならば、それはヘルパーTエピトープとして機能するエピトープを含有することができる。他の実施形態では、ヘルパーTエピトープは、抗原とは別々の分子である。
【0130】
別の実施形態では、ヘルパーTエピトープ類似体は、ヘルパーTエピトープ中に1〜約10アミノ酸残基の置換、欠失および挿入を含んでもよい。ヘルパーTセグメントは、免疫応答を強化または刺激するのに十分であるヘルパーTエピトープの連続した部分である。ヘルパーTセグメントの例は、単一のより長いペプチドに由来する一連の重複するペプチドである。
【0131】
本発明で用いられるヘルパーTエピトープの供給源には、例えば、B型肝炎表面抗原ヘルパーT細胞エピトープ、百日咳毒素ヘルパーT細胞エピトープ、はしかウイルスFタンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、クラミジア・トラコミティス(Chlamydia trachomitis)主外膜タンパク質ヘルパーT細胞エピトープ、ジフテリア毒素ヘルパーT細胞エピトープ、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)スポロゾイト周囲ヘルパーT細胞エピトープ、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)トリオースリン酸イソメラーゼヘルパーT細胞エピトープ、大腸菌(Escherichia coli)TraTヘルパーT細胞エピトープ、ならびにこれらのヘルパーTエピトープのいずれかの免疫強化類似体およびセグメントが含まれる。
【0132】
一実施形態では、ヘルパーTエピトープは、汎用性ヘルパーTエピトープである。本明細書で用いられる汎用性ヘルパーTエピトープは、クラスII(CD4
+T細胞)制限様式でT細胞機能を活性化させる方法で複数のMHCクラスII分子に結合する、ペプチドまたは他の免疫原性分子、またはその断片を指す。
【0133】
別の実施形態では、ヘルパーTエピトープは、汎用性ヘルパーTエピトープ、例えばペプチド配列AKXVAAWTLKAAA(配列番号19)を含むPADRE(パン−DRエピトープ)であってよく、そこでXはシクロヘキシルアラニルであってもよい。PADREはCD4
+ヘルパーTエピトープを特異的に有し、すなわち、それはPADRE特異的CD4
+ヘルパーT応答の誘導を刺激する。
【0134】
破傷風トキソイドは、PADREに類似した様式で働くヘルパーTエピトープを有する。破傷風およびジフテリア毒素は、ヒトCD4
+細胞のための汎用性エピトープを有する。(Diethelm-Okita, B.M.ら、Universal epitopes for human CD4
+ cells on tetanus and diphtheria toxins。J. Infect. Diseases、181巻:1001〜1009頁、2000年)。別の実施形態では、ヘルパーTエピトープは、破傷風トキソイドペプチド、例えばペプチド配列FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE(配列番号20)(アミノ酸947〜967)を含むF21Eであってもよい。
【0135】
別の実施形態では、融合ペプチドを作製するために、ヘルパーTエピトープは、少なくとも1つの抗原(すなわち、ペプチド)、または抗原の混合物に融合される。
【0136】
担体
組成物の担体は、疎水性物質、好ましくは液体疎水性物質の連続相を含む。連続相は、実質的に純粋な疎水性物質、または疎水性物質の混合物であってもよい。さらに、疎水性物質が連続相を構成するならば、担体は疎水性物質中の水の乳濁液、または疎水性物質の混合物中の水の乳濁液であってもよい。さらに、別の実施形態では、担体はアジュバントとして機能することができる。
【0137】
本明細書に記載される組成物で有益である疎水性物質は、薬学的および/または免疫学的に許容されるものである。担体は好ましくは液体であるが、気温で液体でない特定の疎水性物質を、例えば加温によって液化してもよく、それらも本発明で有益である。一実施形態では、疎水性担体は、リン酸緩衝食塩水/フロイント不完全アジュバント(PBS/FIA)乳濁液であってもよい。
【0138】
油または油中水型の乳濁液は、本発明で用いるのに特に適当な担体である。油は、薬学的および/または免疫学的に許容されるべきである。適当な油には、例えば、鉱油(特に、Drakeol(登録商標)6VRなどの軽質または低粘度の鉱油)、植物油(例えば、ダイズ油)、ナッツ油(例えば、落花生油)またはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、油は、Montanide(登録商標)ISA51として市販されている、鉱油溶液中のオレイン酸マンナイドである。動物脂肪および人工疎水性ポリマー材料、特に気温で液体であるもの、または比較的容易に液化することができるものを用いることもできる。
【0139】
組成物が無水リポソーム懸濁液(「無水」)であると記載される本明細書の実施形態では、水が担体の非連続相に存在するならば、これらの「無水」組成物の疎水性担体は少量の水をなお含有していてもよい。例えば、組成物の個々の構成成分は、真空凍結乾燥または蒸発などの工程によって完全に除去することができない結合水を有することができ、特定の疎水性担体は、その中に溶解される少量の水を含有することができる。一般に、「無水」であると記載される本発明の組成物は、例えば、組成物の担体構成成分の総重量の重量/重量ベースで、約10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%の水を含有する。
【0140】
リポソーム
リポソームは、取り込まれた水性容量を含有する、完全に密閉された脂質二重層膜である。リポソームは単層小胞(単一の二重層膜を保有する)、または多重膜二重層によって特徴づけられる多層小胞であってよく、各二重層は水層によって隣から分離されても分離されなくてもよい。リポソームの総論は、Gregoriadis G. Immunol. Today、11巻:89〜97頁、1990年;およびFrezard, F.、Braz. J. Med. Bio. Res.、32巻:181〜189頁、1999年に見出すことができる。本明細書および特許請求の範囲で用いるように、用語「リポソーム」は、限定されずに「ニオソーム」、「トランスファーソーム」および「ビロソーム」のような当技術分野で記載されるものを含む、前記の全てのそのような小胞構造を包含するものとする。
【0141】
古細菌脂質から作製されるリポソームを含むいかなるリポソームも本発明で用いることができるが、特に有益なリポソームは、リポソーム製剤でリン脂質および非エステル化コレステロールを用いる。コレステロールはリポソームを安定させるために用いられ、リポソームを安定させるいかなる他の化合物もコレステロールにとって代わることができる。他のリポソーム安定化化合物は、当業者に公知である。例えば、飽和リン脂質は、向上した安定性を示すより高い遷移温度のリポソームを生成する。
【0142】
リポソームの調製で好ましくは用いられるリン脂質は、ホスホグリセロール、ホスホエタノールアミン、ホスホセリン、ホスホコリンおよびホスホイノシトールからなる群から選択される少なくとも1つの頭基を有するものである。94〜100%ホスファチジルコリンである脂質を含むリポソームが、より好ましい。そのような脂質は、レシチンPhospholipon(登録商標)90Gで市販されている。非エステル化コレステロールもリポソーム製剤で用いられる場合は、コレステロールはリン脂質の重量の約10%に等しい量で用いられる。リポソームを安定させるためにコレステロール以外の化合物が用いられる場合は、当業者は組成物で必要な量を容易に判断することができる。
【0143】
リポソーム組成物は、例えば、天然脂質、合成脂質、スフィンゴ脂質、エーテル脂質、ステロール、カルジオリピン、カチオン性脂質、ならびにポリ(エチレングリコール)および他のポリマーで改変される脂質を用いて得ることができる。合成脂質は、以下の脂肪酸構成要素を含んでもよい;ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、アラキドイル、オレオイル、リノレオイル、エルコイル、またはこれらの脂肪酸の組合せ。
【0144】
組成物
本発明のさらなる実施形態は、リポソーム;体液性免疫応答を誘導することができる抗原;疎水性物質の連続相を含む担体;TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバントを含む本発明の組成物の作製方法を含む。
【0145】
リポソームの作製方法は、当技術分野で周知である。例えば、両方とも上で引用されているGregoriadis(1990)およびFrezard(1999)を参照。リポソームを作製するのに適するいかなる方法も、本発明の実施で用いることができ、またはリポソームは民間の供給元から得ることができる。リポソームは、脂質二重層を形成するリポソーム構成成分(例えばリン脂質およびコレステロール)を、純水、または水に溶解させた1つまたは複数の構成成分の溶液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)、無リン酸食塩水もしくは生理的に適合する他の任意の水溶液であってもよい水溶液で水和させることによって一般的に調製される。
【0146】
一実施形態では、リポソーム構成成分またはリポソーム構成成分の混合物、例えばリン脂質(例えばPhospholipon(登録商標)90G)およびコレステロールは、有機溶媒、例えばクロロホルムおよびメタノールの混合物に可溶化させ、続いて濾過(例えばPTFE0.2μmフィルター)および、溶媒を除去するために例えば回転蒸発によって乾燥させることができる。
【0147】
生じた混合脂質の水和は、例えば水溶液に混合脂質を注入するか、混合脂質および水溶液を超音波処理することによって実行することができる。リポソームの形成の間に、リポソーム構成成分は、リポソーム構成成分を水和する水溶液の一定容量を囲む単一の二重層(単層)または複数の二重層(多層)を形成する。
【0148】
一部の実施形態では、リポソームは、例えば凍結乾燥または真空凍結乾燥によって次に脱水される。
【0149】
リポソームは、連続疎水相を含む担体と合わされる。これは、様々な方法で実行することができる。
【0150】
担体が疎水性物質または疎水性物質の混合物だけで構成される(例えば、100%の鉱油担体を用いる)ならば、リポソームを単に疎水性物質と混合することができるか、複数の疎水性物質がある場合は、それらのいずれか1つまたは組合せと混合することができる。
【0151】
代わりに疎水性物質の連続相を含む担体が不連続な水相を含有する場合は、一般的に、担体は、油中水型乳濁液などの、疎水相中の水相の乳濁液の形態をとる。乳濁液を安定させ、リポソームの均一な分布を促進するために、そのような組成物は乳化剤を含有することができる。この点に関しては、担体でリポソームの均一な分布を促進するために、無水担体が用いられる場合でも、乳化剤は有用であり得る。一般的な乳化剤には、オレイン酸マンナイド(Arlacel(商標)A)、レシチン(例えばS100レシチン)、リン脂質、Tween(商標)80およびSpans(商標)20、80、83および85が含まれる。一般的に、疎水性物質対乳化剤の容量比(v/v)は約5:1〜約15:1の範囲内であり、約10:1の比が好ましい。
【0152】
リポソームを完成した乳濁液に加えることができるか、それらは乳化の前に水相か疎水相に存在してもよい。
【0153】
抗原は、製剤工程の様々な異なる段階で導入することができる。組成物に複数の型の抗原(例えば不活性化ウイルス、弱毒化生ウイルス、タンパク質またはポリペプチド)を組み込むことができる。
【0154】
一部の実施形態では、抗原は、リポソームの脂質二重層を形成するために用いられる構成成分(例えばリン脂質(複数可)およびコレステロール)を水和させるために用いられる水溶液に存在する。この場合には、抗原は、その水性の内部に存在するリポソームに封入される。疎水性物質の連続相を含む担体と最終的に混合される残留水溶液が存在するように、生じるリポソームが洗浄されないか、乾燥されない場合には、最終生成物のリポソームの外部にさらなる抗原が存在し得る。関連技術では、抗原は、水溶液による水和の前に、リポソームの脂質二重層を形成するために用いられる構成成分と混合されてもよい。抗原は予め形成されたリポソームに加えることもでき、その場合には、抗原をリポソームに能動的に加えることができるか、リポソームの表面に結合させることができるか、または抗原はリポソームの外部に留まってもよい。そのような実施形態では、抗原の添加の前に、予め形成されたリポソームは空のリポソーム(例えば封入された抗原または脂質をベースとしたアジュバントを含有しない)であってもよいか、または予め形成されたリポソームはリポソームに組み込まれるかそれと関連づけられる脂質をベースとしたアジュバントを含有することができる。これらのステップは、好ましくは、疎水性物質の連続相を含む担体と混合する前に起こることができる。
【0155】
代替のアプローチでは、担体がリポソームと合わされる前、その間または後に、抗原は、疎水性物質の連続相を含む担体と代わりに混合されてもよい。担体が乳濁液である場合は、抗原は乳化の前に水相または疎水相の一方または両方と混合されてもよい。あるいは、抗原は乳化の後に担体と混合されてもよい。
【0156】
リポソームの中に、および疎水性物質の連続相を含む担体の両方に抗原が存在するように、抗原を担体と合わせる技術は、前記のようにリポソームへの抗原の封入と一緒に用いることができる。
【0157】
抗原を組成物に導入するための上記の手法は、本発明の組成物のアジュバントにも適用される。すなわち、アジュバントは、例えば以下のいずれか1つまたは複数に、担体がリポソームと合わされる前、その間または後に導入することができる:(1)リポソームの脂質二重層を形成するために用いられる構成成分を水和させるために用いられる水溶液、(2)リポソームの脂質二重層の形成の後の水溶液、(3)リポソームの脂質二重層を形成するために用いられる構成成分、または(4)疎水性物質の連続相を含む担体。担体が乳濁液である場合は、アジュバントは乳化の前、その間または後に、水相または疎水相の一方または両方と混合されてもよい。
【0158】
リポソームの内部および/または外部に、ならびに疎水性物質の連続相を含む担体にアジュバントが存在するように、アジュバントを担体と合わせる技術は、リポソームへのアジュバントの封入、またはリポソームへのアジュバントの添加と一緒に用いることができる。
【0159】
アジュバントは、同じ処理ステップで抗原と一緒に、または異なる処理ステップで別々に、組成物に組み込むことができる。例えば、抗原およびアジュバントの両方がリポソームに封入されるように、脂質二重層形成リポソーム構成成分を水和させるために用いられる水溶液に抗原およびアジュバントの両方が存在してよい。あるいは、抗原はリポソームに封入されてよく、アジュバントは疎水性物質の連続相を含む担体と混合されてよい。さらなる実施形態では、リポソーム−抗原調製物を手動ミニエクストルーダに通し、得られたリポソーム−抗原調製物を、例えばリン酸緩衝液中の脂質をベースとしたアジュバントと次に混合することによって、抗原封入ステップの後にアジュバントを組成物に組み込むことができる。アジュバントがリポソームと関連するか、またはその外部に留まるように、リポソームを形成した後に、アジュバントを単独で、または抗原と一緒に組成物に組み込むこともできる。アジュバントは、抗原の添加の前にリポソームに組み込むかそれと関連づけることもでき、抗原は予め形成されたリポソームの外部に留まるか、さらなる処理によってリポソームに加えられる/関連づけられる。そのような実施形態では、生じるリポソーム−抗原−アジュバント調製物を真空凍結乾燥させ、疎水性物質の連続相を含む担体で次に再構成することができる。そのような多くの組合せが可能であることが理解される。
【0160】
組成物が1つまたは複数のさらなるアジュバントを含有する場合は、そのようなさらなるアジュバントは、アジュバントについて上に記載したのと類似した方法で、または追加のアジュバント(複数可)に適するであろう方法のいくつかを組み合わせることによって組成物に組み込むことができる。
【0161】
抗原の有効期間を長くするために生物学的活性を維持するか化学的安定性を向上させる糖、抗酸化剤または保存料などの安定剤、アジュバント、リポソームまたは連続疎水性担体をそのような組成物に加えることができる。
【0162】
一部の実施形態では、抗原/アジュバント混合物を用いることができ、その場合には、抗原およびアジュバントは同時に組成物に組み込まれる。「抗原/アジュバント混合物」は、抗原およびアジュバントが少なくとも組成物への組込みの前に同じ希釈剤中にある実施形態を指す。抗原/アジュバント混合物中の抗原およびアジュバントは、必ずしもその必要性はないが、例えば共有結合によって化学的に連結されてよい。
【0163】
一部の実施形態では、疎水性物質の連続相を含む担体は、それ自体がアジュバント活性を有することができる。不完全フロインドアジュバントは、アジュバント作用を有する疎水性担体の例である。本明細書および特許請求の範囲で用いるように、用語「アジュバント」が用いられる場合、これは、疎水性物質の連続相を含む担体によって提供される任意のアジュバント活性に加えて、アジュバントの存在を示すものとする。
【0164】
一実施形態では、本発明の組成物を製剤化するために、S100レシチンおよびコレステロールの均一な混合物(例えば10:1 w:w)を、任意選択でリン酸緩衝液中で、抗原の存在下で水和して、封入された抗原を有するリポソームを形成する。次に、リポソーム調製物を、任意選択で手動ミニエクストルーダを通して押し出し、任意選択でリン酸緩衝液中でアジュバントと混合して、アジュバントを組み込む。この懸濁液を次に真空凍結乾燥させ、疎水性物質の連続相を含む担体で再構成して、無水リポソーム懸濁液を形成することができる。
【0165】
一部の実施形態では、任意選択でリン酸緩衝液中で、抗原および適当なアジュバント(例えばPam−3−Cys)の存在下で、S100レシチンおよびコレステロールの均一な混合物(例えば10:1 w:w)を水和させ、封入された抗原およびアジュバントを有するリポソームを形成することによって組成物を製剤化することができる。次に、リポソーム/抗原/アジュバント調製物は、任意選択で水を用いて十分な量に希釈し、真空凍結乾燥させることができる。次に、真空凍結乾燥させたリポソームを疎水性物質(例えば鉱油またはMontanide(登録商標)ISA51)の連続相を含む担体で再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成することができる。
【0166】
一部の実施形態では、任意選択で、リン酸緩衝液中で、抗原および適当なアジュバント(例えばPam−3−Cys−Ser−(Lys)4;配列番号1)の存在下で、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)およびコレステロールの均一な混合物(例えば10:1 w:w)を水和させ、抗原およびアジュバントを封入したリポソームを形成することによって組成物を製剤化することができる。次に、リポソーム/抗原/アジュバント調製物を真空凍結乾燥させ、生じた生成物を疎水性物質(例えば鉱油またはMontanide(登録商標)ISA51)の連続相を含む担体で再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成することができる。
【0167】
あるいは、抗原または抗原/アジュバント複合体は、リポソームと関連づけるか、接触させるか、分離することができ、リポソームに封入されなくてもよい。疎水性環境に置かれ、または凍結乾燥したときに、大部分の抗原がリポソームの外面と関連しているようになるように、一部の親水性の抗原または親水性の抗原/アジュバント複合体のリポソーム封入の効率は劣っていてよい。これは、本発明の別の実施形態を表す。
【0168】
さらなる実施形態では、B細胞エピトープおよびPADRE(抗原と融合しているか分離している)を有する抗原(ペプチドまたはポリペプチド)は、リポソームに一緒に封入されてもよい。別の実施形態では、複数の抗原が同じリポソーム中に一緒に置かれてもよい。さらなる実施形態では、ヘルパーTエピトープ、例えば破傷風トキソイドペプチド(複数可)を有する他の物質が、PADREの代わりに用いられてもよい。別の実施形態では、アジュバント、好ましくはPAM
2CysまたはPAM
3Cysを含むパルミチン酸をベースとしたアジュバントも、リポソームに封入することができる。リポソームは、好ましくはPBSに懸濁される。この懸濁液は、疎水性担体、例えばISA51または鉱油で次に乳化される。その結果、抗原(複数可)およびアジュバント(複数可)を含有するリポソームはPBSに懸濁され、それは、疎水性担体、例えばISA51または鉱油で次に乳化される。
【0169】
一実施形態では、リポソーム/H5N1組換え血球凝集素タンパク質(抗原)/Pam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)(アジュバント)/疎水性担体を含む本発明の組成物(ワクチンA)の単回投与で筋肉内注射されたマウスから得られた抗体価は、水性アルミニウムをベースとした対照ワクチンで処置され(追加免疫された)マウスと比較して、免疫から3、4および8週間後に有意に強化されていた(
図1)。例えば、本発明のワクチンAは、ワクチン接種から3および4週間後に最高1/2,048,000の、およびワクチン接種から8週間後に最高1/8,192,000のエンドポイント抗体価を生成することが可能であったが、対照ワクチンのエンドポイント抗体価は、ワクチン接種から3、4および8週間後にそれぞれわずか最高1/512,000、1/256,000および1/4,096,000であった。これらの結果は、本発明の組成物が、単一投与の結果、単一のまたは追加免疫された水性ミョウバンをベースとした対照ワクチンと比較して、強化されたin vivo体液性免疫応答を生成することができることを示す。
【0170】
一実施形態では、リポソーム/百日咳トキソイドタンパク質(抗原)/Pam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)(アジュバント)/疎水性担体を含む本発明の組成物(ワクチンB)による単一の処置によるマウスの免疫が、肺細菌数を、百日咳菌(Bordetella pertussis)による抗原投与から8日目の肺1つあたり6.2×10
4cfuの高さから抗原投与から15日目の肺1つあたり0cfuに低減することができた(
図2)。これらの結果は、本発明の組成物の単回投与は、マウスを細菌抗原投与から効果的に防御し、肺から感染を完全に除去することを示す。
【0171】
一実施形態では、リポソーム/炭疽菌組換え防御抗原(抗原)/Pam−3−Cys(アジュバント)/疎水性担体を含む本発明の組成物(ワクチンC)を単回投与で筋肉内注射されたウサギから得られた抗体価は、初期(追加免疫前)の時点で水性アルミニウムをベースとした対照ワクチンで処置したウサギと比較して有意に強化された(
図3)。例えば、本発明のワクチンCは、ワクチン接種から3および4週間後に最高1/2,048,000の、およびワクチン接種から8週間後に最高1/8,192,000のエンドポイント抗体価を生成することが可能であったが、対照ワクチンのエンドポイント抗体価は、ワクチン接種から3、4および8週間後にそれぞれわずか最高1/64,000、1/256,000および1/2,048,000であった。これらの結果は、本発明の組成物が単一のワクチン接種から3週後という早い時期に、驚くほど強力なin vivo体液性免疫応答を生成することができることを示す。
【0172】
一実施形態では、本発明のワクチンAを単回投与で筋肉内注射したマウス(第1群)から得られた抗体価は、リポソームなし(第2群)、疎水性担体なし(第3群)、または脂質をベースとしたアジュバントなし(第4群)の対照組成物の単回投与の投与と比較して有意に強化された(
図4)。例えば、本発明のワクチンCは、ワクチン接種から8週間後に最高1/2,048,000のエンドポイント抗体価を生成することが可能であったが、第2、3および4群は、同じ時点でそれぞれ1/64,000、1/128,000および1/128,000のエンドポイント抗体価を生成することができただけである。これらの結果は、抗原、リポソーム、脂質をベースとしたアジュバントおよび疎水性物質の連続相を含む担体の各々を含む本発明の組成物が、頑強で持続性のin vivo体液性免疫応答を起こさせることが可能であることを示す。
【0173】
本明細書に記載される組成物は、経口、経鼻、経直腸または非経口投与に適する形に製剤化することができる。非経口投与には、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、経上皮、肺内、クモ膜下および局所様式の投与が含まれる。好ましい経路は、デポ作用を達成するために、筋肉内、皮下および皮内である。
【0174】
所望の結果を達成するために、当業者は、任意の特定の用途に適する処置体系、投与経路、投薬量などを判断することができる。考慮されてもよい因子には、例えば、以下のものが含まれる:抗原の性質;予防または
治療する疾患状態;対象の年齢、身体的状態、体重、性別および食事;ならびに他の臨床因子。例えば、The National Institute of HealthのResearcher's Associates (Gaku-yuu-kai)編集による「Vaccine Handbook」(1994);「Manual of Prophylactic Inoculation、8版」、Mikio Kimura、Munehiro HirayamaおよびHarumi Sakai編、Kindai Shuppan(2000);「Minimum Requirements for Biological Products」、Association of Biologicals Manufacturers of Japan編(1993)を参照。
【0175】
最適な免疫応答を導き出すアジュバントおよび抗原の最適量は、限定されずに、組成物、疾患、対象を含むいくつかの因子によって決めることができ、例えば宿主での抗体価および他の免疫原性応答の観察を含む標準の試験を用いて、当業者が容易に確認することができる。
【0176】
本明細書に記載される組成物は、単一の適用で投与されるときに効果を発揮することができる。
【0177】
別の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、他の療法と一緒に、その前にまたは後に用いることができる。
【0178】
キットおよび試薬
本発明は、任意選択でキットとして使用者に提供される。例えば、本発明のキットは、本発明の組成物の1つまたは複数を含有する。キットは、1つまたは複数の追加の試薬、パッケージング材料、キットの構成成分を保持するための容器、およびキット構成成分を用いる好ましい方法を詳述するインストラクションセットまたは利用者マニュアルをさらに含んでもよい。
【0179】
本発明の実施形態
本発明の特定の実施形態には、それらに限定されないが以下のものが含まれる:
1.リポソーム;体液性免疫応答を誘導することができる抗原;疎水性物質の連続相を含む担体;およびTLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバント、好ましくは脂質をベースとするアジュバントを含むか、それらからなるか、または実質的になる組成物。
【0180】
2.アジュバントがtoll様受容体2(TLR2)またはTLR1/2もしくはTLR2/6などのTLR二量体を活性化するか、またはその活性を増加させる、段落1の組成物。
【0181】
3.アジュバントが、TLR2、ヘテロダイマーTLR1/2およびヘテロダイマーTLR2/6から選択されるtoll様受容体(TLR)を活性化するか、またはその活性を増加させるだけであり、他のTLRを活性化しないかその活性を増加させない、段落1の組成物。
【0182】
4.アジュバントが、例えばリポアミノ酸、リポグリカン、リポ多糖、リポタイコ酸、またはグラム陽性菌もしくはグラム陰性菌、ロドシュードモナス・ビリディス(Rhodopseudomonas viridis)またはマイコプラズマの細胞壁構成成分を含む、少なくとも1つの天然、合成または半合成の脂質部分、脂質構成成分またはその類似体もしくは誘導体を含むか、それからなるか、または実質的になる化合物である、段落1〜3のいずれか1つの組成物。
【0183】
5.アジュバントが、PAM
2Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)、PAM
3Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)(β照射)、R−PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)、S−PAM
3Cys−SKKKK(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(フルオレセイン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK(ローダミン−Aca−Aca)(配列番号1)、PAM
3Cys−SKKKK−FLAG−タグ(配列番号1)、PHC−SKKKK(配列番号3)、PHC−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)(配列番号3)、PAM
3Cys−SSNAKIDQLSSDVQT(配列番号4)、PAM
3Cys−SSNKSTTGSGETTTA(配列番号5)、PAM
3Cys−SSTKPVSQDTSPKPA(配列番号6)、PAM
3Cys−SSGSKPSGGPLPDAK(配列番号7)、PAM
3Cys−SSGNKSAPSSSASSS(配列番号8)、PAM
3Cys−GSHQMKSEGHANMQL(配列番号9)、PAM
3Cys−SSSNNDAAGNGAAQT(配列番号10)、PAM
3Cys−KQNVSSLDEKNSVSV(配列番号11)、PAM
3Cys−NNSGKDGNTSANSAD(配列番号12)、PAM
3Cys−NNGGPELKSDEVAKS(配列番号13)、PAM
3Cys−SQEPAAPAAEATPAG(配列番号14)、PAM
3Cys−SSSKSSDSSAPKAYG(配列番号15)、PAM
3Cys−AQEKEAKSELDYDQT(配列番号16)、PAM
2Cys−SKKKK(RRおよびRS立体異性体の混合物)(配列番号1)、R−PAM
2Cys−SKKKK(RR立体異性体)(配列番号1)、S−PAM
2Cys−SKKKK(RS立体異性体)(配列番号1)、PAMCys(PAM)−SKKKK(配列番号3)、PAM
2Cys−SKKKK(ビオチン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)、PAM
2Cys−SKKKK(フルオレセイン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)、PAM
2Cys−SKKKK(ローダミン−Aca−Aca)−NH
2(配列番号1)、PAM
2Cys−SKKKK−FLAG−タグ(配列番号1)、PAM−Dhc−SKKKK(配列番号3)、PAM−CSKKKK(配列番号1)、PAM−Dhc−GDPKHPKSF(配列番号17)、PAM−CGDPKHPKSF(配列番号2)、FSL−1(Pam2CGDPKHPKSF;配列番号2)、FSL−1−Ala、マクロファージ活性化リポペプチド−2(MALP−2)、M.スメグマチス(M. smegmatis)からのリポアラビノマンナン(LAM−MS)、M.スメグマチス(M. smegmatis)からのリポマンナン(LM−MS)、P.ジンジバリス(P. gingivalis)からのリポ多糖(LPS−PG超高純度)、枯草菌(B. subtilis)(LTA−BS)もしくは黄色ブドウ球菌(S. aureus)(LTA−SA)からのリポタイコ酸、またはその誘導体もしくは類似体を含むか、それからなるか、または実質的になるか、またはグラム陽性菌もしくはグラム陰性菌の細胞壁構成成分を含む加熱死菌である、段落1〜4のいずれか1つの組成物。
【0184】
6.アジュバントがパルミチン酸アジュバントである、段落1〜5のいずれか1つの組成物。
【0185】
7.アジュバントがジパルミトイル−S−グリセリル−システイン(PAM
2Cys)またはトリパルミトイル−S−グリセリル−システイン(PAM
3Cys)を含むか、それからなるか、または実質的になる、段落1〜6のいずれか1つの組成物。
【0186】
8.アジュバントがPAM
2Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)、PAM
3Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)、FSL−1またはMALP−2である、段落1〜6のいずれか1つの組成物。
【0187】
9.アジュバントがPAM
2Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)である、段落8の組成物。
【0188】
10.アジュバントがPAM
3Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)である、段落8の組成物。
【0189】
11.TLR2を活性化するか、またはその活性を増加させるアジュバントに加えて、少なくとも1つの他の適当なアジュバントをさらに含む、段落1〜10のいずれか1つの組成物。
【0190】
12.抗原がポリペプチドまたは炭水化物である、段落1〜11のいずれか1つの組成物。
【0191】
13.抗原がB細胞エピトープまたは複数のB細胞エピトープを含むか、それからなるか、または実質的になる、段落1〜12のいずれか1つの組成物。
【0192】
14.B細胞エピトープがウイルスまたは細菌に由来する、段落13の組成物。
【0193】
15.B細胞エピトープがインフルエンザウイルス、百日咳菌(Bordetella pertussis)または炭疽菌(Bacillus anthracis)に由来する、段落14の組成物。
【0194】
16.B細胞エピトープが、H5N1インフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質のエピトープ、百日咳トキソイドタンパク質のエピトープまたは炭疽菌組換え防御抗原のエピトープである、段落15の組成物。
【0195】
17.抗原が、感染性疾患と関連する抗原;膜表面に結合したがん抗原;毒素;花粉などのアレルゲン;または循環中の抗原、例えばアミロイドタンパク質を隔離することが望ましい疾患と関連する抗原である、段落1〜13のいずれか1つの組成物。
【0196】
18.感染性疾患がインフルエンザ、ヒトRSウイルスに起因する呼吸器官感染症、百日咳、炭疽またはマラリアである、段落17の組成物。
【0197】
19.毒素がコカインなどの薬物物質である、段落17の組成物。
【0198】
20.抗原がハプテン−担体付加物である、段落1〜13のいずれか1つの組成物。
【0199】
21.リポソームが、リン脂質または非エステル化コレステロールを含むか、それからなるか、または実質的になる、段落1〜20のいずれか1つの組成物。
【0200】
22.抗原がリポソームに封入されるか、抗原とアジュバントの両方がリポソームに封入される、段落1〜21のいずれか1つの組成物。
【0201】
23.無水リポソーム懸濁液である、段落1〜22のいずれか1つの組成物。
【0202】
24.単回投与で体液性免疫応答を誘導することが可能である、段落1〜23のいずれか1つの組成物。
【0203】
25.体液性免疫応答が抗原特異的抗体産生で特徴づけられる、段落24の組成物。
【0204】
26.対象のワクチン接種から約3週後までに最高約1/2,048,000の抗体価の抗原特異的抗体を生成することが可能である、段落25の組成物。
【0205】
27.対象のワクチン接種から約8週後までに最高約1/8,192,000の抗体価の抗原特異的抗体を生成することが可能である、段落25の組成物。
【0206】
28.体液性免疫応答がヘルパーT2(Th2)細胞またはヘルパーT17(Th17)細胞の活性化または生成と関連する、段落24〜27のいずれか1つの組成物。
【0207】
29.体液性免疫応答によって改善される疾患または障害の
治療または予防のための、段落1〜28のいずれか1つの組成物。
【0208】
30.感染性疾患;膜表面に結合したがん抗原を伴うがん;または、アルツハイマー病などの、循環中の抗原を隔離することが望ましい疾患もしくは障害の
治療または予防のための、段落1〜28のいずれか1つの組成物。
【0209】
31.毒素、ウイルス、細菌またはアレルゲンを抗体で中和するための、段落1〜28のいずれか1つの組成物。
【0210】
32.体液性免疫応答によって改善される疾患または障害を
治療または予防する方法であって、段落1〜28のいずれか1つの組成物を対象に投与することを含むか、それからなるか、または実質的になる方法。
【0211】
33.感染性疾患、膜表面に結合したがん抗原を伴うがん;または、アルツハイマー病などの、循環中の抗原を隔離することが望ましい疾患もしくは障害を
治療または予防する方法であって、段落1〜28のいずれか1つの組成物を対象に投与することを含むか、それからなるか、または実質的になる方法。
【0212】
34.感染性疾患がインフルエンザ、ヒトRSウイルスに起因する呼吸器官感染症、百日咳、炭疽またはマラリアである、段落33の方法。
【0213】
35.毒素、ウイルス、細菌またはアレルゲンを抗体で中和する方法であって、段落1〜28のいずれか1つの組成物を対象に投与することを含むか、それからなるか、または実質的になる方法。
【0214】
36.毒素がコカインなどの薬物物質である、段落35の方法。
【0215】
37.対象が哺乳動物、好ましくはヒトである、段落32〜36のいずれか1つの方法。
【0216】
38.体液性免疫応答によって改善される疾患または障害を
治療または予防するのに有益な;または感染性疾患;膜表面に結合したがん抗原を伴うがん;または、アルツハイマー病などの、循環中の抗原を隔離することが望ましい疾患もしくは障害を
治療または予防するのに有益な;または、毒素、ウイルス、細菌またはアレルゲンを抗体で中和するのに有益なキットであって、段落1〜28のいずれか1つの組成物、およびその使用のための説明書を含むか、それらからなるか、または実質的になるキット。
【0217】
39.段落1の組成物を調製する方法であって:抗原の存在下でS100レシチンおよびコレステロールの均一な混合物を水和させて、抗原を封入したリポソーム調製物を形成することと;リポソーム調製物を押し出し、次にアジュバントと混合することと;生じる生成物を真空凍結乾燥させ、疎水性物質の連続相を含む担体で再構成することとを含むか、それらからなるか、または実質的になる方法。代わりの実施形態では、水和ステップは、ジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)およびコレステロールの均一な混合物の存在下で実施することができる。
【0218】
40.段落1の組成物を調製する方法であって:抗原およびアジュバントの存在下でジオレオイル−ホスファチジルコリン(DOPC)およびコレステロールの均一な混合物を水和させて、抗原およびアジュバントを封入したリポソーム調製物を形成することと;リポソーム調製物を真空凍結乾燥させ、疎水性物質の連続相を含む担体で再構成することとを含むか、それらからなるか、または実質的になる方法。代わりの実施形態では、水和ステップは、S100レシチンおよびコレステロールの均一な混合物の存在下で実施することができる。
【0219】
本発明は、以下の非限定例でさらに例示される。
【実施例1】
【0220】
無菌の雌CD1マウス、6〜8週齢を、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従って、フィルター制御空気循環下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0221】
H5N1組換え血球凝集素タンパク質は、Protein Sciences(Meridien、CT、USA)から購入した。この組換えタンパク質は72,000ダルトンのおよその分子量を有し、血球凝集素糖タンパク質、H5N1インフルエンザウイルスの表面に存在する抗原性タンパク質に対応する。以後rHAと呼ぶこの組換えタンパク質は、ワクチン製剤の効力を試験するモデル抗原として用いた。rHAは、50マイクロリットル用量につき1マイクログラムで用いた。
【0222】
免疫された動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ワクチン効力を評価した。免疫されたマウスから回収される血清でELISAを規則的間隔(例えば4週ごと)で実施することは、所与のワクチン製剤への抗体応答を監視するために有益である。簡潔には、96ウェルマイクロタイタープレートを抗原(rHA、1マイクログラム/ミリリットル)により摂氏4度で一晩コーティングし、3%ゼラチンで30分間ブロックし、次に血清の連続希釈溶液と摂氏4度で一晩インキュベートしたが、一般的に1/2000の希釈溶液から開始される。次に、二次試薬(アルカリ性ホスファターゼとコンジュゲートさせたプロテインG、EMD chemicals、Gibbstown、NJ、USA)を、摂氏37度で1時間、1/500の希釈で各ウェルに加える。1ミリグラム/ミリリットルの4−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩6水和物(Sigma−Aldrich Chemie GmbH、Switzerland)を含有する溶液との60分のインキュベーションの後、各ウェルの405ナノメートルの吸光度を、マイクロタイタープレートリーダー(ASYS Hitech GmbH、Austria)を用いて測定する。エンドポイント力価は、Frey A.ら(Journal of Immunological Methods、1998年、221巻:35〜41頁)に記載されている通りに計算する。計算された力価は、ナイーブな非免疫の対照マウスからの血清試料に対して、免疫されたマウスからの血清試料で吸光度の統計的に有意な上昇が観察される、最も高い希釈度を表す。力価は、エンドポイント希釈度のlog10値で提示される。
【0223】
本発明に対応するワクチンを製剤化するために、S100レシチンおよびコレステロールの10:1 w:wの均一な混合物(Lipoid GmbH、Germany)をリン酸緩衝液中のrHAの存在下で水和して、rHAを封入したリポソームを形成した。簡潔には、775マイクロリットルの50ミリモルのリン酸緩衝液(pH7.4)中の20マイクログラムのrHAを、132ミリグラムのS100レシチン/コレステロール混合物に加えて、rHA抗原を封入しているおよそ900マイクロリットルのリポソーム懸濁液を形成した。次に、200ナノメートルのポリカーボネート膜を取り付けた手動ミニエクストルーダ(Avanti、Alabaster、AL、USA)に材料を通すことによって、リポソーム調製物を押し出した。アジュバントを組み込むために、大きさを設定したリポソーム混合物を、100マイクロリットルのリン酸緩衝液中の20マイクログラムのPam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)(P3Cと命名)アジュバント(EMC Microcollections GmbH、Germany)と完全に混合した。水を用いて最終混合物を半分に希釈した後に、Virtis Advantage凍結乾燥器(SP Industries、Warminister、PA、USA)を用いて、リポソーム懸濁液を真空凍結乾燥させた。rHAおよびP3Cを含有する1ミリリットルの元のリポソーム懸濁液につき、フロイント不完全アジュバント(Montanide(登録商標)ISA51として知られ、Seppic、Franceによって供給される)と同等の鉱油担体の800マイクロリットルを用いて真空凍結乾燥リポソームを再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成した。各ワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、P3Cアジュバントおよび鉱油担体を含有する上記製剤の50マイクロリットルからなった。このワクチン製剤は、無水/リポソーム/P3C/疎水性担体と呼ぶ。
【0224】
上記の無水リポソーム製剤の効力を、50マイクロリットルの50ミリモルのリン酸緩衝液(pH7.4)中の1マイクログラムのrHAおよび50マイクログラムの水酸化アルミニウム(alhydrogel、Sigma、Mississauga、ON、Canada、以降ミョウバンと呼ぶ)からなる対照ワクチンの効力と比較した。マウスの1群(N=9)に、前記のように50マイクロリットルの無水/リポソーム/P3C/疎水性担体で製剤化した1マイクログラムのrHA抗原および1マイクログラムのP3Cアジュバントを一度注射した(追加免疫なし)。第2群のマウス(N=8)は、50ミリモルのリン酸緩衝液に懸濁させた1マイクログラムのrHAおよび50マイクログラムのミョウバンアジュバントで、二回ワクチン接種をした(0日目および28日目)。全てのマウスはわき腹部の筋肉内にワクチン接種をし、血清試料は免疫から3、4および8週後に回収した。これらの血清中のrHA抗体価は、前記のようにELISAによって検査した。
【0225】
この実験の結果を、
図1に示す。第2群マウスは、ミョウバンアジュバント添加対照ワクチンの投与の後に、検出可能な抗原特異的抗体応答を生成した。無水/リポソーム/P3C/疎水性担体製剤でワクチン接種をした第1群マウスは、第2群のそれらと比較して有意に強化したエンドポイント力価を与えた。第2群のマウスは、ワクチン接種から3および4週後(追加免疫の前)にそれぞれ最高1/512,000(5.71のlog10値)および最高1/256,000(5.41のlog10値)の、ならびに8週後(追加免疫の後)に最高1/4,096,000(log10は6.61)の力価を生成した。そのような抗体応答の存在から、ワクチン接種の結果として生成される本物の免疫応答が確認される。本発明に対応するワクチンでワクチン接種をした第1群マウスは、ワクチン接種から3および4週後に最高1/2,048,000(6.31のlog10値)に、免疫から8週後に1/8,192,000(6.91のlog10値)に到達するエンドポイント力価を生成することができた。これらの結果は、パルミチン酸アジュバントを含有している単回投与の無水/リポソーム/疎水性担体製剤が、単一の(3週目および4週目のデータポイント)または追加免疫された(8週目のデータポイント)水性ミョウバンをベースとした対照ワクチンと比較して強化されたin vivo免疫応答を生成することが可能であることを示す。
【実施例2】
【0226】
無菌の若齢成体雌Balb/Cマウスを、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0227】
百日咳トキソイドタンパク質は、Biocine(Connaught Biosciences、Toronto、ON、Canada)から提供された。この多重サブユニットタンパク質は106キロダルトンのおよその分子量を有し、百日咳の原因となる細菌百日咳菌(Bordetella pertussis)によって生成される抗原性毒素に対応する。以後PTと呼ぶこのタンパク質は、ワクチン製剤の効力を試験するモデル抗原として用いた。PTは、50マイクロリットル用量につき1マイクログラムで用いた。
【0228】
ワクチン効力は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による生菌抗原投与によって評価した。マウスは、ワクチン接種から56日後に、9.1×10
8の百日咳菌(Bordetella pertussis)によるエアゾール接種で抗原投与した。ベースライン肺細菌数を確立するために、数匹のマウスは直ちに屠殺した。残りのマウスは監視下に置き、抗原投与から8および15日後に屠殺し、肺細菌数を確立した。
【0229】
本発明に対応するワクチンを製剤化するために、DOPCおよびコレステロールの10:1 w/wの均一な混合物(Lipoid GmbH、Germany)を、リン酸緩衝液中のPTおよびPam−3−Cys−Ser−(Lys)4(配列番号1)(P3Cと称する)の存在下で水和して、PTおよびP3Cを封入するリポソームを形成した。簡潔には、850マイクロリットルの50ミリモルのリン酸緩衝液中の各々20マイクログラムのPTおよびP3Cを、132ミリグラムのS100レシチン/コレステロール混合物に加えて、PT抗原およびP3Cアジュバントを封入しているおよそ1ミリリットルのリポソーム懸濁液を形成した。次に、Virtis Advantage凍結乾燥器(SP Industries、Warminister、PA、USA)を用いて、リポソーム調製物を真空凍結乾燥させた。rHAおよびP3Cを含有する1ミリリットルの元のリポソーム懸濁液につき、フロイント不完全アジュバント(Montanide(登録商標)ISA51として知られ、Seppic、Franceによって供給される)と同等の鉱油担体の800マイクロリットルを用いて真空凍結乾燥リポソームを再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成した。各ワクチン用量は、リポソーム、PT抗原、P3Cアジュバントおよび鉱油担体を含有する上記製剤の50マイクロリットルからなった。このワクチン製剤は、無水/リポソーム/P3C/疎水性担体と呼ぶ。
【0230】
上記の無水リポソーム製剤の効力を、100マイクロリットルの50ミリモルのリン酸緩衝液(pH7.0)中の1マイクログラムのPTおよび100マイクログラムの水酸化アルミニウムアジュバント(Alhydrogel、Sigma、Mississauga、ON、Canada、以降ミョウバンと呼ぶ)からなる対照ワクチンの効力と比較した。マウスの1群(N=11)に、前記のように50マイクロリットルの無水/リポソーム/P3C/疎水性担体で製剤化した1マイクログラムのPT抗原および1マイクログラムのP3Cアジュバントを一度注射した(追加免疫なし)。第2群マウス(N=9)および第3群マウス(N=9)に、100マイクロリットルのリン酸緩衝液に懸濁させた1マイクログラムのPTおよび100マイクログラムのミョウバンアジュバントで、1回または3回(0日目、21日目および31日目)ワクチン接種をした。マウスは、わき腹部の筋肉内にワクチン接種をした。第4群マウス(N=10)は、試験期間中ワクチン接種をされなかった。全てのマウスは免疫から56日目に抗原投与し、前記のように肺細菌数を抗原投与から8および15日後に確立した。
【0231】
この実験の結果を
図2に示す。第4群(ナイーブ)マウスは、感染を除去することができず、細菌数は、抗原投与から8日後には肺1つあたり2.5×10
5cfu、抗原投与から15日後には肺1つあたり4.7×10
3cfuと高かった。ミョウバンアジュバント添加対照ワクチンの1用量でワクチン接種をした第2群マウスは、抗原投与から8および15日後にそれぞれ肺1つあたり8.9×10
3および3.1×10
2cfuと高い肺細菌数を有した。対照の3用量でワクチン接種をした第3群マウスは、それぞれ同じ時点で肺1つあたり3.5×10
3および1.8×10
3cfuと高い肺数を有した。本発明に対応するワクチンの単一投与でワクチン接種をした第1群マウスは、抗原投与から8日後に肺1つあたり6.2×10
4cfu、抗原投与から15日後に全ての動物で肺1つあたり0cfuと高い肺細菌数を有した。本発明に対応するワクチンの単回投与は、マウスを細菌抗原投与から効果的に防御し、肺から感染を完全に除去した。
【実施例3】
【0232】
2〜3kg重の無菌の雌ニュージーランド白ウサギを、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0233】
炭疽菌組換え防御抗原は、List Biologics(Campbell、CA)から購入した。この組換えタンパク質は83,000ダルトンのおよその分子量を有し、炭疽菌(Bacillus anthracis)によって生成される3タンパク質外毒素の細胞結合構成成分、防御抗原タンパク質に対応する。以後rPAと呼ぶこの組換えタンパク質は、ワクチン製剤の効力を試験するモデル抗原として用いた。rPAは、100マイクロリットル用量につき8マイクログラムで用いた。
【0234】
免疫された動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ワクチン効力を評価した。免疫されたマウスから回収される血清でELISAを規則的間隔(例えば4週ごと)で実施することは、所与のワクチン製剤への抗体応答を監視するために有益である。ELISAは、コーティング抗原としてrPAを1マイクログラム/ミリリットルで用いて、実施例1に概説されている通りに実施した。
【0235】
本発明に対応するワクチンを製剤化するために、DOPCレシチンおよびコレステロールの10:1 w/wの均一な混合物(Lipoid GmbH、Germany)を、rPAおよびPam−3−Cys(P3C)の存在下で水和して、rHAおよびP3Cを封入するリポソームを形成した。簡潔には、850マイクロリットルの滅菌水中の80マイクログラムのrPAおよび20マイクログラムのP3Cを、132ミリグラムのDOPCレシチン/コレステロール混合物に加えて、rHA抗原およびP3Cアジュバントを封入しているおよそ1ミリリットルのリポソーム懸濁液を形成した。滅菌水を用いて十分な量に希釈した後に、Virtis Advantage凍結乾燥器(SP Industries、Warminister、PA、USA)を用いて、リポソーム懸濁液を真空凍結乾燥させた。rPAおよびP3Cを含有する1ミリリットルの元のリポソーム懸濁液につき、フロイント不完全アジュバント(Montanide(登録商標)ISA51として知られ、Seppic、Franceによって供給される)と同等の鉱油担体の800マイクロリットルを用いて真空凍結乾燥リポソームを再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成した。各ワクチン用量は、リポソーム、rPA抗原、P3Cアジュバントおよび鉱油担体を含有する上記製剤の100マイクロリットルからなった。このワクチンは、ワクチンC(発明)と呼ぶ。
【0236】
上記のワクチン製剤の効力を、100マイクロリットルの滅菌水中の8マイクログラムのrPAおよび350マイクログラムの水酸化アルミニウム(Alhydrogel)アジュバント(Sigma、Mississauga、ON、Canada)からなる対照ワクチンの効力と比較した。ウサギの1群(N=8)に、前記のように100マイクロリットルのワクチン製剤に製剤化した8マイクログラムのrPA抗原および2マイクログラムのP3Cアジュバントを一度注射した(追加免疫なし)(第1群)。第2群のウサギ(N=8)は、滅菌水に懸濁させた8マイクログラムのrPAおよび350マイクログラムのミョウバンアジュバントで3回(0、28および84日目)ワクチン接種をした。全てのウサギは右腓腹筋の筋肉内にワクチン接種をし、血清試料は免疫から3、4、8、12、16、20および24週後に回収した。これらの血清中のrPA抗体価は、前記のようにELISAによって検査した。
【0237】
この実験の結果は、
図3に示す。第2群のウサギは、ミョウバンアジュバント添加対照ワクチンの投与の後に、検出可能な抗原特異的抗体応答を生成した。ワクチンC製剤でワクチン接種をした第1群のウサギは、初期(追加免疫前)の時点で、第2群のそれらと比較して有意に強化したエンドポイント力価を与えた。第2群のウサギは、ワクチン接種から3および4週後(追加免疫の前)にそれぞれ最高1/64,000(4.66の平均log10値)および最高1/256,000(4.73の平均log10値)の、ならびに8週後(追加免疫の後)に最高1/2,048,000(平均log10は5.86)の力価を生成した。そのような抗体応答の存在から、ワクチン接種の結果として生成される本物の免疫応答が確認される。本発明に対応するワクチンでワクチン接種をした第1群のウサギは、ワクチン接種から3および4週後に最高1/2,048,000(6.20および6.09の平均log10値)に、免疫から8週後に1/8,192,000(6.53の平均log10値)に到達するエンドポイント力価を生成することができた。Pam−3−Cysアジュバントを含有する単回投与のリポソーム/疎水性担体製剤は、水性ミョウバン対照ワクチンで達成することができるよりも平均して34.6倍および22.9倍(それぞれ3および4週後に)多くの抗体をin vivoで生成することが可能であることを示すこれらの結果は、単一のワクチン接種から3週後という早い時期に驚くほど強力な免疫応答を起こさせる能力を実証する。
【実施例4】
【0238】
無菌の雌CD1マウス、6〜8週齢を、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0239】
H5N1組換え血球凝集素タンパク質は、Protein Sciences(Meridien、CT、USA)から購入した。この組換えタンパク質は72,000ダルトンのおよその分子量を有し、血球凝集素糖タンパク質、H5N1インフルエンザウイルスの表面に存在する抗原性タンパク質に対応する。以後rHAと呼ぶこの組換えタンパク質は、ワクチン製剤の効力を試験するモデル抗原として用いた。rHAは、50マイクロリットル用量につき1マイクログラムで用いた。
【0240】
免疫された動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ワクチン効力を評価した。免疫されたマウスから回収される血清でELISAを規則的間隔(例えば4週ごと)で実施することは、所与のワクチン製剤への抗体応答を監視するために有益である。ELISAは、実施例1に記載されている通りに実行した。
【0241】
本発明に対応するワクチンを製剤化するために、S100レシチンおよびコレステロールの10:1 w:wの均一な混合物(Lipoid GmbH、Germany)を、リン酸緩衝液中のrHAおよびPam−3−Cys(P3C)の存在下で水和して、rHAおよびP3Cを封入するリポソームを形成した。簡潔には、850マイクロリットルの50ミリモルのリン酸緩衝液中の各々20マイクログラムのrHAおよびP3Cを、132ミリグラムのS100レシチン/コレステロール混合物に加えて、rHA抗原およびP3Cアジュバントを封入しているおよそ1ミリリットルのリポソーム懸濁液を形成した。リポソーム調製物を滅菌水で十分な量に希釈し、次にVirtis Advantage凍結乾燥器(SP Industries、Warminister、PA、USA)を用いて真空凍結乾燥させた。rHAおよびP3Cを含有する1ミリリットルの元のリポソーム懸濁液につき、800マイクロリットルの鉱油担体(Montanide(登録商標)ISA51、Seppic、Franceによって供給される)を用いて真空凍結乾燥リポソームを再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成した。各ワクチン用量は、リポソーム、rHA抗原、P3Cアジュバントおよび鉱油担体を含有する上記製剤の50マイクロリットルからなった。このワクチン製剤は、リポソーム/P3C/疎水性担体と呼ぶ。この製剤は、第1群マウス(n=10)にワクチン接種をするために用いられた。
【0242】
第2群のマウス(n=10)は、リポソーム/疎水性担体の不在下で、50マイクロリットル用量につき1マイクログラムのrHAおよび1マイクログラムのP3Cで処置した。第3群のマウス(n=10)は、疎水性担体の不在下で、水/リポソーム/P3Cワクチンとして製剤化された50マイクロリットル用量につき1マイクログラムのrHAおよび1マイクログラムのP3Cで処置した。第4群のマウス(n=10)は、P3Cの不在下で、リポソーム/疎水性担体ワクチンとして製剤化された1マイクログラムのrHAで処置した。全てのマウスはわき腹部の筋肉内にワクチン接種をし、血清試料は免疫から3、4、8、12、16および20週後に回収した。これらの血清中のrHA抗体価は、記載のようにELISAによって検査した。
【0243】
これらのワクチン製剤の構成成分の相対的寄与を評価するために、これらのワクチン製剤の効力を調べた(
図4を参照)。全ての対照群(第2、3および4群)のマウスの力価は、ワクチンAでワクチン接種をした第1群の力価より一貫して低く、この製剤の全構成成分が強化された免疫原性にとって重要であり得ることを示す。例えば、ワクチン接種から8週後、第1群のマウス(ワクチンAでワクチン接種をした)は、最高1/2,048,000(5.65の平均log10値)に到達するエンドポイント力価を生成することができたが、第2、3および4群のマウスは、それぞれ1/64,000(4.41の平均log10値)、1/128,000(4.44の平均log10値)および1/128,000(4.69の平均log10値)のエンドポイント力価を生成することができた。第1群のマウスによって生成された力価は、3つの対照ワクチン群のいずれによって生成された力価より有意に高かった(一元配置分散分析によりp<0.0001)。これは、この製剤の最大免疫原性をシミュレーションすることにおける、ワクチン製剤Aの全ての構成成分、特に抗原、リポソーム、パルミチン酸アジュバントおよび疎水性担体の関与を示す。
【実施例5】
【0244】
無菌の雌Balb/Cマウス、6〜12週齢を、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0245】
ワクチン製剤で用いられる抗原は、熱不活性化インフルエンザ株A/PR/8/34(H1N1)であった。ウイルス保存株は、ニワトリ卵での増殖によって調製した。A/PR/8/34ウイルス保存株の一定分量を速やかに解凍し、摂氏56度の水浴に30分間置いて、ウイルスを熱失活させた。
【0246】
イソフルラン麻酔下で0日目にワクチンを腿筋肉の筋肉内に投与した(ワクチン1用量を2回の注射に分け、脚1つあたり1回の注射)。ワクチン自体が病気を引き起こさなかったことを確認するために、ワクチン接種後の1週間、マウスを計量した。
【0247】
28日目に、イソフルランを用いてマウスに麻酔をかけ、10×MLD50のウイルスで鼻腔内に接種した(各鼻孔に各々等しく分割された25マイクロリットルの2つの別々の投与)。次に、体重、体温および水分補給を測定することによって、また外観、姿勢および挙動を観察することによって、マウスを10日間監視した。罹患率の所定点に到達したマウスは、安楽死させた。
【0248】
第1群のマウス(n=10)は、食塩水だけでワクチン接種をし、陰性対照ワクチンの役目をした。
【0249】
第2群のマウス(n=10)は、Alhydrogelで製剤化した熱不活性化インフルエンザ株A/PR/8/34(H1N1)の2.56×10
3 TCID50でワクチン接種をした。
【0250】
第3群のマウス(n=10)は、リポソーム/P3C/疎水性担体ワクチンでワクチン接種をした。簡潔には、S100レシチンおよびコレステロールの10:1(w:w)の均一な混合物(Lipoid GmbH、Germany)を、熱不活性化インフルエンザ株A/PR/8/34および滅菌水の存在下で水和して、抗原を封入したおよそ850マイクロリットルのリポソームを形成した。Pam−3−Cys(P3C)アジュバントを次に加え、リポソームをよく混合し、混合物を滅菌水で十分な量に希釈した後に、Virtis Advantage凍結乾燥器(SP Industries、Warminister、PA、USA)を用いて真空凍結乾燥させた。A/PR/8/34およびP3Cを含有する1ミリリットルの元のリポソーム懸濁液につき、800マイクロリットルの鉱油担体(Montanide(登録商標)ISA51、Seppic、France)を用いて真空凍結乾燥リポソームを再構成し、無水リポソーム懸濁液を形成した。各投与容量は50マイクロリットルであり、リポソーム、インフルエンザ株A/PR/8/34(2.56×10
3 TCID50)、P3C(1マイクログラム)および鉱油担体を含有した。
【0251】
この実験の結果は、
図5に示す。食塩水だけでワクチン接種をした第1群のマウスはインフルエンザ感染の臨床徴候を速やかに発達させ、4日目までには全て感染した。Alhydrogelで製剤化した抗原でワクチン接種をした第2群のマウスは、インフルエンザ感染により中程度の臨床症状を示し、動物の30%が感染した。しかし、リポソーム/P3C/疎水性担体ワクチンでワクチン接種をした第3群のマウスは、比較的軽度の臨床症状を有し、100%がインフルエンザ感染を生き延びた。
【0252】
これらの観察は、感染後のウイルスの強化された制御が実証するように、本発明のワクチンに製剤化したPam−3−Cysが、不活性化ウイルスのワクチン製剤への免疫応答を強化することができることを実証する。
【実施例6】
【0253】
無菌の雌CD1マウス、6〜8週齢を、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0254】
実施例1および4のように、H5N1インフルエンザウイルスの表面の血球凝集素糖タンパク質に対応するH5N1組換え血球凝集素タンパク質を、Protein Sciences(Meridien、CT、USA)から購入した。以後rHAと呼ぶこの組換えタンパク質は、ワクチン製剤の効力を試験するモデル抗原として用いた。rHAは、50マイクロリットル用量につき1マイクログラムで用いた。
【0255】
免疫された動物の血清中の抗原特異的抗体レベルの検出を可能にする方法である酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって、ワクチン効力を評価した。免疫されたマウスから回収される血清でELISAを規則的間隔(例えば4週ごと)で実施することは、所与のワクチン製剤への抗体応答を監視するために有益である。ELISAは、実施例1に記載されている通りに実行した。
【0256】
この実施例の両ワクチンは、実施例4に記載されている通りに製剤化した。要約すると、本発明に対応するワクチンについては、50ミリモルのリン酸緩衝液中のrHA抗原およびPam−3−Cys(P3C)アジュバントを用いて、S100レシチンおよびコレステロールを水和した。最終リポソーム調製物を真空凍結乾燥させ、ISA51で次に再構成した。最終ワクチンは、リポソーム、1マイクログラムのrHA抗原、1マイクログラムのP3Cアジュバントおよび鉱油担体を含有する製剤の50マイクロリットルからなった。このワクチン製剤は、リポソーム/P3C/疎水性担体と呼ぶ。この製剤は、第1群のマウス(n=9)にワクチン接種をするために用いられた。
【0257】
第2群のマウス(n=9)は、リポソーム、1マイクログラムのrHA、1マイクログラムのイミキモド(IMQ)アジュバントおよび鉱油担体を含有する製剤で処置した。このワクチンは、リポソーム/IMQ/疎水性担体と呼ぶ。要約すると、50ミリモルのリン酸緩衝液中のrHA抗原およびIMQアジュバント(InvivoGen、San Diego、CA、USA)を用いて、S100レシチンおよびコレステロールを水和した。最終リポソーム調製物を真空凍結乾燥させ、ISA51で次に再構成した。
【0258】
全てのマウスはわき腹部の筋肉内にワクチン接種をし、血清試料は免疫から4週後に回収した。これらの血清中のrHA抗体価は、実施例1に記載のようにELISAによって検査した。
【0259】
リポソーム/疎水性担体製剤のP3Cアジュバントの相対的寄与を評価するために、これらのワクチン製剤の効力を調べた(
図6を参照)。第2群のマウスは、イミキモド−アジュバント添加対照ワクチンの投与の後に、検出可能な抗原特異的抗体応答を生成した。リポソーム/P3C/疎水性担体製剤でワクチン接種をした第1群のマウスは、第2群のそれらと比較して有意に強化したエンドポイント力価を与えた(P<0.005)。第2群のマウスは、ワクチン接種から28日(4週)後に、最高1/128,000(5.11のlog10値)の力価を生成した。実施例1に記したように、そのような抗体応答の存在は、ワクチン接種の結果として生成される本物の免疫応答を確認させる。本発明に対応するワクチンでワクチン接種をした第1群のマウスは、免疫から4週後に最高1/1,024,000(6.01のlog10値)に到達するエンドポイント力価を生成することができた。このデータは、本発明に対応するワクチン(リポソーム/P3C/疎水性担体)が、異なるアジュバントで調製された同等のワクチン(リポソーム/IMQ/疎水性担体)より有意に強力である特定の体液性免疫応答を刺激することが可能であることを示す。
【実施例7】
【0260】
無菌の雌C57BL6マウス、6〜8週齢を、Charles River Laboratories(St Constant、QC、Canada)から得、施設ガイドラインに従ってフィルター制御循環空気の下で、随意摂取の水および食餌で飼育した。
【0261】
未処置の「ナイーブ」マウスを絶命させ、脾臓を回収した。単一細胞懸濁液を脾細胞から調製し、ACK溶解緩衝剤を用いて赤血球を溶解した。Miltenyi(Auburn、CA、USA)からの負選択磁気単離キットを用いてB細胞を単離した。10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、1%L−グルタミンおよび0.1%b−メルカプトエタノールを含有する完全RPMI培地(c−RPMI)に、細胞を2×10
6細胞/mLの最終濃度で再懸濁させた。抗Ig(2.5μg/mL;BD Biosciences、Mississauga、Canada)および抗CD40(1μg/mL;BD Biosciences)を含む96ウェルプレートのウェルに、B細胞を加えた(2×10
5細胞/ウェル)。以下のアジュバント:Pam2Cys(EMC Microcollections、Tuebingen、Germany)、Pam3Cys(EMC Microcollections)、ポリI:C(Thermo Fisher、MI、USA)およびLPS(Sigma−Aldrich、Oakville、Canada)でB細胞を3反復で刺激したか、アジュバントなし。100ng/mL、10ng/mLおよび1ng/mLで調薬されたLPSを除き、各アジュバントは、10μg/mL、1μg/mLおよび0.1μg/mLで調薬された。細胞は、37℃/5%CO
2で3日の間インキュベートした。実験の終了の18時間前に、[
3H]−チミジンを0.2uCi/ウェルの最終濃度で各ウェルに加えた。Titertek Cell Harvester(Skatron Instruments、Sterling、VA、USA)を用いてプレートをフィルター膜の上へ収集し、それを次に、Beckman LS6000IC液体シンチレーション計数器(Beckman Coulter Inc.、Mississauga、ON、Canada)で計数した。[3H]−チミジンの組込みを表す3反復の毎分のカウント数(CPM)を平均することによって、増殖を数量化した。
【0262】
B細胞のアジュバント刺激の結果は、Pam3CysおよびPam2CysはB細胞の強力な増殖を誘導することができるが、ポリI:Cは誘導しないことを示す(
図7を参照)。陽性対照として含まれるLPSは、低濃度のB細胞増殖を誘導することが公知である。これらの結果に基づき、Pam2CysまたはPam3Cysを含有するワクチンがin vivoでB細胞に類似した作用を及ぼし、類似したレベルの抗原特異的抗体の生成を促進することが可能であろうと予想することは合理的である。
【0263】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的に、および個々に示されるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、出願日の前のその開示のためであり、本発明が先願発明のためにそのような刊行物に先だつ権利がないことを承認するものと解釈されるべきでない。
【0264】
上記の発明は理解の明快性のために例示および例として多少詳細に記載されたが、本発明の教示を考慮して、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずに、特定の変更および改変をそれに加えることができることは当業者に容易に明らかである。
【0265】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、内容が明らかに別途指示しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれる点に注意しなければならない。特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、この発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0266】
ここで、明細書および特許請求の範囲で用いられる語句「および/または」は、そのように結び付けられる要素、すなわち、一部の場合には一緒に存在し、他の場合には離れて存在する要素の「一方または両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」で掲載される複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結び付けられる要素の「1つまたは複数」と解釈されるべきである。任意選択で、「および/または」の文節によって具体的に特定される要素以外に、具体的に特定されるそれらの要素に関係するか無関係であるにせよ、他の要素が存在することができる。したがって、非限定例として、「含む(comprising)」などの非限定言語と一緒に用いられる場合、「Aおよび/またはB」への言及は、一実施形態ではAだけ(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態ではBだけ(任意選択でA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む);などを指すことができる。
【0267】
ここで明細書および特許請求の範囲で用いられるように、「または」は、上で定義される「および/または」と同じ意味を包含すると理解するべきである。例えば、リスト中の項目を抽出する場合、「または」または「および/または」は包括的であると、すなわちいくつかの要素または要素のリストの内の少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択でさらなるリストに載ってない項目を含むと解釈されるものとする。
【0268】
明細書であれ添付の特許請求の範囲であれ、ここで用いるように、移行用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」などは、包括的または非限定的である(すなわち、それらを含むがそれらに限定されないことを意味する)と理解されるべきであり、それらは引用されていない要素、材料または方法ステップを排除しない。移行句「からなる」、および「から実質的になる」だけが、特許請求の範囲に関してそれぞれ排他的または半排他的移行句である。移行句「からなる」は、具体的に挙げられていないいかなる要素、ステップまたは成分も排除する。移行句「から実質的になる」は、その範囲を、指定要素、材料またはステップに、および、ここで開示および/または請求される本発明の基本的特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものに制限する。