(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の授乳用の椅子では、授乳する際、乳児の体重全体を母親の腕で受け止めた状態で、肘掛けに母親の腕を載せることになる。この体勢で長時間授乳するのは、母親の腕に負担が大きくかかってしまう。また、母親に対して乳児の高さが足りないために、母親は前かがみになる必要があり、授乳の体勢が不安定であり、背中や腰に負担が大きくかかってしまう。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、母親への負担が少なく、安定した体勢での快適な授乳が可能な椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)座部と背もたれと肘置きとを備えた椅子において、
前記背もたれに腰サポートクッションが一体に設けられ、前記肘置きに載置される両腕部を有し
、前記両腕部により形成される内周部が使用者の腰が嵌る凹部を形成する授乳クッションが設けられ、
前記凹部が前記腰サポートクッションに収まり、前記授乳クッションが前記腰サポートクッションから取り外し可能であることを特徴とする。
【0007】
ここで、クッションが椅子から着脱可能に設けられているため、授乳時には、椅子から外してクッションの両腕部を椅子の肘置きに載置し、クッションに乳児を載せて授乳することができる。このとき、母親は自分の腕を椅子の肘置き上にクッションを介して載せることができるため、例えば、椅子とは別々に設けられたクッションやタオルなどを利用して乳児の高さを高くすることなく、母親の腕の負担を軽減することができる。
さらに、肘置き上にクッションを載置可能であるため、母親に対する乳児の高さを確保することができる。これにより、前かがみにならずに授乳することができるため、腰や背中への負担を抑えることができる。
また、授乳以外に椅子として使用するときは、椅子にクッションを備え付けることが可能となる。
【0009】
ここで、授乳以外に椅子として使用するときは、クッションを背もたれに収容することができるので、クッションにより背中を支えることができる。これにより、授乳時以外にも、座り心地の良い椅子として機能する。
【0010】
(
2)(1)に記載の椅子において、前記座部を支持する左右一対の脚部を前後に一
対備え、前側の前記一対の脚部間に足置き部を有することを特徴としてもよい。
【0011】
ここで、授乳時に、母親に対する乳児の高さが足りない場合は、母親が足置き部に足を載せることで、例えば、つま先立ちをすること等せずに、母親に対する乳児の高さを確保することができる。これにより、前かがみにならずに授乳することができ、母乳の分泌を良好にし易くなる。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載の椅子において、前記肘置きの
前端部までの、前記背もたれの正面から
の水平方向の長さが、200mm以上300mm以下の範囲内であることを特徴としてもよい。
【0013】
ここで、背もたれからの肘置きの出っ張りが小さいため、乳児を抱きかかえながら椅子に座ったときに、肘置きに使用者の肘や乳児の頭部がぶつかってしまうのを防止することができる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか一項に記載の椅子において、前記座部には、中央部に窪みを有する座クッションが
一体に設けられていることを特徴としてもよい。
(5)(1)から(4)のいずれか一項に記載の椅子において、前記肘置きの上面の位置が、前記座部に使用者が着座した状態での授乳時における前記使用者の肘の位置より低いことを特徴としてもよい。
【0015】
ここで、座クッションの中央部に窪みが設けられているため、母親が座った際に、産後の会陰部の痛みを軽減することができる。また、窪んでいることが分かるため、母親が座りやすくなる。また、貫通孔ではなく、窪みであるため見た目に優しく、一見すると、通常の椅子に見えることで見栄えが良く、母親が周囲の目を気にすることなく、例えば食事や休息時などにも使用できる上、授乳者以外でも座りやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、母親への負担が少なく、安定した体勢で乳児(新生児)への快適な授乳を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[一実施形態]
以下、
図1から
図4を参照し、本発明の一実施形態に係る椅子について説明する。なお、以下の説明において、前後、左右、上下の各呼称は、座部に着座した使用者が正規姿勢であるときの使用者を基準とした向きである。
本発明に係る椅子1は、
図1及び
図2に示すように、座部11と、背もたれ12と、肘置き13とを備えている。また、背もたれ12には、前面に向かって突出した腰サポートクッション14が設けられている。腰サポートクッション14は正面視において略円形状である。
また、座部11には、中央部に窪み15aを有する座クッション15が設けられている。座クッション15は、貫通孔ではなく窪んでいることが好ましいが、貫通孔が形成されている場合は、カバー等により座クッション15が覆われていることが好ましい。
【0019】
椅子1は、
図1及び
図2に示すように、座部11を支持する左右一対の脚部16,17を前後に一対さらに備えている。前側の一対の脚部17,17間には足置き部18が設けられている。足置き部18は床面から所定の高さの位置に設けられており、使用者の足が載置可能である。
【0020】
肘置き13は、後側の一対の脚部16,16の上端にそれぞれ設けられている。肘置き13は、平面視において前後方向に長い矩形状に形成されていて、肘置き13の前後両端部は、円弧状に面取りされている。また、肘置き13の後端が脚部16の上端に取り付けられており、肘置き13は脚部16の前方に突出している。これにより、背もたれ12と肘置き13の後端との間には隙間Sが設けられている。
また、肘置き13の、背もたれ12の正面から水平方向の長さL1が、200mm以上300mm以下の範囲内であることが好ましい。
また、肘置き13の上面は平坦13aに形成されている。
【0021】
座部11の高さHは、
図3に示すように、一般的な授乳用の椅子の座部の高さよりも高く構成されている。具体的には、平均的な
身長の女性が座部11に座り、床面に足を付けた際に、膝Kの曲げ角度が90°以上であることが好ましい。このような高さに座部11を設定することにより、着座した母親Mが乳児Bを抱えた状態であっても、立ち上がり易くなる。一方、母親Mが座部11に座り、足を足置き部18に載せることで、膝Kの曲げ角度αが鋭角となる。すなわち、母親Mの膝Kを、その膝Kが前方斜め上方に向けて凸となるように折り曲げさせることができる。
【0022】
クッション20は、
図4に示すように、保持部21(中央部)と、保持部21の両側に設けられた両腕部22,22とを備えている。クッション20は、保持部21及び両腕部22,22により弧状(円弧状)を形成し、クッション20の内周部20aにより凹部23が形成されている。クッション20の凹部23には、使用者の腰を挟み込むことが可能であり、クッション20の両腕部22,22は、保持部21に対して母親の腰をはさみ込む方向に湾曲している。また、クッション20は、クッション20が延びる方向に直交する方向に沿う断面視で、円形状に形成されていて、クッション20のうち、母親の腰を凹部23に挟み込んだときに上下を向く面である表面20bは両面とも、前述の断面視で外側に向けて凸となるように湾曲している。また、クッション20の厚みは全体的に均一である。
【0023】
クッション20は、椅子1に対して着脱可能である。具体的には、腰サポートクッション14の上部の湾曲部にクッション20の凹部23が収まるように、腰サポートクッション14が形成されている。これにより、腰サポートクッション14と背もたれ12と隙間Sとにより、椅子1にクッション20が収納可能となっている。
また、授乳用として椅子1を使用するときは、
図2に示すように、椅子1の肘置き13にクッション20の両腕部22,22を載置すること可能である。
図3に示す授乳時において、クッション20の保持部21が母親Mの太ももF上あたりに接触する。すなわち、左右の肘置き13及び母親の太ももFでクッション20を保持可能である。
すなわち、授乳用に椅子1を使用する場合は、左右の肘置き13にクッション20を載せ、授乳以外、例えば、使用者が食事や休息用に椅子1を使用する場合は、クッション20の凹部23を腰サポートクッション14に嵌めることできる。
【0024】
次に、本発明に係る椅子1の使用方法について説明する。
母親Mは授乳する場合、
図1に示すように、背もたれ12の一部として椅子1に収容されたクッション20を取り外す。そして、
図3に示すように、母親Mが乳児Bを抱えながら、座クッション15に座り、椅子1の左右の肘置き13で同時に支えるようにクッション20を置き、クッション20の凹部23を腰に嵌める。あるいは、母親Mが立っている状態で、クッション20の凹部23を腰に嵌めて、椅子1に座る。
このとき、乳児Bと母親Mとの距離がある場合(母親Mが前かがみにならないと授乳できない場合、母親Mに対して乳児Bの高さが足りない場合)、母親Mは足置き部18に足を載せる。母親Mの膝Kが前方斜め上方に向けて凸となるように折り曲がるので、クッション20が上に持ち上がり、乳児Bと母親Mとの距離が近くなる。これにより、背筋を伸ばした状態で授乳することができ、母乳の分泌を良好にし易くすることができる。
またこのとき、乳児Bは主にクッション20の保持部21上で支持される。ここでクッション20の保持部21が、肘置き13よりも前方に位置しているので、例えば、母親Mが乳児Bの位置を保持部21上で変更したとしても、乳児Bの頭部が肘置き13に衝突し難くなっている。
【0025】
授乳後は、乳児Bを抱えながら立ち上がり、クッション20の凹部23を腰サポートクッション14の上部に嵌める。このとき、肘置き13を支えとして立ち上がるのに利用してもよい。その後、乳児Bが寝てしまった場合は、母親Mは乳児Bを抱きながら椅子1に寄り掛ることができる。このとき、クッション20が背もたれ12の一部として機能するため、ソファのように座り心地のよい椅子となる。また、母親単独で、食事や休息用の椅子として使用することができる。
【0026】
本発明に係る椅子1によれば、クッション20が椅子1から着脱可能に設けられているため、授乳時には、椅子1からクッション20を外して、クッション20の両腕部22を椅子1の肘置き13に載置し、クッション20に乳児を載せて快適に授乳することができる。このとき、母親Mは自分の腕を椅子1の肘置き13上にクッション20を介して載せているため、椅子とは別に設けられたクッションやタオルなどを利用することなく、長時間に及ぶ授乳による腕の負担(腱鞘炎)を予防することができる。
さらに、肘置き13上にクッション20を載置することができるため、母親Mに対して乳児Bの高さを上げることができる。これにより、前かがみにならずに授乳することができるため、背中や腰に負担をかけることがない。
また、授乳以外に椅子として使用するときは、椅子1の背もたれにクッション20を備え付けることができる。
【0027】
また、腰サポートクッション14に、クッション20の内周部により形成された凹部 23が収まるため、授乳以外に椅子として使用するときは、クッション20を背もたれ12に収容することができるので、クッション20が背もたれ12の一部として背中を支えることができる。これにより、授乳時以外にも、座り心地の良い椅子として機能する。
【0028】
また、母親Mに対して乳児Bの高さが足りない場合、従来では、乳児Bと母親Mとを近づけるために、つま先立ちや前かがみになったり、乳児とクッションとの間にタオル等を敷き詰めて乳児の高さを調整する等の作業を行っていた。つま先立ちを行うと疲れやすく、また、前かがみになると、背中や腰に負担がかかるとともに、母乳の分泌が悪くなっていた。しかしながら、本実施形態に係る椅子1の足置き部18に母親Mの足を載せることで、つま先立ちや前かがみにならず、また、タオル等を敷き詰めることなく、授乳することが可能となる。これにより、足置き部18に足を載せるだけで、背筋を伸ばした状態で授乳できるため、母乳の分泌が良く、背中や腰への負担も軽減することができる。
【0029】
また、背もたれ12からの肘置き13の出っ張りが小さいため、乳児Bを抱きかかえながら椅子1に座ったときに、肘置き13に母親Mの肘や乳児Bの頭部がぶつかってしまうのを防止することができる。
また、上述した従来の椅子では、座部の中央部には貫通孔が形成され、この貫通孔が、貫通孔の形状に合致するマットで塞がれている。そして、授乳の際にマットを外すことで、産後の痛みの影響を抑えているが、授乳の度に中腰になって母親がマットを外すのは、体に負担がかかる。その他、通常の授乳用の椅子は穴が開いたままであるであるため、一見して、授乳用の椅子であることが分かるため、授乳者以外は座りにくい。
しかしながら、本発明に係る椅子1では、座クッション15に窪み15aが設けられているため、産後の会陰部の痛みを軽減することができつつ、一見すると、通常の椅子に見えることで、見た目に優しく、母親が周囲の目を気にすることなく、例えば、食事や休憩時などにも使用することができる上、授乳者以外でも座りやすくなる。
さらには、窪み15aは貫通孔に比べて母親の不安感や他人に見られた際の抵抗感を和らげることができる。
【0030】
なお、クッション20の形状は上述した形状に限定されない。
例えば、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、略直線状のクッション30であって、その延びる方向に交差する方向に変形容易に形成されたクッション30(例えば、いわゆるビーズクッション等)の先端部同士(両腕部22同士)を留めて円弧状にするクッション30を採用してもよい。
また
図6に示すように、V字状に屈曲し、両直線部分の先端部が両腕部22とされたクッション40を採用してもよい。
さらに
図7に示すように、直線状に延びる保持部21の両端部からそれぞれ、同一方向に直線状の両腕部22を延ばしたような、全体としてコ字状に屈曲しているクッション50であってもよい。
つまり、クッションとして、少なくとも両腕部を一部として弧状を形成する形態を採用することが可能であり、肘置き部に載置される両腕部を有する他の形態に適宜変更することができる。
また、クッション20は、座部11または背もたれ12に対して着脱可能であることが好ましいが、椅子1に対して着脱可能であれば、特に限定されない。
また、クッション20の表面20bは両面とも湾曲した形状としたが、一方の面が湾曲せずに、平面状であってもよい。これにより、背もたれ12が平面状である場合、背もたれ12に収納する際、背もたれ12にフィットして収納することができる。
また、隙間Sを設けたが、後側の脚部16,16の位置によっては、隙間Sを設けなくてもよい。
また、肘置き13には、哺乳瓶や使用者の飲み物を載置可能な飲み物フォルダーが設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、母親Mによる母乳の授乳時における椅子1の利用について説明したが、これに限られず、母親が人工乳を利用して授乳するときに椅子1を利用することも可能である。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。