特許第6240130号(P6240130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フォールブルック インテレクチュアル プロパティー カンパニー エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240130
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】連続可変変速機
(51)【国際特許分類】
   F02B 67/06 20060101AFI20171120BHJP
   F16H 15/52 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F02B67/06 H
   F02B67/06 D
   F02B67/06 E
   F16H15/52 G
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-179195(P2015-179195)
(22)【出願日】2015年9月11日
(62)【分割の表示】特願2013-199447(P2013-199447)の分割
【原出願日】2007年6月21日
(65)【公開番号】特開2016-35264(P2016-35264A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】60/816,713
(32)【優先日】2006年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512221120
【氏名又は名称】フォールブルック インテレクチュアル プロパティー カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ドナルド シー.
(72)【発明者】
【氏名】スミスソン ロバート エー.
(72)【発明者】
【氏名】カーター ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】レーア チャールズ ビー.
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 実公平01−039865(JP,Y2)
【文献】 特表2004−530847(JP,A)
【文献】 実開昭56−047231(JP,U)
【文献】 特開2005−003063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 67/00
F16H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、第1のトラクションリング及び第2のトラクションリングの間に挟まれる複数の球状遊星とを有する動力変調装置に一体化された自動車のオルタネータへ一定の動力を供給するための方法であって、
原動機によって生成された動力を表す信号をセンサから受け取り、
前記信号を前記オルタネータにとっての所望の入力速度と比較し、
第1の継手によって前記原動機に接続されかつ第2の継手によって前記オルタネータに接続された動力変調装置の速度比を調節するように構成されたモータに伝達し、
前記動力変調装置は、
それぞれ遊星軸を備える複数の球状遊星と、
前記複数の球状遊星と互いに接触するサンと、
前記複数の球状遊星に接触する第1のトラクションリング及び第2のトラクションリングと、を含み、
前記モータが前記複数の球状遊星に対して前記遊星軸の傾きの角度を変化させるように構成され、前記原動機から出力される前記動力の変化あるいは前記オルタネータにとっての所望の入力速度に対応して、前記複数の球状遊星の傾きの角度の変化が前記動力変調装置の速度比の変更を生じさせて、前記オルタネータに入力される所望の動力を供給し、さらに前記速度比の調節が実行される、方法。
【請求項2】
前記速度比は、前記オルタネータの最小能力に基づいている、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記動力変調装置に、さらに、ファンが接続されている、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記モータと前記動力変調装置とがエンジンのクランクシャフトに軸方向に整列する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記動力変調装置が、
前記サンに動作可能に接続された固定子と、
前記固定子の周囲に同軸にかつ同心に取り付けられた回転子と、をさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記動力変調装置が、発電機あるいは電気モータとして機能するように構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記動力変調装置が、一つのハウジングに入れられている、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2006年6月26日付の米国特許仮出願第60/816,713号の利益
を主張し、同出願の全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
本発明の分野は、一般的には、機械式および/または電気機械式の動力変調装置および
動力変調方法に関し、さらに詳しくは、連続的かつ/または無限に可変な遊星動力変調装
置、ならびに原動機から1つ以上の補機または被駆動装置への動力の流れなど、駆動系ま
たは駆動部における動力の流れを変調するための方法に関する。
【0003】
特定のシステムにおいては、単一の動力源が複数の装置を駆動する。動力源は、典型的
には、動力源の性能が最適となる動作速度範囲が狭い。動力源を、その性能が最適となる
動作速度範囲で運転することが好ましい。被駆動装置も、典型的には、被駆動装置の性能
が最適となる動作速度範囲が狭い。被駆動装置もまた、その性能が最適となる動作速度範
囲で動作させることが好ましい。動力源から被駆動装置へと動力を伝えるために、通常は
、継手が使用される。直接の変調なしの継手が動力源を被駆動装置へと接続する場合、被
駆動装置は、動力源と同じ速度で動作する。しかしながら、多くの場合、被駆動装置の最
適な動作速度は、動力源の最適な動作速度と同じではない。したがって、動力源の速度と
被駆動装置の速度との間で変調を行うように構成された継手を、システムに取り入れるこ
とが好ましい。
【0004】
動力源と被駆動装置との間の継手を、動力源からの入力速度が、所与の継手の出力にお
いて減速または増速されるように選択することができる。しかしながら、広く実施されて
いるシステムにおいては、典型的な公知の駆動系の構成および/または継手機構が、動力
源からの入力速度と被駆動装置へと伝達される動力の速度の間に、最良でも一定の比を可
能にしているにすぎない。そのようなシステムの1つは、多数の自動車の用途において使
用されているいわゆるフロントエンド補機駆動(Front End Accessor
y Drive:FEAD)システムである。典型的なFEADシステムにおいては、原
動機(通常は、内燃機関)が、冷却ファン、ウォーターポンプ、オイルポンプ、パワース
テアリングポンプ、オルタネータ、などといった1つ以上の補機を動作させるための動力
を供給する。自動車の動作時に、補機類は、原動機の速度に対して固定の関係を有する速
度で動作することを強いられる。すなわち、例えばエンジンの速度がアイドル時の毎分8
00回転(800rpm)から巡航速度の2,500rpmへと高められるとき、エンジ
ンによって駆動される各補機の速度は、エンジン速度の増加に比例して増加し、一部の補
機は、1,600rpm〜8,000pmの範囲のさまざまな速度で運転される可能性が
ある。このようなシステムの構成の結果として、所与の補機が、その最大効率の速度範囲
を外れて運転されることもしばしばである。結果として、運転時に廃棄されるエネルギー
、ならびに速度および/またはトルクの範囲に対処するための大きすぎる補機サイズから
、非効率が生じる。
【0005】
したがって、原動機と被駆動装置との間の動力の伝達を変調するための装置および方法
に対するニーズが常に存在している。いくつかのシステムにおいては、電気モータおよび
/または内燃機関からさまざまな効率最適加速度で動作する1つ以上の被駆動装置への速
度および/またはトルクの伝達を調節することが、有益であると考えられる。いくつかの
現行の自動車の用途においては、既存のパッケージングの制約の範囲内でフロントエンド
補機駆動部を制御するための動力変調装置に対するニーズが存在している。後述される本
発明の動力変調装置および/または駆動系の実施の形態は、これらのニーズの1つ以上に
対処する。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において図示および説明されるシステムおよび方法は、いくつかの特徴を有し
ているが、それらのうちのただ1つが単独で望ましい属性をもたらすわけではない。まず
は、以下の説明によって明らかにされるとおりの技術的範囲を限定することなく、本明細
書に開示される本発明の実施の形態のうちのいくつかについて、より目立つ特徴を簡単に
説明する。この説明を検討し、とくには「好ましい実施の形態の詳細な説明(Detai
led Description of the Preferred Embodim
ents)」という名称の個所を検討することで、本システムおよび本方法の特徴がどの
ようにして公知のシステムおよび方法を超えるいくつかの利点をもたらすのかを、理解で
きるであろう。
【0007】
本発明の実施の形態の一態様は、図15A図20に広く示されているような複合動力
変調装置に関する。本発明の実施の形態の他の特徴は、図2A図2D図3図4、図
10、図13図14に広く示されているとおりの動力変調装置を包含する。本発明の実
施の形態のさらに別の態様は、図1A図1B、あるいは図21および図22に広く示さ
れているような動力変調付きの駆動系に関する。さらに、本発明の実施の形態は、図1A
図27Bに広く示され、本明細書において説明されるような装置、アセンブリ、サブア
センブリ、構成部品、および/または方法に関する。
【0008】
一実施の形態において、本発明は、クランクシャフトを有する自動車のエンジンのため
のフロントエンド補機駆動部(FEAD)に関する。FEADが、クランクシャフトに取
り付けられた動力変調装置を含むことができ、補機が、この動力変調装置へと動作的に接
続される。動力変調装置は、可変遊星トルク/速度調節器を有することができ、トルク/
速度調節器は、特定の用途においては、回転可能なハウジングを有している。
【0009】
別の実施の形態において、本発明は、原動機シャフトを有する車両のためのFEADに
関する。FEADは、原動機シャフトへと直接接続された動力変調装置を含むことができ
る。さらにFEADは、この動力変調装置へと動作的に接続された補機を含むことができ
る。特定の実施の形態においては、動力変調装置が、傾けることができる遊星−レッグア
センブリを有している。補機は、例えばウォーターポンプ、冷却ファン、または空調コン
プレッサであってよい。動力伝達継手は、ベルトまたはチェーンなどといったエンドレス
部材であってよい。いくつかの用途においては、FEADが、動力変調装置を自動車の動
かない部材へと固定するためのブラケットを含んでいる。動力変調装置の比を制御するた
めの制御機構を、設けることができる。制御機構は、ステッピングモータを制御するため
の制御ハードウェアおよび/またはソフトウェアを含むことができる。
【0010】
さらに別の進歩的な実施の形態においては、FEADが、複合装置と、この複合装置を
原動機へと動作的に接続するように構成された動力伝達継手とを含んでいる。複合装置は
、始動モータ、発電機、および動力変調装置を、これら始動モータ、発電機、および動力
変調装置が1つの装置へと一体化されるような方法で含むことができる。複合装置は、電
機子および磁界を有することができ、電機子および磁界を、どちらも共通の軸を中心にし
て回転できるように配置することができる。さらにFEADは、複合装置を補機へと動作
的に接続するように構成された第2の動力伝達継手を有することができる。補機は、例え
ばウォーターポンプ、空調コンプレッサ、および/または冷却ファンであってよい。いく
つかの実施の形態においては、複合装置が、回転可能なハウジングを有している。特定の
実施の形態においては、回転可能なハウジングを、複数の永久磁石へと組み合わせること
ができる。
【0011】
本発明のさらなる態様は、被駆動装置へと接続された動力変調装置へと接続された原動
機を有している駆動系に関する。動力変調装置を、例えば遊星歯車セットを介して、原動
機へと接続することができる。被駆動装置は、コンプレッサ、バルブ、ポンプ、ファン、
オルタネータ、または発電機であってよい。この駆動系が、動力変調装置および/または
原動機へと接続された制御システムを含むことができる。
【0012】
本発明のさらにもう1つの態様は、複数の動力変調装置へと接続された原動機を有する
駆動系を包含する。いくつかの実施の形態においては、この駆動系が、それぞれが1つの
動力変調装置に対応するように複数の動力変調装置へと接続された複数の被駆動装置を含
んでいる。原動機を、例えばベルトによって複数の動力変調装置へと接続することができ
る。
【0013】
いくつかの実施の形態において、本発明の別の態様は、バリエータアセンブリと、バリ
エータアセンブリの少なくとも一部を支持するように構成されたケージアセンブリと、当
該動力変調装置へのトルクを受け取るように構成された入力アセンブリと、当該動力変調
装置からトルクを伝達するように構成された出力アセンブリとを有し、入力および出力ア
センブリがバリエータアセンブリへと接続されている動力変調装置に関する。この動力変
調装置が、ケージアセンブリ、入力アセンブリ、および/またはバリエータアセンブリを
支持するように構成された中心軸を含むことができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、サンへと接続されたサン軸を有する複合駆動装置に向けら
れている。いくつかの実施の形態においては、この複合駆動装置が、それぞれが遊星軸を
有している複数の遊星と、サンを遊星軸へと動作的に接続する制御装置とを含んでいる。
一実施の形態においては、複合駆動装置に、複数の遊星へと接続されたトラクションリン
グと、トラクションリングへと組み合わせられた1つ以上の磁石とが設けられる。複合駆
動装置は、前記1つ以上の磁石に電磁気的に接続された電機子と、電機子をサン軸へと接
続する動力伝達継手とを含むことができる。
【0015】
本発明の1つの態様は、サンに接する複数の球状遊星と、サンへと動作的に接続された
電機子と、電機子の周囲に同軸かつ同心に取り付けられた電界と、複数の球状遊星に接す
る第1および第2のトラクションリングとを有する動力変調装置に関する。いくつかの実
施の形態においては、電機子および電界が、電機子および電界の両者が電機子と同軸な軸
を中心として回転できるように構成されている。一実施の形態においては、この動力変調
装置が、軸方向に動くことができるサン軸を含んでおり、サン軸が、サンを動かすことに
よって当該動力変調装置の伝達比の変速を促すように構成されている。この動力変調装置
に、動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじと、シフトねじへとねじ込まれ
るシフトナットとを設けることができ、シフトナットが、サン軸の軸方向の動きを生じさ
せるように構成される。
【0016】
本発明のまた別の態様は、動力変調装置の伝達比を変速するための装置に関する。この
装置が、動くことがない構造体へと取り付けられたシフトねじへとねじ込まれるシフトナ
ットを含んでいる。シフトナットが、好ましくは、動力変調装置のサン軸に軸方向の動き
を生じさせるように構成されている。
【0017】
本発明のさらなる態様は、動力変調装置においてトルクを伝達するためのシャフトに関
する。一実施の形態においては、シャフトが、当該シャフトの主軸に平行である第1およ
び第2の複数の溝を含んでおり、第1および第2の複数の溝は、当該シャフトの外表面に
形成されている。第2の複数の溝は、好ましくは、第1の複数の溝よりも当該シャフトの
末端近くに位置している。いくつかの実施の形態においては、シャフトに、動力変調装置
のサンを受け入れてこのサンと結合するためのサン座が設けられる。一実施の形態におい
ては、シャフトが、おおむね当該シャフト内に同心に形成されたシャフト穴を有している
【0018】
本発明の別の態様は、複数の傾けることができる球状遊星を有している動力変調装置へ
と接続された補機を有している駆動系に関する。一実施の形態においては、この駆動系が
、動力変調装置の伝達比を調節するために動力変調装置へと接続されたモータを含んでい
る。いくつかの実施の形態においては、この駆動系が、モータを制御するためのコントロ
ーラを有している。一実施の形態においては、この駆動系の動力変調装置が、モータによ
って動力変調装置の比を調節するときに軸方向に動くように構成されたサン軸を備えてい
る。
【0019】
これらの進歩的態様および他の進歩的態様が、以下の詳細な説明を検討し、添付の図面
を眺めることで、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は、本明細書に取り入れられて本明細書の一部を形成するが、本発明の実施
の形態の固有の特徴を示している。
図1A】動力変調装置(PMD)を取り入れてなる駆動系の概略のブロック図である。
図1B】PMDを取り入れてなるさらに別の駆動系の概略のブロック図である。
図2A】PMDの一実施の形態の断面図である。
図2B図2AのPMDの斜視図である。
図2C】ケースに冷却フィンを備えている図2AのPMDの斜視図である。
図2D】ケースに冷却ファンを備えている図2AのPMDの斜視図である。
図3】PMDの第2の実施の形態の断面図である。
図4図3のPMDの部分分解断面図である。
図5図1のPMDの取り付けブラケットの斜視図である。
図6図1のPMDの制御サブアセンブリの斜視図である。
図7】PMDにおいて使用することができるカム・ローラ・ディスクである。
図8】PMDにおいて使用することができるステータ板である。
図9】PMDにおいて使用することができる掻き落としスペーサの斜視図である。
図10】PMDにおいて使用することができるシフタアセンブリの断面図である。
図11】PMDにおいて使用するための遊星−レッグアセンブリの斜視図である。
図12】球式のPMDにおいて使用することができるケージの斜視図である。
図13】PMDの別の実施の形態の断面図である。
図14図13のPMDの斜視図である。
図15A】PMD、モータ、および発電機を含んでいる複合装置の概念図である。
図15B図15Aの複合装置の一実施の形態の断面図である。
図16図15Bの複合装置のスプラインアセンブリの一部分の斜視図である。
図17図15Bの複合装置の電機子マウントの斜視図である。
図18図15Bの複合装置の薄板の斜視図である。
図19図15Bの複合装置の電機子の斜視図である。
図20図15Bの複合装置の斜視図である。
図21】自動車のエンジンのクランクシャフトへと接続された図13のPMDの斜視図である。
図22図21のPMDの別の斜視図である。
図23図13のPMDの別のトラクションリングの正面図である。
図24図23のトラクションリングの断面図である。
図25図23のトラクションリングの斜視図である。
図26A図15Bの複合装置において使用することができるシャフトの斜視図である。
図26B図26Aのシャフトの上面図である。
図26C図26Aのシャフトの断面図である。
図27A図15Bの複合装置のための制御システムのいくつかの構成部品の分解斜視図である。
図27B図27Aに示した構成部品の断面図である。
図28】本明細書に記載される動力変調装置において使用することができる制御システムのブロック図である。
【好ましい実施の形態の詳細な説明】
【0021】
以下で、好ましい実施の形態を、添付の図面を参照して説明する。添付の図面において
は、同じ参照番号は、全体を通じて、同じ構成要素を表す。本明細書に提示される説明に
おいて使用される用語は、本発明の特定の具体的実施の形態の詳細な説明に連動して使用
されているにすぎないため、それらは決して限定的または制限的に解釈されるべきもので
ない。さらに、本発明の実施の形態は、いくつかの新規な特徴を含むと考えられるが、そ
れらのうちのただ1つが単独で望ましい属性をもたらすわけではなく、あるいは本明細書
に記載の本発明を実施するために不可欠というわけでもない。
【0022】
本明細書において使用されるとき、用語「動作的に接続される(operationa
lly connected)」、「動作的に連結される(operationally
coupled)」、「動作的にリンクされる(operationally lin
ked)」、「動作可能に接続される(operably connected)」、「
動作可能に連結される(operably coupled)」、および「動作可能にリ
ンクされる(operably linked)」などは、一方の要素の動作によって第
2の要素に対応、追随、または同時の動作または作動が引き起こされる要素間の関係(機
械的、リンク、継手、など)を指す。本発明の実施の形態を説明するために上記用語が使
用されるとき、要素をリンクまたは連結する特定の構造または機構が、典型的には説明さ
れる。しかしながら、特に具体的に明記しない限り、上記用語のうちの1つが使用される
とき、それら用語は、実際のリンクまたは連結がさまざまな形態(特定の場合には、当業
者にとって自明であろう)をとってよいことを示している。説明の目的において、用語「
半径方向の(radial)」は、本明細書において使用されるとき、変速機または連続
可変装置の長手軸に対して垂直な方向または位置を指す。用語「軸方向の(axial)
」は、本明細書において使用されるとき、変速機または連続可変装置の主軸または長手軸
に平行な軸に沿った方向または位置を指す。
【0023】
本明細書において説明される本発明の動力変調装置またはトルク/速度調節器の実施の
形態は、広くには、米国特許第6,241,636号、同第6,419,608号、同第
6,689,012号、および同第7,011,600号、ならびに米国特許出願第11
/243,484号(米国特許出願公開第2006/0084549A1号)に開示され
ているものなど、連続可変変速機(CVT)装置に関する。これらの特許および出願のそ
れぞれの全開示が、本明細書に参照により組み込まれる。以下で説明される本発明の特定
の実施の形態は、球状速度調節器を使用する球式の可変装置であって、典型的にはそれぞ
れの球状速度調節器の回転軸を傾けることができる球式の可変装置を取り入れている。速
度調節器は、動力調節器、ボール、プラネット、球歯車またはローラとしても知られてい
る。通常は、調節器は、CVTの長手軸に垂直な平面において半径方向に配列される。ト
ラクションリングが、動力調節器のアレイの各側に1つ配置され、動力調節器に接すると
ともに、一方または両方のトラクションリングが、トラクションリングから動力調節器を
介して他方のトラクションリングへとトルクを伝えるために、ローラへと挟み付けの接触
力を加える。第1のトラクションリングが、ローラへと入力回転速度で入力トルクを加え
る。ローラが自身の固有の軸を中心にして回転し、出力回転速度で第2のトラクションリ
ングへとトルクを伝える。出力回転速度に対する入力回転速度の比(「速度比」)は、第
1および第2のトラクションリングのそれぞれのローラの回転軸への接触点の半径の比の
関数である。ローラの軸をCVTの軸に対して傾けることで、速度比が調節される。
【0024】
本明細書に開示されるトルク/速度調節装置の一態様は、原動機が種々の被駆動装置を
駆動する駆動システムに関する。原動機は、例えば、電気モータおよび/または内燃機関
であってよい。本明細書における説明の目的において、補機類には、原動機を動力とする
ことができる任意の機械または装置が含まれる。例示の目的において、それらの機械また
は装置は、これらに限られるわけではないが、動力取り出し装置(Power Take
off Device:PTO)、ポンプ、コンプレッサ、発電機、補助電気モータ、な
どであってよい。さらに、補機類として、オルタネータ、ウォーターポンプ、パワーステ
アリングポンプ、燃料ポンプ、オイルポンプ、空調コンプレッサ、冷却ファン、スーパー
チャージャ、および自動車のエンジンを典型的に動力とする他の任意の装置を挙げること
ができる。すでに述べたように、通常は、原動機の速度が、速度または出力の要求が変化
するにつれて変化する一方で、補機類は、多くの場合、所与の実質的に一定な速度で最適
に機能する。本明細書に開示されるトルク/速度調節装置の実施の形態を、原動機によっ
て駆動される補機類へと届けられる動力の速度を制御するために使用することができる。
【0025】
例えば、いくつかの実施の形態においては、本明細書に開示される速度調節器を、自動
車のエンジンのクランクシャフトに取り付けられたプーリによって駆動される自動車の補
機類の速度を制御するために使用することができる。通常は、補機類は、エンジンが低速
でアイドリングしているとき、およびエンジンが高速で動作しているときの両方で、適切
に機能しなければならない。補機類が、1つの速度において最適に動作する一方で、別の
速度において効率の低下を抱えることもしばしばである。エンジンが低速以外の速度で運
転している多くの場合に、補機類が余分な動力を消費し、車両の燃料経済性を低下させる
。さらに、補機類によって生じる動力の引き出しは、車両を走行させるためのエンジンの
能力を小さくし、場合によってはより大型のエンジンを必要にする。
【0026】
特定の状況において、本明細書に開示される本発明のトルク/速度調節装置の実施の形
態を、エンジンが低速で動作しているときに補機類への速度を高め、エンジンが高速で動
作しているときに補機類への速度を下げるために使用することができる。したがって、補
機類を1つの実質的に好ましい速度で動作させることが可能になることで、補機類の設計
および動作を最適化することができ、補機類を、エンジン速度が低いときに充分な性能を
もたらすために必要以上に大きくする必要がない。また、エンジンが高速で動作している
ときに、トルク/速度調節装置が補機類への速度を減少させて、高いrpmにおいて補機
類が耐えなければならない応力荷重を小さくできるため、補機類を小さくすることが可能
である。補機類が高速にさらされることがないため、期待される寿命を大幅に長くするこ
とができる。いくつかの場合には、補機類を低速または高速で動作させなくてもよいため
、より滑らかな車両の動作がもたらされる。さらに、補機類がより低い速度で動作するた
め、自動車を高速においてより静かに運転することができる。
【0027】
本明細書に開示されるトルク/速度調節装置は、補機類ならびに自動車のエンジンのサ
イズおよび重量の削減を促進でき、したがって車両の重量を小さくし、燃料経済性を高め
ることができる。さらに、いくつかの場合には、より小さな補機類およびより小さなエン
ジンを使用するという選択肢が、これらの部品および自動車のコストを低くする。より小
さな補機類およびより小さなエンジンは、パッケージングに柔軟性をもたらすことができ
、エンジン室のサイズを小さくすることを可能にする。また、本明細書に開示されるトル
ク/速度調節装置の実施の形態は、エンジンのあらゆる動作範囲において補機類を最も効
率的な速度で動作させることを可能にすることで、燃料経済性を高めることができる。最
後に、このトルク/速度調節装置は、低速以外のあらゆるエンジン速度において補機類が
余分な動力を消費することを防止することで、燃料経済性を向上させる。
【0028】
ここで、図1Aに目を向けると、本明細書に記載の本発明の実施の形態による動力変調
装置2(すなわち、PMD2)を含む一般的な駆動系50が示されている。駆動系50は
、第1の継手6を介してPMD2へと接続された少なくとも1つの原動機4を含むことが
できる。通常は、PMD2が、第2の継手8を介して被駆動装置8へと動力を届けるよう
に構成されている。いくつかの実施の形態においては、潤滑システム12が、PMD2へ
と接続され、あるいはPMD2に一体化されている。典型的には、駆動系50は、PMD
2および/または原動機4へと接続された制御システム14を含むことができる。
【0029】
原動機4は、例えば、内燃機関、電気モータ、あるいは両者の組み合わせであってよい
。特定の用途においては、原動機4が、人力で動かされる機械的なリンクであってよく、
他の実施の形態においては、原動機4は、補助動力付きの人力駆動装置であってよい。用
途に応じ、第1および第2の継手6、10は、スプライン、キー、またはフランジ継手か
ら単一の遊星歯車セット、さらには並列または直列配置の複数の遊星歯車セットおよび他
の歯車を有するギアボックスまでの範囲にわたる任意の種類の継手であってよい。特定の
実施の形態においては、一方または両方の継手6、10を使用しなくてもよく、その場合
には、PMD2が、原動機4または被駆動装置8へと直接接続される。被駆動装置8は、
PMD2および/または第2の継手10からトルクの入力を受け取るように構成された任
意の機械または設備であってよい。被駆動装置8は、例えば、コンプレッサ、バルブ、ポ
ンプ、ファン、車両のオルタネータ、発電機、などであってよい。
【0030】
いくつかの実施の形態においては、潤滑システム12は、PMD2の種々の部品を被覆
および/または冷却するように構成された潤滑剤である。他の実施の形態においては、潤
滑システムは、PMD2における潤滑剤の案内を促進および推進するように構成された部
品を含んでいる。例えば、さらに詳しく後述されるとおり、一実施の形態においては、潤
滑システム12が、PMD2の内表面からPMD2の他の内部部品へと潤滑剤を案内する
スクレーパを含んでいる。さらに他の実施の形態においては、潤滑システム12が、PM
D2の種々の内部部品へと適量の潤滑剤を届けるように構成されたポンプ制御の油圧回路
を含むことができる。駆動系50の特定の実施の形態においては、制御システム14が、
PMD2、原動機4、および/または潤滑システム12と連絡してこれらを制御する電気
式、機械式、または電気機械式の装置であってよい。例えば、一実施の形態においては、
制御システム14は、モータを動作させるためのロジックを備えるモータコントローラを
有している電気機械式のシステムであってよく、モータが、PMD2の状態変化(比の変
更など)を生じさせるべく、1つ以上の機械的な歯車、リンク、などを駆動する。
【0031】
駆動系50の動作の際に、原動機4が、とりわけ原動機4に課される種々の負荷要件に
応じた特定のトルクおよび速度レベルにて動力を生成して届ける。制御システム14は、
PMD2が原動機4からの動力を受け取って、所望の(あるいは、変調された)トルクお
よび速度レベルで動力を被駆動装置8へと届けるような方法で動作し、このトルクおよび
速度レベルは、原動機4の動作のトルクおよび速度レベルと同じである必要はない。いく
つかの用途においては、PMD2を、原動機4から受け取る動力のトルクおよび速度レベ
ルが変動する場合でも、一定の速度で被駆動装置へと動力を届けるように制御することが
望ましい。
【0032】
次に、図1Bを参照すると、駆動系60が示されている。いくつかの実施の形態におい
ては、駆動系60が、1つ以上の継手6Aを介して1つ以上のPMD2A、2B、および
2Cへと接続された原動機4を含むことができる。図示の実施の形態においては、PMD
2Aが、第2の継手10Aを介して被駆動装置8Aへと接続される一方で、PMD2Bが
、第2の継手10Bを介して被駆動装置8Bへと接続されている。いくつかの実施の形態
においては、原動機4が、被駆動装置8Cおよび駆動/被駆動装置8Dへと接続された少
なくとも1つのPMD2Cを含むことができる複合装置16へと、継手6Aを介して接続
される。駆動系60の一実施の形態においては、継手6Aが、ベルトを駆動するプーリを
含んでおり、ベルトが、PMD2A、2B、および2Cのうちの1つ以上を駆動する。い
くつかの実施の形態においては、第2の継手10A、10Bが、例えばチェーンを駆動す
るスプロケットまたはベルトを駆動するプーリであってよい。このチェーンおよびベルト
が、それぞれ、該当の被駆動装置8A、8Bへと接続された対応するスプロケットまたは
プーリを駆動する。このように、駆動系60の一実施の形態においては、動力変調装置を
、駆動系60に存在する被駆動装置のそれぞれに専属させることができる。図示されてい
ないが、PMD2A、2B、2Cのそれぞれが、自身の固有の制御システム14および/
または潤滑システム12を有することができる。さらに別の実施の形態においては、複合
装置16が、オルタネータおよび/または始動モータへと接続または一体化されたPMD
2Cであってよい。一実施の形態においては、例えば、複合装置が、PMD2Cを車両の
冷却ファンおよび/またはウォーターポンプに一体化させている。駆動/被駆動装置につ
いて、PMD2Cとの他の組み合わせまたは一体化が実現可能であり、かつ望ましいこと
が、当業者にとって明らかであろう。
【0033】
次に、図2Aを参照すると、入力−対−出力の速度/トルク比を変化させることができ
る連続可変遊星トルク/速度調節装置100(以下では、動力変調装置100またはPM
D100と称する)の一実施の形態が示されている。いくつかの実施の形態においては、
PMD100が、PMD100の中心を貫いて第1の取り付けブラケット10および第2
の取り付けブラケット11を超えて延びている中心軸105を有している。説明の目的の
ために、中心軸105が、PMD100の長手軸を定め、これがPMD100の他の部品
の位置および/または運動を説明するための基準点として機能する。本明細書において使
用されるとき、用語「軸方向の(axial)」、「軸方向に(axially)」、「
横方向の(lateral)」、「横方向に(laterally)」は、中心軸105
によって定められる長手軸に同軸または平行な位置または方向を指す。用語「半径方向の
(radial)」および「半径方向に(radially)」は、中心軸105によっ
て定められる長手軸から垂直に延びる位置または方向を指す。特定の実施の形態において
は、第1および/または第2の取り付けブラケット11、12が、取り外し可能に構成さ
れている。第1の端部ナット106および第2の端部ナット107が、それぞれ中心軸1
05該当の端部に位置し、中心軸105を取り付けブラケット11、12へと取り付けて
いる。図示のPMD100の実施の形態は、自動車のエンジンのクランクシャフトに取り
付けられて、例えばフロントエンド補機駆動システム(FEAD)の補機類の速度を制御
するために使用されるように構成されているが、PMD100は、トルク/速度調節装置
を利用する任意の設備または車両において実践可能である。中心軸105が、ケージアセ
ンブリ180、入力アセンブリ155、および出力アセンブリ165のために半径方向の
および横方向の支持を提供している。この実施の形態においては、中心軸105が、シフ
トロッド112を収容するように構成された穴199を含んでいる。後述されるように、
シフトロッド112が、PMD100の速度比の変化を実行する。
【0034】
PMD100は、バリエータ/アセンブリ140を含んでいる。バリエータアセンブリ
140は、PMD100への入力速度のPMD100からの出力速度に対する比を変化さ
せるように構成された任意の機構であってよい。一実施の形態においては、バリエータア
センブリ140が、第1のトラクションリング110、第2のトラクションリング134
、傾けることができる遊星−レッグアセンブリ150、およびサンアセンブリ125を含
んでいる。第1のトラクションリング110は、中心軸105を中心にして同軸かつ回転
可能に取り付けられたリングであってよい。第1のトラクションリング110の半径方向
外側の縁において、トラクションリング110は、斜めに延びて接触面111を終端とし
ている。いくつかの実施の形態においては、接触面111が、例えば第1のトラクション
リング110へと取り付けられたリングなど、別個の構造体であってよく、第1のトラク
ションリング110が、接触面111の支持を提供することができる。接触面111を、
第1のトラクションリング110へとねじ込みまたは圧入でき、あるいは任意の適切な固
定具または接着剤によって取り付けることができる。このように、いくつかの実施の形態
においては、トラクションリング110、134が、遊星101のアレイに接触するおお
むねリング状の部品である。いくつかの実施の形態においては、トラクションリング11
0、134が、接触面111から半径方向外側へと延びる支持構造113を有しており、
支持構造113が、半径方向の剛性を高め、PMD100において軸方向の力を受ける部
品のコンプライアンスに抗し、軸方向の力の成分を半径方向外側へと動かすことができる
ようにする構造的な支持をもたらし、PMD100の軸方向の長さを短くしている。
【0035】
いくつかの実施の形態においては、PMD100は、中心軸105を中心にして回転可
能なおおむね円筒形の筒であるケース138を含んでいる。ケース138は、PMD10
0の構成部品の大部分を収容する内側と、PMD100を使用する何らかの部品、設備、
または車両へと動作可能に接続されるように構成された外側とを有している。一実施の形
態においては、ケース138の外側が、自動車の補機類の駆動部として構成されている。
【0036】
図2Cを参照すると、ケース138は、いくつかの実施の形態において、ケース138
の外周に放射状に配置された1つ以上の冷却フィン66を備えている。冷却フィン66は
、好ましくは、アルミニウム、銅、または鋼など、熱を速やかに散逸させることができる
材料から形成されるが、任意の適切な材料を使用することができる。いくつかの実施の形
態においては、冷却フィン66およびケース138が、1部品として形成されるが、他の
実施の形態においては、冷却フィン66が別個の部品であって、標準的な固定具、接着剤
、締まりばめ、キー、スプライン、溶接、または他の任意の適切な方法によってケース1
38へと取り付けられる。いくつかの実施の形態においては、冷却フィン66が、鋳造ま
たは鍛造アルミニウムからの筒として形成され、冷却フィン66の筒状部の外径から半径
方向外側に延びている。とりわけ、冷却フィン66を、PMD100の動作時に生じる熱
を放射するように構成でき、PMD100の周囲の空気の流れを促進するように構成でき
る。いくつかの実施の形態においては、冷却フィン66が、中心軸105の軸に平行であ
る一方で、別の実施の形態においては、冷却フィン66が、ケース138の外径を巡る1
つ以上のフランジ(図示せず)として構成される。さらに他の実施の形態においては、冷
却フィン66が、ファンとして機能することができるらせん羽根(図示せず)である。
【0037】
図2Dを参照すると、いくつかの実施の形態においては、冷却ファン68が、ケース1
38に取り入れられている。冷却ファン68の羽根69は、いくつかの実施の形態におい
ては、アルミニウム、銅、または鋼など、熱を速やかに散逸させることができる材料から
製作されるが、ガラス充填ナイロンあるいは他のプラスチックおよび複合材料など、他の
材料も使用可能である。冷却ファン68は、いくつかの実施の形態においては、別個の部
品であって、標準的な固定具(冷却ファン68の貫通孔70に挿入され、ケース138の
対応する穴へとねじ込まれる)を使用してケース138へと剛に取り付けられる。他の実
施の形態においては、冷却ファン68を、接着剤、キー、スプライン、締まりばめ、溶接
、または他の任意の適切な方法によって取り付けることができる。さらに別の実施の形態
においては、冷却ファン68およびケース138が、1つの部品として形成される。冷却
ファン68の羽根69は、好ましくは、PMD100の動作時に生じる熱の迅速な放散を
もたらすとともに、エンジン室の全体の気流を促進するように構成される。いくつかの実
施の形態においては、冷却ファン68が、ラジエタを通って空気を引き込むように構成さ
れる一方で、他の実施の形態においては、冷却ファン68が、エンジン室を通過するよう
に空気を押す。
【0038】
図2A図2B図10、および図11を参照すると、PMD100は、トルクを第1
のトラクションリング110から第2のトラクションリング134へ伝達するため、およ
び入力速度−対−出力速度の比を変化させるための遊星−レッグアセンブリ150を含む
ことができる。いくつかの実施の形態においては、遊星−レッグアセンブリ150は、遊
星101、遊星軸102、およびレッグ103を含んでいる。遊星軸102は、遊星10
1の中心を通って形成される穴を貫いて延びるおおむね円柱形の軸であってよい。いくつ
かの実施の形態においては、軸102は、遊星101を軸102上に整列させるニードル
またはラジアルベアリングを介して、遊星101の穴の表面と取り合っている。いくつか
の実施の形態においては、軸102が、レッグ103によって遊星101の回転の軸を動
かすことができるよう、遊星101の両側において穴の終端を超えて延びている。軸10
2は、遊星101の端を超えて延びている部位において、レッグ103の半径方向外側の
端部と結合する。レッグ103は、遊星軸102を傾けるように構成された半径方向の延
長部である。
【0039】
軸102は、レッグ103の半径方向外側の端部に形成された穴を貫通している。レッ
グ103を、eリングなどのクリップリングによって軸102上に配置することができ、
あるいは軸102上へと圧入することができるが、軸102およびレッグ103の間に、
他の任意の種類の固定を利用することができる。また、遊星−レッグアセンブリ150は
、遊星軸102のそれぞれの端部に取り付けられる転がり部材であって、PMD100の
他の部品が軸102に整列するときに軸102の転がり接触をもたらすスキューローラ1
51を含むことができる。いくつかの実施の形態においては、レッグ103が、半径方向
内側の端部にシフトカムホイール152を備えている。シフトカムホイール152は、レ
ッグ103の半径方向の位置の制御、したがって軸102の傾斜角の制御を容易にする。
さらに別の実施の形態においては、レッグ103が、ケージアセンブリ180またはステ
ータ板800(図8を参照)におけるレッグ103の案内および支持を可能にするステー
タホイール1105(図11を参照)に組み合わせられている。図11に示されているよ
うに、ステータホイール1105は、レッグ103の長手軸に対して斜めであってよい。
いくつかの実施の形態においては、ステータホイール1105が、ステータホイール11
05の中心軸が遊星101の中心と交差するように構成される。
【0040】
さらに図2A図2B図10、および図11を参照すると、種々の実施の形態におい
て、遊星101と軸102との間の取り合いは、他の実施の形態において後述されるベア
リングのいずれかであってよい。しかしながら、別の実施の形態においては、遊星101
が軸102に固定され、遊星101と一緒に回転する。このような実施の形態においては
、ベアリング(図示せず)が、軸102上に作用する横力がレッグ103および/または
ケージアセンブリ180によって対処されるように、軸102とレッグ103との間に配
置される(さまざまな実施の形態において後述)。このような実施の形態においては、軸
102とレッグ103との間に配置されるベアリングが、ラジアルベアリング(球または
ニードル)、ジャーナルベアリング、または他の任意の種類のベアリング、あるいは適切
な機構または手段である。
【0041】
次に、図2A図3図4、および図10を参照して、サンアセンブリ125を説明す
る。いくつかの実施の形態において、サンアセンブリ125は、サン126、シフトカム
127、およびサンベアリング129を含む。サン126は、おおむね円筒形の筒である
。一実施の形態において、サン126は、おおむね一定の外径を有するが、他の実施の形
態においては、外径は一定ではない。シフトカム127は、サン126の一端または両端
に配置され、シフトカムホイール152と相互作用して、レッグ103を動かす。図示の
実施の形態においては、シフトカム127が凸状であるが、レグ103の所望の動きを生
み出す任意の形状であってよい。いくつかの実施の形態においては、シフトカム127が
、シフトカム127の軸方向の位置によってレッグ103の半径方向の位置を制御して、
軸102の傾きの角度を制御するように構成されている。
【0042】
いくつかの実施の形態においては、シフトカム127の半径方向の内径が、一方のシフ
トカム127を他方のシフトカム127へと取り付けるべく互いに向かって軸方向に延び
ている。図2Aに示されるとおり、カムの延長部128が、中心軸105の周囲の円筒を
形成している。カム延長部128が、一方のカム127から他方のカム127へ延び、ク
リップリング、ナット、または他の何らかの適切な固定具によって所定の位置に保持され
ている。いくつかの実施の形態においては、シフトカム127の一方または両方が、カム
ディスクの延長部128へとねじ込まれ、それらが所定の位置に固定される。図示の実施
の形態においては、カム127の凸曲線が、サンアセンブリ125の軸方向の中心から軸
方向に離れるように極大まで延び、次いで半径方向外側へと延び、サンアセンブリ125
の軸方向の中心に向かって軸方向に内側へと戻る。カムのこの輪郭は、サンアセンブリ1
25が軸方向の極端において移動する際に生じうるバインディングを低減させる。他のカ
ムの形状も、同様に使用することができる。
【0043】
図2Aに示した実施の形態においては、シフトロッド112が、PMD100の伝達比
の変化を生じさせる。一実施の形態においては、中心軸105の穴199の内側に同軸に
配置されたシフトロッド112が、ねじ山付きの端部109を中心軸105の片側から突
き出させて有している細長いロッドである。シフトロッド112の他端は、サンアセンブ
リ125へと延びており、シフトロッド112におおむね横方向に取り付けられたシフト
ピン114を含んでいる。シフトピン114が、シフトロッド112によってサンアセン
ブリ125の軸方向の位置を制御できるよう、サンアセンブリ125に係合している。送
りねじアセンブリ115が、中心軸105内のシフトロッド112の軸方向の位置を制御
する。いくつかの実施の形態においては、送りねじアセンブリ115が、シフトアクチュ
エータ117を含んでおり、シフトアクチュエータ117は、外径にシフト歯車118を
有することができ、内径の一部にシフトロッド112と係合するねじ山を有することがで
きる。いくつかの実施の形態においては青銅またはプラスチックなどの低摩擦材料で構成
されるシフトブシュ119が、中心軸105上に回転可能に配置される円板状の部品であ
る。シフトブシュ119を、任意の手段によって中心軸105上で軸方向について拘束で
き、図2Aに示した実施の形態においては、シフトブシュ119が、端部ナット107に
よって所定の位置に保持されている。シフトアクチュエータ117は、平頭ねじなどとい
った標準的な固定具を使用してシフトブシュ119へと取り付けられる。シフト歯車11
8が、駆動歯車22(図2Bを参照)に係合し、いくつかの実施の形態にいては、駆動歯
車22を、電気ステッピングモータなどのモータ20によって動かすことができる。いく
つかの実施の形態においては、シフト歯車118が、標準的な平歯車であるが、他の実施
の形態においては、シフト歯車118が、はすば歯車などといった別の種類の歯車であっ
てよい。
【0044】
図2Aおよび図2Bを参照すると、入力アセンブリ155が、バリエータアセンブリ1
40へのトルクの伝達を可能にする。いくつかの実施の形態においては、入力アセンブリ
155が、例えばベルト(図示せず)からの直線運動を回転運動に変換する入力プーリ1
56を含んでいる。いくつかの実施の形態においては、入力プーリ156が、原動機の軸
(自動車のエンジンのクランクシャフトまたはモータなど)へと動作可能に取り付けられ
たベルトからのトルクを受け取る。ここでは、プーリが使用されているが、PMD100
の他の実施の形態は、例えばチェーンから運動を受け取るスプロケットを使用してもよい
。入力プーリ156は、軸方向の力生成機構へとトルクを伝達する。図示の実施の形態に
おいては、軸方向の力生成機構は、トルクを第1のトラクションリング110へ伝達する
カムローダ154である。カムローダ154は、第1の負荷カムリング157、第2の負
荷カムリング158、および負荷カムリング157、158の間に配置された1式のカム
ローラ159を含んでいる。カムローダ154が、プーリ156からのトルクを第1のト
ラクションリング110へと伝達し、最終的に第1のトラクションリング110、遊星1
01、サン126、および第2のトラクションリング134のための接触力になる軸方向
の力を生成する。軸方向の力は、カムローダ154へ印加されるトルクの大きさにおおむ
ね比例する。いくつかの実施の形態においては、入力プーリ156が、ケース138が回
転するがプーリ156はトルクを供給していないときに惰行機構として作用する一方向ク
ラッチ(図示せず)を介して、第1の負荷カムリング157へとトルクを加える。いくつ
かの実施の形態においては、第2の負荷カムリング158が、第1のトラクションリング
110と一体の一部品であってよい。
【0045】
さらに図2Aを参照すると、第2のカムローダ54を、遊星101へと加えられる軸方
向の力を最適化するために使用することができる。一実施の形態においては、第2のカム
ローダ54が、第2のトラクションリング134とケース138との間に配置され、負荷
カムリング57、負荷カムリング58、および負荷カムリング57、58の間に介装され
た1式のカムローラ59を含んでいる。
【0046】
図2A図2Bに示されているように、端部キャップ160が、PMD100の内部の
構成部品のケース138への収容を容易にしている。いくつかの実施の形態においては、
端部キャップ160が、ケース138の開放端へと取り付けられるおおむね平坦な円板で
あり、第1の負荷カムリング157、中心軸105、およびシフトロッド112を通すこ
とができるように中央を貫く穴を有している。いくつかの実施の形態においては、端部キ
ャップ160がケース138に取り付けられ、カムローダ154によって生成される軸方
向の力に対処するうえで役に立つ。端部キャップ160を、アルミニウム、チタニウム、
鋼、あるいは高強度の熱可塑性または熱硬化プラスチックなど、軸方向の力に応じること
のできる任意の材料で製造することができる。端部キャップ160は、固定具(図示せず
)によってケース138へと固定されるが、端部キャップ160をケース138へとねじ
込んでも、あるいは他の方法でケース138へと取り付けてもよい。
【0047】
一実施の形態においては、端部キャップ160のカムローダ154に対向する面に、プ
レローダ(図示せず)を収容する溝が半径を巡って形成される。プレローダは、トルクの
レベルがきわめて低いときに初期の拘束力をもたらすばねであってもよい。プレローダは
、ばねまたはOリングのような弾性材料など、カムローダ154、したがってトラクショ
ンリング134へと初期の力を供給することができる任意の装置であってよい。プレロー
ダは、その寿命を通じて高いばね定数を有しかつ高レベルの弾性を維持することができる
点で、波状ばねであってもよい。
【0048】
いくつかの実施の形態においては、プレローダが、スラストワッシャ162およびスラ
ストベアリング163によって端部キャップ160へと直接荷重される。図示の実施の形
態においては、スラストワッシャ162は、プレローダを収容する溝を覆ってスラストベ
アリング163のためのスラストレースを提供する典型的なリングワッシャである。スラ
ストベアリング163は、コンビネーション・スラスト・ラジアル・ベアリングに比べて
高レベルのスラスト容量を有し、構造的剛性を向上させるとともに、公差の要件およびコ
ストを低減させるニードル・スラスト・ベアリングであってよいが、他の任意の種類のス
ラストベアリングまたはコンビネーションベアリングを使用することも可能である。特定
の実施の形態においては、スラストベアリング163は、ボール・スラスト・ベアリング
である。カムローダ154によって生成される軸方向の力は、スラストベアリング163
およびスラストワッシャ162を介して端部キャップ160へと反作用される。端部キャ
ップ160が、ケース138へ取り付けられてPMD100の構造を完成させる。
【0049】
さらに図2Aおよび図2Bを参照すると、特定の実施の形態においては、プーリ36が
ケース138に組み合わせられている。プーリ36は、サーペンタインベルトの輪郭を有
することができるが、他の実施の形態においては、プーリ36を、タイミングベルト、V
ベルト、丸ベルト、または他の任意の種類のベルトを受け入れるように設計することがで
きる。プーリ36を、ケース138へとキーで固定することができ、あるいはプーリ36
を、ピン、ねじ、スプライン、溶接、圧入、または剛な接続をもたらす任意の方法を使用
して、取り付けることができる。いくつかの実施の形態においては、プーリ36およびケ
ース138が1つの部品であるように、プーリ36がケース138へと一体に形成される
【0050】
図2Aおよび図2Bにおいて、1つ以上のカムディスクベアリング172が、第1の負
荷カムリング157を中心軸105に対する半径方向の位置に保持する一方で、端部キャ
ップベアリング173が、第1の負荷カムリング157と端部キャップ160の内径との
間の半径方向の整列を維持する。カムディスクベアリング172および端部キャップベア
リング173は、ここではニードル・ローラ・ベアリングであるが、他の種類のラジアル
ベアリングも同様に使用可能である。ニードル・ローラ・ベアリングの使用は、より大き
な軸方向フロートを許容し、プーリ156によって生じるバインディングモーメントに対
応する。PMD100の他の実施の形態、あるいは本明細書に記載される任意の他の実施
の形態においては、カムディスクベアリング172および端部キャップベアリング173
の各々またはいずれかを、コンビネーション・ラジアル−スラスト・ベアリングの相補ペ
アで置き換えることも可能である。そのような実施の形態においては、ラジアル・スラス
ト・ベアリングが、半径方向の支持をもたらすだけでなく、スラストを吸収することもで
き、これが、スラストベアリング163を補助し、かつスラストベアリング163の負荷
を少なくとも部分的に軽減することができる。
【0051】
さらに図2Aおよび図2Bを参照すると、中心軸105の周囲に同軸に取り付けられて
中心軸105とケース138の閉鎖端の内径との間に保持される支持部材である軸142
が、ケース138を中心軸105に対して半径方向に整列させて保持する。軸142は、
中心軸105に角度に関して整列させられた状態で固定される。ここでは、キー144が
、軸142を角度に関して整列した状態に固定しているが、この固定は、当業者にとって
公知の任意の手段によって行うことができる。軸142とケース138の内径との間に、
ラジアル・ハブ・ベアリング145が取り付けられ、ケース138の半径方向の位置およ
び軸方向の整列を維持する。ハブベアリング145は、封止用の軸キャップ143によっ
て所定の位置に保持される。軸キャップ143は、中心軸105の周囲に適合する中央穴
を有しており、ここでは固定具147によってケース138に取り付けられる円板である
【0052】
次に、図3図4、および図10に目を向け、PMD100の別の実施の形態であるP
MD300を説明する。PMD300は、とりわけトラクションリング334、ケージ3
89、サンアセンブリ325、遊星−レッグアセンブリ350、およびトラクションリン
グ310を、他の構成部品とともに収容するケース351を含んでいる。トラクションリ
ング110、134に比べ、トラクションリング310、334の角度が小さくなってお
り、これが軸方向の力に耐えるトラクションリング310、334の能力を高め、PMD
300の全体としての半径方向の径を縮小する。PMD300は、別のシフト機構を備え
ており、そこでは、シフトロッド312が、サンアセンブリ325の軸方向の動きを生じ
させるように構成された送りねじ機構を含んでいる。この実施の形態においては、送りね
じ機構が、サンアセンブリ325の内側または付近のシフトロッド312の端部に形成さ
れた1式の送りねじ313を含んでいる。1つ以上のサン・アセンブリ・ピン314が、
カムディスク延長部328から送りねじ313へと半径方向に延びており、シフトロッド
312の回転につれて軸方向に移動する。
【0053】
図示の実施の形態においては、サン326の外径が一定ではなく、サン326の両端に
おいて外径が大きくなっている。この設計により、サン326に接するPMD内の潤滑剤
が、サン326の最大の直径へと遠心力によって引き出される。潤滑剤は、ひとたびサン
326の両端に達すると、PMD300の中心から半径方向に離れるように潤滑を必要と
する部品へと噴き付けられる。いくつかの実施の形態においては、この設計により、サン
326が、サン326を中心位置から軸方向に離れるように駆動しようとする力に抵抗で
きる。しかしながら、これは単に一例にすぎず、サン326の外径は、サン326へと加
わる力に対応するため、およびPMD300のシフトを補助するために、設計者が望む任
意の方法で変更されてもよい。
【0054】
次に、図2A図2B図5、および図6を参照すると、いくつかの実施の形態におい
ては、取り付けブラケット10、11が、PMD100を自動車のフレーム(図示せず)
、エンジンブロック(図21を参照)、あるいはフレームまたはエンジンブロックへと取
り付けられたブラケット(図示せず)などといった固定の物体へと接続するように構成さ
れている。一実施の形態においては、ブラケット10、11が、中心軸105のそれぞれ
の端部の付近に形成された平坦部26に取り付けられている。端部ナット106、107
が、取り付けブラケット10、11をPMD100へと締め付けるべく中心軸105のそ
れぞれの端部にねじ込まれる。いくつかの実施の形態においては、取り付けブラケット1
0、11が鋼から製作されるが、他の実施の形態においては、チタニウム、アルミニウム
、または複合材料など、他の材料も使用することができる。一方または両方の取り付けブ
ラケット10、11を、着脱可能に構成することができる。取り付けブラケット10が、
標準的な固定具を使用して取り付けブラケット10をエンジンブロックまたはフレームな
どの固定の物体へと取り付けできるようにする穴12を含むことができる。一実施の形態
においては、取り付けブラケット11が着脱可能であり、エンジンブロックまたはフレー
ムなどの固定の物体への取り付けを可能にする穴13を有している。いくつかの実施の形
態においては、取り付けブラケット10、11が、標準的な固定具を使用して互いに取り
付けられる。他の実施の形態においては、着脱式のブラケット11は使用されず、取り付
けブラケット10が、標準的な固定具を使用してPMD100を固定の物体へと取り付け
ることを可能にするように穴12が形成されているU字形の部品である。いくつかの実施
の形態においては、取り付けブラケット11を、入力ベルト(図示せず)または出力ベル
ト(図示せず)の交換を容易にするために、標準的な固定具によって速やかに取り外すこ
とができる。他の実施の形態においては、取り付けブラケット10および/または取り付
けブラケット11が、取り付け相手の物体に対応するように、他の形状であってよい。特
定の実施の形態においては、取り付けブラケット10、11の一方または両方を、ケージ
アセンブリ180へと動作可能に接続し、ケージアセンブリ180の固定および回転防止
に役立てることができる。
【0055】
いくつかの実施の形態においては、ステッピングモータなどのモータ20を、PMD1
00の速度比の変更および調節のために使用することができる。モータ20が、モータブ
ラケット24および標準的な固定具によって取り付けブラケット10へと取り付けられ、
いくつかの実施の形態においては、モータブラケット24が、取り付けブラケット10、
11と同じ材料で製作されている。駆動歯車22が、モータ20の軸へと接続されている
。駆動歯車22は、シフト歯車118に噛合しており、シフト歯車118は、いくつかの
実施の形態においては、シフトロッド112におけるトルクを大きくし、速度を小さくす
るために、駆動歯車22よりも大きい。シフトブシュ119が、シフトブシュ119の自
由な回転を可能にするすきまばめにて、中心軸105上に同心に取り付けられている。端
部ナット107が、シフトブシュ119がPMD100の中心に向かって軸方向に移動す
ることがないようにしている。シフト歯車118は、シフトロッド112へとねじ込まれ
、標準的な固定具によってシフトブシュ119へと取り付けられている。
【0056】
動作時、モータ20が駆動歯車22を駆動し、駆動歯車22がシフト歯車118を駆動
し、シフト歯車118がシフトロッド112を回転させ、PMD100の速度比の変更を
生じさせる。いくつかの実施の形態においては、モータ20が、自動車のエンジンの回転
数および/またはPMD100の回転数を計数し、次いでPMD100を変速すべくステ
ッピングモータ20へと信号を送ることができる制御フィードバックループを備えるロジ
ック装置(図示せず)によって制御される。このロジック装置は、当該技術分野において
周知である。
【0057】
図7は、例えばPMD100、PMD300、または他の球状遊星PMDにおいてにお
いて使用することができるカムリング700を示している。カムリング700は、半径方
向の外側の縁に形成されたカム溝710を有している。カム溝710は、1式のカムロー
ラ(図示せず)を収容する。カムローラは、球(ベアリング球など)であってよいが、バ
リエータアセンブリ140、340へと加えられる軸方向の力をPMD100、300へ
と加えられるトルクに実質的に比例する量にて加減すべくカム溝710の形状との組み合
わせにおいてトルクをトルク成分および軸方向の力成分へと変換する他の任意の形状であ
ってもよい。他に、そのような形状として、円柱形のローラ、たる型ローラ、非対称ロー
ラ、または他の任意の形状が挙げられる。多くの実施の形態において、カムディスク溝7
10に使用される材料は、好ましくは、カムディスク700が経験することになる荷重に
おいて過剰または恒久的な変形に対抗するために充分に強い。大トルクの用途においては
、特別な硬化処理が必要な場合もある。いくつかの実施の形態においては、カムディスク
溝710が、40HRC以上へと硬化処理された炭素鋼で製造される。カムローダ(図1
のカムローダ154、または任意の他の種類のカムローダ、など)の動作の効率は、上記
の硬さ値によって左右され、典型的には、効率を高めるために硬さが増されるが、高度の
硬化は、カムの荷重部品を脆くする可能性があり、コストも高まる可能性がある。
【0058】
図7は、コンフォーマルカムの一実施の形態を示している。すなわち、カム溝710の
形状が、カムローラの形状に実質的に一致する。溝710がローラに一致するため、溝7
10がベアリングローラ・リテーナとして機能し、いくつかの状況においてカムローラの
収容および/または離間のためのケージ部材の使用を不要にする。図7に示した実施の形
態は、一方向の負荷カムリング700であるが、負荷カムリング700は、双方向の負荷
カムリングであってもよい(例えば、図23〜25の双方向の負荷カムリングを参照)。
いくつかの実施の形態においては、ベアリング・ローラ・リテーナを使用する必要がなく
なることで、PMD100、300の設計が単純になる。さらに、コンフォーマルなカム
溝710は、ベアリングローラと溝710との間の接触応力の低減を可能にし、ベアリン
グローラのサイズの縮小および/または数の削減を可能にし、あるいは材料選択の柔軟性
を拡大できる。
【0059】
図8は、バリエータアセンブリ140のケージアセンブリ180のケージ189または
バリエータアセンブリ340のケージアセンブリ389の支持構造体を形成するために使
用されるケージディスクまたはステータ板800を示している。いくつかの実施の形態に
おいては、ケージディスク800が、変速時にレッグ103が半径方向内側および外側に
移動するときにレッグ103を案内及び支持するように形作られている。また、ケージデ
ィスク800は、軸102の角度の整列ももたらす。いくつかの実施の形態においては、
それぞれの軸102のための2つのケージディスク800の対応する溝が、バリエータア
センブリ140、340におけるシフト力を低減するために、角度方向にわずかにオフセ
ットされている。
【0060】
特定の実施の形態においては、レッグ103が、ステータ板800のスロットによって
案内される。レッグ103上のレッグローラ1107(図11を参照)が、ステータ内の
円形の輪郭に追従する。レッグローラ1107は、通常は、シフト力または牽引接触回転
力によって加えられる並進力に対向する並進反作用点をもたらす。レッグ103およびそ
れぞれのレッグローラ1107は、PMD100、300の比が変更されるときに平面運
動にて移動し、レッグ103が、遊星101の中心付近に中心を持つ円形の包絡線を描く
。レッグローラ1107は、レッグ103の中心からオフセットされているため、同様に
オフセットされた包絡線を描く。各ステータ板800にレッグローラ1107の平面運動
に一致する矛盾のない輪郭を生成するために、各レッグ103におけるローラのオフセッ
トと同じ量だけ溝の中心からオフセットされた円形の切断が必要である。
【0061】
次に、図2A図9、および図12を参照すると、潤滑向上潤滑スペーサ900を実装
するケージアセンブリ389の別の実施の形態が示されている、図示の実施の形態におい
ては、この場合にはケージ389(図4も参照)である遊星101のための支持構造体が
、ケージディスク1220を1つ以上の潤滑スペーサ900を含む複数のスペーサ121
0へ取り付けることによって形成される。潤滑スペーサ900は、ケース138、351
の表面から潤滑剤を掻き落として、潤滑剤をバリエータアセンブリ140、340の中央
の部材に向かって戻すように案内するためのスクレーパ910を有している。さらに、い
くつかの実施の形態の潤滑スペーサ900は、潤滑剤の流れを潤滑剤を最も利用する領域
へと案内するうえで役に立つ通路920を有している。いくつかの実施の形態においては
、潤滑スペーサ900における通路920の間の部分が、潤滑剤の流れを通路920へと
案内する隆起したくさび925を形成している。スクレーパ910は、スペーサ900と
一体であってよく、あるいは別個であって、スクレーパ910の材料と異なる材料(これ
に限られるわけではないが、ケース138から潤滑剤の掻き落としを向上させるゴムなど
)で製作されていてもよい。スペーサ1210および潤滑スペーサ900の両端は、ケー
ジディスク1220との結合のための表面を形成すべく垂直に延びるフランジ状のベース
1240を終端としている。図示の実施の形態のベース1240は、ケージディスク12
40に対向する面がおおむね平坦であるが、遊星101に対向する面は、レッグローラ1
51が当接する上述の曲面を形成するために丸められている。また、ベース1240は、
レッグ103がその行程の全体において当接する溝も形成している。
【0062】
次に、図3図9、および図10を参照して、潤滑システムおよび潤滑方法の実施の形
態を説明する。遊星101が回転するとき、潤滑剤は、遊星101の赤道へ向かって流れ
、次いでケース351に向かって噴き付けられる傾向にある。一部の潤滑剤は、最大の径
を有するケース351の内壁に落下しないが、このような潤滑剤も、遠心力によってケー
ス351の最大の内径に向かって流れる。スクレーパ910が、ケース351の内側に蓄
積される潤滑剤を除去するように垂直に配置される。潤滑剤は、重力によってV字形のく
さび925の各側を通路920へと降下する。スペーサ900は、通路920の半径方向
内側の端部がカムディスク327およびサン126の付近で終わるように配置される。こ
のように、サン126およびカムディスク327が、ケース351内を循環する潤滑剤を
受け取る。一実施の形態においては、スクレーパ910が、ケース351から約1000
分の30インチだけ離れるように寸法付けられる。当然ながら、このすき間は、種々の用
途に応じて、より大きくても、より小さくてもよい。
【0063】
図3および図10に示されているように、カムディスク327を、サン326に対向す
る面が傾けられ、通路920から落下する潤滑剤を受け取って、カム327とサン326
との間の空間に向かって潤滑剤を案内するように、構成することができる。潤滑剤は、サ
ン326へと流れた後に、サン326の最大径に向かって流れ、潤滑剤の一部が軸102
へと噴き付けられる。潤滑剤の一部は、通路920からサン326へと落下する。この潤
滑剤は、サン326ならびに遊星101とサン326との間の接触面を潤滑する。サン3
26の各側が傾斜しているため、潤滑剤の一部が遠心力によってサン326の縁に向かっ
て流れ、潤滑剤が半径方向に噴き付けられる。
【0064】
図3を参照すると、いくつかの実施の形態においては、サン126、326から軸10
2に向かって噴き付けられた潤滑剤が、溝345へ落下し、溝345が、潤滑剤を受け取
って、遊星101の内側へと送る。潤滑剤の一部は、トラクションリング110、134
が遊星101に接している接触面111にも落下する。潤滑剤は、遊星101の片側を出
るとき、遠心力のもとで遊星101の赤道に向かって流れる。この潤滑剤の一部が、第1
のトラクションリング110および遊星101に接し、接触面111に接触し、次いで遊
星101の赤道に向かって流れる。潤滑剤の一部は、第2のトラクションリング134の
遊星101とは反対側を向いている面に沿って、半径方向に流れ出る。
【0065】
図13図14図21図22を参照すると、一実施の形態において、PMD130
0が、自動車のエンジン790のクランクシャフトへと直接接続されている。簡略化のた
めに、PMD100とPMD1300との間の相違のみを説明する。中心軸105に類似
した中心軸1305が、今やシフト操作が、端部キャップ160の側からではなく、軸キ
ャップ143の側から行われるように変更されている。モータ20、駆動歯車22、モー
タブラケット24、取り付けブラケット10、および送りねじアセンブリ115を、今や
軸キャップ143の近傍に見ることができる。
【0066】
クランクシャフトマウント1314が、いくつかの実施の形態においてはフランジ13
15を備えるおおむね円板状の部品であるが、エンジンのクランクシャフト(図示せず)
の対応する部位(図示せず)へと取り付けられるように構成されている。フランジ131
5は、いくつかの実施の形態においては、標準的な固定具を通過させてエンジンのクラン
クシャフトへと取り付けられた対応する部品のねじ穴へとねじ込むための穴を含んでいる
。いくつかの実施の形態においては、クランクシャフトマウント1314が、エンジンの
クランクシャフトへとキーで取り付けられる円筒形のカプラとして構成されている。図1
3の実施の形態においては、クランクシャフトマウント1314が、キー、スプライン、
固定具、しまりばめ、または他の任意の適切な方法によってドライバ1372に接続され
ている。ドライバ1372は、いくつかの実施の形態においては、硬化処理した鋼で製作
された円筒である。いくつかの実施の形態においては、2つのニードル・ローラ・ベアリ
ング1374、1376が、PMD1300の動作の際に生じる大きなトルク伝達荷重を
吸収するために、ドライバ1372の穴の内側かつ中心軸1305の外側に配置される。
ドライバ1372は、キー、スプライン、固定具、しまりばめ、または他の任意の適切な
方法によって第1の負荷カムリング157へと取り付けられ、第1の負荷カムリング15
7へとトルクを伝達する。
【0067】
図13および図14を参照すると、PMD1300は、おおむねPMD100と同じ方
法および類似の構成部品にて変速を行うが、シフトアクチュエータ117を備える送りね
じアセンブリ115、シフト歯車118、シフトブシュ119、およびプーリ・スナップ
・リング116が、今や軸143の近傍に位置している。モータ20、駆動歯車22、モ
ータブラケット24、および取り付けブラケット10も、今や軸143の近傍にある。こ
の実施の形態においては、取り付けブラケット10およびクランクシャフトマウント13
14の両者が協働して、PMD1300を支持する。
【0068】
図21および図22を参照すると、PMD1300が、自動車のエンジン790のクラ
ンクシャフトへと接続され、さらにオルタネータ792、パワーステアリングポンプ79
4、およびアイドラプーリ796へと動作可能に接続されて示されている。エンドレスサ
ーペンタインベルト798が、プーリ36に動作可能に接続されてプーリ36によって駆
動され、オルタネータ792およびパワーステアリングポンプ794に動力をもたらして
いる。ウォーターポンプ、燃料ポンプ、オイルポンプ、空調コンプレッサ、冷却ファン、
スーパーチャージャ、ならびに自動車のエンジン790を動力とすることができる他の任
意の装置など、他の自動車の補機類(図示せず)も、サーペンタインベルト798によっ
て駆動することができる。特定の実施の形態においては、PMD1300が、速度/トル
ク減速機構を介してクランクシャフトへと接続される。例えば、ベルトで駆動されるプー
リまたはチェーンで駆動されるスプロケットをクランクシャフトへと接続し、それぞれベ
ルトまたはチェーンによってPMD1300へと接続することができる。さらに別の実施
の形態においては、PMD1300を、エンジンの動作時に生じる振動力に対処すべく車
両のエンジンのクランクシャフトに典型的に接続される装置である高調波バランサを取り
入れるように構成でき、あるいはそのような高調波バランサと協働するように構成するこ
とができる。
【0069】
以下でさらに説明されるとおり、本明細書に示される動力変調器の特定の実施の形態の
また別の態様は、オルタネータおよび/または始動モータを動力変調装置(PMD)に一
体化させてなる複合装置に関する。いくつかの実施の形態においては、PMDが、オルタ
ネータ/モータの電機子および固定子(または、界磁部品)の両者が回転するように、遊
星動力変調器として構成される。回転子および固定子が反対の方向に回転するため、大き
な速度差が生み出され、したがってきわめて高い出力密度のオルタネータおよび/または
始動モータが生み出される。本明細書において使用されるとき、「電機子」は、モータま
たは発電機などといった電気機械装置の2つの主たる構成要素のうちの一方である。説明
の目的のため、本明細書において、用語「界磁(field)」は、界磁巻線または界磁
磁石など、電気機械装置の第2の主たる構成要素を指す。通常は、界磁は、電機子と相互
作用するための磁界を生成し、したがって界磁は、典型的には、永久磁石または導電コイ
ルによって形成された電磁石を含んでいる。電機子は、通常は、界磁ならびに運動、トル
ク(回転機械)、または力(直線機械)の方向の両者に対して垂直に向けられた導体また
は導電コイルである。電機子は、界磁と対照的に、通常は電流または起電力(通常は両方
)を運ぶように構成されている。電機子を、界磁を横切って電流を運ぶように構成でき、
(回転機械における)軸トルクまたは(直線機械における)力を生み出すことができる。
さらに、電機子を、起電力を生み出すように構成することができる。電機子において、起
電力は、電機子および界磁の相対運動によって生成される。機械がモータとして機能する
とき、この起電力が電機子電流に反対し、電機子が電力を機械的なトルクへと変換し、ト
ルクを、軸を介して負荷へと伝える。機械が発電機として機能するとき、電機子の起電力
が電機子電流を駆動することで、軸の機械的な力が電力へと変換される。
【0070】
図15Aに示されているとおり、一実施の形態においては、複合装置1550が、サン
1554へと接続されたサン軸1552を含むことができる。一実施の形態においては、
制御装置1556が、サン1554および遊星軸102へと接続されている。一群の遊星
101が、サン1554に係合して、摩擦または弾性流体力学的相互作用あるいは両者に
よってトルクを伝達するように構成されている。ケージ389であってよく、さらには/
あるいはステータ板800、1220と同様の適切な形状のステー板を含むことができる
ケージ1558を、遊星軸102および/または制御装置1556の構成部品を支持およ
び/または案内するために使用することができる。いくつかの実施の形態においては、ト
ラクションリング1560、1562が、摩擦または弾性流体力学的相互作用あるいは両
者によってトルクを伝達すべく、遊星101に接触して配置されている。
【0071】
一実施の形態においては、制御装置1586が、サン軸1552へと接続され、サン軸
1552の軸方向の移動を生み出すように構成されている。特定の実施の形態においては
、制御装置1556および制御装置1586が、サン軸1552の軸方向の移動をサン1
554の軸方向の移動および遊星軸102の傾きに協調させるよう、動作可能に連結され
る。図15Aにおいては、サン軸1552が、サン軸1552とサン1554とが一緒に
軸方向に動かなければならないような方法で、サン1554へと接続されているが、他の
実施の形態においては、サン軸1552およびサン1554の軸方向の移動が分離される
。したがって、いくつかの実施の形態においては、制御装置1556が遊星軸102の傾
きおよび/またはサン1554の軸方向の移動を実行するが、サン軸1552は軸方向に
ついて固定されたままである。制御装置1556、1586は、遊星軸102の傾きなら
びに/あるいはサン軸1552および/またはサン1554の軸方向の移動を達成するよ
うに構成された任意の電気式、機械式、または電気機械式の装置、磁気または電磁気装置
、サーボモータ、あるいはサーボ機構であってよく、そのような軸方向の移動は、いくつ
かの場合においては、遊星軸102を傾けるのと同時であってよい。例えば、一実施の形
態においては、制御装置1586が、電気モータを動力としてサン軸1552を軸方向に
動かす送りねじ機構であってよい。サン軸1552と遊星軸102との間の機械的な結合
が、サン軸1552が軸方向に動かされるときに遊星軸102を傾ける。
【0072】
一実施の形態においては、複合装置1550が、複合装置1550の内部部品をとりわ
け収容および/または保護するハウジングまたはケース1564を含むことができる。特
定の実施の形態においては、ハウジング1564が、端部カバーへと取り付けられるおお
むね円筒形の外殻を含んでおり、さらに別の実施の形態においては、ハウジング1564
が、中央穴を備える底部と、同様に中央穴を有するカバー板によって覆われる開口とを有
する円筒形の缶で構成される。一実施の形態においては、トラクションリング1562が
、ハウジング1564の少なくとも一部分と一体である。いくつかの実施の形態において
は、ハウジング1564の少なくとも一部分が、動力伝達継手1566へと接続され、さ
らに別の実施の形態においては、動力伝達継手1566が、トラクションリング1562
に直接接続され、あるいはハウジング1564およびトラクションリング1562と一体
に形成される。
【0073】
いくつかの実施の形態においては、複合装置1550が、トラクションリング1560
、遊星101、サン1554、およびトラクションリング1562を横切ってのトルクの
伝達を促進する締め付け力をもたらすために、1つ以上の軸方向力生成器(AFG)15
68を含んでいる。AFG1568は、例えば1つ以上のカムローダ54、154が軸方
向力生成器として機能する図2Aおよび図13に関して上述した形式であってよい。いく
つかの実施の形態においては、サン軸1552が、トルクを軸1570へと伝達し、ある
いは軸1570から伝達するように構成された動力伝達継手1570へと接続される。動
力伝達継手1572を、トルクをトラクションリング1560へと伝達するため、または
トラクションリング1560から伝達するために、動作可能に接続することができる。い
くつかの実施の形態においては、動力伝達継手1572が、AFG1568を介してトラ
クションリング1560へと接続され、さらに別の実施の形態においては、動力伝達継手
1572およびAFG1568が、少なくとも部分的に互いに一体化される。動力伝達継
手1566、1570、1572は、動力(トルクおよび/または速度の特性を有してい
る動力)を伝達するように構成された任意の装置、造作、または部品であってよく、例え
ば、動力伝達継手1566、1570、1572は、プーリ、スプロケット、ワンウェイ
クラッチ、フリーホイール、コグ、レバー、クランク、スプライン、キー、締まりばめ、
溶接、磁界、などであってよく、これらを、動力を伝達すべく対応するプーリ、チェーン
、ベルト、などと協働するように適切に構成することができる。
【0074】
図15Aに示されているように、複合装置1550は、複合装置1550の他の構成部
品と関連して動作するモータ/発電機ユニット1574を含むことができる。モータ/発
電機ユニット1574は、サン軸1552の周囲に同心に取り付けられた電機子1576
を含むことができる。電機子1576は、磁界発生器1578と協働して発電機または電
気モータの機能をもたらすように構成されている。磁界発生器1578は、一群の永久磁
石または電磁石サブアセンブリであってよい。いくつかの実施の形態においては、磁界発
生器1578が、ハウジング1564および/またはトラクションリング1562と一体
である。他の実施の形態においては、磁界発生器1578が、フランジ、スプライン、歯
車、などを介してトラクションリング1562および/またはハウジング1564へと接
続される。特定の実施の形態においては、サン軸1552が、溝付きスプライン、直線ス
プライン、ボールスプライン、ゼネラルスプライン、キー、などであってよい動力伝達継
手1580を介して、電機子1576へと接続される。
【0075】
一実施の形態においては、電機子1576が、電気インターフェイス1584へと接続
された電気導体1582へと接続されている。図15Aの複合装置1550は、3相モー
タ/発電機の3つのリードを代表する3つの電気導体1582を示している。しかしなが
ら、他の実施の形態においては、モータ/発電機ユニット1574が、より多数または少
数の相を含んでもよい。電気インターフェイス1584は、電気導体1582から電気を
受け取り、あるいは電気導体1582へと電気を届けるように構成された任意の装置であ
ってよい。いくつかの実施の形態においては、電気インターフェイス1584が、回転す
る電気導体および/または電池を含んでいる。
【0076】
動作時、一構成においては、動力をPTC1570を介して複合装置1550へと入力
することができる。例えば自動車のクランクシャフトなどの原動機がPTC1570を駆
動し、サン軸1552を時計方向に回転させる場合、サン1554が時計方向に駆動され
る。ケージ1558をグラウンドへと固定した状態で、遊星101が反時計方向に回転し
、結果として、トラクションリング1560、1562を反時計方向に駆動する。次いで
、トラクションリング1560、1562が、それぞれPTC1572、1566へと反
時計方向の回転にて動力を届けることができる。PTC1572、1566を、例えばウ
ォーターポンプ、冷却ファン、空調システムのコンプレッサ、などといった自動車の補機
類を駆動するために使用することができる。同時に、モータ/発電機ユニット1574の
極性が、サン軸1552がPTC1580を介して電機子1576を駆動するときに電機
子1576および磁界生成器1578が相互作用して電気を生成するように設定され、電
気導体1582がこの電気を受け取り、電気インターフェイス1584へと届ける。
【0077】
他の動作状態においては、複合装置1550が、PTC1572において直接またはベ
ルトを介して、クランクシャフトから例えば反時計方向の動力を取り出す。次いで、機械
的な動力が、トラクションリング1560、遊星101、トラクションリング1562を
通り、反時計方向にてケース1564および/またはPTC1566を通って流れ出る。
機械的な動力は、トラクションリング1560、遊星101、サン1554、サン軸15
52を通り、時計方向にてPTC1570を通って流れ出ることもできる。いくつかの実
施の形態においては、PTC1570を、サン軸1552のいずれかの端部に配置するこ
とができる。また、サン軸1552が電機子1576を時計方向に駆動すると同時に、ト
ラクションリング1562が磁界発生器1578を反時計方向に回転させるとき、機械的
な動力を、電力へと変換することができる。
【0078】
さらに別の動作状態においては、複合装置1550が、とりわけ自動車のエンジンなど
の原動機を始動させるために使用することができるモータとして機能することができる。
電力が、電気インターフェイス1584を介して複合装置1550へと届けられる。電力
の源は、例えば電池であってよい。複合装置1550へと届けられた電力が、電機子15
76を励起し、電機子1576が磁界発生器1578と協働し、サン軸1552および電
機子1576を接続するPTC1580を介してサン軸1552を駆動する駆動トルクを
生み出す。モータ/発電機ユニット1574の極性が、サン軸1552の時計方向の回転
を生じさせるように選択される場合、サン軸1552は、サン1554を時計方向に駆動
する。その結果、遊星101が反時計方向に駆動され、遊星101が、トラクションリン
グ1560、1562を反時計方向に駆動する。次いで、動力を、PTC1566、15
72から取り出すことができる。一実施の形態においては、PTC1566が、いくつか
のプーリ、ベルト、スプロケット、チェーン、歯車、および/または1つ以上の補機を含
むことができるフロントエンド補機駆動システムへと動作可能に接続される。PTC15
72を、原動機の始動を促進する方法でクランクシャフトへと直接的または間接的に接続
することができる。実施の形態に応じて、PTC1570を、サン軸1552のいずれか
の端部に位置させることができ、使用しても、使用しないでおくこともでき、あるいはそ
もそも存在していなくてもよい。
【0079】
上述の動作状態以外にも、多数の動作状態が可能であることに注意すべきである。上述
の動作状態は、あくまでも例として使用されているにすぎず、それらの説明は、他にも考
えられる動作状態を除外しようとするものではなく、決して複合装置1550において可
能な種々の動作状態を限定しようとするものではない。例えば、いくつかの実施の形態に
おいては、ケージ1558を、サン軸1552を中心にして回転するように構成すること
ができる。ケージ1558がそのように構成されるとき、複合装置1550は、無限に可
変のトルク/速度調節を有することができる。
【0080】
上述の動作状態のいずれについても、制御装置1556、1586を、動力の入力と動
力の出力との間のトルク/速度比を遊星軸102の傾きによって調節するように構成する
ことができる。例えば、クランクシャフトからPTC1572へと、トルク/速度が時間
につれて変化する動力の入力が存在する場合に、複合装置1550を、PTC1566に
おける動力の出力が一定の速度であるように制御することができ、そのような出力で、例
えば一群の補機を駆動することができる。
【0081】
次に、図15B図20を参照すると、モータ/発電機601を取り入れてなるPMD
600が示されている。モータ/発電機601が組み込まれたPMD600は、図15A
に関して上述したような複合装置の一実施の形態であり、便宜上、次に説明される複合装
置およびPMD600は、入れ換え可能に言及される。特定の構成において、PMD60
0は、時間的に交代で、エンジンの始動モータの機能および車両のオルタネータ(または
、発電機)の機能の両方を提供することができる。モータ/発電機601は、本明細書に
おいてM/G601とも称される。簡略化のために、PMD100とPMD600との間
の相違のみを説明する。一実施の形態においては、M/G601が、3つの電機子相を備
える4極のモータである。M/G601は、反対方向に回転する電機子682および界磁
694を有することができる。電機子682が、動作可能にサン718へと取り付けられ
ている。遊星101が遊星の構成であるがため、サン718は、トラクションリング75
0の回転方向と反対の方向に回転する。界磁694は、いくつかの実施の形態においては
トラクションリング134へと剛に取り付けられた回転磁性鋼円筒であってよいが、トラ
クションリング134と一体であってよく、あるいは別個に作成されてトラクションリン
グ134へと組み合わせられてもよい。いくつかの実施の形態においては、界磁694は
、界磁694の内径を巡って環状に配置されて界磁694の内径へと取り付けられる永久
磁石680を利用する。他の実施の形態においては、界磁694が、磁界を生成するため
の1つ以上の電磁石を使用する。いくつかの実施の形態においては、電機子682が、多
数の薄板686(電機子マウント630へと取り付けられる)の周囲に巻き付けられたコ
イル684を含んでいる。一実施の形態においては、電気子682が、18個の歯をそれ
ぞれが有している24枚のケイ素鋼板を有している。さらに、電機子マウント630は、
電機子682を界磁694および磁石680に対して位置させ、電機子682を自動車の
バッテリ(図示せず)などの電気の源へと接続する複数の配線(図示せず)を案内する。
電機子マウント630は、複数のスプラインベアリング636を介してサン軸602へと
動作可能に取り付けられる。サン軸602は、PMD600の中心に配置された長い円柱
形の軸であって、長手軸11に一致し、サン718を動かしてPMD600の変速を行う
ために軸方向に移動することが可能である。サン軸は、図26A図26Cを参照してさ
らに後述される。
【0082】
ケーブル676が、M/G601の配線を収容しており、これらの配線が、電機子68
2から電機子マウント630を通って引き回され、サン軸602の内側のソケット674
を終端としている。一実施の形態においては、円筒形のソケット674が、電機子682
の3相からの3つのリードを受け入れ、これら3つのリードを回転導体672へと案内し
ている。円柱形の部品である回転導体672が、ソケット674に位置する回転端から導
体キャップ668に位置する固定端へと電気を伝える。一実施の形態においては、回転導
体672が、水銀などの液体金属を使用して電流をソケット674に位置する回転端から
導体キャップ668に位置する固定端へと伝える形式である。他の実施の形態においては
、スリップリングが使用されるが、他の任意の適切な方法も使用可能である。3つのリー
ド670は、導体キャップ668から延びて、モータコントローラ(図示せず)および/
または電気の源へとつながっている。特定の実施の形態においては、モータコントローラ
が、電気の源へとつながっている。
【0083】
次に、とくには図15Bおよび図20を参照すると、一実施の形態においては、サン7
18が、M/G601がモータとして動作しているとき、トラクションリング134より
もトラクションリング750により近く位置する。多数の自動車の用途においては、エン
ジンを回転させるために適切なトルクの増幅を達成するために、M/G601からエンジ
ンのクランクシャフトへと回転数の低減が存在することが好ましい。サン718がトラク
ションリング134に向かって移動するにつれ、サン718の速度に対するトラクション
リング134の速度が減少する一方で、トラクションリング750の速度は大きくなる。
M/G601が一定の速度で動作する場合、界磁694がトラクションリング134へと
接続され、電機子682およびサン718に対して一定の速度で回転するため、サン71
8がトラクションリング134に向かって移動するにつれ、界磁694の速度が遅くなる
。正味の効果は、M/G601の速度に対してすべての比でのトラクションリング750
における速度の大幅な低減の存在である。
【0084】
PMD600をM/G601に組み合わせることで、軸、ケース、およびベアリングを
共有することができる。PMD600のいくつかの用途においては、トラクションリング
134および界磁694が、磁性鋼から1つの一体の部品として製作されるため、磁石6
80を囲む磁性鋼の追加の重量およびコストが不要になり、あるいは大幅に削減される。
【0085】
さらに別の実施の形態においては、電機子682の液体冷却をPMD600と同じ流体
を使用して行うことができる可能性がある。同じ液体を電機子682へと預けることによ
って、大幅に大きな動力をM/G601を介して伝えることができる。いくつかの実施の
形態においては、液冷式のモータが、PMD600に使用される同じ流体、ポンプ、ホー
ス、およびシールを利用することができる。特定の実施の形態においては、3つの別個の
装置(すなわち、始動モータ、オルタネータ、および動力変調装置)が1つの装置へと組
み合わせられるため、サイズおよび重量の削減が実現される。サイズおよび重量がより小
さくなることで、慣性が減少するとともに、PMD600およびM/G601を、元より
必要とされる空間よりも小さな空間に入れ込むことができる。他の実施の形態は、PMD
600およびM/G601を結合させ、必要とされるベアリングの数の削減および他の装
置およびプーリの省略からの効率向上をもたらす。
【0086】
さらに図15Bおよび図20を参照すると、一実施の形態において、界磁694が、横
キャップ612および端部キャップ658へと接続されている。横キャップ612および
端部キャップ658を、標準的な固定具を使用して界磁694へと剛に固定することがで
きる。横キャップ612は、おおむね円板状の部品であってよく、潤滑剤、冷却液を収容
し、PMD600の構成部品を保護および収容するように機能する。いくつかの実施の形
態においては、横キャップ612および端部キャップ658が鋼で製作されるが、他の材
料も使用可能である。トラクションリングベアリング605が、実施の形態に応じて半径
方向の荷重および軸方向の荷重を支持することができるが、トラクションリング750の
延長部の外径の周囲かつ端部キャップ658の穴の内側に取り付けられている。トラクシ
ョンリングベアリング605は、トラクションリング750と端部キャップ658との間
の相対運動を可能にする。キャップベアリング626が、サン軸602の周囲かつ横キャ
ップ612の穴の内側に配置され、界磁694とサン軸602との間の相対運動を提供し
、半径方向の荷重を支持でき、いくつかの実施の形態においては軸方向の荷重を支持でき
る。横キャップ612の軸方向の移動を防止すべく機能するスラストベアリング624が
、横キャップ612とシフトねじ622との間に取り付けられている。いくつかの実施の
形態においては、スラストベアリング624が、半径方向の荷重ならびにスラスト荷重を
支持することができ、あるいは半径方向の荷重のみを支持することができる。シフトねじ
622は、通常は、PMD600によって伝達される最大トルクに耐えることができるフ
レームまたは車台などといった剛な運動しない構造体へと標準的な固定具によって取り付
けることができる固定の部品である。シフトナット621が、シフトねじ622へとねじ
込まれ、シフトナット621の回転によってサン軸602に軸方向の動きが生じ、PMD
600が変速される。シフトナット621は、通常は、ねじ山付きの中央穴を有して環状
に形作られた部品であり、大きなトルクを受けることがない。いくつかの実施の形態にお
いては、シフトナット621がアルミニウムで製作されるが、プラスチックおよび鋼など
といった他の材料も使用することができる。
【0087】
ここで、図27Aおよび図27Bを追加で参照すると、一実施の形態においては、PM
D600が、すでに説明したステッピングモータ20および駆動歯車22を使用して変速
される。シフト歯車748が、シフトリング620およびシフトナット621の外径へと
、キー、標準的な固定具、締まりばめ、接着剤、または他の任意の適切な方法を使用して
接続される。シフト歯車748の幅は、シフトリング620およびシフトナット621の
軸方向の移動を許容しつつ、依然として駆動歯車22と係合するために充分である。遠心
シフタなど、他のシフト方法をモータ20の代わりとすることも可能である。遠心シフタ
は、原動機の速度が増加するときに出力プーリ724およびサン軸プーリ722の速度を
遅くし、原動機の速度が低下するときに出力プーリ724およびサン軸プーリ722の速
度を高める1つ以上のおもりを使用する。
【0088】
シフトナット621は、中央穴を有する円板状のシフトリング620へと、標準的な固
定具によって取り付けられる。一実施の形態においては、シフトリング620が、シフト
ナット621と同じ材料で製作されるが、他の材料も使用可能である。シフトナット62
1およびシフトリング620は、シフトナット621およびシフトリング620がピンマ
ウント650に対して回転するときの摩擦を最小限にする2つのシフトベアリング625
A、625Bを収容している。ピンマウント650は、円板状であって、シフトねじ62
2に対するすき間をもたらす中央穴を備えている。ピンマウント650の軸は、長手軸1
1と同心であり、シフトナット621およびシフトリング620の沈め穴に整列している
。ピンマウント650は、中心から半径方向に延びる2つのねじ穴を180度の間隔で有
しているが、より少数または多数のねじ穴を使用してもよい。一実施の形態においてはピ
ンマウント650のねじ穴へとねじ込まれるが、押し込まれても、溶接されても、あるい
は他の任意の適切な方法を使用して挿入されてもよい2つのシフトピン616A、616
Bが、ピンマウント650の穴へと延び、シフトねじ622のスロットを通過し、シフト
ねじ622の穴へと延びるねじ山付きのピンである。シフトピン616A、616Bは、
サン軸602の外側かつシフトねじ622の穴の内側に配置された2つのピンベアリング
654A、654Bに接触する。ピンベアリング654A、654Bは、回転するサン軸
602とシフトピン616A、616Bとの間の相対運動を提供するとともに、PMD6
00の変速から生じるスラスト荷重を吸収する。
【0089】
さらに図15Bおよび図20を参照すると、ステータベアリング614が、サン軸60
2の周囲でステータ板780Bの穴に取り付けられ、サン軸602とステータ板780B
との間の軸方向の動きを可能にするとともに、半径方向の荷重に耐えることを可能にして
いる。サン軸602の片側(端部キャップ658に近い方)においては、シャフトベアリ
ング610が、サン軸602の外側かつステータブレース608の穴の内側に取り付けら
れている。いくつかの実施の形態においては、シャフトベアリング610が、ニードルロ
ーラまたは円柱ローラベアリングであり、ローラがサン軸602の硬化および研磨領域に
接触する。これにより、サン軸602を、最小限の摩擦にてシャフトベアリング610に
対して軸方向に動かすことができる。ステータブレース608は、通常は円筒形であり、
いくつかの実施の形態においては硬化鋼から製作されるが、任意の適切な材料が使用可能
である。ステータブレース608は、第1の端部において、標準的な固定具、溶接、また
はステータ板780Aの穴への圧入によって、ステータ板780Aへと剛に取り付けられ
ている。ステータブレース608は、第2の端部において、フレームまたは車台などとい
った固定の構造体へと剛に取り付けられている。ステータブレース608とトラクション
リング750との間に相対運動を提供するために、1つ以上のブレースベアリング604
A、604Bが、ステータブレース608上かつトラクションリング750の穴の内側に
取り付けられている。さらにブレースベアリング604A、604Bは、半径方向の荷重
を支持し、いくつかの実施の形態においては軸方向の荷重も支持する。
【0090】
次に、図15B図16、および図17を参照し、サン軸602と電機子682との間
の動力伝達の1つの方法を説明する。いくつかの実施の形態においては、サン軸602が
、1つ以上のシャフト溝634を含んでおり、シャフト溝634は、軸11に平行であっ
て、いくつかの実施の形態においてはスプラインベアリング636よりもわずかに大きい
半径を有しているおおむね長手方向の溝である。いくつかの実施の形態においては、スプ
ラインベアリング636が、電機子682とサン軸602との間でトルクを伝達するおお
むね球形の転がり部材である。スプラインベアリング636を、硬化鋼または他の適切な
材料から製作することができる。使用されるスプラインベアリング636の数およびサイ
ズは、伝達しなければならないトルクの大きさ、シャフト溝634の半径および長さ、な
らびにPMD600のサイズに依存して決まる。
【0091】
一実施の形態においては、1つ以上のマウント溝632が、電機子マウント630の内
径へと形成されている。マウント溝632は、いくつかの実施の形態においては、シャフ
ト溝634と同一であるが、他の実施の形態においては、より長くても、より短くてもよ
く、あるいは別の半径を使用してもよい。いくつかの実施の形態においては、スプライン
ベアリング636が、それぞれのスプラインベアリング636の中心がシャフト溝634
およびマウント溝632の両者の半径方向深さの間の中間に位置するように、配置されて
いる。スプラインベアリング636は、シャフト溝634の半径およびマウント溝632
の半径の両者に接して同じ量だけ転がるため、自動調心である。典型的には、2つ以上の
シャフト溝634およびマウント溝632が角度方向において等間隔で配置されるとき、
スプラインベアリング636は、電機子682をサン軸602に対して中心に位置させる
。いくつかの実施の形態においては、自動調心が生じることができるようにするため、お
よび組み立てを容易にするために、スプラインベアリング636に少量のすき間が設けら
れる。少量のすき間が設けられる場合、スプラインベアリング636は、PMD600が
変速されるときに初めて自身を適切な位置に配置させる。PMD600が変速されるとき
、スプラインベアリング636は、サン軸602の軸方向の移動距離の半分だけ、シャフ
ト溝634およびマウント溝632に沿って軸方向に転がる。結果として、特定の実施の
形態においては、シャフト溝634およびマウント溝632の長さは、好ましくは、スプ
ラインベアリング636の直径に各シャフト溝634のスプラインベアリング636の数
を掛けた長さの少なくとも約2倍である。いくつかの実施の形態においては、ステータベ
アリング614およびキャップベアリング626が、スプラインベアリング636の軸方
向の移動を制限するために使用される。
【0092】
次に、図15B図16図17、および図26を参照し、電機子682への電気配線
の案内を説明する。いくつかの実施の形態においては、3つの電気配線が、サン軸602
のシャフト穴638へと案内され、すでに述べたように、回転導体672が、非回転の配
線を回転する配線へと変換する。ケーブル676に収容された配線が、サン軸602の中
心の中空の行き止まり穴であるケーブル筒639へと案内され、次いでシャフトスロット
635を通過する。シャフトスロット635は、サン軸602の一部分に沿って軸方向に
延び、サン軸602の外径からケーブル筒639までの通路を形成しているスロットであ
る。次いで、3つの電気配線(図示せず)は、ケーブル676を出て、電機子マウント6
30の配線空洞648の内側の3つの固定子相のそれぞれへと分岐する。変速時にPMD
600においてサン軸602が軸方向に移動するとき、サン軸602が、電機子682へ
と接続された配線を交互に延長および短縮させる。配線空洞648は、変速の際に必要と
なる電気配線の余分な長さのための空間を提供する。電気配線の案内を容易にするために
、電機子マウント630が、配線空洞648内の配線へのアクセスを提供する1つ以上の
組み立て穴646を含んでいる。さらに、電機子マウント630は、3つの電気配線のそ
れぞれについてそれぞれの固定子相への案内を容易にするために、電機子630の壁を貫
いて軸方向に形成された1つ以上の案内穴644を含むことができる。組み立て穴646
または案内穴644を、電気配線および電機子682からのリードへとアクセスするため
に使用することができ、配線およびリードを組み立て穴646または案内穴644を通っ
て引き出し、はんだで接続し、絶縁し、次いで再び配線空洞648へと戻すことができる
。いくつかの実施の形態においては、電機子マウント630の半径方向に延びる壁が、電
機子682を電機子マウント630へと固定するように構成された1つ以上の積層ねじ穴
642を含んでいる。
【0093】
次に、図15B図18、および図19を参照すると、電機子682および界磁694
の一実施の形態が示されている。図19に最もよく見られるように、いくつかの実施の形
態においては、電機子682が、多数の薄板686をまとめて積層して構成された鉄心と
、スロット690によってもたらされる空間においてそれぞれの歯692へと巻き付けら
れたいくつかの導電線コイル684とを含んでいる。他の実施の形態においては、無鉄心
の固定子が使用される。いくつかの実施の形態においては、18個の溝690および18
個の歯692が使用されるが、用途に応じて、より少数または多数を使用してもよい。い
くつかの実施の形態においては、それぞれの薄板686の積層穴688が、電機子682
を電機子マウント630へと固定するために使用される。一実施の形態においては、小ね
じなどといった標準的な固定具が、積層穴688を通って挿入され、電機子マウント63
0のねじ穴642へとねじ込まれる。
【0094】
次に、図15Bおよび図20を参照すると、いくつかの実施の形態においては、4極の
M/G601を生成するために4つの磁石680が使用されているが、他の実施の形態に
おいては、より少数または多数の磁石680を使用してもよい。磁石680は、永久磁石
式であってよく、硬質フェライトセラミック、サマリウムコバルト、およびネオジムホウ
素鉄などの任意の適切な材料から製作することができる。いくつかの実施の形態において
は、磁石680の外径が、界磁694の内径に一致し、磁石680の内径の半径が、界磁
694および電機子682と同心である。いくつかの実施の形態においては、磁石680
と電機子682との間の距離が、好ましくは、磁束を最大にし、したがってM/G601
によって生み出されるトルクまたはオルタネータ601によって生み出される電気を最大
にするために、可能な限り小さい。磁石680の半分は、極性がSからNへと半径方向に
延びるように磁化され、磁石680の残りの半分は、NからSへと半径方向に延びる極性
を有している。磁石680は、交互の磁石680が同じ極性を有するように配置される。
【0095】
次に、図15Bを参照すると、サン718が、PMD100のサン126に類似してい
るが、サン718が動力を伝達する点で相違している。サン718が、締まりばめ、溶接
、標準的な固定具、キー、または他の任意の適切な方法によって、サン軸602へと剛に
取り付けられている。サンベアリング717A、717Bが、サン718と非回転のシフ
トカム713との間の相対運動を提供している。シフトカム713は、シフトカム713
と回転および軸方向の移動が可能なサン軸602との間の干渉を防止するために、シフト
カム713の内径とサン軸602との間にすき間が形成されている点を除き、PMD10
0のシフトカム127と同様である。
【0096】
次に、図15B図20図27A、および図27Bを参照し、シフトねじ622およ
び関連の部品を説明する。いくつかの実施の形態においては、支持ブラケット740が、
動作時にシフトねじ622の静止位置を維持するために、シフトねじ622へと剛に取り
付けられている。支持ブラケット740は、剛な非回転のフレーム、車台、または物体へ
と取り付けられる。シフトねじ622の内径によって定められるシフト穴660が、導体
キャップ668、回転導体672、および他の部品を覆って保護している。シフトスロッ
ト662(図20を参照)が、リード670を閉じ込めて回転を防止するため、およびP
MD600が変速されるときのリード670の軸方向の移動を可能にするために、軸方向
に延びている。シフトねじ622のねじ山666は、種々の変速速度ならびに打ち勝たな
ければならない変速力に対処するためのピッチおよびサイズであってよい。いくつかの実
施の形態においては、複数のねじ山666が、好ましくは、組み立ての容易さおよび緩い
公差を改善するために、サン軸602の軸方向の移動よりも大きな軸方向長さである。
【0097】
ピンマウント650が、すき間および規制のない動きをもたらすために、ねじ山666
の直径よりもわずかに大きい穴を有している。PMD600の変速を行うために、シフト
ナット621が回転し、ピンマウント650の軸方向の移動を生じさせる。2つのシフト
ピン616A、616Bが、ねじ山付きのピン穴656A、656Bへとねじ込まれ、ピ
ンマウント650の穴を超えてシフト穴660へと延びている。シフトピン616A、6
16Bが、シフトピン616A、616Bの各側に配置された2つのピンベアリング65
4A、654Bに接触し、サン軸602とシフトピン616A、616Bとの間の相対移
動をもたらすとともに、軸方向の力を吸収する。ピンベアリング654A、654Bを、
標準的な固定具によって所定の位置に保持することができ、一実施の形態においては、保
持リングが使用され、ピンベアリング654A、654Bのシフトピン616A、616
Bから離れる方を向いている側においてサン軸602の表面に形成された溝に挿入される
【0098】
図15Bおよび図20を参照すると、入力プーリ720が、例えばエンジンのクランク
シャフトのプーリへと動作可能に取り付けられたベルト(図示せず)から入力される機械
的な動力を受け取るように構成されている。さらに別の実施の形態においては、入力プー
リ720が、チェーンによって駆動されるスプロケットであってよい。動力が、入力プー
リ720から、トラクションリング750、遊星101、第2のトラクションリング13
4を通って流れ、出力プーリ724から出る。入力プーリ720および/または出力プー
リ724は、いくつかの実施の形態においては、Vベルトプーリ、サーペンタインベルト
プーリ、タイミングベルトプーリ、または他の任意の種類のプーリまたはスプロケットで
あってよい。出力プーリ724は、入力プーリ720と同じ方向に回転し、例えば自動車
において補機類および他の装置に動力をもたらすように構成することができる。
【0099】
特定の実施の形態においては、動力を、遊星101から、サン718、サン軸602を
通り、サン軸プーリ722の外へと案内することも可能である。サン軸プーリ722が、
出力プーリ724よりも高い速度で出力プーリ724とは反対方向に回転し、自動車の補
機類および他の装置に動力をもたらすことができる。サン軸プーリ722は、いくつかの
実施の形態においては、マウント溝632と同じ形状であってよく、マウント溝632と
同じ機能を実行することができるプーリマウント溝732を有している。サン軸602が
、いくつかの実施の形態においては、シャフト溝634と同じ形状であってよく、シャフ
ト溝634と同じ機能を実行することができるプーリシャフト溝734を有している。い
くつかの実施の形態においてはスプラインベアリング636と同一であるプーリスプライ
ンベアリング736が、プーリマウント溝732およびプーリシャフト溝734によって
生成されるスロットへと挿入されている。
【0100】
図15Bおよび図20をさらに参照すると、フランジ738が、キー、スプライン、締
まりばめ、標準的な固定具、または他の任意の適切な方法によって、ステータブレース6
08へと剛に取り付けられている。いくつかの実施の形態においては、フランジナット7
30が、ステータブレース608の第1の端部へとねじ込まれ、フランジ738を軸方向
に規制する。一実施の形態においては、フランジ738が、サン軸プーリ722の周囲を
巡るベルト(図示せず)のための開口をもたらすために、切り欠きを有している。サン軸
プーリ722の各側に配置されたプーリベアリング728A、728Bが、PMD600
の変速の際にサン軸プーリ722を軸方向に拘束する。カバー板726が、フランジ73
8へと取り付けられる。いくつかの実施の形態においては、標準的な固定具が、フランジ
738をカバー板726へと固定しており、フランジ738およびカバー板726の両者
を、PMD600の取り付けのために、フレーム、支持ブラケット、または他の固定の構
成部品へと固定することができる。
【0101】
入力プーリ720、サン軸プーリ722、または出力プーリ724の任意の1つを、エ
ンジンのクランクシャフトのプーリへと取り付けられたベルトによって駆動することがで
きる。さらに、プーリ720、722、または724のいずれかを、自動車の補機類また
は装置に動力をもたらすように構成することができる。いくつかの実施の形態においては
、プーリ720、722、または724のうちのただ1つが補機類へと動力をもたらすた
めに使用され、したがって、エンジンのクランクシャフトへと動作可能に取り付けられた
1つのプーリ、および補機類に動力をもたらすただ1つのプーリが存在する。これらの実
施の形態においては、残りのプーリを取り除くことができ、あるいは残りのプーリが使用
されない。
【0102】
図15B図20図23図25を参照し、トラクションリング750の別の実施の
形態を説明する。M/G601が主としてモータとして機能する用途においては、トルク
が、第2のトラクションリング134においてPMD600へと入力され、動力が、遊星
101を通ってトラクションリング750へと移動する。このような逆駆動の状態におい
ては、カムローダ154が、好ましくは、トラクションリング750および/または第1
の負荷カムリング157上の浅いV字の斜面を使用する。浅いV字の斜面が、トルクがト
ラクションリング750を介して入力されるか、第2のトラクションリング134を介し
て入力されるかにかかわらず、最適な軸方向力の生成を可能にする。図23図25が、
接触面111の反対側においてトラクションリング750の表面へと浅いV字の斜面が形
成されている実施の形態を示している。特定の実施の形態においては、斜面の表面752
が、V字の中心754の各側について鏡像である。V字の中心754は、斜面において最
も低い点であり、斜面の表面752が、V字の中心754の各側で斜めに立ち上がってい
る。
【0103】
次に図26A図26Cに目を向け、図15Bを参照すると、サン軸602の一実施の
形態が、プーリスプラインベアリング736およびプーリマウント溝732と協働してサ
ン軸602からサンシャフトプーリ722へと(あるいは、この反対に)トルクを伝達す
るように構成された1つ以上のプーリシャフト溝734を含んでいる。さらに、サン軸6
02は、スプラインベアリング636およびマウント溝632と協働してサン軸602か
ら電機子マウント630へと(あるいは、この反対に)トルクを伝達するように構成され
た1つ以上のシャフト溝634を含むことができる。一実施の形態においては、サン軸6
02は、サン718を支持し、サン軸602をサン718へと接続するように構成された
座669を含むことができる。座669は、例えばサン718上の対応する継手に係合す
るためのスプラインまたはキー接続(図示せず)を含むことができる。ケーブル676の
収容および案内ならびにソケット674の収容を容易にするために、サン軸602は、お
おむねサン軸602の内部にサン軸602と同心に形成されるシャフト穴638およびケ
ーブル筒639を含むことができる。図26A図26Cに示されるように、サン軸60
2は、いくつかの実施の形態においては、PMD600の他の構成部品との充分なすき間
をもたらしながら、PMD600の動作の際に生じるトルクに耐えて伝達を行うことがで
きるように構成された細長いネック部668を含んでいる。サン軸602を、PMD60
0のトルクおよび速度に耐えるように設計された任意の適切な材料で構成でき、いくつか
の実施の形態においては、サン軸602が硬化鋼で製作されるが、軟鋼、アルミニウム、
チタニウム、炭素繊維も使用可能である。
【0104】
次に、図27Aおよび図27Bを参照すると、PMD600のための制御機構サブアセ
ンブリ675が、シフトベアリング625Aおよびピンベアリング654Aを受け入れる
ように構成されたシフト歯車748を含むことができる。制御機構サブアセンブリ675
は、さらに、シフトベアリング625Bおよびピンベアリング654Bを受け入れるよう
に構成されたシフトリング620を有することができる。シフト歯車748およびシフト
リング620を、ピンマウント650をシフトベアリング625A、625Bの間に配置
して備える囲いを形成するように、一体に固定することができる。ピンマウント650は
、例えばピンマウント650の半径方向のねじ穴677へとねじ込まれるように構成され
たシフトピン616A、616Bを受け入れるように構成されている。すでに上述したよ
うに、シフトねじ622上のシフト歯車748の回転によって、ピン616A、616B
が、サン軸602へと動作可能に接続されたピンベアリング654A、654Bを軸方向
に動かすことによって、サン軸602の軸方向の動きを生じさせる。
【0105】
次に、図28を参照すると、本明細書に記載の駆動系において使用することができる制
御システム2800が示されている。制御ハードウェアおよびソフトウェア2802が、
例えば、制御ハードウェアおよびソフトウェア2802のメモリに存在できる比例−微分
制御の仕組み2805から信号を受け取るためのマイクロステッパ・コントローラ・マイ
クロプロセッサ2803を含むことができる。所望の補機速度2806を、制御ハードウ
ェアおよびソフトウェア2802による使用のためにメモリに保存することができる。マ
イクロプロセッサ2803が、一実施の形態においては、原動機2804の速度を表わす
信号(例えば、内燃機関のクランクシャフトの速度センサからの信号)および実際の補機
速度2807を表わす信号(例えば、補機2810の速度センサからの信号)を受信する
【0106】
比例−微分制御2805が、制御の戦略を実施するように構成されている。制御ハード
ウェアおよびソフトウェア2802が、所望の補機速度2806と実際の補機速度280
7(フィードバックループによって得られる)との間の誤差2809を計算する。ハード
ウェアおよびソフトウェア2802が、誤差2809を比例定数および微分定数によって
拡大する。所望の補機速度2806と実際の補機速度2807との間に差が存在する場合
には、ステッピングモータドライバ2814が、ステッピングモータ2816にPMDの
比2808の調節を行わせ、補機2810の速度を所望の補機速度2806により密に一
致させる。実際の補機速度2807が所望の補機速度2806に実質的に等しくなるとき
、誤差信号は存在しなくなり、ステッピングモータ2816を停止させることができる。
他の実施の形態においては、ステッピングモータ2816が、比2808を保持するため
に活動状態に保たれる。さらに別の実施の形態においては、ロック機構(図示せず)を使
用して、ステッピングモータ2816を停止させてもPMDの比2808が変化しないよ
うにすることができる。一実施の形態においては、ステッピングモータ2816を、12
Vまたは42Vの電池またはシステムなどの電源によって駆動することができる。
【0107】
本明細書に記載の実施の形態は、とりわけ法的要件を満足させるために提示された例で
ある。これらの例は、あくまでも使用が可能な実施の形態にすぎず、決して本発明を限定
しようとするものではない。すなわち、これらの例ではなく、以下の特許請求の範囲が、
本発明を定める。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図28