特許第6240134号(P6240134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240134
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】皮膚状態推定装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/01 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   A61B5/00 101D
   A61B5/00 101K
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-203360(P2015-203360)
(22)【出願日】2015年10月15日
(65)【公開番号】特開2017-74217(P2017-74217A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2016年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新井 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚志
(72)【発明者】
【氏名】岩亀 誠
(72)【発明者】
【氏名】日野 健一
(72)【発明者】
【氏名】平野 智也
(72)【発明者】
【氏名】小谷 泰則
(72)【発明者】
【氏名】大上 淑美
(72)【発明者】
【氏名】戸松 太郎
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−036704(JP,A)
【文献】 特開2013−198576(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0021724(US,A1)
【文献】 村上 知子 外2名,“マイクロスコープを用いた皮膚画像からの状態推定”,2013年度 人工知能学会全国大会(第27回)論文集[CD−ROM],社団法人人工知能学会,2013年 6月,p.1−4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 − 5/01
CSDB(日本国特許庁)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の検査対象部位の皮膚から検出した皮膚温度データであって検出部位の位置データを含む前記皮膚温度データを時系列で取得する皮膚温度取得手段(20)及び/又は人体の検査対象部位の皮膚を時系列で撮影した撮影画像データに対して行われるRGB処理により得られた前記撮影画像データのRGBデータに基づき皮膚血行量データを時系列で取得する皮膚状態取得手段と、
前記皮膚温度取得手段により取得された前記皮膚温度データ及び/又は前記皮膚状態取得手段により取得された前記皮膚血行量データを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により分解することで得られた複数の成分に基づき、前記検査対象部位の皮膚状態を推定する皮膚状態推定手段(30,130)と、
前記皮膚状態推定手段により推定された前記検査対象部位の皮膚状態に基づき、前記検査対象部位が異常であるか否かを判定する異常判定手段(200)と、
を備える皮膚状態推定装置(10,110)。
【請求項2】
前記皮膚状態推定手段は、
前記複数の成分のうち、その成分波形の振幅が皮膚の賦活化と相関関係にある成分を判定用成分として抽出し、
前記判定用成分に基づき、前記検査対象部位の皮膚状態を推定する、
請求項1に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項3】
皮膚状態と疾患情報とを関連付けて記憶する疾患情報記憶部(210)をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記皮膚状態推定手段により推定された皮膚状態に基づいて前記疾患情報記憶部から前記疾患情報が抽出された場合に、前記検査対象部位が異常であると判定するとともに、抽出された前記疾患情報を提示する、
請求項1又は2に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項4】
前記皮膚温度取得手段及び/又は前記皮膚状態取得手段と、前記異常判定手段とがスマートデバイスに格納されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項5】
前記皮膚温度取得手段及び/又は前記皮膚状態取得手段と、前記皮膚状態推定手段と、前記異常判定手段とがスマートデバイスに格納されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の皮膚状態推定装置の作動方法であって、
前記検査対象部位の皮膚を冷却して、その検査対象部位の皮膚を賦活化する手段が作動する工程と、
前記作動する工程の前後の前記皮膚温度データ及び/又は前記皮膚血行量データに基づいて、皮膚がん、ニキビ、乳がん、コリ及び未病の少なくとも一つの症状に前記検査対象部位が該当するか否かを判定する症状判定工程と、
を具備する皮膚状態推定装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚画像を解析して治療や診断に役立てる技術が検討されている。例えば、特許文献1(特開平7−124126号公報)には、被験者への電極固定等の接触、束縛なしで生体情報を動画像として抽出する技術が開示されている。特許文献2(特表2008−505684号公報)には、サーモグラフィの画像から乳がんを特定し得る技術が開示されている。特許文献3(特表2003−524490号公報)には、関節等の炎症を膨らみ・色・関節可動域等から総合的に判定しようとする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、皮膚画像は種々の条件によって影響を受けるので、画像変化の原因を特定することが困難である。結果として、皮膚状態を適切に把握できず、特定の疾患等に対して効果的な治療や診断をすることが困難な状況が生じている。
【0004】
本発明の課題は、皮膚状態を適切に推定し得る皮膚状態推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る皮膚状態推定装置は、皮膚温度取得手段及び/又は皮膚状態取得手段と、皮膚状態推定手段と、異常判定手段と、を備える。皮膚温度取得手段は、皮膚温度データを時系列で取得する。皮膚温度データは、人体の検査対象部位の皮膚から検出した皮膚温度データであって検出部位の位置データを含むものである。皮膚状態取得手段は、皮膚血行量データを時系列で取得する。皮膚血行量データは、人体の検査対象部位の皮膚を時系列で撮影した撮影画像データに対してRGB処理を行い、RGB処理により得られた撮影画像データのRGBデータに基づき取得される。皮膚状態推定手段は、皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により分解することで得られた複数の成分に基づき、検査対象部位の皮膚状態を推定する。異常判定手段は、皮膚状態推定手段により推定された検査対象部位の皮膚状態に基づき、検査対象部位が異常であるか否かを判定する。
【0006】
本発明の第1観点の係る皮膚状態推定装置では、皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により分解することで得られた複数の成分に基づき、検査対象部位の皮膚状態を推定するので、外部要因によらずに画像変化の原因を特定することができ、皮膚状態を適切に推定できる。
【0007】
本発明の第2観点に係る皮膚状態推定装置は、第1観点の皮膚状態推定装置において、皮膚状態推定手段は、複数の成分のうち、その成分波形の振幅が皮膚の賦活時及び皮膚の非賦活時の変化と相関関係にある成分を判定用成分として抽出する。そして、皮膚状態推定手段は、判定用成分に基づき検査対象部位が異常であるか否かを判定する。
【0008】
本発明の第2観点の係る皮膚状態推定装置では、複数の成分のうちの皮膚の賦活/非賦活と相関関係にある成分が対象者の皮膚状態を推定する判定用成分として抽出される。このため、対象者の皮膚状態と関連性が高いと推測される成分から皮膚状態を推定することができる。結果として、検査対象部位の異常判定の妥当性を高めることができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る皮膚状態推定装置は、第1観点から第3観点のいずれかの皮膚状態推定装置であって、疾患情報記憶部をさらに備える。疾患情報記憶部は、皮膚状態と疾患情報とを関連付けて記憶する。また、異常判定手段は、皮膚状態基づいて検査対象部位が異常であると判定するとともに、疾患情報記憶部から抽出された疾患情報を提示する。
【0010】
本発明の第3観点に係る皮膚状態推定装置では、疾患情報記憶部に記憶された皮膚状態と疾患情報との関連付けを最適化することで、異常判定の精度を高めていくことができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る皮膚状態推定装置は、第1観点から第3観点のいずれかの皮膚状態推定装置であって、皮膚温度取得手段及び/又は皮膚状態取得手段と、異常判定手段とがスマートデバイスに格納されているものである。
【0012】
本発明の第4観点に係る皮膚状態推定装置では、スマートデバイスにより情報の入出力がなされるので、対象者は検査対象部位が異常であるか否かを簡便に判定できる。また、異常判定手段をサーバに設けることで、演算負荷を軽減することができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る皮膚状態推定装置は、第1観点から第4観点のいずれかの皮膚状態推定装置であって、皮膚温度取得手段及び/又は皮膚状態取得手段と、皮膚状態推定手段と、異常判定手段とがスマートデバイスに格納されているものである。
【0014】
本発明の第5観点に係る皮膚状態推定装置では、スマートデバイスにより情報の入出力及び演算がなされるので、対象者は検査対象部位が異常であるか否かを簡便に判定できる
本発明の第6観点に係る皮膚状態推定方法は、第1観点から第5観点のいずれかの皮膚状態推定装置を用いて実行される。この皮膚状態推定方法では、検査対象部位の皮膚を冷却して、その検査対象部位の皮膚を賦活化する。そして、賦活化の前後の皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データに基づいて、皮膚がん、ニキビ、乳がん、コリ及び未病の少なくとも一つの症状に検査対象部位が該当するか否かを判定する。なお、ここでは「未病」とは、健康状態の範囲であるが病気に近い状態のこという。
【0015】
本発明の第6観点に係る皮膚状態推定方法では、検査対象部位の皮膚を冷却して、その検査対象部位の皮膚を賦活化するので、賦活化前後の皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データに基づいて、検査対象部位が異常であるか否かを(皮膚がん、ニキビ、乳がん、コリ及び未病の少なくとも一つの症状に該当するか否かを)簡便に判定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る皮膚状態推定装置では、検査対象部位の皮膚状態を適切に推定できる。
【0017】
本発明の第2観点に係る皮膚状態推定装置では、検査対象部位の異常判定の妥当性を高めることができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る皮膚状態推定装置では、異常判定の精度を高めていくことができる。
【0019】
本発明の第4,5観点に係る皮膚状態推定装置では、スマートデバイスを利用して検査対象部位の異常を簡便に判定できる。
【0020】
本発明の第6観点に係る皮膚状態推定方法では、検査対象部位が異常であるか否かを簡便に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置の概略図。
図2】皮膚状態推定装置において特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分を同定する際の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図3】本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置の概略図。
図4】皮膚状態推定装置において特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分を同定する際の処理の流れの一例を示すフローチャート。
図5】本発明の一実施形態に係る異常判定装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を説明する前に、まず、本発明者らが本発明を為すにあたって重要な基礎となった、本発明者らによる知見について説明する。
【0023】
(1)本発明者らによる知見の要点
本発明者らは、鋭意検討した結果、人体の皮膚温度を検出し、検出部位の位置データ(座標データ)を含む時系列の皮膚温度データを、或いは、時系列の皮膚の撮影画像データから得られるRGBデータに基づき算出された時系列の皮膚血行量データを、特異値分解法、主成分分析法若しくは独立成分分析法を用いて複数の成分に分解し、分解した複数の成分について解析を行うことで、特定の疾患等を反映した皮膚温度の変化或いは血行量の変化を示す成分を同定することができることを見いだした。そして、本発明者らは、対象者の皮膚状態を推定し、これを解析することで、推定した皮膚状態に基づき対象者の生理状態を可視化することのできる本発明に到達した。
【0024】
(2)皮膚の各種データの取得方法、及び取得した各種データの解析方法
(2−1)皮膚温度データの取得方法、及び皮膚温度データの解析方法
次に、本発明者らが上記の知見を得るに際して用いた皮膚温度データの取得方法、及び皮膚温度データの解析方法について説明する。
【0025】
赤外線サーモグラフィ装置は、対象物から出ている赤外線放射エネルギーを赤外線カメラで検出し、検出した赤外線放射エネルギーを対象物表面の温度(ここでは、摂氏での温度)に変換して、その温度分布を皮膚温度データ(例えば、温度分布を表した画像データ)として表示、蓄積することが可能な装置である。なお、赤外線サーモグラフィ装置として、NEC Avio 赤外線テクノロジー株式会社製のR300を使用した。
【0026】
また、この試験では、皮膚温度データを取得している間に、被験者に対して皮膚を賦活化した。これにより、非賦活時の皮膚温度データ、及び賦活時の皮膚温度データを取得した。皮膚を賦活化させる方法としては、人体の検査対象部位の皮膚を冷却し、その後所定時間放置する方法を採用することができる。なお、皮膚温度データの取得開始から5分経過後から10分間継続して、被験者の皮膚を冷却した。
【0027】
皮膚温度データの解析としては、MATLAB(登録商標)のSVD(Singular Value Decomposition)を分析ツールとして用いて特異値分解を行った。特異値分解では、時系列で取得した全ての皮膚温度データ(30分間のデータ)を対象とし、要因を30秒毎の時間データ(30分間で60 time point)とし、測度をその期間(30秒間)における皮膚温度データ(240×320 pixels)とした。そして、特異値分解により、皮膚温度データXを、複数の成分に分解し、それぞれの成分の時間分布Vと、空間分布Uと、各成分の大きさを示す特異値Sとを算出した。なお、これらの関係は、以下の式で表される。また、V’は、Vの行と列とを入れ替えた行列である。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、この赤外線サーモグラフィ装置では、上述しているように、対象物から検出された赤外線放射エネルギーを温度に変換して、その温度分布を皮膚温度データとしている。ところで、人間を対象として赤外線サーモグラフィ装置を用いて皮膚温度を取得する場合、体の動き及び/又は自律神経の活動等の様々な特定の疾患等とは関連しない温度変化(いわゆるノイズ)についても皮膚温度データとして取得してしまう。そこで、このような特定の疾患等とは関連しない温度変化を検出するために、30秒毎の皮膚温度データの全平均値を「0」とした相対的な皮膚温度データを作成し、作成した皮膚温度データについても、MATLAB(登録商標)のSVDを分析ツールとして用いて特異値分解を行い、特異値Sに応じた各成分の成分波形図と温度分布図とを作成し、特定の疾患等を反映した皮膚温度の変化を示す成分を同定するための解析を行う。
【0030】
なお、以下より、説明の便宜上、赤外線サーモグラフィ装置で取得した皮膚温度データを「温度換算データに応じた皮膚温度データ」といい、所定時間毎(この試験では30秒毎)の温度換算データに応じた皮膚温度データに含まれる温度データの全平均値を「0」とした相対的な皮膚データを「相対温度換算データに応じた皮膚温度データ」という。
【0031】
(2−2)撮影画像データの取得方法、及び撮影画像データの解析方法
次に、本発明者らが上記の知見を得るに際して用いた撮影画像データの取得方法、及び撮影画像データの解析方法について説明する。
【0032】
また、撮影装置として、Apple社製のiPad Air(登録商標)の備える液晶画面側の撮影装置を使用し、時系列の撮影画像データとしてカラーの動画データを取得した。
【0033】
さらに、この試験では、検査対象部位の皮膚の動画データを取得している間に、被験者に対して皮膚を賦活化した。これにより、非賦活時の皮膚の動画データ、及び賦活時の皮膚の動画データを取得した。上記同様に、皮膚を賦活化させる方法としては、人体の検査対象部位の皮膚を冷却し、その後所定時間放置する方法を採用することができる。なお、皮膚の動画データの取得開始から5分経過後から10分間継続して、被験者の皮膚を冷却した。
【0034】
皮膚の動画データの解析としては、撮影した皮膚の動画データより得られたRGBデータに基づき血行量データを算出し、算出した時系列の血行量データを対象として、MATLAB(登録商標)のSVDを分析ツールとして用いて特異値分解を行った。ここでは、CIE−L***表色系に従って、画像のRGBデータより演算される肌の赤みやヘモグロビン量と相関のある紅斑指数「a*」を求め、これを血行量データとした。また、特異値分解では、時系列で取得した全ての動画データ(30分間のデータ)から得られたRGBデータに基づく血行量データ(ここでは、紅斑指数)を対象とし、要因を30秒毎の時間データ(30分間で60 time point)とし、測度をその期間(30秒毎)におけるRGBデータから演算した紅斑指数(30秒毎に1秒間のフレームデータを取り出し、該フレームデータから得られるRGB値の平均値から演算した紅斑指数;240×320 pixels)とした。そして、特異値分解により、顔面の動画データより得られたRGBデータに基づく時系列の血行量データを、複数の成分に分解し、それぞれの成分の時間分布Vと、空間分布Uと、各成分の大きさを示す特異値Sとを算出した。なお、これらの関係は、上記式(数1)と同様の式で表される。
【0035】
そして、特異値分解によって求められた各成分の時間分布V及び空間分布Uに基づいて、特定の疾患等を反映した皮膚の血行量の変化すなわち皮膚のRGB変化を示す成分の同定を行う。
【0036】
各成分の成分波形図については、その成分波形の振幅と、皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時との相関関係の有無について解析する。具体的には、各成分の成分波形図に示された振幅と、皮膚の非賦活期間/皮膚の賦活期間との間に相関関係があるか否かを評価する。
【0037】
各成分の血行量分布図については、顔面の所定部位における血行量変化の有無について解析した。血行量分布図は、ピクセル毎に算出された空間分布Uを各ピクセルの位置に並べることで作成される。このように作成された各成分の血行量分布図において、検査対象部位における血行量の変化があるか否かを評価する。なお、血行量分布図における検査対象部位の血行量変化の有無については、目視(visual inspection)による血行量変化の有無、もしくは検査対象部位の血行量の値が「0.000」でないことを血行量変化の有無の基準とする。
【0038】
なお、空間分布U、特異値S及び時間分布Vの値の関係で、血行量データXの極性(プラスマイナス)が決定するため、各成分の成分波形図及び血行量分布図において極性が反転して現れることがある。このため、成分波形図及び血行量分布図の評価に関して、極性については評価対象としない。
【0039】
ところで、撮影装置を用いて皮膚の撮影画像データを取得する場合、撮影中に光が皮膚で反射し、この反射光が撮影装置のレンズに入り込んでしまうことがある。そうすると、撮影された皮膚の撮影画像データにはこの反射光が記録されてしまうことになる。ここで、撮影画像データから得られるRGBデータにおいて、皮膚の血行量に基づく明度の変化は反射光に基づく明度の変化よりも小さいことがあり、反射光の記録された撮影画像データから得られるRGBデータに基づいて算出された血行量が解析されると、特定の疾患等とは関連しない皮膚のRGB変化(いわゆるノイズ)が混入してしまう可能性があると考えられた。そこで、このような特定の疾患等とは関連しない皮膚のRGB変化の混入を防ぐために、30秒毎のRGBデータの全平均値を「0」とした相対的なRGBデータから相対的な血行量データを作成し、作成した血行量データについても、MATLAB(登録商標)のSVDを分析ツールとして用いて特異値分解を行い、特異値Sに応じた各成分の成分波形図と血行量分布図とを作成し、特定の疾患等を反映した皮膚のRGB変化を示す成分を同定する。
【0040】
なお、以下より、説明の便宜上、所定時間毎(この試験では30秒毎)のRGBデータの全平均値を「0」とした相対的なRGBデータに基づく相対的な血行量データを「相対換算血行量データ」といい、相対的なRGBデータに換算する前のRGBデータに基づく血行量データを単に「血行量データ」という。
【0041】
(3)皮膚状態推定装置
次に、上記に説明した知見に基づいて、本発明者らが完成するに至った本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置10,110について説明する。なお、本発明に係る皮膚状態推定装置は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置10,110は、皮膚温度データに基づき皮膚状態を推定する皮膚状態推定手段30、及び/又は皮膚の撮影画像データに基づき皮膚状態を推定する皮膚状態推定手段130を備えている。以下では、本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置10,110を説明する前に、各皮膚状態推定手段30,130について説明する。
【0043】
(3−1)皮膚温度データに基づき皮膚状態を推定する皮膚状態推定手段30
図1は、本発明の一実施形態に係る皮膚状態推定装置10の概略図である。図2は、皮膚状態推定装置10において特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分を同定する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
皮膚状態推定装置10の備える皮膚状態推定手段30は、人体の検査対象部位の皮膚温度から、検査対象部位の皮膚状態を推定する。皮膚状態推定装置10は、図1に示すように、皮膚温度取得手段20と、皮膚状態推定手段30と、状態可視化手段200と、を備える。
【0045】
皮膚温度取得手段20は、人体の検査対象部位の皮膚温度を検出し、検出した温度データ及びその検出部位の位置データを含む皮膚温度データを時系列で取得する(ステップS1)。なお、ここでは、皮膚温度取得手段20は、赤外線サーモグラフィ装置であり、図1に示すように、赤外線カメラ21と、処理部22と、を有する。赤外線カメラ21は、検査対象部位の皮膚から出ている赤外線放射エネルギーを検出するためのものである。そして、ここでは、赤外線カメラ21は、検査対象部位の皮膚から赤外線放射エネルギーを検出しているものとする。処理部22は、赤外線カメラ21によって検出した赤外線放射エネルギーを温度に変換して温度データとし、赤外線放射エネルギーの検出された部位を位置データ(座標データ)とした検査対象部位における皮膚温度の温度分布図を作成し、作成した温度分布図を温度換算データに応じた皮膚温度データとして処理する。温度換算データに応じた皮膚温度データは、処理部22の有する記憶部(図示せず)に蓄積される。
【0046】
また、ここでは、皮膚温度取得手段20により温度換算データに応じた皮膚温度データが取得されている間に、皮膚の賦活化が行なわれる。すなわち、皮膚温度取得手段20により取得される温度換算データに応じた皮膚温度データには、個人に対して皮膚の賦活化が行なわれている期間のデータが含まれていることになる。なお、検査対象部位の皮膚の賦活化は、皮膚が賦活状態になると推定されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、皮膚状態推定装置10の利用目的に応じてその内容が適宜決定されるよう構成されていてもよい。
【0047】
皮膚状態推定手段30は、皮膚温度取得手段20により取得された温度換算データに応じた皮膚温度データに基づき、検査対象部位の皮膚状態を推定する。具体的には、皮膚状態推定手段30は、図1に示すように、換算部31と、解析部32と、推定部33と、を有する。
【0048】
換算部31は、温度換算データに応じた皮膚温度データに含まれる温度データを相対的な温度データに換算し、換算した相対的な温度データに基づく皮膚温度データすなわち相対温度換算データに応じた皮膚温度データを作成する(ステップS2)。具体的には、換算部31は、所定時間毎(例えば、30秒)の温度換算データに応じた皮膚温度データに含まれる温度データの平均値を基準値として、該温度データを相対的な温度データに換算する。そして、換算部31は、換算した相対的な温度データ及び位置データを利用して、相対温度換算データに応じた皮膚温度データを作成する。
【0049】
解析部32は、時系列の温度換算データに応じた皮膚温度データ及び相対温度換算データに応じた皮膚温度データのそれぞれを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する(ステップS3)。ここでは、解析部32は、取得した温度換算データに応じた皮膚温度データ及び換算した相対温度換算データに応じた皮膚温度データのそれぞれを対象として、MATLAB(登録商標)のSVDを分析ツールとして用いて、特異値分解を行う。特異値分解は、時系列で取得した温度換算データに応じた皮膚温度データ及び相対温度換算データに応じた皮膚温度データについて、要因を所定期間(例えば、30秒)毎の時間データとし、測度をその期間における温度換算データに応じた皮膚温度データ及び相対温度換算データに応じた皮膚温度データとして行われる。そして、特異値分解により、温度換算データに応じた皮膚温度データ及び相対温度換算データに応じた皮膚温度データのそれぞれを複数の成分に分解し、時間分布と、空間分布と、各成分の大きさを示す特異値とを算出する。
【0050】
また、解析部32は、特異値分解によって分解した複数の成分から特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分を同定するために、各成分が第1条件及び第2条件を満たすか否かを判定する(ステップS4a、ステップS4b、ステップS5a、及びステップS5b)。なお、ここでは、解析部32において、まず、温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく各成分について第1条件が満たされているか否かが判定され(ステップS4a)、ステップS4aにおいて第1条件が満たされていると判定された温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく成分について第2条件が満たされているか否かが判定される(ステップS4b)。そして、相対温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく各成分のうちステップS4a及びステップS4bにおいて第1条件及び第2条件を満たすと判定された成分と一致する成分についてのみ第1条件が満たされているか否かが判定され(ステップS5a)、その後、ステップS5aにおいて第1条件が満たされていると判定された相対温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく成分について第2条件が満たされているか否かが判定される(ステップS5b)。しかしながら、解析部32における該判定の順序はこれに限定されるものではなく、例えば、温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく各成分と、相対温度換算データに応じた皮膚温度データに基づく各成分とが、第1条件及び第2条件を満たすか否かがそれぞれ判定され、判定結果の一致する成分が最終的に抽出されてもよい。
【0051】
第1条件とは、特異値分解によって分解した成分の成分波形の振幅が、皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時の変化と相関関係にある、という条件である。解析部32は、複数の成分のうち、第1条件を満たす成分を、判定用成分として抽出する。なお、ここでは、温度換算データに応じた皮膚温度データを取得している間に、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間が一定期間ある。解析部32は、検査対象部位の皮膚を賦活化しない期間を皮膚の非賦活時とし、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間を皮膚の賦活時として、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間及び賦活化しない期間と、各成分の成分波形とを比較解析する。解析部32は、成分波形データに基づく比較解析結果を利用して、各成分の成分波形と皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時とが相関関係にあるか否かを評価し、複数の成分のうち相関関係にあると評価した成分を、第1条件を満たす判定用成分として抽出する。一方、解析部32は、複数の成分のうち相関関係にないと評価した成分を、第1条件を満たさず特定の疾患等に関連する温度変化を示す成分ではないと判定する(ステップS6)。
【0052】
ここでは、温度換算データに応じた皮膚温度データの取得時に検査対象部位の皮膚を賦活化する期間が一定期間与えられており、これに基づき解析部32は判定用成分を抽出しているが、第1条件の内容、すなわち解析部32における判定用成分の抽出手段はこれに限定されない。例えば、予め実験等がされていることで複数の成分のうち皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時と相関関係にある成分波形を示す成分が特定されている場合には、解析部32は、複数の成分から特定されている該成分を判定用成分として抽出する。なお、解析部32による第1条件を満たすか否かの判定の基準は、皮膚状態推定装置10の利用目的等に応じて、シミュレーションや実験、机上計算等によって適宜決定される。
【0053】
第2条件は、抽出した判定用成分において、人体の所定部位の皮膚に温度変化がある、という条件である。解析部32は、判定用成分のうち、第2条件を満たす成分を、特定の疾患等に関連している可能性の高い成分と判定し、候補成分として抽出する。すなわち、解析部32は、人体の所定部位の皮膚の温度変化の有無に基づき、判定用成分が特定の疾患等に関連しているか否かを判定する。一方で、解析部32は、所定部の皮膚に温度変化が生じていない場合には、該判定用成分は第2条件を満たさず特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分ではない、と判定する(ステップS6)。なお、解析部32による第2条件を満たすか否かの判定の基準は、皮膚状態推定装置10の利用目的等に応じて、シミュレーションや実験、机上計算等によって適宜決定される。
【0054】
そして、解析部32は、ステップS5bにおいて第2条件を満たすと判定した成分を、特定の疾患等を反映した皮膚温度の変化を示す成分として同定する(ステップS7)。すなわち、ステップS7において特定の疾患等を反映した皮膚温度の変化を示す成分として同定される成分は、温度換算データに応じた皮膚温度データを特異値分解により分解し解析することで抽出された候補成分と、相対温度換算データに応じた皮膚温度データを特異値分解により分解し解析することで抽出された候補成分と、の間で一致している成分ということになる。なお、両解析で一致していない候補成分については、ステップS6において特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分ではない、と判定される。
【0055】
推定部33は、解析部32において特定の疾患等に関連する皮膚温度の変化を示す成分として同定された成分に基づいて、検査対象部位の皮膚状態を推定する。
【0056】
(3−1−1)変形例1A
上記皮膚状態推定手段30は換算部31を有しており、換算部31によって相対温度換算データに応じた皮膚温度データが作成されている。そして、解析部32が、皮膚温度取得手段20により取得された温度換算データに応じた皮膚温度データだけでなく、相対的な温度データに換算された温度データに基づく相対温度データに応じた皮膚温度データについても、特異値分解により複数の成分に分解し、各成分についての解析を行っている。
【0057】
これに代えて、皮膚状態推定手段30が換算部31を有していなくてもよい。この場合、相対温度換算データに応じた皮膚温度データを作成したり、相対温度換算データに応じた皮膚温度データに基づくデータの解析を行ったりする処理を省くことができる。
【0058】
ただし、特定の疾患等に関連する成分を精度よく同定するためには、上記実施形態のように皮膚状態推定手段30が換算部31を有しており、解析部32によって、皮膚温度取得手段20により取得された温度換算データに応じた皮膚温度データだけでなく、相対的な温度データに換算された温度データに基づく相対温度データに応じた皮膚温度データについても、特異値分解により複数の成分に分解され、各成分についての解析が行われるほうが望ましい。
【0059】
(3−1−2)変形例1B
また、上記皮膚温度取得手段20は、対象物と非接触の状態で温度データを取得することができる赤外線サーモグラフィ装置である。
【0060】
しかしながら、人体の検査対象部位の皮膚温度を検出し、検出した温度データ及びその検出部位の位置データを含む皮膚温度データを時系列で取得することができれば、皮膚温度取得手段は赤外線サーモグラフィ装置に限定されない。
【0061】
例えば、皮膚温度取得手段が温度センサを含む装置であってもよい。具体的には、人体の検査対象部位に温度センサを装着し、温度センサによって検出される温度データと、温度センサを装着した部位の位置データとに基づいて、時系列の皮膚温度データが取得されてもよい。このように、温度センサにより対象となる個人に接触した状態で皮膚温度データが取得される場合であっても、温度センサは脳波計測法、磁気共鳴画像法、及び近赤外線分光法等の従来の検出方法と比較して、簡便にデータを取得することができる。これにより、簡便に検査対象部位の皮膚状態を推定することができる。
【0062】
(3−2)撮影画像データに基づき皮膚状態を推定する皮膚状態推定手段130
図3は、本発明の実施形態に係る皮膚状態推定装置110の概略図である。図4は、皮膚状態推定装置110において特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分を同定する際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0063】
皮膚状態推定装置110の備える皮膚状態推定手段130は、人体の検査対象部位の皮膚の撮影画像データから、皮膚状態の異常及び特定の疾患等を推定するための装置である。皮膚状態推定装置110は、図3に示すように、画像データ取得手段120と、皮膚状態推定手段130と、状態可視化手段200と、を備える。
【0064】
画像データ取得手段120は、人体の検査対象部位の皮膚の少なくとも一部の撮影画像データを時系列で取得する(ステップS101)。なお、画像データ取得手段120は、少なくとも撮影装置を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、スマートフォンやタブレット(例えば、iPad:登録商標)等の撮影装置内蔵型ポータブル端末等が挙げられる。ここでは、画像データ取得手段120は、図3に示すように、撮影装置としてのカメラ121と、記憶部122とを有する。カメラ121は、検査対象部位の皮膚の撮影画像データを時系列で取得するためのものである。ここでは、カメラ121は、検査対象部位の動画を撮影し、撮影した動画データを取得する。記憶部122は、撮影装置により撮影された時系列の撮影画像データを蓄積する。ここでは、記憶部122は、カメラ121によって取得された動画データを蓄積する。
【0065】
また、ここでは、画像データ取得手段120により検査対象部位の皮膚の時系列の撮影画像データが取得されている間に、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間与えられる。すなわち、画像データ取得手段120により取得される撮影画像データには、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間のデータが含まれていることになる。なお、検査対象部位の皮膚の賦活化は皮膚が賦活状態になると推定されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、皮膚状態推定装置110の利用目的に応じてその内容が適宜決定されるよう構成されていてもよい。
【0066】
皮膚状態推定手段130は、画像データ取得手段120により取得された皮膚の時系列の撮影画像データに基づき、検査対象部位の皮膚状態を推定する。具体的には、皮膚状態推定手段130は、図3に示すように、RGB処理部131と、換算部132と、血行量算出部133と、解析部134と、推定部135と、を有する。なお、図3では、皮膚状態推定手段130が、RGB処理部131、換算部132、血行量算出部133、解析部134及び推定部135を有する1つの装置として存在している態様が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、RGB処理部131、換算部132、血行量算出部133、解析部134及び推定部135の一部或いはそれぞれが独立した装置として存在していてもよい。また、ここでは、画像データ取得手段120、RGB処理部131、換算部132、及び血行量算出部133により血行量取得手段が構成されている。
【0067】
RGB処理部131は、画像データ取得手段120により取得された撮影画像データに対して、R成分、G成分及びB成分の3つの色成分に分解するRGB処理を行う(ステップS102)。
【0068】
換算部132は、RGB処理により得られた撮影画像データのRGBデータを相対的なRGBデータに換算する(ステップS103)。具体的には、換算部132は、取得された所定時間毎(例えば、30秒)の撮影画像データから得られるRGBデータの平均値を基準値として、該RGBデータを相対的なRGBデータに換算する。
【0069】
血行量算出部133は、RGB処理により得られた撮影画像データのRGBデータに基づき、皮膚の時系列の血行量データを算出する(ステップS104)。
【0070】
解析部134は、時系列の相対換算血行量データを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により複数の成分に分解する(ステップS105)。ここでは、解析部134は、相対換算血行量データに対して、MATLAB(登録商標)のSVDを分析ツールとして用いて、特異値分解を行う。具体的には、特異値分解は、時系列の相対換算血行量データを対象として、要因を所定期間(例えば、30秒)毎の時間データとし、測度をその期間毎における相対的なRGBデータから演算したピクセル毎の相対換算血行量データとして行われる。そして、特異値分解により、時系列の相対換算血行量データを複数の成分に分解し、時間分布と、空間分布と、各成分の大きさを示す特異値とを算出する。
【0071】
また、解析部134は、特異値分解によって分解した複数の成分から特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分を同定するために、各成分が所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS106)。ここで、所定条件としては、例えば、特異値分解によって分解した成分の成分波形の振幅が、皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時の変化と相関関係にあるという条件(以下、第1条件という)や、特異値分解によって分解した成分において検査対象部位に血行量変化があるという条件(以下、第2条件という)等が含まれる。解析部134において判定される所定条件としては、1又は複数の条件が設定されていればよく、ここでは、所定条件として第1条件が設定されているものとする。
【0072】
そして、解析部134は、複数の成分のうち所定条件を満たす成分を、判定用成分として抽出する。さらに、解析部134は、抽出した判定用成分のうち所定条件に含まれる全ての条件を満たす成分を、特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分として同定する(ステップS107)。一方、解析部134は、複数の成分のうち所定条件に含まれる少なくとも1つの条件を満たさないと判定した成分を、特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分ではないと判定する(ステップS108)。
【0073】
ここでは、上述のように所定条件として1つの条件(第1条件)のみが設定されており、皮膚の時系列の撮影画像データを取得している間に、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間が一定期間ある。このため、解析部134は、検査対象部位の皮膚を賦活化しない期間を皮膚の非賦活時とし、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間を皮膚の賦活時として、検査対象部位の皮膚を賦活化する期間及び賦活化しない期間と、各成分の成分波形とを比較解析する。そして、解析部134は、成分波形データに基づく比較解析結果を利用して、各成分の成分波形と皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時とが相関関係にあるか否かを評価し、複数の成分のうち相関関係にあると評価した成分を、所定条件を満たす判定用成分として抽出すると共に、特定の疾患等に関連した皮膚のRGB変化を示す成分として同定する。一方、解析部134は、複数の成分のうち相関関係にないと評価した成分を、所定条件を満たさず特定の疾患等に関連した皮膚のRGB変化を示す成分ではないと判定する。
【0074】
ここでは、皮膚の時系列の撮影画像データが取得される際に検査対象部位の皮膚を賦活化する期間与えられており、これに基づき解析部134が判定用成分を抽出しているが、第1条件の内容、すなわち解析部134における判定用成分の抽出手段はこれに限定されない。例えば、予め実験等がされていることで複数の成分のうち皮膚の非賦活時及び皮膚の賦活時と相関関係にある成分波形を示す成分が特定されている場合には、解析部134は、複数の成分から特定されている該成分を判定用成分として抽出する。なお、解析部134による第1条件を満たすか否かの判定の基準は、皮膚状態推定装置110の利用目的等に応じて、シミュレーションや実験、机上計算等によって適宜決定される。
【0075】
また、所定条件として第2条件が設定されている場合には、解析部134は、検査対象部位における皮膚の血行量変化の有無に基づき、判定用成分を抽出する。具体的には、解析部134は、特異値分解によって分解された複数の成分に応じた血行量分布図に基づき、検査対象部位において血行量の変化が生じているか否かを判定し、血行量の変化が生じている場合には該成分が第2条件を満たしていると判定する。一方で、検査対象部位において血行量の変化が生じていない場合には、解析部134は、該成分が第2条件を満たしていないと判定する。なお、解析部134による第2条件を満たすか否かの判定の基準は、皮膚状態推定装置110の利用目的等に応じて、シミュレーションや実験、机上計算等によって適宜決定されるものとする。
【0076】
さらに、血行量算出部133によって相対的なRGBデータに換算される前のRGBデータに基づく時系列の血行量データが算出される場合には、解析部134によって、該血行量データを特異値分解等することで得られた複数の成分についても、上記第1条件及び/又は第2条件が満たされるか否かが判定され、判定用成分が抽出されてもよい。
【0077】
推定部135は、解析部134において特定の疾患等に関連する皮膚のRGB変化を示す成分として同定された成分に基づいて、検査対象部位の皮膚状態を推定する。
【0078】
(3−2−1)変形例2A
なお、上記血行量算出部133において、RGBデータに含まれる各画素のうちの主にR成分を用いて検査対象部位の皮膚の血行量データが算出されてもよい。また、RGBデータに基づき血行量データを算出できるのであれば、血行量データは必ずしも紅斑指数に限定されるものではない。
【0079】
(3−2−2)変形例2B
上記血行量算出部133は、換算部132によって換算された相対的なRGBデータに基づき相対換算血行量データを算出するが、これに代えて或いはこれに加えて、相対的なRGBデータに換算される前のRGBデータに基づき血行量データが算出されてもよい。ここで、相対的なRGBデータに換算される前のRGBデータに基づき算出された血行量データには、特定の疾患等と相関する成分が出やすい(検定力が高い)ため、例えば、相対的なRGBデータに換算される前のRGBデータに基づき算出された血行量データを、相対的なRGBデータに基づき算出された相対換算血行量データよりも先行して解析してもよい。また、例えば、まず、血行量データを解析して有意な相関のある成分を抽出し、相対換算血行量データに関しては、前記抽出した成分に対応する成分のみを解析することで、演算処理量を減らすことができる。
【0080】
(3−3)状態可視化手段200
状態可視化手段200は、皮膚状態推定手段30及び/又は皮膚状態推定手段130により推定された検査対象部位の皮膚状態に基づき、対象者の生理状態を表示することにより可視化する。例えば、状態可視化手段200が、対象者の血行状態の変化を解析することで、対象者の生理状態を解析する解析部201を有していてもよい。具体的には、解析部201が、検出対象部位の皮膚に与えられた刺激に対する血行状態の変化を解析することで、対象者の生理状態を判定する。なお、生理状態の種類やレベルについては、血行状態の上昇度合い及び/又は持続時間に基づき、皮膚状態推定装置10,110の用途に応じて適宜設置可能になっていてもよい。そして、解析部201により解析された対象者の生理状態を状態可視化手段200の表示部202から管理者へと出力されることで、管理者は対象者の生理状態を知ることができる。表示部202としては、画像やメッセージを表示する表示デバイス等、解析した対象者の生理状態に関する情報を管理者に対して可視化できるものであればどのようなものであっても採用することができる。
【0081】
また、解析部32,134において特定の疾患等に関連する成分が同定された後に、さらに皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120により時系列の各種データが取得される場合には、皮膚状態推定装置10,110において、さらに取得された各種データが特異値分解により複数の成分に分解され、同定された成分のみが解析されることで、対象者の生理状態をリアルタイムで知ることができる。
【0082】
さらに、検出対象部位の皮膚温度や撮影した画像から被験者の心拍情報や生体情報等を取得する技術が既に存在するが、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120から得られた各種データが特異値分解等されることで得られる成分に対して従来の技術を採用することで、心拍情報や生体情報を精度良く取得することができる。したがって、特異値分解した複数の成分を解析して心拍情報や生体情報を取得する機能を、解析部32及び/又は解析部134に持たせ、取得した心拍情報や生体情報に基づき交換神経/副交感神経の働きを推定する機能を上記実施形態の推定部33,135に持たせてもよい。
【0083】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態では、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120によって取得された時系列の皮膚温度データ及び/又は皮膚状態データに基づき検査対象部位の皮膚状態が推定される。したがって、センサ等を装着しなくても、検査対象部位の皮膚状態を簡便に推定し、推定した皮膚状態に基づき対象者の生理状態を可視化することができる。
【0084】
(4−2)
ここで、時系列の皮膚温度データ及び/又は画像データが取得される際に、検査対象部位の皮膚が賦活化されたりされなかったりすることにより、皮膚温度及び/又は血行量の変化を示す成分から特定の疾患等を推定することができる。
【0085】
本実施形態では、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120により時系列の皮膚温度データ及び/又は画像データが取得されている間に、検査対象部位の皮膚が一定期間賦活化されている。すなわち、本実施形態では、検査対象部位の皮膚を冷却したりしなかったりすることにより、皮膚が賦活化したり賦活化しなかったりする状況が作られている。そして、このように取得された時系列の各種データが特異値分解により複数の成分に分解され、各成分についてその成分波形と皮膚の賦活時及び非賦活時との相関関係が評価され、相関関係にある成分が判定用成分として複数の成分から抽出される。このため、例えば、予め実験等により特定された所定の成分が抽出用成分として複数の成分から抽出される場合と比較して、特定の疾患等と関連性の低い成分が抽出用成分として複数の成分から抽出されるおそれを低減することができている。
【0086】
なお本実施形態において「疾患」という用語は、特定の病気の原因だけではなく、人体において何かしらの異常を生じさせる原因を含む概念である。
【0087】
(5)皮膚状態推定装置の用途例
次に、本発明に係る皮膚状態推定装置の用途例について説明する。
【0088】
上記実施形態又は上記変形例の皮膚状態推定装置10,110を、検査対象部位の皮膚の異常を判定する異常判定装置310に適用する例を説明する。
【0089】
詳しくは、図5に示すように、上記状態可視化手段200に疾患情報記憶部210を設ける。この疾患情報記憶部210は、皮膚状態の推定結果と「疾患情報」とを関連付けて記憶するメモリである。ここでは、例えば、特定の疾患等を罹患している状態の対象者及び健康状態の対象者に同一の皮膚機能賦活課題を一定期間与えたときの皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データを収集する。そして、各対象者の症状に応じて皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データに基づいて皮膚状態の推定結果を分類し、分類した皮膚状態の推定結果と疾患情報とを関連付けて疾患情報記憶部210に格納する。疾患情報は、例えば皮膚がん・乳がん・ニキビ・コリ・未病等を示すデータである。このような皮膚状態の推定結果と疾患情報との相関関係は適宜最適化される。
【0090】
そして、状態可視化手段200が、皮膚状態推定手段30,130により算出された皮膚状態の推定結果に基づいて、疾患情報記憶部210から疾患情報を抽出する。状態可視化手段200は、疾患情報記憶部210から疾患情報を抽出できた場合、検査対象部位が異常であると判定し、その異常の原因として抽出した疾患情報を提示する。一方、状態可視化手段200は、疾患情報記憶部210から疾患情報を抽出できなかった場合、検査対象部位が正常であると判定する。
【0091】
要するに、異常判定装置310は、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120と、皮膚状態推定手段30,130と、状態可視化手段(異常判定手段)200とを備える。皮膚温度取得手段20は、皮膚温度データを時系列で取得する。画像データ取得手段120は、検査対象部位の皮膚の撮像画像データを時系列で取得する。皮膚状態推定手段30,130は、皮膚温度データ及び/又は皮膚血行量データを、特異値分解、主成分分析或いは独立成分分析により分解することで得られた複数の成分に基づき、検査対象部位の皮膚状態を推定する。状態可視化手段200は、皮膚状態推定手段30により推定された検査対象部位の皮膚状態に基づき、対象者に対して、検査対象部位が異常であるか否かを提示する。このようにして、異常判定装置310によれば、皮膚状態を簡便に推定できる。
【0092】
なお、特許文献1に記載の技術では、T1時点とT0時点との差分をとったデータを用いている。差分をとると、時間変化がなかった部分のデータはキャンセルされ、「形態」を示す空間情報が少なくなる。要するに、時間変化が起こるデータしか捉えられない。これに対し、本実施形態に示した特異値分解等を用いた技術では、変化を示す成分の他に、変化を示さない成分も同定することができる。したがって、多くの情報を活用して画像変化をより正確に捉えることができる。
【0093】
また、特許文献1に記載の技術では、差分をとるために、被検体が「動いた場合」に、映像のフレームレートを再度変えてから分析する必要がある(段落[0014]等)。フレームレートを変えることは「分析を最初からやり直す」ことを意味するので、計算量が飛躍的に増えてしまい、リアルタイム処理が不可能になる。これに対し、本実施形態に示した特異値分解等を用いた技術では、動きは一つの成分として抽出できるので、「所定のフレームレートで画像を更新記録する」必要がないという利点がある。
【0094】
(5−1)皮膚がん及び乳がんの異常判定
上記異常判定装置310を、皮膚がん・乳がん・ニキビの異常判定に対して用いる場合の一例を説明する。
【0095】
皮膚がん又は乳がんの異常判定をする場合は、対象者の検査対象部位の皮膚にエタノールを塗布する、もしくはエアコンの冷風を当てることにより、当該部位の皮膚を所定時間冷却する。皮膚は冷却されることで温度が低下し、冷却が終了すると徐々に元の温度に戻る。このようにして皮膚を賦活化及び非賦活化する。
【0096】
ここで、検査対象部位に皮膚がん又は乳がんが生じている場合、代謝が昂進し局所的に発熱が生じるので、皮膚を冷却しても、温度の低下速度及び低下量が少ない。そこで、皮膚状態推定手段により得られた複数の成分のうち、冷却中の温度低下が少ない成分で、かつ空間成分マップにおいて、皮膚がん等の形状と似た空間成分(具体的には顔にできた「斑点」を示すような空間成分)を抽出する。すなわち、皮膚がん等の平均的な直径に基づいて皮膚がん等の大きさを予め設定しておき、その大きさを有する領域に局所的に発熱が生じているか否かを抽出する。なお、平均的な皮膚がん等の大きさ以外の変化は空間的ノイズとみなす。また、単なるノイズであるか否かは、冷却中に温度が低下する、もしくは空間成分マップにおいて斑点のような画像が抽出されない、ということで判定される。
【0097】
このようにして、賦活化前後の皮膚状態の変化が解析され、対象者が皮膚がん又は乳がんに疾患している可能性があることが提示される。
【0098】
なお、特許文献2に記載の技術は、サーモグラフィの画像を三次元化するための技術であるが、皮膚の温度は種々の要因により変化する。そのため、乳がんとそれ以外の熱源の区別が難しい。例えば、特許文献2に示されているような衣服を着た状態の場合、熱が皮膚全体に伝搬し、皮膚がんの部位の特定が難しくなる。これに対し、本実施形態に示したような特異値分解等を用いた技術であれば、熱に関するデータを空間成分と時間成分に分けることが可能であり、多量の情報を用いて解析することから、乳がんを高確率で発見できる。
【0099】
(5−2)ニキビの異常判定
ニキビの場合も炎症を伴っているので、皮膚を冷却しても温度が低下しにくくなる。したがって、上述した皮膚がん及び乳がんの異常判定と同様の原理を用いることで、ニキビが生じているか否かを判定することもできる。ただし、この場合は、皮膚がん等ではなく、ニキビに大きさを予め設定しておくことになる。
【0100】
また、皮膚がん等とニキビとを同時に判定することもできる。皮膚がん等とニキビとの区別は、大きさ、温度変化の違い、検査対象部位に基づいて判定される。
【0101】
なお、特許文献3に記載の技術は、膨らみ・色・関節可動域等から関節等の炎症を判定するものである。しかしながら、特許文献3に記載されているサーモグラフィを用いた技術では、軽い炎症等を検知できないことがある。炎症以外の種々の要因に温度が影響されてしまうからである。これに対し、本実施形態に示した特異値分解等を用いた技術では、熱に関する情報を時間成分及び空間成分に分けることにより、炎症と関連する熱成分のみを取り出すことが可能であるので、複数の測度(膨らみ・可動域など)を測定しなくても炎症を同定できる。
【0102】
(5−3)コリの異常判定
上記異常判定装置310を用いてコリを客観的に定量化することもできる。この場合も、対象者の検査対象部位の皮膚にエタノールを塗布する、もしくはエアコンの冷風を当てることにより、当該部位の皮膚を所定時間冷却する。
【0103】
ここで、検査対象部位の筋肉がコリの状態である場合、血流が低下することから局所的に低温部分が出現する。そこで、皮膚状態推定手段により得られた複数の成分のうち、冷却中の温度低下が大きい成分で、かつ空間成分マップにおいて筋肉の配置や血管の配置と同じような配置を示す成分を抽出することで、コリ状態であるか否かを判定できる。なお、冷却との相関が低かったり、空間成分マップの形が筋肉や血管の配置と異なったりする場合にはノイズであるとみなされる。
【0104】
このようにして、賦活化前後の皮膚状態の変化が解析され、検査対象部位にコリがあるか否が判定される。
【0105】
(5−4)未病の異常判定
未病の場合も血流が低下するので、皮膚を冷却しても温度が低下し易くなる。したがって、上述したコリの異常判定と同様の原理を用いることで、未病が生じているか否かを判定することもできる。なお、ここで「未病」とは、健康状態の範囲であるが病気に近い状態のこという。
【0106】
また、コリと未病とを同時に判定することもできる。この際、未病は身体全体の血流に影響するので、コリに比して対象部位が広い。したがって、コリは、温度画像の全平均値を「0」とした相対的なデータから検出することができる。これに対し、未病は、温度画像の全平均値を「0」とした相対的なデータを用いると、その成分の信号が消えるか低下することになる。このような性質の違いから、コリと未病の同時判定が可能となる。
【0107】
(6)スマートデバイスの利用
本実施形態に係る皮膚状態推定装置10,110は、スマートデバイスに格納されるものであってもよい。具体的には、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120と、皮膚状態推定手段30,130と、状態可視化手段200とが多機能機能携帯電話等のスマートデバイスに格納されていてもよい。この構成により、ユーザは携帯しているスマートデバイスにより情報の入出力及び演算が可能となるので、ユーザは検査対象部位が異常であるか否かを簡便に判定できる。
【0108】
なお、上述の形態に代えて、皮膚温度取得手段20及び/又は画像データ取得手段120と状態可視化手段200とを多機能機能携帯電話等のスマートデバイスに格納し、皮膚状態推定手段30,130をサーバ装置に格納する構成を採用してもよい。この場合、スマートデバイス本体の演算負荷を軽減することができる。また、サーバ装置上でデータ管理することで、多数のデータを収集し最適化していくことで、出力結果の精度を高めていくことができる。例えば皮膚状態の推定結果と疾患情報との関連を適時最適化していくことで、疾患情報の精度を高めることができる。
【0109】
<付記>
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではない。本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、本発明は、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できるものである。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素は削除してもよいものである。さらに、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によれば、皮膚状態を簡便に推定することができるため、皮膚状態に基づき対象者の生理状態を可視化する皮膚状態推定装置への適用が有効である。
【符号の説明】
【0111】
20 皮膚温度取得手段
200 状態可視化手段
201 解析部
210 疾患情報記憶部
312 異常判定装置
10,110 評価装置
30,130 皮膚状態推定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開平7−124126号公報
【特許文献2】特表2008−505684号公報
【特許文献3】特表2003−524490号公報
図1
図2
図3
図4
図5