特許第6240080号(P6240080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240080モジュール式可搬型溶接及びシーム追跡のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240080
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】モジュール式可搬型溶接及びシーム追跡のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20171120BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20171120BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B23K9/028 D
   B23K37/02 301A
   B23K9/127 508C
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-542941(P2014-542941)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-500743(P2015-500743A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】IB2012002258
(87)【国際公開番号】WO2013076541
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】61/563,569
(32)【優先日】2011年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514129327
【氏名又は名称】ウェルドボット リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エイナブ,オマー
(72)【発明者】
【氏名】スピリトゥス,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シャバノフ,ドロン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ クローネンベルグ,アミ
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−115638(JP,A)
【文献】 実開昭56−018176(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/028
B23K 9/127
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物に関する少なくとも1つの可撓性追跡部に沿って、移動するように構成した支持キャリッジであって、前記少なくとも1つの可撓性追跡部は、前記加工物の表面上に直接設置されている、支持キャリッジと、
溶接リグに接続された溶接ヘッドと
を備える自動モジュール式溶接デバイスであって、
前記溶接リグは、前記支持キャリッジに取り外し可能に接続されており、センサが前記加工物状で少なくとも1つの特徴部に関する前記溶接ヘッドの位置を提供し、前記支持キャリッジが前記加工物に関して移動するときに、前記支持キャリッジは、前記少なくとも1つの可撓性追跡部を前記加工物から持ち上げ、かつ
前記少なくとも1つの特徴部は、溶接すべき経路を示し、前記少なくとも1つの特徴部は、溶接すべきシームであり、前記センサは光学センサであって、前記溶接リグの線形アームに接続されかつ前記シームより先にある光学センサであり、前記センサは前記シームを検出しかつ追跡するように適合し、かつ前記センサはモータへ指令を提供してアームを駆動させ前記シームに対し前記溶接リグの位置の調節をし、かつ
前記支持キャリッジは、前記溶接リグと前記少なくとも1つの特徴部との間の相対位置に応じて前記溶接リグを移動する駆動部を備え、溶接くずによって前記少なくとも1つの特徴部を妨げることなく自動シーム追跡が達成される、
自動モジュール式溶接デバイス。
【請求項2】
前記溶接リグは、溶接品質を評価し、前記評価からの情報に基づいて前記溶接品質に関するフィードバックを提供する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記溶接リグが非平面加工物の外周の周りの前記少なくとも1つの可撓性追跡部に沿って進行可能になるように構成した取付け手段を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの特徴部は、硬質ガイドを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記駆動部は、前記溶接リグをいくつかの方向に移動するように構成した複数の位置決め手段を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
加工物に対して前記溶接リグの位置を決定するように構成した位置決定手段を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
溶接処理を環境の変更条件に適合させる環境検知手段を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可撓性追跡部のうちの少なくとも一部は、前記支持キャリッジに設けられた一連のローラーまたはギアにより巻き上げられる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記センサは調節可能機構を介して前記線形アームに接続され、前記調節可能機構は移動スライドに接続され、かつ前記移動スライドは前記線形アームに接続され、前記調節可能機構は前記溶接ヘッドと前記センサとの間の距離を微調節するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記自動モジュール式溶接デバイスは、遮蔽デバイスであって、前記溶接ヘッドへの保護を提供しかつMIG溶接用又はTIG溶接用のシールド・ガスの使用を可能にする、遮蔽デバイスと、
を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月24日出願の米国特許仮出願第61/563,569号による優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、可搬型溶接のためのシステム及び方法に関し、より詳細には、半自動及び全自動溶接システムと共に使用する可搬型溶接シーム追跡システムに関する。
【背景技術】
【0003】
溶接は、金属部品を接合するための十分に確立された方法である。多くの溶接作業は、現場、例えば建設現場、施設等で実施される。良質な溶接を提供する主な要因は、オペレータ又は自動溶接システムが所与の結合部、即ち「シーム」の経路を追従する能力に関連する。したがって、様々な成功の度合いを享受する、溶接中の正確なシーム追跡システムの問題を解決する試みには事欠かない。一部のシステムは、機械センサに基づくものであり、この機械センサは、シーム溝内で稼働し、機械的に又はサーボ・システムにより所望の経路に沿って溶接アームを導く。他の解決策は、シームに対する溶接先端位置を伝達し、サーボ・システムにより位置を修正する光学走査システムに基づく。現在、市販のロボット・ベース・システムは、作業場での溶接作業のために利用可能であり、このシステムは、処理からのフィードバックを使用し、正確な位置決め及び挟持が可能であることが多い。
【0004】
大抵の場合、追跡は、正確さ及び一貫性に関して満足のいく結果をもたらさないことは強調すべきである。したがって、可搬型機器を使用する多くの作業では、オペレータ(多くは訓練された溶接工)は、全処理を点検し、シームの溶接先端位置をリアルタイムで修正しなければならない。
【0005】
溶接は、非常に冗長で、重労働で複雑な処理である。溶接処理は、多数のステップを必要とする場合がある。溶接の品質は、漏れや環境への危険を防止するように保証されなければならない。溶接処理を単純化し、多数の処理を1つのシステムで提供する手段が大いに望ましい。
【0006】
溶接領域の環境は、精密なデバイス及び機器にとって非常に不都合なものであり、即ち、温度が高レベルに上昇すること、溶融金属の溶滴が時として予測不可能な方向に飛散すること、及びヒュームが機械デバイスに付着して故障をもたらすといったことがある。
【0007】
溶接作業は、高レベルの放射線を伴い、この放射線は、カメラの光学素子及び他の光学デバイスを破損し、同様にオペレータにとっても危険である。
【0008】
高温から生じる煙は、カメラ及びレーザ・ベース・システムの視線を遮断し、ヒュームは人間が吸入すると有害である。
【0009】
多くの場合、厚みのある材料は2回以上の通過で溶接されるため、溶接部にはすでにシームにある、前の通過での仮付け溶接部がある。こうした仮付け溶接部は、光学センサ(複数可)から受け取った画像を解釈するのに問題を引き起こす場合があり、機械センサに問題を引き起こすこともある。というのは、シームの仮付け又はルート溶接(root weld)の後、その溶接部は、機械従動子の連続運動を可能にするほどは平滑ではないためである。
【0010】
以下は、現在の現況技術を示す、(参照により組み込まれる)関連する従来技術のリストである。米国特許第4700045号、米国特許第5001324号、米国特許第4806732号及び米国特許第4812614号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、現場で動作する機械化プラットフォーム及び/又はロボット・プラットフォームによって、溶接作業中に溶接先端を追跡するデバイスに関する。プラットフォームは、加工物をチャック固定する能力はなく、したがって正確さは制限される。プラットフォームは、限定はしないが、特にパイプ及びタンク等の円筒形ボディーへの作業向けに設計される。
【0012】
本発明の要素は、特徴部を特定すること、又は溶接部の所望の経路に平行なマークを加えることを含み、それにより、溶接プラットフォームのシームへの距離が制御される。
【0013】
固定距離で、シームからのマーク距離をガイドラインとして使用することで、実際のシームの追跡に関連する問題を回避する。マークは安定したままであり、繰り返しの通過の間その性質を変えず、煙、放射線及び火花等の溶接の影響をガイド・マークから遠ざけた状態にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
加工物に取り外し可能に接続するように構成した支持キャリッジと、
前記支持キャリッジに取り外し可能に接続した処理リグと
を備える自動モジュール式溶接デバイスであって、
それにより、前記処理リグは、前記支持キャリッジから取り外し可能である、自動モジュール式溶接デバイスを提供することは、本発明の規定内にある。
【0015】
前記処理リグは、金属溶接、プラスチック接合、塗装、QA分析、水中溶接、洗浄、被覆、切削、測定、ばり取り、つや出し、研摩、熱処理からなる群から選択される動作を実施するように構成されることは、更に本発明の規定内にある。
【0016】
溶接すべき加工物上で少なくとも1つの特徴部を検知するように構成した検知手段を更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0017】
更に、前記少なくとも1つの特徴部は、溶接すべき経路を示し、前記特徴部は、前記経路から所定量ずれることは、更に本発明の規定内にある。
【0018】
前記キャリッジは、前記溶接リグと前記特徴部との間の相対位置に応じて前記溶接リグを移動するように構成した駆動手段を備え、それにより、溶接くずによって特徴部を妨げることなく自動シーム追跡を達成することができることは、更に本発明の規定内にある。
【0019】
前記特徴部は外部から加えられたマークであることは、更に本発明の規定内にある。
【0020】
処理リグが、現場でMIG/TIG溶接に使用されることは、更に本発明の規定内にある。
【0021】
処理リグが、摩擦攪拌溶接に使用されることは、更に本発明の規定内にある。
【0022】
処理リグが、水中溶接に使用されることは、更に本発明の規定内にある。
【0023】
更に、前記処理リグが、前記特徴部を作成する手段を備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0024】
らせん状溶接、線形溶接、円形溶接、階段状溶接、鋸歯状溶接、多層溶接からなる群から選択される溶接を実施するように構成することは、更に本発明の規定内にある。
【0025】
溶接品質を評価する手段と、溶接品質を評価する前記手段からの情報に基づいて溶接品質に関する報告をするように構成した報告手段とを更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0026】
前記溶接リグが非平面加工物の外周の周りを進行可能になるように構成した取付け手段を更に含むことは、更に本発明の規定内にある。
【0027】
前記取付け手段が、チェーン、ロープ、磁気手段、電磁手段、吸着手段からなる群から選択されることは、更に本発明の規定内にある。
【0028】
前記検知手段が、視覚検知手段、光学検知手段、磁気検知手段、静電気検知手段、放射線検知手段、テクスチャ検知手段、嗅覚検知手段、化学検知手段からなる群から選択されることは、更に本発明の規定内にある。
【0029】
前記特徴部が硬質ガイドを備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0030】
前記搬送手段(motoring means)が、前記溶接リグをいくつかの方向に移動するように構成した複数の位置決め手段を備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0031】
飛散保護手段を更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0032】
ガス取扱い手段を更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0033】
加工物に対して前記溶接リグの位置を決定するように構成した位置決定手段を更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0034】
処理を環境の変更条件に適合させるのに使用する環境検知手段を更に備えることは、更に本発明の規定内にある。
【0035】
本発明のこれらの、追加及び/又は他の態様及び/又は利点は、以下の詳細な説明に示され、可能性としては、詳細な説明から推察でき、及び/又は本発明の実施により習得できる。
【0036】
次に、本発明を理解し、本発明をいかに実際に実装できるかを見るために、単に非限定的な例として添付の図面を参照しながら複数の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】主なシステム構成要素のシステム概観ブロック図である。
図2】システムの典型的な作業の流れ図である。
図3】追跡システムを有する典型的な軌道溶接システム実施形態の図である。
図4】典型的な手持ち式マーキング及び又は測定デバイスの図である。
図5】回転プラットフォーム機構の一実施形態の図である。
図6】平坦機構の例示的図である。
図7】モジュール式パイプ溶接システムの例示的図である。
図8】溶接プラットフォームがパイプの周囲の周りを進行できるように構成したチェーン機構の一実施形態の図である。
図9】キャリッジ及び処理ユニットのためのケーブル張力保護機構の図である。
図10】大口径パイプの周囲の周りを溶接する状況における、本発明のいくつかの溶接モジュール式プラットフォームの図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明は、本発明の全ての章と共に、あらゆる当業者が前記発明を利用可能になるように提供され、本発明を実行する発明者が企図する最良の形態を示す。しかし、本発明の一般原理は、モジュール式溶接及び溶接シーム追跡のためのシステム及び方法を実現する手段及び方法を提供するように具体的に規定されているので、様々な修正形態が依然として当業者に明らかであろう。
【0039】
以下の詳細な説明において、多数の具体的な詳細を本発明の実施形態の完全な理解を提供するように示す。しかし、そのような実施形態は、こうした具体的な詳細を伴わずに行うことができることを当業者は理解するであろう。各特徴は、全体を想起するのと同じ程度に残りの特徴ももたらすことができ、最終的に特徴が明らかになったときに完全に新たな特徴を想起することができる。各実施形態の解釈を正当且つ完全に説明することで、基礎をなす概念の完全な報告をもたらすことはできない。したがって、発明者等は、全ての実施形態を本明細書に必ずしも記載しておらず、むしろ、本発明の基礎をなす概念自体を開示することを全体に認めなければならない。
【0040】
本明細書を通じて「一実施形態(one embodiment又はan embodiment)」に対する言及は、その実施形態に関して説明する特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。
【0041】
用語「複数」は、以下で、あらゆる正の整数(例えば1、5又は10)を指す。
【0042】
用語「溶接」は、以下で、金属及びプラスチック等の材料を接合又は分離するあらゆる処理、並びに(金属の接合又は分離を伴わないことさえある)洗浄、塗装、吹付け、振動、分析、衝突、めっき加工及び照射を含めたそれに関連する動作を指す。
【0043】
用語「処理」は、以下で、金属及びプラスチック等の材料を接合又は分離に関与するあらゆる動作、並びに洗浄、塗装、吹付け、振動、分析、衝突、めっき加工及び照射を含めたそれに関連する動作を指す。
【0044】
用語「特徴部」は、以下で、表面、例えば結合部、シーム、溶接部、スクライブ、マーク、凹み、通路等のあらゆる識別可能な特性を指す。隣接し、一緒に溶接される2本のパイプの特徴部は、例えばパイプの隣接し合う端部とすることができ、この縁部が2本のパイプを接合するのに溶接を行うことができる位置的な線を含むことができるので、この文脈では特に関連する特徴部とすることができる。
【0045】
図1は、モジュール式溶接及び追跡システムの例示的簡略ブロック図を示す。システムは、必ずしもそうではないが、典型的には以下のサブ要素を含む:
パイプ及びシリンダ等の物体の周りを回転することができ、円筒形加工物に取り付けられるカート、及びカートの上に容易に組み付けることができる取り外し可能な処理ユニットを備えるプラットフォームと、
加工物上の溶接シーム及び/又は特殊マークを検出するためのセンサ、又は加工物上の電子マーキングを読み取ることができるリーダと、
(例えば溶接ヘッド及びセンサを周囲に動かすことができる車輪及びモータを有する)従動子機構と、
溶接ヘッドと、
マーキング・デバイスと、
GUI及びペンダントを有する制御システム。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、従動子機構又は「カート」は、車輪及び搬送手段を有する一体ユニットとして構築され、より複雑な溶接、検知及び制御手段から取り外し可能である。こうした溶接、検知及び制御手段は、急速解放手段又は他の可逆的接続手段を使用して、カート内に嵌合する取り外し可能カートリッジの形態で供給することができる。
【0047】
図2は、以下の例示的ステップを有するシステムの典型的な作業フローを説明する流れ図である:{一部のステップは任意選択である}
加工物上でシームの近傍に回転プラットフォームを位置決めするステップ(210)
カートを加工物に取り付けるステップ(220)
処理ユニットをカートに取り付けるステップ(230)
更なるシーム追跡のために特徴部をマーキングするステップ(240)
特殊溶接のための溶接パラメータを設定するステップ(250)
マーキングとシームとの間の距離に従ってセンサをヘッド距離に調節するステップ(260)
知覚フィードバックに基づき閉ループ・モードで溶接処理を実施するステップ(270)
知覚フィードバックに基づきQA処理を実施するステップ(280)。この処理は、作動状態で主な処理と共にライン上で行っても、処理の後で行っても、又はその両方でもよい。QA処理は、当業者には明らかであるように、均一性、溶接強さ、シームの大きさ、溶接の深さ、及び他のパラメータに関する溶接品質を分析し、数量化することを目的とする超音波、視覚、光学的及び他の測定方法を含むことができる。
【0048】
次に、追跡デバイスが動作中の例示的軌道溶接システムを示す図3a及び図3bを参照する。
【0049】
結合部の溶接処理中、典型的な回転プラットフォーム(1)は、パイプに取り付けられ、軌道経路内を移動する。プラットフォームは、パイプの軸に平行である線形アーム(2)を備える。調節可能機構(3)は、溶接先端(5)と従動子(4)との間の距離を微調節可能にする。
【0050】
マーク(6)は、シーム(7)の溶接作業前にパイプ上にマーキングする参照線を備える。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、マークは線以外の形態である。
【0052】
センサ(4)は、マークを追跡するのに使用され、位置を調節するように(例えば制御装置を通じて)指令をアーム(2)に与える。アームは、移動スライド(9)を駆動するモータ(8)によって駆動される。
【0053】
ユニットは、高さ調節及び制御部(11)に備え付けることができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、位置及び品質検査用カメラ・ヘッド/超音波ヘッド/レーザ・ヘッド等の機器を含む追加ヘッドが、(例えば溶接ヘッド付近で)プラットフォームに追加される。本発明のいくつかの実施形態では、これらのヘッドは、モジュール式で、交換可能(即ち1つの処理ヘッド及び1つのQAヘッド)である。
【0055】
遮蔽デバイス(10)は、溶接先端への保護をもたらし、したがってMIG及びTIG溶接で公知のシールド・ガスの使用を可能にする。
【0056】
次に、現場でマーキングを必要とするパイプに使用する、例示的手持ち式マーキング・デバイスを示す図4を参照されたい。
【0057】
マーキング・ユニットは、加工物端部(401)及びマーキング・カート(403)に取り付けられる縁部従動輪(402)を備える。カート(403)は、ハンドル(405)によって手持ちされる。マーキング先端(404)を有する調節可能アームは、マーキングに使用される。アームは、調節でき、ねじ(405)を使用して係止することができる。
【0058】
全手動マーキング・デバイスは、平滑で一貫した運動向けに設計され、オペレータが容易に実施することができる。
【0059】
溶接シームをマーキングするための別の例示的な方法は、モータ駆動式マーキング・デバイスである。他のオプションは、回転プラットフォームへのマーキング・デバイスの追加を含む。
【0060】
大きな寸法の加工物に関して、いくつかのマーキング・デバイスを(マーキング距離がデバイス上で同様に調節される限りは)平行に使用することができる。
【0061】
マーキング・デバイスは、非円筒形部品に使用することもできる。例えば、マーキング・デバイスは溝及び/又は壁及び/又は階段模様を追従するように設計することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、マーキング・デバイスは、電子リーダを備えることができ、それにより、読み取った情報をシーム又は結合部を追従するのに使用することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、マーキング・デバイスは、溶接領域を準備する洗浄デバイスの一部であってもよい。
【0064】
次に、パイプ、管、及び円筒対称である他の物体を溶接するのに適した回転プラットフォームの例示的機構を示す図5を参照されたい。
【0065】
プラットフォームは、チェーン(51)を使用してパイプに取り付けられ、このチェーン(51)は、締結スプロケット(53)を引っ張るクランク(52)により、調節し、パイプの周囲に締結することができる。チェーン及び運動要素は、任意選択で、残りの溶接プラットフォームと可逆的に対合するモジュール式カートの中に組み込まれる。このようにして、カート、車輪、搬送手段等を備える移動手段が溶接手段及び検知手段から分離可能である限りは、デバイスをモジュール式にする。
【0066】
回転プラットフォームは、チェーンに連結されたモータ(50)によりパイプの周りを回転する。モータ(50)は、回転プラットフォームの車輪も回転させて、溶接プラットフォームが環状又はらせん状にパイプの周りを回転する際に溶接プラットフォームの回転運動を支援し、円滑にすることができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態では、チェーン(51)は、チェーンをパイプの周りに巻き付けることでユニットをパイプに容易に接続可能にするように非連結式であってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ベルト又はワイヤをチェーンの代わりに(又はチェーンと共に)使用する。
【0068】
平板又は他の様々な大平面のための同様のシステムを図6A図6Bに示す。カート(1)は、アーム(2)を含む残りの組立体から分離され、このアーム(2)上で溶接装置が摺動部材(9)上を進行できる。このようにして、デバイスは、カートが溶接要素及び制御要素から容易に分離されるという意味でモジュール式となる。カート及び/又は溶接装置は、修理、異なる溶接システムの使用、異なる搬送手段の使用、異なるフィードバック手段の使用等のために簡単に交換することができる。例えば、水中溶接に適した溶接装置は、単に溶接装置を交換することによって、野外溶接に使用するのと同じカート上で使用することができる。
【0069】
図7Aは、2本のパイプ区分(703及び704)を溶接する状況でのシステムの可能な実施形態を示す。溶接カート701は、当業者であれば理解するようにチェーン・システム710により進行する。カートは、搬送手段715を有し、溶接すべきパイプの周囲の周りにカートを進行可能にする。溶接装置702は、急速解放接続手段又は同様の可逆的接続手段によりカート701と取り外し可能に対合するように設計される。溶接装置702は、パイプ軸に対し平行に、即ちカートの移動方向に対し直角の方向に溶接デバイスを移動することで溶接デバイス730を位置決めする手段を含む。
【0070】
図7Bは、溶接装置をカートに接続した後のシステムを示す。
【0071】
図7C図7Dは、溶接システムの上面図を示す。
【0072】
図7Eは、溶接装置をパイプ軸に対し平行の方向に移動できる溶接位置決め手段の側面図を示し、1組のモータ780、772が、線状支承部776によって保持されるレール774を移動するように供給される。この手段により、システムは、溶接装置位置の径方向及び軸方向への2つの軸を制御することができ、カートは、デバイス全体の方位位置を制御する一方で、溶接装置は、パイプ軸に沿った、径方向への溶接ヘッドの位置を制御する。溶接装置の2つの運動は、シームの横及び縦の両方のずれを補償することができる。
【0073】
図7Fは、溶接装置がカートに接続されたシステムの等角図を示す。ここでは、搬送システムの様々な伝達手段を見ることができる。
【0074】
図8は、取り外しできるチェーンの連結部を示し、カートをパイプから取り外し又はパイプに取り付け可能にする。いくつかの実施形態では、2つのチェーン部品を適所に保持し、チェーン連結部への簡単な取付け及び分解手段をもたらすように、ばね(801)を使用する。急速チェーン解放を使用すると、様々なパイプの直径でシステムを容易に使用可能になる。
【0075】
図9は、ケーブル張力保護機構を示す。センサ901は、カム従動子902が中心位置から所定量だけ離れたときにカム従動子902の運動を検出する。カム従動子は、ハウジング903内に設置される。ばね904は、アーム905及びブラケット906によるケーブル張力に対する抵抗力を与える。本発明のいくつかの実施形態では、ばね904は調節することができる。位置決め手段は、本明細書に示すように2つの結合部を備えることができ、又は溶接先端の自由度を増大可能にするように更なる結合部を備えることができる。したがって、単純なパイプ・シーム溶接作業に要求される溶接部よりも複雑な溶接部が、現在のデバイスを使用することで企図することができる。
【0076】
次に、多数のロボット・ユニット又は処理ユニットにより行われる任意選択の作業を示す図10を参照されたい。図10aは、パイプ1001の2つのセグメント上で機能する本発明の2つのユニット1005及び1010を示す。溶接ユニットは、搬送手段を有するカート区分と、カート区分と対合し、カート区分の上に載る処理区分とを備える。処理区分は、溶接手段を有し、或いは、他の実施形態では、溶接前洗浄システム、溶接後洗浄システム、塗装システム、超音波、ビデオ等によるQAシステム、又は金属部品若しくはプラスチック部品等の材料を接合する全体方法に関連する他の関連処理機能を備えることができ、これらは当業者には明らかであろう。図10bは、同じパイプ区分上で平行に機能するユニット1050及び1060を示す。本発明のいくつかの実施形態では、3つ以上のユニットが平行に機能することができ、更に、各カートは、速度、溶接品質、安全性等の点で最適な性能を与えるように多数の処理ユニットを利用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、1つの処理ユニットをQAに使用でき、一方で他のユニットを処理に使用する。本明細書及び図面から明らかであるように、同じカートが多数の処理ユニットの役割を果たすことが可能であり、したがって、様々な処理の組立て時間及び切替え時間を低減する。このことは、カートを取り外し、交換する必要がないことによるものである。カートは、パイプ又は板の間のシーム等の関連作業領域に到達するように、すでに加工物の表面上を進行するように構成、準備されている。したがって、前洗浄から溶接へ、溶接から後洗浄へ、後洗浄から塗装への切換えは、同じカート・モジュール上で処理モジュールを複数回入れ替えるだけでよい。
【0077】
追跡システムの例示的構造
特定の実施形態では、システムは、シーム追跡、パイプに埋入された特徴部追従等のオン及び又はオフの使用等、様々な要素及びオプションを備える追跡サブ・システムを備える。
【0078】
パイプ内で追従される特徴部は、溶接プラットフォームが検出、追従できる全てのものとすることができ、限定はしないが、
溝、
切断部、
マーク、
凹み、
磁気マーキング、
光学マーキング、
パイプ製造処理の一部であるマーク、例えばパイプ溶接シーム、
上記の組合せ
を含む。
【0079】
更に、最初に回転プラットフォームに対してシームを測定し、制御装置に情報を記憶し、次に、溶接の間にその情報を使用することによって、シームの位置を記録する手段を有する溶接プラットフォームが供給されることは更に本発明の規定内にある。場合によっては、シームに沿った一部のマークは、不定期の参照及び/又は帰着用位置を調節するのに使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、溶接プラットフォームは、マーキングした特徴部を使用して、適切なセンサ(複数可)及びサーボ・ループと共にシームに対する溶接先端の必要な位置を提供することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、マーキングした場所を最初の追跡に使用し、第2のシステムによって例えば電流フィードバックを使用することで、先端からの位置測定を可能にすることを企図する2重システムを使用する。当業者には明らかであるように、電流は、加工物からの溶接電極位置によって異なり、したがって、記載するフィードバック・ループの一部として使用できる。本発明の規定内にある別の例は、視覚若しくはレーザ(又は他の光学手段)システムを備え、このシステムは、例えば回転プラットフォームの前の領域を含めたシームを撮像し、溶接プラットフォームのシームに対する正確な移動を可能にする。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態では、シーム追跡システムは、シーム上の以前の通過から記憶したデータを使用して現在の先端位置を修正することができる。
【0083】
マーキングの方法
加工物のマーキング(シーム又はシームに平行な線等)は、様々な場所でマーキング手段を選択することによって行うことができる。
【0084】
いくつかの作製方法では、マーキングはパイプ端部に対して行い、最終切断の後、又は切断作製処理の一部として行うことができる。
【0085】
代替的に、マーキングは、例えば彫刻システム等のマーキング工具を使用して個別作業として行うことができる。平坦な加工物又は湾曲加工物の両方とも、こうした手段のいずれかにより、例えばパイプ端部を形成する間にマーキング工具を使用して供することができる。
【0086】
マーキングは、デバイスのオペレータ又は他の作業員により現場で実施することもできる。個別のマーキング工具は、パイプ上に据え付けることができ、手動又は自動で行うことができる。また、マーキングは、(例えばマーキング先端を用いて)実際の塗料/染料のマークの形態で達成することができる。マーキングは、(可搬型であってもよい)切削工具を使用して行い、溝又は刻み目を作成することもできる。可能性としては、溝に染料を充填してもよい。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、例えば磁界を有する場所をマーキングすることによって電子マーキング・デバイスを使用することができる。
【0088】
溶接環境の遮蔽
追跡機構は、溶接領域から離れて位置決めされるので、シーム領域に良好な環境保護を与えることが可能であり、ガスの分散の効果的な遮蔽を可能にし、ガスの飛散及び放散が防止される。
【0089】
ここで、様々な遮蔽方法を例として提案する:
ゴム/シリコンの覆いを溶接領域上に設ける、
刷毛タイプの覆いを溶接領域に設ける、
遮蔽用ベローズ要素を使用する、
マルチフィンガー・ストリップ要素を使用する。
【0090】
遮蔽要素は、(例えば真空を使用することによって)処理ガスを排気させる単純な手段も提供する。
【0091】
検証事項
マーキングの後、オペレータはマークを手動/視覚的に検討することができる。
【0092】
マーキング・システムは、例えば溶接に使用するには大きすぎる偏差を特定することによって、不規則な切断部のあるパイプを特定する機構を備えることができ、警報を発生させてもよい。
【0093】
品質保証QA
本発明のいくつかの実施形態では、回転プラットフォームを使用して、溶接が終了した後に、溶接の完全性を検証するのに使用できるQAレポートを提供する。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態では、処理中(on process)QA(オンライン)が、溶接処理中の様々なパラメータを測定することによって実施される。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態では、個別QAサイクルは、専用QA処理ヘッドを有する溶接プラットフォーム又はカートを使用して実施され得る。視覚システム、レーザ・システム、IRシステム、他の光学システム、X線システム、超音波システム等の様々なセンサを、インプロセス・パラメータに加えて又はその代わりに使用することができる。
【0096】
本発明の規定内にある更なる特徴として、
溶接点及び/又は縁部からのマークの距離を調節すること、
Bluetooth(登録商標)、WiFi等で溶接/切削システムに直接通信すること、
メモリ要素を使用して、マーキングの代わりに測定すること、
出発点のみをマーキングし、「電子マーキング(例えばメモリ)」を溶接システムに配信すること、
マーキング/測定システムは、2つ以上の位置測定法、例えば1つを方位移動のための測定、もう1つをパイプ軸に沿った距離のための測定に適合されること
が挙げられる。
【0097】
移動手段(車輪、モータ等)を有するカートは、溶接リグ(又は、QA等溶接以外の作業を本デバイスの使用により企図できる事実をより示す名前では「処理モジュール」)から分離し、取り外すことができ、システムをモジュール式に動作可能にする。例えば、いくつかの異なるカート設計を提供することができ、一部は、平坦面を誘導でき、他のものは、円筒構造用に構成され、更に他のものは、他の種類の移動用に構成されるが、全てが、依然として同じ溶接装置又はQA装置と対合することができる。同様に、多数の溶接装置は、全てが様々なカートとモジュール式に対合できるように提供することができ、こうした溶接装置は、例えば厚みのある材料向けに構成した溶接デバイス、薄い材料向けに構成した溶接デバイス、様々な材料の種類向けに構成した溶接デバイス、及び/又は電子ビーム溶接、レーザ溶接、摩擦攪拌溶接等異なる溶接技法向けに構成した溶接デバイス等である。任意選択の接合装置は、専用の処理手段を用いるプラスチック接合処理又は非金属接合処理向けに提供することができる。
【0098】
カートは、シームを配置し、マーキングするために手動で移動させることができる。
【0099】
シームは、マーキングし、次に追跡することができる。
【0100】
センサは、シームより先にカート上に配置することができる。
【0101】
センサは、個別のカート上に配置することができる。
【0102】
モジュール性
a.2つのカートが同じ運動手段を共有することができる、
b.多数のカートは、異なるパイプ区分上で同時に作業することができる、
c.誘導、搬送、安定性等の点で異なる機能を有する多数の異なる溶接カートを提供することができる。全てのカートは、所与の溶接装置と対合するように設計できる。同様に、当業者には明らかであるように、単一の統合連動機構により全ての装置が様々なカートと対合できる多様な溶接装置を提供することができる。そのような手段により、様々な溶接技法を同じモジュール式システムを使用して利用可能にすることができる。
d.様々な処理モジュールは、同じカートを共有でき、用途及び必要性に基づいて互換的に使用でき、例えば、カート上に載置される処理モジュールは、
i.溶接装置、
ii.QA装置、
iii、つや出し装置、
iv.洗浄装置、
v.(例えばパイプ遮蔽材料のための)被覆装置、
vi.切削装置、
vii.塗装装置、
viii.加熱装置、
ix.形成装置、
x.めっき加工装置
xi.プラズマ溶射装置
を備えることができる。
【0103】
環境条件のセンサを利用して溶接(及び/又は他の処理)パラメータを通知、制御することは本発明の規定内にある。例えば、温度、風速、煙の濃度、振動レベル、CO2濃度、酸素レベル、相対湿度、方向、方位等を測定し、そのような処理パラメータを溶接電流/電圧、ガス圧力、ガス流束、溶接速度、溶接技法等として変更するために使用することができる。
【0104】
本発明の選択実施形態を示し、説明してきたが、本発明は記載した実施形態に限定されないことを理解されたい。そうではなく、本発明の原理及び要旨から逸脱することなくこれらの実施形態に対して変更を行うことができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその等価物によって定義されることを了解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9
図10A
図10B