特許第6240119号(P6240119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240119モノマー組成物、及びそれを含む硬化性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240119
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】モノマー組成物、及びそれを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 216/12 20060101AFI20171120BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20171120BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20171120BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20171120BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20171120BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20171120BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171120BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08F216/12
   C09D11/101
   C09D11/30
   C08G59/18
   C08F2/50
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
   C08G65/26
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-125998(P2015-125998)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2016-27120(P2016-27120A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-133057(P2014-133057)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(74)【代理人】
【識別番号】100152559
【弁理士】
【氏名又は名称】羽明 由木
(72)【発明者】
【氏名】水田 智也
(72)【発明者】
【氏名】井上 慶三
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−183927(JP,A)
【文献】 特開2010−007000(JP,A)
【文献】 特開2007−211098(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125538(WO,A1)
【文献】 特開2009−138116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08G
C08L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーとしてビニルエーテル化合物(A)を含むモノマー組成物であって、
モノマーとして更にオキセタン化合物(B)をモノマー組成物全量の5〜80重量%含有し、又はモノマーとして更にエポキシ化合物(C)をモノマー組成物全量の5〜80重量%含有し、
単官能モノマーをモノマー組成物全量の20〜80重量%含有し、
且つ水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の5〜80重量%、水酸基を有するビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の0.1重量%以上、10重量%未満含有することを特徴とするモノマー組成物。
【請求項2】
水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物が、環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物及び/又は脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物を含有する請求項1に記載のモノマー組成物。
【請求項3】
環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物の含有量が、モノマー組成物全量の30重量%未満である請求項2に記載のモノマー組成物。
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載のモノマー組成物と光酸発生剤を含有する硬化性組成物。
【請求項5】
更に、増感剤、又は増感剤と増感助剤を含有する請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
表面張力(25℃、1気圧下における)が10〜50mN/mであり、粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]が1〜1000mPa・sである請求項4又は5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
紫外線硬化型インクジェット用インクに使用する請求項4〜6の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
請求項4〜6の何れか1項に記載の硬化性組成物と顔料及び/又は染料を含有する紫外線硬化型インクジェット用インク。
【請求項9】
更に、分散剤を含有する請求項記載の紫外線硬化型インクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー組成物及びそれを含む硬化性組成物に関する。前記硬化性組成物は紫外線硬化型インクジェット用インクに好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
インク小滴を記録媒体に飛翔させ記録ドットを形成することにより印字を行うインクジェット記録法は、原版が不要なため多品種を少量ずつ印刷する用途に好適に使用される。このインクジェット記録法に使用されるインクジェット用インクとしては、カチオン硬化型インクとラジカル硬化型インクが知られている。
【0003】
前記ラジカル硬化型インクは速硬化性を有し、モノマーの種類が豊富である等の理由から多用されてきた。しかし、インクジェット記録法では吐出性の観点から低粘度のインクが使用され、大気中からインクに酸素が拡散・進入し易い。また、インクを小さな液滴として印字するため表面積が大きくなり酸素に曝されやすい。そのため酸素による硬化阻害が顕著であり、酸素の影響を受けて硬化が阻害され、滲みが発生したり、臭気の原因となる未反応モノマーが多く残留することが問題であった。また、基材密着性が低く、インクの密着性を向上させるため基材表面に加工を施す必要があることも問題であった。
【0004】
一方、カチオン硬化型インクは酸素による硬化阻害を受けることがない。また、ラジカル硬化型インクに比べて基材密着性に優れていることが知られている。特許文献1〜3には、分散媒と顔料とを含むカチオン硬化型インクについて、分散媒を構成するモノマーとして環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物を分散媒に含まれる全モノマーの30重量%以上含有すると、硬化性と基材密着性に優れたインク被膜を形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−154734号公報
【特許文献2】特開2007−211098号公報
【特許文献3】特開2007−211099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物は水分を吸収しやすいため、環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物を上記範囲で含有するカチオン硬化型インクは、水分による硬化阻害を受け易く、湿度が高い時期に使用した場合や、保存過程で空気中の水分を取り込んだ場合に硬化不良が生じるため実用に適さないことがわかった。
【0007】
従って、本発明の目的は、速硬化性を有し、酸素や水分の存在下でも速やかに硬化して、幅広い基材に対して優れた密着性を有する硬化物を形成することができるモノマー組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記モノマー組成物と光酸発生剤を含む硬化性組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記硬化性組成物と顔料を含む紫外線硬化型インクジェット用インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ビニルエーテル化合物として水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物と、水酸基を有するビニルエーテル化合物を組み合わせて含有し、前記水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の5〜80重量%、前記水酸基を有するビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の0.1重量%以上、10重量%未満含有し、更に、単官能モノマーをモノマー組成物全量の20〜80重量%含有するモノマー組成物に光酸発生剤を添加して得られる硬化性組成物は、優れた硬化感度を有し、紫外線を照射することにより、酸素や水分の存在下でも速やかに硬化して、幅広い基材に対して優れた密着性を有する(すなわち、幅広い基材選択性を有する)硬化物を形成することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、ビニルエーテル化合物(A)を含むモノマー組成物であって、単官能モノマーをモノマー組成物全量の20〜80重量%含有し、且つ水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の5〜80重量%、水酸基を有するビニルエーテル化合物をモノマー組成物全量の0.1重量%以上、10重量%未満含有することを特徴とするモノマー組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物が、環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物及び/又は脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物を含有する前記のモノマー組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物の含有量が、モノマー組成物全量の30重量%未満である前記のモノマー組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、モノマーとして、更に、オキセタン化合物(B)をモノマー組成物全量の5〜80重量%含有する前記のモノマー組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、モノマーとして、更に、エポキシ化合物(C)をモノマー組成物全量の5〜80重量%含有する前記のモノマー組成物を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記のモノマー組成物と光酸発生剤を含有する硬化性組成物を提供する。
【0015】
本発明は、また、更に、増感剤、又は増感剤と増感助剤を含有する前記の硬化性組成物を提供する。
【0016】
本発明は、また、表面張力(25℃、1気圧下における)が10〜50mN/mであり、粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]が1〜1000mPa・sである前記の硬化性組成物を提供する。
【0017】
本発明は、また、紫外線硬化型インクジェット用インクに使用する前記の硬化性組成物を提供する。
【0018】
本発明は、また、前記の硬化性組成物と顔料及び/又は染料を含有する紫外線硬化型インクジェット用インクを提供する。
【0019】
本発明は、また、更に、分散剤を含有する前記の紫外線硬化型インクジェット用インクを提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記構成を有する本発明のモノマー組成物と光酸発生剤を含有する硬化性組成物は、紫外線を照射する前は低粘度で吐出性に優れ、紫外線を照射することにより、酸素や水分の存在下でも速やかに硬化して、幅広い基材に対して優れた密着性を有する硬化物を形成することができる。また、保存過程で空気中の水分を取り込んでも硬化性が損なわれることがない。すなわち、保存安定性に優れる。更に、本発明の硬化性組成物は硬化性に優れるため、未反応モノマーの残留を抑制することができ、未反応モノマーが原因の臭気の発生を著しく低減することができる。そのため、本発明の硬化性組成物は、紫外線硬化型インクジェット用インクに好適に使用することができる。
【0021】
また、上記特性を有する硬化性組成物を含む本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクを使用すれば、空気雰囲気下で、湿度条件や被印刷物を特に限定することなく、且つ臭気の発生を抑制しつつ、非常に高精細なインク被膜を高速に形成することができる。そのため、本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクは産業用印刷分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ビニルエーテル化合物(A))
ビニルエーテル化合物は、重合性基としてビニルエーテル基を有するモノマー(特に、カチオン重合性モノマー)である。本発明のモノマー組成物は、ビニルエーテル化合物として、水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物と、水酸基を有するビニルエーテル化合物を含有する。
【0023】
前記水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物は、1分子中にビニルエーテル基を2個以上有する化合物であり、例えば、下記式(a-1)で表される。
R−(O−CH=CH2s (a-1)
(式中、Rは、s価の炭化水素基、複素環式基、又はこれらが単結合若しくは連結基を介して結合した基を示し、sは2以上の整数を示す)
【0024】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が含まれる。
【0025】
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン基等の炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン、プロペニレン基等の炭素数2〜20のアルケニレン基等を挙げることができる。s価の脂肪族炭化水素基としては、前記2価の脂肪族炭化水素基の構造式から更に(s−2)個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0026】
前記脂環式炭化水素基を構成する脂環には、単環式炭化水素環及び多環式炭化水素環(スピロ炭化水素環、環集合炭化水素環、架橋環式炭化水素環、縮合環式炭化水素環、架橋縮合環式炭化水素環)が含まれる。s価の脂環式炭化水素基としては、前記脂環の構造式からs個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0027】
前記単環式炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のC3-12シクロアルカン環;シクロペンテン、シクロヘキセン等のC3-12シクロアルケン環等を挙げることができる。
【0028】
前記スピロ炭化水素環としては、例えば、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロビシクロヘキサン等のC5-16スピロ炭化水素環等を挙げることができる。
【0029】
前記環集合炭化水素環としては、例えば、ビシクロヘキサン等のC5-12シクロアルカン環を2個以上含む環集合炭化水素環等を挙げることができる。
【0030】
前記架橋環式炭化水素環としては、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘプテン、ビシクロオクタン(ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン等)等の2環式炭化水素環;ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン等の3環式炭化水素環;テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン等の4環式炭化水素環等を挙げることができる。
【0031】
前記縮合環式炭化水素環としては、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン等の5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環を挙げることができる。
【0032】
前記架橋縮合環式炭化水素環には、ジエン類の二量体(例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等のシクロアルカジエンの二量体)や、その水素添加物等を挙げることができる。
【0033】
前記芳香族炭化水素基を構成する芳香環としては、ベンゼン、ナフタレン等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香環を挙げることができる。s価の芳香族炭化水素基としては、前記芳香環の構造式からs個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0034】
上記炭化水素基は、水酸基以外の種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、オキソ基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基等)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基等]を有していてもよい。前記カルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0035】
前記複素環式基を構成する複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、オキセタン等の4員環;フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン等の5員環;4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン等の6員環;ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン等の縮合環;7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン等の架橋環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール等の5員環;4−オキソ−4H−チオピラン等の6員環;ベンゾチオフェン等の縮合環等)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール等の5員環;ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン等の6員環;インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン等の縮合環等)等を挙げることができる。上記複素環式基は、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等のC1-4アルキル基等)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)等を有していてもよい。s価の複素環式基としては、前記複素環の構造式からs個の水素原子を除いた基を挙げることができる。
【0036】
前記連結基としては、例えば、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)、シリル結合(−Si−)、及びこれらが複数個連結した基等を挙げることができる。
【0037】
前記sは2以上の整数であり、例えば2〜20、好ましくは2〜10である。
【0038】
水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールジビニルエーテル等の脂肪族骨格を有するジビニルエーテル化合物や、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル等の脂肪族骨格を有するトリビニルエーテル化合物や、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等の脂肪族骨格を有するテトラビニルエーテル化合物やジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の脂肪族骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物;1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等の脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物;ハイドロキノンジビニルエーテル等の芳香環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物;下記式(a-1-1)で表される化合物、下記式(a-1-2)で表される化合物等の環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
【化1】
【化2】
【0040】
上記ビニルエーテル化合物は公知のビニルエーテル化合物の製造方法を利用して製造することができる。例えば、上記式(a-1-1)で表される化合物は、遷移金属化合物の存在下、イソソルビドとビニルエステル化合物(例えば、プロピオン酸ビニル)とを反応させることにより製造することができる。
【0041】
本発明の水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物としては、なかでも、環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物[例えば、式(a-1)中のRがヘテロ原子として酸素原子を含む複素環式基、又は2個以上の前記複素環式基が単結合若しくは連結基を介して結合した基である多官能ビニルエーテル化合物(特に、ジビニルエーテル化合物)]、脂肪族骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物[例えば、式(a-1)中のRが脂肪族炭化水素基、又は2個以上の脂肪族炭化水素基が単結合若しくは連結基を介して結合した基である多官能ビニルエーテル化合物(特に、ジビニルエーテル化合物)]、及び脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物[例えば、式(a-1)中のRが脂環式炭化水素基、又は2個以上の脂環式炭化水素基が単結合若しくは連結基を介して結合した基である多官能ビニルエーテル化合物(特に、ジビニルエーテル化合物)]から選択される少なくとも1種の多官能ビニルエーテル化合物を含有することが好ましく、特に、環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物及び/又は脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物を少なくとも含有することが、速硬化性を発揮することができる点で好ましい。前記環状エーテル骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物と脂環骨格を有する多官能ビニルエーテル化合物の含有量の和は、本発明のモノマー組成物に含まれる全ての多官能ビニルエーテル化合物の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
【0042】
前記水酸基を有するビニルエーテル化合物は、1分子中に1個以上のビニルエーテル基と1個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、下記式(a-2)で表される。
(HO)t−R’−(O−CH=CH2u (a-2)
(式中、R’は(t+u)価の炭化水素基、複素環式基、又はこれらが単結合若しくは連結基を介して結合した基を示し、t、uは同一又は異なって、1以上の整数を示す)
【0043】
水酸基を有するビニルエーテル化合物は、モノマー組成物を重合して得られるポリマーに水酸基を導入することにより生長反応を停止する作用を有し、それによりポリマーの高分子量化を抑制することができる。本発明のモノマー組成物は水酸基を有するビニルエーテル化合物を特定の範囲で含有するため、本発明のモノマー組成物を含む硬化性組成物の硬化感度を向上することができ、得られる硬化物の基材密着性を向上することができる。
【0044】
前記(t+u)価の炭化水素基、複素環式基、又はこれらが単結合若しくは連結基を介して結合した基としては、上記式(a-1)中のRと同様の例を挙げることができる。
【0045】
前記tは1以上の整数であり、例えば1〜20、好ましくは1〜10である。
【0046】
前記uは1以上の整数であり、例えば1〜20、好ましくは1〜10である。
【0047】
前記水酸基を有するビニルエーテル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシアミルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル等の水酸基と脂肪族骨格とを有するモノビニルエーテル化合物;ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリビニルエーテル等の水酸基と脂肪族骨格とを有する多官能ビニルエーテル化合物;4−ヒドロキシ−シクロへキシルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロへキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへプチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロオクチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロデカニルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−ビニルオキシアダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオールモノビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジオールモノビニルエーテル、デカリンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等の水酸基と脂環骨格とを有するモノビニルエーテル化合物等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
(オキセタン化合物(B))
本発明のモノマー組成物は、モノマーとして、更に、オキセタン化合物を含有することが、各種基材への密着性を向上させる点、及び得られる硬化物に強靱性を付与することができる点で好ましい。オキセタン化合物は、重合性基としてオキセタニル基を有するカチオン重合性モノマーであり、単官能オキセタン化合物と多官能オキセタン化合物が含まれる。オキセタン化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0049】
オキセタン化合物は、例えば、下記式(b)で表される。
【化3】
(式中、Raは1価の有機基を示し、Rbは水素原子又はエチル基を示す。mは0以上の整数を示す)
【0050】
前記Raにおける1価の有機基には1価の炭化水素基、1価の複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基等)、置換カルバモイル基(N−アルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基等)、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基等)、及びこれらの2以上が単結合又は連結基を介して結合した1価の基が含まれる。
【0051】
前記1価の炭化水素基には、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、及び1価の芳香族炭化水素基が含まれる。
【0052】
前記1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基、及び1価の複素環式基としては、上記式(a-1)中のRにおけるs価の基に対応する1価の基を挙げることができる。前記連結基としては、上記式(a-1)中のRにおける例と同様の例を挙げることができる。
【0053】
前記1価の有機基は置換基を有していてもよく、置換基としては上記式(a-1)中のRが有していてもよい置換基と同様の例を挙げることができる。
【0054】
前記mは0以上の整数を示し、例えば0〜20、好ましくは0〜1である。
【0055】
上記式(b)で表される化合物としては、例えば、3−メトキシオキセタン、3−エトキシオキセタン、3−プロポキシオキセタン、3−イソプロポキシオキセタン、3−(n−ブトキシ)オキセタン、3−イソブトキシオキセタン、3−(s−ブトキシ)オキセタン、3−(t−ブトキシ)オキセタン、3−ペンチルオキシオキセタン、3−ヘキシルオキシオキセタン、3−ヘプチルオキシオキセタン、3−オクチルオキシオキセタン、3−(1−プロペニルオキシ)オキセタン、3−シクロヘキシルオキシオキセタン、3−(4−メチルシクロヘキシルオキシ)オキセタン、3−[(2−パーフルオロブチル)エトキシ]オキセタン、3−フェノキシオキセタン、3−(4−メチルフェノキシ)オキセタン、3−(3−クロロ−1−プロポキシ)オキセタン、3−(3−ブロモ−1−プロポキシ)オキセタン、3−(4−フルオロフェノキシ)オキセタンや、下記式(b-1)〜(b-15)で表される化合物等を挙げることができる。
【0056】
【化4】
【0057】
オキセタン化合物としては、例えば、「アロンオキセタンOXT−101」、「アロンオキセタンOXT−121」、「アロンオキセタンOXT−212」、「アロンオキセタンOXT−211」、「アロンオキセタンOXT−213」、「アロンオキセタンOXT−221」、「アロンオキセタンOXT−610」(以上、東亞合成(株)製)等の市販品を使用することができる。
【0058】
(エポキシ化合物(C))
本発明のモノマー組成物は、モノマーとして、更に、エポキシ化合物を含有することが、幅広い基材に対して優れた密着性を有する(すなわち、幅広い基材選択性を有する)硬化物を形成することができる点で好ましい。エポキシ化合物は、重合性基としてエポキシ基を有するカチオン重合性モノマーであり、単官能エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物が含まれる。エポキシ化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
エポキシ化合物としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物;脂環式グリシジルエーテル系エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等);脂肪族グリシジルエーテル系エポキシ化合物;グリシジルエステル系エポキシ化合物;グリシジルアミン系エポキシ化合物;シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ化合物(以後、「脂環式エポキシ化合物」と称する場合がある);エポキシ変性シロキサン化合物等を挙げることができる。
【0060】
本発明においては、基材密着性に優れた硬化物を形成することができ、特に、インクジェット用インクに使用した場合は、傷つき難く、剥がれ難く、美しい印字を長期に亘って維持することができる点で、脂環式エポキシ化合物を含有することが好ましく、脂環式エポキシ化合物をモノマー組成物に含まれる全エポキシ化合物の30重量%以上含有することが好ましく、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0061】
上記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、下記式(c)で表される化合物を挙げることができる。
【化5】
【0062】
上記式(c)中、R1〜R18は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基を示す。
【0063】
1〜R18におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0064】
1〜R18における炭化水素基としては、前記式(a-1)中のRにおけるs価の炭化水素基に対応する1価の基を挙げることができる。
【0065】
1〜R18における酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭化水素基としては、上述の炭化水素基における少なくとも1つの水素原子が、酸素原子を有する基又はハロゲン原子で置換された基等を挙げることができる。上記酸素原子を有する基としては、例えば、ヒドロキシル基;ヒドロパーオキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-10アルコキシ基;アリルオキシ基等のC2-10アルケニルオキシ基;C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、ハロゲン原子、及びC1-10アルコキシ基から選択される置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシ基(例えば、トリルオキシ、ナフチルオキシ基等);ベンジルオキシ、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、ベンゾイルオキシ基等のC1-10アシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル基等のC1-10アルコキシカルボニル基;C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、ハロゲン原子、及びC1-10アルコキシ基から選択される置換基を有していてもよいC6-14アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル、トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル基等);ベンジルオキシカルボニル基等のC7-18アラルキルオキシカルボニル基;グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基等のC1-10アシル基;イソシアナート基;スルホ基;カルバモイル基;オキソ基;これらの2以上が単結合又はC1-10アルキレン基等を介して結合した基等を挙げることができる。
【0066】
1〜R18におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ基等のC1-10アルコキシ基を挙げることができる。
【0067】
前記アルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1-10アルコキシ基、C2-10アルケニルオキシ基、C6-14アリールオキシ基、C1-10アシルオキシ基、メルカプト基、C1-10アルキルチオ基、C2-10アルケニルチオ基、C6-14アリールチオ基、C7-18アラルキルチオ基、カルボキシル基、C1-10アルコキシカルボニル基、C6-14アリールオキシカルボニル基、C7-18アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基、モノ又はジC1-10アルキルアミノ基、C1-10アシルアミノ基、エポキシ基含有基、オキセタニル基含有基、C1-10アシル基、オキソ基、及びこれらの2以上が単結合又はC1-10アルキレン基等を介して結合した基等を挙げることができる。
【0068】
上記式(c)中、Xは単結合又は連結基を示す。前記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、カーボネート基(−O−CO−O−)、アミド基(−CONH−)、及びこれらが複数個連接した基等を挙げることができる。
【0069】
上記二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3〜18の二価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。炭素数3〜18の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0070】
上記炭素−炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素−炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2〜4のアルケニレン基である。
【0071】
上記式(c)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’−ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2−エポキシ−1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)プロパン、1,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エタンや、下記式(c-1)〜(c-8)で表される化合物等を挙げることができる。尚、下記式(c-5)、(c-7)中のn1、n2は、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(c-5)中のLは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基である。
【0072】
【化6】
【0073】
脂環式エポキシ化合物には、上記式(c)で表される化合物の他に、下記式(c-9)で表される、分子内に脂環と2個以上のエポキシ基を有し、且つ2個以上のエポキシ基のうち1個がシクロヘキセンオキシド基である化合物も含まれる。
【0074】
【化7】
【0075】
脂環式エポキシ化合物には、更に、下記式(c-10)、(c-11)で表される3個以上のシクロヘキセンオキシド基を有する脂環式エポキシ化合物や、下記式(c-12)〜(c-15)で表されるシクロヘキセンオキシド基を1個有し、他にエポキシ基を有しない脂環式エポキシ化合物も含まれる。尚、下記式(c-10)、(c-11)中のn3〜n8は、同一又は異なって1〜30の整数を示し、下記式(c-14)中のR19、R20は、同一又は異なって炭素数1〜31の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を示す。
【化8】
【0076】
本発明においては、エポキシ化合物として、特に基材(例えば、ガラス)に対する密着性に優れる点で、上記式(c)で表される、1分子中にシクロヘキセンオキシド基を2個有する化合物を少なくとも含有することが好ましく、特に、上記式(c-1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートを少なくとも含有することが好ましい。
【0077】
また、硬化物に高い表面硬度と耐熱性を所望する場合は、エポキシ化合物としてエポキシ変性シロキサン化合物を含有していてもよい。
【0078】
前記エポキシ変性シロキサン化合物としては、例えば、エポキシ変性ポリオルガノシルセスキオキサンや、エポキシ変性シリコーン等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
エポキシ変性ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、例えば、下記式(c-16)、(c-17)で表される構成単位を有する化合物(ランダム構造、かご型構造、及びはしご型構造の化合物を含む)等を挙げることができる。
【0080】
【化9】
【0081】
また、エポキシ変性シリコーンには環状構造、及び鎖状構造の化合物が含まれる。環状構造を有するエポキシ変性シリコーンは、例えば、下記式(c-18)で表される。また、鎖状構造を有するエポキシ変性シリコーンは、例えば、下記式(c-19)で表される。
【化10】
【0082】
上記式中、R21〜R37は、同一又は異なって、水素原子、又はオキシラン環を有していてもよい炭化水素基を示す。炭化水素基としては上記式(a-1)中のRにおけるs価の炭化水素基に対応する1価の炭化水素基を挙げることができる。また、上記式(c-18)中のm1、及び上記式(c-19)中のm2は、同一又は異なって、1以上の整数である。m1及びm2が2以上の整数である場合、(c-18)中のm1個のR26、及びR27はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。(c-19)中のm2個のR32、及びR33はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。但し、ポリオルガノシルセスキオキサンに含まれるR21〜R23の少なくとも1つ、及び環状構造を有するシリコーンに含まれるR24〜R29の少なくとも1つ、及び鎖状構造を有するシリコーンに含まれるR30〜R37の少なくとも1つはオキシラン環を有する炭化水素基(例えば、シクロヘキセンオキシド基を有する炭化水素基、又はグリシジル基を有する炭化水素基)である。
【0083】
エポキシ変性シロキサン化合物の含有量は、モノマー組成物に含まれる全エポキシ化合物の、例えば1〜100重量%であり、上限は、好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは60重量%である。下限は、好ましくは5重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは20重量%である。
【0084】
(その他のモノマー)
本発明のモノマー組成物は、モノマーとして、上記ビニルエーテル化合物(A)、オキセタン化合物(B)、エポキシ化合物(C)以外の単官能又は多官能モノマー[例えば、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物(例えば、ビニル化合物等)、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、及びこれらの誘導体等のカチオン重合性モノマーやラジカル重合性モノマー]を含有していても良い。
【0085】
[モノマー組成物]
本発明のモノマー組成物は、単官能モノマーと多官能モノマーを含むモノマー組成物であって、少なくともビニルエーテル化合物(A)を含有する。尚、「単官能モノマー」とは重合性基を1分子中に1個のみ有する化合物であり、「多官能モノマー」とは重合性基を1分子中に2個以上有する化合物である。
【0086】
本発明のモノマー組成物は、単官能モノマー(特に、単官能カチオン重合性モノマー)をモノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の20〜80重量%、好ましくは35〜65重量%、特に好ましくは35〜60重量%含有する。そのため、本発明のモノマー組成物と光酸発生剤を含有する硬化性組成物は、硬化過程における収縮を抑制することができ、基材密着性に優れた硬化物を得ることができる。
【0087】
ビニルエーテル化合物(A)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の例えば10〜80重量%、好ましくは15〜75重量%、特に好ましくは20〜75重量%、最も好ましくは25〜70重量%である。
【0088】
水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の5〜80重量%であり、好ましくは10〜75重量%、特に好ましくは15〜70重量%、最も好ましくは20〜70重量%である。本発明のモノマー組成物は、水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物を上記範囲に含有するため、モノマー組成物に光酸発生剤を添加して得られる硬化性組成物は、優れた硬化感度を有し、速硬化性を発揮することができる。
【0089】
水酸基を有するビニルエーテル化合物の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の0.1重量%以上、10重量%未満であり、好ましくは0.5〜8重量%、特に好ましくは1〜8重量%、最も好ましくは2〜5重量%である。本発明のモノマー組成物は、水酸基を有するビニルエーテル化合物を上記範囲に含有するため、モノマー組成物に光酸発生剤を添加して得られる硬化性組成物は、優れた硬化感度を有し、且つ基材密着性に優れた硬化物を形成することができる。
【0090】
また、環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物(例えば、式(a-1-1)で表される化合物、下記式(a-1-2)で表される化合物等)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の例えば30重量%未満であることが好ましく、特に好ましくは5〜25重量%、最も好ましくは10〜25重量%である。環状エーテル骨格を有するビニルエーテル化合物の含有量が上記範囲を上回ると、水分による硬化阻害を抑制することが困難となる傾向がある。
【0091】
本発明のモノマー組成物には、水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物、及び水酸基を有するビニルエーテル化合物以外のビニルエーテル化合物を含有していても良いが、他のビニルエーテル化合物の含有量は、本発明のモノマー組成物の例えば30重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0092】
本発明のモノマー組成物はオキセタン化合物(B)を含有することが好ましく、オキセタン化合物(B)の含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の例えば5〜80重量%程度、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%である。オキセタン化合物(B)を上記範囲で含有するモノマー組成物に光酸発生剤を配合して得られる硬化性組成物は、水分による硬化阻害を抑制しつつ、速硬化性を発揮することができる。
【0093】
本発明のモノマー組成物はエポキシ化合物(C)を含有することが好ましく、エポキシ化合物(C)の含有量は、モノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の例えば5〜80重量%程度、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは20〜25重量%である。エポキシ化合物(C)を上記範囲で含有するモノマー組成物に光酸発生剤を配合して得られる硬化性組成物の硬化物は、優れた基材密着性を有する。
【0094】
本発明のモノマー組成物は上記化合物以外にも、他のモノマーを含有していてもよいが、他のモノマーの含有量はモノマー組成物全量(モノマー組成物に含まれる全モノマー)の30重量%以下程度であり、好ましくは20重量%以下である。
【0095】
本発明のモノマー組成物は、上記ビニルエーテル化合物(A)、及び必要に応じて他のモノマー(例えば、オキセタン化合物(B)やエポキシ化合物(C)等のカチオン重合性モノマー)を、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用して均一に混合することにより製造することができる。尚、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。
【0096】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、上記モノマー組成物と光酸発生剤を含有する。
【0097】
(光酸発生剤)
光酸発生剤は光の照射によって酸を発生させる化合物であり、光カチオン重合開始剤とも称される。光酸発生剤は、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなり、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物、メタロセン錯体、鉄アレーン錯体等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
前記スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4−ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリ−p−トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)を挙げることができる。
【0099】
光酸発生剤のアニオン部としては、例えば、BF4-、CF3SO3-、CH364SO3-、CH3(NO2)C64SO3-、B(C654-、PF6-、[(Rf)kPF6-k-(Rf:水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基、k:1〜5の整数)、AsF6-、SbF6-、SbF5OH-、ハロゲン系アニオン、スルホン酸系アニオン、カルボン酸系アニオン、硫酸アニオン等を挙げることができる。
【0100】
本発明の光酸発生剤としては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【化11】
【化12】
【化13】
【0101】
本発明においては、例えば、商品名「サイラキュアUVI−6970」、「サイラキュアUVI−6974」、「サイラキュアUVI−6990」、「サイラキュアUVI−950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「イルガキュア250」、「イルガキュア261」、「イルガキュア264」、「イルガキュア270」、「イルガキュア290」(以上、BASF社製)、「CG−24−61」(チバガイギー社製)、「アデカオプトマーSP−150」、「アデカオプトマーSP−151」、「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI−2064」、「CI−2639」、「CI−2624」、「CI−2481」、「CI−2734」、「CI−2855」、「CI−2823」、「CI−2758」、「CIT−1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI−2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI−102」、「BBI−101」、「BBI−103」、「MPI−103」、「BDS−105」、「TPS−103」、「MDS−103」、「MDS−105」、「MDS−203」、「MDS−205」、「DTS−102」、「DTS−103」、「NAT−103」、「NDS−103」、「BMS−105」、「TMS−105」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD−1010」、「CD−1011」、「CD−1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI−100P」、「CPI−101A」、「CPI−110P」、「CPI−110A」、「CPI−210S」(以上、サンアプロ(株)製)、「UVI−6992」、「UVI−6976」(以上、ダウ・ケミカル社製)等の市販品を使用できる。
【0102】
上記モノマー組成物の含有量は、本発明の硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば50〜99.9重量%程度、好ましくは70〜99.5重量%である。
【0103】
また、本発明の硬化性組成物における光酸発生剤の含有量は、モノマー組成物100重量部に対して、例えば0.1〜20重量部程度、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0104】
本発明の硬化性組成物は無溶剤系であること、即ち溶剤を含有しないことが、乾燥性を向上することができる点、溶剤により劣化し易い基材にも適用可能となる点、及び溶剤の揮発による臭気の発生を防止することができる点で好ましく、溶剤の含有量は硬化性組成物全量(100重量%)の10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0105】
本発明の硬化性組成物はモノマー組成物と光酸発生剤以外にも必要に応じて他の成分を含有していても良く、例えば、周知慣用の増感剤(例えば、アクリジン化合物、ベンゾフラビン類、ペリレン類、アントラセン類、チオキサントン化合物類、レーザ色素類等)、増感助剤、酸化防止剤、アミン類等の安定化剤等を挙げることができる。特に、本発明の硬化性組成物をUV−LEDを照射して硬化させる用途に使用する場合には、増感剤、及び必要に応じて増感助剤を含有することが、光酸発生剤の紫外線光吸収率を向上して硬化性を向上することができる点で好ましく、これらの含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、硬化性組成物全量(100重量%)の、例えば0.05〜10重量%程度、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0106】
本発明の硬化性組成物の表面張力(25℃、1気圧下における)は、例えば10〜50mN/m程度、好ましくは15〜40mN/m、特に好ましくは15〜30mN/mである。また、本発明の硬化性組成物の粘度[25℃、せん断速度10(1/s)における]は、例えば1〜1000mPa・s程度、好ましくは3〜400mPa・s、特に好ましくは5〜50mPa・s、最も好ましくは10〜30mPa・sである。そのため、本発明の硬化性組成物は吐出性若しくは充填性に優れる。
【0107】
また、本発明の硬化性組成物は、酸素や水分の存在下でも紫外線を照射することにより速やかに硬化して硬化物を形成することができる。そのため、紫外線硬化型インクジェット用インクに使用した場合は、滲みや臭気の発生を防止することができ、印字品質に優れたインク被膜を形成することができる。
【0108】
前記紫外線の光源としては、光を照射することにより、硬化性組成物中に酸を発生させることができる光源であれば良く、例えば、UV−LED、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置等を使用することができる。紫外線照射量(積算光量)は、例えば10〜1000mJ/cm2程度である。
【0109】
本発明の硬化性組成物は、紫外線を照射した後に、更に加熱処理を施しても良い。加熱処理を施すことにより、硬化度をより一層向上させることができる。加熱処理を施す場合、加熱温度は40〜200℃程度であり、加熱時間は1分〜15時間程度である。また、紫外線を照射した後に、室温(20℃)で1〜48時間程度静置することでも硬化度を向上させることができる。
【0110】
更に、本発明の硬化性組成物は、幅広い基材[例えば、ガラス、金属(例えば、アルミニウム箔、銅箔等)、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等)、天然ゴム、ブチルゴム、発泡体(例えば、ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム等)、木材、織布、不織布、布、紙(例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙、和紙等)、シリコンウェハ、セラミック等、及びこれらの複合体等]に対して優れた密着性を有する硬化物を形成することができる。
【0111】
本発明の硬化性組成物は上記特性を有するため、紫外線硬化型インクジェット用インク材料、塗料、接着剤、封止材、土木建築材料、積層板等の電気電子部品、フォトレジスト、ソルダーレジスト、多層配線板用層間構成材、絶縁材料、コンクリート建造物の補修材、注型用材料、シーラント、光造形用材料、レンズや光導波路等の光学材料等として好適に使用することができる。
【0112】
本発明の硬化性組成物は、特に、紫外線硬化型インクジェット用インク材料(例えば、紫外線硬化型インクジェット用透明インク)として使用することが好ましい。本発明の硬化性組成物からなる紫外線硬化型インクジェット用透明インクは、顔料及び/又は染料を添加することにより種々の顔料及び/又は染料インク(顔料インク、染料インク、又は顔料と染料とを含有するインク)を形成することができる。また、プライマーインクやニスコート用インク(顔料及び/又は染料インクを塗布する前や後に塗布することより、顔料及び/又は染料インクが基材表面に定着しやすくなり、高発色・高画質なインク被膜を形成することを可能とし、更にインクの裏抜け防止や耐候性、耐水性を向上することができるインク)としても使用可能である。
【0113】
[紫外線硬化型インクジェット用インク]
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インク(特に、顔料及び/又は染料インク)は、上記硬化性組成物(=紫外線硬化型インクジェット用透明インク)と顔料及び/又は染料を含有する。
【0114】
(顔料)
顔料としては、一般に顔料として知られている色材であって、硬化性組成物中に分散可能なものであれば、特に制限なく使用することができる。顔料の平均粒子径は、300nm以下程度であることが吐出性、インク飛翔性、及び印字再現性に優れる点で好ましい。顔料は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
顔料は、発色・着色性に加えて、磁性、蛍光性、導電性、又は誘電性等を併せて有するものであってもよい。この場合には、画像に様々な機能を付与することができる。
【0116】
使用可能な顔料としては、例えば、土製顔料(例えば、オーカー、アンバー等)、ラピスラズリ、アズライト、白亜、胡粉、鉛白、バーミリオン、ウルトラマリン、ビリジャン、カドミウムレッド、炭素顔料(例えば、カーボンブラック、カーボンリファインド、カーボンナノチューブ等)、金属酸化物顔料(例えば、鉄黒、コバルトブルー、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄等)、金属硫化物顔料(例えば、硫化亜鉛等)、金属硫酸塩、金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、金属ケイ酸塩、金属リン酸塩、金属粉末(例えば、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末、亜鉛粉末等)等の無機顔料;不溶性アゾ顔料(例えば、モノアゾイエロー、モノアゾレッド、モノアゾバイオレット、ジスアゾイエロー、ジスアゾオレンジ、ピラゾロン顔料等)、溶性アゾ顔料(例えば、アゾイエローレーキ、アゾレーキレッド等)、ベンズイミダゾロン顔料、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、縮合アゾ顔料、キナクリドン顔料(例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等)、ペリレン顔料(例えば、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等)、ペリノン顔料(例えば、ペリノンオレンジ等)、イソインドリノン顔料(例えば、イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等)、イソインドリン顔料(例えば、イソインドリンイエロー等)、ジオキサジン顔料(例えば、ジオキサジンバイオレット等)、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料(例えば、キノフタロンイエロー等)、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料(例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等)、染料レーキ顔料等の有機顔料;無機蛍光体や有機蛍光体等の蛍光顔料等を挙げることができる。
【0117】
(染料)
前記染料としては、例えば、ニトロアニリン系、フェニルモノアゾ系、ピリドンアゾ系、キノフタロン系、スチリル系、アントラキノン系、ナフタルイミドアゾ系、ベンゾチアゾリルアゾ系、フェニルジスアゾ系、チアゾリルアゾ系染料等を挙げることができる。
【0118】
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクにおける顔料及び/又は染料の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、硬化性組成物100重量部に対して、例えば0.5〜20重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。
【0119】
さらに、本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクは、上記顔料又は染料の分散性を向上するために分散剤を含有してもよい。分散剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、イオン系界面活性剤、帯電剤、高分子系分散剤(例えば、商品名「Solsperse24000」、「Solsperse32000」、アビシア社製)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0120】
上記分散剤の含有量は、顔料及び/又は染料100重量部に対して、例えば1〜50重量部程度、好ましくは3〜30重量部である。
【0121】
本発明の紫外線硬化型インクジェット用インクは、上記硬化性組成物を含有するため、空気雰囲気下で、湿度条件や被印刷物を特に限定することなく、且つ臭気の発生を抑制しつつ、非常に高精細なインク被膜を高速に形成することができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0123】
実施例1
ISB−DVE 22重量部、DEGV 3重量部、OXT−212 50重量部、セロキサイド2021P 25重量部、及び光酸発生剤 5重量部を混合して、硬化性組成物(1)[表面張力(25℃、1気圧下における):21.7mN/m、粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における):13mPa・s]を得た。
【0124】
(硬化性評価)
得られた硬化性組成物(1)をガラス板に塗布し(塗膜厚み:5μm)、光源として水銀キセノンランプ(商品名「LC8 LIGHTNINGCURE L9588」、浜松ホトニクス(株)製)を使用して紫外線を照射して、タックが無くなるまで(具体的には、塗膜表面をキムワイプ(登録商標)で擦った際に、べとついたり、ガラス板から剥がれたりしない状態となるまで)の積算光量(=水非含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量:mJ/cm2)を測定して、硬化性を評価した。
【0125】
(水分存在下における硬化性評価)
得られた硬化性組成物(1)100重量部に水5重量部を添加し、撹拌して水含有硬化性組成物(1)を調製した。
硬化性組成物(1)に代えて水含有硬化性組成物(1)を使用した以外は上記(硬化性評価)と同様にしてタックが無くなるまでの積算光量(mJ/cm2)を測定し、下記式から水添加による積算光量の増加率を算出して、下記基準から水分存在下における硬化性を評価した。
積算光量の増加率(%)={(水含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量/水非含有硬化性組成物の硬化に要する積算光量)−1}×100
水分存在下における硬化性の評価基準
積算光量の増加率が20%以上:硬化性不良(×)
積算光量の増加率が10%以上、20%未満:硬化性良好(○)
積算光量の増加率が10%未満:硬化性極めて良好(◎)
【0126】
(基材密着性評価)
得られた硬化性組成物(1)を基板(ガラス板又はPET板)に塗布し(塗膜厚み:5μm)、光源として水銀キセノンランプを使用してタックが無くなるまで紫外線を照射して、塗膜/ガラス板積層体、及び塗膜/PET板積層体を得た。
得られた積層体の塗膜面に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目を碁盤目状に入れて、1mm角の切片を100個有する試料を作成し、切片上にセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製、幅24mm)を2kgローラーを1往復することにより貼り合わせ、20℃環境下で、該セロハンテープを基板に対して垂直な方向に素早く引っ張って剥がし、剥がれずに残った切片の数から下記基準に従って密着性を評価した(JIS K−5400、1990年準拠)。
基材密着性の評価基準
基板から剥離した切片の数が0個以上、15個以下:基材密着性極めて良好(○)
基板から剥離した切片の数が16個以上、30個以下:基材密着性良好(△)
基板から剥離した切片の数が31個以上、100個以下:基材密着性不良(×)
【0127】
実施例2〜12、比較例1〜2
モノマー組成物を下記表に記載の処方に変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を下記表にまとめて示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
実施例及び比較例で使用した化合物は下記の通りである。
<ビニルエーテル化合物>
(水酸基を有しない多官能ビニルエーテル化合物)
ISB−DVE:下記式(a-1-1)で表される化合物、商品名「ISB−DVE」、(株)ダイセル製
【化14】
ONB−DVE:下記式(a-1-2)で表される化合物、商品名「ONB−DVE」、(株)ダイセル製
【化15】
4CH−DVE:シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、商品名「4CH−DVE」、(株)ダイセル製
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル、商品名「TEGDVE」、日本カーバイド工業(株)製
(水酸基を有するビニルエーテル化合物)
DEGV:ジエチレングリコールモノビニルエーテル、丸善石油化学(株)製
(その他のビニルエーテル化合物)
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル、和光純薬工業(株)製
<オキセタン化合物>
OXT−212:3−エチル−3−[(2−エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、商品名「アロンオキセタン OXT−212」、東亞合成(株)製
ALOX:3−アリルオキシオキセタン
OXT−221:ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル]エーテル、商品名「アロンオキセタン OXT−221」、東亞合成(株)製
OXT−121:1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、商品名「アロンオキセタン OXT−121」、東亞合成(株)製
<エポキシ化合物>
セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製
E−PS:エポキシヘキサヒドロフタル酸2−エチルヘキシル、商品名「サンソサイザー E−PS」、新日本理化(株)製
X−22−163:両末端エポキシ変性シリコーン、エポキシ基当量:200g/mol、商品名「X−22−163」、信越化学工業(株)製
EP0419:エポキシ基(=グリシジルオキシプロピル基)とイソオクチル基を有するポリオルガノシルセスキオキサン、分子量1324.37、商品名「EP0419」、豊通ケミプラス(株)製
<光酸発生剤>
商品名「CPI−110P」、サンアプロ(株)製、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファートおよびチオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビス(ヘキサフルオロホスファート)の混合物(99.5/0.5)