(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ベルトなどの動的ゴム製品の屈曲亀裂成長性能を改善するためのゴムコンパウンド中のアイオノマー添加剤の使用に関する。改善の機構はコンパウンド中のポリマー鎖間のイオン性結合、イオンクラスター又はイオン性架橋の破壊及び再形成に基づく自己修復挙動の形態であることができる。
【0017】
本明細書中で「アイオノマー」とは、会合してイオン性ドメインを形成するか又はポリマー鎖間にイオン性結合を形成するイオン性基を有するポリマーをいう。イオン性結合は水素結合を含んでいることができる。用語「イオン性ポリマー」は本明細書中でアイオノマーと交換可能に用いられる。用語「添加剤」は全コンパウンドの50重量%未満、好ましくは100phr未満を構成するゴムコンパウンド中の材料又は成分に対して用いられる。用語「ゴム」は、大きな変形から迅速かつ強制的に回復することができ、及び沸騰溶媒中で本質的に不溶性である(共有架橋の存在による)材料をいう。他の有用な定義は、参照により本明細書中に組み込まれるASTM D−1566に見出されることができる。
【0018】
本発明の2つの実施形態が、それぞれ、自己修復成分としてポリエチレン−コ−メタクリル酸(EMAA)及びブチルアイオノマーを用いて、詳細に調べられた。
【0019】
本発明の第一の実施形態に係る実施例において、EMAAが添加剤として用いられて繊維充填エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー(EPDM)ベルト配合物中に加えられた。デマチアゴム亀裂成長試験法が材料亀裂成長を観察するのに用いられた。ゴム材料の静的及び動的な機械的特性へのEMAAの効果も調べられた。デュポン社(Dupont)によって製造された2つのEMAA型、すなわち、EMAA及び部分的に中和されたEMAAコポリマーがこの研究に用いられた。
【0020】
ヌクレル(Nucrel)(登録商標)はその商品名の下にデュポン社によって販売される熱可塑性EMAAランダムコポリマーである。ヌクレル(登録商標)925コポリマーは、エチレン85重量%及びメタクリル酸(MA)15重量%、すなわち、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布されたMA基5.4モル%を含む。ヌクレル(登録商標)925はサーリン(Surlyn)(登録商標)8920より大きい平均分子量を有する。ヌクレル(登録商標)は通常、履物、電線及びケーブル被覆、金属被覆、及びガラス被覆を含む用途に熱可塑性成形用樹脂又は被覆用樹脂として用いられる。それは強靭かつ可撓性であり、本質的に軽量であり、そして着色容易である。ヌクレル(登録商標)はデュポン社からペレット化樹脂として入手された。
【0021】
サーリン(登録商標)はデュポン社によりその商品名の下に販売される熱可塑性EMAAランダムアイオノマーである。それはヌクレル(登録商標)の部分的に中和された型である。この研究の間に用いられたサーリン(登録商標)8920はMA基5.4モル%を含むが、そのMA基の60%はナトリウムカチオンで中和されている。サーリン(登録商標)8920樹脂は優れた透明性、剛性及び耐摩耗性を与えるように配合される。サーリン(登録商標)8920は通常、ゴルフボールカバー、ホッケーヘルメット及びスキーブーツを含む多くの用途に用いられる。サーリン(登録商標)8920樹脂はペレット化された形態でデュポン社から入手された。デュポン社は、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、リチウムなどの金属塩を用いて部分的に中和された酸基を含む高性能のエチレンコポリマーとしてサーリン(登録商標)アイオノマーを紹介している。イオン性相互作用はそれを、従来のプラスチックと比べ向上した物理的特性を有する強い熱可塑性樹脂にする。報告されているところによれば、サーリン(登録商標)のデュポン社製法は、レジリエンス、硬度及び剛性、並びに切断抵抗及び耐摩耗性−すべてゴルフボール用途に対して大変に望ましい、などの特性の注文通りの組み合わせを提供する。
【0022】
表1はこの研究に用いられた化合物配合の第一のセットを示す。比較例1は動力伝達ベルトに用いるための典型的な繊維充填EPDM配合であり、ここでは対照として用いられる。ヌクレル(登録商標)925及びサーリン(登録商標)8920は、それぞれ、実施例2〜5において、それぞれ4phr及び8phrで添加された。「phr」は、ベースエラストマー100部当たりの重量部によるゴムコンパウンド中の添加剤の濃度を示す。
【0023】
表2はこの研究に用いられた表1の配合物についての配合物特性を示す。ムーニー粘度(MV)及びスコーチ時間(t5)はASTM D1646に従って121℃で30分間試験された。ムーニー粘度はEMAAの添加で約20ポイント増加した。それは、ヌクレルの高分子量とサーリンの強いアイオノマー相互作用によって説明されることができる。試験温度(121℃)において、すべての変数はスコーチ時間(t5)約30分を有する。従って、EMAAは耐スコーチ性に悪影響を及ぼさない。硬化特性はASTM D5289に従って177℃で30分間ムービング・ダイ・レオメーター(moving die rheometer)(MDR)で試験された。Ts2によって示されるスコーチ時間は再び何の影響も示さなかったが、粘度MLはEMAAの添加から増加した。t90によって示される硬化速度はEMAAの添加でわずかに増えたが、硬化後のモジュラス(MH又はMH−MLによって示される)はやや低下した。
【0025】
配合物の物理的特性も表2に示される。配合物の初期の硬度及びエージングされた硬度はまったく接近し同程度である。硬度はショアAスケールでASTM D2240に従って試験された。EMAAの添加は硬度を、とりわけ熱エージング後に、わずかに増加させた。引裂強さはASTM D624に従ってダイCで試験された。EMAAの添加で配合物の引裂強さにほとんど変化はない。この試験において引裂きは概して非常に急速に生じるので、亀裂修復が起こる時間はない。
【0026】
表2に示される引張特性はASTM D412、ダイCに従って試験された。列理(with-grain)(WG)方向及び反列理(cross-grain)(XG)方向における材料に対する低歪での引張結果は、EMAAの添加が列理方向で配合物のモジュラスを増加させたが、反列理方向ではほとんど影響を及ぼさないことを示している。引張モジュラスはASTM D1566及びD412に従って所与の伸びにおける応力として報告される。極限引張特性である、極限引張強さ及び極限引張伸びはEMAAからの影響がほとんどないことを示している。
【0027】
表3及び表4に示される配合物の動的特性は、ASTM D6601の手順に従ってRPAテスターで測定された。表3中の比較は100℃、80℃及び60℃及び±6.98%歪における周波数掃引を含んでおり、表4は周波数1.667Hzにおける、66℃での歪掃引を示している。EMAAの添加は配合物の弾性率(G’)にほとんど影響を及ぼさなかった。しかし、減衰率、tanδはEMAAの添加により増加した。
【0028】
デマチア亀裂成長はASTM D813に従って決定された。この試験は多くの屈曲サイクルの間にわたり最初の亀裂の成長を追う。試験は穴開けされた試験片に対し120℃において及び0.5インチストロークで実施された。表2の結果から、EMAA、とりわけヌクレル(登録商標)925、の添加が、材料の耐亀裂性を有意に改善したことが理解され得る。とりわけ、比較的少量のEMAAの添加はデマチア試験でゴムの亀裂成長速度を有意に遅くする。
【0029】
調査された第一の実施形態を要約すると、アイオノマー材料EMAAは繊維充填EPDMベルト配合物において評価された。EMAAの自己修復挙動が改善された耐亀裂性をもたらすと考えられる。EMAAの添加は材料MV、減衰率tanδ、硬化速度及び列理方向モジュラスを増加させることが見出された。EMMAはスコーチ時間、材料動的弾性率、及び他の物理的特性(引張、伸び、引裂、硬度など)にほとんど影響を及ぼさなかった。EMAA(とりわけ、酸性グレード、ヌクレル(登録商標)925)の添加は、デマチア試験において亀裂成長速度を低下させることによって、ゴム材料の耐亀裂性を有意に改善した。
図4は、第一のシリーズの実施例についてのサイクル数に対するデマチア亀裂成長進行をグラフで示している。ヌクレル(登録商標)925EMMA添加剤による改善は、とりわけわずか4phrの充填で、劇的である。
【0031】
本発明を限定しようと意図されるものではないが、別の理論は、デマチア試験におけるなど加熱試験の間にゴム内部でEMMA添加剤の熱可塑性結晶質成分の一部溶融があるというものである。かかる効果は配合物の軟化によって亀裂成長における改善に寄与することができ、又はそれはアイオノマーの増大した移動度によって自己修復に寄与することができる。
【0034】
本発明の第二の実施形態に係る実施例において、ブチルアイオノマーはイオン性ポリマー添加剤として用いられて繊維充填エチレン−プロピレン−ジエンエラストマー(EPDM)ベルト配合物中に加えられた。デマチアゴム亀裂成長試験法が材料亀裂成長を観察するのに用いられた。ゴム材料の静的及び動的な機械的特性へのブチルアイオノマーの効果も調べられた。「LanXess XLINKTP」ブチルアイオノマーはランクセス(LanXess)社によって供給された。それはペレット形態であり、比重は0.93g/cm
3である。かかるブチルアアイオノマーの調製は、例えば、米国特許第7,662,480B2号明細書、米国特許第7,915,333B2号明細書、及び米国特許出願公開第2010/0010140A1号明細書(いずれもResendesらに対するもの)に記載されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中、「ブチルアイオノマー」は一般に、これらの特許公報に記載されたアイオノマー性ブチルポリマーのいずれかを指す。
【0035】
ブチルゴムはイソオレフィンとコモノマーとしての1又は2以上の、好ましくは共役、マルチオレフィンとのコポリマーであると理解される。炭素原子4〜16個の、好ましくは炭素原子4〜7個の、範囲内のイソオレフィン、例えば、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン及びそれらの混合物などが使用されることができる。炭素原子4〜14個の範囲内のマルチオレフィン、例えば、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエン及びそれらの混合物など、好ましくは共役ジエン、が使用されることができる。イソオレフィンと共重合性であることが知られている他の任意のモノマーも使用されることができる。好ましい市販のブチルゴム(「IIR」)は主要部のイソブチレンイソオレフィン(すなわち、イソブテン)と少量の、通常、2.5モル%以下の、共役マルチオレフィンイソプレンとを有する。ブチルアイオノマーは8モル%までの共役マルチオレフィンを有するブチルゴムから誘導されることができる。ブチルアイオノマーは、窒素系及び/又はリン系求核試薬を用いた求核置換処理によって臭素化ブチルゴム(「BIIR」)などのハロ−ブチルゴムから誘導されることができる。適当な求核試薬として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びトリフェニルホスフィンを挙げることができる。一般に、ブチルポリマー中にマルチオレフィンが多いほど、潜在的な臭素化位置が多くなるので潜在的なイオン性官能性が多くなる。得られる高マルチオレフィンハロブチル系アイオノマーは、好ましくは、0.05〜2.0モル%、より好ましくは、0.2〜1.0モル%そしてなお一層好ましくは、0.5〜0.8モル%のアイオノマー性成分及び2〜10モル%、より好ましくは、3〜8モル%そしてなお一層好ましくは、4〜7.5モル%のマルチオレフィンを有する。この研究に用いられたブチルアイオノマーのイオン性官能性は約0.6モル%であり、そして実質的に全ての臭素に対してアイオノマー基で置換することによって臭素含量1.8重量%を有するBIIRから誘導されると考えられる。
【0036】
表5はこの実施例シリーズにおいて用いられたコンパウンド配合を示す。比較例6はVベルトのアンダーコードとして使用される代表的な繊維充填EPDM配合であり、本明細書で対照として用いられる。比較例6及び1は同じ配合であった。ブチルアイオノマーは実施例7〜10においてそれぞれ5phr〜20phrまでのレベルで添加された。
【0038】
表6は、第二のセットの実施例について配合物特性を示す。MV及びt5は第一のセットの実施例におけると同様に121℃で30分間試験された。アイオノマーの添加で材料のムーニー粘度(MV1+2)に大きな変化はないが、スコーチ安全時間(t5)は長くなる。加硫特性は177℃で30分間MDRで試験された。硬化速度はアイオノマーの添加でわずかに増加したが、硬化モジュラス、MHは最も高い充填の、実施例9及び実施例10でわずかに低下した。この現象はEMAAアイオノマーシリーズで観察された現象に類似する。
【0039】
配合物の動的特性はASTM D6601の手順に従ってRPAテスターにおける測定値により比較された。比較は、±6.98%歪で、100℃、80℃及び66℃での周波数掃引(表7)、及び周波数1.667Hzで、66℃での歪掃引(表8)を含んでいた。表7及び表8の結果から、ブチルアイオノマーの添加は配合物の弾性率(G’)にほとんど影響を及ぼさないことが理解され得る。減衰率、tanδはブチルアイオノマーの添加によりわずかの変化を示し、概してやや増加した。
【0040】
種々の配合物の物理的特性が表6に含まれる。表6は配合物の初期の硬度とエージングされた硬度とを比較している。ブチルアイオノマーの添加は材料硬度にほとんど影響を与えないことが理解され得る。
【0041】
表6は、室温及び80℃で試験された初期の試料、室温で試験された初期の及びオーブンエージング(150℃、70時間)された試料についての列理方向の材料の引張結果も比較する。ブチルアイオノマーの添加は材料の引張強さを低下させたが、低歪領域(<10%)におけるモジュラスへの影響はあまり見られなかった。
【0042】
表6は、第二の実施例シリーズについて引張特性、引裂強さ、及び圧縮永久歪の比較を示す。圧縮永久歪はASTM D395、メソッドBに従って試験された。ブチルアイオノマーの添加は材料の引裂強さを低下させた。表6は初期の材料及び加熱エージングされた材料(150℃、70時間)についての圧縮永久歪の比較を示す。ブチルアイオノマーの添加は材料の圧縮永久歪を増加させた。表6はASTM D2228に従って試験されたPico摩耗指数も報告している。アイオノマーの添加は材料の耐摩耗性を低下させた(すなわち、指数を減少させた)。
【0043】
デマチア亀裂成長結果が表6に示される(ASTM D813に対して試験)。試験は80℃、0.5インチストローク及び100℃、0.5インチストロークで実施された。ブチルアイオノマーの添加はゴム材料の耐亀裂性を改善し、初めの亀裂を1インチ幅まで成長させるのに必要とされるサイクルの数を有意に増加させる。100℃における高温試験で、成長率はブチルアイオノマーの最も高い充填で半減された(実施例10)。
図5及び
図6は、それぞれ、80℃及び100℃試験についてのサイクル数に対するデマチア亀裂成長進行をグラフで示す。アイオノマー添加剤による改善は劇的であり、アイオノマーの量が増えるにつれますます劇的である。
【0044】
最後に、表6は比較例6及び実施例10についてASTM D4482に従って試験された引張疲労寿命試験結果を示す。試験は、80℃において、歪100%(すなわち、伸び比2.0)で、0.5Nプレロードにより実施された。材料の疲労寿命は対照に対し本発明の実施例(実施例10)で増加し、ブチルアイオノマー20phrの添加によって約2倍となったことが理解され得る。
【0045】
第二シリーズの実施例を要約すると、ランクセスブチルアイオノマー材料が繊維充填EPDMベルト配合物において評価された。結果は、耐亀裂成長性を改善する、ゴム材料中の添加剤としてのアイオノマー材料の自己修復挙動を示していると考えられる。ブチルアイオノマーの添加はEPDM材料MV、動的な機械的特性及び低歪でのモジュラスにほとんど影響を与えないことが見出された。ブチルアイオノマーは材料の圧縮永久歪を増加させ、そして材料の引張強さ、引裂強さ及び摩耗特性を低下させた。アイオノマーの添加は材料の耐亀裂性を有意に改善した。ブチルアイオノマーの場合に、アイオノマーがEMAAのような半結晶質ではないので熱可塑性溶融は関係しないと考えられる。観察された自己修復又は耐亀裂性はイオン性再配列(rearrangement)によるものであると考えられる。
【0046】
アイオノマー性ポリマーについての自己修復の可能な機構は、Stephen James Kalista, Jr., "Self-Healing of Thermoplastic Poly(Ethylene-co-Methacrylic Acid) Copolymers Following Projectile Puncture," Virg. Polytechnic Inst., Master's Thesis (Sept. 1, 2003)に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本発明のゴムコンパウンド及び混合物における機構はカリスタ(Kalista)によって記載されたニートポリマーにおける機構とは有意に異なっていることができる。さらに、ベルトにおけるゴムコンパウンドの適用は、カリスタの発射体による穿孔試験(projectile puncture testing)への適用とは全く異なると考えられる。
【0050】
本明細書に記載されたアイオノマー添加剤を含有する実施例の配合物はベルト及びホースを含む動的ゴム製品に有用である。記載される第一の利益は改善された耐亀裂成長性であるが、用途に対して望ましい特性に応じて他の利益を得ることができる。本発明の実施形態の実施に使用のゴムコンパウンドは有利には、EMMA又はブチルアイオノマーなどのアイオノマー添加剤を50phrまでの、又は好ましくは30phrまでの、又は20phrまでの、又は4phr若しくは5phr〜10phr若しくは20phrまでのレベルで含んでいることができる。これらのアイオノマー材料は一般に熱可塑性(プラスチック)であるので、レベルが高すぎると動的ゴム用途に使用する性質上ゴムコンパウンドを過度に剛性及び/又は熱可塑性にすることがある。少なすぎるアイオノマーは耐亀裂成長性を増大させるという望ましい効果を生じさせないかもしれない。ベルトなどの動的ゴム製品で、少なくともゴム亀裂破壊モードが観察される状況において、製品寿命の増加をもたらす利益が期待される。
【0051】
ここで
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るマルチVリブドベルト10が概して示されている。マルチVリブドベルト10は、エラストマーの主ベルト本体部12、又はアンダーコード、及び主ベルト本体部12の内周に沿って配置されたシーブ接触部14を含む。この文脈で用いられる用語「シーブ」は動力伝達ベルトと一緒に用いられる従来のプーリ及びスプロケット、並びにローラー及び同様の機構も含む。
図1のベルトの特定のシーブ接触部14は、対向する側面間を定義する複数の溝領域38と交互に配置された隆起領域すなわち頂部36とを含む複数のリブの形態にある。
図1〜
図2の例のそれぞれにおいて、シーブ接触部14は主ベルト本体部12と一体でありそして以下に記載のように同じエラストマー材料(1種又は複数種)から形成されることができる。しかしながら
図3において、シーブ接触部14は、同期ベルトを形成する構成において通常使用されるような、以下でさらに詳細に説明される、補強布24を含んでいることが理解されることができ、従って本発明のその実施形態において主ベルト本体部12の材料以外の材料から形成される。
【0052】
抗張又は荷重支持コード部20はベルト10に支持及び強度を与えるようにアンダーコード12の上に配置される。図示の形態において、抗張部は、ベルトの長さに沿って整列された、以下にさらに詳細に記載される、長手方向に伸びる少なくとも1つの抗張コードを含み、及び本発明の種々の実施形態に従って、以下でさらに詳細に記載される接着ゴム部材18と少なくとも部分的に接触しているか又はそれに埋め込まれている。技術者であれば、幾つかの
図1〜3において、接着ゴム部材18はベルトの他のエラストマー部分からそれを視覚的に区別できるように誇張された形態で示されていることを容易に理解されよう。実際には、例えば、接着ゴム部材18及びアンダーコード12の一方だけが繊維充填されている場合を除き、硬化複合体は囲繞するエラストマーベルト本体部から視覚的に区別できないことが多い。接着ゴム部材18は実際にエラストマー主ベルト本体12と同じ材料から成ることができる。
【0053】
補強布(
図1に図示せず)は場合により使用されることができ、Vベルト及びマルチVリブドベルトの場合にシーブ接触部14と反対側のベルト表面に沿って密着してベルトのフェースカバー又はオーバーコードを形成する。布は望ましい角度の縦糸と横糸からなる従来の織物などの任意の所望の構成によるものであることができ、又はタイヤコード布によって例示されるような間隔が空けられたピックコードによって結束された縦糸から成ることができ、又は編まれ若しくは編組された構成から成ることができ、又は不織布構成、若しくは紙、若しくはプラスチックフィルムなどから成ることができる。布はエラストマー主ベルト本体12と同じ又は異なるエラストマー配合物によってフリクションコーティング又はスキムコーティングされていることができる。2プライ以上の布が用いられることができる。所望により、布はストランドがベルトの移動方向と角度を成すように切断され又は他の方法で形成されてバイアスに配置されることができる。かかる補強布の使用の一態様が
図2に示され、そこにゴムスキムコーティングされたタイヤコード布29が誇張された形態で示される。不織布又は紙材料の使用は、例えば、パターソン(Patterson)らに対する米国特許第6,793,599号明細書に記載されており、それに関する該特許公報の内容は参照により本明細書に組み込まれる。プラスチックフィルムの使用は、例えば、米国特許出願公開第20020187869号明細書に記載されており、それに関する該公報の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
図2を参照するに、標準的なノッチ付Vベルト26が示される。Vベルト26は、
図1に示されたと同様の主エラストマーベルト本体部12、及びまた
図1に示されたと同様の、任意の接着ゴム部材18に埋め込まれた1又は2以上の抗張コード22の形態の抗張部すなわち荷重支持部20を含む。Vベルト26の主エラストマーベルト本体部12、接着ゴム部材18及び荷重支持部20は
図1について上記したと同じ材料から構成されることができる。
【0055】
Vベルト26は
図1のマルチVリブドベルトのようにシーブ接触部14も含む。エラストマー主ベルト本体部12の側面、又は図示のようなVベルトの場合に圧縮部の側面は、ベルト26の駆動面として機能する。図示された実施形態において、シーブ接触部14は交互に配置されたノッチ凹部表面すなわち溝部28と歯状突起部30との形態にある。これらの交互に配置された凹部表面28及び突起部30は、好ましくは、シーブ接触部14が運転中にプーリの周囲を通るとき曲げ応力を分散させ最小化するように働く図示のような概ね正弦曲線の経路をたどる。
【0056】
図示された実施形態で、Vベルト26はローエッジベルトの形態にあるが、上記の補強布29はさらに、図示されたベルトのフェースカバー若しくはオーバーコードのいずれかとして、又はベルトを完全に包囲してバンデッド(banded)Vベルトを形成するように使用されることができる。
【0057】
図3を参照するに、歯付きベルト32が示される。歯付きベルト32は
図1及び
図2のベルトの場合のように主エラストマーベルト本体部12及びシーブ接触部14を含み、そしてさらに
図1及び
図2のベルトについて前記したような荷重支持部20も含む。しかしながら、同期ベルト32では、シーブ接触部14は交互に配置された歯部16と底部19の形態である。
図1及び
図2のベルトについてさらに上記した補強布24が用いられることもでき、この場合には、ベルト32の交互に配置された歯部16及び底部19に沿って密着しそのフェースカバーを形成する。
【0058】
上記に示した
図1〜
図3の各場合に、主ベルト本体部12はいずれかの通常の及び/又は適当な硬化されたエラストマー配合物から形成されることができ、任意の接着ゴム部材18に関して後述するものと同じ又は異なったものから成っていることができる。エラストマー配合物は、本明細書で概説され及び本明細書中の特定の実施例に関連するアイオノマー性ポリマー添加剤を含む。アイオノマー性ポリマー添加剤はポリエチレン−メタクリル酸コポリマー又はブチルアイオノマーであることができる。ポリエチレン−メタクリル酸コポリマーはその酸基の少なくとも一部が中和されていることができる。アイオノマー性ポリマー添加剤は50phrまでの濃度でゴム配合物中に存在していることができる。他の特徴は上記されている。
【0059】
この目的に用いられることができる適当なエラストマーとして、例えば、ポリウレタンエラストマー(なお、ポリウレタン/ウレアエラストマーを含む)(PU)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロロヒドリン、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、及びエチレンαオレフィンエラストマー、例えば、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレンプロピレンジエンターポリマー、(EPDM)、エチレンオクテンコポリマー(EOM)、エチレンブテンコポリマー(EBM)、エチレンオクテンターポリマー(EODM);及びエチレンブテンターポリマー(EBDM);エチレンビニルアセテートエラストマー(EVM);エチレンメチルアクリレート(EAM);及びシリコーンゴム、又はこれらの任意の2以上の組み合わせを挙げることができる。
【0060】
ゴム配合物の混合は、ゴムコンパウンドを混合するためのいずれかの公知の方法又は装置、例えば、密閉式ミキサー、押出機、ゴム用ロール機などを用いて実施されることができる。
【0061】
本発明の実施形態に従ってエラストマーベルト本体部12を形成するために、エラストマー(1種又は2種以上)は、通常に用いられる量で、充填剤、可塑剤、安定剤、加硫剤/硬化剤及び促進剤を含む通常のゴム配合成分とブレンドされることができる。例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー及びジエンエラストマー、例えば、HNBRなどと共に使用されるために、1種又は2種以上のα−β有機酸の金属塩が現在通常に用いられる量で使用されて、得られる製品の動的性能を改善することができる。このように、ジメタクリル酸亜鉛(ZDMA)及び/又はジアクリル酸亜鉛がかかる配合物中に約1〜約50phrの量で;又は代わりに約5〜約30phrの量で;又は約10〜約25phrの量で用いられることができる。これらの材料はさらに、配合物の接着性に寄与し、過酸化物又は関連するフリーラジカル硬化剤を用いたイオン性架橋による硬化においてポリマーの全体的架橋結合密度を増加させる。本明細書に記載の実施例はコエージェントとしてZDMAを用いた。好ましくは、ゴム配合物は過酸化物硬化され又は別のフリーラジカル機構によって硬化される。
【0062】
関連技術の当業者であれば、ベルトのエラストマー部において又はエラストマー部として使用されるのに適したいくつもの配合物を容易に理解するであろう。多くの適当なエラストマー配合物が、例えば、The R. T. Vanderbilt Rubber Handbook (13
th ed., 1996)に記載されており、そしてEPM又はEPDM配合物及び特に高い引張モジュラス特性を有するかかる配合物に関して、それぞれ米国特許第5,610,217号明細書及び同第6,616,558号明細書に記載されており、動力伝達ベルト本体部の形成に使用されるのに適切であることができる種々のエラストマー配合物に関するそれらの内容はとりわけ参照により本明細書に組み込まれる。これらのゴム配合物のいずれにも、アイオノマーが添加されて本発明の実施形態に係る屈曲疲労特性又は耐亀裂成長性を改善することができる。
【0063】
自動車付属部品の駆動用途に関連する本発明の実施形態において、エラストマーベルト本体部12は、接着ゴム部材配合物として用いられるものと同じ又は異なる配合物であることができる、適当なエチレンαオレフィン配合物、例えば、EPM、EPDM、EBM又はEOM配合物から成っていることができる。
【0064】
エラストマー主ベルト本体部12はさらに、それらに限定されないが、例えば、綿、ポリエステル、ガラス繊維、アラミド及びナイロンなどの材料を、ステープルファイバー若しくはチョップトファイバー、フロック又はパルプのような形態で、一般に使用される量で用いて、当該技術分野で周知である不連続繊維で充填されることができる。輪郭形成された(例えば、切断又は研削による)マルチVリブドベルトに関する好ましい実施形態において、かかる繊維充填は、好ましくは、繊維の実質的な部分がベルトの進行方向を概ね横断する方向に置かれるように形成され及び配置されるように、形成され及び配置される。しかしながら、フロースルー法(flow through methods)に従って製造された成形マルチVリブドベルト及び/又は同期ベルトでは、繊維充填は概して同じ配向度を欠くであろう。
【0065】
本発明の一実施形態に従って、
図1〜
図3についての上記のいくつかの実施形態において記載された複合ベルト構造体内部の荷重支持コードと少なくとも部分的に接触して用いられる硬化配合物は、場合により、前記の米国特許第6,616,558号明細書に詳細に記載されたその特徴及び利益を含んでいることができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0066】
運転において、ベルトは一般に少なくとも1つのドライバプーリ及び1つの従動プーリに、場合によりアイドラープーリ及び/又は他のプーリと組み合わせて、掛け回されてベルトドライブ又はドライブシステムを形成する。
【0067】
同様に、本発明の実施形態に係るゴム配合物を使用するホースは、繰り返しの圧力インパルス又は屈曲に付されことができ、従って増加した寿命及び/又は低減した亀裂成長速度の形で本発明から利益を得る。ホースは一般に1又は2以上のゴム層及び1又は2以上の補強層を含む。補強層は、巻付けられ又は巻回され(wound)又は編組されることができる、テキスタイル、コード又はワイヤであることができる。種々の層を一緒に結合する結合層が存在することもでき、結合層もゴム配合物であることができる。
図7は、インナチューブ層72、補強層74、及びアウタカバー層76を含む、例示的なホース実施形態71を示す。ホースに使用されるいずれのゴム配合物も有利には本明細書で概説され本明細書中の特定の実施例に関連するアイオノマー性ポリマー添加剤を含んでいることができる。アイオノマー性ポリマー添加剤はポリエチレン−メタクリル酸コポリマー又はブチルアイオノマーであることができる。ポリエチレン−メタクリル酸コポリマーはその酸基の少なくとも一部が中和されていることができる。アイオノマー性ポリマー添加剤はゴム配合物中に50phrまでの濃度で存在することができる。他の特徴はベルトに関連して上記し概説してきた。
【0068】
本発明及びその利点が詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなしに種々の変化、置換、及び変更がなされ得ることを理解されたい。さらに、本願発明の範囲は、明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、及び段階の特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば本発明の開示から容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす又は実質的に同じ結果を達成する既存の又は後発のプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は段階が本発明に従って使用されることができる。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、かかるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法又は段階を含むことを意図するものである。本明細書に開示された発明は、本明細書に具体的には開示されていない任意の要素の非存在下で適切に実施されることができる。