(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240187
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】トリチル化アルキルアリールエーテル
(51)【国際特許分類】
C07C 43/205 20060101AFI20171120BHJP
C10L 1/185 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
C07C43/205 CCSP
C10L1/185
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-520614(P2015-520614)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-522035(P2015-522035A)
(43)【公表日】2015年8月3日
(86)【国際出願番号】US2013048881
(87)【国際公開番号】WO2014008164
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】61/668,535
(32)【優先日】2012年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・デイヴィット・グリーン
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド・スウェド
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・バタリック
【審査官】
安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/038743(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/177987(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/165839(WO,A1)
【文献】
米国特許第05981283(US,A)
【文献】
欧州特許第02441745(EP,B1)
【文献】
特表平08−511551(JP,A)
【文献】
特開2002−146371(JP,A)
【文献】
特表2016−520549(JP,A)
【文献】
特表2014−517140(JP,A)
【文献】
特表2015−520141(JP,A)
【文献】
日本化学会誌,1938年,59,451-456
【文献】
Boyd, D. R.; Hardy, D. V. N.,Introduction of the triphenylmethyl group into phenols,Journal of the Chemical Society,1928年,630-638
【文献】
Iddles, H. A.; Minckler, H. L.,Rearrangement of the triphenylmethyl ether of o-cresol: direct synthesis of 3-methyl-4-methoxyphenyltriphenylmethane,Journal of the American Chemical Society,1940年,62,2757-2759
【文献】
Hardy, Douglas V. N.,Introduction of the teiphenylmethyl group into phenols. II,Journal of the Chemical Society ,1929年,1000-1011
【文献】
Funakubo, Eiichi; Matsui, Toji,Introduction of the triphenylmethyl group. V. The mobility of the bromine atom in triphenylmethylisochavibetol and in its derivatives. 2,Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft [Abteilung] B: Abhandlungen,1938年,71B,942-947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ph3C)mAr(R1)j(OR2)nを有する化合物であって、式中、Phは、フェニル基を示し、Arは、C6−C12ヒドロカルビル芳香族環であり、R1は、独立して、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非置換飽和C2−C18ヒドロカルビル基または、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基であり、R2は、独立して、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基または、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基であり、
mは、1または2であり、jは、1から4の整数であり、および、nは1から3の整数である、前記化合物。
【請求項2】
jは、1から3の整数であり、およびnは、1または2である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R1は、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非置換飽和C2−C12ヒドロカルビル基または、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非置換非芳香族C4−C12ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非置換非芳香族C4−C12ヒドロカルビル基である請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Arは、ベンゼン環であり、jは、1または2であり、nは1であり、R1は、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非置換飽和C2−C8ヒドロカルビル基であり、R2は、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非置換非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基であり、およびmは、1である請求項3記載の化合物。
【請求項5】
石油炭化水素に、または生物由来液体燃料に、式(Ph3C)mAr(R1)j(OR2)nを有し、式中、Phは、フェニル基を示し、Arは、6から20の炭素原子を有する芳香族環であり、R1およびR2は、独立して、置換基として1以上のOH基を有していてもよくかつ直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非芳香族C1−C18ヒドロカルビル基または、置換基としてOH基もしくはC1−C18アルコキシ基を有していてもよく、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基であり、mは、1または2であり、jは、1から4の整数であり、および、nは1から3の整数である少なくとも一種の化合物を添加することを含み、式(Ph3C)mAr(R1)j(OR2)nを有する各化合物が、0.01ppmから20ppmの値で存在する石油炭化水素または生物由来液体燃料の標識方法。
【請求項6】
Arは、C6−C12ヒドロカルビル芳香族環であり、jは、1から3の整数であり、およびnは、1または2である請求項5記載の方法。
【請求項7】
R1は、置換基として1以上のOH基を有していてもよくかつ直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非芳香族C2−C12ヒドロカルビル基または、置換基としてOH基もしくはC1−C18アルコキシ基を有していてもよく、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非芳香族C4−C12ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非芳香族C4−C12ヒドロカルビル基である請求項6記載の方法。
【請求項8】
R2は、置換基として1以上のOH基を有していてもよくかつ直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基または、置換基としてOH基もしくはC1−C18アルコキシ基を有していてもよく、直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有しかつ、それぞれが、対応する非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基の2つの炭素原子間の結合中に挿入されている1〜6個の酸素もしくは硫黄原子を含有する、酸素もしくは硫黄含有非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基である請求項7記載の方法。
【請求項9】
Arは、ベンゼン環であり、jは、1または2であり、nは、1であり、R1は、置換基として1以上のOH基を有していてもよくかつ直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非芳香族C2−C8ヒドロカルビル基であり、R2は、置換基として1以上のOH基を有していてもよくかつ直鎖、分岐もしくは環式配置の炭素原子を有する非芳香族C4−C18ヒドロカルビル基でありおよび、mは1である請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体炭化水素ならびに他の燃料および油の標識方法における有益で新しい化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油炭化水素ならびに他の燃料および油を様々な種類の化学マーカーで標識することは、当該技術分野においてよく知られている。標識を検出する多数の方法、例えば、吸光分光法および質量分析法と共に、様々な化合物がこの目的のために使用されてきた。例えば、米国特許第7,858,373号では、液体炭化水素ならびに他の燃料および油を標識するために用いる様々な有機化合物の使用を開示している。しかし、これらの生成物には、更なるマーカー化合物が常に必要とされていた。マーカーの組み合わせは、標識する生成物のコードを形成する量の割合を用いて、デジタルマーキングシステムに用いられる。燃料および潤滑油マーカーとして更なる有益な化合物は、利用可能なコードを最大化することが望ましい。本発明が解決するべき問題は、液体炭化水素ならびに他の燃料および油を標識する更なる有益なマーカーを見つけることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、式(Ph
3C)
mAr(R
1)
j(OR
2)
nを有する化合物であって、式中、Phは、フェニル基を示し、Arは、6から20の炭素原子を有する芳香族環系であり、R
1およびR
2は、独立してC
1−C
18アルキルまたはC
4−C
18ヘテロアルキルであり、mは、1または2であり、jは、1から4の整数であり、および、nは1から3の整数である、前記化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、更に石油炭化水素または生物由来液体燃料の標識方法を提供する。前記方法は、式(Ph
3C)
mAr(R
1)
j(OR
2)
nを有し、式中、Phは、フェニル基を示し、Arは、6から20の炭素原子を有する芳香族環系であり、R
1およびR
2は、独立してC
1−C
18アルキルまたはC
4−C
18ヘテロアルキルであり、mは、1または2であり、jは、1から4の整数であり、および、nは1から3の整数である
少なくとも一種の化合物
を石油炭化水素または生物由来液体燃料に添加することを含み、式(Ph
3C)
mAr(R
1)
j(OR
2)
nを有する各化合物は、0.01ppmから20ppmの水準で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
特に明記されない限り、パーセンテージは、重量パーセント(wt%)および温度は ℃で示される。濃度は、重量/重量または重量/体積(mg/L)のいずれかに基づいて計算する100万分の1(ppm)で表される。好ましくは、重量/体積に基づいて計算する。「石油炭化水素」という用語は、組成の多くが炭化水素である生成物を意味し、少量の酸素、窒素、硫黄またはリンを含んでも良いが、石油炭化水素には、原油だけでなく石油精製過程で生じる生成物も含まれ、それには、例えば、原油、潤滑油、油圧油、ブレーキ液、ガソリン、ディーゼル燃料、灯油、ジェット燃料および暖房用の油が含まれる。本発明のマーカー化合物は、石油炭化水素または生物由来液体燃料に添加することができ、生物由来液体燃料の例としては、バイオディーゼル燃料、エタノール、ブタノール、エチルtert−ブチルエーテルまたはそれらの混合物である。物質は、20℃で液体状態であれば、液体であると考えられる。バイオディーゼル燃料は、生物由来の燃料であり、脂肪酸アルキルエステル、特にメチルエステルの混合物を含む。バイオディーゼル燃料は、動物性脂肪を使用しても良いが、通常、純粋な、またはリサイクルされた植物油をエステル交換することにより生成される。エタノール燃料は、エタノールを含むどのような燃料でも良く、純粋なもの、または石油炭化水素、例えば、「ガソホール」との混合物である。「アルキル」基は、直鎖、分岐、または環式配置の1から22の炭素原子を有する置換若しくは非置換のヒドロカルビル基である。アルキル基上での1以上のOHまたはアルコキシ基の置換は、許容される。本明細書中の別の箇所に記載する他の基も許容され得る。好ましくは、アルキル基は、飽和している。好ましくは、アルキル基は、非置換である。好ましくは、アルキル基は、直鎖または分岐である。「アリール」基は、芳香族炭化水素化合物から生じる置換基である。アリール基は、合計6〜20個の環原子を有し、特に明記されない限り、分離または縮合する1以上の環を有する。アリール基を1以上のアルキルまたはアルコキシ基に置換することは、許容される。「ヘテロアルキル」基は、1以上のメチレン基がOまたはSで置換されたアルキル基である。好ましくは、1〜6個のOまたはS原子を含むヘテロアルキル基であり、好ましくは、1〜4個、好ましくは、1〜3個である。OまたはSで置換されたメチレン基は、
対応するアルキル基中の2個の別の炭素原子と結合した。好ましくは、ヘテロアルキル基には、S原子は含まれない。好ましくは、ヘテロアルキル基は、飽和している。ヘテロアルキル基は、OHまたはC
1−C
18アルコキシ基によって置換されても良く、好ましくは、OHまたはC
1−C
6アルコキシ基であり、好ましくは、ヒドロキシまたはC
1−C
4アルコキシ基である。ヘテロアルキル基の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドのオリゴマーが含まれ、それらは、アルキレンオキシド(好ましくは、2から4、好ましくは、2または3)および末端ヒドロキシまたはC
1−C
6アルコキシ基(好ましくは、ヒドロキシまたはC
1−C
4アルコキシ、好ましくは、ヒドロキシまたはメトキシ、好ましくは、ヒドロキシ)の2から6単位を有し、エチレンオキシドオリゴマーの一例は、‐{(CH
2)
2O}
xR
3であり、式中、xは、2から6の整数、およびR
3は、水素またはC
1−C
6アルキルである。好ましくは、jは、2から4、好ましくは、2または3である。好ましくは、R
3は、水素またはC
1−C
4アルキル、好ましくは、水素またはメチルであり、好ましくは、水素である。好ましくは、本発明の化合物は、天然の同位体の割合で元素を含む。
【0006】
Arは、6から20の炭素原子を有する芳香族環系であり、置換基にはPh
3C、R
1およびOR
2基が含まれ、好ましくは、置換基のみが、Ph
3C、R
1およびOR
2基であるものである。好ましくは、Arは、C
6−C
12ヒドロカルビル芳香族環系である。好ましくは、Arは、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、フェニルエーテル、ジフェニルメタンまたはアルキルおよび/またはアルコキシ基で置換された前記の系のうちの1つであり、好ましくは、ベンゼンである。好ましくは、nは、1または2であり、好ましくは、1である。好ましくは、mは、1である。好ましくは、jは、1から3であり、好ましくは、1または2である。好ましくは、R
1は、C
2−C
12アルキルまたはC
4−C
12ヘテロアルキル、好ましくは、C
2−C
12アルキル、好ましくは、C
3−C
8アルキルまたはC
4−C
8ヘテロアルキル、好ましくは、C
2−C
8アルキル、好ましくは、C
3−C
8アルキル、好ましくは、C
3−C
6アルキル、好ましくは、C
2−C
6アルキル、好ましくは、C
2−C
5アルキル、好ましくは、sec−ブチル、t−ブチルまたはイソプロピルである。好ましくは、R
1は、飽和している。好ましくは、R
1は、直鎖または分岐である。好ましくは、R
2は、C
2−C
18アルキルまたはC
4−C
18ヘテロアルキル、好ましくは、C
4−C
18アルキルまたはC
4−C
18ヘテロアルキル、好ましくは、C
2−C
18アルキル、好ましくは、C
3−C
18アルキルまたはC
4−C
12ヘテロアルキル、好ましくは、C
3−C
18アルキル、好ましくは、C
4−C
18アルキル、好ましくは、C
6−C
18アルキル、好ましくは、C
6−C
16アルキル、好ましくは、C
10−C
14アルキルである。好ましくは、R
2は、飽和している。好ましくは、R
2は、直鎖または分岐であり、好ましくは、分岐である。
【0007】
本発明の化合物をマーカーとして使用する場合、好ましくは、標識する液体に添加する各化合物の最小量は、少なくとも0.01ppm、好ましくは、少なくとも0.02ppm、好ましくは、少なくとも0.05ppm、好ましくは、少なくとも0.1ppm、好ましくは、少なくとも0.2ppmである。好ましくは、各マーカーの最大量は、は、50ppm、好ましくは、20ppm、好ましくは、15ppm、好ましくは、10ppm、好ましくは、5ppm、好ましくは、2ppm、好ましくは、1ppm、好ましくは、0.5ppmである。好ましくは、マーカー化合物の最大合計量は、100ppm、好ましくは、70ppm、好ましくは、50ppm、好ましくは、30ppm、好ましくは、20ppm、好ましくは、15ppm、好ましくは、12ppm、好ましくは、10ppm、好ましくは、8ppm、好ましくは、6ppm、好ましくは、4ppm、好ましくは、3ppm、好ましくは、2ppm、好ましくは、1ppmである。好ましくは、マーカー化合物は、マークした石油炭化水素または生物由来液体燃料において視覚手段によって検出されず、すなわち、肉眼で色や他の特徴を観察することにより、マーカー化合物が含まれることを判断することは不可能である。好ましくは、マーカー化合物は、添加される石油炭化水素または生物由来液体燃料の中に、石油炭化水素または生物由来液体燃料のそれ自体の構成成分として通常存在せず、または、そこに使用される添加剤として通常存在しない。
【0008】
好ましくは、マーカー化合物のlogP値は、少なくとも3であり、Pは、1−オクタノール/水分配係数である。好ましくは、マーカー化合物のlogPは、少なくとも4、好ましくは、少なくとも5である。LogP値については、文献中で実験的に決定されず、報告されなかったが、Meylan,W.M&Howard,P.H.,J.Pharm.Sci.,vol.84,pp.83−92(1995)で開示されている方法を用いて、推定可能である。好ましくは、石油炭化水素または生物由来液体燃料は、石油炭化水素であり、バイオディーゼル燃料またはエタノール燃料であり、好ましくは、石油炭化水素またはバイオディーゼル燃料、好ましくは、石油炭化水素であり、好ましくは、原油、ガソリン、ディーゼル燃料、灯油、ジェット燃料または暖房用の油、好ましくは、ガソリンである。
【0009】
好ましくは、マーカー化合物は、クロマトグラフィ技術、例えば、ガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、ペーパークロマトグラフィ、吸着クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、イオン交換および分子排除クロマトグラフィにより、石油炭化水素または生物由来液体燃料の構成成分から少なくとも一部を分離させることにより検出される。クロマトグラフィについで、少なくとも次のうちの1つ、(i)質量スペクトル解析および(ii)FTIRが行われる。マーカー化合物の特定は、好ましくは、質量スペクトル解析により決定される。好ましくは、質量スペクトル解析を使用して、分離を行うことなく、石油炭化水素または生物由来液体燃料中のマーカー化合物を検出する。若しくは、分析の前にマーカー化合物を濃縮しても良く、例えば、いくつかの石油炭化水素または生物由来液体燃料の揮発性成分を蒸留することにより行う。
【0010】
好ましくは、複数のマーカー化合物が存在する。複数のマーカー化合物を使用することにより、石油炭化水素または生物由来液体燃料の原産地および他の特徴を特定するために使用し得るコード化情報を石油炭化水素または生物由来液体燃料に組み込むことが容易になる。コードには、性質および相対量、例えば、マーカー化合物の固定小数点整数の比が含まれる。1、2、3またはそれ以上のマーカー化合物を用いてコードを作っても良い。本発明によるマーカー化合物は、他の種類のマーカーと組み合わせても良く、例えば、吸光分光法により検出されるマーカーは、米国特許第6,811,575号、米国特許出願公開第2004/0250469号、および欧州特許出願公開第1,479,749号に開示されるものも含まれる。マーカー化合物は、石油炭化水素または生物由来液体燃料内に直接配置され、または、別の化合物を含む添加剤パッケージ内、例えば、潤滑用の耐摩耗添加剤、ガソリン用合成洗剤などに配置され、添加剤パッケージは、石油炭化水素または生物由来液体燃料に添加される。
【0011】
本発明の化合物は、公知の方法により調製されても良く、例えば、ハロゲン化トリチルまたはアルコールを用いてアルキルフェノールまたはアルキルポリヒドロキシ芳香族のアルキル化を行った後、塩基の存在下において有機ハロゲン化合物のアルキル化を行う方法がある。例えば、トリチル化アルキルフェノールエーテルを下記の反応スキームにより調製しても良い。
【化1】
Arがベンゼン以外の対応する化合物は、対応する置換された芳香族の出発物質から調製しても良い。
【実施例】
【0012】
トリチルアルキルフェノールの典型的な合成工程を下記に示す。
2−(sec−ブチル)−4−トリチルフェノール:250mLの1つ口フラスコにマグネチックスターラおよび窒素ブランケットを備えた還流冷却器を装着した。フラスコにトリチルアルコールを6.52グラム(0.025モル)、o−sec−ブチルフェノールを3.77グラム(0.025モル)、および氷酢酸を50mL投入した。混合液を窒素下で、室温にて撹拌したところ、透明で黄色い溶液を得た。ついで濃硫酸(5mL)を一度に添加した。溶液は、すぐに暗赤褐色になった。溶液を室温にて、2日間撹拌し、その間に、固体が分離した。反応混合物をろ過し、固体をフィルター上で数回水で洗浄した。真空オーブンにて、65℃で3時間乾燥後、生成物の収率は7.34グラム(収率75%)であった。MP=135〜136℃である。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析により、純度>99%を示した。その構造を赤外線(IR)、
1H−および
13C−核磁気共鳴(NMR)分析によって確認した。
【0013】
下記の工程により調製されるトリチルアルキルフェノール化合物を下記の表1に列挙した。
【表1】
【0014】
トリチルアルキルアリールエーテルの典型的な合成工程を下記に示す。
((3−(sec−ブチル)−4−(デシルオキシ)フェニル)メタントリチル)トリベンゼン(DecTsBuPh):500mLの3つ口フラスコにマグネチックスターラ、窒素ブランケットを用いた還流冷却器、温度調節器、およびサーモカップルを備えたマントルヒーターを装着した。フラスコにTritosBuPhOHを39.32グラム(0.1モル)、85%の水酸化カリウムペレット6.64グラム(0.1モル)を250mLのジメチルスルホキシドと共に投入した。混合液を110℃まで加熱しながら、窒素下で、撹拌した。全ての水酸化カリウムが溶解した時、その暗色の反応混合物を50℃まで冷却した。そしてブロモデカン(20.7mL、22.12グラム、0.1モル)を一部添加した。約60℃の発熱が観察された。60℃で加熱を8時間維持して、反応混合物を約2グラムの水酸化カリウムペレットおよび約15グラムの塩化ナトリウムを含む約1200mLの水に注いだ。トルエン(約300mL)を加え、混合液を室温で約1時間撹拌した。混合液を分液漏斗に移し、層を分離した。水層を1×100mLのトルエンで洗浄し、洗浄液を元のトルエン層に合わせた。トルエン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。ろ過後、トルエンを回転蒸発により除去し、49.48グラムの生成物を赤色の油として得た。収率は93%であった。その構造を赤外線(IR)、
1H−
13C−核磁気共鳴(NMR)、およびガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)により確認した。
【0015】
ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)研究:各候補の原液をジクロロメタン(DCM)中で調製した。これらの溶液を使用して、ガスクロマトグラフィ(GC)保持時間および質量分析(MS)フラグメンテーションパターンを確立し、100から1000ppbの濃度における直線性と濃度曲線を決定し、500ppbの濃度で再現性と正確性を示す。ガスクロマトグラフ質量分析による結果は、表2および3に示す通りである。
GC/MSパラメータ:
−カラム:AgilentDB35m、15.0m×0.25mm×0.25μ
−流量:1.5mL/分 水素キャリアガス
−オーブン:イニシャル:100℃
−ランプ1:20℃/分280℃まで;保持:10分
−ランプ2:20℃/分340℃まで;保持:6分
−注入口温度:280℃
−インサート:スプリットレス;ベント:15分、シングルテーパー、グラスウール、不活性処理済、5062−3587
−注入量:3μL;粘度:5秒、プランジャー:fast
−Mass Transfer Line温度:280℃
−MS Quad:200℃;MS Source:250℃
−Solvent Delay:18.5分
【表2】
【表3】
【表4】
*試験プロトコル:内部標準を用いて2000mg/kg溶液をキシレンで作製し、ついで、5%NaOH、50%のNaOH、5%の硫酸および98%の硫酸の5重量%を添加した。2%のチャコール、5%の漂白剤、および2%の金属小片でも重量/重量にて試験を行った。混合液を室温で8時間ゆっくりと撹拌し、溶液をガスクロマトグラフィ(GC)で分析して、原液と比較した。
【表5】
*マーカー試料は、2000mg/.lの濃度で内部標準により作製し、ガスクロマトグラフィ(GC)で、マーカー濃度の変化を毎週、確認した。
【0016】
溶解度の研究:溶液は、0.1グラムのマーカー候補および0.9グラムの溶媒から作られる。混合液を60℃になるまで短時間温め、マーカー候補を完全に溶解させ、ついで溶液を室温まで冷却し、溶液を−10℃のフリーザーへ置き、少なくとも7日間溶液の安定性を観察した。
【表6】
DPGMEは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびNMPは、N−メチルピロリドンである。アロマティック200およびアロマティック150は、エクソンモービル社から入手可能な混合芳香族溶媒である。
【表7-1】
【表7-2】