特許第6240155号(P6240155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6240155経口ワクチン投与のための改善アジュバント系
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240155
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】経口ワクチン投与のための改善アジュバント系
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20171120BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20171120BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20171120BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61K39/39
   A61K39/00 G
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/26
   A61K47/02
   A61K47/12
   A61K9/14
   A61K9/19
   A61P37/04
【請求項の数】11
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-504545(P2015-504545)
(86)(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公表番号】特表2015-512441(P2015-512441A)
(43)【公表日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】US2013000102
(87)【国際公開番号】WO2013151595
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2015年7月31日
(31)【優先権主張番号】61/686,372
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514250779
【氏名又は名称】ヴァックスフォーム エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】VAXFORM LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】モアフィールド,ギャリー
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504970(JP,A)
【文献】 国際公開第98/018453(WO,A1)
【文献】 特表2001−515468(JP,A)
【文献】 特表2008−533125(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058302(WO,A1)
【文献】 特表2013−510188(JP,A)
【文献】 特表2006−515507(JP,A)
【文献】 特表2003−502283(JP,A)
【文献】 特表2006−517512(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035519(WO,A1)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics, 1991, Vol.72, p.97-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/39
A61K 9/14
A61K 9/19
A61K 39/00
A61K 47/02
A61K 47/12
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/36
A61P 37/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口投与される乾燥粉末処方物を作成する方法であって、
1つ以上のアルミニウムアジュバントに、抗原および1つ以上のC型レクチン(CTL)受容体リガンドを吸着させて、ワクチン処方物を形成する工程;
リン酸緩衝液中において、1つ以上のアクリル樹脂ポリマーおよびマンニトールおよびスクロースと前記ワクチン処方物とを混合して、混合物を作成する工程;
前記混合物を低pHの緩衝溶液に噴霧して、懸濁液を形成する工程;および
前記懸濁液を乾燥させて粉末にする工程;
を含み、前記1つ以上のCTL受容体リガンドが、マンナンおよびリン酸基が付加されたマンノースから選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アクリル樹脂ポリマーが、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物の不水溶性のコポリマーであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥が、常圧噴霧凍結乾燥によりなされることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記低pHの緩衝液が酢酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記pHが約3.0から約7.0の間であることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項6】
2種類のアクリル樹脂があることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項7】
経口投与可能な免疫原性組成物を作成する方法であって、
アルミニウムアジュバントに抗原およびCTL−アゴニストを吸着させる工程;
pH依存性の溶解度を有するアクリル樹脂ポリマーを添加してワクチン処方物を形成する工程;および
低pH溶液に前記ワクチン処方物を添加して前記ポリマーを沈殿させ、それによって経口投与可能な免疫原性組成物を作成する工程、
を含み、前記CTL−アゴニストが、マンナンおよびリン酸基が付加されたマンノースから選択されることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記アルミニウムアジュバントがオキシ水酸化アルミニウムであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項9】
前記アクリル樹脂ポリマーが、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物の不水溶性のコポリマーであることを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記経口投与可能な免疫原性組成物を常圧噴霧凍結乾燥させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項11】
前記アクリル樹脂ポリマーが、オイドラギットL100−55、オイドラギット(登録商標)RL PO(Type A)およびオイドラギット(登録商標)RS PO、L30D55、L100、(L12,5)、S100、(S12,5)、およびFS30D、ならびにそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする、請求項から10いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、その開示が参照により組み込まれる2012年4月4日出願の米国仮特許出願第61/686,372号明細書の提出日に対する優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、経口ワクチン投与のための改善アジュバント系に関する。
【背景技術】
【0003】
連鎖球菌性咽頭炎、猩紅熱、壊疽性筋膜炎、連鎖球菌毒素性ショック症候群および膿痂疹などの疾患は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)による感染の結果起こる。これらの疾患はまとめてA群連鎖球菌疾患(GAS)と呼ばれる。GASおよびS.ピオゲネス(S.pyogenes)により引き起こされる他の感染は、ヒトの疾病率および死亡率の大きな原因である。世界中で年間推定500,000人がGAS疾患で死亡する。致命的である可能性がある病原体であることに加えて、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、毎年、さらに6億症例の咽頭炎を引き起こす。米国単独で、非侵襲性GAS疾患は推定1,000万例、さら侵襲性疾患は11,000症例あり、これらの症例のうちおよそ10%が結果的に死亡する。小児科咽頭炎管理について、米国の医療制度に与える年間負担は、2億2,000万から5億4,000万ドル/年と推定される。S.ピオゲネス(S.pyogenes)に効果がある有効なワクチンは、GAS疾患から数千人の命を救い得、数百万ドルの医療費を節約できるようになる。GASおよびS.ピオゲネス(S.pyogenes)病原体に対する有効なワクチンの開発に対して様々な試みが行われてきたが、成功したと証明されたものはない。
【0004】
ワクチン開発において、防御的免疫反応を引き出すことが意図される、投与されている抗原に対する受容者の反応を免疫学的に促進(すなわち調節)することが必要とされることが多い。この目的のためにワクチン開発において使用される主な技術の1つは、関心のある抗原に加えて化学的または生物学的アジュバントを提供することである。この点で最もよく受け入れられている組成物は、様々な金属(例えばアルミニウム)アジュバント化合物である。一般に、ワクチン組成物中の関心のある抗原は、アルミニウム含有アジュバント化合物上に吸着させられているかまたはこれと会合させられている。
【0005】
アルミニウムアジュバントは、ヒトワクチンでの長い安全な使用歴がある。これらのアジュバント活性は、抗原微粒子を作製すること、注射部位での刺激を引き起こすことおよび抗原提示細胞(APC)による内部移行後のNALP3インフラマソームの活性化から生じると考えられる。しかし、アルミニウムアジュバント単独では、多岐にわたる抗原標的にいつも適切であるわけではないが、それは、これらが一般的には偏ったT2型免疫反応を刺激するからである。様々な抗原に対して、アルミニウム含有アジュバントを用いた処方物は、通常はT2反応に対してIgG1抗体の産生を刺激し、一方で、IgG2a抗体、通常はT1反応のもの、が殆どまたは全く生成されないことが明らかになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、安定性が向上しており、効力が増強しており、T1/T2反応の増強および混合をもたらすことが可能であるアジュバント組成物を提供することが必要とされている。さらに、消化管で分解されず、消化管随伴リンパ系組織を標的とする経口投与ワクチン/アジュバントの組合せが必要とされている。経口投与されるワクチンはまた、投与に対して医学的に訓練されている者を必要とせず、注射用ワクチン提示が有する無菌的製造の厳しい要求がないという長所もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、広スペクトルの抗原標的に対する受容者(例えば哺乳動物)における免疫反応を促進する、新規アジュバント組成物およびこれに対する作製方法に関する。ある一定のこれらの組成物において、アルミニウムアジュバントは、C型レクチン(CTL)受容体に対するリガンドと会合(例えば化学的に結合)させられている。本発明は何らかの特定の作用方法に限定されるものではないが、本組成物および方法が、CTL受容体リガンドの、直接的な差別的免疫反応を生成させる能力と合わせて、抗原提示細胞の内部移行の効率、アルミニウム含有アジュバント化合物の実績ある安全性を生かすことによって、ワクチンおよび治療薬開発の分野において有用な改善をもたらすことが企図される。
【0008】
好ましい実施形態において、本発明は、安定性が向上しており、および/または効力が増強されており、および/またはT1反応を促進する、経口投与され得るアジュバント組成物を提供する。本発明はまた、これらの組成物を作製する方法および改善アジュバント組成物の投与の方法も提供する。
【0009】
本発明は、1つ以上の抗原および場合によっては1つ以上のアルミニウムアジュバントと組み合わせて1つ以上のCTL受容体リガンドを含む免疫学的組成物を提供する。ある一定の好ましい実施形態におけるCTL受容体リガンドは、アルミニウムアジュバントと連結される。CTL受容体リガンドは、アルミニウムアジュバントと配位、共有、親水性または疎水性結合により連結され得る。さらに、CTL受容体リガンドは、少なくとも部分的に、フッ化物、リン酸、硫酸または炭酸基を通じてアルミニウムアジュバントに連結され得る。
【0010】
他の好ましい実施形態において、CTL受容体リガンドは、単糖類、二糖類および/または多糖類を含む。本発明のある態様において、これらの糖類は、終末末端リン酸基またはホスホジエステル骨格を含む。
【0011】
さらに他の実施形態において、本免疫学的組成物は、1つ以上の金属アジュバント、例えば、オキシ水酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム(aluminium hydroxyphosphate sulfate)、リン酸アルミニウムまたはそれらの組合せを含むアルミニウムアジュバントなどをさらに含み得る。
【0012】
本免疫学的組成物およびアジュバント系は、ワクチン予防可能または処置可能な疾患に対する1つ以上の適切なワクチンと組み合わせて動物に投与され得る。本免疫学的組成物およびアジュバント系は、適切な生物学的製剤(例えば、治療用タンパク質および/または抗体)または低分子薬物組成物と組み合わせて動物に投与され得る。アジュバントおよび本発明の免疫学的組成物の投与に適切な動物としては、哺乳動物(例えばヒト)および一般的な家庭用の愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマなど)または生産/農業において重要な動物(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヤギ)が挙げられる。
【0013】
本発明は、さらに、アルミニウムアジュバントに抗原およびCTL−アゴニストを吸着させ、ワクチン処方物を形成させるためにpH依存性の溶解度を有するポリマーを添加し、このポリマーを沈殿させるために低pH溶液にワクチン処方物を添加することによって、経口投与可能な免疫原性組成物を作製する方法に関する。
【0014】
本発明は、混合物を作製するためにリン酸緩衝液中でアクリル樹脂およびマンニトールおよびスクロースと抗原を混合し、縣濁液を生成させるために低pHの緩衝溶液に混合物を噴霧し;この縣濁液を乾燥させて粉末にすることによって、経口投与される乾燥粉末処方物を処方する方法に関する。
【0015】
本発明はまた、混合物を作製するためにリン酸緩衝液中でアクリル樹脂およびマンニトールおよびスクロースと抗原を混合し、縣濁液を生成させるために低pHの緩衝溶液に混合物を噴霧することによって、経口投与される縣濁液を処方する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アルミニウムアジュバントへのC型レクチン受容体リガンドの連結によって、共局在する抗原およびアジュバントの受容体介在エンドサイトーシスが可能となることを示す概略図である。好ましい実施形態において、共局在する抗原およびアジュバントのエンドサイトーシスは、T1およびT2サイトカインの産生ならびに、MCH IおよびII分子での抗原の交差提示が起こり得るエンドソームへの抗原の標的化を刺激する。
図2】リガンド交換結合または重合化可能な基を含有するよう修飾しない限り、単糖類のアルミニウムアジュバントに対する吸着性が低いことを示すグラフである。
図3A】アルミニウム粒子に的確に連結されている糖類が、抗原の非存在下で生理学的レベルのリン酸塩に曝露された場合でも粒子に付着したままであることを示すグラフである。
図3B】アルミニウム粒子に的確に連結されている糖類が、抗原の存在下で生理学的レベルのリン酸塩に曝露された場合でも、殆ど粒子に付着したままであることを示すグラフである。
図4】S.ピオゲネス(S.pyogenes)を標的とする抗原を用いて処方された本免疫学的組成物が、総IgG産生を促進したことを示すグラフであり、投与量節約の可能性が明らかとなる。
図5】S.ピオゲネス(S.pyogenes)を標的とする抗原を用いて処方された本免疫学的組成物が、ラットにおけるTh2反応を示すIgG2a産生を誘導したことを示すグラフである。
図6】S.ピオゲネス(S.pyogenes)を標的とする抗原を用いて処方された本免疫学的組成物が、ラットにおけるTh1反応を示すIgG2b産生を誘導したことを示すグラフである。
図7】BSAおよびオイドラギットのコアセルベーション後の各段階でのBSAのグラフである。
図8A】吸収BSAのコアセルベーション後のBSA吸収のグラフである。
図8B】吸収BSAのコアセルベーション後のマンナン吸収のグラフである。
図9A】オイドラギット%を減少させた後の、吸収BSAのコアセルベーション後のBSA吸収のグラフである。
図9B】オイドラギット%を減少させた後の、吸収BSAのコアセルベーション後のマンナン吸収のグラフである。
図10】吸収SpeA/Bのコアセルベーション後のSpeA/B吸収のグラフである。
図11】オイドラギットL100−55を用いたコアセルベーション後のSpeA/B吸収のグラフである。
図12】第0、14および35日での抗原特異的な血清総IgGのグラフである。
図13】ワクチン接種動物の血清による野生型SpeA毒素の中和のグラフである。
図14】(A)25℃および(B)37℃での保存後のCRMの分解。
図15】(A)25℃および(B)37℃での縣濁液および溶液の保存後に残存するCRMの%。
図16】(A)25℃および(B)37℃での乾燥粉末および溶液の保存後に残存するCRMの%。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、安定性が向上しており、および/または効力が増強されており、および/またはT1反応を促進する、アジュバント組成物を提供する。本発明はまた、これらの組成物を作製する方法および改善されたアジュバント組成物の投与も提供する。
【0018】
C型レクチン(CTL)受容体は、マクロファージ、単球、樹状細胞およびB−細胞を含む免疫系の複数の細胞上にある。CTL受容体は、病原菌により産生され得る様々な糖類を認識する。CTL受容体を通じたシグナル伝達によって、サイトカインの産生が誘導され得、その結果、CD4T−細胞の、T1、T2またはT17細胞への分化が起こる。CTL受容体の標的化によって、MHC I分子上での外因性抗原の交差提示およびCD8T−細胞の活性化も誘導され得、その結果、細胞性免疫反応が生じる。可溶性様式のCTL受容体アゴニストは免疫反応の勢いを弱め得、一方で微粒子様式のCTL受容体アゴニストは免疫反応の促進に対してより適切であることが観察されている。CTL受容体リガンドをアルミニウムアジュバントに連結させることによって、強固な免疫反応を得るために両化合物の作用機構を利用できることが企図される。アルミニウム含有アジュバントは、APCを標的とし、抗原およびCTLアゴニストのファゴソームでの共局在を確実なものにする送達粒子として作用する。アルミニウムアジュバントおよびCTLアゴニストは、Th1およびTh2サイトカインならびに共局在抗原のMHC IおよびII交差提示を誘導し、その結果、強固な免疫反応が得られる(図1)。
【0019】
多くの例において、混合型T1/T2免疫学的反応を得ることによって、オキシ水酸化アルミニウムなどの従来からのワクチンアジュバントのT2に偏った反応と比べ、疾患に対するより強固な防御がもたらされる。本発明の長所としては、安全性を維持しながら、従来からのアルミニウムアジュバントを凌ぎ、免疫原性が促進されること、備蓄能、製造の簡便性およびアジュバント系に対する商品原価が低いことが挙げられるがこれらに限定されない。複数のシグナル伝達経路を通じた抗原提示細胞の活性化により、免疫反応が促進され、抗原の投与量節約の可能性につながる。本アジュバント系の構成要素は本質的に安定であり、典型的なワクチン保存条件下での本アジュバント備蓄が可能である。本アジュバント系に対する、性質、利用能および原材料の廉価性によって、特殊な装置なく、アジュバントの迅速な製造が可能となる。したがって、アジュバントの備蓄物を供給する必要がある緊急の場合、時宜に即してさらなるアジュバントを供給し得る。この新規アジュバント系は、感染性病原体の生物攻撃または世界的流行の発生を防ぐためのワクチンの効力を促進することにおいて不可欠な役割を果たし得る。
【0020】
本発明は、先行技術のアルミニウムアジュバントと比較してT1反応を促進するアジュバント組成物を提供する。好ましくはCTL受容体アゴニストがアルミニウムアジュバントに結合されている、1つ以上のアルミニウムアジュバントと1つ以上のCTL受容体アゴニストの組合せによって、アルミニウムアジュバント単独と比較して、Th1反応が向上する。ラットに注射した場合の、マンナン結合オキシ水酸化アルミニウムおよびSpeA/B抗原、マンノース−1−ホスフェート結合オキシ水酸化アルミニウムおよびSpeA/B抗原およびCTL受容体アゴニストなしで、SpeA/B抗原を伴うオキシ水酸化アルミニウムの注射により産生されるIgG2b抗体の比較を図6で示す。オキシ水酸化アルミニウム単独に対する反応と比較した場合、オキシ水酸化アルミニウム結合CTL受容体に対するラットにおけるIgG2b反応の向上は、Th1反応の向上に対応する。図5は、オキシ水酸化アルミニウム結合CTL受容体に対するラットにおけるIgG2a反応の向上も示す。これは、オキシ水酸化アルミニウム単独に対する反応と比較した場合、オキシ水酸化アルミニウム結合CTL受容体Th2反応の向上に対応する。このように、本発明のアジュバント組成物は、CTL受容体アゴニストに結合されていないアルミニウムアジュバントと比較した場合、抗体反応の向上ならびにTh2反応の向上をもたらす。本発明のアルミニウム化合物結合CTL受容体アゴニストアジュバントは、アルミニウムアジュバント単独に対して、5%超、10%超、20%超、30%超、50%超、75%超または100%超の、抗体力価上昇および/またはTh2反応向上をもたらし得る。本発明のアルミニウム化合物結合CTL受容体アゴニストアジュバントは、約5%から約100%または約5%から約90%または約5%から約80%または約5%から約70%または約5%から約60%または約5%から約50%または約5%から約40%または約5%から約30%または約5%から約20%または約5%から約10%または約10%から約100%または約10%から約80%または約10%から約70%または約10%から約60%または約10%から約50%または約10%から約40%または約10%から約30%または約10%から約20%または約25%から約100%または約25%から約75%または約25%から約50%の間の、抗体力価上昇および/またはTh2反応向上をもたらし得る。
【0021】
一般的に単糖類などの低分子CTL受容体アゴニストは、アルミニウム含有アジュバントの表面に吸着しない。しかし、単糖類は、アルミニウム含有アジュバントへの分子のリガンド交換連結を可能にする、フッ素、リン酸、硫酸または炭酸基を含むが限定されない化学基により修飾され得る。フッ素、リン酸、硫酸または炭酸基の付加により糖類を修飾する方法は当技術分野で周知である(Cantosら、Biochem.J.(1993)288:155−160;Carbohydrate Chemistry,Royal Society of Chemistry,Ed.RD Guthrie(1968))。これは、CTL受容体アゴニストとしてマンノースおよびオキシ水酸化アルミニウムを利用して、図2で示す。未修飾マンノースは、アルミニウムに対して連結性が殆どない。しかし、マンノース(M1P)の1位でのリン酸基の付加の結果、アルミニウムアジュバントへのCTLアゴニストの連結がおよそ100%になる。
【0022】
アルミニウムアジュバント粒子に対する糖類の親和性の向上に対する別の方法は重合化である。例えば、アルミニウムアジュバント粒子に対する糖類の親和性は、重合化して多糖類を生成させることにより糖類のサイズを拡大することによって向上させ得る。アルミニウムアジュバントに対する親和性向上は、単糖類と比較して、多糖類の相互作用数が多く、これによりアルミニウムアジュバント粒子に対する多糖類アゴニストの安定な連結を可能にするからである。ある実施形態において、本アジュバント系の物理学的特徴は、アルミニウムアジュバントに対するCTL受容体リガンドの連結ならびにその連結の安定性に重点を置いている。図2で見られるように、マンノースの多糖類マンナンへの重合化の結果、アルミニウムアジュバントへのCTLアゴニストの連結がおよそ100%となる。
【0023】
投与後の体液への曝露時のアルミニウム粒子に対するCTLアゴニスト連結の安定性を維持することは重要である。リン酸塩、クエン酸塩およびタンパク質などの間質液の構成要素は、アルミニウム含有アジュバントとのCTLアゴニストの連結を除去する可能性がある。得られる可溶性CTLアゴニストは、免疫反応に悪影響を与え得る。図3Aは、M1Pならびにマンナンが、抗原の非存在下で50mMリン酸塩pH7.4に30分間曝露した場合、オキシ水酸化アルミニウムとおよそ100%の連結を維持することを示す。図3Bは、抗原の存在下で50mMリン酸塩pH7.4に30分間曝露した場合、M1Pならびにマンナンが、オキシ水酸化アルミニウムと、僅かに100%を下回る連結を維持することを示す。このことから、配位、共有、親水性または疎水性結合を通じたアルミニウム粒子へのCTLアゴニストの連結が、投与後でも会合を維持するのに適切であることが明らかとなる。
【0024】
本発明の組成物で使用される抗原としては、ウイルス性抗原、例えばインフルエンザウイルス抗原(例えばヘマグルチニン(HA)タンパク質、マトリクス2(M2)タンパク質、ノイラミニダーゼ)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原(例えば融合タンパク質、連結糖タンパク質)、ポリオ、パピローマウイルス(例えばヒトパピローマウイルス(HPV)、例えばE6タンパク質、E7タンパク質、L1タンパク質およびL2タンパク質など)、単純ヘルペス、狂犬病ウイルスおよびフラビウイルスウイルス抗原(例えばデングウイルス抗原、ウエストナイルウイルス抗原)、HBVおよびHCからの抗原を含む肝炎ウイルス抗原などが挙げられる。本発明の組成物中で使用される抗原としては、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumonia)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)および、エスケリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、エルシニア(Yersinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、シュードモナス(Pseudomonas)、エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、プロテウス(Proteus)、B.アンスラシス(B.anthracis)、C.テタニ(C.tetani)、B.ペルトゥッシス(B.pertussis)、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.アウレウス(S.aureus)、N.メニンギチジス(N.meningitidis)およびb型ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzea type b)を含む腸内グラム陰性病原菌由来のものを含む細菌性抗原が挙げられる。本発明の組成物中で使用される抗原としては、カンジダ属(Candida spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Crytococcus neoformans)、コクシジオイデス属(Coccidiodes spp.)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、ニューモシスチス・カリニイ(Pneumocystis carinii)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンス(Paracoccidiodes brasiliensis)、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモジウム・ビバクス(Plasmodium vivax)、プラスモジウム・オバレ(Plasmodium ovale)およびプラスモジウム・マラリア(Plasmodium malariae)由来のものを含む真菌性抗原が挙げられる。
【0025】
本発明のある実施形態において、グラム陽性細胞外細菌性病原体の重要な種であるストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌、GAS)の抗原は、本発明のアジュバントとワクチン中で組み合わせられる。連鎖球菌発熱外毒素A(SpeA)および他の分泌性超抗原毒素は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)感染を予防するためのワクチンに対する可能性のある候補であるが、それは、これらのタンパク質が連鎖球菌毒素性ショック症候群の多くの大流行に関連があり、侵襲性感染に対する病原性因子であるからである。特に、細胞外発熱性外毒素A、BおよびC由来の抗原である。殆ど、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Mタンパク質血清型は、SpeAまたは何らかの他の超抗原と構造または機能が相同ではないが、歴史的に連鎖球菌発熱外毒素B(SpeB)と呼ばれる、細胞外システインプロテアーゼ(ストレプトパイン(streptopain))を発現する。1つの融合タンパク質中でこれらの2つの抗原を組み合わせることにより、免疫系が毒素中和および細菌性オプソニン作用の両方を通じて感染を排除することができるようになる。本発明のある実施形態において、SpeA/Bは抗原として使用される(米国特許第7,750,132号明細書)。このSpeA/Bは、一部、遺伝子操作により弱毒化されている超抗原毒素タンパク質から構成され得る。この精製タンパク質生成物は、超抗原の性状がないが、超抗原が免疫系により効果的に認識され、適切な抗体反応が生じるように、DNAを用いた方法によって修飾され得る。
【0026】
別の実施形態において、ジフテリア毒素の無毒化突然変異体であり、複数のワクチン処方物において抗原および担体タンパク質として使用されるCRM197は、従来からの液体として処方され、縣濁液または乾燥粉末方式の何れかで経口ワクチン処方物として利用され得る。乾燥粉末処方物は、常圧噴霧凍結乾燥を通じて生成され得る。CRM197は、被包性細菌に対する複合ワクチン用の担体タンパク質であり、現在、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌および髄膜炎菌に対して小児にワクチン接種するために世界的に使用されている。経口縣濁液または乾燥粉末処方物は、CRM197の安定性を向上させる(図14)。pH4および高温の強制分解条件下で、経口処方物が、従来からの液体処方物と比べて、CRM197の安定性を促進することができたことが確認された。一次分解速度定数を両温度で両様式に対して決定した。両ケースにおいて、経口ワクチン様式において分解速度が低下する。これによって、経口ワクチン処方物の安定化効果が明らかとなる。経口処方物を乾燥粉末にすると、安定性も促進される。室温で2カ月保存した後、エピトープ利用能はあまり低下しない。一次分解速度定数を両温度で各処方物に対して決定した(表10)。これらの結果から、CRMが経口縣濁液として処方され、25℃で保存した場合、安定性が68%向上することが明らかとなり、37℃で保存した場合、安定性が54%向上することが明らかとなる。時間に対する喪失抗原の累積率としてデータをプロットすると、経口縣濁液がどの程度CRMの安定性を促進するかも見ることができる(図15)。25℃または37℃の何れかで保存したとき、溶液処方物中で50%エピトープ喪失に要するのは1日未満である。しかし、経口縣濁液の場合、50%喪失に要する時間は、25℃で12日、37℃で7日間まで延長される。このデータから、従来からの液体処方物と比べて、経口縣濁液として処方された場合、CRM197の安定性が顕著に向上することが明らかとなる。
【0027】
さらに他の実施形態において、本免疫学的組成物は、1つ以上の金属アジュバント、例えば、オキシ水酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸アルミニウム、硫酸ヒドロキシリン酸アルミニウム(aluminium hydroxyphosphate sulfate)、リン酸アルミニウム、ミョウバン(リン酸アルミニウムカリウム)またはそれらの組合せを含むアルミニウムアジュバントなどをさらに含み得る。アルミニウムに加えて、抗原を吸着させるために、亜鉛、カルシウム、セリウム、クロミウム、鉄およびベリリウムの塩を含め、他の金属塩が使用されてきた。アルミニウムの水酸化物およびリン酸塩が最も一般的である。
【0028】
他の好ましい実施形態において、CTL受容体リガンドは、単糖類、二糖類または多糖類を含む。本発明のCTL受容体リガンドは、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、アロース、アルトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、ソルボース、タロース、タガトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、メリビオース、アミロースおよびマンナンを含むがこれらに限定されない糖類を含む。本発明のある実施形態において、これらの糖類は、終末末端リン酸基またはホスホジエステル骨格を含む。
【0029】
本免疫学的組成物およびアジュバント系を投与し、十分に投薬するための方法およびスキームは、当技術分野内で公知である。対象に投与される投与量および頻度(単回または複数回投与)は、例えば、抗原への曝露の結果生じる感染への曝露歴:対象の、健康、体重、体格指数および食事または健康関連問題を含む様々な要因に依存して変動し得る。本発明の、方法および組成物、タンパク質またはポリペプチドと併用して、他の治療計画または治療薬を使用し得る。
【0030】
本発明による使用のための免疫原性組成物は、標準的な0.5mL注射用量として送達され、約0.1μgから約50μgの抗原を含有し得る。本発明による使用のための免疫原性組成物の好ましい実施形態において、標準的な0.5mL注射用量であり、約3μgから約20μgの抗原を含有する。ワクチン体積は、0.25から1.0mLの間、適切には0.5mLから1.0mLの間、特に標準的な0.5mLであり得る。本発明によるワクチン用量は、従来の投与よりも小さい体積で提供され得る。本発明による低体積用量は適切には0.5mL以下、一般的には0.3mL、通常は0.1mL以上である。
【0031】
現在、殆どのワクチンは、特に発展途上国において、免疫付与の費用が高くなり、安全性がより低くなる非経口投与で利用可能である。ワクチンが注射時に全身的に健康な幼児、小児および成人に投与される場合、注射用製品の製造時に高レベルの無菌状態が確実でなければならず、ワクチンに対してさらなる費用が加わる。経口ワクチン処方物の開発には、反応源性のリスク低下、投与に医学的に訓練された者が必要でないことおよび製造費用低減(無菌処理の必要性が減少するため)など、非経口注射を凌ぐ複数の長所がある。
【0032】
消化管は免疫系を刺激する腸管関連リンパ系組織(GALT)などの粘膜リンパ系誘導部位を含有するので、経口投与は免疫学的視点から魅力的である。GI管は、パイエル板など、免疫誘導組織に富む300mを超える粘膜面積を有する。さらに、粘膜ワクチン接種は、全粘膜面積が抗原侵入の入り口として作用するので、全身的ワクチン接種と同様に局所粘膜免疫反応を誘導する優れた能力を示している。最も重要なこととして、ある1つの粘膜部位での免疫付与の結果、全身的に、ならびに他の選択された粘膜部位でも抗体が分泌され得る[16]。
【0033】
粘膜表面の物理的構造は、病原菌に対する一定の防御を維持するように設計されている。小襞(M)細胞は、免疫反応を開始させるため、樹状細胞(DC)による続く取り込みおよびプロセシングのために上皮表面を横切って物質を輸送するという機能がある、粘膜表面の構成要因である。これらのDCは、Tリンパ球を刺激して、クローン的に膨張させてT−細胞サブセット(Th1、Th2、Th17またはT制御細胞)に分化させる。同時に、T細胞は、それらがその細胞介在性免疫機能を遂行する粘膜下領域にそれらを向かわせる粘膜ホーミングマーカーを特徴とする。この点で、DCおよびコグネイトT−細胞がB−細胞と相互作用して、複数の粘膜部位でそれらの分化および抗体産生が促進される。経口ワクチン処方物は、最初に胃でのSpeABの分解を防御し、次いでパイエル板のM−細胞に対して抗原を標的化して、GALTによる免疫反応を刺激することによって、粘膜免疫系を利用する。このアプローチにより、工業国および発展途上国の両方において、GAS関連疾患に対する予防のための、安全であり、効果的であり、安定であり、経済的に実行可能なワクチンが提供される。
【0034】
本発明による使用のための免疫原性組成物は、経口投与として送達され得る。本発明のアジュバントを用いた経口ワクチン付与は、CTLアゴニストに対する受容体を発現するパイエル板と呼ばれる腸の免疫組織を利用し、アルミニウムアジュバントの大きさの内部移行粒子において最も有効である。CTLアゴニストと結合させられたアルミニウムアジュバントの組合せによって、驚くべき利益がもたらされる。CTLアゴニストは、ワクチン粒子をパイエル板のM−細胞に標的化する。アルミニウム粒子は、適切な大きさの抗原を効率的に内部移行させる。本発明の経口アジュバントは、抗原およびアジュバントへの付着を維持し、胃および腸管での分解から抗原を保護する。胃での分解からのワクチンの保護は、ワクチンを保護するポリマーを用いてワクチン粒子をコアセルベート化することによりもたらされ得る。様々なpHでコアセルベート化され得るポリマーが得られ得るので、適切なポリマーを適切なタンパク質抗原と対形成させ得る。ある実施形態において、コアセルベーションのためにオイドラギットを使用し得る。オイドラギットはpH5.5以下で沈殿し、実施例において、オイドラギットを含有する経口処方物は、IM処方物よりも低いpHを有する。沈殿したオイドラギットは、ワクチン粒子を被覆し、分解からワクチン粒子を保護する。抗原とのアジュバントのコアセルベーションも直接、抗原を熱安定性にし得る。これは、治療用タンパク質、抗原バルクならびに最終ワクチン処方物に対する冷蔵保存への依存を減少させ得る。
【0035】
コアセルベーションに適切なポリマーとしては、メタクリルポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸シアノエチル、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリメタクリラート、ポリ(メタクリル酸メチル)コポリマー、ポリアクリルアミド、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、メタクリル酸グリシジルコポリマーおよびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の封鎖サブユニットの調製に有用なアクリルポリマーとしては、使用されるアクリルおよびメタクリルモノマー1モルあたり約0.02から約0.03モルのトリ(低級アルキル)アンモニウム基を含有する、アクリルおよびメタクリル酸エステルから合成されたコポリマーを含むアクリル樹脂(例えば、アクリル酸低級アルキルエステルおよびメタクリル酸低級アルキルエステルのコポリマー)が挙げられる。適切なアクリル樹脂の例は、Rohm Pharma GmbH,Darmstadt,Germany製造でオイドラギット(登録商標)の商標で販売されているポリマーである、アンモニオメタクリラートコポリマーNF21である。オイドラギット(登録商標)は、トリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物(TAM)と残りの構成要素(アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM))のモル比が1:40である、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物(TAM)の不水溶性のコポリマーである。オイドラギット(登録商標)などのアクリル樹脂は、水分散液の形態で、または適切な溶媒中の溶液として使用され得る。本発明の処方物中での好ましいオイドラギットはオイドラギットL100−55である。他のアクリルポリマーとしては、オイドラギット(登録商標)RL PO(タイプA)およびオイドラギット(登録商標)RS PO(タイプB;本明細書中で使用される場合、「オイドラギット(登録商標)RS」)、L30D55、L100、(L12,5)、S100、(S12,5)およびFS30D(モノグラフ、Ammonio Methacrylate Copolymer Type A Ph.Eur.,Ammonio Methacrylate Copolymer Type B Ph.Eur.,Ammonio Methacrylate Copolymer,Type A and B USP/NF,and Aminoalkylmethacrylate Copolymer RS JPEに記載のとおり)など、四級アンモニウム基を少量含むアクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマーが挙げられる。適切なオイドラギットの選択は、消化管において本物質を被覆粒子からどこで放出させようとするかに依存する。
【0036】
本発明は、アルミニウムアジュバントに抗原およびCTL−アゴニストを吸着させ、ワクチン処方物を形成させるためにpH依存性の溶解度を有するポリマーを添加し、ポリマーを沈殿させるために低pH溶液にワクチン処方物を添加することによって、経口投与可能な免疫原性組成物を作製する方法を提供する。本発明はまた、混合物を作製するためにリン酸緩衝液中でアクリル樹脂およびマンニトールおよびスクロースと抗原を混合し、縣濁液を生成させるために低pHの溶液にその混合物を噴霧し;縣濁液を乾燥させて粉末にすることによって、経口投与される乾燥粉末処方物を処方する方法にも関する。本発明はまた、混合物を作製するためにリン酸緩衝液中でアクリル樹脂およびマンニトールおよびスクロースと抗原を混合し、縣濁液を生成させるために低pHの溶液にその混合物を噴霧することによって、経口投与される縣濁液を処方する方法にも関する。pHを5.5以下に低下させ得、それを維持し得る低pH溶液の何れの溶液も使用し得る。ある一定の実施形態において、酢酸塩は、投与された場合に消化管に悪影響を与えず、リン酸塩またはクエン酸塩のような他の緩衝液で起こり得るようにアルミニウムと相互作用しないので好ましい。溶液のpHは、7.0以下、または約6.0以下または約5.5以下または約5.0以下または約4.5以下または約4.0以下または約3.5以下または3.0以下であり得る。溶液のpHは、約7.0から約3.0の間または約6.5から約3.0または約6.0から約3.0または約5.5から約3.0または約5.0から約3.0または約4.5から約3.0または約4.0から約3.0または約3.5から約3.0の間であり得る。
【0037】
本発明のある実施形態において、オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)を含む送達粒子を使用して、SpeA/Bに対する経口ワクチン処方物を設計した。処方過程中にSpeA/BをAlOOHに結合させ、次いで標的分子もAlOOH粒子に結合させる。マンノース受容体などのC型レクチン受容体は、これらが細菌を検出し、これと相互作用し、これを輸送することができるので、M−細胞上に存在すると思われる。腸の取り込みを促進し、AlOOHとの様々な結合方式を利用するためにM−細胞を標的とするマンノース−1−ホスフェート(M1P)および/または重合化マンノース(マンナン)の何れかのC型レクチン受容体アゴニストを本処方物において利用し得る。最後に、胃での分解に対する防御を提供するために腸溶性ポリマーを添加する。オイドラギット(登録商標)は、ポリ(メタクリラート)に基づくpH感受性ポリマーであり;経口使用のための医薬賦形剤として受け入れられており;一般的には生体分解性無毒性物質とみなされており;酵素および胃液による分解から活性医薬成分を保護し得る。オイドラギット(登録商標)L100−55は、pH5.5以下の溶液中で沈殿する。したがって、本ワクチンは、胃の低pHから保護されるが、十二指腸で放出され、これによって腸管のM−細胞との相互作用が可能となる。胃液から抗原を保護する賦形剤を添加することに加えて、本発明の組成物はまた、SpeA/Bなどの抗原を保護するためのカプセル化過程も含み得る。パイエル板に放出される前にGIにおいて抗原の完全性が維持される場合は免疫反応が促進される。保存および輸送の有効性ならびに針なしワクチンにおける安全性にも対処するワクチンの経口投与のための新しい処方技術を利用することに加えて、ワクチン粒子のコアセルベーション処理によって、免疫原性タンパク質周辺でより洗練された防御手段が確保されることになろう。処方技術の一例としては、ワクチン組成物を効果的に被覆するための噴霧凍結乾燥過程が挙げられる。噴霧凍結乾燥(SFD)は、低密度、表面積が大きいこと、特定の粒径分布および非常に迅速に溶解する可能性があることを含む、特定の物理学的特性を有する粉末粒子を生成可能であることが知られている。本発明は、感受性の高い抗原構造に対する熱および圧の差による損傷リスクを低下させながら、所望の粒子物理学的特性を付与し得る常圧噴霧凍結乾燥過程(ASFD)で被覆されたワクチン粒子に関する。ASFDはまた、大規模な連続処理に役立つ長所も有する。
【0038】
ASFD中、慎重に処方された液体溶液を特定の大きさの球状の小滴に噴霧し、すぐに凍結し、個々の粒子それぞれの大きさおよび形態を固定する。次に、極低温ガス(窒素)を粒子床に通過させることによって、この粒子を乾燥させる。その最終的な適応に対して粒子を所望の形にするために、流動および温度プロファイルを要求に合うように調節し得る。対流熱伝達を使用するので、本過程は、通常、凍結乾燥よりもかなり速く、高真空の必要性がないことから、費用が削減され、製造スケールへの移行が容易になる。今までのところ、治療薬の経口送達用の制御放出固形剤形を調製するために凍結乾燥、噴霧乾燥および噴霧凍結乾燥プロトコールが使用されたのは文献中で僅か数例しかなく、ワクチンの場合の例はさらに少ない。特定の粒子を調製する際に噴霧乾燥が良好に適応しているが、この技術は、変性を引き起こすことによって免疫原性タンパク質の効力に影響を与え得る加熱を必要とする。凍結乾燥および噴霧凍結乾燥法は、乾燥過程中、タンパク質の3D構造を安定化するために抗凍結剤を利用する。しかし、凍結乾燥によって、粒子は不規則な形態になり、薬物対−ポリマー分布が不均一になり、放出プロファイルが望ましくないものになり得る。噴霧凍結乾燥させる(SFD)法は、タンパク質に基づく乾燥粒子の作製において有用であるが、ASFD法は、処理中に感受性タンパク質を大きな差圧のストレスに曝さないので優れている。マンニトール、ラクトース、ソルビトールおよびスクロースおよびそれらの組合せを含むが限定されない、使用し得る様々な抗凍結剤候補物がある。ASFDは、処方物の均一なコアセルベーションなど、理想的な粒子の物理学的特性を生成させるために使用される噴霧ノズルを利用する。
【0039】
本発明の組成物は、単独でまたは従来の賦形剤、例えば、本組成物と有害な反応をしない経腸的または非経口適用に適切な医薬的にまたは生理学的に許容可能な有機または無機担体物質との混合物として投与され得る。適切な医薬的に許容可能な担体としては、水、塩溶液(リンゲル液など)、アルコール、油、ゼラチンおよび炭水化物、例えばラクトース、アミロースまたはデンプンなど、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロースおよびポリビニルピロリジンが挙げられる。このような調製物は、滅菌され、必要に応じて、ヒトに投与される組成物と有害な反応をしない、補助剤、例えば潤滑剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤および/または芳香物質などと混合され得る。本発明のワクチンを希釈するための好ましい希釈剤としては、ヒスチジンおよびトレハロース入りの150mM NaClが挙げられるがこれに限定されない。
【0040】
CTL受容体リガンドと併用されるアジュバントの適切な量の決定は、処方物中のアジュバントのタイプ、CTL受容体リガンドならびに抗原を含む様々な要因に依存する。実際に、使用されるCTL受容体リガンドの吸収能の大きさは、吸収され得るアジュバントの量の上限を規定する。本発明の組成物および方法において、アジュバントに対する糖類の量は、約1.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.05mg糖類/1mgアジュバントの範囲であり得る。本発明の組成物および方法の他の実施形態において、アジュバントに対する糖類の量は、約1.25mg糖類/1mgアジュバントから約0.05mg糖類/1mgアジュバント、約1.0mg糖類/1mgアジュバントから約0.05mg糖類/1mgアジュバントまたは約1.0mg糖類/1mgアジュバントから約0.05mg糖類/1mgアジュバントまたは約0.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.05mg糖類/1mgアジュバントまたは約1.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.10mg糖類/1mgアジュバントまたは約1.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.25mg糖類/1mgアジュバントまたは約1.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.50mg糖類/1mgアジュバントまたは約1.5mg糖類/1mgアジュバントから約0.75mg糖類/1mgアジュバントの範囲であり得る。
【0041】
アジュバント/CTL受容体リガンドと合わせた抗原の適切な量の決定は、処方物中のアジュバントのタイプ、CTL受容体リガンドならびに抗原を含む様々な要因に依存する。本発明の組成物および方法において、抗原に対する糖類/アジュバントの量は、1mg抗原あたり約1.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.05mg糖類/アジュバントの範囲であり得る。本発明の組成物および方法の他の実施形態において、アジュバントに対する糖類の量は、1mg抗原あたり約1.25mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.05mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約1.0mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.05mg糖類/アジュバンまたは1mg抗原あたり約1.0mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.05mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約0.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.05mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約1.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.10mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約1.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.25mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約1.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.50mg糖類/アジュバントまたは1mg抗原あたり約1.5mg糖類/アジュバントから1mg抗原あたり約0.75mg糖類/アジュバントの範囲であり得る。
【0042】
本発明の処方物および方法は、従来からの手順により作製された処方物より安定であるワクチン処方物を提供する。例えば、本発明の経口縣濁液処方物は、同様の構成要素を有する溶液よりも少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも30%または、少なくとも40%または少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも100%安定である。本発明の経口縣濁液処方物は、同様の構成要素を有する溶液よりも、約5%から500%安定であるかまたは約5%から約100%または約5%から90%安定であるかまたは約5%から約80%または約5%から70%安定であるかまたは約5%から約60%または約5%から50%安定であるかまたは約5%から約40%または約5%から30%安定であるかまたは約5%から約20%または約5%から10%安定であるかまたは約または約10%から500%安定であるかまたは約10%から約100%または約10%から90%安定であるかまたは約10%から約80%または約10%から70%安定であるかまたは約10%から約60%または約10%から50%安定であるかまたは約10%から約40%または約10%から30%安定であるかまたは約10%から約20%または約25%から500%安定であるかまたは約25%から約100%または約25%から90%安定であるかまたは約25%から約80%または約25%から70%安定であるかまたは約25%から約60%または約25%から50%安定であるかまたは約25%から約40%または約50%から500%安定であるかまたは約50%から約100%または約50%から90%安定であるかまたは約50%から約80%または約50%から70%安定であるかまたは約50%から約60%または約75%から500%安定であるかまたは約75%から約250%または約75%から100%安定である。
【0043】
例えば、本発明の乾燥粉末処方物は、同様の構成要素を有する溶液よりも、少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも30%または少なくとも40%または少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも100%安定である。本発明の経口縣濁液処方物は、同様の構成要素を有する溶液よりも、約5%から500%安定であるかまたは約5%から約100%または約5%から90%安定であるかまたは約5%から約80%または約5%から70%安定であるかまたは約5%から約60%または約5%から50%安定であるかまたは約5%から約40%または約5%から30%安定であるかまたは約5%から約20%または約5%から10%安定であるかまたは約または約10%から500%安定であるかまたは約10%から約100%または約10%から90%安定であるかまたは約10%から約80%または約10%から70%安定であるかまたは約10%から約60%または約10%から50%安定であるかまたは約10%から約40%または約10%から30%安定であるかまたは約10%から約20%または約25%から500%安定であるかまたは約25%から約100%または約25%から90%安定であるかまたは約25%から約80%または約25%から70%安定であるかまたは約25%から約60%または約25%から50%安定であるかまたは約25%から約40%または約50%から500%安定であるかまたは約50%から約100%または約50%から90%安定であるかまたは約50%から約80%または約50%から70%安定であるかまたは約50%から約60%または約75%から500%安定であるかまたは約75%から約250%または約75%から100%安定である。処方物の安定性は、25℃および37℃を含む様々な温度で測定し得る。処方物の安定性は、エピトープ利用能を含むが限定されない様々なやり方で測定し得る。
【実施例】
【0044】
実施例1
ワクチン処方物
表1に記載のとおりワクチン組成物を処方した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
水、トリスおよびアルハイドロゲルを15mL試験管に入れ、ボルテックスミキサーにより混合した。この15mL試験管にSpeA/Bを添加し、ボルテックス処理することにより混合した。混合物を室温で30分間温置した。マンノース−1−ホスフェートを添加し、続いて1M NaClの添加を行った。混合物全体をボルテックス処理することにより混合し、この混合物を室温で30分間温置した。
【0048】
【表3】
【0049】
水、トリスおよびアルハイドロゲルを15mL試験管に入れ、ボルテックスミキサーにより混合した。この15mL試験管にSpeA/Bを添加し、ボルテックス処理することにより混合した。混合物を室温で30分間温置した。マンナンを添加し、続いて1M NaClの添加を行った。混合物全体をボルテックス処理することにより混合し、この混合物を室温で30分間温置した。
【0050】
実施例2
ワクチン処方物の安定性
【0051】
下記のように試料中の炭水化物量の測定を行った。50μLのブランク、標準物質および試料を96ウェルマイクロプレートの適切なウェルにピペットで分注した。150μLの濃硫酸を各ウェルにピペットで分注し、次に30μLの5%フェノールを各ウェルにピペットで分注した。このプレートを90℃で5分間温置し、次いで室温まで冷却した。次に、490nmでの吸収を測定した。試料の炭水化物濃度が最大濃度の標準物質よりも高かった場合、試料の希釈液を調製し、結果がアッセイの直線範囲に入るようにした。
【0052】
次のようにアジュバント付加処方物中の%吸収抗原の測定を行った。10,000rcfで5分間、試料を遠心した。実験用BCA試薬を調製し、A対Bが50:1となる割合で試薬を混合した。96ウェルプレートの適切なウェルにおいて25μLの標準物質および試料を三つ組みでピペットで分注し、200μLのBCA試薬を各ウェルに添加した。このプレートを37℃で30分間温置し、次いで室温まで冷却した。プレート中のウェルの吸収を570nmでマイクロプレートリーダーにより読み取った。標準曲線を用いて各試料中の抗原濃度。
【0053】
次のようにアジュバント付加処方物中の%抗原脱着の測定を行った。10,000rcfで5分間、試料を遠心した。上清を除去し、微小遠心管中で保管した。除去した上清の量と等体積の脱着緩衝液中でペレットを再懸濁し、室温で30分間温置した。実験用BCA試薬を調製し、A対Bの3:1の割合で試薬を混合した。10,000rcfで5分間、試料を遠心した。96ウェルプレートの適切なウェルにおいて三つ組みで50μLの標準物質および試料をピペットで分注し、150μLのBCA試薬を各ウェルに添加した。このプレートを37℃で30分間温置し、次いで室温まで冷ました。このプレート中のウェルの吸収を570nmでマイクロプレートリーダーにより測定し、標準曲線を用いて各試料中の抗原濃度を計算した。
【0054】
実施例3
インビボでのアジュバント系の活性
ヒト病原菌に対して確立された動物モデルにおいて本アジュバント系の効力をインビボで評価した。
【0055】
【表4】
【0056】
AH−オキシ水酸化アルミニウム
第0日および第21日に表4に記載のように筋肉内または経口経路でラットに免疫付与することによって、ラットにおいて処方物11VF001−008を試験した。第7日、第14日および第35日にラットから血清を回収し、抗原特異的な総IgG、さらにIgG2aおよびIgG2bについてアッセイした。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表7】
【0060】
抗体力価を測定するために、次の手順を行った。コーティング緩衝液中2μg/mLのコーティング抗原の溶液を調製した。100mLの2μg/mL抗原を96ウェルプレートの各ウェルに入れ、37℃で1時間温置した。このプレートを100μL/ウェルの洗浄緩衝液で1回洗浄し、100μLのブロッキング緩衝液を各ウェルにピペットで分注し、プレートを37℃で1時間温置した。洗浄緩衝液中の未知血清の2倍連続希釈液を調製した。早い時点では、希釈は通常1:50希釈であった。より遅い時点では、希釈は1:10,000以上であった。このプレートを100μL/ウェルの洗浄緩衝液で2回洗浄した。2つ組の100μLの各血清希釈液を適切なプレートウェルにピペットで分注し、プレートを37℃で1時間温置した。ブロッキング緩衝液中の検出抗体の適切な希釈液を調製した。プレートを100μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄し、100μLの検出抗体を各ウェルにピペットで分注し、プレートを37℃で1時間温置した。このプレートを100μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した。1部の溶液Aを1部の溶液Bと合わせることによって適切な体積のTMB実験用試薬を調製した。100μLのTMBを各ウェルにピペットで分注し、プレートを室温で15分間温置した。プレートの発色が完了しなかった場合、発色するまで温置時間を5分間延長した。100μLの3M硫酸を各ウェルにピペットで分注して反応を停止させ、450nmでの吸収を各ウェルについて測定した。バックグラウンド吸収の2倍に等しい4パラメーター最良適合曲線の点として力価を決定した。
【0061】
図4は、アジュバント系のこれらの実施形態が、非アジュバント付加抗原と比較して1を超える対数分、総血清IgGを増加させることができたことを示す。これにより、本アジュバント系の利用による抗原用量節約の可能性が明らかとなる。図5は、本アジュバント系のこれらの実施形態が、IgG2a抗体の産生を促進したことを示す。総IgGおよびIgG2a力価は同等ではなかったので、実際は免疫反応は、混合型Th1/Th2である。図6は、本アジュバント系のこれらの実施形態が、IgG2b抗体の産生を促進したことを示す。総IgGおよびIgG2b力価は同等ではなかったので、実際は免疫反応は、混合型Th1/Th2である。
【0062】
実施例4
BSA溶液のコアセルベーション
800μg/mLマンナン、pH7.4の20mMトリス中のウシ血清アルブミン(BSA)の200μg/mL溶液に、0.5、0.1および0.02%のオイドラギットを添加した。この溶液をpH4の150mM酢酸緩衝液に滴下して添加して、オイドラギットを沈殿させた。沈殿した粒子を遠心し、上清を除去し、50mMリン酸緩衝液中で再構成して、オイドラギットを溶解させた。BSAがオイドラギット中で封入されたか否かを調べるために、この過程中の各段階での溶液中のBSAの量を監視した。図7は試験の結果を示す。
【0063】
実施例5
吸着BSAのコアセルベーション1
実施例4を繰り返したが、マンナン−アルハイドロゲルにBSAを吸着させた。0.5、0.1および0.02%のオイドラギットを800μg/mLマンナン、3.4mg/mLアルハイドロゲル中のウシ血清アルブミン(BSA)の200μg/mL溶液に添加した。図8Aおよび8Bは試験の結果を示す。
【0064】
実施例6
吸着BSAのコアセルベーション2
実施例5を繰り返したが、このとき、オイドラギットの量を減少させた。0.1、0.05、0.025、0.13%のオイドラギットを800μg/mLマンナン、3.4mg/mLアルハイドロゲル中のウシ血清アルブミン(BSA)の200μg/mL溶液に添加した。図9Aおよび9Bは試験の結果を示す。
【0065】
実施例7
吸着SpeA/Bのコアセルベーション
100mg/mL SpeA/B、0.1%オイドラギット、3.4mg/mLアルハイドロゲル、20mMトリスおよび600mg/mL M1Pまたはマンナンの何れかを一緒に添加したことを除き、実施例6を繰り返した。総アルミニウムの半分にSpeA/Bを吸着させた。残りのアルミニウムを酢酸塩に添加した。これは、腸管での酵素分解から保護するために行った。トリプシンおよびキモトリプシンは、アルミニウムに吸着し、活性低下しているはずである。図10のデータによって、ほぼ全てのSpeA/Bがアジュバントに吸着したままであったことが明らかとなった。
【0066】
実施例8
オイドラギットL100−55を用いたSpeA/Bのコアセルベーション
0.1%オイドラギット(登録商標)L100−55が入っているかまたは入っていない、200μg/mLのタンパク質、pH7.5の20mMトリスを等体積の150mM酢酸ナトリウムpH4に滴下して添加した。試料を37℃で24時間保存した。50mMリン酸緩衝液中で試料を溶解した。10mM PO、150mM NaCl中の試料および標準物質の100μLの連続希釈液を96ウェルプレートに添加し、37℃で1時間温置した。このプレートを10mM PO、150mM NaCl、0.05%Tween20で洗浄した。100μLの10mM PO、150mM NaCl、1%BSAを各ウェルに添加し、37℃で1時間温置した。このプレートを再び洗浄した。100μLの抗SpeABラット血清1:25,000希釈液を各ウェルに添加し、37℃で1時間温置した。プレートを再び洗浄した。100μLの抗ラットIgG−HRPの1:75,000希釈液を各ウェルに添加し、37℃で1時間温置した。プレートを再び洗浄した。100μLのTMBを各ウェルに添加し、室温で15分間温置した。100μLの3M HSOで反応を停止させ、吸収を450nmで読み取った。各試料の濃度を標準曲線から計算した。
【0067】
実施例9
抗体試験
試験の第0日、14日および35日に各群の個々のラットに対して抗原特異的な血清総IgGを測定した。10mM PO4、150mM NaCl中の100μLの2μg/mL SpeABを96ウェルプレートに添加し、37℃で1時間温置した。このプレートを10mM PO4、150mM NaCl、0.05%Tween20で洗浄した。100μLの10mM PO4、150mM NaCl、1%BSAを各ウェルに添加し、37℃で1時間温置した。このプレートを再び洗浄した。1:50から開始して2倍希釈でプレート上で血清を連続希釈し、37℃で1時間温置した。このプレートを再び洗浄した。100μLの抗ラットIgG−HRPの1:75,000希釈液を各ウェルに添加し、37℃で1時間温置した。プレートを再び洗浄した。100μLのTMBを各ウェルに添加し、室温で15分間温置した。100μLの3M HSOで反応を停止させ、吸収を450nmで読み取った。各試料の濃度を標準曲線から計算した。結果を図12で示す。
【0068】
ワクチン接種した動物の血清による野生型SpeA毒素の中和。血清を1:500希釈し、400ng/mLのSpeA毒素と合わせた。混合物を37℃で1時間温置した。ヒトPBMCの細胞2.5×10個/ウェルに50μLの血清/毒素混合物を添加し、37℃で24時間温置した。上清を回収し、蛍光マイクロアレイを用いてINF−γ産生についてアッセイした。中央値蛍光強度を対照ラット血清に対して正規化した。結果を図13で示す。
【0069】
実施例10
AFSDコーティング
様々な抗凍結剤と組み合わせてSpeA/B、アルハイドロゲル、マンナンおよびオイドラギットL100−55ポリマーを含む様々な抗原を様々な噴霧ノズルで液体窒素浴に噴霧して、小滴を形成させ、これを維持する。ASFD過程によって小滴を昇華させ、乾燥させる。乾燥固形粒子の物理学的特性は、粒径分布(レーザー回折)、タンパク質含量および均一性(UV分光法、IR、HPLC)および形態(ヘリウムイオン顕微鏡およびSEM)により調べる。
【0070】
実施例11
AFSDコーティング2
様々な免疫原(SpeA/Bを含む。)周囲で、緩衝液(pH4.0)中で腸溶性ポリマー(オイドラギットL100−55)を沈殿させ、沈殿した免疫原コロイド状溶液に様々な凍結保護物質を添加し、その溶液を霧化し、乾燥させ、実施例10のように特徴を調べる。
【0071】
実施例12
AFSDコーティング3
この実施例は、持続的なGI放出機構の試験のために2種類のpH感受性腸溶性ポリマーにおいて免疫原のカプセル化を組み合わせる。(SpeA/Bを含む)抗原、アルハイドロゲル(登録商標)、マンナンおよびpH<7.0で沈殿する腸溶性ポリマー、オイドラギットL100を霧化し、pH6.0の液体緩衝液に噴霧する。オイドラギットL100−55をこのコロイド状縣濁液に添加し、得られた縣濁液を霧化し、pH4.0の液体緩衝液に噴霧する。この時点で、コロイド状縣濁液を抗凍結剤と合わせ、ASFD過程によって昇華させ、乾燥させ、得られた粒子の特徴を実施例10のように調べる。
【0072】
実施例13
GI分解評価
人工胃液および腸液に実施例10から12で作製した処方物を曝露して、分解からの免疫原保護を評価する。適切なpHに加えて、人工溶液に適切な酵素を添加し(胃:ペプシン;腸:リパーゼ、プロテアーゼおよびパンクレアーゼ)、様々なGI構成要素の段階的な評価によって送達粒子の安定性が検証され得るようにする。ELISA、ウエスタンブロット、SDS−PAGE、外的蛍光およびBCAアッセイによって抗原安定性を監視する。送達粒子を37℃でも保存し、ELISA、ウエスタンブロット、SDS−PAGE、外的蛍光およびBCAアッセイによって抗原(SpeA/B)の安定性を監視する。
【0073】
実施例14
免疫細胞刺激
熱安定性および胃分解からの保護の向上を示す実施例12からのワクチン処方物を、その免疫細胞増殖刺激能について評価する。ワクチンが、処理、保存および人工胃液への曝露後に免疫刺激機能を保持するか否かを判定するために、ワクチンをヒトPBMCと合わせる。
【0074】
実施例15
CRM経口縣濁液を用いた安定性試験
この安定性試験のために利用した溶液および経口縣濁液処方物を表8で示す。溶液処方物については、1.143mLの3.5mg/mL CRM(20mMトリス pH7.5中)、1.6gのマンニトール、0.4gのスクロースおよび18.8mLの20mMトリス pH7.5を処方容器中で合わせ、30分間混合した。次に、この溶液を20mLのpH4の150mM酢酸ナトリウム溶液に噴霧した。次いで、得られた溶液を1mLアリコートに分注し、半分を25℃で保存し、残り半分を37℃で保存した。
【0075】
経口縣濁液処方については、1.143mLの3.5mg/mL CRM(20mMトリス pH7.5中)、1mLの1%オイドラギット溶液(20mMトリス pH7.5中)、1.6gのマンニトール、0.4gのスクロースおよび17.8mLの20mMトリス pH7.5を処方容器中で合わせ、30分間混合した。次に、この溶液を20mLのpH4の150mM酢酸ナトリウム溶液に噴霧した。得られた懸濁液を1mLアリコートに分注し、pH4で半分を25℃で保存し、残り半分を37℃で保存した。
【0076】
【表8】
【0077】
25℃保存から0、1、14、28、42および56日に、37℃保存から0、1、7、14、21および28日に、溶液および経口縣濁液の両試料を採取した。採取後、保存試料をすぐに−20℃で凍結させた。次いで各試料中のCRMのエピトープ利用能を測定した。
【0078】
抗原特異的なELISAアッセイからの反応をBCAアッセイにより測定したときの試料中の総タンパク質に対して正規化することによって、エピトープ利用能を測定した。アッセイ前に、3mLのpH9の20mMトリスで試料を希釈することによって、経口縣濁液試料を溶解させた。ELISAおよびBCAアッセイに対する標準物質として−20℃で保存したストックCRMを使用し、20mMトリス、8%マンニトールおよび2%スクロース中で適切な濃度に希釈した。BCAアッセイの場合、25μLの各標準物質および各試料を三つ組みで96ウェルプレートに入れた。次に、200mLのBCA試薬を各ウェルに添加し、このプレートを37℃で45分間温置した。プレートを室温まで冷却した後、各ウェルの吸収を570nmで測定した。次に、標準曲線から計算することによってタンパク質濃度を決定した。
【0079】
ELISAの場合、試料を20mMトリス pH9で1μg/mL CRMに希釈し、100μLを2つ組で96ウェルプレートに入れた。標準物質も20mMトリス pH9で希釈し、100μLを2つ組で96ウェルプレートに入れた。プレートを37℃で1時間温置し、次いで100μL/ウェル、20mM PO、150mM NaClおよび0.05%Tween20洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、100μL/ウェルBSAブロッキング緩衝液をプレートに添加し、このプレートを37℃で1時間温置した。このプレートを100μL/ウェル洗浄緩衝液で3回洗浄した。次いで、100μL/ウェルの抗CRM−ビオチン抗体1:250希釈液を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間温置した。プレートを再び3回、100μL/ウェル洗浄緩衝液で洗浄した。次に、100μL/ウェルのストレプトアビジン−HRPの1:3,000希釈液を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間温置した。プレートを100μL/ウェル洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、100μL/ウェルのTMB試薬を各ウェルに添加し、プレートを室温で20分間温置した。温置後、反応を停止させるために、100μL/ウェルの3M HSOをプレートに添加した。450nmで吸収を測定した。標準曲線から各試料の濃度を決定した。
【0080】
エピトープ利用能を得るためにBCAにより決定されたタンパク質濃度をELISAにより決定されたエピトープ濃度で除することによって、各処方物のエピトープ利用能を決定した(表9)。このデータから、経口縣濁液としての処方物がCRMの安定性を向上させることが明らかとなる(図14)。両温度で各処方物に対して一次分解速度定数を決定した(表10)。これらの結果から、CRMが経口縣濁液として処方され、25℃で保存される場合は安定性が68%向上し、37℃で保存される場合は安定性が54%向上することが明らかとなる。時間経過にわたり喪失される抗原の累積率としてデータをプロットする場合、経口縣濁液がCRMの安定性をどのように向上させるかも見ることができる(図15)。25℃または37℃の何れかで保存することによる溶液処方物中のエピトープの50%喪失に要する時間は1日未満である。しかし、経口縣濁液の場合、50%喪失に要する時間は、25℃で12日、37℃で7日間まで延長する。全データから、経口縣濁液として処方された場合、従来からの液体処方物と比べて、CRMの安定性の顕著な向上が明らかとなる。
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
実施例16
CRM乾燥粉末を用いた安定性試験
この安定性試験で利用した溶液および乾燥粉末処方物を表11で示す。溶液処方物の場合、1.143mLの3.5mg/mL CRM(20mM PO pH7.5中)、1%オイドラギット溶液(20mM PO pH7.5中)、1.6gのマンニトール、0.4gのスクロースおよび17.8mLの20mM PO pH7.5を処方容器中で合わせ、30分間混合した。次に、得られた溶液を1mLアリコートに分注し、半分を25℃で保存し、残り半分を37℃で保存した。
【0084】
乾燥粉末処方物の場合、1.143mLの3.5mg/mL CRM(20mMトリス pH7.5中)、1mLの1%オイドラギット溶液(20mM PO pH7.5中)、1.6gのマンニトール、0.4gのスクロースおよび17.8mLの20mM PO pH7.5を処方容器中で合わせ、30分間混合した。次に、この溶液を20mLのpH4の150mM酢酸ナトリウム溶液に噴霧した。次いで、常圧噴霧凍結乾燥を利用して、得られた縣濁液を乾燥させて粉末にした。この粉末を100mg試料に分け、半分を25℃で保存し、残り半分を37℃で保存した。
【0085】
【表11】
【0086】
安定性試験の場合、試料を25℃保存物から0、1、14、28、42および56日に、37℃保存物から0、1、7、14、21および28日に採取した。保存物からの採取後、試料を−20℃ですぐに凍結した。実施例15に記載のように各試料中のCRMのエピトープ利用能を測定した。処理後、最初に乾燥粉末におけるエピトープ利用能の幾分かの喪失があったが、一方で、残りのCRMエピトープは37℃でも非常に安定であった(表12)(図16)。乾燥粉末としての処方物は、CRMの安定性をさらに促進する。
【0087】
【表12】
【0088】
本明細書中で範囲が与えられる場合、端点が含まれる。さらに、別段の断りがない限り、または内容および当業者の理解から別段明らかとならない限り、範囲として表される値は、内容から明らかに別段指示されない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで、何らかの具体的な値または、本発明の異なる実施形態における定められた範囲内の小領域を想定し得る。
【0089】
本明細書で引用される刊行物および特許は全て、それぞれ個々の刊行物または特許が具体的におよび個々に参照により組み込まれることが示されるように、参照により本明細書中に組み込まれる。何らかの刊行物の引用は、提出日前のその開示に対するものであり、本発明が、先行発明の効力によってこのような刊行物に先行することを認められないことを承認するものとして解釈してはならない。
【0090】
本発明の実施例実施形態を参照して、本発明を特に示し、記載してきたが、付属の特許請求の範囲により包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がそこでなされ得ることが当業者により理解されよう。
【0091】
当業者は、本明細書中に記載の実施形態に基づき、したがって、具体的には本発明の範囲内で、本発明の免疫学的組成物およびアジュバントのさらなる長所を得ることができる。
他の実施態様
1.1つ以上のC型レクチン(CTL)受容体リガンドと、1つ以上のアルミニウムアジュバントと、1つ以上の抗原と、1つ以上のポリマーとを含む、経口投与のための免疫学的組成物。
2.前記ポリマーがアクリル樹脂である、実施態様1に記載の免疫学的組成物。
3.前記アクリル樹脂が、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物の不水溶性のコポリマーである、実施態様1に記載の免疫学的組成物。
4.前記アクリル樹脂がオイドラギットである、実施態様1に記載の免疫学的組成物。
5.抗凍結剤をさらに含む、実施態様1に記載の免疫学的組成物。
6.前記抗凍結剤が、トレハロース、マンニトール、ラクトース、ソルビトールおよびスクロースおよびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様5に記載の免疫学的組成物。
7.前記抗凍結剤がトレハロースである、実施態様5に記載の免疫学的組成物。
8.経口投与可能な免疫原性組成物を作成する方法であって、
アルミニウムアジュバントに抗原およびCTL−アゴニストを吸着させる工程;
pH依存性の溶解度を有するポリマーを添加してワクチン処方物を形成する工程;および
低pH溶液に前記ワクチン処方物を添加して前記ポリマーを沈殿させ、それによって経口投与可能な免疫原性組成物を作成する工程、を含む方法。
9.前記アルミニウムアジュバントがオキシ水酸化アルミニウムである、実施態様8に記載の方法。
10.前記CTL−アゴニストが糖類である、実施態様8に記載の方法。
11.前記ポリマーがアクリル樹脂である、実施態様8に記載の方法。
12.前記アクリル樹脂が、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物の不水溶性のコポリマーである、実施態様11に記載の方法。
13.前記アクリル樹脂がオイドラギットである、実施態様11に記載の方法。
14.前記経口投与可能な免疫原性組成物を常圧噴霧凍結乾燥させる段階をさらに含む、実施態様8に記載の方法。
15.経口投与される乾燥粉末処方物を処方する方法であって、
リン酸緩衝液中でアクリル樹脂およびマンニトールおよびスクロースと抗原を混合して、混合物を作成する工程;
低pHの緩衝溶液に前記混合物を噴霧して、懸濁液を生成する工程;および
前記懸濁液を乾燥させて粉末にする工程;を含む方法。
16.前記アクリル樹脂が、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MM)およびトリメチルアンモニウムエチルメタクリラート塩化物の不水溶性のコポリマーである、実施態様15に記載の方法。
17.前記アクリル樹脂がオイドラギットである、実施態様16に記載の方法。
18.前記乾燥が、常圧噴霧凍結乾燥により達成される、実施態様15に記載の方法。
19.前記緩衝液が酢酸ナトリウムである、実施態様15に記載の方法。
20.前記pHが約7.0以下である、実施態様19に記載の方法。
21.前記pHが約6.5以下である、実施態様19に記載の方法。
22.前記pHが約6.0以下である、実施態様19に記載の方法。
23.前記pHが約5.5以下である、実施態様19に記載の方法。
24.前記pHが約3.0から約7.0の間である、実施態様19に記載の方法。
25.前記pHが約4.0から約7.0の間である、実施態様19に記載の方法。
26.前記pHが約5.0から約7.0の間である、実施態様19に記載の方法。
27.2種類のアクリル樹脂がある、実施態様15に記載の方法。
28.3種類のアクリル樹脂がある、実施態様15に記載の方法。
29.前記樹脂が、前記免疫学的組成物が投与される場合に、前記組成物が前記抗原を消化管に沿ってゆっくりと放出するように選択される、実施態様27または28に記載の方法。
30.前記樹脂が、オイドラギットL100−55、オイドラギット(登録商標)RL PO(Type A)およびオイドラギット(登録商標)RS PO、L30D55、L100、(L12,5)、S100、(S12,5)およびFS30Dおよびそれらの組合せからなる群から選択される、実施態様29に記載の方法
図1
図2
図3A
図3B
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図5
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図8A
図8B
図9A
図9B
図10
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