(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)が、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の、全体のオレフィン性不飽和二重結合量に対する分率が0.25〜1.0である不飽和重合体(C1)である、請求項1に記載の水素添加用触媒組成物の製造方法。
前記(A)及び前記(C)の混合物に対し、剪断速度が1000(1/s)以上の剪断力を加える加力工程後、又は当該加力工程中、前記(B)を添加し、前記(A)、(B)、(C)を混合する工程を有する、請求項8に記載の水素添加用触媒組成物の製造方法。
前記(C)不飽和化合物として、共役ジエン系重合体、又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体を用いる、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の水素添加用触媒組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0016】
〔水素添加用触媒組成物の製造方法〕
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法は、
(A):下記一般式(1)で示されるチタノセン化合物と、下記(B)、(C)を用いることを含む。
【0018】
(前記式(1)中、R
5、R
6 は、水素、C1 〜C12の炭化水素基、アリーロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン基、及びカルボニル基からなる群より選択される基を表し、R
5、R
6は同一でも異なっていてもよい。R
1、R
2は水素、C1 〜C12の炭化水素基からなる群より選択される基を表し、R
1、R
2は同一でも異なっていてもよい。但し、R
1及びR
2が全て水素又は全てC1 〜C12の炭化水素基である場合を除く。)
前記一般式(1)中、R
1、R
2、R
5、R
6のC1 〜C12の炭化水素基としては、例えば、下記一般式(2)で表される置換基も含まれる。
【0020】
R
7〜R
9は、水素又はC1〜C4のアルキル炭化水素基を示し、R
7〜R
9のうちの少なくともいずれかは水素であり、n=0又は1である。
【0021】
(B):Li、Na、K、Mg、Zn、Al、Ca元素からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する化合物。
(C):不飽和化合物。
【0022】
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、少なくとも前記(A)に、剪断速度が1000(1/s)以上の剪断力を加える加力工程と、前記(A)、(B)、(C)を混合する工程とを有する。
【0023】
先ず、目的とする水素添加用触媒組成物を製造するために用いる成分について説明する。
((A)成分:チタノセン化合物)
前記(A)成分:チタノセン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヒドリド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヒドリド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヒドリド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジヒドリド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヒドリド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエチル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジエチル、
ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ−sec−ブチル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ−sec−ブチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ−sec−ブチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ−sec−ブチル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ−sec−ブチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヘキシル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヘキシル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヘキシル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジヘキシル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジヘキシル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジオクチル、
ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジオクチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジオクチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジオクチル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジオクチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメトキシド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエトキシド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエトキシド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエトキシド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジエトキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジエトキシド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジプロポキシド、
ビス(η(5)−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジプロポキシド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジプロポキシド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジプロポキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジプロポキシド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブトキシド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブトキシド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブトキシド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジブトポキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブトポキシド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m−トリル)、
ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m−トリル)、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m−トリル)、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m−トリル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m−トリル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−1,3−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m,p−キシリル)、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m,p−キシリル)、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m,p−キシリル)、
ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m,p−キシリル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(m,p−キシリル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−エチルフェニル)、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−エチルフェニル)、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−エチルフェニル)、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−エチルフェニル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−エチルフェニル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、
ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、ビス(η(5) −n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェノキシド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェノキシド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェノキシド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェノキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェノキシド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(4−ヘキシルフェニル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフルオライド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフルオライド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフルオライド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジフルオライド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフルオライド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、
ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブロマイド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブロマイド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブロマイド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジブロマイド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジブロマイド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジイオダイド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジイオダイド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジイオダイド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジイオダイド、
ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジイオダイド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドメチル、ビス(η(5)−ジ−1,3−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドメチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドメチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドメチル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドメチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドエトキサイド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドエトキサイド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドエトキサイド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドエトキサイド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドエトキサイド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドフェノキサイド、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドフェノキサイド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドフェノキサイド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドフェノキサイド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムクロライドフェノキサイド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジベンジル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジカルボニル、ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジカルボニル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジカルボニル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジカルボニル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジカルボニル等が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらアルキル基置換のシクロペンタジエニル基を有するチタノセン化合物は、上述した例に限定されず、上記以外の、シクロペンタジエニル環のアルキル基の置換数が2、3、4のものも好適に用いられる。
【0024】
上述した各種チタノセン化合物を用いることにより、本実施形態の製造方法により得られる水素添加用触媒組成物は、オレフィン化合物(オレフィン性不飽和二重結合含有化合物、以下、単にオレフィン化合物と記載する場合がある。)のオレフィン性不飽和二重結合を水添し、かつ耐熱性にも優れる。
特に共役ジエン系重合体又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体中のオレフィン性不飽和二重結合に対する水添活性が高く、かつ広い温度領域中で不飽和二重結合を水添可能な水素添加用触媒組成物を得るためには、前記(A)成分:チタノセン化合物として、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−エチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−プロピルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルを用いることが好ましい。
さらに、空気中でも安定して取り扱えるという観点からは、前記(A)成分:チタノセン化合物として、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(η(5)−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)、ビス(η(5)−n−ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)を用いることが好ましい。
【0025】
上述した(A)成分であるチタノセン化合物は、例えば、アルキル置換基を有するシクロペンタジエニル基を有する四価のチタノセンハロゲン化合物とアリールリチウムとを反応させることによって合成することができる。
合成したチタノセン化合物の構造は、1H−NMR、MSスペクトルによって確認することができる。
【0026】
((B):Li、Na、K、Mg、Zn、Al、Ca元素からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する化合物)
前記(B):化合物(以下、化合物(B)、成分(B)、(B)成分、(B)、と記載する場合がある。)としては、上述した(A)成分を還元することができる公知の有機金属化合物及び含金属化合物のうち、Li、Na、K、Mg、Zn、Al、Ca元素からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する化合物が用いられる。
(B)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機カルシウム化合物等を挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(B)成分としての有機リチウム化合物は、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、シクロペンタジエニルリチウム、m−トリルリチウム、p−トリルリチウム、キシリルリチウム、ジメチルアミノリチウム、ジエチルアミノリチウム、メトキシリチウム、エトキシリチウム、n−プロポキシリチウム、イソプロポキシリチウム、n−ブトキシリチウム、sec−ブトキシリチウム、t−ブトキシリチウム、ペンチルオキシリチウム、ヘキシルオキシリチウム、ヘプチルオキシリチウム、オクチルオキシリチウム、フェノキシリチウム、4−メチルフェノキシリチウム、ベンジルオキシリチウム、4−メチルベンジルオキシリチウム等が挙げられる。
【0028】
また、(B)成分としては、フェノール系の安定剤と、前記各種有機リチウムとを反応させて得られるリチウムフェノラート化合物も使用することができる。
前記フェノール系の安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−メチル−4,6−ジノニルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、メチレン−ビス−(ジメチル−4,6−フェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)等が挙げられる。
前記フェノール系の安定剤としては、上記具体例のうち、最も汎用的な2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの水酸基を−OLiとした2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシリチウムが特に好適である。
【0029】
また、(B)成分としての有機リチウム化合物としては、上記の他、トリメチルシリルリチウム、ジエチルメチルシリルリチウム、ジメチルエチルシリルリチウム、トリエチルシリルリチウム、トリフェニルシリルリチウム等の有機ケイ素リチウム化合物も挙げられる。
【0030】
(B)成分としての有機ナトリウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルナトリウム、エチルナトリウム、n−プロピルナトリウム、イソプロピルナトリウム、n−ブチルナトリウム、sec−ブチルナトリウム、イソブチルナトリウム、t−ブチルナトリウム、n−ペンチルナトリウム、n−ヘキシルナトリウム、フェニルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム、m−トリルナトリウム、p−トリルナトリウム、キシリルナトリウム、ナトリウムナフタレン等が挙げられる。
【0031】
(B)成分としての有機カリウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルカリウム、エチルカリウム、n−プロピルカリウム、イソプロピルカリウム、n−ブチルカリウム、sec−ブチルカリウム、イソブチルカリウム、t−ブチルカリウム、n−ペンチルカリウム、n−ヘキシルカリウム、トリフェニルメチルカリウム、フェニルカリウム、フェニルエチルカリウム、シクロペンタジエニルカリウム、m−トリルカリウム、p−トリルカリウム、キシリルカリウム、カリウムナフタレン等が挙げられる。
【0032】
(B)成分としての有機マグネシウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド、t−ブチルマグネシウムクロライド、t−ブチルマグネシウムブロマイド等が挙げられる。
【0033】
(B)成分は、共役ジエン化合物及び/又はビニル芳香族炭化水素化合物のリビングアニオン重合開始剤としても用いられることもあるが、被水添物であるオレフィン化合物が、(B)成分に含まれる金属の活性末端を有する共役ジエン系重合体、または共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体(リビングポリマー)である場合、これらの活性末端も(B)成分として作用する。
【0034】
(B)成分としての有機亜鉛化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチル亜鉛、ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。
【0035】
(B)成分としての有機アルミニウム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリフェニルアルミニウム、トリ(2−エチルヘキシル)アルミニウム、(2−エチルヘキシル)アルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0036】
これらの他に、(B)成分としては、リチウムハイドライド、カリウムハイドライド、ナトリウムハイドライド、カルシウムハイドライド等のアルカリ(土類)金属水素化物や、ナトリウムアルミニウムハイドライド、カリウムアルミニウムハイドライド、ジイソブチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリ(t−ブトキシ)アルミニウムハイドライド、トリエチルナトリウムアルミニウムハイドライド、ジイソブチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエチルナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエトキシナトリウムアルミニウムハイドライド、トリエチルリチウムアルミニウムハイドライド等の2種以上の金属を含有する水素化物も使用できる。
【0037】
また、上記有機アルカリ金属化合物と有機アルミニウム化合物とを予め反応させることで合成される錯体、有機アルカリ金属化合物と有機マグネシウム化合物とを予め反応させることで合成される錯体(アート錯体)等も、(B)成分として使用できる。
なお、成分(B)である有機金属化合物・含金属化合物としては、高い水添活性の観点から、Li、Alを含有する化合物が好ましい。
前記Li、Alを含有する化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、sec−ブチルリチウム、n−ブチルリチウムが好ましい化合物として挙げられる。
水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性と、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点から、有機リチウム化合物がより好ましい。
【0038】
((C):不飽和化合物)
前記(C):不飽和化合物(以下、(C)不飽和化合物、(C)成分、成分(C)、(C)と記載する場合がある。)は、少なくとも分子中に不飽和基を一つ以上有する化合物である。
本実施形態において、前記(C)成分:不飽和化合物は、経済的に有利にオレフィン性不飽和二重結合含有化合物を水添可能であり、貯蔵安定性に優れ、フィード性が良好で、水添工程により無色性に優れた重合体を製造可能な観点から、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の全体のオレフィン性不飽和二重結合量に対する分率が0.25〜1.0である不飽和重合体(C1)(以下、(C1)不飽和重合体、(C1)成分、成分(C1)、(C1)と記載する場合がある。)であることが好ましい。
また、後述するように、(C)成分:不飽和化合物は、経済的に有利にオレフィン性不飽和二重結合含有化合物(オレフィン性不飽和二重結合を含有する重合体を含む)を水添可能であり、貯蔵安定性に優れ、フィード性が良好で、水添工程により無色性に優れた重合体を製造可能な観点から、分子中に不飽和基を1つ以上有する分子量400以下の不飽和化合物(C2)(以下、(C2)不飽和化合物、(C2)成分、成分(C2)、(C2)と記載する場合がある。)であることも、好ましい形態として挙げられる。
(C)成分:不飽和化合物は、後述する所定のモノマーを用いることにより製造でき、(C1)成分:不飽和重合体は、後述する所定のモノマーを重合することにより製造できる。
【0039】
前記モノマーとしては、共役ジエンが挙げられ、一般に、4〜約12個の炭化水素を有する共役ジエンが挙げられる。
前記モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。
これらは、単独で重合させてもよく、二種以上共重合させてもよい。この中でも、(C1)成分を工業的に大規模に生産可能で、取扱いが比較的容易である1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、これらの単独又は共重合体であるポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/イソプレン共重合体が好ましい。
また、ノルボルナジエン、シクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン及びこれらのアルキル置換体を単独で重合、又は二種以上を組み合わせて共重合したものでよい。
【0040】
(C1)成分:不飽和重合体は、共役ジエン系重合体、又は前記共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体であることが、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の分率を高める観点から好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、1−ジフェニルエチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
具体的な共重合体の例としては、ブタジエン/スチレン共重合体、イソプレン/スチレン共重合体等が最も好適である。
これらの共重合体は、ランダム、ブロック、星型ブロック、テーパードブロック等いずれでもよく、特に限定されない。
また、(C1)成分:不飽和重合体が、共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、結合芳香族ビニル化合物の量としては70質量%以下が好ましい。
【0041】
(C1)成分:不飽和重合体は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を有していてもよい。
【0042】
(C1)成分:不飽和重合体は、数平均分子量が、本実施形態の水素添加用触媒組成物の水添活性や、取り扱い性、フィード性、貯蔵安定性の観点から、400を超えることが好ましく、500以上であることがより好ましく、取り扱い性の観点から100万以下であることが好ましい。
(C1)成分の数平均分子量は、500以上2万以下がより好ましく、800以上1.5万以下がさらに好ましく、1000以上1万以下がさらにより好ましい。
(C1)成分の数平均分子量(ポリスチレン換算値)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定できる。
なお、前記フィード性が良いとは、水素添加用触媒組成物を所定の環境下で一定時間保管した後に、所定の配管を介して供給等した際に、配管に詰まりが無く、連続的に円滑な供給状態を維持できることを言う。
また、取り扱い性が良いとは、溶液としたときに粘度が低く、混合性や移送速度が高く、器具や配管等に付着しにくいことを言う。
【0043】
(C1)成分:不飽和重合体は、本実施形態の製造方法において調製される水素添加用触媒組成物の水添活性、取り扱い性(溶液の低粘度化)、フィード性に関する貯蔵安定性、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点で、全体のオレフィン性不飽和二重結合に対する、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の分率が、0.25〜1.0であることが好ましい。
全体のオレフィン性不飽和二重結合量に対する、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の分率とは、
「全体のオレフィン性不飽和二重結合量に対する、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の分率」をXとし、
[成分重合体の側鎖にあるオレフィン性不飽和の炭素・炭素二重結合数]=Yとし、
[成分重合体の全体のオレフィン性不飽和の炭素・炭素二重結合全数]=Zとすると、
X=Y/Zで定義され、Xの値は、0.25〜1.0の範囲であることが好ましい。
この値の範囲の意味するところは、(C1)成分:不飽和重合体の具体例として、ポリブタジエンを用いた場合、全オレフィン性不飽和二重結合(シス1,4結合、トランス1,4結合、1,2結合)に対し側鎖のオレフィン不飽和二重結合(1,2結合)が0.25〜1(25〜100mol%)の範囲にあることである。
前記Xは、0.40〜1.0の範囲がより好ましく、0.50〜0.95の範囲がさらに好ましく、0.60〜0.95がさらにより好ましい。
前記X:側鎖のオレフィン性不飽和二重結合の、オレフィン性不飽和二重結合全体に対する分率は、NMRにより測定することができる。
【0044】
上述した(C1)成分:不飽和化合物と(A)成分:チタノセン化合物との質量比((C1)/(A))は、0.1以上8以下であることが好ましい。
本実施形態の製造方法において調製される水素添加用触媒組成物の水添活性や、取り扱い性、フィード性に関する貯蔵安定性の観点から、(C1)成分:不飽和重合体と(A)成分:チタノセン化合物との質量比((C1)/(A))は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。フィード性に関する貯蔵安定性、経済性、さらには前記水素添加用触媒組成物を用いて水添を行った水添ポリマーの黄変化抑制の観点から8以下であることが好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下がさらにより好ましい。
(C1)と(A)の質量比((C1)/(A))は、0.4〜5の範囲がより好ましく、0.5〜3の範囲がさらに好ましく、0.7〜2の範囲がさらにより好ましい。
また、本実施形態の製造方法において製造される水素添加用触媒組成物の水添活性や、取り扱い性(低粘度化)、フィード性に関する貯蔵安定性の観点から、(A)成分のチタノセン化合物1molに対する総(C1)成分:不飽和重合体中の側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の総量(mol)は、0.3mol以上であることが好ましく、ポリマーの黄変化抑制の点で、30mol以下であることが好ましい。また、0.5mol〜20molの範囲がより好ましく、1.0mol〜15molの範囲がさらに好ましく、2.0mol〜12molの範囲がさらにより好ましい。
【0045】
本実施形態において、前記(C)成分:不飽和化合物としては、上述したように、経済的に有利にオレフィン性不飽和二重結合含有化合物(オレフィン性不飽和二重結合を含有する重合体を含む)を水添可能であり、貯蔵安定性に優れ、フィード性が良好で、水添工程により無色性に優れた重合体を製造可能な観点から、分子中に不飽和基を1つ以上有する分子量400以下の化合物(C2)(以下、(C2)不飽和化合物、(C2)成分、成分(C2)、(C2)と記載する場合がある。)も好ましく用いることができる。 (C2)成分は、水素添加用触媒組成物の貯蔵後のフィード性の観点から、分子量が400以下であるものとし、300以下であることが好ましく、200以下がより好ましく、150以下がさらに好ましい。
(C2)成分:不飽和化合物は、所定のモノマーを重合することにより製造してもよい。
【0046】
前記モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等の一般に4〜約12個の炭化水素を有する共役ジエン、モノテルペン、ビニル芳香族化合物、ノルボルナジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、アセチレン類が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用し、共重合させてもよい。
【0047】
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法により得られる水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性と、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点から、不飽和化合物(C2)中の不飽和基量は、好ましい範囲が定まる。
すなわち、(C2)成分1mol中の不飽和基量は、水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性と、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点から、2mol以上であることが好ましい。水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性やフィード性、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性、水添したオレフィン化合物のポリマーの黄変化抑制の観点から5mol以下の範囲であることが好ましい。2mol以上4mol以下の範囲であることがより好ましく、2mol以上3mol以下の範囲がさらに好ましく、3molがさらにより好ましい。
(C2)中の不飽和基量は、NMRにより測定することができる。
【0048】
本実施形態の製造方法において調製される水素添加用触媒組成物の水添活性や、取り扱い性、フィード性に関する貯蔵安定性の観点から、(C2)成分:不飽和化合物と(A)成分:チタノセン化合物との質量比(=(C2)/(A))は、0.1以上であることが好ましく、フィード性に関する貯蔵安定性、経済性、さらには前記水素添加用触媒組成物を用いて水添を行った水添ポリマーの黄変化抑制の観点から8.0以下であることが好ましい。
(C2)と(A)の質量比(=(C2)/(A))は、調製される水素添加用触媒組成物の水添活性や、取り扱い性、フィード性に関する貯蔵安定性、経済性、水添ポリマーの黄変化抑制の観点から、0.1〜8の範囲が好ましく、0.1〜4の範囲がより好ましく、0.5〜3の範囲がさらに好ましく、1.0〜2.5の範囲がさらにより好ましい。
【0049】
上述したように、(C)不飽和化合物として、(C2)分子量が400以下の不飽和化合物を用いることにより、本実施形態の製造方法において調製される水素添加用触媒組成物は、貯蔵安定性に優れ、フィード性が良好で、かつ貯蔵後においてもフィード性が優れたものとなる。
また、(C2)の不飽和基量が(A)成分とのモル比において、上記範囲であることにより、水添対象である重合体中のオレフィン性不飽和二重結合以外への水素添加量を少なくすることができ、高い水添活性が得られる。
【0050】
((D)成分:極性化合物)
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、調製初期と貯蔵後の水添活性が高く、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製時の押出機のフィルター詰まり性の低減化を図る観点から、下記の(D)成分:極性化合物(以下、極性化合物(D)、(D)成分、(D)と記載する場合がある。)をさらに添加することが好ましい。
【0051】
(D)成分:極性化合物とは、N、OあるいはSを有する化合物であり、例えば、アルコール化合物、エーテル化合物、チオエーテル化合物、ケトン化合物、スルホキシド化合物、カルボン酸化合物、カルボン酸エステル化合物、アルデヒド化合物、ラクタム化合物、ラクトン化合物、アミン化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、エポキシ化合物及びオキシム化合物が挙げられる。
これら極性化合物としては、以下の化合物を具体例として挙げられる。
【0052】
前記アルコール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール及びその異性体、ヘプチルアルコール及びその異性体、オクチルアルコール及びその異性体、カプリルアルコール、ノニルアルコール及びその異性体、デシルアルコール及びその異性体、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等の一価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンチルグリコール、ヘキシルグリコール、ヘプチルグリコール及びこれらの異性体であるグリコール(二価アルコール)等が挙げられる。また、グリセリン等の三価アルコールやエタノールアミン、グリシジルアルコール等、一分子中に他の官能基を有するアルコール化合物であってもよい。
【0053】
前記エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエ−テル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、エチルフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、ピラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等が挙げられる。
また、テトラヒドロフランカルボン酸のように、分子中に他の官能基を有する化合物でもよい。
【0054】
前記チオエーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジ−n−ブチルスルフィド、ジ−sec−ブチルスルフィド、ジ−tert−ブチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、メチルエチルスルフィド、エチルブチルスルフィド、チオアニソール、エチルフェニルスルフィド、チオフェン、テトラヒドロチオフェン等が挙げられる。
【0055】
前記ケトン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アセトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジ−n−ブチルケトン、ジ−sec−ブチルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、ベンゾフェノン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、ベンジルフェニルケトン、プロピオフェノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセチル、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。
【0056】
前記スルホキシド化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ペンタメチレンスルホキド、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルホキシド、p−トリルスルホキシド等が挙げられる。
【0057】
前記カルボン酸化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキシルプロピオン酸、シクロヘキシルカプロン酸、安息香酸、フェニル酢酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、アクリル酸、メタアクリル酸等の一塩基酸、蓚酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、琥珀酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、ジフェン酸等の二塩基酸の他、トリメリット酸や、ピロメリット酸等の多塩基酸及びそれらの誘導体が挙げられる。また、例えば、ヒドロキシ安息香酸のように一分子中に他の官能基を有する化合物であってもよい。
【0058】
前記カルボン酸エステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキシルプロピオン酸、シクロヘキシルカプロン酸、安息香酸、フェニル酢酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、アクリル酸、メタアクリル酸等の一塩基酸、蓚酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、琥珀酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタル酸、ジフェン酸等の二塩基酸と、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール及びその異性体、ヘプチルアルコール及びその異性体、オクチルアルコール及びその異性体、カプリルアルコール、ノニルアルコール及びその異性体、デシルアルコ−ル及びその異性体、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、グリシジルアルコール等のアルコール類とのエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のβ−ケトエステルが挙げられる。
【0059】
前記ラクトン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及び下記の酸に対応するラクトン化合物が挙げられる。
すなわち、前記酸としては、例えば、2−メチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシノナン又は3−ヒドロキシペラルゴン酸、2−ドデシル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−シクロペンチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−n−ブチル−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−フェニル−3−ヒドロキシトリデカン酸、2−(2−エチルシクロペンチル)−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−メチルフェニル−3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ベンジル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2−メチル−5−ヒドロキシバレリル酸、3−シクロヘキシル−5−ヒドロキシバレリル酸、4−フェニル−5−ヒドロキシバレリル酸、2−ヘプチル−4−シクロペンチル−5−ヒオロキシバレリル酸、3−(2−シクロヘキシルエチル)−5−ヒドロキシバレリル酸、2−(2−フェニルエチル)−4−(4−シクロヘキシルベンジル)−5−ヒドロキシバレリル酸、ベンジル−5−ヒヂロキシバレリル酸、3−エチル−5−イソプロピル−6−ヒドロキシカプロン酸、2−シクロペンチル−4−ヘキシル−6−ヒドロキシカプロン酸、2−シクロペンチル−4−ヘキシル−6−ヒドロキシカプロン酸、3−フェニル−6−ヒドロキシカプロン酸、3−(3,5−ジエチル−シクロヘキシル)−5−エチル−6−ヒドロキシカプロン酸、4−(3−フェニル−プロピル)−6−ヒドロキシカプロン酸、2−ベンジル−5−イシブチル−6−ヒドロキシカプロン酸、7−フェニル−6−ヒドロキシル−オクトエノ酸、2,2−ジ(1−シクロヘキセニル)−5−ヒドロキシ−5−ヘプテノ酸、2,2−ジプロペニル−5−ヒドロキシ−5−ヘプテノ酸、2,2−ジメチル−4−プロペニル−3−ヒドロキシ−3,5−ヘプタジエノ酸等が挙げられる。
【0060】
前記アミン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−アミルアミン、sec−アミルアミン、tert−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、アニリン、ベンジルアミン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、α−ナフチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−n−アミルアミン、ジイソアミルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−エチル−o−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、N−エチル−p−トルイジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−アミルアミン、トリイソアミルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリベンジルアミン、トリフェニルメチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチル−o−トルイジン、N,N−ジエチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、ピリジン、ピペラジン、2−アセチルピリジン、N−ベンジルピペラジン、キノリン、モルホリン等が挙げられる。
【0061】
前記アミド化合物は、分子中に少なくとも一つの−C(=O)−N<又は−C(=S)−N<結合を有する化合物であり、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトアミド、プロピオンアミド、ベンツアミド、アセトアニリド、ベンツアニリド、N−メチルアセトアニリド、N,N−ジメチルチオホルムアミド、N,N−ジメチル−N,N’−(p−ジメチルアミノ)ベンズアミド、N−エチレン−N−メチル−8−キニリンカルボキシアミド、N,N−ジメチルイコチンアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N−メチルフタルイミド、N−フェニルフタルイミド、N−アセチル−ε−カプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルフタルアミド、10−アセチルフェノキサジン、3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノチアジン、10−アセチルフェノチアジン、3,7−ビス)ジメチルアミノ)−10−ベンゾイルフェノチアジン、N−エチル−N−メチル−8−キノリンカルボキシアミド等の他、N,N’−ジメチル尿素、N,N’−ジエチル尿素、N,N’−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル尿素、N,N−ジメチル−N’,N’−ジフェニル尿素等の直鎖状尿素化合物が挙げられる。
【0062】
前記ニトリル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエンモノオキシド、1,3−ブタジエンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、1,2−エポキシシクロドデカン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシオクタン、エチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、1,2−エポキシテトラデカン、ヘキサメチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,7−オクタジエンエポキシド、2−フェニルプロピレンオキシド、プロピレンオキシド、トランス−スチルベンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化アマニ油、グリシジルメチルエーテル、グリシジルn−ブチルエーテル、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタアクリレート、グルシジルアクリレート等を挙げることができる。
【0063】
前記オキシム化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、ジエチルケトンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、ベンジルフェニルケトンオキシム、シクロペンタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンズアルデヒドオキシム等が挙げられる。
【0064】
上述した(D)成分:極性化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
極性化合物としては、活性水素を有さない極性化合物が好ましく、その中でもアミン化合物やエーテル化合物がより好ましく、アミン化合物がさらに好ましい。
【0065】
本実施形態の製造方法において調製される水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性が高く、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機のフィルター詰まり性が低いという観点から、前記(D)成分と前記(A)成分との質量比(=(D)/(A))は0.01以上が好ましく、貯蔵安定性あるいは経済性の観点から2以下が好ましい。
前記(D)成分と前記(A)成分との質量比(=(D)/(A))は、0.01〜1の範囲がより好ましく、0.015〜0.50の範囲がさらに好ましく、0.020〜0.30の範囲がさらにより好ましく、0.015〜0.30の範囲がよりさらに好ましい。
【0066】
(混合方法)
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、上述した(A)成分、(B)成分及び(C)成分、必要に応じて(D)成分を、必要に応じて所定の溶媒を用い、混合する。
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、高い水添活性あるいは水添された不飽和二重結合含有化合物の製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点から、少なくとも(A)成分に、剪断速度が1,000(1/s)以上の剪断の力を加える。これを本明細書においては、「加力工程」と称する。
【0067】
<加力工程>
前記加力工程において、剪断力を加えるための装置としては、以下に限定されるものではないが、例えば、攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、あるいはポンプ等が挙げられる。
剪断速度は、高い水添活性あるいは水添された不飽和二重結合含有化合物の製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の観点から、1000(1/s)以上とし、3,000(1/s)以上が好ましく、10,000(1/s)以上がより好ましい。
ここで言う剪断速度とは、前記剪断力を加えるために用いる装置の剪断速度が最大となる箇所の剪断速度を指す。
例えば、一定速度で回転するローター(回転部)とステーター(固定部)を含む装置の剪断速度(Vs)は、ローターの周速度(Vu)を、ローターとステーター間の最小のギャップ(d)で除すること(Vs(1/s)=Vu/d)で求められる。
一般的には、ローターの周速度は外側程、高くなるため、ギャップ(d)が装置内の場所によらず一定であれば、ローターの最外周の周速度を(d)で除した値を本実施形態における剪断速度を定義する。
【0068】
剪断力を加える時間は、高い水添活性あるいは水添された不飽和二重結合含有化合物の製造時の押出機の低いフィルター詰まり性の点で、5分以上72時間以内が好ましい。20分以上48時間以内がより好ましく、2時間以内24時間以内がさらに好ましい。
【0069】
前記(A)成分が固体である場合、剪断力により、細かく粉砕することが好ましい。
【0070】
水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性が高く、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機のフィルター詰まり性が低いという観点から、前記(A)成分に対して剪断力を加えた後、前記(A)成分と、前記(B)成分を混合することが好ましい。
前記(B)を添加する際、(A)成分が固体である場合、(A)成分の平均粒子径は、水添活性や押出機のフィルター詰まり性の観点で、100μm以下が好ましい。50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、15μm以下がさらにより好ましい。
【0071】
なお、剪断力を加える際の(A)成分の状態は、特に限定されず、液体状、固液混合状あるいは固体状のいずれであってもよいが、取り扱い性の観点で、液体状あるいは固液混合状が好ましい。
【0072】
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の水添活性が高く、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機のフィルター詰まり性が低いという観点から、前記(A)成分及び前記(C)成分の混合物の存在下に、前記(B)成分を添加して混合する工程を有することがより好ましい。
【0073】
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、水素添加用触媒組成物の調製初期と貯蔵後の、いずれも水添活性が高く、水添された不飽和二重結合含有化合物の仕上げ時の押出機のフィルター詰まり性が低いという観点から、前記(A)成分及び前記(C)成分の混合物に対して加力工程を実施した後、あるいは当該加力工程中、前記(B)を添加し、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合する工程を有することがさらに好ましい。
【0074】
本実施形態の水素添加用触媒組成物の製造方法においては、調製初期と貯蔵後の、いずれも水添活性を高くし、水添された不飽和二重結合含有化合物の調製製造時の押出機の低いフィルター詰まり性を得る観点から、前記(A)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の混合物に対して、加力工程を実施した後、あるいは当該加力工程中、前記(B)成分を添加し、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を混合する工程を有することが好ましい。
【0075】
水素添加用触媒組成物は、予め被水添物の反応系とは別に触媒槽にて調製しておいてから、後述する被水添物が存在する反応系に導入してもよく、反応系に水素添加用触媒組成物の成分を別々に導入してもよい。
本実施形態の製造方法により得られる水素添加用触媒組成物は、貯蔵安定性に優れるため、別に触媒槽にて調製しておいてから、反応系に導入する方法に適している。
【0076】
被水添物が共役ジエン系重合体又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体である場合であって、当該重合体又は共重合体が、有機アルカリ金属又は有機アルカリ土類金属を開始剤とするリビングアニオン重合により製造されたものである場合は、水添工程の反応系に水素添加用触媒組成物の成分を導入する際、重合体又は共重合体の活性末端も、前記(B)成分として一部又は全部利用できる。
また、水素添加前であって、被水添物である重合体又は共重合体の重合後に、活性末端を一部又は全部を失活させておいてもよい。
反応系に水素添加用触媒組成物の成分を別々に導入する場合において、被水添物である重合体又は共重合体の活性末端に対する失活剤であって過剰分の失活剤が反応系中に存在する場合は、これらも(D)成分、あるいは(D)成分の一部とみなすことができる。
なお、かかる場合において、上述した(D)成分と(A)成分との質量比(=(D)/(A))は、過剰分の失活剤を(D)成分とみなして算出する。
【0077】
水素添加用触媒組成物の製造を、予め被水添物の反応系とは別に触媒槽にて行う場合の雰囲気は、不活性雰囲気であってもよく、水素雰囲気であってもよい。
製造温度ならびに水素添加用触媒組成物の貯蔵温度は、−50℃〜50℃の範囲が好ましく、−20℃〜30℃がより好ましい。
水素添加用触媒組成物の製造に要する時間は、製造温度によっても異なるが、25℃の条件下では、数秒から60日であり、1分から20日が好ましい。
【0078】
水素添加用触媒組成物の製造を、予め被水添物の反応系とは別に触媒槽にて行う場合、水素添加用触媒組成物を構成する(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分は、不活性有機溶媒中に溶解させた溶液として使用する方が扱い易く好適である。
溶液として用いる場合に使用する不活性有機溶媒は、水添反応のいかなる関与体とも反応しない溶媒を用いることが好ましい。好ましくは水添反応に用いる溶媒と同一の溶媒である。
【0079】
水素添加用触媒組成物の製造を、予め被水添物の反応系とは別に触媒槽にて行う場合、調製した水素添加用触媒組成物を、被水添物が収納されている水添反応器(水添槽)に移送するが、この際は、高い水添活性の観点から水素雰囲気下で行うことが好ましい。
移送する時の温度は、高い水添活性や水添ポリマーの黄変化抑制の観点から、−30℃〜100℃の温度が好ましく、より好ましくは−10℃〜50℃である。
また、高い水添活性の観点から、水素添加用触媒組成物は、被水添物に対して水添反応直前に添加するのが好ましい。
【0080】
高い水添活性及び水添選択性を発現するための各成分の混合比率は、成分(B)の金属モル数と、成分(A)の金属(Ti)モル数との比率(以下、Metal(B)/Metal(A)モル比)で約20以下の範囲であることが好ましい。
Metal(B)/Metal(A)モル比=0.5〜10の範囲となるように、成分(A)と成分(B)との混合比率を選択することにより、水素添加用触媒組成物の水添活性が向上するため、当該モル比が最も好適である。
【0081】
被水添物がリビングアニオン重合で得られたリビング重合体である場合は、リビング末端が還元剤として作用するため、リビング活性末端を有する重合体を水添する際は、前述した最適なMetal(B)/Metal(A)モル比を達成でき、より長時間の安定的な水添反応の観点から、種々の活性水素やハロゲンを有する化合物でリビング活性末端を失活させておくのがより好ましい。
前記活性水素を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水及びメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール,1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ラウリルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−アリルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、キシレノール、ジヒドロアントラキノン、ジヒドロキシクマリン、1−ヒドロキシアントラキノン、m−ヒドロキシベンジルアルコール、レゾルシノール、ロイコアウリン等のフェノール類が挙げられる。
また、酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酢酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、デカリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸等の有機カルボン酸等を挙げることができる。
また、ハロゲンを有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、塩化ベンジル、トリメチルシリルクロライド(ブロマイド)、t−ブチルシリルクロライド(ブロマイド)、メチルクロライド(ブロマイド)、エチルクロライド(ブロマイド)、プロピルクロライド(ブロマイド)、n−ブチルクロライド(ブロマイド)等を挙げることができる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
〔水素添加用触媒組成物〕
上述したように、(A):チタノセン化合物と、(B):Li、Na、K、Mg、Zn、Al、Ca元素からなる群より選ばれる少なくとも一つ以上の元素を含有する化合物と、(C):不飽和化合物とを用い、少なくとも前記(A)に、剪断速度が1000(1/s)以上の剪断力を加え、前記(A)、(B)、(C)を混合することにより、水素添加用触媒組成物が得られる。
【0083】
〔水素添加用触媒組成物を用いた水素添加方法〕
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物は、オレフィン性不飽和二重結合を有する全ての化合物である被水添物の水素添加を行う工程において用いることができる。
例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等や、これらの異性体等の脂肪族オレフィン;シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘキサジエン等の脂環式オレフィン;スチレン、ブタジエン、イソプレン等のモノマー類;不飽和脂肪酸及びその誘導体、不飽和液状オリゴマー等、分子中に少なくとも一つのオレフィン性不飽和二重結合含有低分子重合物等にも適用できる。
【0084】
また、本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物は、共役ジエン系重合体、共役ジエンとオレフィン単量体との共重合体におけるオレフィン性不飽和二重結合の選択的水添にも適用できる。
ここで言う選択的水添とは、共役ジエン系重合体、共役ジエンとオレフィン単量体との共重合体の、共役ジエン部分のオレフィン性不飽和二重結合を選択的に水添することであり、例えば、前記オレフィン単量体としてビニル芳香族化合物を用いた場合、芳香環の炭素−炭素二重結合は実質的に水添されないことを意味する。
共役ジエン系重合体、共役ジエンとオレフィン単量体との共重合体のオレフィン性不飽和二重結合の選択的水添物は、弾性体や熱可塑性弾性体として工業的に有用である。
【0085】
前記被水添物が共役ジエン系重合体や、共役ジエンの共重合体である場合、当該共役ジエンとしては、一般的には4〜約12個の炭素原子を有する共役ジエンが挙げられる。当該共役ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。
工業的に有利に展開でき、物性の優れた弾性体を得る観点からは、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
ブタジエン部分のミクロ構造には、1,2結合と1,4結合(シス+トランス)があるが、本実施形態の水素添加用触媒組成物は、どちらも定量的に水添することができる。
また、イソプレン部分には、1,2結合、3,4結合の側鎖と1,4結合(シス+トランス)の主鎖にオレフィン性不飽和結合があるが、本実施形態の製造方法により得られる水素添加用触媒組成物は、いずれも定量的に水添することができる。
本実施形態の水素添加用触媒組成物によって水添した化合物の構造及び水添率は、 1H−NMRによって測定することができる。
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物を用いた水素添加方法によると、ブタジエン部分の1,2結合、1,4結合、及びイソプレン部分の1,2結合、3,4結合の側鎖を特に選択的に水添させることができる。
水素添加用触媒組成物で水添される共役ジエン系重合体の主成分として、1,3−ブタジエンを選択した場合、特に低温から室温でエラストマー弾性を発現させるには、被水添物は、ブタジエンユニット部分のミクロ構造として1,2結合の量が8%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30〜80%である。
また、水素添加用触媒組成物で水添される被水添物の共役ジエン系重合体の主成分としてイソプレンを選択した場合には同様の理由により、被水添物は、イソプレンユニットのミクロ構造として、1,4結合の量が50%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上である。
【0086】
被水添物の共役ジエン単位の不飽和二重結合のみを選択的に水添する効果を十分に発揮し、工業的に有用で価値の高い弾性体や熱可塑性弾性体を得るためには、被水添物としては、共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素との共重合体を用いることが好ましい。
共役ジエンと共重合可能なビニル芳香族炭化水素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。特に、重合のし易さや経済性の観点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素との共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン/スチレン共重合体、イソプレン/スチレン共重合体、ブタジエン/イソプレン/スチレン共重合体等が、工業的価値の高い水添共重合体が得られるため好適である。これらの共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素との共重合体は、ランダム、ブロック、テーパードブロック共重合体等のいずれであってもよく、特に限定されない。
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物を用い、後述する好ましい水添条件を選択すると、かかる共重合体中のビニル置換芳香族炭化水素ユニットの炭素−炭素二重結合(芳香環)の水添は実質的に起こらない。
【0087】
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物を用いた水添反応は、被水添物を、不活性有機溶媒に溶解した溶液において水素と接触させて行うことが好ましい。
ここで言う「不活性有機溶媒」とは、溶媒が水添反応のいかなる関与体とも反応しないものを意味する。
不活性有機溶媒としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロヘプタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合物として用いてもよい。
また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素も、選択された水添条件下で芳香族二重結合が水添されない時に限って使用することができる。
水添反応は、一般的には、上記被水添物溶液を、水素又は不活性雰囲気下、所定の温度に保持し、撹拌下又は不撹拌下にて水素添加用触媒組成物を添加し、ついで水素ガスを導入して所定圧に加圧することによって実施される。不活性雰囲気とは、例えば、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の水添反応のいかなる関与体とも反応しない雰囲気を意味する。空気雰囲気や酸素雰囲気であると、水素添加触媒組成物を酸化し、失活を招来するため好ましくない。
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物は、貯蔵安定性に優れるため、水添反応を行う反応器に、被水添物と水素添加用触媒組成物とを連続的に供給する水素添加方法(連続水添)に好適である。
また、本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物は、バッチで水素添加する方法も使用できる。
【0088】
水添工程における、水素添加用触媒組成物の添加量は、成分(A)のモル量換算として、被水添物100gあたり、0.001〜20ミリモルが好ましい。
この添加量範囲であれば、被水添物が共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素との共重合体である場合、オレフィン性不飽和二重結合を優先的に水添することが可能で、共重合体中の芳香環の二重結合の水添は実質的に起こらないので極めて高い水添選択性が実現される。
水素添加用触媒組成物の添加量が、成分(A)のモル量換算として被水添物100gあたり20ミリモルを超える量としても、水添反応は行われるが、必要以上の水素添加用触媒組成物の使用は不経済であり、水添反応後の水素添加用触媒組成物の除去、脱灰が複雑となる等、工程上、不利となる。
また選択された条件下で重合体の共役ジエン単位の不飽和二重結合を定量的に水添する好ましい水素添加用触媒組成物の添加量は、成分(A)のモル量換算として、被水添加物100g当り0.01〜5ミリモル使用できる。
【0089】
水添反応は、ガス状の水素を水添反応槽に導入することが好ましい。
水添反応は、撹拌下で行われるのがより好ましく、これにより導入された水素を十分迅速に被水添物と接触させることができる。
【0090】
水添反応は、一般的に0〜200℃の温度範囲で実施される。
0℃未満では水添速度が遅くなり、多量の水素添加用触媒組成物を要するので経済的でなく、また200℃を超える温度では副反応や分解、ゲル化を併発し易くなり、水素添加用触媒組成物も失活するおそれがあり、水添活性が低下するため好ましくない。
より好ましい温度範囲は20〜180℃である。
【0091】
水添反応に使用される水素の圧力は、1〜100kgf/cm
2 が好適である。
1kgf/cm
2 未満では水添速度が遅くなり、水添率が不十分となる。100kgf/cm
2 を超える圧力では昇圧と同時に水添反応がほぼ完了し、不必要な副反応やゲル化を招くので好ましくない。
より好ましい水添水素圧力は2〜30kgf/cm
2 であるが、水素添加用触媒組成物の添加量等との相関で最適な水素の圧力は選択される。実質的には、前記水素添加用触媒組成物量が少量になるに従って水素圧力は高圧側を選択して実施するのが好ましい。
また、水添反応時間は通常数秒ないし50時間である。
水添反応時間及び水添圧力は所望の水添率によって上記範囲内で適宜選択する。
【0092】
上述した水添工程により、オレフィン化合物のオレフィン性不飽和二重結合、共役ジエン系共重合体及び共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体中のオレフィン性不飽和二重結合は目的に合わせて任意の水添率が得られる。
【0093】
本実施形態の製造方法により調製される水素添加用触媒組成物を用いて水添反応を行った後、水添物は、水添物が含有されている溶液から、蒸留、沈澱等の化学的又は物理的手段により容易に分離できる。
特に、被水添物が重合体である場合、水添反応を行った重合体溶液からは、必要に応じて水素添加用触媒組成物の残査を除去し、水添された重合体を溶液から分離することができる。
分離の方法としては、例えば、水添後の反応液にアセトン又はアルコール等の水添重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、水添後の反応液を、撹拌下で熱湯中に投入後、溶媒と共に蒸留回収する方法、又は直接反応液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
先ず、実施例、比較例において行った評価方法について下記に示す。
〔評価方法〕
<水添率>
実施例1〜18、実施例21〜34と、比較例1〜8、比較例11〜13はバッチで水添し、実施例19〜20、実施例35〜36、比較例9〜10、比較例14〜15は、連続水添を行った。
全ての実施例、比較例において、後述する水添添加用のポリマー溶液に対してTi量が150ppmになるように水素添加用触媒組成物を添加し、水素圧5kgf/cm
2、90℃、滞留時間30分で水添反応した時の水添率を下記NMRで測定した。
水素添加用触媒組成物を調製後、直後(初期)に用いた場合と、調製後に30℃30日間保管した後に用いた場合の両方を評価した。
水添率は高い方が良いと判断し、99.5%以上を◎、99.0%以上99.5%未満を○、97.0%以上99.0%未満を△、97%未満を×とした。
(NMR:水素添加率の測定方法)
共役ジエン中の不飽和基の水素添加率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。
水添反応後に、大量のメタノ−ル中に沈澱させることで、水添重合体を回収し、次いでアセトン抽出・真空乾燥を行い、1H−NMR測定を行った。
測定機器:JNM−LA400(JEOL製)
溶媒:重水素化クロロホルム
測定サンプル:後述する水素添加用のポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度:50mg/mL
観測周波数:400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅:45°
測定温度:26℃
【0096】
<押出機のフィルター詰まり性>
上記の水添率の測定に用いた、調製直後(初期)の水素添加用触媒組成物で水添反応を行った後の水添ポリマーに、安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添ポリマー100質量部に対して0.3質量部添加した。
ストリッピング用の水に、クラム化剤として、α−(p−ノニルフェニル)−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のジハイドロジエンリン酸エステルとモノハイドロジエンリン酸エステルとの混合物(ポリ(オキシエチレン)のオキシエチレン単位は平均値として9〜10)を20ppmになるように添加し、90〜98℃の温度でストリッピングし、溶媒を除去した。
溶媒除去を行った槽内の、前記ストリッピング後のスラリー中のポリマー濃度は約5質量%であった。
次いで、上記で得られたクラム状のポリマーの水分散体であるスラリーを、回転式スクリーンに送り、含水率約45質量%の含水クラムを得た。この含水クラムを1軸スクリュー押出機型水絞り機に送り、脱水した重合体を得た。
その後、前記で得られた重合体(水添ポリマー)を、2軸1段ベント押出機に供給し、シリンダー温度220℃、スクリュー回転数200回転/分、ベントの圧力約200mmHg絶対圧で押出し、乾燥した。
このとき、押出機先端部に付けた200メッシュのフィルターが詰まり、圧力20kgf/cm
2以上になるまでの時間が長い方が経済的で良いと判断し、以下の基準で評価した。
3時間以上が良く◎とし、2時間以上3時間未満が次に良く○、1時間以上2時間未満がその次に良く△とし、1時間未満は悪く×とした。
【0097】
実施例及び比較例において調製した水素添加用触媒組成物の構成成分について以下に示す。
【0098】
〔(A)成分〕
((A−1):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)の合成)
撹拌機、滴下漏斗、及び還流冷却器を備えた1L容量の三つ口フラスコ(以下、装置と記載する場合がある。)に無水エーテル200mLを加えた。
装置を乾燥ヘリウムで乾燥し、リチウムワイヤー小片17.4g(2.5モル)をフラスコ中に切り落とし、エーテル300mL、p−ブロモトルエン171g(1モル)の溶液を室温で少量滴下した後、還流下で除々にp−ブロモトルエンのエーテル溶液を全量加えた。
反応終了後、反応溶液をヘリウム雰囲気下にてろ過し、無色透明なp−トリルリチウム溶液を得た。
乾燥ヘリウムで置換した撹拌機、滴下漏斗を備えた2L三つ口フラスコ、ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド99.6g(0.4モル)、及び無水エーテル500mLを加えた。
先に合成したp−トリルリチウムのエーテル溶液を室温撹拌下にて約2時間で滴下した。
反応混合物を空気中でろ別し、不溶部をジクロロメタンで洗浄後、ろ液及び洗浄液を合わせ減圧下にて溶媒を除去した。
残留物を少量のジクロロメタンに溶解後、石油エ−テルを加えて再結晶を行った。
得られた結晶をろ別し、ろ液は再び濃縮させ上記操作を繰り返しビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)を得た。
収率は87%であった。
得られた結晶は橙黄色針状であり、トルエン、シクロヘキサンに対する溶解性は良好であり、融点145℃、元素分析値:C,80.0、H,6.7、Ti,13.3であった。
【0099】
((A−2):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(フェニル)の合成)
上述した(A−1)で使用したp−ブロモトルエンに代えてブロモベンゼン157g(1モル)用いた。その他の条件は、上述した(A−1)と同様に合成を行い、フェニルリチウムを得た。
当該フェニルリチウムを用い、上述した(A−1)と同様の工程により、ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルを得た。収量は120g(収率90%)であった。得られた結晶は橙黄色針状であり、トルエン、シクロヘキサンに対する溶解性はやや良好であり、融点147℃、元素分析値:C,79.5、H,6.1、Ti,14.4であった。
【0100】
((A−3):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(3,4−キシリル)の合成)
上述した(A−1)で使用したp−ブロモトルエンに代えて4−ブロモ−o−キシレン(1モル)を用いた。その他の条件は、上述した(A−1)と同様に合成を行い、ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(3,4−キシリル)を得た。収率は83%であった。得られた結晶は黄色針状晶であり、トルエン、シクロヘキサンに対する溶解性は良好であり、融点は155℃、元素分析値:C,80.6、H,7.2、Ti,12.2であった。
【0101】
((A−4):ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド)
日本ファインケミカル社製試薬をジクロロメタン中で再結晶させたものを用いた。
【0102】
〔(B)成分〕
(B−1):トリエチルアルミニウム;ヘキサン溶液(東ソー・アクゾ社製)をそのまま用いた。
(B−2):sec−ブチルリチウム;ヘキサン溶液(関東化学製試薬)を不活性雰囲気下で濾別し、黄色透明な部分を用いた。
【0103】
〔(C)成分〕
(C−PB):ポリブタジエンRicon142(Ricon社製、全体のオレフィン性不飽和二重結合量に対する、側鎖のオレフィン性不飽和二重結合量の分率が0.55、数平均分子量4000)を用いた。
(C−1):ミルセン
(C−2):イソプレン
(C−3):1,7−オクタジエン
【0104】
〔(D)成分〕
(D−1):テトラヒドロフラン
(D−2):N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン
【0105】
〔実施例1〜20〕、〔比較例1〜10〕
水素添加用触媒組成物を、下記のようにして調製した。
実施例1〜15、実施例18〜20、及び比較例1〜10は、下記表1に示す比率で、(A)成分、(C)成分、及び(D)成分を混合し、これらに対し、下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた。
実施例16は、下記表1に示す比率で、(A)成分と(C)成分を下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加え、その後に、(D)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた。
実施例17は、下記表1に示す比率で、(A)成分を下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加え、その後に、(C)成分と(D)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた。
【0106】
(実施例1〜4、7、9〜20に用いた剪断力を加えた装置と条件)
ホモジナイザー:ホモミクサーMARKII(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液1.5kg
回転数:1200rpm、剪断速度:3500(1/s)
【0107】
(実施例5に用いた剪断力を加えた装置と条件)
ホモジナイザー:ホモミクサーMARKII(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液1.5kg
回転数:12000rpm、剪断速度:35000(1/s)
【0108】
(実施例6、8に用いた剪断力を加えた装置と条件)
乳化分散機:キャビトロンCD1010(大平洋機工株式会社、商品名、7.5kw)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液100kg
回転数:5000rpm、剪断速度:51600(1/s)
【0109】
(比較例1〜10に用いた剪断力を加えた装置と条件)
乳化分散機:ホモディスパー(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液2.5kg
回転数:600rpm、剪断速度:126(1/s)
【0110】
〔実施例21〜36〕、〔比較例11〜15〕
水素添加用触媒組成物を、下記のようにして製造した。
実施例21〜28、実施例31〜36、及び比較例11〜15は、下記表2に示す比率で、(A)成分、(C)成分、及び(D)成分を混合し、これらに対し、下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた。
実施例29は、下記表2に示す比率で、(A)成分と(C)成分を下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加え、その後に、(D)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた。
実施例30は、下記表2に示す比率で、(A)成分を下記の装置を用い、かつ下記条件に従い、2時間剪断力を加え、その後に、(B)成分を添加し、続けて30分剪断力を加え、その後に、(C)成分と(D)成分を添加し、続けて30分剪断力を加えた
【0111】
(実施例21〜23、25、27〜36、に用いた剪断力を加えた装置と条件)
ホモジナイザー:ホモミクサーMARKII(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液1.5kg
回転数:1200rpm、剪断速度:3500(1/s)
【0112】
(実施例24に用いた剪断力を加えた装置と条件)
ホモジナイザー:ホモミクサーMARKII(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液1.5kg
回転数:12000rpm、剪断速度:35000(1/s)
【0113】
(実施例26に用いた剪断力を加えた装置と条件)
乳化分散機:キャビトロンCD1010(大平洋機工株式会社、商品名、7.5kw)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液100kg
回転数:5000rpm、剪断速度:51600(1/s)
【0114】
(比較例11〜15に用いた剪断力を加えた装置と条件)
乳化分散機:ホモディスパー(PRIMIX株式会社、商品名、0.2kW)
処理量:成分(A)の濃度が4質量%のシクロヘキサン溶液2.5kg
回転数:600rpm、剪断速度:126(1/s)
【0115】
〔水素添加用のポリマー〕
水素添加用のポリマーを下記のようにして調製した。
(スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の重合)
オートクレーブ中に、シクロヘキサン400kg、スチレンモノマー15kgとn−ブチルリチウム110g及びテトラヒドロフラン2.5kgを加え、撹拌下60℃にて3時間重合し、次いで1,3−ブタジエンモノマーを70kg加えて60℃で3時間重合した。
最後にスチレンモノマー15kgを添加し、60℃で3時間重合した。
活性末端を水で失活させた。
得られたスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体は完全ブロック共重合体で、スチレン含有量30質量%、ブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率45mol%、GPC(ポリスチレン換算分子量)で測定した重量平均分子量は約6万であった。
前記スチレン含有量、ブタジエン単位の1,2−ビニル結合含有率は、上記の水素添加率の測定に使用したNMRにより測定した。
【0116】
下記表1、表2に、ポリマーの水添率、及び押出機のフィルター詰まり性の評価について、それぞれ示した。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
なお、表1、表2中、(A)成分:(A−1)〜(A−4)、(B)成分:(B−1)、(B−2)、(C)成分:(C−PB)、(C−1)〜(C−3)、(D)成分:(D−1)、(D−2)は、下記に示すとおりである。
(A)成分
(A−1):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(p−トリル)
(A−2):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(フェニル)
(A−3):ビス(η(5)−シクロペンタジエニル)チタニウムジ(3,4−キシリル)
(A−4):ビス(η(5)−1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド
(B)成分
(B−1):トリエチルアルミニウム
(B−2):sec−ブチルリチウム
(C)成分
(C−PB):ポリブタジエン
(C−1):ミルセン
(C−2):イソプレン
(C−3):1,7−オクタジエン
(D)成分
(D−1):テトラヒドロフラン
(D−2):N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン
【0120】
実施例1〜36において調製した水素添加用触媒組成物を用いた場合、水添活性が高く、水添されたポリマーの製造時の押出機のフィルター詰まり性が低減化できることが分かった。
【0121】
本出願は、2012年10月24日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2012−235006)及び(特願2012−235009)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。