(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による固液分離装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、
図1〜
図7に示す形態においては、固液分離装置として凝集沈殿装置を例にして説明する。ただし、固液分離装置は凝集沈殿装置に限定されるものではない。すなわち、固液分離装置は、被処理水を導入する被処理水導入部と、被処理水導入部から導入された被処理水中の固形物を
捕捉すると共に被処理水によりフロックを成長させるフロック成長ゾーンと、を有するものであれば特に構成は限定されない。
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態に係る凝集沈殿装置を示す概略構成図、
図2は、
図1に示す凝集沈殿装置の平面図、
図3は、
図1及び
図2中の内筒水槽及び仕切板を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の凝集沈殿装置(固液分離装置)100は、有底円筒状の外筒水槽1と、この外筒水槽1より小径で且つ高さも小さく当該外筒水槽1の内部に同軸に収容された有底円筒状の内筒水槽2と、を備える。この凝集沈殿装置100にあっては、内筒水槽2の底部(第二の底部)が外筒水槽1の底部(第一の底部)から上方に所定長離隔しており、2重水槽構造を呈している。なお、ここでは、外筒水槽1、内筒水槽2を円筒状としているが、角筒状であっても良い。
【0023】
原水(被処理水)を槽内に導入するための導入管(被処理水導入部)4は、外筒水槽1の下部の槽周壁を挿通し、内筒水槽2の下部の槽周壁を挿通して当該内筒水槽2内に進入している。原水は、ここでは、例えば有機性排水に例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)等の無機凝集剤を混合したものとされている。また、導入管4に対しては、例えばアニオン系ポリマー等の高分子凝集剤を供給する凝集剤供給ラインL1が接続される。
【0024】
ここで、特に本実施形態にあっては、
図1〜
図3に示すように、外筒水槽1と内筒水槽2との間に形成された環状(円筒状)の中間領域Rを、周方向に沿って複数の領域に分割する複数の仕切板3が設けられている。仕切板3は、ここでは2個であり、この仕切板3により中間領域Rは、一の領域R1(下降流ゾーン)と他の領域(隣の領域、上昇流ゾーン)R2に2分割される。これらの仕切板3,3は、その外側の端部が、外筒水槽1の内周面に連結されると共に、その内側の端部が、内筒水槽2の外周面に連結されることで、内筒水槽2を外筒水槽1に連結する。仕切板3は、内筒水槽2の上端から下端まで設けられ、この仕切板3で仕切られた一の領域R1に対応する内筒水槽上端U1は、隣の領域R2の内筒水槽上端U2より低く設定され、ここでは、1〜100cm程度低くされている。
【0025】
このような構成を有する凝集沈殿装置100によれば、凝集剤を含む原水は、内筒水槽2内の導入管4から内筒水槽2内の下部に一様に噴出され、この噴出する水流の撹拌力、剪断力等により混合されてフロックを形成していく。内筒水槽2内に形成されたフロックは底部より堆積していくが、さらに供給される原水によってフロックゾーンの流動層を形成していく。凝集剤を含む原水はこのフロックゾーンの中を上昇していく間に、生成された小さなフロックが、先に生成されたフロックに捕捉され、これにより、内筒水槽2内に、フロックがさらに成長するフロック成長ゾーンRXが形成されると同時に、原水はあたかもフロック成長ゾーンRXで濾過されたように清澄化されていく。フロック成長ゾーンRXを通過した清澄水は、外筒水槽1内を上昇していく。
【0026】
なお、内筒水槽2内の底部に、特開2010−274199号公報を始めとして記載されている分散管(ディストリビュータとも称す)を配置し、この分散管を回転させながら当該分散管から原水を流出させることで、原水を内筒水槽2内に均等分配させて一様に上昇させフロック成長ゾーンRXを形成するようにしても良い。
【0027】
一方、フロック成長ゾーンRXで成長したフロックは、低い方の内筒水槽上端U1からこれに対応する一の領域R1に一方的に溢流して、当該一の領域R1をフロック沈降ゾーンとして下向流に乗ってスムーズに沈降し、外筒水槽1内の底部にスムーズに運ばれて堆積する。このフロックに同伴し外筒水槽1内の底部に運ばれた水は、外筒水槽1内の底部でフロックから分離され、一の領域R1の隣の領域R2を分離水上昇ゾーンとして上昇流に乗ってスムーズに上昇し、上方に運ばれていく。このように、低い方の内筒水槽上端U1から一の領域R1、外筒水槽1内の底部、隣の領域R2を通る一方方向の流れが形成されるのは、フロックを含む水が、フロックを含まない水より見かけ比重が重いことに起因する。
【0028】
そして、外筒水槽1内の底部に堆積した濃縮フロックは、外筒水槽1の底部中央に設けられた濃縮フロック排出部8から外部へ排出されると共に、外筒水槽1内を上昇した清澄水(上澄水)は、外筒水槽1の上部に設けられた処理水排出口9より処理水として後段に排出される。
【0029】
このように、本実施形態では、中間領域Rが、仕切板3により、フロックを下向流により沈降させて外筒水槽1内の底部に運ぶ一の領域R1と、フロックから分離された分離水を外筒水槽1内の底部から上昇流により上昇させて上方に運ぶ隣の領域R2とに周方向に沿って分けられ一方方向の流れが形成されるため、フロックの沈降が上昇流により妨げられたり、フロックが上昇流に乗って上昇してしまうということがなく、従って、処理水のSS濃度を低くでき、処理水を一層清澄にすることができる。
【0030】
本実施形態に係る凝集沈殿装置(固液分離装置)100は、被処理水を導入する導入管(被処理水導入部)4と、導入管4から導入された被処理水中の固形物を
捕捉すると共に被処理水によりフロックを成長させるフロック成長ゾーンRXと、を有する。また、凝集沈殿装置100は、フロック成長ゾーンRXで成長したフロックを、フロック成長ゾーンRXから一方向に下降させる下降流ゾーンとしての一の領域R1と、下降流ゾーンから下降してきたフロックをフロック成長ゾーンRX通過後の被処理水から分離する分離ゾーンと、分離ゾーンにおいてフロックが分離された被処理水を上昇させる隣の上昇流ゾーンとしての隣の領域R2と、を有する。なお、本実施形態では、分離ゾーンは、内筒水槽2の底部と外筒水槽1の底部との間の領域に形成される。
【0031】
本実施形態に係る凝集沈殿装置100によれば、フロック成長ゾーンRXで成長したフロックが、フロック成長ゾーンRXから下降流ゾーンをスムーズに下降し、スムーズに分離ゾーンへ運ばれて被処理水から分離される。分離ゾーンにおいてフロックが分離された被処理水は上昇流ゾーンをスムーズに上昇する。このように、下降流ゾーン、分離ゾーン、及び上昇流ゾーンによる被処理水の流れが形成されるため、フロックの沈降が上昇流により妨げられたり、フロックが上昇流に乗って上昇してしまうことを抑制できる。従って、処理水のSS濃度を低くでき、処理水を一層清澄にすることができる。
【0032】
凝集沈殿装置100において、上昇流ゾーンと下降流ゾーンは上下方向から見たとき(
図2に示す状態)に異なる位置に形成され、上昇流ゾーンの下端側の領域と下降流ゾーンの下端側の領域は分離ゾーンを介して連通している。本実施形態では、
図2に示すように、凝集沈殿装置100の周方向における一部の領域(紙面右側半分の領域)に下降流ゾーンが形成され、他の領域(紙面左側半分の領域)に上昇流ゾーンが形成される。このような構成により、被処理水が下降流ゾーンを下降し、当該下降流ゾーンの下端側の領域から分離ゾーンへ流れ、分離ゾーンを通過して下端側の領域から上昇流ゾーンへ流れて、当該上昇流ゾーンを上昇するような流れが形成される。上昇流ゾーンと下降流ゾーンは上下方向から見たときに異なる位置に形成されているため、フロックの沈降が上昇流により妨げられたり、フロックが上昇流に乗って上昇してしまうことを抑制できる。
【0033】
凝集沈殿装置100は、第一の底部と第二の底部とからなる2重底構造を呈し、分離ゾーンが第一の底部と第二の底部の間にある。このような構成により、第一の底部と第二の底部の間の十分なスペースを分離ゾーンとすることができる。
【0034】
凝集沈殿装置100において、下降流ゾーンと上昇流ゾーンは分離している。このような構成により、フロックの沈降が上昇流により妨げられたり、フロックが上昇流に乗って上昇してしまうことをより確実に抑制できる。
【0035】
凝集沈殿装置100において、下降流ゾーンと上昇流ゾーンは仕切られている。このような構成により、仕切りを設けるだけの簡単な構成にて、下降流ゾーンと上昇流ゾーンとを分離することができる。
【0036】
本実施形態に係る固液分離方法は、フロック成長ゾーンRXに被処理水を通過させることで固液分離する固液分離方法である。固液分離方法は、フロック成長ゾーンRXで成長したフロックを一方向に下降させる下降工程と、下降工程で下降されたフロックとフロック成長ゾーン通過後の被処理水とを分離する分離工程と、分離工程でフロックが分離された被処理水を上昇させる上昇工程と、を含む。
【0037】
本実施形態に係る固液分離方法によれば、上述の固液分離装置と同様の作用・効果を奏することができる。
【0038】
図4は、本発明の第2実施形態に係る凝集沈殿装置を示す平面図、
図5は、
図4中の内筒水槽及び仕切板を示す斜視図である。
【0039】
この第2実施形態の凝集沈殿装置が第1実施形態の凝集沈殿装置と違う点は、仕切板3を4個とし、これらの仕切板3により中間領域Rを4分割した点であり、仕切板3で仕切られた複数の領域のうちの一の領域R1に対応する内筒水槽上端U1を、一の領域R1の隣の領域R2の内筒水槽上端U2より低く設定する点は第1実施形態と同様である。従って、4分割する仕切板3により、低い内筒水槽上端U1、これより高い隣の内筒水槽上端U2が、周方向に沿って仕切板3,3同士の間に、交互に並設される。
【0040】
このように構成した第2実施形態にあっても、第1実施形態と同様な作用・効果を奏するというのはいうまでもない。
【0041】
図6は、本発明の第3実施形態に係る凝集沈殿装置の内筒水槽及び仕切板を示す斜視図、
図7は、本発明の第4実施形態に係る凝集沈殿装置の内筒水槽及び仕切板を示す斜視図である。
【0042】
第3実施形態の凝集沈殿装置が第1実施形態の凝集沈殿装置と違う点、及び、第4実施形態の凝集沈殿装置が第2実施形態の凝集沈殿装置と違う点は、内筒水槽上端U1が低く設定された一の領域R1に対応する内筒水槽下端D1及び仕切板3の下端D3を、隣の領域R2の内筒水槽下端D2より下方に延ばした点である。なお、一の領域R1に対応する内筒水槽下端D1及び仕切板3の下端D3は、ここでは、1〜100cm程度延ばされている。
【0043】
このような第3、第4実施形態によれば、一の領域R1に対応する内筒水槽下端D1及び仕切板3の下端D3が、隣の領域R2の内筒水槽下端D2より下方に延びているため、一の領域R1を沈降するフロックが、隣の領域R2を上昇する分離水に巻き上げられることを抑止でき、処理水を一層清澄にすることができる。
【0044】
図8は、本発明の第5実施形態に係る固液分離装置を示す概略構成図である。
図9は、
図8に示すIX−IX線に沿った概略断面図である。
図10は、
図8に示すX−X線に沿った概略断面図である。
【0045】
本実施形態に係る固液分離装置200は、外筒水槽201と、内筒水槽202とを備えている。固液分離装置200において、内筒水槽202の内側が、被処理水導入部14から導入された被処理水中の固形物を
捕捉すると共に被処理水によりフロックを成長させるフロック成長ゾーンとして構成される。また、固液分離装置200は、内筒水槽202に被処理水を導入する被処理水導入部14を有する。また、外筒水槽201の上部には、外筒水槽201内を上昇した清澄水(上澄水)を排出する処理水排出口19が設けられている。
【0046】
外筒水槽201は、
図1等に示すような外筒水槽のうち、内筒水槽202の外周面に対応する部分(中間領域R)を、複数の流通部203に分割したような構成を有する。流通部203は、上下方向に延びるように内筒水槽202の外周面に設けられている。流通部203は、内筒水槽202の周方向に略等間隔となるように互いに離間した位置に設けられている。本実施形態では、流通部203は4つ設けられているが、特に数量は限定されない。互いに対向する流通部203のうちの一方が下降流ゾーンRDとして構成されると共に他方が上昇流ゾーンRUとして構成される。また、複数の流通部203は周方向において互いに異なる位置に形成されているため、上昇流ゾーンRUと下降流ゾーンRDは上下方向から見たときに異なる位置に形成される。このような構成により、固液分離装置200では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUは分離している。なお、ここでの「分離」とは、下降流ゾーンRDが形成される区画と、上昇流ゾーンRUが形成される区画とが、互いに独立しており、被処理水等の流れが互いに干渉しあわない状態にあることを示す。本実施形態では、各流通部203は周方向に離間しているため、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUが互いに離間することによって分離している。なお、「下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが互いに離間している」状態とは、一の区画に下降流ゾーンRDが形成され、当該一の区画との間に空間等をあけて離れた位置に設けられている他の区画に、上昇流ゾーンRUが形成される状態である。「下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが互いに離間している」状態は、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが分離している状態の中の一態様である。
【0047】
固液分離装置200は、外筒水槽201の底部(第一の底部)201aと内筒水槽202の底部(第二の底部)202aとからなる2重底構造を呈し、分離ゾーンRSが底部201aと底部202aの間にある。それぞれの上昇流ゾーンRUの下端側の領域と下降流ゾーンRDの下端側の領域は分離ゾーンRSを介して連通している。分離ゾーンRSで被処理水から分離されたフロックは、フロック排出部18から外部へ排出される。
【0048】
なお、内筒水槽202の構成は特に限定されず、第1実施形態〜第4実施形態に示すいずれの内筒水槽を適用してもよい。すなわち、
図9に示すように、下降流ゾーンRDに対応する内筒水槽上端U1を、上昇流ゾーンRUに対応する内筒水槽上端U2より低く設定してよい。
【0049】
本実施形態に係る固液分離装置200によれば、第1実施形態に係る凝集沈殿装置100と同様な作用・効果を奏することができる。特に、本実施形態に係る固液分離装置200では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUが互いに離間していている。このような構成により、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとの間の距離を確保することで、分離ゾーンRSでの横流沈殿距離を十分に確保することができる。
【0050】
図11は、本発明の第6実施形態に係る固液分離装置を示す概略構成図である。
図12は、
図11に示すXII−XII線に沿った概略断面図である。ただし、XII−XII線は、固液分離装置300の中心軸において屈曲している線である。
【0051】
本実施形態に係る固液分離装置300は、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが仕切られることによって、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが分離する構造を有している。なお、「下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが仕切られている」状態とは、連続した空間の一部が仕切板等の壁状の部材で区切られることによって複数の区画に分割され、一の区画に下降流ゾーンRDが形成され、当該一の区画に隣り合う他の区画に上昇流ゾーンRUが形成される状態である。「下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが仕切られている」状態は、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが分離している状態の中の一態様である。具体的には、固液分離装置300は、底部(第一の底部)301aを備えた有底筒状の外筒水槽301の内部に底部(第二の底部)302aを備えた有底筒状の内筒水槽302を収容している。固液分離装置300は、底部301aと底部302aとからなる2重底構造を呈し、分離ゾーンRSが底部301aと底部302aの間にある。固液分離装置300は、外筒水槽301と内筒水槽302との間の環状の中間領域を備えている。
【0052】
固液分離装置300は、内筒水槽302の上端から下端まで設けられ、環状の中間領域を周方向に沿って複数の領域に分割する複数の仕切板303が設けられることで、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUを仕切っている。下降流ゾーンRD及び上昇流ゾーンRUは、仕切板303によって区切れた各区画に、周方向に互い違いに設定されている。なお、仕切板303によって仕切られる区画の数は特に限定されるものではない。また、仕切板303によって仕切られる複数の区画は周方向において互いに異なる位置に形成されているため、上昇流ゾーンRUと下降流ゾーンRDは上下方向から見たときに異なる位置に形成される。このような構成により、固液分離装置300では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUが分離している。固液分離装置300において、それぞれの上昇流ゾーンRUの下端側の領域と下降流ゾーンRDの下端側の領域は分離ゾーンRSを介して連通している。その他の構成については、第5実施形態に係る固液分離装置200と同様な構成を有している。
【0053】
本実施形態に係る固液分離装置300によれば、第1実施形態に係る凝集沈殿装置100及び第5実施形態に係る固液分離装置200と同様な作用・効果を奏することができる。特に、本実施形態に係る固液分離装置300では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUが仕切板303によって仕切られている。このような構成により、仕切りを設けるだけの簡単な構成にて、下降流ゾーンと上昇流ゾーンとを分離することができる。
【0054】
図13は、本発明の第7実施形態に係る固液分離装置を示す概略構成図である。
図14は、
図13に示すXIV−XIV線に沿った概略断面図である。
【0055】
本実施形態に係る固液分離装置400は、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUとが分離されていない点で、第6実施形態に係る固液分離装置300と主に相違する。具体的には、固液分離装置400は、底部(第一の底部)401aを備えた有底筒状の外筒水槽401の内部に底部(第二の底部)402aを備えた有底筒状の内筒水槽402を収容している。固液分離装置400は、外筒水槽401と内筒水槽402との間の環状の中間領域を備えている。
【0056】
同一の区画として構成される中間領域のうち、一の部分は下降流ゾーンRDとして機能し、他の部分は上昇流ゾーンRUとして機能する。例えば、
図13に示すように、中間領域のうち、紙面右側の領域は下降流ゾーンRDとして構成され、紙面左側の領域は上昇流ゾーンRUとして構成される。固液分離装置400は、同一の区画の一部を下降流ゾーンRDとして他の部分を上昇流ゾーンRUとするように、水流を形成する水流形成手段を備えている。このように同一の区画の一部を下降流ゾーンRDとして他の部分を上昇流ゾーンRUとする水流形成手段の構成は特に限定されない。例えば、内筒水槽202として第1実施形態〜第4実施形態に示す内筒水槽を適用してもよい。すなわち、下降流ゾーンRDに対応する内筒水槽上端U1を、上昇流ゾーンRUに対応する内筒水槽上端U2より低く設定することによって、水流形成手段が構成されていてもよい。あるいは、水流形成手段として、被処理水の流れを調整する構成を採用してもよい(この場合、
図14に示すように、内筒水槽上端U1と内筒水槽上端U2の高さを同じにしてもよい)。例えば、下降流ゾーンRD及び上昇流ゾーンRUが形成されるように、被処理水の導入位置や角度等の調整が行われた被処理水導入部14が、水流形成手段として構成されていてもよい。あるいは、内筒水槽402内に被処理水の流れを調整する機構を設けることによって水流形成手段を構成してもよい。本実施形態に係る固液分離装置400では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUは分離していない。固液分離装置400において、それぞれの上昇流ゾーンRUの下端側の領域と下降流ゾーンRDの下端側の領域は分離ゾーンRSを介して連通している。その他の構成については、第5実施形態に係る固液分離装置200と同様な構成を有している。
【0057】
本実施形態に係る固液分離装置400によれば、第1実施形態に係る凝集沈殿装置100と同様な作用・効果を奏することができる。特に、本実施形態に係る固液分離装置400では、下降流ゾーンRDと上昇流ゾーンRUが分離していないため、構成を簡単にすることができる。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、凝集剤供給ラインL1を通して原水に凝集剤を供給するようにしているが、この凝集剤を内筒水槽2内に直接供給するようにしても良い。
【0059】
また、上記実施形態においては、中間領域Rを2分割、4分割しているが、これらの分割に限定されるものではなく、複数分割であれば良い。但し、実質的には、偶数分割となる。また、中間領域Rの分割は、均等分割に限定されるものではない。
【0060】
また、上述の実施形態では、第一の底部と第二の底部とからなる2重底構造を呈し、分離ゾーンが第一の底部と第二の底部の間にある固液分離装置について説明した。これに代えて、一重底構造を有する固液分離装置を採用してもよい。例えば、固液分離装置は、内部がフロック成長ゾーンとして構成される水槽と、水槽の外周面に設けられる流通部と、を備えていてよい。流通部は、水槽の径方向において仕切板で仕切られている。流通部のうち、水槽の外周面に近い方の区画が下降流ゾーンとして構成され、水槽の外周面から遠い方の区画が上昇流ゾーンとして構成される。また、仕切板は上下方向に延びており、仕切板の下端部は流通部の底部から上方へ離間している。これにより、水槽の上端から溢流して下降流ゾーンを下降した被処理水は、仕切板の下端部と底部との間の領域を通過して上昇流ゾーンへ流れて上昇する。従って、仕切板の下端部と底部との間の領域が、分離ゾーンとして構成される。このような固液分離装置では、上昇流ゾーンと下降流ゾーンとが水槽の径方向に並んで配置されるため、上昇流ゾーンと下降流ゾーンは上下方向から見たときに異なる位置に形成される。また、上昇流ゾーンの下端側の領域と下降流ゾーンの下端側の領域は分離ゾーンを介して連通している。
【0061】
本発明の一の形態による固液分離装置は、有底筒状の外筒水槽の内部に有底筒状の内筒水槽を収容すると共に外筒水槽の底部と内筒水槽の底部とが離隔する2重水槽構造を呈し、原水及び凝集剤を内筒水槽内の下部に導入し、内筒水槽内からのフロックを、外筒水槽と内筒水槽との間に形成された環状の中間領域において沈降させ、外筒水槽の底部から濃縮フロックを排出する一方で、フロックから分離された処理水を外筒水槽から排出する凝集沈殿装置において、内筒水槽の上端から下端まで設けられ、環状の中間領域を周方向に沿って複数の領域に分割する複数の仕切板を備え、仕切板で仕切られた複数の領域のうちの一の領域に対応する内筒水槽上端を、一の領域の隣の領域の内筒水槽上端より低く設定したことを特徴としている。
【0062】
このような固液分離装置によれば、内筒水槽内には、原水の上昇流によりフロックが成長するフロック成長ゾーンが形成され、フロック成長ゾーンで成長したフロックは、低い方の内筒水槽上端からこれに対応する一の領域に一方的に溢流して、当該一の領域をフロック沈降ゾーンとして下向流に乗ってスムーズに沈降し、外筒水槽内の底部にスムーズに運ばれて堆積すると共に、当該フロックに同伴した水は、外筒水槽内の底部でフロックから分離されて、一の領域と仕切板により仕切られた隣の領域を分離水上昇ゾーンとして上昇流に乗ってスムーズに上昇し上方に運ばれていく。このように、フロックを下向流により沈降させて外筒水槽内の底部に運ぶ一の領域と、フロックから分離された分離水を外筒水槽内の底部から上昇流により上昇させて上方に運ぶ隣の領域とが仕切板で分けられ一方方向の流れが形成されるため、フロックの沈降が上昇流により妨げられたり、フロックが上昇流に乗って上昇してしまうということがなく、従って、処理水のSS濃度を低くでき、処理水を一層清澄にすることができる。
【0063】
ここで、一の領域に対応する内筒水槽下端及び仕切板の下端を、隣の領域の内筒水槽下端より下方に延ばす構成とするのが好ましい。このような構成を採用した場合、一の領域に対応する内筒水槽下端及び仕切板の下端が、隣の領域の内筒水槽下端より下方に延びていることから、一の領域を沈降するフロックが、隣の領域を上昇する分離水に巻き上げられるということが抑止され、処理水を一層清澄にすることができる。
【実施例1】
【0064】
以下、上記効果を確認すべく本発明者らが実施した実施例1及び比較例1について述べる。実証テスト機として、直径30cm、高さ160cmの外筒水槽内に、直径25cm、高さ80cmの内筒水槽を設置したものを使用した。テスト条件は以下の通りである。原水として、カオリン100mg/l+PAC(ポリ塩化アルミニウム)50mg/lを混合調整したもの(原水SS:107.5mg/l)を用い、凝集剤として、アニオン系ポリマーを1.5mg/l添加した。原水は、640l/h通水した。
【0065】
(実施例1)
凝集沈殿装置を、外筒、内筒水槽間の中間領域を4枚の仕切板により均等に4分割した上記第2実施形態に対応するものとし、処理水のSS濃度を測定した。
【0066】
(比較例1)
凝集沈殿装置を、中間領域を仕切板により分割しない従来と同様なものとし、処理水のSS濃度を測定した。
【0067】
実施例1の処理水のSS濃度は1mg/l、比較例1の処理水のSS濃度は8mg/lであり、処理水のSS濃度が低減され清澄な処理水が得られることが確認できた。なお、実施例1では、通常の高速凝集沈殿装置の表面積負荷率(1〜3m/h)より10倍程度高い負荷率(13m/h)が取れることから、凝集沈殿装置の所要面積を従来の1/10程度とすることができる。