(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液滴発生器プレートであって,該プレートを通る複数の開口部を有する液滴発生器プレートに結合された圧電アクチュエータを含む液滴エジェクタアセンブリであって,前記滴発生プレートは前記開口部が流体で満たされたとき,流体で満たされた液滴発生器プレートを規定する,液滴エジェクタアセンブリと,
前記圧電アクチュエータに電気的に結合され,前記圧電アクチュエータを駆動するための駆動信号を発生するように構成された駆動信号発生器と,
前記圧電アクチュエータ及び前記駆動信号発生器に電気的に結合され,前記液滴発生器アセンブリの共振周波数で前記圧電アクチュエータを駆動するための前記駆動信号を制御するように構成されたコントローラと,
を備え,
少なくとも一つのバッテリから電力が前記圧電アクチュエータに供給され,前記マイクロコントローラは,前記バッテリの電圧を監視し,前記バッテリの緩やかな消耗を補償するように構成されるシステム。
前記コントローラは,前記駆動信号発生器が種々の周波数にわたって一組の周波数信号を発生するように制御し,前記減衰信号の効果を監視することによって,前記圧電エジェクタの共振周波数を決定するように構成された共振測定及び制御回路を備える,請求項2に記載のシステム。
前記駆動信号は,少なくとも二つの異なる周波数信号を有し,前記共振周波数は該少なくとも二つの異なる周波数信号間の干渉によって規定される,請求項1に記載のシステム。
駆動信号は,前記液滴発生器プレートに装荷された前記流体の特性,前記液滴発生器プレートの流体装荷量,温度,湿度,圧力の1又は複数の変化による,前記エジェクタアセンブリの共振周波数の変化を考慮して調整される,請求項9に記載の方法。
サイクルごとに同一の振幅係数(電圧)で積分ピーク検出器内のコンデンサを充電するために,周波数ごとに複数の別個のサイクルを立て続けに発生し,前記振幅係数が記録され,前記手続は次の周波数で反復される,請求項22に記載の圧電エジェクタ機構。
前記マイクロコントローラは,前記圧電アクチュエータへエネルギを適切に送り込むのに十分に高い駆動電圧を保証するために,前記駆動電圧を監視するために前記ADCを用いて,不要な噴出を回避するのに十分に低いレベルに前記電圧を維持しつつ,自動調整中に,各駆動信号周波数で定電圧を維持するように構成されている,請求項23に記載の圧電エジェクタ装置。
前記ドライバ電子回路は,二つのNCOを備える駆動回路と,該二つのNCOからの信号を合成して合成信号を規定する論理回路と,該合成信号を受信するための,相補波形発生器(CWG)と,該CWGに接続されたレベルシフタ回路と,前記レベルシフタに接続され,前記流体を噴出するための駆動信号で前記圧電アクチュエータを駆動するように動作可能なフルブリッジとを含む,請求項29の圧電エジェクタ装置。
前記マイクロコントローラは,前記昇圧出力電圧を平衡させ,それによって前記共振タンク内の増幅が定電圧駆動を提供するように,前記昇圧デューティサイクルを常に調整するように構成されている,請求項30の圧電エジェクタ装置。
前記マイクロコントローラは,前記昇圧レールを充電し,次いで,オーバシュート駆動を提供するための高速噴霧用の大規模オーバシュートを引き起こすように前記駆動回路をオンにするように構成される,請求項30に記載の圧電エジェクタ装置。
前記論理回路は,前記二つのNCOからの信号を合成して,調整可能な不感帯を有する二つの逆位相の方形波を前記レベルシフタ回路に供給するために,周期的に前記CWGを無効にする合成信号を規定する,請求項30に記載の圧電エジェクタ装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は概略,エジェクタ装置,及び流体の送出(delivery)におけるエジェクタ装置の使用方法に関する。特に,本発明は,眼への眼科用流体の送出を含む眼科用,局所,経口,経鼻,又は肺への使用のための流体の送出に有用なエジェクタ装置及び方法に関する。要求応答型液滴処置では,1又は複数の流体液滴を所与の時間に噴出(eject)され,所望の質量移動速度及び流体投薬量で,かつビーズ発生及びエジェクタ閉塞が減少した液滴の形態で流体を送出するのに必要なエジェクタ変位及び速度を達成するために本明細書に記載されたシステム及び方法を用いる。
【0009】
背景として,大容量の液滴発生及びエジェクタシステムにおいて,流体はエジェクタの表面上にビーズができて液滴発生用の開口部を閉塞し,時々,数秒から数分までの期間にわたって質量移動を減少させることがある。したがって,流体のビーズ発生及び関係効果が,エジェクタ開口部又はノズルのパターン上に必要な流体の噴出(ejection)速度を提供することを困難にすることがある。これらの課題は,低速モード,又は不利な固有モード形状で動作するときに特に関係する。振動系の固有モード又は通常モードは,系のすべての部分が同じ周波数,かつ固定された位相関係で正弦的に移動する振動又は運動のパターンである。通常モードで説明される運動は共振と呼ばれる。系の通常モードの周波数は,系の固有周波数又は共振周波数として知られている。建物,橋若しくは分子又はこの場合には流体エジェクタ機構のような物理的物体は,その構造,材料及び境界条件に依存する通常モードの集合を有している。噴出される流体はまた,エジェクタ面上の蒸発性膜を形成することがあり,これはエジェクタ性能を相当低下させることがある。
【0010】
ある実施形態においては,エジェクタ装置は,流体の液滴の有向ストリームを発生するエジェクタ機構(例えば,エジェクタプレート及びアクチュエータに結合された液滴発生プレート)と,エジェクタ機構に装荷するための流体供給装置と含む。参照を容易にするために,エジェクタ機構と流体供給装置との組合せをここではエジェクタアセンブリと呼ぶことにする。適切な流体は,限定されないが,エジェクタ機構を用いて,液滴形成が可能な範囲内の粘度を有する,溶液,懸濁液及びエマルジョンを含む。適切な流体はまた,限定するものではないが調剤及び医薬製品を含有する流体を含む。
【0011】
大量の液滴発生及び噴出システムにおける流体の液滴の質量堆積を達成するために,噴射(jetting)を介した連続流体噴出を利用してもよい。連続噴射は,多数の小さな液滴を発生及び噴出することによって,(例えば,0.5〜30μLの範囲の)大量の流体の質量堆積を可能にする。
【0012】
しかし,連続モードで液滴のストリームを噴出することによって,無秩序な噴射,付随(satellite)液滴の再捕捉,及びとりわけ,誘起効果及び摩擦帯電効果によるビーズ発生が生じることがある。エジェクタ開口部の上に位置する流体ビーズは,いったん形成されると,例えば,クーロン引力又は機械的な運動によって,エジェクタ開口部の外面を最終的には濡らすポンプ作用の結果として成長することがある。振動するエジェクタ機構の運動量に加えて,流体自体もまた運動量を増大させて,連続噴出モードの際,又は後述するように,振動期間と噴出期間との間に設けられた緩和期間が不十分なときに成長することがある。
【0013】
このように,本発明によれば,改善された液滴の発生及び噴出技術が,エジェクタ表面上及びエジェクタ開口部を覆う流体ビーズを減少,最小化又は除去するように圧電アクチュエータ(又はほかのアクチュエータ)を駆動するために設けられる。本発明はまた,長期の使用期間にわたって性能を維持するために必要な,噴出アセンブリの表面又はほかの部品に不完全に噴出された流体の薄膜の形成を抑制又は防止する改善された液滴の発生及び噴出技術を提供する。
【0014】
電気駆動信号のタイミング及び圧電エネルギの相殺又は能動型制振によってビーズ発生を抑制又は防止するために,連続噴射運転中の流体の運動量の増大を停止又は減少させる別の技法が開示されている。これらの技法は,限定されるものではないが,正弦波,方形波,ランプ,チャープ,振幅変調及び周波数変調された駆動信号,波形及びそのような波形の組合せを含む,種々の適切な駆動信号の種類の範囲に適用可能である。
【0015】
これらの技法の実施形態においては,液滴は,エジェクタ機構に結合されたリザーバ内に収容された流体から形成される。エジェクタ機構及びリザーバは使い捨て又は再使用可能であってもよく,部品は,米国仮特許出願第61/569739号,第61/636559号,第61/636565号,第61/636568号,第61/642838号,第61/642867号,第61/643150号及び第61/584060号,並びに米国特許出願第13/184446号,第13/184468号及び第13/184484号に記載されているような,エジェクタ装置のハウジング内に入れることができる。
【0016】
例えば
図1を参照すると,エジェクタアセンブリ100は,エジェクタ機構101及びリザーバ120を含んでもよい。エジェクタ機構101は,この実施形態のように,エジェクタ開口部126を含み,中央に位置する発生プレート部が一体として形成されたエジェクタプレート102を備えた振動板装置を含んでもよいし,又はエジェクタプレート102は,エジェクタ機構の一部を構成する圧電アクチュエータ104によって活性化してもよい別の発生プレートに結合してもよい。便宜上,双方の実施形態は,液滴発生器132を有するものとする。アクチュエータ104は,リザーバ120から流体110を,1又は複数の開口部126からの単一液滴112(オンデマンドで液滴)又は1又は複数の開口部126から噴出された液滴112のストリームいずれかとして送り込むために,振動するか,又はエジェクタプレート102を方向114に沿って変位させる。
【0017】
いくつかの応用では,眼科用流体は,例えば,ヒトの大人若しくは子供又は動物の眼116に向けて噴出される。流体は,眼内若しくは皮膚表面,又は鼻若しくは肺へ適用して,ヒト又は動物の不快感,症状,又は疾患を治療するための薬剤を含んでもよい。
【0018】
エジェクタプレート102へのアクチュエータ104の取付け位置もまた,エジェクタアセンブリ100の動作及び単一液滴又は液滴のストリームの発生に影響を与えることがある。例えば,
図1の実現形態では,アクチュエータ104(又はいくつかの個々のアクチュエータ部品104)は,リザーバ120とは反対の面122上の,エジェクタプレート102の周辺領域に結合してもよい。
【0019】
この実施形態においては,エジェクタプレート102の中央領域130は,液滴112を形成するために流体110が通過する1又は複数の開口部126を備えた噴出領域132を含む。噴出領域(又は液滴発生器)132は,中央領域130の一部,例えば中央を占めてもよいし,噴出領域132の噴出穴パターンは,中央領域130の全域を実質的に占めてもよい。さらに,リザーバの開放端138は,噴出領域132の大きさに実質的に対応してもよいし,又は,本実施形態のように,開口領域138は,噴出領域132より大きくてもよい。
【0020】
図1に示すように,エジェクタプレート102は,流体110を入れたリザーバ120の開放端138の上に配置されるか,又は流体連通する。例えば,リザーバ120は,リザーバ壁150に形成された溝内に配置されたOリング148aのような適切なシール又は継手を用いて,第1主表面の周辺領域146に沿って,エジェクタプレート102に結合してもよい。リザーバハウジングの一部144はまた,折り畳み可能な袋(bladder)の形態で提供してもよい。しかし,本発明はそのように限定されず,任意の適切な袋又はリザーバを用いてもよい。
【0021】
電圧がアクチュエータ104の対向面136及び134の上の電極106aと106bとの間に印加されたとき,エジェクタプレート102は,電圧の極性に応じて,
図2(a),(b)にそれぞれ示すように歪んで比較的より凹形状170又は比較的より凸形状172に変化する。
【0022】
交流電圧で駆動すると,アクチュエータ104は,エジェクタプレート102の凹凸形状170及び172を交互に反転するように動作して,エジェクタプレート102の周期的な運動(振動)を誘発する。液滴112は,上記のように噴出領域132の振動運動を伴ってアパーチャ又は開口部126に形成され,例えば,単一液滴(要求応答型液滴)応用,又は液滴のストリームとして,流体送出(噴出)方向114に沿って噴出され1又は複数の液滴を生じさせる。
【0023】
上記のように,駆動電圧及び周波数は,噴出機構の性能を改善させるように選択してもよい。いくつかの実施形態においては,アクチュエータ104の振動周波数はエジェクタプレート102の共振周波数若しくはその付近,又は重ね合わせ,干渉若しくは共振結合による共振でエジェクタプレート102を振動させるように選択された1又は複数の周波数に選択してもよい。
【0024】
共振周波数で,又はその付近で動作するとき,エジェクタプレート102はエジェクタ領域(液滴発生器)132の変位を増幅させ,直結の設計と比較して,アクチュエータの相対的な所要電力を減少させることができる。アクチュエータ104,エジェクタプレート102及び任意の流体が満たされた液滴発生器を含む共振系の減衰係数は,疲労を軽減し,重大な障害なしに耐用年数を増加させるために,圧電アクチュエータの入力電力よりも大きくなるように選択してもよい。
【0025】
エジェクタアセンブリの例は,2011年12月12日に出願の米国仮特許出願第61/569739号”Ejector Mechanism, Ejector Device, and Methods of Use”に示されている。一つの特定の実施形態においては,
図3Aに示すように,また2012年4月20日出願の米国仮特許出願第61/636565号”Centro-Symmetric Lead Free Ejector Mechanism, Ejector Device,and Methods of Use”に記載されているように,エジェクタプレート機構100は環状のアクチュエータ104に結合された回転対称エジェクタプレート102を含んでもよい。しかし,本発明はそれに限定されるものではない。
【0026】
図3Aの特定の構成においては,エジェクタ機構300は,エジェクタプレート302に取り付けられた別個の発生プレート301を含む。アクチュエータ304は,回転対称エジェクタプレート302を駆動するために,上記のように,1又は複数の個々の圧電素子又はほかのアクチュエータ素子を組み込むが,この実施形態においては,環状構造を備える。エジェクタプレート302の液滴発生器(エジェクタ)領域332は中央領域330に開口部326のパターンを含み,以下に説明するように適切な駆動信号発生回路によって,アクチュエータ304を介して駆動される。駆動電圧を発生するための技法の例は,2012年5月15日出願の米国仮特許出願第61/647359号,”Methods, Drivers and Circuits for Ejector Devices and Systems”に示されている。
【0027】
図3Bは,対称エジェクタ機構300の解体図である。この実施形態においては,エジェクタプレート302は,
図3Bの左右に示されるようにそれぞれ背面(フェイスダウン)325及び前面(フェイスアップ)322から,離散(別個の)液滴発生要素(エジェクタ領域)301を利用する。液滴発生器素子301は,中央アパーチャ352の上のエジェクタプレート302に機械的に結合され,上述したように,発生プレートタイプアクチュエータ304によって駆動されると,流体液滴のストリームを発生するように構成された開口部326のパターンを含む。
【0028】
図3Cは,エジェクタプレート302を含む対称エジェクタ機構300の平面図である。エジェクタ機構300は,アクチュエータ304及び液滴発生器301が取り付けられているエジェクタプレート302を含む。液滴発生器は,前述のように,中央領域330に開口部326のパターンを含む。エジェクタ機構300は,対称的に配置されたタブタイプの機械的結合要素355内のアパーチャ351を介して,又は
図1に関して上述したようなほかの適切な接続を用いて,流体リザーバ又はほかの噴出装置部品に結合してもよい。
【0029】
図3Cに示すように,エジェクタプレート302は,約21mm,又は応用に応じて約10mm以下から約25mm以上の範囲内の寸法354を有してもよい。エジェクタプレート302及び液滴発生器301に適した材料は,ステンレス鋼のような柔軟で応力(ストレス)及び疲労に耐性のある金属を含むが,これらに限定されない。
【0030】
オリエンテーションのために,
図3A〜
図3Cに示すエジェクタ機構300の種々の要素は,
図1に関して上述したリザーバ320のようなリザーバの位置に対して説明することができる。一般に,機構300の近位要素は,流体リザーバ120(
図1)により近い位置に配置され,液滴ストリーム又は噴出方向114に沿って規定された遠位要素は,流体リザーバ120からより遠い位置に配置されている。
【0031】
図4に示す特定の実施形態においては,エジェクタアセンブリ400は,流体リザーバ420に隣接する第1の主要な(近位)面425,及び流体リザーバ420の反対側の第2の主(遠位)面422を備える。本実施形態における圧電アクチュエータ404は,振動板402の近位表面425に取り付けられたリザーバ420と共に遠位要素として形成される。代替として,アクチュエータ404は,リザーバ420の周りの遠位表面425上のエジェクタプレート402に結合してもよい。
【0032】
近位及び遠位表面436並びにアクチュエータ404は,上述のように,例えば,駆動信号のための下部電極と,上部電極106a及び106b(
図1参照)とを提供する導電層460を備えている。
図4に示すように,アクチュエータ404の近位表面436上の導電層460は,誘電体層462によって遠位表面又はエジェクタプレート402の側面422から分離され,振動エジェクタプレート402が接地され,アクチュエータ404の導電層460から電気的に絶縁されるようにする。アクチュエータの遠位側434において,上部導電層(又は駆動電極)から金属化層461を隔てるように,追加の誘電体層462を設けてもよい。この電気的に絶縁された金属化層461は,本発明のある実施形態において,当該金属化層が逆起電力(EMF)測定のための電気的に絶縁された電極として作用できるようにする。ほかの実施形態においては,逆EMF測定のための別個の接点は,以下で更に説明する電極106a及び106b上の電圧レベルを用いることによって除去してもよい。
【0033】
図4に示すように,振動エジェクタプレート402はリザーバ420と流体連通して配置され,近位表面又は側面425は,流体410と接触する。付加コーティング層463をアクチュエータ404の露出した(上面及び側面の)表面上に形成してもよく,アクチュエータ404と,リザーバ420から噴出された任意の流体410との間の接触を防止するために,エジェクタプレート402の遠位表面422の少なくとも一部を含んでもよい。いくつかの実現例においては,エジェクタプレート402及び発生器プレート(又はエジェクタ領域)432の一つ又は双方は,不活性,医療グレード,非毒性,非反応性,及び任意選択で酸,塩基及び溶剤に耐性のある材料465,又はそのような特性の適切な組合せを有するほかの材料で被覆してもよい。
【0034】
コーティング463及び465は同一でも異なっていてもよく,例えば,スパッタ,蒸着,物理蒸着(PAD),化学蒸着(COD),静電粉体堆積,又はこのような技法の任意の適切な組合せによって,個々に又は任意の組合せで適用してもよい。コーティング463及び465は,例えば,ポリプロピレン,ナイロン,高密度ポリエチレン(HDPE),TEFLON(登録商標)などのポリマ材料,及び限定されるものではないが,金,白金及びパラジウムを含む共形コーティング及び金属コーティング材料を含んでもよい。コーティング463及び465は,約0.1μm以下から約500μm以上の厚みの範囲で,振動エジェクタプレート402,発生プレート432及びアクチュエータ404の表面の任意の組合せに個別に又は一緒に適用されたとき,高周波で振動したときの層間はく離を防止するために充分接着するように選択してもよい。
【0035】
圧電機構のアクチュエータを駆動するために,駆動回路によって駆動信号又は駆動波形を発生する必要がある。このような駆動信号を提供する際に,本発明に従っていくつかの要因が考慮された。特に,駆動信号の周波数における機械共振の品質要因だけでなく,駆動信号の周波数及び振幅を含む種々の要因が変位した機械負荷の速度に影響を与えることがある。駆動信号の周波数,振幅又はその双方が増加すると,機械的な負荷が増加する。しかし,動作周波数が高いほど変位速度が増加し,平均電力もまた高くなる。高い周波数で動作するために必要な追加の電力は,ある応用においては望ましくないことがある。圧電材料及び圧電駆動素子は,機械的作動が最大となる共振領域を示す。最小量の電気エネルギを用いて圧電素子又は圧電機構(例えば,エジェクタプレート及び流体を満たした発生プレートのような負荷に結合された圧電素子)の最大変位を生じさせるために,これらの周波数の電気駆動信号を提供することが望ましい場合が多い。しかし,共振状態で,圧電素子は完全に,又は部分的に抵抗性になり,圧電アクチュエータに大量のエネルギを消散する。圧電素子はまた,容量性モード動作の有益なエネルギ消散特性を失い,共振コンバータ回路における圧電素子の効率を低下させる。したがって,同時にシステムのエネルギ効率を高めつつ,圧電アクチュエータに結合された機械的荷重の最大変位及び変位速度を提供する,本明細書に記載の改善された装置,方法及びシステムの必要性が依然として存在する。このことは,利用可能な電力が制限されることがあるバッテリ駆動システムにおいて特に重要である。本発明によれば,流体が満たされたエジェクタ機構は,圧電アクチュエータ自体とは異なる振動膜モードを有する膜として扱われる。圧電アクチュエータの共振は,セラミック自体の最高の運動/機械駆動力を有する周波数であり,セラミック/圧電共振自体に基づいていない膜モードがある。圧電アクチュエータは単に強制機能(forcing function)を発生し,膜内の損失が低いほど,運動は活発になる。システムがこれらの膜モードのいずれかで駆動されたとき,圧電アクチュエータはほぼ完全なコンデンサになり,コンデンサとしての圧電アクチュエータに対する入力電圧又は電流の高Qの増幅を可能にする。これは,圧電アクチュエータを加熱することなく,大幅にエネルギ消費を減少させ,素子に対して非常に高い電圧及び電流の送達を可能にする。
【0036】
さらに,種々の要因が,圧電アクチュエータに印加される駆動信号,圧電アクチュエータに結合された機械負荷,又は圧電アクチュエータを取り巻く周囲温度,圧力及び湿度のような圧電素子の共振特性及び電気的特性を変えることがある。本来,共振周波数で動作するように駆動される圧電アクチュエータは,これらの要因の1又は複数によって共振からずれ,これが圧電アクチュエータの効率的な動作を低下させ,潜在的に機械負荷の変位を減少させることがある。したがって,圧電アクチュエータ及び関係する機械負荷を備える電気機械系の共振を検出することができ,システムがもはや共振モードで動作しないとき,修正アクションを提供して圧電アクチュエータ及び/又は機械負荷を再び共振させる,本明細書に記載の装置,方法及びシステムに対する必要性が依然として存在する。
【0037】
本発明によれば,温度,湿度,圧力変動,及び製造公差を補償するために,最大変位,又は共振モードを追跡するための方法及び回路が提供される。さらに,共振系の帰還部の一部としてアクチュエータ電極を用いて,絶縁された帰還電極を用いることなく共振を追跡することが本明細書中に記載されている。別個の絶縁帰還電極を除去することによって,素子に応じて噴霧は明らかに10〜50%増加する。一実施形態においては,以下詳細に説明されるように,この技術は,フルブリッジ回路及び共振コンバータ回路のQファクタ掃引と共に使用される。
【0038】
本発明のある実施形態においては,圧電素子若しくはいくつかの結合された素子又はエジェクタ機構の電気的及び/又は機械的共振を励起し,検出し,特徴付ける手段が提供される。エジェクタ機構のような電気機械機構が共振になると,エネルギが電気機械機構に蓄積され,非共振の電気機械的,電気的,又は機械的な機構とは異なる速度で噴出される。さらに,電気機械機構の共振が時間的に電気信号の積分器として機能して,印加される電気信号に応じていくつかの一意の署名を発生できるようにする。
【0039】
ある実施形態においては,単一周波,多周波,チャープ,任意波形,又は1又は複数の周波数を含む任意の電気信号であってよい電気信号が圧電素子に印加される。この電気信号を発生する回路は,意図された電気信号の周波数で,電力,すなわち電圧及び電流を伝達する任意の回路であってよい。電気信号が規定された時間だけ印加された後,急に停止される。圧電アクチュエータに残っている電気信号は,次いで,電流,電圧,又は電力のいずれかの測定によって測定され,高速フーリエ変換(FFT)のような数学的な処理のために記録されるか,又はアナログエネルギ積分回路に直接印加されるかのいずれかである。アナログ積分器は,規定された波形に対して相関させるためにスイッチをオン・オフすることができてもよいし,又は単にエジェクタに蓄積されているすべてのエネルギを積分してもよい。元の電気信号並びに電気機械系の機械的及び電気的特性に依存する電気機械共振の署名が取得される。[00106]さらに,特に液滴エジェクタシステムに関して,適切なサイズ及び十分な噴出速度を有する液滴を発生するために,圧電アクチュエータの駆動信号はかなりの大きさでなければならない。液滴発生器噴出システムに便利に取り付けることができるバッテリは,圧電駆動するのに十分な電圧を発生しない。したがって,バッテリパックの容易さ及び可搬性を維持しつつ,液滴発生噴出システムに電力を供給するためのシステム,方法及び装置の必要性が残っている。
【0040】
図5は,例えば,液滴発生器システムにおいて用いてもよいように,圧電アクチュエータ540を用いるためのシステム500の一実施形態を示す。
図5に示すように,システム500は,バッテリのような電源510と,電子ドライバ520,すなわち,圧電アクチュエータ540に駆動電圧又は信号530を発生する役割をする回路と,圧電アクチュエータ540と,圧電アクチュエータ540が結合されている機械負荷550と,を含んでもよい。圧電アクチュエータ540は,米国仮特許出願第61/569739号,第61/636559号,第61/636565号,第61/636568号,第61/642838号,第61/642867号,第61/643150号及び第61/584060号,並びに米国特許出願第13/184446号,第13/184468号及び第13/184484号に記載に記載され,また上述されているように,流体の液滴を形成する液滴発生器プレートのような種々の機械負荷550を駆動するために用いることができる。
【0041】
ある実施形態においては,
図5に示すように,圧電アクチュエータ540に共振検出及び制御回路560を結合することが望ましいことがある。この回路560は,いつ電気機構570(アクチュエータ540及び負荷550)全体がもはや共振モード,すなわち,機構570が,負荷550の最大又は増加した機械的変位を発生するモード,で動作していないかを検出するために用いることができる。回路560はまた,周波数を制御するため,例えば,周波数を共振周波数に戻すために,ドライバ520に帰還を提供してもよい。本発明による電源,ドライバ,コンバータ,波形のほかの実施形態は,上述の参考文献に提示されている。
【0042】
以下で更に詳細に説明するが,一実施形態においては,フルブリッジ回路は,圧電エジェクタ機構を駆動するために使用される。圧電素子の各々の側の電位(電圧)は電源電圧の間で交番され,電源電圧は,ブーストコンバータ,共振コンバータ,バックブーストコンバータ,変圧器,又は電圧変換器の出力及び接地であり,所与の周波数で軽便(portable)な動作を可能にする。単一周波数でわずか1サイクルだけ駆動することによってエネルギは圧電エジェクタ機構に蓄積され,駆動信号が停止したとき電圧の形で回路に逆に解放される。
【0043】
したがって,駆動信号が停止したとき,圧電アクチュエータは負荷ではなく,信号源として支配的に動作する。電気機械機構(その圧電素子を含むエジェクタ機構)のエネルギは,電圧として電気回路に戻るか,機械系の摩擦及び電気的損失によって消散されるか,のいずれかである。
【0044】
どのように電気エネルギを除去し,及び/又は消散させるかを決定するが三つの場合が存在する。エジェクタに付加された回路が開放(トライステート)である場合,圧電アクチュエータはドライバのFET容量による振動によってエネルギを交換するか,又は単に機械損失及び内部電気損失によって消散させる。エジェクタに接続された回路はまた短絡させてもよく,これはエジェクタにそのエネルギを迅速にシステムの接地に排出させる。その代わりに,回路は,エジェクタに有限の電気負荷を提示する可能性があり,これは制御されたエバネセント振動を起こす。
【0045】
開放かつ有限の負荷の場合には,エジェクタの出力電圧をサンプリングすることは,流体噴出に相関するエジェクタ機構の運動の尺度を提供する。電流サンプリングは,運動追跡を提供するために短絡を用いる場合に用いてもよい。これらの場合のいずれにおいても帰還電極は必要なく,そのため,
図4の実施形態の層461のような別個の金属化層を提供する必要性を回避できる。
【0046】
電源510は,ドライバ520に電力を供給することができる,適切なバッテリを含む任意の適切な電源であってもよい。図示していないが,所望であれば,システム500は,複数の電源,又は代替若しくは補助の電源を含んでもよい。電源510の特性に応じて,最終的に,圧電アクチュエータ540に電力を供給するために電源510の出力電圧を昇圧する必要があることがある。
【0047】
上述したように,本発明によるいくつかの実施形態においては,電源510の出力電圧は,例えば,負荷としての圧電アクチュエータ540を含むブーストコンバータ又はバックブーストコンバータによって昇圧してもよい。本発明の修正されたバックブーストコンバータの一実施形態を
図6に示す。
【0048】
この変換器は,DC−DC変換ではなく,DC−AC変換を行う。この変換器は,コンデンサ(圧電アクチュエータ600によって規定される)へ電荷を持ち込む働きをし,そしてすべての電荷を取得してバッテリ602に逆に注ぎ込む。高速回復ダイオードD1,D3を,ボディダイオード障害を防止するために含めてもよい。ドライバは,電源入力から接地へのインダクタL1と直列に接続されたP−MOSFET T1と,インダクタL1とP−MOSFET T1との間に直列に接続された圧電アクチュエータと,接地に接続されたN−MOS T2とを含んでもよい。N−MOS T2は,主要(body)ダイオード障害を防止するための高速回復ダイオードD1を有することが望ましい。P−MOSFET T1がオフに切り替わると,電流はインダクタL1を通じて流れ続け,N−MOSFET T2の上の出力電圧は負に低下し,電流はN−MOSFETと並列のダイオードD1を通って導通する。すべての電流は圧電アクチュエータに蓄積され,圧電アクチュエータの上の電圧は,ゼロからインダクタL1を通って増加する電流によって決定される値になる。この電圧は,式V=Q/Cに従うインダクタL1内の電流によって蓄積される電荷に基づいて計算してもよい。ここで,Qは電荷であり,Cは電気容量である(Vは電圧)。一実施形態においては,サイクルの終わりで,N−MOSFET D2は圧電アクチュエータ電圧を接地に戻すようにオンに切り替えることができる。このサイクルは,意図された駆動周波数で繰り返すことができる。回路はバックブーストコンバータによって,等価な電圧を発生しつつ,ブーストコンバータと比較してより効率的(50%未満の電流使用,又はそれより良い)である。この回路は,同じ駆動電圧のために必要な電流が大幅に少ない。しかし,この構成を用いることの欠点は,FETのドレイン−電源間電圧Vdsの制限によって,約80〜100ボルトの振幅信号に限定されることである。
【0049】
別の実施形態においては,フルブリッジと共に使用される修正されたブーストコンバータ(
図7に示す)(
図15に関して以下で更に説明する)と,共振コンバータの駆動(
図8に示す)とが,信号振幅を増加させ,所望のオーバシュート能力(すなわち,100〜170ボルト)を提供するために使用された。
図8に示す共振コンバータの実施形態は1又は複数のインダクタ800を含む。インダクタは,負荷として機能する圧電アクチュエータ(コンデンサ802によって示される)に増加した電圧増幅をもたらす共振コンバータを作成するために追加される。したがって,この実施形態においては,DC−AC−DC遷移における最後のDC部分の無い共振コンバータとして機能する共振タンクを駆動するためにフルブリッジが使用される。
【0050】
ブーストコンバータを利用する駆動回路の一実施形態を
図9に示す。以下に説明する種々の実施形態において,同様の要素は同じ参照番号を用いて参照される。
図9の実施形態に示すように,電源510はブーストコンバータ900に結合され,次に,電荷保持コンデンサ910を含むか,結合されてもよい。ブーストコンバータ900は,電源510からの電源電圧を昇圧し,圧電アクチュエータ540を駆動するのに必要な電荷及び電圧を供給するためにコンデンサ910を充電するために用いてもよい。ブーストコンバータ900は,圧電アクチュエータ540に正しい電界が印加されるように電圧を変化させ,したがって,電力ではなく電圧が強化される。非限定的な例として,電源510はブーストコンバータ900に2.7Vを供給し,60Vまでのコンデンサ910の出力電圧を提供してもよい。本明細書による電源のほかの実施例がここに提示される。帰還信号580は共振検出及び制御回路560によって使用されて共振周波数を決定し,任意選択でドライバ520によって提供される周波数を制御するための帰還を提供する。
【0051】
本発明によれば,ドライバ520は,概略,圧電アクチュエータ540への駆動信号530を発生し,制御するように構成してもよい。本発明によるドライバ520の更なる実施形態を以下に説明する。機構570全体の所望の特性に応じて,ドライバ520は,いくつかの異なるモードのいずれで動作させてもよい。例えば,ある実施形態においては,本明細書に記載のドライバ520は,(1)以下,「エンベロープモード」と題する章において更に詳細に説明する,ビート周波数が機械共振である機械/電気共振外の二つ以上の周波数,又は(2)以下,「ベッセルモード」と題する章において更に詳細に説明する,別個の機械共振の二つ以上の周波数で動作する多周波駆動信号530を発生するように構成してもよい。もちろん,これらのドライバはまた,単一の共振周波数のような単一の周波数を駆動するように構成してもよいことを理解されたい。ドライバはまた,増加した機構速度を誘起するために,方形波の高調波を有するシングルモード又はマルチモードを駆動する方形波を提供してもよい。特定の実現形態をここで説明する。
【0052】
一実施形態においては,同時に,圧電アクチュエータ540の容量効果を維持し,全体の電力消費を最小化しつつ,機械負荷550の変位量が大きくなるように,圧電アクチュエータ540を駆動することが望ましい場合がある。一実施形態においては,ドライバは,「エンベロープモード」で動作してもよい。このような実施形態においては,ドライバ520は,ビート周波数が機械共振状態にある,電気的/機械的な共振からはずれた二つ以上の周波数で動作するように構成されていてもよい。
【0053】
前述のように,ある実現形態においては,圧電アクチュエータは,機械負荷の最大変位を提供するために,共振状態で駆動してもよい。このように,駆動信号530は,共振周波数の整数倍に基づいてもよい。すなわち,圧電アクチュエータ540を調和的に駆動してもよい。しかし,理論によって制限されることなく,負荷のインピーダンスが周波数と共に変化するとき,あるより高い動作周波数が,圧電アクチュエータが,コンデンサより抵抗のように振る舞う効果を有してもよいため,より高い基本動作周波数を有する信号が電力消費の増加をもたらす可能性があることを,当業者であれば理解するであろう。本発明のある実施形態において,ドライバ520は,代替として,圧電アクチュエータ540を駆動するために2以上の信号を交互に合成してもよい。入力信号の周波数及び振幅は,ほぼ理想的な容量性の振舞などの有益なエネルギ及び回路の利点を同時に維持しつつ,機械負荷の変位を増加させるように選択してもよい。信号特徴選択は,例えば,機械負荷の所望の変位に依存してもよい。
【0054】
一般に,
図10に示すように,本発明によれば,ドライバ520は,合成回路1020に結合された二つ以上の入力信号1010a,1010b,1010c,などを含んでもよい。合成回路1020は,二つ以上の電気信号を合成された2周波(two−tone)又は多周波(multi−tone)信号530を合成するのに適した電子機器の任意の形態,例えば,入力信号1010a,1010b,1010c,などのすべて又は部分集合の和及び/又は差を発生するのに適した電子機器であってもよい。合成した駆動信号530は,圧電アクチュエータ540に直接結合してもよいし,又は,任意選択で,インピーダンス整合回路(図示せず)に結合し,該回路は次に圧電アクチュエータ540に結合してもよい。これによって(ドライバ回路の出力インピーダンスに対する圧電アクチュエータ540の)インピーダンス整合が可能になる。
【0055】
システムのある特性を最適化するように,入力信号1010a,1010b,1010c,などの周波数を選択してもよい。例えば,二つ(又はそれ以上)の非共振周波数を有する圧電アクチュエータ540を駆動することによって,圧電アクチュエータ540内のエネルギ消費を最小化することができる。ある特定の一実施形態においては,二つ以上の周波数の差又は和,すなわち,1又は複数の合成駆動信号530の周波数が圧電アクチュエータ540の共振周波数に等しいように,入力信号1010a,1010b,1010c,などを選択することによって,圧電アクチュエータ540を間接的に駆動することが望ましいことがある。理論によって限定されるものではないが,異なる周波数を有する二つ以上の電気信号が組み合わされるとき,それらは差,和及び相互変調周波数で周期的に建設的及び破壊的に干渉することを理解されたい。
【0056】
干渉のこの特性は,振幅及び位相の重み付けと組み合わせて,得られた建設的及び破壊的な干渉が,圧電アクチュエータ540の1又は複数の共振周波数を提供し,負荷550の最大物理変位xになるように利用してもよい。このように,ドライバ520は,圧電アクチュエータ540の共振機械運動を間接的に引き起こすことがある。
図11は,2周波ドライバ520の一例の時間変化する電圧出力530を示している。一つの実施形態においては,二つ以上の入力信号1010a,1010b,1010c,など(それぞれ非共振周波数を有する)がシングルモードドライブと同じ合成最大振幅で駆動される。個々の信号は,共振周波数よりも低い周波数であるため,これによってシングルモードドライブに比較して,電力消費が減少する。したがって,圧電材料は共振周波数よりも低い周波数で高いインピーダンスを有するため,合成の高周波から恩恵を受ける。
【0057】
さらに,二つ以上の非共振周波数で圧電アクチュエータ540を駆動することによって,圧電アクチュエータ540の電気的特性は,依然として機械共振及び増加した変位を生じつつ,完全に容量性に維持することができる。これによって,圧電アクチュエータ540を共振コンバータに直接使用することが可能になり,1又は複数のインダクタ内のエネルギを取り戻すことによって,圧電アクチュエータ540のエネルギ損失を更に減少させる。
【0058】
本発明の実施形態による「エンベロープモード」で動作するドライバは,圧電液滴噴出システムにおける液滴噴出及び低消費電力を改善することができる。これらはさらに,液滴エジェクタシステムから噴出させることができる流体の粘度の範囲を拡張することができる。このような応用における例示動作周波数は,1kHzから5MHzの範囲,例えば,43kHzから175kHzであってもよい。本明細書に記載されるドライバを用いて,システムは,流体のビーズ発生を減少させ,システムが噴出可能な粘度の範囲を増加させる複数の高変位周波数をサポートすることができる。
【0059】
別の実施形態においては,本発明によるドライバは,「ベッセルモード」で動作してもよい。ドライバ120は,別個の機械共振の二つ以上の周波数で動作するように構成してもよい。
【0060】
上述の動作モードと同様に,また
図10に示すように,本発明によるドライバ520は合成回路1020に結合された二つ以上の入力信号1010a,1010b,1010c,などを含んでもよい。合成回路1020は,二つ以上の電気信号を合成された2周波又は多周波信号530に合成するのに適した電子回路の任意の形態,例えば,入力信号1010a,1010b,1010c,などのすべて又は部分集合の和及び/又は差を発生するのに適した電子機器であってもよい。合成した駆動信号530は,圧電アクチュエータ540に直接結合してもよいし,又は,任意選択で,インピーダンス整合回路(図示せず)に結合し,該回路は次に,圧電アクチュエータ540に結合してもよい。これによって負荷(すなわち,圧電アクチュエータ540)のインピーダンスとドライバ回路520のインピーダンスとの整合が可能になる。共振を測定するために,共振周波数を決定し,任意選択でドライバ520によって提供される周波数を制御するための帰還を提供するために帰還信号580が共振検出及び制御回路560によって使用される。
【0061】
ドライバ520がベッセルモードで動作する実施形態においては,入力信号1010a,1010b,1010c,などの周波数は,システムの異なる特性が最適化されるように,エンベロープモードについて上述したものと異なる。エンベロープモードの実現形態では,入力信号1010a,1010b,1010c,などが特に非共振周波数に選択されて合成され,
図11に示す共振ビート周波数を発生する。ベッセルモードの実施形態においては,以下に更に詳細に説明する理由によって,入力信号1010a,1010b,1010c,などは,それ自体が圧電アクチュエータ540及び機械負荷550の明確な共振周波数である。さらに,ベッセルモードで動作するドライバは,特に非矩形負荷550で動作するように最適化されている。
【0062】
理論によって限定されるものではないが,一般に,電気機械系の共振モードは共振周波数の整数倍,すなわち,高調波であると仮定されると理解される。しかし,機械負荷550又は圧電アクチュエータ540のいずれかが,それ自体非矩形であるとき,エジェクタ機構の固有モード,すなわち,機構全体が同時に振動する周波数は,高調波の電気信号530を用いて容易に発生できる整数倍で発生しない。これは,矩形でない形状のための圧電アクチュエータ540及び機械負荷550の最適な駆動を妨げる。反対に,円形又はほぼ円形の機械負荷550の場合は,共振周波数は,ベッセル周波数,すなわち,ベッセル関数の解を乗じた共振周波数で生じる。したがって,ベッセルモードで動作する実施形態の場合は,ドライバ520は,ベッセル周波数を有する二つ以上の入力信号1010a,1010b,1010c,などを用いることによって,円形又はほぼ円形の機械負荷550の最大変位を提供するように最適化することができる。
【0063】
ある実施形態においては,入力信号1010a,1010b,1010c,などの振幅及び周波数は,システム500は,より低い共振周波数での機械負荷550の変位を改善し,より高い共振周波数での機械負荷550の変位速度を改善するように選択してもよい。例えば,液滴発生器応用において,ベッセルモードの入力信号1010a,1010b,1010c,などは,流体噴出を容易にするために,電気駆動信号520に対して最適な位相関係を維持しつつ,薬液の機械的変位及び液滴変異の速度の双方を最適化するために,所望の形状因子を有する別個の固有モード間で振幅の重み付けをして駆動してもよい。このようにして選択された二つの(又はそれ以上の)入力信号1010a,1010b,1010c,などを組み合わせることによって,システムの全体的な品質を改善させることができる。すなわち,より低い周波数モードは,高周波モードを強化し,各信号の全体的な電力は,シングルモード信号に比べて減少させることができる。
【0064】
一例に過ぎないが,液滴エジェクタ機構は,50kHz及び165kHzのベッセル共振モードを有してもよい。50kHzだけで駆動するとエジェクタ機構の5μmの変位が得られ,165kHzだけで駆動すると800nmの変位が得られるが,より高い速度及び改善された噴霧特性も得られる。しかし,本発明によるシステムにおいては,双方のモードを同時に駆動してもよい。半分の電力で双方の信号を流すと,50kHzのモードから2.5μmの変位,及び165kHzのモードから別の400nmの変位の双方が得られ,合計すると165kHzの信号だけで提供できる800nmよりもずっと高い2.9μmが得られ,165kHzの信号に関係付けられた改善された変位速度及び噴霧特性を有する。また,噴霧は215kHz(すなわち,信号の和)及び115kHz(すなわち,信号の差)のビート周波数で周期的に増強される。これは,流体のビーズ発生を抑制しつつ,液滴エジェクタ機構が噴出可能なシステムのピーク速度及び粘度の範囲を増加させる。
【0065】
当業者であれば,これはモードの組合せの一例に過ぎず,異なるシステム要件を満たすように,ほかの多くの動作モードが選択できることを理解するであろう。各ベッセルモード(異なる周波数)はある速度及び変位を有する。したがって,より低周波のモードは低い速度を有するが,より高い変位を有することができる。
【0066】
本発明によれば,噴霧は変位と周波数(速度)との組合せによるものである。複数の周波数を用いることによって,双方の態様を増強できる。一実施形態においては,例えば,各電気駆動周波数の振幅を半分に減少させることによって,共振噴出のための正しい電気的及び機械的な位相を維持しつつ,低周波,高変位の低噴霧モードによって391kHzで動作する液滴噴出機構に見られる全変位を1700nm以上に増加させることができる。また,高粘度流体噴出を提供するのに必要なエネルギ量が,シングルモードドライバを用いる場合と比較して低下する。
【0067】
図10に示すように,本明細書に記載されたエンベロープモード及びベッセルモードの双方で動作するドライバは,同一の論理及び電子部品を用いて実現することができる。上述したように,システム500の動作,すなわち,エンベロープモード又はベッセルモードは,機械共振の品質係数だけでなく,回路に印加される信号の周波数及び振幅に依存する。
【0068】
ドライバのほかの実施形態を以下に説明する。
図12の実施形態において,ドライバ520は交流(AC)電源1200a,1210bによって電気信号1210a,1200bを提供し,電気信号はその後,周波数ミキサ1220で加算される。これらのAC電源は,所望の周波数及び振幅で信号1210a,1210bをそれぞれ発生するように選択してもよい。一実施形態においては,合成された信号1220は増幅器1230に結合される。増幅器は,圧電アクチュエータ540を作動させるために大出力の電圧,電流又は電力が必要な場合,電源510,又は代替としてAC/DCコンバータ又はDC/DCコンバータのような電力変換装置1250に結合してもよい別個の電源1240によって電力を供給してもよい。このような増幅器1230は線形又は非線形であってもよく,シングルエンド型又は差動型であってもよい。帰還信号580は,共振周波数を決定し,任意選択でAC電源1200a,1200bによって提供される周波数を制御するための帰還を提供するために,共振検出及び制御回路560によって使用される。
【0069】
図13は,本発明によるドライバ520の別の実現形態を示している。この実施形態において,ドライバ520は,1又は複数の信号源又は別個の周波数410a,410bを有する数値制御発振器(NCO)1300,1302を含むことができる。これらの信号源1300,1302によって発生された信号1310a,1310bは,次にORゲート又はほかのデジタル論理回路1320においてデジタル的に加算されて,パルス幅変調(PWM)を行うことと類似する多周波信号を発生することができる。そして,
図13に示すように,結果として生じる信号1330は,圧電アクチュエータ150の両端にシングルエンド駆動信号130を発生するために,ハーフブリッジ回路1340を駆動するために用いてもよい。ブリッジ回路1340は,電源110又は別の電源1342から,任意選択で電力変換装置1350を介して給電してもよい。帰還信号580は,共振周波数を決定し,任意選択でNCO1300,1302によって供給される周波数を制御するための帰還を提供するために,共振検出及び制御回路560によって使用される。
【0070】
別の実施形態においては,
図14に示すように,ドライバ520は,別個の周波数1410a,1410bを有する1又は複数の信号源又は数値制御発振器(NCO)1400,1402を含むことができる。これらの信号源1400,1402が発生した信号1410a,1410bは,多周波パルス幅変調(PWM)信号を発生するために,ORゲート又はほかのデジタル論理回路1420においてデジタル的に加算してもよい。そして,
図14に示すように,結果として得られる信号1430は,二つのハーフブリッジ回路1440a及び1440bを駆動するために用いてもよく,フルブリッジドライブを形成するために,ハーフブリッジ回路1440bには出力1430の逆相バージョンを提供するためにインバータ1480を介して供給される。ブリッジ回路1440a,1440bは,電源110又は別の電源1442から,任意選択で電力変換装置1450を介して給電してもよい。帰還信号580は,共振周波数を決定し,任意選択でNCO1400,1402によって供給される周波数を制御するための帰還を提供するために,共振検出及び制御回路560によって使用される。
【0071】
当業者であれば,二つの別個の供給源及び適切な論理回路を,ハーフブリッジドライブ間の位相及び不感時間を制御するために用いてもよいことを理解するであろう。
図15は,このようなフルブリッジドライブ1501を実現する回路図の一実施形態を示す。ここでマルチプレクサ1590a,1590bは,NCOから,それぞれ,追加の非反転制御ライン入力1592a,1592bを受信し,それぞれ,反転制御ライン入力1594a,1594bを受信する。マルチプレクサ1592a,1592bは,合成された二つの周波数信号がフルブリッジを駆動するか,又は別個の周波数がフルブリッジの両半分を駆動するかいずれかを可能にする。制御ラインは,例えば,単一のNCO及びインバータを用いて,単一の周波数でフルブリッジの両半分を駆動するか,又は図示した構成における同じ周波数であるが逆位相の二つのNCOを用いる,別個の動作モードを可能にする。
図16は,本発明によるドライバ520の更に別の実施形態を示している。この実施形態において,ドライバ520は,例えば,駆動信号530のデジタル表現を組み込んだ波形データベース1600を含む。波形データベース1600は,対応する電気信号1620に変換するためのデジタル・アナログ変換器(DAC)1610のための任意の単一周波(single−tone)又は多周波デジタル波形信号を発生するために利用することができる。この信号1620は適宜に給電された(
図16に示すように,電源510又は別個の電源1640によって給電された)増幅器1630によって増強してもよい。増幅器1630は,線形又は非線形であってもよく,シングルエンド型又は差動型であってもよい。得られた駆動信号530は,次に,機械負荷550,例えば,流体を装荷したエジェクタプレート又は液体で満たされた液滴発生器を備えたエジェクタプレートを駆動するために,圧電アクチュエータ540に印加される。帰還信号580は,共振周波数を決定し,任意選択で,データベース1600によって提供される周波数の選択を制御するための帰還を提供するために,共振検出及び制御回路560によって使用される。
【0072】
図17は,フルブリッジドライバ及び共振測定回路を提供する,本発明によるドライバ120の回路の一実施例の回路図を示す。この実施形態において,ドライバ120は,駆動信号1804及び反転駆動信号1806を用いてシステムの駆動周波数で圧電アクチュエータ(エジェクタ)の電極間で正電圧Vboostを切り替える第1のPMOS/NMOS対1800,1802を備える。第1のPMOS/NMOS対1800/1802は,信号1810によってアクチュエータの第1又は正側を駆動する駆動周波数は,例えば,1Hzから10MHzまでの範囲であってもよく,Vboost電圧は,例えば,6ボルトから75ボルトまでの範囲であってよい。出力1810の電圧はトランジスタ1812によって制御され,該トランジスタは
図18の拡大図に示されているTEP測定回路の一部として,時間エネルギ積(TEP)帰還信号1814によって制御される。これは,以下でより詳細に説明するように,圧電アクチュエータからの出力信号を監視するために,ドライバからの信号を分離することを可能にする。
【0073】
ドライバはさらに,信号1820によってアクチュエータの第2又は負側を駆動する第2のPMOS/NMOS対1814,1816を含む。ドライバへの駆動電圧1820は,トランジスタ1822をオフすることによって制御される。圧電アクチュエータからの出力電圧の監視中に,駆動電圧がADC(図示していないが,その位置は参照符号1850で示されている)へ通過するのを防止するために,トランジスタ1822は短くオンになる。以下でより詳細に説明するように,トランジスタ1822が次にオフになり,トランジスタ1824がTEPイネーブル信号1832によってオフにされて,出力電圧がADC(図示せず)に通過できるようにする。トランジスタ1824もまた,相関する出力信号を提供するために,TEPイネーブル信号1832を介して元の信号の駆動周波数で駆動してもよい。
【0074】
図18は,
図17の電圧制御回路を拡大して示している。回路は,等しい抵抗R1及びR2を提供することによって差動平衡化されている。TEP_enable 1832は,駆動中T7トランジスタ1824をオンに保持する。これは,45V+がADCに到達しないように維持し,ADCはVDD≦6Vの最大入力を有する。抵抗R2及びコンデンサC1は,エジェクタリングダウンを測定するための積分回路を形成する。
【0075】
ADCを破壊(blow up)することを避けるために信号TEP_n1814及びTEP_p1830は,ドライブが切断されて電圧が十分に低いレベルに下がった後,短い期間だけ信号Ejector P 1810及びEjector n 1820それぞれを短絡する。その後,TEP_n 1814はオンにとどまり,トランジスタT5 1812を通じてEjector_p 1810を設置に接続する。信号TEP_p1830はトランジスタT61822を遮断して,Ejector_nをADCポートパスに切り替える。TEP__enable 1832は,トランジスタT7 1824を無効にするか,又は相関のために元の駆動周波数で駆動するかのいずれかを行う。ADCの前段のRC積分器は,TEP信号におけるエネルギの振幅の値を取得するために,単に指定した時刻に出力信号及びADCサンプルを積分する。
【0076】
駆動信号130の振幅及び/又は周波数に関係なく,圧電アクチュエータ540が駆動信号530によって駆動されたとき,ある量のエネルギが電気機械機構500に蓄積され,解放される。すなわち,圧電アクチュエータ540にどれだけのエネルギが蓄積され,消費されるかは,とりわけ,駆動信号530の周波数,周囲温度及び機械負荷550の性質に依存する。先に説明したように,圧電アクチュエータは,多くの場合,機械負荷の変位を増加させるか又は最大化するために,共振モードで駆動される。圧電アクチュエータ540の共振周波数では,エネルギは,圧電アクチュエータが非共振モードであるときとは異なる速度で蓄積され,噴出される。機構が共振しているとき,エネルギは,最終的に減衰して機構が初期の静止状態に戻るまでのいくらかの(測定可能な)期間,機構内に留まり,圧電アクチュエータ内で振動(ring)する。機構が共振していないときは,機構からのエネルギ排出はほとんど即時である。例えば,
図19は,共振及び非共振モードの双方における,この減衰期間中の本発明によるシステムの一実施形態の,時間変化する電圧を示している。機構がいつ共振であるか,そうでないかを決定するために,電気機械系のこの特性を利用することができる。
【0077】
図20及び21は,機構が共振しているか否かを判定するために用いることができる機構500のエネルギプロファイルを発生するための本発明の方法の例を示す。フローチャートの同様のステップは,簡単にするために同一の参照符号で示されている。
図20に示されているように,ステップ2000において,駆動信号530は,有限の期間,圧電アクチュエータ540に印加してもよい。全体的な機構の要件及び検出される特性の種類に応じて,圧電アクチュエータ540は機械負荷(図示せず)に結合されても,されなくてもよい。一般に,駆動信号530は,検出可能な信号を得るために周波数によらず,圧電モード(圧電アクチュエータは負荷に結合されていない)の波形の少なくとも1周期と,膜モード(圧電アクチュエータは,流体で満たされたエジェクタ機構のような負荷に結合されている)の波形の2周期との間に,圧電アクチュエータ540に適用されることが望ましい。負荷内のエネルギは,共振の品質係数によって決まる時間だけ成長し,必要な最小周期の数よりも大きい任意の時間だけ駆動してもよい。
【0078】
ステップ2010において,信号530はもはや圧電アクチュエータ540に印加されていない。この「停止」は,単にドライバ520の電源をオフにして,ドライバ520を切断すること(例えば,トライステートドライブFETによって,電気的に),又は信号530が圧電アクチュエータ540に印加されることを防止するのに十分ないくつかのほかの操作によって引き起こされてもよい。この時点では,機構570はその初期の静止状態に戻る。すなわち,圧電アクチュエータ540は,もはや機械負荷550を変位させるようには作動せず,機構内に残っているエネルギは消散する。前述したように,どれだけ迅速に信号580が減衰するかは,機構が共振しているかどうかに依存する。信号580をより容易に検出可能にするために,ゼロ交差ではなく駆動信号530のピークで駆動波形を停止することによって,信号580の振幅を大きくすることが望ましい場合がある。しかし,ゼロ交差で駆動信号530を停止することは,圧電共振より機械共振を測定することに,より有害であることに留意されたい。
【0079】
ステップ2020では,
図5に示すように,圧電アクチュエータ140に結合された共振検出及び制御回路560を,例えば,圧電機構570内に残っている信号の減衰に関係する種々の特性を測定するために起動してもよい。ステップ2030において,共振検出及び制御回路560は検出された信号580を積分してもよい。積分された信号は,圧電アクチュエータ540の最大の物理的運動及び対応する機械負荷550の変位を反映し,機構570の共振周波数で最大の振幅になる。共振検出及び制御回路560は,関係する減衰期間にわたって測定された信号580の積分値を切り出す(window)ように,ドライバ520と同期させてもよい。例えば,余りに早く積分が開始される場合,原駆動信号530を拾っている可能性があり,それはこの時点では分析の関心事ではない。
【0080】
図20の実施形態においては,共振決定は,前の入力信号530の周波数で取られた信号580と比較して,検出された信号580が増加していることに基づいて,ステップ2040で行われる。そのような増加が検出されない場合,入力信号530の周波数はステップ2050において,このように圧電機構170への影響を監視するために変更される。このようにして,ステップ2040において,機構が共振であるか否かを評価することができる。ある実施形態においては,システムの共振周波数を実際に決定するために,ステップ2000から2040の処理を数回反復してもよい。ステップ2040において,機構は共振モードでないことが判定されるたびに,ステップ2050において駆動周波数520を調整してもよい。例えば,圧電アクチュエータに印加される駆動信号530の周波数は,振幅の明確なスパイク,すなわち,共振応答が観察されるまで,種々の駆動周波数での機構500の応答を観察するために,例えば,1kHz刻みで変化させてもよい。
【0081】
図21の実施形態においては,試験した周波数の数をカウントダウンし,規定された数の周波数が試験されたかどうかをステップ2160で判定し,ステップ2050で周波数を変化させ,新たな入力信号530を印加することによって,周波数の規定された集合が入力信号530のために試験される。必要な数の周波数が実行されると,最大振幅検出信号580が取得された周波数に関して,ステップ2170で決定が行われる。したがって,
図21の実施形態において,プロセスの終了時に共振応答が観察されたかどうかの判定が発生するように,ステップの順序は,わずかに変更してもよい。ステップ2000において,駆動信号530を圧電アクチュエータ540に適用し,ステップ2010においてそれを除去してもよい。共振検出及び制御回路はステップ2020で起動し,測定された信号580はステップ2030で積分してもよい。ステップ2160において,方法は十分な周波数を試験したかどうかを判断してもよい。例えば,10の異なる周波数を試験しなければならないことがある。唯一回(又は10未満の任意の回数)試験された場合,方法はステップ2050にジャンプし,駆動信号の周波数を変更してもよい。このプロセスは,必要な数の周波数が試験されるまで反復してもよく,その時点で,試験された周波数の一つが,共振振舞,すなわち,ステップ2170に示される振舞を示しているかどうかを決定することができる。
【0082】
前述の例では,共振周波数の位置を特定するために単一周波駆動周波数の使用を想定している。しかし,当業者であれば,これらのプロセスは,例えば,多周波駆動信号530を用いて促進することができることを理解するであろう。例えば,駆動信号は,45kHzから始まり1kHz間隔で等しい振幅を有する10の周波数を有してもよい。このように,10の周波数はそれぞれ同時に分析することができる。すなわち,出力信号580を待って評価する前に,10の周波数信号を送信してもよい。更に別の実施形態においては,駆動信号530は,チャープ,又は任意の波形であってもよい。
【0083】
図22及び
図23は,本発明による二つの例示システムの積分された信号の処理された(周波数ごとの積算値)サンプル波形(振幅対周波数)を示している。具体的には,
図22は,相関器ベースのシステム,すなわち,
図26に示され,以下,更に詳細に説明するシステムのサンプル波形を示す。一方,
図23は,高速フーリエ変換(FFT)ベースのシステム,すなわち,
図24及び25に示され,以下,更に詳細に説明するシステムのサンプル波形を示す。
【0084】
前述の例は,単一周波駆動周波数の使用を想定している。しかし,当業者であれば,これらのプロセスは,例えば,多周波駆動信号530を用いて促進することができることを理解するであろう。例えば,駆動信号は,45kHzから始まり,1kHz間隔で等しい振幅を有する10の周波数を有してもよい。このように,10の周波数はそれぞれ,同時に分析することができる。更に別の実施形態においては,駆動信号130は,チャープ,又は任意の波形であってよい。この応用の目的のために,チャープは,信号の周波数が指定の速度で連続的に掃引される信号である。この速度は,線形又は非線形の関数であってよい。
【0085】
上記の説明は,このようなシステムがどのように動作するかをハイレベルで説明している。当業者であれば,種々の適切な電子的実現形態があることを理解するであろう。例えば,適切な共振検出及び制御回路160は,多くの異なる方法で実現することができる。
図24及び
図25に示す二つの実施形態においては,共振検出及び制御回路560は,高速フーリエ変換回路を備えてもよい。
図24の実施形態においては,アナログFFT回路2400がアナログ・デジタル変換器(ADC)2410に接続されている。
図25の実施形態においては,共振検出及び制御回路560は,デジタルFFT回路2510に結合されたADC2500を備えてもよい。デジタルFFT回路は,PICマイクロプロセッサのような標準のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラで容易に実現できるため,アナログFFT回路による実現形態より好ましいことがある。
【0086】
図26に示すような更に別の実施形態においては,共振検出及び制御回路560は,出力信号580が前置増幅器段2630において増幅された後に当該信号を受信してもよい。本実施形態においては,共振検出及び制御回路560は積分器2610に結合されたミキサ2600を備える。ミキサ2600は,駆動信号530と測定信号580とを乗算することができる,任意の形態のデジタル回路又はアナログ回路であってもよい。このような実現形態は,ミキサが実時間で計算を実行できるため,非常に高速な処理を必要とする状況では好ましいことがある。そして,積分器2610は,ADC 2620又はほかの任意の振幅測定又は追跡回路に結合してもよい。
【0087】
当業者であれば,システム全体の特性に応じて,ある任意選択の前処理構成要素を含むことが望ましい場合があることを理解するであろう。例えば。
図26に示し,上述したように,測定された信号580及び/又は駆動信号530が処理の前に増幅されるように,圧電アクチュエータ540と共振検出及び制御回路560との間に前置増幅器2630を配置することが望ましいことがある。代替として,例えば,圧電アクチュエータ540の出力580を共振検出及び制御回路560を実現する部品への入力に適した電圧に変換するために,抵抗性又は容量性分圧器(図示せず)を共振検出及び制御回路560に結合してもよい。これらの部品は,さらに,
図24及び25に示すものを含むがこれらに限定されない,ほかの実現形態に関しては望ましいことがあることを理解されたい。
【0088】
図27は,本発明による共振周波数検出回路の一実施形態のブロック図である。
図27に示すように,圧電素子(又は圧電アクチュエータ)540は,絶縁インピーダンス2740,サンプリングFET2750,コンデンサ2760及びADC2720に結合されている。
【0089】
サンプリングFET2750を,回路を動作範囲内に維持するために利用してもよく,これによって回路が線形の動作範囲で動作することが保証される。絶縁インピーダンス2740は,ADC2720を含むほかの部品を保護するために駆動信号(例えば,45Vの駆動信号)が絶縁インピーダンス2740と,サンプリングFET2750,コンデンサ2760及びADC2720との間の点Aから絶縁されるように構成可能であり,それによって,点Aは特定の制限電圧(例えば3V)より高くならない。
【0090】
このように,駆動信号は,圧電アクチュエータ540への方形波入力によって示されるように信号電圧SV(例えば,約45V)までの範囲であってよい。駆動信号に続いて,TEP信号(減衰波によって示される)信号が圧電アクチュエータ540によって送出される。この信号は絶縁インピーダンスを通過し,点Aに低減した振幅を提示する。絶縁インピーダンス2740と,サンプリングFET2750,コンデンサ2750及びADC2720のうち1又は複数との間に規定される電圧制限又は絶縁点Aにおける電圧は,最大値MV(例えば,約3V)を有する。時間的エネルギ積(TEP)信号はまた,本明細書に開示されるように,又は参考文献に記載されるように,圧電共振検出及び特徴付けのために示されている。駆動信号の離散サンプルを分析できるようにするために,サンプリングFET2750は選択的にオフ又はオンになる。上記の議論から,TEPは,圧電アクチュエータ/膜の組合せ,すなわち,流体で満たされたエジェクタ機構に蓄積されたエネルギであることが理解されるであろう。モードの品質係数に応じて,いくらかのエネルギが蓄積される。そのモードにおける減衰が少ないほど,システムは,駆動信号が終了した後も長く運動する。このことは,駆動信号がオフになった後に圧電アクチュエータが(負荷回路に基づいて)信号を出力することを意味する。したがって,このリングダウン時間中に発生された信号が,モードの品質係数,及びモードが圧電モードか,システム(膜)モードであるかに基づいて,最大の振幅及び振動時間を有する。TEP信号はコンデンサを充電し,リングダウンタイムを決定するためにアナログ・デジタル変換器(ADC)2720によって使用される。したがって,当該モードにおけるエネルギ蓄積を決定するために,TEP信号を相関又は積分してもよい。
【0091】
図28は,任意選択のバイパススイッチ2800を含む共振検出及び制御回路560の一実施形態の選択された部品を示す。バイパススイッチ2800は,ADC2810への直接入力,又は最初に前置増幅器2820,ミキサ2830及び積分器2840を介する入力を選択するために用いてもよい。完全な共振検出及び制御回路560が有効化されているときは,NCO又は発振器は,単一周波数モードでオンにされ,周波数掃引される。共振検出及び制御回路2810の出力が規定値又は最大値よりも大きいときは,共振状態と判定される。共振の強度は共振検出及び制御回路2810の出力の振幅によって決定される。ブーストコンバータ(図示せず)は,出力電圧をサンプリングするためにアナログ・デジタルコンバータ(ADC)の出力を用いて,ゲート制御発振器によって制御される。フルブリッジ出力にインダクタが追加されている場合には,昇圧電圧出力を制御するために,圧電アクチュエータの電圧が監視される。昇圧電圧出力は,共振素子にエネルギが蓄積されるのではなく,実際に電力が転送されることになる,従来の共振整合とは反対に,入力電流を増加させることなく,圧電アクチュエータ及びインダクタによって形成される共振コンバータによって更に増幅される。この実施形態においては,測定回路は,抵抗分割器及びピーク検出器として実現され,電圧制御と,また,電気共振タンクによる品質係数掃引との双方で,タンク内の電圧を監視するために使用される。これは,ADCに供給される。電気共振は桁違いに強力であるため,TEPは,共振コンバータと共に用いることはできない。
【0092】
図18Aを参照する別の実施形態においては,測定ノードを接地し,一方で圧電アクチュエータ(エジェクタ)に印加される高駆動電圧を(ADCを保護するために)起動するために,共振検出及び制御回路は,フルブリッジ駆動サイクルにわたってNチャネル素子,T7がオンになるように動作する。高電圧駆動信号が停止すると,Nチャネル素子T5及びT6は,圧電アクチュエータを一時的に短絡するために,有効化(オン)される。これは,圧電アクチュエータに印加される高駆動電圧(圧電アクチュエータ運動電圧をマスクする)をオフにすると共に,アクチュエータの運動によって誘起された電圧がマスクされずにADCノードに導かれるようにする。Nチャネル素子T5は,測定サイクル全体にわたってオンであり,一方,T6は,圧電アクチュエータの運動が電圧をADCノードに出力するように,短時間(1ns〜50μs)後に無効(オフ)にされる。T6を短絡しないと,エネルギは必ずしもADC測定ポートに向けられない。T6が無効になっているとき,T7もまた無効にされ,圧電アクチュエータの出力がR3/(R2+R3)で除した電圧となり,C1及びT7の容量によって積分されるようにする。ADCは,T7が無効になった後,通常,1μsと500μsとの間の所定の時刻に,電圧をサンプリングする。トランジスタT7は,特定の周波数と相関させるために原駆動信号の速度で切り換えてもよい。
【0093】
圧電アクチュエータの両側に対する駆動信号,並びにT5,T6,及びT7に印加される対応する信号の例を
図29に示す。このシーケンス及びADC測定は,例えば150kHz,10MHz,など,1Hzから150MHzまでの規定された周波数ステップで行ってもよい。噴霧周波数として最大の積算値を選択してもよいが,特定の噴霧力学に関係する数学的な修正(例えば,周波数に対するエジェクタ速度の増加及び圧電アクチュエータ対膜モード変位)を適用してもよく,機構をより正確にするために,電圧結合係数を適用してもよい。
【0094】
一実施形態においては,本発明による電気機械系は,その共振の周波数及び品質係数を決定することがある。別の実施形態においては,本明細書に記載の電気機械系は,機械負荷,印加される駆動信号,周囲温度,又はそれらの任意の組合せによって共振が変化したとき,その共振の追跡を可能にしてもよい。そのような態様及び共振追跡は帰還電極なしに達成することができ,帰還電極の使用は,流体噴出システム内の所望の標的上の液滴の発生,効率及び質量堆積に影響を与えることがある。特定の応用での更なる利点もまた,本発明によって実現することができる。
【0095】
例えば,ある実施形態において,本明細書に記載される共振追跡は,本発明の液滴発生装置のいずれかで利用してもよい。このようにして,液滴発生装置は,自身を共振モードに戻すことができる。一連の周波数にわたって共振振幅をマップするために,種々の周波数での短期間の駆動が使用される。(この周波数範囲は,製造/加工中の部品間の最大統計差を決定することによって計算してもよい。)噴霧後の出力は,任意のドリフトを修正し,噴霧を検証するために,液滴発生器の本来の共振マップと比較してもよい。このような使用では,共振追跡は帰還電極無しで達成でき,本明細書に記載されるように流体噴出機構における質量堆積を減少させる効果を有するであろう。
【0096】
電荷絶縁されたエジェクタ(2重層フレックス回路,50μmのSS316L環,金コーティングされた40×160,57穴のエジェクタ要素,外径19mm×内径13mmの厚さ250μmのPZT)が10kHzから150kHzまでの周波数で噴出するように駆動された。質量堆積及び電気波形が同時に各周波数で記録された。
【0097】
図30に示したレベルシフトドライバ回路は,内部相補波型発生器のマイクロチップPIC16LF1503によって駆動される。レベルシフトドライバは,圧電素子を作動させるフルブリッジを駆動する。マイクロチップPIC16LF1503は,OHAUS PA214が質量堆積測定中に平衡に達するように調整(scale)できるように,各周波数間で10秒間待機する。マイクロチップPIC16LF1503はまた,(
図18Aで参照されるT5〜T7のための)すべての必要なドライバ信号を供給する。電気信号はAGILIENT 3014Aオシロスコープ上に記録され,その後,共振測定及び制御の動作を示す(最適な回路部品を決定するために種々のアナログフィルタをデジタル的に実現する)ために,PIC16LF1503の測定時間まで信号を積分することによって,MATLABで処理される。
【0098】
T7が無効になった時点から30μsだけサンプリングされた積分された圧電出力信号は,
図31及び
図32に示すように,周波数に対する機構の運動及び質量沈着を詳しく追跡する。
図31は,膜モード及び圧電モードの質量堆積を示し,
図32は,共振測定出力を示す。膜モード(アクチュエータが,流体で満たされたエジェクタ機構の形態をとることができる膜に結合される)とは対照的に,圧電モード(圧電アクチュエータだけが関与する)の出力は強く,圧電モード及び膜の双方のモード用の運動対電圧結合パラメータを用いて補正しなければならない。結合パラメータは,デジタルホログラフィ顕微鏡(DHM)を用いて,アクチュエータの正弦波励起及び運動の測定によって決定される。結合パラメータは,最適な噴出を行うために,単に所定の周波数領域での結果を調整する(それらを重み付けする)。さらに,運動の周波数及び振幅を,最適な噴霧を決定するために用いることができる。回路は,動作が圧電又は膜のいずれかのモードに制限されている場合,すなわち,混合動作が許可されていない場合は,補正せずに用いてもよい。回路は,噴霧に緩く相関しているシステムの変位だけを追跡する。エジェクタ速度を計算するために用いてもよい。正確な噴霧計算は結合定数及び速度計算を必要とする。共振測定及び制御システムは,いずれかの方法で構成してもよい。
【0099】
共振信号を決定し,アクチュエータ(圧電モード)又はエジェクタ機構(膜モード)に供給する特定の実施形態を説明してきたが,当業者であれば,本発明の精神及び範囲から逸脱することなく,種々の変更を行うことができ,それらの要素の代わりに均等物で置き換えてもよいことを理解するであろう。さらに,本発明の本質的な範囲から逸脱することなく,特定の状況及び材料に本発明の教示を適応させるために修正を行ってもよい。
【0100】
上記の説明では,圧電アクチュエータを駆動する際の共振周波数の決定及び使用の価値を述べているが,特定の駆動信号又は駆動波形もまた,エジェクタ機構の前面又は前方の(anterior)面のビーズ発生及び濡れに影響を与えることによって,エジェクタ装置の安定性及び再現性に影響する。
【0101】
図33は,上述の構成のいずれかで液滴発生システムを実現するための回路3300の一実施形態の概略回路図である。この特定の実施形態においては,本明細書に記載され,参考文献に開示されているように,回路3300は,ドライバ,例えば,ドライバ520のゲート制御発振器による昇圧(ブースト)実現形態用に構成されている。
【0102】
図33に示すとおり,回路3300は,限定されるものではないが,スイッチング素子S1〜S4,コンデンサC1〜C4,ダイオードD1,比較器U1,インバータU3,PWエンベロープ発生器V2,インバータU5〜U6,論理NANDゲートU2及びU4,並びにNORゲートU8を含むパルス幅変調回路(PWM)を含む1又は複数の追加の電子部品を含み,PWM回路に信号を供給する比較器U1を制御し,スイッチS1〜S4の電源レールの電圧を制御するために,トランジスタQ1のゲートを制御する。これらの追加部品は,アクチュエータ,例えば,上述のアクチュエータ540を駆動するためのパルス幅変調されたPWM信号を発生するために,遅延,位相シフト,ゲート制御,加算,信号増強,及びほかの電力及び信号調整効果を発生するために利用される。機械負荷,例えば,負荷550は,例えば,流体を満たしたエジェクタプレートに取り付けられたアクチュエータ,又は上述したとおりの単一周波又は多周波数値制御発振器(NCO)の信号に基づく,流体を装荷した発生器プレートに結合されたエジェクタプレートを含んでもよい。
【0103】
図34A,Bは,本発明の装置の実施形態を使用した,時間に対する流体緩和波形のプロットである。駆動信号電圧は,時間軸(水平方向)に約25msからわずかに25.5msを超えた点と,時間軸上の約27.5msから28msをわずかに超えた点で,二つのバーストで伝達される。
【0104】
図34Aに示すとおり,逆EMF信号が駆動信号に続いた後,msの数十分の一の特徴的な時間スケールで,例えば,約0.1〜0.5ms,又は約0.2〜0.3msの範囲の指数関数的減衰定数で減衰する。その結果,駆動信号が終了した後,装置から流体が噴出することがある。また,第1及び第2のバースト間の,駆動信号電圧(ゼロ点における)と逆EMF信号との分離によって示されるように,約1ms又はそれ以上のやや長い時間スケールで減衰する残留バイアスが存在することもある。
【0105】
図34Bは,
図34A中の流体緩和波形プロットの拡大図であり,駆動信号の終了後の逆EMFリングダウンを示している。
図34Bに示すように,駆動信号の終了後,エジェクタプレートの実質的な運動があってもよく,上述のような継続的液滴形成をもたらす。また,駆動信号と逆EMF信号との間の位相シフトもあり,それが流体装荷(fluid−loaded)エジェクタプレートの運動が駆動信号波形を遅らせる(又はこの場合は,進める)ことがある。
【0106】
駆動波形による励起に先立って,エジェクタプレートアセンブリは,機械的な運動がない休止状態から動き始める。運動を誘起するために電気駆動信号が印加されるにつれて,液滴を噴出する前に有限の時間遅れが存在する。液滴発生器に複数の開口部がある場合,各開口部は,振動モード(又はモード)と,対応する共振周波数(又は周波数)に応じて,流体の噴出に必要な速度に達するまでに異なる特性時間を有することがある。このように,液滴形成前の特性の先行時間は,振動エジェクタプレート又は液滴発生器によって規定されるように,駆動電圧,周波数,開口位置,及び固有モード形状に依存する。
【0107】
流体が,液滴発生のための十分な速度に到達する前に開口部から出る場合,ビーズが発生することがあり,さらに,液滴形成の始まりを遅延させ,質量堆積及び流体送出を減少させる。流体ビーズ発生もまた,濡れたエジェクタプレートの運動量を増加させ,駆動信号の終了後の特性リングダウン時間を長くする。
【0108】
ビーズ発生を減少させるために,エジェクタシステムは,本明細書中では連続駆動長とも呼ばれる選択された時間だけ駆動されてもよい。特に,この時間は,特定の構造の固有モードに応じて,液滴発生器上の種々の位置,又はエジェクタプレート中央部の噴出領域内に配置された1又は複数の開口部から1(又はそれ以上)の液滴を噴出するのに十分な速度にエジェクタプレートが到達するように選択してもよい。本発明の一態様によれば,駆動信号は,要求応答型液滴(drop on demand)モードで動作するように選択してもよい。このモードでは,アクチュエータは,流体特性によって決定されるある数のサイクルだけ駆動され,次に停止して系が緩和できるようにし,その後,連続駆動長シーケンスが反復される。これは,流体の所望の質量移動を達成するために,所望の回数だけ行ってもよい。要求応答型液滴モードは,流体のビーズ発生を減少させ,したがって,エジェクタ機構の運動量を減少させる効果を有する。これによって,液滴ストリームへの質量移動が増加し,駆動信号が遮断された後のリングダウン時間が短縮される。連続駆動長はまた,所望の投与量,流体粘度,振動モード及びエジェクタ構成,並びにほかのパラメータに応じて選択され,約1ms若しくはそれ以下から約10秒若しくはそれ以上へ,又は,約1〜2msの範囲,若しくはそれ以下,又は約2〜5ms若しくはそれ以上,変化することがある。
【0109】
流体のビーズ発生は,1又は複数の液滴が1又は複数の開口部から噴出されるために十分な選択された数のサイクルだけ圧電アクチュエータを駆動することによって,低減又は抑制することができる。サイクル数はまた,限定されるものではないが,例えば,約1サイクルから約10サイクルの範囲で,例えば約2〜5サイクルの範囲で。例えば,所望の投与量,流体粘度,振動モード及びエジェクタ構成を含むパラメータに基づいて選択される。代替として,アクチュエータ1604は,10サイクル又はそれ以上,例えば,約10〜20サイクル,又は約10〜60サイクル又はそれ以上の範囲で,例えば約10,20,30,40,50又は60サイクルだけ駆動してもよい。
【0110】
ほかの応用では,比較的大量の液体(例えば,0.5〜30μl又はそれ以上の範囲)を送出するために,噴射による連続流体噴出が必要である。しかし,連続モードでの(すなわち,連続駆動信号による)噴出もまた,ビーズを生じることがある。任意の特定の理論によって限定されるものではないが,ビーズは,上記のように,例えば,無秩序な噴射,付随液滴の再捕捉,誘起,及び電荷効果のために,生じることがある。また,開口部上に流体ビーズが形成される場合,例えば,ポンプ作用及び関係する流体力学的効果によって,品質の悪い流体の容量が,アクチュエータの更なるサイクルにわたって増加する傾向がある。連続的なポンピングは,最終的に,振動エジェクタプレート(又は液滴発生プレート)の遠位表面の濡れにつながる可能性があり,運動量,クーロン引力,及び関係する機械的及び電気機械効果の増加をもたらす。
【0111】
圧電アクチュエータはまた,駆動信号間の期間が続く,選択された数のサイクルだけ駆動してもよく,これは緩和時間又は緩和期間として特徴付けられる。緩和期間中の振動駆動電圧の停止は,特性リングダウン時間に渡る,流体を満たしたエジェクタプレートの振動の減衰につながる。リングダウンタイムは,例えば,エジェクタプレート及びアクチュエータの運動の強度,並びに流体で濡らしたエジェクタ系の質量に依存する。応用に応じて,リングダウン時間に基づいて選択された緩和時間がビーズ発生を減少させることがある。このアクチュエータの間欠駆動は,本明細書においてはパルス動作モードと呼ぶことになる。(単位時間当たりの)質量噴出速度は,パルス動作モードにおいては駆動パルス幅及び緩和時間に依存して,例えば,連続噴射モードと比較して約1/3,約半分程度,又は約2/3に減少することがある。
【0112】
いくつかの実施形態においては,駆動信号の停止後の圧電アクチュエータの動作を,エジェクタプレートに機械的に結合された圧電アクチュエータの残留運動によって誘起される逆EMF(又は逆電圧)を検出することによって監視してもよい。例えば,
図4に関して上述したように,逆EMFは,アクチュエータの表面から電気的に絶縁された金属化層又は電子センサを介して監視してもよいし,例えば,アクチュエータの表面と直接接触している駆動電極又はほかの導電層を介して,駆動信号回路に誘起される逆電圧を用いて監視してもよい。
【0113】
このように,リングダウン時間は,逆EMF信号に基づいて,残留するエジェクタプレート及び流体の振動が特定のしきい値を下回るのに必要な時間によって決定してもよい。これは,緩和時間が,流体濡らしエジェクタアセンブリのリングダウン時間に及ぼす影響に基づいて,液滴形成,濡れ,流体粘度,及びほかの要因に対して自動的に調整されるため,緩和時間が固定された応用よりも有利である。
【0114】
例えば,緩和時間は,駆動信号が停止したとき,逆EMF電圧が初期値の選択された割合,例えば,初期値の約10分の1(10%),より少なくなるために要する時間によって規定することができる。代替として,異なる割合,例えば,約20分の1(5%)以下,約5分の1(20%),約3分の1(33%),約半分(50%),若しくは1/eなどの異なる比率,又はその倍数を選択してもよい。追加の応用では,緩和期間は,絶対しきい値,例えば,流体を装荷したエジェクタプレートの振動の選択された強度又は速度に逆EMF信号を相関させることに基づいて選択してもよい。
【0115】
図35は,時間軸上の二つの波形間の位相シフトを示す,駆動信号波形及び対応する圧電運動波形の時間対振幅のプロットの集合である。
図35A〜Dはそれぞれ,駆動信号の停止後の残留運動を減少させるために,リングダウン制振信号を発生するための別の方法を示している。キャンセル波形は,リングダウン帰還信号の観測された強度及び位相に基づいて,能動制振又はブレーキ信号の形で発生してもよい。例えば,
図35Aにおいて,キャンセル信号は,単に,元の波信号に対して反対又は180度だけ位相シフトした半波を発生することを含む。
図35Bにおいては,反対の半波を発生することに加えて,反対側の波形の振幅を調整する。
図35Cにおいては,反対の半波は,追加の位相シフトを達成するために時間シフトされる。
図35Dにおいては,逆位相かつ高周波数の小さいパルスが発生される。
【0116】
一般に,制振信号は,駆動信号に対して位相がシフトされ,強度が減少していてもよい(
図35B及び35Cの組合せ)。強度は,上述の圧電システムに示すように,例えば,共振検出及び制御回路560のためのリングダウン信号又は帰還信号580を発生するために駆動回路においてアクチュエータセンサ,又は逆電圧を用いて,逆EMF信号の強度に基づいて決定される。例えば,
図33の回路3300の種々の部品に関係して上述したように,適切な強度及び位相遅延を有するパルス幅変調(PWM)された制振信号を発生するために,緩和波形及びリングダウン分析が逆EMF信号に対して実行される。
【0117】
応用に応じて,液滴発生器上の流体振動は,エジェクタプレート自体のリングダウン振動と同じ周波数で起こることもあるし,起こらないこともある。これが起きる限り,又は複数モードが励起されるいずれの場合にも,以下に説明するように,逆EMF信号は複数の周波数及びビートを示し,能動制振信号は,例えば,二つ又はそれ以上の異なる強度,位相及び周波数の制振信号の組合せを供給することによって,それに応じて修正してもよい。
【0118】
代替として,信号の複雑さ及びリングダウン信号に必要な効果の所望のレベルに基づいて,単一の短いパルス又は「チャープ」信号を用いてもよい。例えば,駆動波形自体の位相又は逆EMF信号のタイミングいずれかにに基づいて,「逆相」のキャンセル信号又は制振信号を印加してもよい。この応用では,残留振動エネルギを吸収又はキャンセルし,車両と同様にアクチュエータ及び負荷を制振するように,小さく,逆極性の制振信号が選択したタイミング及び振幅を有してもよい。
【0119】
任意のキャンセル波形又は能動制振(ブレーキ)信号が印加されると,上述したように,ほかの駆動信号を印加する前に緩和期間を利用してもよい。したがって,各パルスの後の波形を減衰させるか否かにかかわらず,液滴発生器はパルスモード又は連続パルスモードで駆動してもよい。
【0120】
液滴はまた,引き続く能動制振信号の有無にかかわらず,特定数のサイクルにわたって延びる単一の,有限の駆動波形にわたる流体噴出によって,単一パルスモードで発生することができる。この動作の単一パルスモードでは,緩和時間は任意であり,装置の独立した(例えば,利用者が選択した)起動まで伸びると考えることができる。
【0121】
このように,制振信号を発生するために種々の異なる方法を利用することができる。例えば,圧電アクチュエータに蓄積されたエネルギに基づく振幅と,逆EMF信号の位相に基づく180°の位相シフト(逆極性)とを有する,等振幅波形を適用してもよい。代替として,利用可能な正又は負の電源電圧に基づいて,逆極性又は別の位相シフトを有する一つ又は複数の不均等な振幅パルスを適用してもよい。単一パルス又は「チャープ」減衰波形においては,波形のエネルギは,流体を装荷したエジェクタプレート及びアクチュエータシステムのエネルギと一致するように選択することができ,逆極性又は最大エネルギ吸収のために選択されたほかの位相シフトで伝達し,残留振動をキャンセルし,リングダウン時間を短縮する時間エネルギ平衡を利用する。
【0122】
動作のパルス又は「限定サイクル」モードでは,アクチュエータは,エジェクタシステムの特性ビーズ発生時間未満の限られた数のサイクル,続いて特性リングダウン時間に基づく緩和期間だけ駆動し,所望の流体投与量又は質量堆積を達成するために必要なだけ反復してもよい。上述したように,単位時間当たりの質量噴出は名目上減少しているが,これは,減少したビーズ発生の利点によって相殺される可能性がある。送出パルス間の緩和又は「不感」(dead)時間は,適切な制振信号を印加することによって低下させることができる。
【0123】
このモードでは,液滴発生器は,逆EMFの対応する相に基づいて,エジェクタプレートシステムの特性ビーズ発生時間未満の限られた数のサイクルだけ駆動され,続いて逆相(逆極性)波形が印加される。上述したように,単一のパルスで残留振動エネルギのかなりの部分を吸収するために,エネルギを平衡させるように振幅及び位相を選択してもよいし,又は振幅及び位相を変化させてもよい。減衰波形又は「ブレーキ」信号は,新たな駆動信号が印加されない間,アクチュエータ及びエジェクタプレート膜の運動を減少させるように制御され,流体自体の追加のリングダウンが続く。
【0124】
このように,完全な波形は,限られたサイクルの駆動信号,続いて流体リングダウンのための制振信号及び緩和又は不感時間を含み,所望の流体投与量又は質量堆積を達成するために必要なだけ反復される。減少したリングダウン時間に基づいて,能動制振又はブレーキ信号の無い限られたサイクルの駆動と比較して,このモードは,単位時間当たりの流体質量の観点で規定される,ビーズ発生の低減及び流体噴出速度の増加双方を提供する。
【0125】
(例1:エジェクタ機構)
この例では,液滴発生器132に設けられた開口部126のパターンがエジェクタプレート104の中央領域に形成された対称な(例えば,直径21mmのステンレス鋼)エジェクタプレート104が利用された。(例えば,圧電型の)アクチュエータからの逆EMF信号又は帰還電圧信号を測定し,それぞれの駆動波形の後に制振信号を提供する駆動回路を制御するために,共振又は帰還回路560を有する駆動回路520が,駆動信号を発生するために使用された。別個の駆動波形を発生し,信号を減衰させるためのほかの技法もまた,考慮された。
【0126】
エジェクタ機構は,流体リザーバと接触して動作し,液滴発生器の開口部を通して流体を圧送し,液滴ストリームの形で流体を噴出する駆動信号(例えば,正弦波又は方形波)を有する。連続的な駆動信号が流体のビーズを生じる場合には,例えば,約150ms以下,約100ms以下,約50ms以下,又は約25ms以下の短いバースト又は制限されたサイクル時間を用いてもよい。駆動信号に関するエジェクタアセンブリの運動を監視し,リングダウン時間を減少させ,正味流体送出速度を増加させるために,駆動信号の終了後の残留振動のキャンセル信号を提供するために,電気的に絶縁されたパッド又は逆EMFセンサをアクチュエータに取り付けてもよい。
【0127】
(例2:圧電緩和及び流体緩和)
この例では,共振モードで駆動されるアクチュエータが,駆動信号が停止した後,緩和時間によって規定される所定の期間,振動し続ける。アクチュエータ及びエジェクタ系の運動は減少するが,膜又は液滴発生器は,流体を装荷した機構の追加エネルギによって,振動し続ける。流体が緩和する前に,圧電対が駆動されると,流体ビースが発生し,サイクル間の不感時間が不十分であると,ビーズ発生及び流体振動が反復されるサイクルにわたって増加する。
【0128】
図36は,駆動信号を除去した後,これらの現象を説明するための,流体緩和波形のプロットである。圧電逆EMF電圧(縦軸)は,圧電アクチュエータの運動によって発生され,上述したように,圧電アクチュエータの上の電気的に絶縁された金属パッド又は逆EMFセンサから得ることができる。逆EMFは,アクチュエータアセンブリのリングダウンが,相対振幅しきい値に応じて,ミリ秒程度の時間スケール,例えば,約1/2ms以下,又は約0.2〜0.3ms程度生じることを示している。この緩和期間にわたって,振動の強度は,駆動信号が終了した後,かなりの期間,例えば,駆動信号波形そのもの長さの1〜10倍まで,流体噴出につながることがある。
【0129】
流体が満たされた機構(本明細書においては,エジェクタ機構とも呼ぶ)の流体緩和時間は,アクチュエータ自体のリングダウン時間の2〜3倍,例えば,エジェクタの設計,流体負荷,穴の大きさ,及びほかの要因に応じて,1ms若しくはそれ以上,又は約1〜2ms又は約2〜4msの範囲内であってよい。流体は,ビーズ発生を防止するために,この通常はより遅い緩和時間にわたって緩和させなければならない。
【0130】
図37は,駆動信号が線形的に減少したとき,アクチュエータアセンブリがどのように反応するかを示す,ソフトランプダウンに続く流体緩和波形のプロットである。残留振動の振幅は,アクチュエータ自体の(例えば,セラミック素子であってもよい圧電素子における)エネルギ貯蔵のために,実際にはランプダウン期間中,また駆動信号がゼロに達した後であっても増加する。このエネルギは,例えば,高調波振動の数百サイクルにわたって,比較的ゆっくりと消散する。
【0131】
図38Aは,駆動信号が突然停止したときの,5サイクルの励起後の緩和波形のプロットである。
図38Bは
図38Aの緩和波形の拡大図であり,リングダウン信号における高調波発生物(「ビート」)を示している。
図38A及び38Bに示すように,アクチュエータアセンブリは,駆動信号が終了した後,運動し続けるだけでなく,比較的大きな高調波及び相互変調発生物も発生し,これが次にビーズ発生に有利な形状を有する共振モード(「固有モード」)の運動を発生することがある。
【0132】
(例3:キャンセル波形)
この例では,キャンセル波形は,このような残留運動及びリングダウン時間を短縮するために使用された。
【0133】
図39Aは,能動制振波形10サイクルの励起後の流体緩和波形のプロットである。
図39Bは,
図39Aの緩和波形の拡大図であり,減少した緩和時間及び高調波発生物を示す。
図39A及び39Bに示すように,制振信号は,(圧電)アクチュエータに蓄積されたエネルギを吸収するために,駆動信号の後に発生される。エジェクタ機構は,制振信号が印加された後も依然として移動し続けているが,緩和時間は,かなり低く,高調波及び相互変調発生物(「ビート」)が抑制される。これは,ビーズ発生が減少した,より高い質量堆積速度を可能にする。
【0134】
図40は,能動制振信号と共に,10サイクルの方形波で励起した後の緩和波形のプロットである。図示のように,駆動信号及び制振信号の双方は,実質的に方形波として提供してもよい。
【0135】
図41は,
図40に用いられたものと同一の方形波励起であるが,制振信号無しの緩和波形を示すプロットである。
【0136】
図42は,能動制振信号及び緩和不感時間と共に,10サイクルの方形波駆動信号を2周期印加した後の圧電流体緩和を示すプロットである。
図42は,10サイクルの方形波駆動信号と,圧電アクチュエータを制振するための能動制振信号と,反復の間の流体緩和(不感)時間を含む,完全に組み立てられた波形の二つの完全なサイクルとを示している。
【0137】
(例4:流体のビーズ発生)
この例は,上記の例1に記載のエジェクタ機構を利用しており,駆動電圧が単純な正弦波又は矩形波であるとき,ビーズ発生が観察された。この特定の例では,駆動信号波形は,50msの長さであった。
【0138】
緩和時間及び能動制振信号の利点を説明するために,二つの異なる粘度の液体,すなわち,蒸留水及び眼内圧力を減少させるために使用される局所薬剤であるラタノプロストを用いて,種々の段階でエジェクタの写真が撮られた。
【0139】
蒸留水及びラタノプロストの画像は,高速(毎秒75,000フレーム)で撮影した。双方の流体について,初期の噴霧は発生プレートの共振モードを示したが,すべての穴が液滴を噴出した訳ではない。噴霧信号の30%の時点で,緩和又は「リングダウン」を与えなかった連続的な噴霧は,大きなビーズの形成をもたらした。噴霧信号の60%の時点で,無秩序な飛まつ(沫)の衝突から付随液滴が発生され,これは緩和時間がないときは増加し,ビーズ発生及び衝突のレベルは,噴霧が続くと増加した。サイクルが完了した後,大きな付随液滴及びビーズ発生が観察された。
【0140】
(例5:ビーズ発生及び付随液滴形成の抑制)
この例はまた,上記の実施例1によるエジェクタ機構を利用したが,ビーズ発生は,上述の限られたサイクル(反復パルス),緩和時間,及び能動制振技術のうち1又は複数を利用して抑制された。
【0141】
再び水がラタノプロストと比較されたが,能動制振及び緩和を使用した。再び最初の噴霧画像が発生プレートの共振モードを示したが,必ずしもすべての穴が流体を噴出した訳ではない。これは,モードは非自明であり,慎重に選択された穴パターン及びエジェクタプレート形状(geometry)と組み合わせて慎重に決定されなければならないことを示している。サイクルの中央で,液滴は,ほとんどの噴出場所(開口部)から線形ストリームで現れた。無秩序なストリームは少なく,それによって,噴出不良を示す噴霧モードと比較して,付随液滴形成は減少した。この例では,ビーズ発生は双方の流体について抑制され,より大きなビーズは実質的に存在しないか,又は観察されなかった。サイクルが完了した後,大きな付随液滴は著しく減少し,ビーズ発生は,実質的に開口部内には観察されなかった。いくつかの付随液滴が観察されたが,それらは液滴の形成部位には実質的に存在しなかった。
【0142】
種々の追加の実施例では,流体の液滴を発生するようにエジェクタ機構を振動させるように動作可能な圧電アクチュエータに,1又は複数のサイクルの第1の交流電圧を印加するステップと,第1の交流電圧を停止するステップと,キャンセル波形又は能動制振信号を印加するステップと,第1の減衰緩和期間を待つステップと,1又は複数のサイクルの第2の交流電圧を上記の圧電アクチュエータに印加するステップと,第2の交流電圧を停止するステップと,キャンセル波形を印加するステップと,第2の緩和期間を待つステップと,を有する方法が提供された。エジェクタ機構は,駆動電圧の印加時に,プレートを振動させる圧電アクチュエータと共に,流体と接触する近位面と,1又は複数の開口部とを有するエジェクタプレートを含んでもよい。上記のステップは,選択された容量の流体を,例えば,液滴のストリームの形態で発生又は送出するために,1又は複数の回数,反復してもよい。容量は約5μlと約30μlとの間で選択してもよい。エジェクタ機構はまた,約15μm(ミクロン)より大きい平均液滴直径を有する液滴のストリームを噴出するように構成してもよい。
【0143】
エジェクタは,駆動電圧に対する不動態化(passivation)及び電荷分離のために構成してもよい。キャンセル波形は,駆動電圧に対して位相シフトし,駆動電圧に実質的に等しいか又は異なる振幅を有する。位相シフトは,キャンセル波形が,交流駆動電圧の一つ又は双方に対して反対の極性を有するように,180度であってよい。代替として,キャンセル波形は,交流駆動電圧の一つ又は双方と実質的に同相であってもよいし,又は交流電圧の一つ又は双方に対して異なる位相シフトのために選択された時間遅延を有してもよい。
【0144】
キャンセル波形はまた,交流電圧の一つ又は双方に対して等しくない振幅,例えば,交流駆動電圧の一つ又は双方よりも小さな振幅を有してもよい。キャンセル波形はまた,波形が圧電アクチュエータに蓄積されたエネルギに実質的に等しいエネルギを有するように選択された振幅を有してもよい。
【0145】
第1及び第2の交流電圧並びにキャンセル波形の任意の一つ又は複数は,パルス幅変調されてもよいし,又は,実質的な方形波若しくは実質的な正弦波を含むか,又は本質的にそれらからなってもよい。例えば,交流電圧の双方が,実質的な正弦波,実質的な方形波,又は正弦波及び方形波の組合せであってもよい。
【0146】
緩和時間期間の一つ又は双方は,例えば,逆EMF電圧を検出することによって,アクチュエータの共振監視に基づいてもよい。緩和期間の一つ又は双方は,交流電圧の一つ又は双方のサイクル数に比例していてもよく,サイクル数は1と約30との間であってもよい。緩和期間の一つ又は双方はまた,逆EMF電圧があるしきい値を有するとき,例えば,初期値のわずかな部分に決定してもよいし,又は,緩和期間の一つ又は双方は,交流電圧の一つ又は複数のサイクル数に比例してもよい。
【0147】
(例6)
一実施形態においては,エジェクタ装置は,流体リザーバ(本明細書においては,カートリッジとも呼ぶ)及びベースシステムを含むエジェクタアセンブリを備える二つの部分からなる(two part)装置として実現される。ベースシステムは,相補的にカートリッジを受け入れ,かみ合うように構成されている。利用者がベースシステムにカートリッジを挿入すると,電気的接点が形成され,カートリッジがアクティブになる。一実施形態においては,カートリッジが無効にされたとき,カートリッジのEEPROM(登録商標)カウントダウンを開始するために読み取られる。
【0148】
カートリッジのエジェクタ機構を覆うよう設けられ,エジェクタ機構のエジェクタ穴を開くか,又は視線が通るように回転するように構成された前方の回転シールが提供される。回転はまた,カートリッジ内の磁気スイッチを起動し,マイクロコントローラユニットに中継され,マイクロコントローラをスリープモードから抜けさせる。標的システム(青色LED)もまたオンになり,ブーストコンバータが開始される。
【0149】
自動調整又は品質掃引(Q掃引)が噴霧周波数を設定するために開始される。この実施形態においては,Q掃引は,所定の周波数範囲内の周波数の範囲のそれぞれの3サイクルの発生を伴い,TEP帰還が,最適な噴霧周波数領域を見つけるために取得される。これについては,以下,より詳細に説明する。掃引の開始は,前部回転シールを回転させるか,又は噴霧ボタンを作動させるかのいずれかことによって起動することができ,一実施形態においては,起動機構は,ソフトウェアで選択してもよい。Q掃引が完了すると,チャージポンプとして機能するように構成されたブーストコンバータは,所望の電圧に昇圧レールを充電することによって,その製品の所定の電圧に環状部(圧電エジェクタ)の電圧を上昇させる。範囲は,例えば,0〜120∨である。
【0150】
第2のスイッチは,利用者が噴出ボタンを押下したとき起動される。このイベントの際に,ゲート制御相補波形発生器(CWG)がレベルシフタ回路を駆動し,該回路は次に,圧電アクチュエータを駆動して薬物を噴出するためのフルブリッジを駆動する。エジェクタ機構は,定電圧駆動(ブーストデューティサイクルは常に昇圧出力電圧,したがって,共振タンク内の増幅の平衡をとるように調整される),又はブーストを充電し,次にドライブをオンにして高速噴霧のための大規模なオーバシュートを引き起こすことによって達成される,オーバシュート駆動のいずれかによって噴出する。定電圧は,連続モード又は要求応答型液滴モード(xサイクルON−yサイクルOFF−反復)のいずれかで用いてもよいが,オーバシュートは要求応答型液滴にだけ用いることができる。
【0151】
さらに,駆動信号の周波数は一定周波数であってもよいし,又はディザ処理してもよい。ディザ処理は,周波数が設定帯域(3k,5k,10k,20k)にわたって(チャープのように)掃引されることを意味する。ディザ処理は圧電アクチュエータの運動に急激な速度変化を引き起こして,より良好な噴出を生じさせる。ディザ処理は,例えば,一定の多周波信号を発生するために迅速に(共振タンクの減衰時間以内に)行うことができる。
【0152】
IRベースの容量検出回路は,噴霧中に送出される液体の量を測定するために含めてもよく,正しい投薬量を送出するための噴霧時間を伸縮する。所定の期間の後(本実施形態においては,10秒後),すべてのLEDが消灯(shut down)され,利用者がフロント回転シールを閉じて,再び開くまで,装置はスリープモードに戻る。
【0153】
自動調整は,本発明の一態様を備えているため,特定の実現形態を以下,より詳細に説明する。
【0154】
自動調整システムの目的は,圧電エジェクタシステムが動的にわずかな材料の違い及び変化する環境変数に自分自身を適合できるようにし,信頼性が高く,かつ製造可能な製品にとって重要である。
【0155】
数値制御発振器(NCO)及びCWGによって発生された周波数は,1kHzから200kHzまでの規定された範囲で設定された量だけ,しばしば80〜150kHzの範囲で1kHz又は0.5kHzの増分で増加される。バッテリ電圧はバッテリの緩やかな消耗を考慮して補正され,その後,昇圧レールはアナログ・デジタル(ADC)サンプリング帰還を用いて,一定の電圧に充電される。次いで,タンク(容量性の圧電アクチュエータ(圧電素子)及び1又は複数のインダクタによって規定された共振構造)は,単一周波数で短時間,好ましくは最小限のサンプルサイズ,例えば,1.5〜2.5周期だけ駆動される。駆動信号は,毎回同一の振幅係数(電圧)で,積分ピーク検出器内のコンデンサを充電するために,この周波数で立て続けに3〜5回反復される。振幅係数が記録され,手続は次の周波数で反復される。この低電圧信号の反復が測定の信号対雑音比を大幅に改善させ,噴霧する最適な共振周波数を判定する間,システムが噴出しないようにする。
【0156】
自動調整は,低電圧でイジェクタを駆動し,圧電/インダクタタンク応答(品質係数)を測定することによって達成される。これは,広い周波数範囲にわたって行われたときエジェクタシステムを特徴付け,ピーク周波数を見つける。
【0157】
Q掃引が正しく動作するように,駆動電圧は適切に圧電アクチュエータにエネルギを送り込むのに十分高くする必要があるが,不要な噴出を生じさせないように十分に低くなければならない。したがって,駆動電圧は,マイクロコントローラによって詳細に監視しなければならない。
【0158】
駆動電圧を監視するために使用されるアナログ・デジタル変換器(ADC)は,バッテリの能力が低下(de−rate)し,電圧が降下したときも正確な測定を維持するように,数学的に補償される。
【0159】
この実施形態においては,掃引は,適切な電圧しきい値が満たされていることを確認するために,最初に出力範囲を検査するアルゴリズムを用いてソフトウェア制御される。掃引は,流体を噴出するほどの高電圧ではない一定出力であり,したがって出力電圧範囲が低すぎるときは,わずかに増加させて,掃引が反復される。
【0160】
掃引は,一貫したピーク周波数を探すために,複数の測定にわたってバーストで反復される。ピークが一貫しないときは,電圧がわずかに増加され,バーストが反復される。二つのピークが等しいままであるときは,マイクロコントローラは,噴出のために前もってプログラムされた最適な周波数範囲内のピークを選択する。
【0161】
駆動信号を発生するための部品が
図43のブロック図に示されており,この図は統合された駆動ゲート制御付きのフルブリッジドライバを示している。数値制御発振器(NCO)4300は,高周波数分解能で駆動信号を発生する。第2数値制御発振器4302は,プロセッサ資源に大きなソフトウェア負荷を掛けることなく,周期的に相補波形発生器(CWG)4306を無効にするために,第1NCOを含む論理回路4304によってゲートされる。これは,FET寿命の延長及びエジェクタシステムの緩和の双方が,任意の周波数で上述した噴霧の「ビーズ発生」の問題に対抗することを可能にする。これを達成するために,タイマも用いてよい。論理合成された信号は,調整可能な不感帯を有する二つの逆位相の方形波をレベルシフタ回路4308に出力する相補波形発生器4306に入力され,レベルシフタ回路は,スイッチング損失及びオン抵抗を最小にするために,2.0V〜3.5Vをフルブリッジ4310のPMOS(図示せず)には+35,NMOS(図示せず)には+10に変換する。CWG4306は,圧電アクチュエータを駆動する上記の数の「オン」サイクルと,流体の緩和を可能にする上記の数の「オフ」サイクルとを効果的に交番させる。
【0162】
NMOS及びPMOSを駆動するためのレベルシフタ回路4308の一実施例の回路図を
図44に示す。
【0163】
これは,45Vブーストコンバータ出力(V_Boost)を用いてアクチュエータを差動的に駆動し,FET T1及びT10のゲートを制御するCWGからの逆位相方形波(CWG_P及びCWG_N)で駆動される。PMOS出力(FB_P1及びFB_P2)は,+45V〜+35Vであり,NMOS出力(FB_N1及びFB_N2)はOV〜+10Vである。
【0164】
上述したように,本実施形態はまた,赤外線(IR)噴霧容量検出も提供する。IR LEDは,1.8Vまでの順方向電圧降下及び65mAの電流で駆動される。フォトトランジスタが光強度を測定し,ADCによって読み取られた,OVとバッテリ電圧との間のアナログ出力電圧を供給する。噴霧は,実質的に直線状の電圧対噴霧容積応答を有することが示された。
【0165】
そのようなIR噴霧量検出回路の一実施例を
図45に示す。
【0166】
本実施形態においては,それぞれ約1.5Vを供給する三つのバッテリが可搬型電源として使用される。別の実施形態においては二つのバッテリだけが使用され,高輝度標的システムのLEDを駆動するのに十分なバッテリ電圧を昇圧するために,2倍チャージポンプの使用を必要とした。このようなチャージポンプの一実施形態は,マイクロコントローラ周辺機器からのパルス幅変調信号を使用した。標的LED用のチャージポンプ回路の一実施例の概略回路図を
図46に示す。
【0167】
本実施形態の更なる態様として,装置は,薬物カートリッジ有効化/無効化タイマを備える。本実施形態においては,これは,例えば,一連番号を用いて,一意の識別を可能にするためにカートリッジ上に設けられた二線式シリアルインターフェースEEPROM(登録商標)として実現される。一連番号は,永続的にカートリッジを無効にするために,事前に規定された使用期間後に消去してもよい。一連番号は種々の方法で構成してもよい。すなわち,例えば,最初の数ビットが製造者の識別子であり,残りのビットが,リザーバ内の薬剤を同定するために装置の一意の一連番号を提供してもよい。この実施形態におけるマイクロコントローラは,30個までの装置を60日まで追跡することができる。
【0168】
特定用途集積回路(ASIC)で実現してもよい電子回路は,温度センサからの入力を受信するように構成してもよいし,又は,ASICは,薬剤の温度が所定の温度を超えたとき,カートリッジを無効にするための内部温度センサを備えてもよい。
【0169】
上述したように,アクチュエータに適切な電圧を供給するために,昇圧レールは,チャージポンプとして機能するように構成されたブーストコンバータを利用して,所望の電圧に充電される。
図47は二つのブーストコンバータの回路図である,一つは圧電アクチュエータドライブに給電し,他方は所定の低電流環状部電荷(電圧)を供給する。監視は,マイクロコントローラに関係するADCによって実行される。
図48は,マイクロコントローラの一実施形態の回路図である。ADC,NCO,CWG,PWMはすべて,その部分に内蔵される。この実施形態におけるADCは集積素子であり,種々の端子間でチップ内で切り替えることができる。当初,ADCはピンRC2で開始され,Q掃引(自動調整)の間,ブーストの電圧を監視し,維持するために使用される。上述したように,電圧がほぼ一定でなければならず,さもなければ周波数掃引の結果が誤った結果をもたらす。ADCはその後RA4に切り替えられ,アクチュエータ(環状部)の電圧が充電され,較正できるようにする。最後に,ADCはRA0に切り替えられ,積分ピーク検出器は,ピーク電圧をADCの電圧範囲に調整する。ピーク検出器からの測定値は,タンク電圧を一定に維持するため,又はQ掃引からの振幅係数を捕捉するために用いてもよい。
【0170】
図49は,(圧電アクチュエータを含む)共振タンクを装荷したフルブリッジを駆動する一組のレベルシフタの一つの実施形態の回路図を示す。レベルシフタはまた,ピーク検出器からの帰還を有する。
【0171】
図50は,レベルシフタと,フルブリッジが駆動を停止したときに,タンクをフロートにするのではなく,空にする二つのNMOS FETからなるTEPプルダウン/要求応答型液滴プルダウン回路の一実施形態を示している。
【0172】
本発明をある実施形態を参照して説明したが,当業者であれば,本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更が可能であり,均等物でその要素に置き換えることができることを理解するであろう。さらに,本発明の本質的な範囲から逸脱することなく,特定の状況及び材料に本発明の教示を適応させるために,修正を行ってもよい。したがって,本発明は本明細書に開示される特定の実施例に限定されるものではなく,添付の請求項の範囲内に入るすべての実施形態を包含する。