特許第6240115号(P6240115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240115金属ナノ粒子を合成する方法、コア−シェルナノ粒子を含む電極及び当該電極を有する電気化学セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240115
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】金属ナノ粒子を合成する方法、コア−シェルナノ粒子を含む電極及び当該電極を有する電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/04 20060101AFI20171120BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171120BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20171120BHJP
【FI】
   B22F9/04 Z
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   H01M10/054
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-54673(P2015-54673)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-178677(P2015-178677A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】14/219,831
(32)【優先日】2014年3月19日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニクヒレンドラ・シング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ポール・ロー
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/162234(WO,A1)
【文献】 特開2005−228589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00〜9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子を合成する方法であって、
界面活性剤をコア試薬錯体に加えてコアナノ粒子を生成することであって、前記コア試薬錯体は式I
【化1】
によって表され、ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値であることと、
コアナノ粒子の存在下で界面活性剤をシェル試薬錯体に加えることであって、前記シェル試薬錯体は式II
【化2】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値であることと、を包含する方法。
【請求項2】
coreおよびMshellはそれぞれ、ゼロ価遷移金属およびゼロ価ポスト遷移金属を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
coreおよびMshellはそれぞれ、スズおよびビスマスを含む群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
coreはスズであり、Mshellはビスマスである、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年10月4日に出願された特許出願第14/046,120号の一部継続出願であり、該出願は本明細書においてその全体が参考のため援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に2つ以上のゼロ価金属を含有するナノ粒子を合成する方法に関し、また一般にこのようなナノ粒子を含む電極、およびこのような電極を含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
金属ナノ粒子は、大きさが100nm未満の純粋なまたは合金形態の元素金属の粒子であって、対応するバルク金属に比べて、特異な物理的、化学的、電気的、磁気的、光学的、およびその他の特性を有する。このため、とりわけ化学、医薬、エネルギー、および先端電子工学などの分野で用いられているかまたは開発中である。
【0004】
金属性ナノ粒子の合成方法は、典型的には、「トップダウン」または「ボトムアップ」であるとして特徴付けられ、様々な化学的、物理的、さらには生物学的なアプローチを含む。トップダウンの技法は、マクロスケールまたはバルクの金属を様々な物理的な力を用いてナノスケールの粒子へと物理的に分解することを伴う。ボトムアップの方法は、遊離原子、分子、またはクラスターからナノ粒子を形成することを伴う。
【0005】
トップダウンの金属ナノ粒子合成のために物理的な力を用いる方法としては、マクロスケール金属粒子のミリング粉砕、マクロスケール金属のレーザアブレーション、およびマクロスケール金属の放電加工がある。ボトムアップ合成の化学的なアプローチは、一般に、核生成種粒子回りでの成長、または自己核生成および金属ナノ粒子への成長、と結びついた、金属塩のゼロ価金属への還元を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの方法の各々が一定の環境では効果的であり得る一方で、欠点または状況不適応性を有する。直接ミリング法は、得られ得る粒子のサイズに制限があり(約20nmより小さい粒子の生成は難しいことが多い)また合金の化学量論比率の制御を失うことになり得る。他の物理的方法は費用が掛かるか、または工業規模になじまないことがある。
【0007】
化学的還元技法は、金属カチオンが還元に耐性がある状況では失敗し得る。例えばMn(II)は化学的還元に影響されないのは有名である。従来の化学的還元アプローチはまた、酸化に非常に影響されやすい適用例のためのナノ粒子の生成には不適切であり得る。例えばスズナノ粒子は、20nm未満のサイズで還元アプローチから得るのは難しく、例え得られてもSnOを大きな比率で含む傾向となり得る。
【0008】
スズは電池電極にとって有望な材料である。例えば、Liイオン電池のアノードとして、スズは、一般に使用されるグラファイトアノードの充電密度の約3倍蓄積することができる。最近は、スズベースの材料が、高エネルギー密度Mgイオン電池のためのMgイオン挿入タイプのアノードとしての使用に大いに有望であることが示されている。特に、約100nmのスズ粉末から製造されたアノード材料が、高容量および低挿入/脱離電圧を実現している。
【0009】
ビスマスのマグネシウム化が起こると、これはビスマスベースのアノードを有するMgイオン電池の動作中に起こり得るが、超イオン伝導性材料MgBiが形成されると考えられる。これに対して、マグネシウム化したスズは超イオン伝導性材料を形成せず、上述のように可能出力率が低くなりがちである。スズ−ビスマスのコア−シェルナノ粒子などの、スズおよびビスマス両方の有益な特性を組み込んだアノード活物質は、電気化学セル一般、および特にMgイオン電気化学セルの性能を向上させる能力を有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
新規の試薬を介して金属ナノ粒子を合成する方法が提供される。開示された方法によって合成されたコア−シェル金属ナノ粒子を含む電極もまた提供される。このような電極を用いる電気化学セルがさらに提供される。
【0011】
1つの態様では、金属ナノ粒子を合成する方法が開示される。本方法は、界面活性剤をコア試薬錯体に加えてコアナノ粒子を生成するステップであって、前記コア試薬錯体は式I
【0012】
【化1】
【0013】
によって表され、ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値であるステップを包含する。本方法はまた、コアナノ粒子の存在下で界面活性剤をシェル試薬錯体に加えるステップであって、前記シェル試薬錯体は式II
【0014】
【化2】
【0015】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値であるステップを包含する。
【0016】
別の態様では、コア−シェル金属ナノ粒子を含む電極が開示される。本電極が含むコア−シェル金属ナノ粒子は、界面活性剤をコア試薬錯体に加えてコアナノ粒子を生成することであって、前記コア試薬錯体は式I
【0017】
【化3】
【0018】
によって表され、ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値であることを包含する方法によって合成される。該方法はまた、コアナノ粒子の存在下で界面活性剤をシェル試薬錯体に加えるステップであって、前記シェル試薬錯体は式II
【0019】
【化4】
【0020】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値であるステップを包含する。
【0021】
別の態様では、電気化学セルが開示される。本電気化学セルは、コア−シェル金属ナノ粒子を含む電極を有する。該電極が含むコア−シェル金属ナノ粒子は、界面活性剤をコア試薬錯体に加えてコアナノ粒子を生成することであって、前記コア試薬錯体は式I
【0022】
【化5】
【0023】
によって表され、ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値であることを包含する方法によって合成される。該方法はまた、コアナノ粒子の存在下で界面活性剤をシェル試薬錯体に加えるステップであって、前記シェル試薬錯体は式II
【0024】
【化6】
【0025】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値である方法を包含する。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明の様々な態様および利点は、添付の図面と併せて示される実施形態の以下の説明から明らかとなりまたより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ここで述べる方法によって合成されたスズナノ粒子のX線回折スペクトルである。
図2A】Sn粉末のX線光電子スペクトルである。
図2B】ここで述べるプロセスによって調製されたSn・(LiBH錯体のX線光電子スペクトルである。
図2C図2AのSn粉末のX線スペクトルと、図2図2Bのプロセスによって調製されたSn・(LiBH錯体のX線光電子スペクトルとを重ねたものである。
図3】ここで述べる方法によって合成されたSn−Biコア−シェルナノ粒子を含むアノードを有するMgイオン電気化学セルに対する第1サイクルマグネシウム化曲線である。
図4】ここで述べる方法によって合成されたBi−Snコア−シェルナノ粒子を含むアノードを有するMgイオン電気化学セルに対する第1サイクルマグネシウム化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
金属ナノ粒子を合成する方法、このように合成されたナノ粒子、およびナノ粒子を含む電気化学装置について述べる。以下に説明するように、この方法は、界面活性剤と、ゼロ価金属および水素化物を含む新規の試薬錯体との間の反応を伴う。「ゼロ価金属」は、代替的に元素金属または酸化状態がゼロの金属として表現され得る。新規の試薬錯体は代替的に錯体として表現され得る。
【0029】
ここで用いる「金属」は、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属、またはポスト遷移金属を指し得る。語句「遷移金属」は、第3〜12族のいかなるDブロック金属を指し得る。語句「ポスト遷移金属」は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、またはビスマスを含む第13〜16族のいかなる金属を指し得る。いくつかの変形例では、金属は遷移金属またはポスト遷移金属であり、いくつかの例では、金属はスズである。
【0030】
ここで用いる「水素化物」は、固形金属水素化物(例えば、NaHまたはMgH)、半金属水素化物(例えば、BH)、錯体金属水素化物(例えば、LiAlH)、または塩水素化物とも呼ばれる塩半金属水素化物(例えば、LiBH)であり得る。用語「半金属」は、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルリウム、またはポロニウムのいずれかを指し得る。いくつかの例において、水素化物はLiBHである。錯体金属水素化物および塩半金属水素化物よりなる群に属するいかなるものは「錯体水素化物」と呼び得る。ここで用いる水素化物という用語はまた、対応する重水素化物またはトリチウム化物も包含し得ることを理解されたい。
【0031】
金属ナノ粒子を合成する方法は、界面活性剤をコア試薬錯体に加えてコアナノ粒子を生成するステップを含み、コア試薬錯体は式I
【0032】
【化7】
【0033】
によって表され、ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい整数または小数値である。場合によっては、yは4以下の整数または小数値となる。
【0034】
金属ナノ粒子を合成する方法は、界面活性剤を、コアナノ粒子の存在下でシェル試薬錯体に加える別のステップを含み、シェル試薬錯体は式II
【0035】
【化8】
【0036】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値である。多くの場合、yは0より大きく且つ4以下の値であり得る。yによって表される値は、整数値または2.5などの小数値であり得る。上記2つのステップで使用される界面活性剤は、アイデンティティが同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
本方法のいくつかの変形例においては、McoreおよびMshellはスズおよびビスマスよりなる群から選択される。いくつかのこのような変形例では、Mcoreがスズであり、Mshellがビスマスである。他のこのような変形例では、Mcoreがビスマスであり、Mshellがスズである。
【0038】
いかなる特定の説に束縛されることなく、2つのステップを有する上記の方法によって生成される金属ナノ粒子はコア−シェル金属ナノ粒子であると考えられる。ここで用いる語句「コア−シェル」は、Mcoreに関連するゼロ価金属がナノ粒子の質量中心で濃縮され、一方、Mshellに関連するゼロ価金属が表面で濃縮される特性を指す。場合によっては、語句「コア−シェル」は、Mcoreに関連するゼロ価金属の個々のコアが、Mshellに関連するゼロ価金属の個々の層で部分的にまたは完全に表面被覆される構造を指し得る。よって、開示した方法によって合成された金属ナノ粒子は、ここでは「コア−シェル金属ナノ粒子」と呼ばれることがある。
【0039】
任意選択に、上述の第2のステップは、複数のシェル層を持つナノ粒子を合成するために繰り返すことができる。シェル試薬錯体および界面活性剤を連続して使用する場合には、次の使用では、直前に使用されたシェル試薬錯体と比べて異なるMshellを有するシェル試薬錯体を利用すべきである。
【0040】
ここで用いる用語「試薬錯体」は、コア試薬錯体、シェル試薬錯体、または両方を指し得る。試薬錯体は、1つ以上の水素化物分子と複合した酸化状態ゼロの単一の金属原子などの、個々の分子的実体の錯体であり得る。あるいは、試薬錯体は、水素化物分子が散在している酸化状態ゼロの金属原子のクラスター、または酸化状態ゼロの金属原子クラスターであって、クラスター全体に散在している水素化物分子または水素化塩で表面被覆されたクラスターなどの分子クラスターとして存在し得る。
【0041】
金属ナノ粒子を合成する方法のいくつかの態様では、試薬錯体は溶媒または溶媒系と懸濁接触し得る。いくつかの変形例では、適切な溶媒または溶媒系は、試薬錯体の懸濁液が不活性環境で少なくとも1日の間安定するものを含む。いくつかの変形例では、適切な溶媒または溶媒系は、試薬錯体の懸濁液が不活性環境で少なくとも1時間の間安定するものを含む。いくつかの変形例では、適切な溶媒または溶媒系は、試薬錯体の懸濁液が不活性環境で少なくとも5分の間安定するものを含む。
【0042】
ここで用いる語句「不活性環境」は、無水の大気環境を含み得る。ここで用いる語句「不活性環境」は、無酸素の大気環境を含み得る。ここで用いる語句「不活性環境」は、無水且つ無酸素の大気環境を含み得る。ここで用いる語句「不活性環境」は、アルゴンなどの不活性ガスを含む雰囲気中への封じ込め、または真空下の空間内への封じ込めを含み得る。
【0043】
語句「試薬錯体がある期間安定する」で用いられる用語「安定」は、試薬錯体が目につくほどに分離または共有結合変換しないことを意味し得る。
【0044】
ここで開示される特定の様々な態様で用いられる溶媒または溶媒系は、試薬錯体に含まれる水素化物に対して無反応な材料であり得る。上記語句「水素化物に対して無反応な材料」で用いられる用語「無反応」は、材料、すなわち溶媒または溶媒系が、熱力学的に有意な程度に試薬錯体の水素化物の共有結合反応に直接加わるかまたはこれを引き起こすことはないことを意味し得る。このような基準によれば、適切な溶媒または溶媒系は、使用されている水素化物に依存して変動し得る。いくつかの変形例では、これは、非プロトン性、非酸化性、またはこれらの両方である溶媒または溶媒系を含み得る。
【0045】
適切な溶媒または溶媒系成分の例としては、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、1−ブタノール、2−ブタノール、2−ブタノン、t−ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジグライム(ジエチレングリコール,ジメチルエーテル)、1,2−ジメトキシ−エタン(グライム、DME)、ジメチルエーテル、ジメチル−ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、エチルアセテート、エチレングリコール、グリセリン、ヘプタン、ヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ヘキサン、メタノール、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、塩化メチレン、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ニトロメタン、ペンタン、石油エーテル(リグロイン)、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、トリエチルアミン、o−キシレン、m−キシレン、またはp−キシレンがあり得るが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの例ではハロゲン化アルキル溶媒が、いくつかの例ではアルキルスルホキシドが、他の例ではエーテル性溶媒が許容され得るが、これらに限定されない。いくつかの変形例では、THFが適切な溶媒または溶媒系成分であり得る。
【0047】
金属ナノ粒子を合成する方法のいくつかの態様では、界面活性剤を溶媒または溶媒系中に懸濁または溶解させ得る。試薬錯体が溶媒または溶媒系と懸濁接触し、界面活性剤が溶媒または溶媒系中に懸濁または溶解する異なる変形例では、試薬錯体は、界面活性剤が溶解または懸濁する溶媒または溶媒系に対して同じまたは異なる組成の溶媒または溶媒系と懸濁接触し得る。
【0048】
金属ナノ粒子を合成する方法のいくつかの態様では、試薬錯体は、溶媒の不在下で界面活性剤と結合し得る。いくつかのこのような場合には、このような結合の後で溶媒または溶媒系を加えることができる。他の態様では、溶媒または溶媒系中に懸濁または溶解していない界面活性剤を、溶媒または溶媒系と懸濁接触している試薬錯体に加えることができる。さらに別の態様では、溶媒または溶媒系中に懸濁または溶解している界面活性剤を、溶媒または溶媒系と懸濁接触していない試薬錯体に加えることができる。
【0049】
ここで用いる語句「界面活性剤」は、コア−シェルナノ粒子を合成する方法に対して開示されたステップのいずれかまたは両方で用いられる界面活性剤を指し得る。界面活性剤は当該分野において既知のいかなるものであってもよい。利用可能な界面活性剤としては、非イオン、陽イオン、陰イオン、両性、双性、および高分子界面活性剤、ならびにこれらの組み合わせを含み得る。このような界面活性剤は、典型的には、炭化水素ベース、有機シランベース、またはフッ化炭素ベースの脂肪親和性部分を有する。適切であり得る界面活性剤のタイプの例としては、硫酸およびスルホン酸アルキル、石油およびリグニンスルホン酸塩、リン酸エステル、スルホコハク酸エステル、カルボン酸エステル、アルコール、エトキシ化アルコールおよびアルキルフェノール、脂肪酸エステル、エトキシ化酸、アルカノールアミド、エトキシ化アミン、酸化アミン、アルキルアミン、ニトリル、第四アンモニウム塩、カルボキシベタイン、スルホベタイン、または高分子界面活性剤があるが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの例では、金属ナノ粒子を合成する方法で用いられる界面活性剤は、試薬錯体に含まれる水素化物を酸化、プロトン化、もしくは共有結合修飾することができるものである。いくつかの変形例では、界面活性剤はカルボン酸塩、ニトリル、またはアミンであり得る。いくつかの実施例では、界面活性剤はオクチルアミンであり得る。
【0051】
いくつかの変形例では、金属ナノ粒子を合成する方法は、無水環境、無酸素環境、または無水および無酸素の環境下で行われ得る。例えば、金属ナノ粒子を合成する方法はアルゴンガスまたは真空下で行われ得る。ゼロ価金属Mは金属酸化物などのいくつかの不純物を含み得るが、金属ナノ粒子を合成する方法は、いくつかの例では、酸化物種を含まない純金属ナノ粒子を生成することができる。このような例を図1の、本方法によって生成されたゼロ価スズナノ粒子のX線回折スペクトルで示す。尚、図1の回折スペクトルは、酸化物を含まない純粋なゼロ価のスズを示し、また平均最大粒子寸法11nmを測定していることを理解されたい。
【0052】
試薬錯体はいかなる適切なプロセスによって生成することができる。試薬錯体を調製する適切なプロセスの例としては、水素化物をゼロ価金属よりなる調製物と共にボールミル粉砕を行うステップを含むが、これに限定されない。試薬錯体生成のこのステップを用いるプロセスをここでは「実例プロセス」と呼ぶことにする。多くの例では、実例プロセスで用いられるゼロ価金属よりなる調製物は高い表面積対質量比率を有する。いくつかの例では、ゼロ価金属よりなる調製物は金属粉末である。ゼロ価金属よりなる調製物は有孔率の高い金属、ハニカム構造の金属、または表面積対質量比率が高い他の調製物であり得ることが考えられる。
【0053】
いくつかの例では、ゼロ価金属を含有する調製物はゼロ価遷移金属を含み得る。適切な遷移金属としは、カドミウム、コバルト、銅、クロム、鉄、マンガン、金、銀、白金、チタン、ニッケル、ニオビウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、スカンジウム、バナジウム、および亜鉛を含むがこれらに限定されない。いくつかの例では、ゼロ価金属を含有する調製物は、ゼロ価ポスト遷移金属を含み得る。適切なポスト遷移金属としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、またはビスマスを含み得る。
【0054】
ゼロ価金属は、それが遷移金属、ポスト遷移金属、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属であろうと、酸化状態でゼロであることは理解されたい。ここで用いる「ゼロ価」および「酸化状態でゼロ」は、材料が実質的なしかし必ずしも完全ではないゼロ酸化状態を示し得ることを意味するとされる。例えば、ゼロ価金属を含有する調整物は、酸化物などのいくつかの表面不純物を含み得る。
【0055】
語句「高い表面積対質量比率」とは幅広い範囲の表面積対質量比率を包含し、通常は、用いられるゼロ価金属よりなる調製物の表面積対質量比率が実例プロセスの時間制約によって必要とされるものであると考えられる。多くの例では、ゼロ価金属よりなる調製物の表面積対質量比率が高いほど、実例プロセスの完了がより速くなる。ゼロ価金属よりなる調製物が例えば金属粉末である場合は、金属粉末の粒径が小さいほど、実例プロセスの完了およびこれに伴う試薬錯体の生成がより速くなる傾向となり得る。
【0056】
実例プロセスで使用するのに適した水素物の例としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化トリエチルホウ素リチウム(超水素化物)、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化リチウム、またはボロンがあるがこれらに限定されない。
【0057】
実例プロセスのいくつかの変形例では、水素化物は、水素化物分子対金属原子の化学量論比1:1でゼロ価金属よりなる調製物と混合され得る。他の変形例では、化学量論比は2:1、3:1、4:1、またはこれより高くすることができる。いくつかの変形例では、ゼロ価金属よりなる調製物中の水素化物分子対金属原子の化学量論比はまた、2.5:1などの小数量を含み得る。試薬錯体の生成のために実例プロセスを用いる場合は、実例プロセスでの混合物の化学量論は、式Iによる錯体のyの値で示されるものとしての化学量論を制御する傾向にあることは理解されたい。
【0058】
実例プロセスで使用されるボールミルはいかなるタイプのものでもよいと考えられる。例えば、用いられるボールミルはドラムボールミル、ジェットミル、ビーズミス、横型ロータリーボールミル、振動ボールミル、または遊星ボールミルであり得る。いくつかの例では、実例プロセスで用いられるボールミルは遊星ボールミルである。
【0059】
実例プロセスで使用されるボールミル粉砕媒体はいかなる組成であってもよいと考えられる。例えば、用いられるボールミル粉砕媒体は、ステンレススチール、真鍮、もしくは硬化鉛などの金属よりなるか、またはアルミナもしくはシリカなどのセラミックよりなってもよい。いくつかの変形例では、実例プロセスでのボールミル粉砕媒体はステンレススチールである。ボールミル粉砕媒体は様々な形状、例えば円柱状または球状であり得ることは理解されたい。いくつかの変形例では、ボールミル粉砕媒体は球状である。
【0060】
任意選択に、様々な解析的技法を用いて実例プロセスを監視しまたそれが成功裏に完了したことを決定することができる。X線光電子分光法(XPS)およびX線回折(XRD)などのいくつかのこのような技法について以下に述べるが、当該分野で有用であると知られているいかなる解析的アプローチも任意選択に用いることができる。
【0061】
元素スズ粉末および試薬錯体Sn・(LiBHに対して、スズ領域でのXPSスキャンをそれぞれ図2Aおよび図2Bに示す。図2Aおよび図2Bにおいて、太い実線は生のXPSデータを、細い実線は調整後データを示す。破線および/または点線は、スペクトルの個々のデコンボリューションされたピークを示す。デコンボリューションされたピーク最大値の電子ボルトの中心点を矢印で示す。
【0062】
図2Cは、図2Aからの錯体を形成していないスズの調整後スペクトル(点線)の、図2BからのSn・(LiBH錯体の調整後スペクトル(実線)との重ね合わせを示す。図2Cで分かるように、ゼロ価スズと水素化ホウ素リチウムとの間の錯体形成の結果、新しいピークが出現し、またスペクトルがゼロ価金属の確認電子の電子エネルギーの低い方へ全体的に移行している。試薬錯体を実例プロセスによって調製するいくつかの例では、試薬錯体に含まれるゼロ価金属のX線光電子スペクトルは、錯体を形成していないゼロ価金属のスペクトルに比べて、低エネルギーの方へ全体的に移行する。いくつかの例では、MがスズでXが水素化ホウ素リチウムである試薬錯体は、中心が約484eVのX線光電子分光法ピークの存在によって識別することができる。
【0063】
いくつかの変形例では、実例プロセスは無水環境、無酸素環境、または無水および無酸素環境下で行われ得る。例えば、実例プロセスはアルゴンガスまたは真空下で行われ得る。この任意選択的特徴は、例えば、実例プロセスで使用する水素化物が、分子酸素、水、または両方に影響されやすい水素化物であるときに含めることができる。
【0064】
上述の方法によって合成されたコア−シェル金属ナノ粒子を含む電池電極について開示する。上述のように、スズベースのアノードを用いるMgイオン電池は、従来のLiイオン電池に対する高エネルギー密度の代替物として有望であることが示されている(N.Singhら、Chem.Commun.、2013、49、149−151;ここではその全体が参考として援用される)。特に、約100nmのSn粉末に基づくスズアノードは、このようなシステムにおいて目覚ましい容量および挿入/脱離電圧を示している。当該アノードのスズナノ構造が飛躍的に縮小すると、当該システムの可能出力率およびサイクル性を向上させることができるが、無酸素のスズナノ粒子を必要とする。ここに開示し図1に示す11nmの無酸素スズナノ粒子などのナノ粒子は、このような電池システムにおいて有用なアノード材料となることができる。加えて、スズのコア回りにビスマスのシェルを形成することによって、スズの低いイオン拡散速度によって生じる欠陥を、マグネシウム化ビスマスの超伝導特性を利用することで緩和することが可能となる。
【0065】
電極は、上記に開示したコア−シェルナノ粒子を合成する方法によって合成されたコア−シェルナノ粒子を含む活性物質を含み得る。この方法は、界面活性剤を式Iによる試薬錯体に加えるステップを含み、
【0066】
【化9】
【0067】
ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値である。多くの場合、yは0より大きく且つ4以下の値であり得る。yによって表される値は、整数値または2.5などの小数値であり得る。このステップの産物は「コアナノ粒子」と呼ぶことができる。
【0068】
電極が含むコア−シェル金属ナノ粒子の合成は、界面活性剤を、コアナノ粒子の存在下でシェル試薬錯体に加える追加のステップを含み、シェル試薬錯体は式II
【0069】
【化10】
【0070】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値である。多くの場合、yは0より大きく且つ4以下の値であり得る。yによって表される値は、整数値または2.5などの小数値であり得る。上記2つのステップで使用される界面活性剤は、アイデンティティが同じであっても異なっていてもよい。いくつかの例では、McoreおよびMshellはそれぞれSnおよびBiであり得
る。他の例では、McoreおよびMshellはそれぞれBiおよびSnであり得る。
【0071】
電極はいかなる適切な技法、例えば、圧紛膜法によって製造することができ、カーボンブラックおよび結合剤などの非活性物質を含むことができる。いくつかの例では、電極は平均最大寸法が50nm未満の金属ナノ粒子を含み得る。いくつかの例では、電極は平均最大寸法が20nm未満の金属ナノ粒子を含み得る。いくつかの例では、電極は平均最大寸法が約10nmの金属ナノ粒子を含み得る。いくつかの例では、電極は平均最大寸法が10nm未満の金属ナノ粒子を含み得る。
【0072】
電極は遷移金属またはポスト遷移金属のナノ粒子を含むことができる。いくつかの変形例では、電極はスズナノ粒子を含み得る。いくつかの特定の変形例では、電極は平均最大寸法が約10nmスズナノ粒子を含み得る。
【0073】
また、上記に開示したタイプの電極を有する電気化学セルが開示される。上述のように、電極が含むコア−シェルナノ粒子は、界面活性剤を式Iによる試薬に加えるステップを含む方法によって合成され、
【0074】
【化11】
【0075】
ここでMcoreはゼロ価金属であり、Xは水素化物分子であり、yは0より大きい値である。多くの場合、yは0より大きく且つ4以下の値であり得る。yによって表される値は、整数値または2.5などの小数値であり得る。このステップの産物は「コアナノ粒子」と呼ぶことができる。
【0076】
電気化学セル内に含まれる電極が含むコア−シェルナノ粒子の合成は、界面活性剤を、コアナノ粒子の存在下でシェル試薬錯体に加える追加のステップを含み、シェル試薬錯体は式II
【0077】
【化12】
【0078】
によって表され、ここでMshellはMcoreとは異なる原子番号のゼロ価金属であり、
X’はXと比べてアイデンティティが同じであっても異なっていてもよい水素化物分子であり、yは0より大きい値である。多くの場合、yは0より大きく且つ4以下の値であり得る。yによって表される値は、整数値または2.5などの小数値であり得る。上記2つのステップで使用される界面活性剤は、アイデンティティが同じであっても異なっていてもよい。いくつかの例では、McoreおよびMshellはそれぞれSnおよびBiであり得
る。他の例では、McoreおよびMshellはそれぞれBiおよびSnであり得る。
【0079】
上記の電気化学セルの電極は、アノードであってもカソードであってもよいが、いくつかの特定の場合ではアノードであり得る。このような特定の場合では、電極は挿入タイプのアノードであり得る。電気化学セルはいかなる電気化学反応でも用いることができ、またリチウムイオン電池で使用可能なリチウムセルなどの電池での使用に適したタイプ、または水素燃料セルなどの燃料セルとしての使用に適したタイプであることができる。
【0080】
いくつかの例では、電気化学セルは、反応I
【0081】
【化13】
【0082】
によって部分的に表されるタイプの一般的な半電池反応を有する、マグネシウム電気化学セルすなわちMgイオン電気化学セルであり得る。
【0083】
いくつかの特定の例では、電気化学セルは、本開示により合成されたナノ粒子を含む挿入タイプのアノードを有し、また反応II
【0084】
【化14】
【0085】
による有効な半電池反応を含むMgイオン電気化学セルであり得、ここで、Mは、本開示によるコア−シェル金属ナノ粒子のシェル層へと組み込まれたゼロ価金属を表し、χは0より大きい整数値であり得る化学量論的量であり、ωは0より大きい整数値であり得る化学量論的量である。このような特定の例では、χは1、2、および3のいずれかであり、またωは1、2、および3のいずれかであり得る。
【0086】
いくつかの別の特定の例では、電気化学セルは、本開示により合成されたスズ−ビスマスのコア−シェルナノ粒子またはビスマス−スズのコア−シェルナノ粒子を含む挿入タイプのアノードを有し、また反応IIIおよび反応IV
【0087】
【化15】
【0088】
の少なくとも一方による有効な半電池反応を含むMgイオン電気化学セルであり得る。
本開示の様々な態様を以下の実施例に関してさらに述べる。これらの実施例は、本開示の特定の実施形態を示すために提供されるものであって、本開示の範囲をいかなる特定の態様においてもまたはこれへと制限するものと解釈すべきでないことは理解されたい。
【0089】
実施例1 スズコアナノ粒子の合成
スズ金属粉末0.53gおよび水素化ホウ素リチウム0.187gを遊星ボールミルで混合する。混合物を、1−3/4インチ、3−1/2インチ、および5−1/4インチの316ステンレススチール製ボールベアリングを備えた250mLのステンレススチール製気密ボールミルジャー内において、遊星ボールミルで4時間、400rpmで(Fritschのpulervisette7ボールミルを使用して)ボールミル粉砕を行って、Sn・(LiBH試薬錯体を生成する。得られるボールミル粉砕した錯体をTHF中に懸濁させる。懸濁液を10mLの0.443gオクチルアミンのTHF溶液で滴定する。続いて起こる反応が周囲温度で進行して約3時間で完了し、この結果、図1のX線回折スペクトルに示すように、平均粒径約11nmのゼロ価スズナノ粒子が得られる。図1のスペクトルは酸素種のない純粋なスズ金属を指し示す。この合成手順全体は、酸化を避けるため不活性条件下でグローブボックス内で行われる。
【0090】
実施例2 Sn−Biコア−シェルナノ粒子の合成
ビスマス粉末および水素化ホウ素リチウムを混合し、遊星ボールミルで4時間、400rpmでボールミル粉砕を行って、Bi・(LiBH試薬錯体を生成する。Bi・(LiBH試薬錯体を、THF中に実施例1のスズナノ粒子と共に懸濁させ、2:1のモル過剰のオクチルアミン:Bi・(LiBH試薬錯体で滴定して、Sn−Biコア−シェルナノ粒子を生成する。この合成手順全体は、酸化を避けるため不活性条件下でグローブボックス内で行われる。
【0091】
実施例3 Bi−Snコア−シェルナノ粒子の合成
実施例2のBi・(LiBH試薬錯体をTHF中に懸濁させ、2:1のモル過剰のオクチルアミン:Bi・(LiBH試薬錯体で滴定して、Biコアナノ粒子を生成する。実施例1のSn・(LiBH試薬錯体をTHF中でBiコアナノ粒子と共に懸濁させ、2:1のモル過剰のオクチルアミン:Sn・(LiBH試薬錯体で滴定して、Bi−Snコア−シェルナノ粒子を生成する。この合成手順全体は、酸化を避けるため不活性条件下でグローブボックス内で行われる。
【0092】
実施例4 電極製造
電極を、実施例2で合成したタイプのSn−Biナノ粒子から圧紛膜法によって形成する。簡単に述べると、実施例2によるSn−Biナノ粒子(ここでは「活性物質」とも呼ぶ)、カーボンブラック、およびフッ化ポリビニリデン(ここでは「結合剤」とも呼ぶ)を、活性物質70%、カーボンブラック20%、および結合剤10%、全て百分率(w/w)で合わせて圧紛した。この方法によりSn−Bi電極を生成した。
【0093】
同様に、電極を、実施例3で合成されたタイプのBi−Snナノ粒子から圧紛膜法によって形成する。簡単に述べると、実施例3によるBi−Snナノ粒子(ここでは「活性物質」とも呼ぶ)、カーボンブラック、およびフッ化ポリビニリデン(ここでは「結合剤」とも呼ぶ)を、活性物質70%、カーボンブラック20%、および結合剤10%、全て百分率(w/w)で合わせて圧紛した。この方法によりBi−Sn電極を生成した。全ての電極製造手順は、材料の酸化を避けるため不活性条件下でグローブボックス内で行われる。
【0094】
実施例5 電気化学セル組み立ておよび試験
2つの電気化学セルを、一方は実施例4のSn−Bi電極を、他方は実施例4のBi−Sn電極をその電極として用いて組み立てた。各電気化学セルはトムセル(Tomcell)構造体を使用した。簡単に述べると、実施例4の電極(Sn−BiまたはBi−Snのいずれか)をグラスファイバーのセパレータを挟んでMg箔電極の反対側とした。電解質溶液は、1,2−ジメトキシエタン中に3:1のLiBH:Mg(BHとした。
【0095】
1サイクルのアノードマグネシウム化を50℃およびC/200のCレートで試験した。Sn−Bi電極のための第1サイクルマグネシウム化曲線を図3に示し、Bi−Sn電極のための第1サイクルマグネシウム化曲線を図4に示す。尚、電圧は、ビスマスまたはスズアノード活性物質のいずれに対してもセルの理論電圧において実質的に横ばい状態になることはなく、2つのアノードタイプのそれぞれに対してコア−シェル界面でのある程度の合金合成が示唆される。
【0096】
以上の記載は最も具体的な実施形態であると現時点で考えられるものに関する。しかし、本開示はこれらの実施形態に制限されず、反対に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる様々な改変および等価の配置を含むよう意図され、この範囲には、このような改変および等価の構造すべてを包含するように、法律の下で許される最も広い解釈が与えられることは理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4