特許第6240177号(P6240177)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240177
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】炭化ケイ素製の遮蔽用製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/577 20060101AFI20171120BHJP
   F41H 5/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C04B35/577
   F41H5/02
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-516657(P2015-516657)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公表番号】特表2015-525196(P2015-525196A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】FR2013051096
(87)【国際公開番号】WO2013186453
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年4月15日
(31)【優先権主張番号】1255632
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】310009890
【氏名又は名称】サン−ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン
(73)【特許権者】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】ジル ロシック
(72)【発明者】
【氏名】エリク ジョルジュ
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−326873(JP,A)
【文献】 特開昭63−182257(JP,A)
【文献】 特開2000−169234(JP,A)
【文献】 特開平10−095670(JP,A)
【文献】 特開2006−232614(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/016861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/565−35/577
F41H 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素粉末と焼結助剤の固相焼結により得られる製品であり、98.5%より大きい相対密度を有するとともに、
・粒子の形で存在するSiCを92wt%超、
・元素の酸素を2wt%未満、
・その他の元素を合計で6wt%未満、
含む製品であって、
・SiC粒子の総数に基づいて粒子数で10%超のSiC粒子が、3より大きい伸張係数Fを有し(F>3)、
・伸張係数Fが3より大きい前記粒子のうちの粒子数で50%超が、3μmより大きい幅を有し、ここで、伸張係数Fは、準線に沿って測定した前記粒子の長さLとその幅lとの比L/lであり
・当該製品中のその他のSiC粒子が、1μmより大きく20μmより小さい平均相当直径を有すること、且つ、
伸張係数Fが6より大きいSiCの数が7%未満であることを特徴とする、炭化ケイ素粉末と焼結助剤の固相焼結により得られる製品。
【請求項2】
ホウ素、チタン、ジルコニウム及び遊離の炭素から選ばれる少なくとも1種の他の元素を0.1wt%と4wt%の間の量含み、その他の元素を合計して2wt%未満含む、請求項1記載の製品。
【請求項3】
元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの重量での合計が0.2wt%と3.2wt%の間である、請求項2記載の製品。
【請求項4】
元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの重量での合計が2wt%未満である、請求項1〜3の1つに記載の製品。
【請求項5】
焼結助剤が、炭素又は、ホウ素、チタン及びジルコニウムの炭化物、又はジルコニウム及びチタンのホウ化物から、単独に又は混合物として選ばれている、請求項1〜4の1つに記載の製品。
【請求項6】
0.1wt%と0.5wt%の間のホウ素及び0.1wt%と2.7wt%の間の遊離炭素を含んでいる、請求項1〜5の1つに記載の焼結した製品。
【請求項7】
焼結助剤が炭化ホウ素と炭素との混合物を含むか又は該混合物からなる、請求項6記載の製品。
【請求項8】
相対密度が99%より大きい、請求項1〜7の1つに記載の焼結した製品。
【請求項9】
当該製品中のランタニド元素、アクチニド元素及びイットリウムの総計が0.05wt%未満である、請求項1〜8の1つに記載の焼結した製品。
【請求項10】
当該製品の重量に対するアルミニウムの含有量が1000ppm未満且つ50ppm超である、請求項1〜9の1つに記載の焼結した製品。
【請求項11】
伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数が15%より多く40%より少ない、請求項1〜10の1つに記載の製品。
【請求項12】
伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数で60%より多くが3μmより大きい幅を有する、請求項1〜11の1つに記載の製品。
【請求項13】
伸張係数Fが4より大きいSiC粒子の数が2%より多く、15%未満である、請求項1〜12の1つに記載の製品。
【請求項14】
伸張係数Fが5より大きいSiC粒子の数が1%より多く、8%未満である、請求項1〜13の1つに記載の製品。
【請求項15】
伸張係数Fが8より大きいSiC粒子の数が1%未満である、請求項1〜14の1つに記載の製品。
【請求項16】
伸張係数Fが3より大きい各粒子が、伸張係数Fが3より大きい少なくとも1つの他の粒子と接触している、請求項1〜15の1つに記載の製品。
【請求項17】
更に、伸張係数Fが3より大きい粒子のうちの20%より多くが、4μmより大きい幅を有する、請求項1〜16の1つに記載の製品。
【請求項18】
当該製品中の前記その他のSiC粒子のうちの数で15%より多くが、2より大きい伸張係数Fを有する、請求項1〜17の1つに記載の製品。
【請求項19】
当該製品中の前記その他のSiC粒子の平均相当直径が2μmより大きく、9μmより小さい、請求項1〜18の1つに記載の製品。
【請求項20】
当該製品中の前記その他のSiC粒子が、4μmより大きい平均相当直径を有する、請求項19記載の製品。
【請求項21】
粒子間の中間ゾーンを含まず、又は実質的に含まず、その酸素含有量は15wt%より多くて、その最大長さは50nm以上である、請求項1〜20の1つに記載の製品。
【請求項22】
酸素元素の全含有量が1wt%未満である、請求項1〜21の1つに記載の製品。
【請求項23】
請求項1〜22の1つに記載の焼結した製品を装甲手段として含む装甲又は装甲被覆構成材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その弾道特性のために特に装甲又は装甲被覆構成材に使用することができる炭化ケイ素を基礎材料とした緻密な製品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料は、装甲又は装甲被覆システムの最も重要な構成材料の1つである。特に、炭化ケイ素すなわちSiCはそのような用途で使用されるセラミック材料の1つである。
【0003】
例えば、装甲車両にとって、また発射体から兵士を守るのを可能にする装甲構成材を着用する兵士にとって、表面装甲被覆に関連した追加の重量は重要な要素である。実際のところ、この追加の重量は迅速な動作に支障を来しかねず、あるいは兵士の余分な疲労を生じさせかねない。
【0004】
炭化ケイ素のようなセラミック材料の使用は、特に有意の軽量化を可能にする。
【0005】
従って、装甲被覆として使用されるセラミック製品を改良することが引き続き必要とされており、この改良は特にそれらの弾道性能により評価される。よって、本発明の目的は、当該分野で今日使用されている製品とは異なり、且つその性能が改良された、特に発射体の侵入深さがより小さい、新しい材料を提供することである。行った選択に応じて、材料に関するこのパラメーターの改良は、より大きな抵抗性を提供してその結果装甲被覆によるより良好なレベルの安全性をもたらすか、あるいは装甲被覆の重量を減らすためその厚さの低減を可能にする一方で、同レベルの安全性を、すなわち同一の弾道性能を保持する。
【0006】
既知の原理によれば、装甲被覆(例えば、サン−ゴバン社が販売しており、サイトwww.hexoloy.comで入手できるデータシートが粒子の大きさが4μmと10μmの間で密度が3.10g/cm3に等しいことを明記しているHexoloy(商標) SAなどの固相焼結した炭化ケイ素材料からなる)の弾道性能を改良するためには、一方ではより高い密度の材料を採用し、他方では粒子の平均寸法を制限した微細構造を選択するのが通例である。これは、これらの2つの基準についての複合した対策が、同一材料に基づく同一製品について、最良の弾道性能を得るのを可能にすることが広く認知されているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、密度を増大させる一方で今回は材料中のSiC粒子の大きさを増大させることにある、それとは別の独自の手段を追求してきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明による粒子の寸法は、そのような密度について今までに記載されたことのないレベルに達する。予期に反して、本発明による製品の弾道性能はHexoloy(商標) SAのものより大きいことが分かった。
【0009】
国際公開第2007/126784号パンフレットの例29と34に、Al、AlN、C及びB4C焼結助剤を使って高密度化したSiC製品が記載されている。この刊行物の26ページの表14で報告されたデータによれば、これらの例により得られた製品の相対密度は97.5%と98%の間であると断定することができる。
【0010】
第1の側面によれば、本発明は、炭化ケイ素粉末と焼結助剤の固相焼結により得られる製品に関するものであり、この製品は98.5%より大きい相対密度を有するとともに、
・粒子の形で存在するSiCを92wt%超、
・元素の酸素を2wt%未満、
・その他の元素を合計で6wt%未満、
含むものであって、
・SiC粒子の総数に基づいて粒子数で10%超のSiC粒子が、3より大きい伸張係数Fを有し(F>3)、
・伸張係数Fが3より大きい前記粒子のうちの粒子数で50%超が、3μmより大きい幅を有し、
・当該製品中のその他のSiC粒子が、1μmより大きく、好ましくは4μmより大きく、あるいは更に5μmより大きく、20μmより小さい平均相当直径を有すること、
を特徴とする。
【0011】
本発明の上述の記載に関連して、次の意味及び定義が与えられる。
細長い一般形状の異方性粒子の「F」又は「伸張係数」は、準線に沿って測定したその長さ「L」と、その幅「l」との比である。従って、伸張係数は、本発明によればF比=L/lにより定義される。
【0012】
粒子の長さLは、粒子のまっすぐな準線に沿って測定され、その最大の長さに相当する。
【0013】
幅lは、上記準線を横断する(すなわち準線に直角な)平面の全てで測定される最大の幅として定義される。
【0014】
粒子の相当直径は、粒子の最大長さと、当該最大長さに直角な方向で測定される粒子の最大幅の合計の半分(demi−somme)を意味する。
【0015】
係数Fと相当直径は、標準的に、通常は焼結した製品の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した画像を使って、焼結した物質の微細構造の観察から測定される。その微細構造は、断面の方向にかかわりなく、実質的に同一であることが、下記の実施例で検証されている。
【0016】
液相焼結は、慣例の定義により、焼結助剤のうちの少なくとも1種、あるいは幾種かの助剤、又はこれらの助剤のうちの一部のものの組み合わせから形成される相、あるいは焼結しようとする製品の特定の不純物から形成される相が、粒子の再配置を可能にしてその結果それらを互いに接触させるのに十分であるような量の液相を、焼結の熱処理中に形成することができる焼結を意味するものと理解される。後者の場合の1つの周知の例は、特にY3Al512の相である。
【0017】
それにひきかえ、固相焼結は、加えられた焼結を可能にする助剤のいずれも、あるいはこれらの助剤の一部のものの組み合わせも、あるいは焼結しようとする製品の不純物も、粒子の再配置を可能にしてその結果それらを互いに接触させるのに十分であるような量の液相を形成することができない焼結を意味するものと理解される。これは特に、焼結中に液相が生じない場合に当てはまる。固相焼結により得られた製品は一般に、「固相焼結した」と称される。従って、本発明による製品は、元素のイットリウムとアルミニウムを不純物の形以外では含有しないことが好ましい。特に、イットリウムの量は0.05wt%未満であるのが好ましい。
【0018】
本明細書では多くの場合より簡単に「助剤」と称される焼結助剤は、焼結反応を可能にし及び/又は加速させるための一般的に知られた化合物を意味するものと理解される。
【0019】
製品の相対密度は、嵩密度を絶対密度で除したものに等しい比を百分率で表したものを意味するものと理解される。
【0020】
製品の嵩密度は、本発明の目的の範囲内では、製品の重量をその製品が占める体積で除したものに等しい比を意味するものと理解される。
【0021】
製品の絶対密度は、本発明の目的の範囲内では、閉鎖気孔が実質的に残らないような微粉度まで粉砕後の製品の固形分の重量を、粉砕後のこの重量の体積で除したものに等しい比を意味するものと理解される。それはヘリウム比重びん法で測定することができる。
【0022】
「aを含有する」、「aを含む」、又は「aからなる」との表現は、特に指示がない限り、「少なくとも1つからなる」ということを意味するものと理解される。
【0023】
特に指示がない限り、本発明においては、全ての百分率は重量百分率である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例1による試料の走査型電子顕微鏡を使用した観察の間に得られた画像を描写した図である。
図2】例2による試料の走査型電子顕微鏡を使用した観察の間に得られた画像を描写した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に記載するのは、本発明の様々な好ましい実施形態であり、それらはもちろんながら適切な場合には互いに組み合わせてもよい。
【0026】
・前記製品は、0.1wt%と4wt%の間の、ホウ素、チタン、ジルコニウム及び遊離炭素から選ばれる少なくとも1種の他の元素と、合計で2wt%未満のその他の元素を含む。当該その他の元素は本質的に、遊離炭素及び炭化ケイ素とは異なる、他の炭素ベースの相の形、及び不純物の形で存在することができる。「不純物」という用語は、意図することなく且つ回避する余地なく原料とともに持ち込まれた不可避的成分又はこれらの成分との反応の結果生じた成分を意味するものと理解される。不純物は必要な成分でなく、ただ許容されるだけの成分である。このような不純物は、特に、SiCの焼結を妨げるため不都合なものとして知られるシリカからなる。本発明の範囲から逸脱することなしに、SiCあるいは焼結助剤を事前の工程で洗浄することによって、及び/又は焼結中にシリカをなくすため最初の混合物に炭素含有助剤を加えることによって、シリカ不純物を制限することが可能である。
【0027】
上述の焼結助剤は、好ましくは、炭素から、また、ホウ素、チタン及びジルコニウムの炭化物もしくはジルコニウム及びチタンのホウ化物から、単独にあるいは混合物として選択され、例えばB4C、ZrB2、TiC、TiB2及び炭素から、単独にあるいは混合物として選択されるが、言うまでもなくこのリストは全てを網羅したものではなく、またこのような化合物の既知の前駆物質からも選択される。本発明によれば、成分の前駆物質は、焼結中にこの成分をもたらすことができる化合物である。成分をこの成分の「当量」の前駆物質で置き換えることは、得られた焼結製品中の当該成分の量を変更しない。
【0028】
・元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの合計、すなわちB+C1+Ti+Zrは、0.1wt%より多く、好ましくは0.2wt%より多く、より好ましくは0.5wt%より多く、あるいは0.75wt%より多い。
【0029】
・元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの合計は、4wt%より少なく、好ましくは3.2wt%より少なく、好ましくは3wt%より少なく、より好ましくは2.5wt%より少なく、あるいは2wt%より少なく、又は1.5%より少なく、あるいは1wt%より少ない。
【0030】
・遊離炭素の含有量は、2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない。
【0031】
・第1の考えられる好ましい実施形態によれば、製品はホウ素元素と遊離炭素を次の比率、すなわち、
・ホウ素元素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.15wt%より多く、
・ホウ素元素の含有量は0.5wt%より少なく、好ましくは0.4wt%より少なく、あるいは0.3wt%より少なく、
・遊離炭素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.3wt%より多く、好ましくは0.5wt%より多く、
・遊離炭素の含有量は2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤としてB4Cと炭素を使用することに由来することができる。
【0032】
・第2の実施形態によれば、製品はホウ素元素を次の比率、すなわち、
・ホウ素元素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.15wt%より多く、
・ホウ素元素の含有量は0.5wt%より少なく、好ましくは0.4wt%より少なく、あるいは0.3wt%より少なく、
・酸素元素の含有量は0.5wt%未満、好ましくは0.3wt%未満、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤としてB4Cを使用することに由来することができる。
【0033】
・第3の考えられる実施形態によれば、製品は遊離炭素を次の比率、すなわち、
・遊離炭素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.3wt%より多く、好ましくは0.5wt%より多く、
・遊離炭素の含有量は2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤として炭素を使用することに由来することができる。
【0034】
・第4の考えられる実施形態によれば、製品はチタン元素と遊離炭素を次の比率、すなわち、
・チタン元素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.15wt%より多く、
・チタン元素の含有量は0.5wt%より少なく、好ましくは0.4wt%より少なく、あるいは0.3wt%より少なく、
・遊離炭素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.3wt%より多く、好ましくは0.5wt%より多く、
・遊離炭素の含有量は2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤としてTiCと炭素を使用することに由来することができる。
【0035】
・第5の考えられる実施形態によれば、製品はホウ素元素、チタン元素及び遊離炭素を次の比率、すなわち、
・ホウ素元素とチタン元素の合計、すなわちB+Tiは、0.1wt%より多く、好ましくは0.2wt%より多く、
・ホウ素元素とチタン元素の合計、すなわちB+Tiは、0.7wt%より少なく、好ましくは0.6wt%より少なく、あるいは0.5wt%より少なく、あるいは0.4wt%より少なく、
・遊離炭素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.3wt%より多く、好ましくは0.5wt%より多く、
・遊離炭素の含有量は2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤としてTiB2と炭素を使用することに由来することができる。
【0036】
・第6の考えられる実施形態によれば、製品はホウ素元素、ジルコニウム元素及び遊離炭素を次の比率、すなわち、
・ジルコニウム元素とホウ素元素の合計、すなわちZr+Bは、0.1wt%より多く、好ましくは0.2wt%より多く、
・ジルコニウム元素とホウ素元素の合計は、0.7wt%より少なく、好ましくは0.6wt%より少なく、あるいは0.5wt%より少なく、あるいは0.4wt%より少なく、
・遊離炭素の含有量は0.1wt%より多く、好ましくは0.3wt%より多く、好ましくは0.5wt%より多く、
・遊離炭素の含有量は2.7wt%より少なく、好ましくは2wt%より少なく、好ましくは1.4wt%より少なく、あるいは1wt%より少なく、又は0.7wt%より少ない、
という比率で含む。この実施形態は、特に、固相焼結助剤としてZrB2と炭素を使用することに由来することができる。
【0037】
・本発明による焼結製品は、99%より大きく、好ましくは99.5%より大きく、あるいは99.7%より大きい相対密度を有する。
【0038】
・製品中のランタニド元素、アクチニド元素及びイットリウムの総計は、0.05wt%未満、又は0.04wt%未満、あるいは0.03wt%未満である。「ランタニド」元素は、元素の周期律表の57〜71の原子番号を有する元素である。「アクチニド」元素は、元素の周期律表の89〜103の原子番号を有する元素である。
【0039】
・1つの実施形態では、製品中のアルミニウムの含有量は、その製品の重量に対して、1000ppm未満、あるいは500ppm未満、又は300ppm未満である。このような実施形態では、上述のアルミニウム含有量は、製品の重量に対して、好ましくは50ppmより多く、あるいは100ppmより多く、又は200ppmより多い。
【0040】
・伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数は、15%より多く、好ましくは18%より多く、より好ましくは20%より多い。
【0041】
・伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数は、40%より少なく、好ましくは35%より少なく、あるいは30%より少なく、又は25%より少ない。
【0042】
・伸張係数Fが4より大きいSiC粒子の数は、2%より多く、好ましくは4%より多く、好ましくは6%より多く、より好ましくは8%より多い。
【0043】
・伸張係数Fが4より大きいSiC粒子の数は、15%より少なく、より好ましくは12%より少ない。
【0044】
・伸張係数Fが5より大きいSiC粒子の数は、1%より多く、あるいは2%より多い。好ましくは、この数は8%より少ない。
【0045】
・伸張係数Fが6より大きいSiC粒子の数は、7%より少なく、あるいは6%より少ない。
【0046】
・伸張係数Fが8より大きいSiC粒子の数は、5%より少なく、あるいは3%より少なく、又は1%より少ない。
【0047】
・伸張係数Fが3より大きい各粒子は、伸張係数Fが3より大きい少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、他の粒子と接触している。
【0048】
・粒子数で60%超の、好ましくは70%超の、好ましくは80%超の、伸張係数が3より大きい粒子は、2μmより大きい幅lを有する。
【0049】
・粒子数で60%超の、あるいは65%超の、伸張係数が3より大きい粒子は、3μmより大きい幅lを有する。
【0050】
・粒子数で20%超の、好ましくは30%超の、好ましくは40%超の、伸張係数が3より大きい粒子は、4μmより大きい幅lを有する。
【0051】
・粒子数で10%超の、好ましくは20%超の、好ましくは30%超の、伸張係数が3より大きい粒子は、5μmより大きい幅lを有する。
【0052】
・製品中の、粒子数で15%超、好ましくは20%超、あるいは25%超の、その他のSiC粒子(すなわち係数Fが3未満である粒子)は、2より大きい伸張係数Fを有する。
【0053】
・上述のその他の粒子は、2μmより大きい、又は3μmより大きい、あるいは5μmより大きい平均相当直径を有する。より好ましくは、上述のその他の粒子は、9μmより小さい、あるいは7μmより小さい平均相当直径を有する。
【0054】
・本発明による製品は、粒子間に中間ゾーンを含まず、又は実質的に含まず、その酸素含有量は15wt%より多くて、その最大長さは50nm以上である。このような特性は、特に、本発明による焼結製品が固相焼結によって得られることを示している。例えば、電子顕微鏡画像で、そのような中間ゾーンはくぼみの形をしているように見え、製品は200個に等しいSiC粒子の集合において最大で1つのくぼみを含み、有利には500個に等しいSiC粒子の集合において単一のくぼみを含む。1つの好ましい実施形態では、製品はくぼみを少しも含まない。本発明による製品中にそのようなくぼみが存在する場合、その酸素元素の含有量は15%以下、好ましくは12%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、好ましくは5%以下である。
【0055】
・本発明による製品中の酸素元素の総含有量は、好ましくは1.6wt%未満、好ましくは1.4wt%未満、好ましくは1.2wt%未満、好ましくは1wt%未満、あるいは0.7wt%未満、又は0.5wt%未満、あるいは0.3wt%未満である。
【0056】
・SiC、元素の酸素、ホウ素、チタン、ジルコニウム、及び遊離炭素以外の成分は、1.5wt%未満、又は1.2wt%未満、又は1wt%未満、又は0.8wt%未満、又は0.5wt%未満、又は0.3wt%未満、又は0.2wt%未満に相当する。1つの実施形態において、当該成分は、上述の意味の範囲内における不純物である。
【0057】
・1kgで測定した、製品のビッカース硬さHV1は、24GPaより大きく、好ましくは26GPaより大きい。
【0058】
・製品の靱性は2MP・m1/2より大きく、好ましくは2.5MP・m1/2より大きい。
【0059】
・製品中に4Hポリタイプの形で存在する炭化ケイ素の量は、全ての炭化ケイ素ポリタイプの合計を基準として、20%より多く、好ましくは30%より多く、好ましくは40%より多く、好ましくは50%より多く、又は60%より多い。
【0060】
本発明はまた、上述の焼結製品を装甲被覆手段として含む、装甲又は装甲被覆構成材にも関する。このような対象物は、発射体(例えば、銃弾、砲弾、地雷、又は爆発物の爆轟時に発射される要素、例えばボルト、くぎ(あるいは「簡易爆発物」の略号としてのIED)など、から保護するための、本発明による製品で作られた部品、とりわけ、
・車両のための、一般に例えばプレートなどのモジュールの形での、装甲構成材、
・ヘリコプターの座席、
・兵士のヘルメット、
・兵士の胸当て、
を含む要素(とりわけセラミックの装甲又はセラミックの装甲構成材)からなる。
【0061】
この保護用要素は、通常、セラミック(本発明による製品)と、これと組み合わされた、標準的に「裏当て」と呼ばれる裏面の別の材料、一般に延性材料、例えば繊維など、例としてケブラー(商標)繊維又はガラス繊維、あるいは金属、例としてアルミニウムなど、とで作製された、プレートの形をした部品から構成される。
【0062】
衝撃の瞬間に、セラミック材料は破片になる。セラミック材料と組み合わされる裏面の役割は、破片の運動エネルギーを塑性変形により吸収すること、及びセラミックプレートを捕捉しておく一定のレベルを維持することである。
【0063】
本発明による製品は、特に、次の工程、すなわち、
a)次のもの、すなわち、
・炭化ケイ素粒子の粉末、
・固相焼結助剤の粉末、
を含む出発原料を調製する工程、
b)該出発原料を成形して予備成形体の形にする工程、
c)本発明による製品を得るよう該予備成形体を固相焼結する工程、
を含む固相焼結法により得ることができる。
【0064】
このような方法では、粒子の中位径が5μm未満、好ましくは4μmの初期炭化ケイ素粉末を使用する。
【0065】
粉末を構成する粒子の中位径(又はメジアン径)は、本発明の意義の範囲内で、粒径分布特性を調べることで与えられる。レーザー粒径分布アナライザーが、3mm以下の大きさを測定するのを可能にする。粒子の、特に粉末の集合体の「中位径」又は「メジアン径」は、D50パーセンタイル値と呼ばれ、すなわち粒子を体積が等しい第1の集団と第2の集団に分割する寸法であり、これらの第1及び第2の集団はそれぞれ、中位径より大きい粒子又はそれより小さい粒子のみを含む。
【0066】
本発明による製品は、特に、上述の方法により得られ、焼結助剤を炭素から、また、ホウ素、チタン及びジルコニウムの炭化物もしくはジルコニウム及びチタンのホウ化物から、単独にあるいは混合物として選択する。
【0067】
特に好ましい1つの実施形態では、製品は、焼結助剤が炭化ホウ素と炭素との混合物を含むか又はそれらからなる、上述の方法により得られる。
【0068】
本発明による焼結した製品を得るのを可能にする方法に関して、以下により詳しい情報を提示する。
【0069】
最初に使用する炭化ケイ素粉末は、上述の範囲に適合するためにその寸法を小さくすることが必要な場合がある。この寸法の縮小は、一般に、例えばボールミル又はジャーミルなどを使用するような、当業者に知られた技術により炭化ケイ素ボールを用いた微粉砕により行われる。
【0070】
好ましくは、任意選択的な微粉砕後の、使用する炭化ケイ素粉末の中位径は5μm未満、好ましくは4μm未満、好ましくは3μm未満、好ましくは2μm未満、好ましくは1.5μm未満である。
【0071】
好ましくは、炭化ケイ素粉末の酸素元素の含有量は2wt%未満、好ましくは1.6wt%未満、好ましくは1.4wt%未満、好ましくは1.2wt%未満、好ましくは1wt%未満、あるいは0.7wt%未満、あるいは0.5wt%未満、あるいは0.3wt%未満である。1つの実施形態において、炭化ケイ素粉末の酸素元素含有量は、例えば酸洗浄などの当業者に知られた任意の技術により、使用前に低下させてもよい。本発明の1つの基本的な特徴によれば、固相焼結助剤の量とそれらのそれぞれの性質を、工程c)での焼結が固相焼結となるよう適合させて選択する。
【0072】
固相焼結助剤の量は、出発原料の0.1wt%と4wt%の間であるのが好ましい。
【0073】
好ましくは、固相焼結助剤は、
・ホウ素、チタン及びジルコニウムの化合物、例えば炭化物、例としてB4C及びTiC、ホウ化物、例としてZrB2及びTiB2、そしてまたこれらの化合物の前駆物質、及び/又は、
・遊離炭素、そしてまた遊離炭素の前駆物質、例えばフェノール樹脂など、
から選ぶことができる。
【0074】
1つの特に好ましい実施形態では、使用する固相焼結助剤はB4Cと炭素の混合物であり、B4Cの量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.2%より多く、そして0.7%未満、好ましくは0.6%未満、あるいは0.5%未満、又は0.4%未満であり、炭素の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.3%より多く、より好ましくは0.6%より多く、そして3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、あるいは1%未満、又は0.8%未満である。
【0075】
考えられるもう1つの実施形態では、使用する固相焼結助剤はB4Cであって、その量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.2%より多く、そして0.7%未満、好ましくは0.6%未満、あるいは0.5%未満、又は0.4%未満であり、そして出発原料の炭化ケイ素粉末の酸素元素含有量は0.3%未満である。
【0076】
考えられるもう1つの実施形態では、使用する固相焼結助剤は炭素であって、その量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.3%より多く、より好ましくは0.6%より多く、そして3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、あるいは1%未満、又は0.8%未満である。
【0077】
考えられるもう1つの実施形態では、使用する固相焼結助剤はTiCと炭素の混合物であり、TiCの量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.2%より多く、そして0.7%未満、好ましくは0.6%未満、あるいは0.5%未満、又は0.4%未満であり、炭素の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.3%より多く、より好ましくは0.6%より多く、そして3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、あるいは1%未満、又は0.8%未満である。
【0078】
考えられるもう1つの実施形態では、使用する固相焼結助剤はTiB2と炭素の混合物であり、TiB2の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.2%より多く、そして0.7%未満、好ましくは0.6%未満、あるいは0.5%未満、又は0.4%未満であり、炭素の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.3%より多く、より好ましくは0.6%より多く、そして3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、あるいは1%未満、又は0.8%未満である。
【0079】
考えられるもう1つの実施形態では、使用する固相焼結助剤はZrB2と炭素の混合物であり、ZrB2の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.2%より多く、そして0.7%未満、好ましくは0.6%未満、あるいは0.5%未満、又は0.4%未満であり、炭素の量は出発原料の重量百分率として0.1%より多く、好ましくは0.3%より多く、より好ましくは0.6%より多く、そして3%未満、好ましくは2%未満、好ましくは1.5%未満、あるいは1%未満、又は0.8%未満である。
【0080】
1つの実施形態では、出発原料のアルミニウム含有量は、出発原料の重量に対して、1000ppm未満、あるいは500ppm未満、又は300ppm未満である。
【0081】
好ましくは、使用する固相焼結助剤の粉末の中位径は炭化ケイ素粉末の粒子の中位径の1.2倍未満であり、好ましくは炭化ケイ素粉末の粒子の中位径の1.4倍未満、又は1.6倍未満、あるいは非常に好ましくは1.8倍未満である。
【0082】
1つの実施形態では、出発原料は結合剤を含有しない。
【0083】
混合は、種々の成分の分布の良好な均一性が得られるように行われ、この結果を得るために混合時間を適合させることが可能である。
【0084】
好ましくは、混合はボールミルで行い、混合時間は15時間より長い。24時間の混合時間が特に好適である。
【0085】
混合物が得られたならば、セラミックの予備成形体を得るために例えばプレスにより成形されることになる顆粒を得るため、例えば「凍結造粒」によって、それを細分化し又は粒状にすることができる。その他の成形技術、例えば射出成形及びスリップキャスティングなど、を使用してもよい。
【0086】
成形後に、予備成形体を機械加工してもよい。
【0087】
その後、予備成形体を焼結させる。好ましくは、焼結は、焼結する間予備成形体に加えられる圧力の存在下で行う。ホットプレス、熱間等静圧圧縮成形又はSPS(放電プラズマ焼結)の技術が、特に好適である。<部品を一方向にプレスしその後焼結する例での均質性を参照>。
【0088】
焼結温度は1700℃より高く、好ましくは1800℃より高く、好ましくは1850℃より高く、又は1950℃より高く、そして2300℃より低く、又は2200℃より低い。
【0089】
焼結の間圧力を加える場合には、この圧力は10MPaより高く、好ましくは20MPaより高く、好ましくは35MPaより高く、そして500MPaより低く、好ましくは300MPaより低く、あるいは200MPaより低く、あるいは100MPaより低く、あるいは75MPaより低く、あるいは55MPaより低い。
【0090】
高温での保持時間は、特にSPSによる焼結の際は、ゼロであってもよい。好ましくは、この保持時間は0.5分より長く、好ましくは1分より長く、好ましくは2分より長く、好ましくは4分より長く、そして60分より短く、好ましくは30分より短く、好ましくは20分より短く、好ましくは10分より短く、好ましくは6分より短い。5分に等しい焼結時間が特に好適である。
【0091】
最高温度まで昇温する速度は、好ましくは10℃/分より速く、あるいは30℃/分より速く、あるいは50℃/分より速く、あるいは100℃/分より速い。
【0092】
焼結は、管理された雰囲気下で、好ましくは減圧下又はアルゴン下又は窒素下で行う。
【0093】
焼結サイクルの温度及び/又は最高温度での保持時間が、形体係数F>3を有する粒子の存在と量を決定する。
【0094】
焼結後の製品の微細構造を調整するために、次の規準を採用することができる。その規準とは、細長い形状の粒子の数を増加させること、及び/又は粒子の伸張係数を増大させること、及び/又は細長い形状の粒子に補充する粒子の平均相当径を大きくすること、焼結サイクルの最高温度を上昇させること、及び/又は保持時間を長くすること、である。
【実施例】
【0095】
以下の例は、単に実例として示すものであって、説明した実施形態のいずれにおいても本発明の範囲を限定するものではない。
【0096】
〔例1(比較例)〕
比較例1の製品は、サン−ゴバン・セラミクス社により市販されているHexoloy(商標) SA炭化ケイ素製の市販製品である。それは、B4Cと炭素を焼結助剤として使用する固相焼結により製造されている。それは、発射体からの保護のために装甲被覆構成材として軍事施設で広く使用されている。
【0097】
〔例2(本発明による)〕
本発明による例2の製品は、次のようにして得られる。
以下のもの、すなわち、
・1876gの水、
・酸洗浄後の、比表面積が8.6m2/gであり、中位粒径が1.08μmに等しく、酸素元素の含有量が0.27wt%に等しくて、98wt%より多くが炭化ケイ素粒子からなる、1927gの炭化ケイ素粉末、
・中位粒径が3.6μmに等しく、B4C含有量が98%より多い、サン−ゴバン・インダストリアル・セラミクス社によりNorbide Boron Carbide(商標)の呼称で販売されているB4C炭化ホウ素粉末であって、B4C粉末、すなわち第1の焼結助剤の重量が炭化ケイ素とB4C粉末の総重量の0.3%に相当する、5.9gのB4C炭化ホウ素粉末、
・Durez社により販売されており、第2の焼結助剤として使用される、炭素の前駆物質である、42.3gのPlyophen 43290(商標)、
・BASF社により販売されている、0.79gの、すなわち炭化ケイ素粉末の重量の0.04%である、Castament FS10(商標)、
を混合して、スリップを調製した。
【0098】
固形分の含有量はスリップの重量の50%に等しい。
【0099】
スリップのpHを、水酸化アンモニウムを加えて11.5に調整する。スリップに結合剤は入れない。混合は、Clypebsを用いたジャーミルで48時間行う。
【0100】
次に、スリップをステンレス鋼のトレイ内に厚さが4cmに等しいシートの形でもって流し込む。次いでこのシートを、8μm/sに等しい固化フロント速度で凝固させる。
【0101】
凝固後、温度が−20℃に等しく400μbarに等しい減圧下に凝固したシートを配置して、氷の結晶を昇華により除去する。次に、生じた凝集物を乾燥させるため、温度を40℃まで上昇させる。
【0102】
得られた凝集物を、凝集物の中位径が3μmと50μmの間の凝集物粉末が得られるように、2つの移動体(ディスクとリング)を内部に含む振動ボウルを備えたSodemi社からのモデルCB220ミル機でもって粉砕する。残留含水量は0.6%に等しい。
【0103】
凝集物粉末を、焼結後に直径が80mmに等しく厚さがほぼ4mmの焼結した部品が得られるように、SPS(放電プラズマ焼結又はフラッシュ焼結)ダイに入れる。
【0104】
SPS工程は次のとおり、すなわち、
・2000℃の温度まで50℃/分で昇温、
・2000℃で5分温度保持、
・50℃/分の制御した冷却で600℃まで降温、
・600℃から周囲温度まで自由な冷却により降温、
である。
【0105】
昇温サイクルと温度保持の間に適用される圧力は40MPaである。ダイの直径は8mmである。使用する粉末の重量は66gである。
【0106】
〔例3(比較例)〕
比較例3の製品は、今回は液相焼結によって得られ、SiC粒子の間に、元素のY、Al、Si及びOを本質的に含む結晶した形態の二次的な相を含有している炭化ケイ素製品である。
【0107】
それは次の方法に従って製造される。
以下のもの、すなわち、
・2212gの水、
・比表面積が25m2/gであり、中位粒径が0.43μmに等しく、酸素元素の含有量が1.7wt%に等しく、98%より多くの炭化ケイ素を含有している、2205gのStark UF25(商標)炭化ケイ素粉末、
・Baikowski社により販売されており、中位粒径が0.18μmに等しく、Y3Al512含有量が99.5%より多い、245gのYAG(Y3Al512)粉末であって、このY3Al512粉末の総重量は合計の粉体重量(炭化ケイ素+Y3Al512)の10%に相当するYAG粉末、
・BASF社により販売されている、0.86gの、すなわち炭化ケイ素粉末の重量の0.039%である、Castament FS10(商標)、
を混合してスリップを調製した。固形分含有量はスリップの重量の50%に等しい。スリップのpHを、1Mの水酸化ナトリウムを加えて11.5に調整した。スリップに結合剤は入れなかった。
【0108】
混合は、Clypebsを用いたジャーミルで24時間行った。
【0109】
次に、スリップをステンレス鋼のトレイ内に厚さが4cmに等しいシートの形でもって流し込む。次いでこのシートを、8μm/sに等しい固化フロント速度で凝固させる。
【0110】
凝固後、凝固したシートを温度が−20℃に等しく400μbarに等しい減圧下に配置して、氷の結晶を昇華により除去する。次に、生じた凝集物を乾燥させるため、温度を40℃まで上昇させる。
【0111】
得られた凝集物を、凝集物の中位径が3μmと50μmの間の凝集物粉末が得られるように、2つの移動体(ディスクとリング)を内部に含む振動ボウルを備えたSodemi社からのモデルCB220ミル機でもって粉砕する。残留含水量は0.6%に等しい。
【0112】
60MPaに等しい圧力での低温単一方向プレスにより寸法が80×80×12mm3の予備成形体を得、次に、焼結した部品を得るため、次のサイクルでもってアルゴン下で焼結する。そのサイクルとは、
・400℃まで800℃/時間の速度で昇温、
・400℃から1000℃まで400℃/時間に等しい速度で昇温、
・1000℃から1775℃まで230℃/時間に等しい速度で昇温、
・1775℃から1875℃まで100℃/時間に等しい速度で昇温、
・1875℃で0.5時間温度保持、
・自由な冷却により降温、
というものである。
【0113】
上述の例1〜3により得られた製品の特徴と性質を、下記の方法により評価する。
【0114】
かさ密度は、浮力の原理によって、含浸により測定する。
【0115】
絶対密度は、最大寸法が160μm未満の粉砕した製品の粉末について、Micromeretics社からのAccuPyc 1330(商標)装置を使用してヘリウム・ピクノメトリーにより測定する。
【0116】
例1〜3の製品を構成している物質の微細構造は、当該製品の断面の走査型電子顕微鏡検査の通常の方法により調べる。
【0117】
より具体的に言うと、試料を次のようにして、すなわち、
・ダイヤモンドソーを使って物質の断面を作製し、
・鏡の品質が得られるまで研磨し、
・粒子と粒界をあらわにすることを目的として薬品で腐食する、
ようにして作製する。この薬品での腐食は、鏡品質の研磨した試料を、60mlの水、17gのヘキサシアノ鉄酸カリウム及び20gの水酸化カリウムの混合物を沸点にして、この混合物に15分間浸漬させるものである。
【0118】
この作製後に、例1〜3による試料の断面を通例の電子顕微鏡検査技術により観察する。
【0119】
添付の図1と2は、それぞれ例1と例2による試料の、走査型電子顕微鏡を使用した観察の間に得られた画像を描写したものである。これらの写真で観測されたのは、明らかな中間のくぼみなしに互いに直接結合した粒子(10)の集合体である。
【0120】
本発明により、また添付の図1と2により例示した画像から、各粒子について、上述の意義の範囲内での、粒子(10)の長さLと幅l、そしてまた対応する伸張係数Fが求められる。これらの画像でこうして分析された本発明による粒子の数は、ほぼ1300個である。この係数は、各物質を構成しているSiC粒子の異方性を表すものである。
【0121】
本発明の範囲から逸脱することなく、画像の処理を速くするために、言うまでもなく任意の既知の画像処理ソフトウェア、例えばimageJ(商標)ソフトウェアなど、を用いて伸張係数の測定を自動化することができよう。例えば、出願人の会社により、「Fit楕円」関数を使用してこのソフトウェアにより行った測定から、電子顕微鏡画像での直接の測定により得られたものと実質的に同一の結果が得られたことが確認されている。
【0122】
製品の酸素含有量は、次の方法により測定する。160μm未満の大きさに粉砕し乾燥させた製品をグラファイトのるつぼに入れ、LECO TC 436 DR分析器内に配置し、そしてヘリウムの下で熱分解させる。発生するガスを校正した赤外線検知器で分析する。COとCO2の発生量の測定から酸素含有量を求める。
【0123】
製品の遊離炭素の含有量は、次の方法により測定する。
・160μm未満の大きさに粉砕した製品の試料の総炭素含有量を、ANSI B74.15−1992(R2007)標準規格に従って、「抵抗炉手法」の方法により測定する。この含有量をCT1とする。
・160μm未満の大きさに粉砕した製品の試料の酸素含有量を、上述の方法により測定する。この含有量をO1とする。
・160μm未満の大きさに粉砕した製品の試料を750℃に等しい温度の空気中で、試料の重量増加に必要な保持時間の間熱処理する。重量増加が観測されたならば、試料を即座に炉から取り出す。この試料について、総炭素含有量をANSI B74.15−1992標準規格に従って「抵抗炉手法」の方法により測定し、そして酸素含有量を上述の方法により測定して、それぞれをCT2及びO2とする。
・O2−O1の量が、750℃の空気中での熱処理の間のSiCの酸化に由来する酸素の量に等しい。この酸素量を、CT3=12×(O2−O1)/32の式により、相当炭素量CT3に換算する。
・製品の遊離炭素含有量C1を、C1=CT1−CT2−CT3の計算式により求める。
【0124】
製品中のホウ素含有量は、250℃での炭酸カリウムによる製品の分解後の浸出物についてのICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)により通常のようにして、定量分析で測定する。
【0125】
製品中のその他の元素の含有量は、テトラホウ酸リチウムでの製品の腐食後に得られるビーズのX線蛍光分析により求める。
【0126】
製品中に4Hポリタイプとして存在する炭化ケイ素の量は、リートフェルト法を用い、X線回折により測定する。本発明による例2の製品中に4Hポリタイプとして存在する炭化ケイ素の量は、測定した全ての炭化ケイ素ポリタイプの合計量を基準として、58%に等しく、残りは本質的に6Hポリタイプからなる。
【0127】
発射体の浸入に対する耐性は、次に説明する「浸入深さ試験」法によって測定する。
【0128】
アルミニウム2024で製作した150×150×60mm3の寸法の部品が「支持体」を構成する。この部品は、その大きな面のうちの1つに、試験しようとする炭化ケイ素の部品の寸法を有するハウジングを有し、すなわちここでは、本発明による製品については80mmに等しい直径と4mmに等しい深さを有するハウジング、そして比較例1と3の製品については60mm×60mmに等しい断面と4mmに等しい深さを有するハウジングを有する。ハウジングと試験しようとする炭化ケイ素の部品との間には、最大で0.5mmの隙間がある。
【0129】
上記の寸法に機械加工してから、試験しようとする炭化ケイ素の部品をLoctite接着剤を使ってハウジング内に接着結合させる。
【0130】
次に、この集成体に、炭化タングステンのコアからなり、集成体から15mに等しい距離から930m/sの速度で発射されたAP8 7.62×51mmの浸入発射体の衝撃を加え、この発射体は炭化ケイ素の部品に実質的に垂直に撃ち当たるように発射される。
【0131】
衝撃後に、アルミニウムの「支持体」中への発射体の浸入の深さを深さゲージで測定する。
【0132】
例1〜3により得られた製品について行った方法と測定の主要な特徴を下記の表1で報告する。
【0133】
【表1】
【0134】
表1で報告するデータが示すように、厚さが4mmに等しい炭化ケイ素装甲被覆材で保護されたアルミニウム2024の支持体へのAP8 7.62×51銃弾の侵入量は、比較例の製品については17.1mmに等しく、本発明による製品についてはわずか12.3mmに過ぎず、すなわち支持体への侵入量は28%減少している。
【0135】
比較例3による焼結製品は本発明による焼結製品(例2)よりも耐衝撃性がはるかに悪いことも分かる。この違いは、得られた焼結製品において粒界に第2相を生じさせ、その存在が発射体の衝撃に対する焼結した材料の耐性にとって不利であると思われる、炭化ケイ素の液相焼結により説明することができよう。
【0136】
言うまでもなく、本発明は、一例として提示し、説明及び解説した実施形態に限定されるものではない。特に、説明した種々の実施形態の組み合わせもやはり本発明の範囲内に入るものである。
【0137】
本発明はまた、上述の炭化ケイ素を基礎材料とした焼結製品の形状と寸法とに限定されるものでもない。
本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
炭化ケイ素粉末と焼結助剤の固相焼結により得られる製品であり、98.5%より大きい相対密度を有するとともに、
・粒子の形で存在するSiCを92wt%超、
・元素の酸素を2wt%未満、
・その他の元素を合計で6wt%未満、
含む製品であって、
・SiC粒子の総数に基づいて粒子数で10%超のSiC粒子が、3より大きい伸張係数Fを有し(F>3)、
・伸張係数Fが3より大きい前記粒子のうちの粒子数で50%超が、3μmより大きい幅を有し、
・当該製品中のその他のSiC粒子が、1μmより大きく20μmより小さい平均相当直径を有すること、且つ、
伸張係数Fが6より大きいSiCの数が7%未満であることを特徴とする、炭化ケイ素粉末と焼結助剤の固相焼結により得られる製品。
《態様2》
ホウ素、チタン、ジルコニウム及び遊離の炭素から選ばれる少なくとも1種の他の元素を0.1wt%と4wt%の間の量含み、その他の元素を合計して2wt%未満含む、態様1記載の製品。
《態様3》
元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの重量での合計が0.2wt%と3.2wt%の間である、態様2記載の製品。
《態様4》
元素のホウ素、遊離炭素、チタン及びジルコニウムの重量での合計が2wt%未満である、態様1〜3の1つに記載の製品。
《態様5》
焼結助剤が、炭素又は、ホウ素、チタン及びジルコニウムの炭化物、又はジルコニウム及びチタンのホウ化物から、単独に又は混合物として選ばれている、態様1〜4の1つに記載の製品。
《態様6》
0.1wt%と0.5wt%の間のホウ素及び0.1wt%と2.7wt%の間の遊離炭素を含んでいる、態様1〜5の1つに記載の焼結した製品。
《態様7》
焼結助剤が炭化ホウ素と炭素との混合物を含むか又は該混合物からなる、態様6記載の製品。
《態様8》
相対密度が99%より大きい、態様1〜7の1つに記載の焼結した製品。
《態様9》
当該製品中のランタニド元素、アクチニド元素及びイットリウムの総計が0.05wt%未満である、態様1〜8の1つに記載の焼結した製品。
《態様10》
当該製品の重量に対するアルミニウムの含有量が1000ppm未満且つ50ppm超である、態様1〜9の1つに記載の焼結した製品。
《態様11》
伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数が15%より多く40%より少ない、好ましくは18%より多く35%より少ない、態様1〜10の1つに記載の製品。
《態様12》
伸張係数Fが3より大きいSiC粒子の数で60%より多くが3μmより大きい幅を有する、態様1〜11の1つに記載の製品。
《態様13》
伸張係数Fが4より大きいSiC粒子の数が2%より多く、好ましくは15%未満である、態様1〜12の1つに記載の製品。
《態様14》
伸張係数Fが5より大きいSiC粒子の数が1%より多く、好ましくは8%未満である、態様1〜13の1つに記載の製品。
《態様15》
伸張係数Fが8より大きいSiC粒子の数が1%未満である、態様1〜14の1つに記載の製品。
《態様16》
伸張係数Fが3より大きい各粒子が、伸張係数Fが3より大きい少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つの、他の粒子と接触している、態様1〜15の1つに記載の製品。
《態様17》
更に、伸張係数Fが3より大きい粒子のうちの20%より多く、好ましくは30%より多くが、4μmより大きい幅を有する、態様1〜16の1つに記載の製品。
《態様18》
当該製品中の前記その他のSiC粒子のうちの数で15%より多く、好ましくは数で20%より多くが、2より大きい伸張係数Fを有する、態様1〜17の1つに記載の製品。
《態様19》
当該製品中の前記その他のSiC粒子の平均相当直径が2μmより大きく、好ましくは9μmより小さい、態様1〜18の1つに記載の製品。
《態様20》
当該製品中の前記その他のSiC粒子が、4μmより大きい平均相当直径、好ましくは5μmより大きい平均相当直径を有する、態様19記載の製品。
《態様21》
粒子間の中間ゾーンを含まず、又は実質的に含まず、その酸素含有量は15wt%より多くて、その最大長さは50nm以上である、態様1〜20の1つに記載の製品。
《態様22》
酸素元素の全含有量が1wt%未満である、態様1〜21の1つに記載の製品。
《態様23》
態様1〜22の1つに記載の焼結した製品を装甲手段として含む装甲又は装甲被覆構成材。
図1
図2