(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240197
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】重縮合物溶融体の極限粘度を高めるための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29B 9/06 20060101AFI20171120BHJP
C08G 63/80 20060101ALI20171120BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20171120BHJP
B29B 13/02 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
B29B9/06
C08G63/80
B29B13/10
B29B13/02
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-531399(P2015-531399)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公表番号】特表2015-535757(P2015-535757A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】AT2013000151
(87)【国際公開番号】WO2014040099
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年7月8日
(31)【優先権主張番号】A997/2012
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】507344841
【氏名又は名称】ネクスト・ジェネレーション・リサイクリングマシーネン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ピヒラー
(72)【発明者】
【氏名】ダービト ヘヘンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ベホウン
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ピヒラー
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/059608(WO,A1)
【文献】
特公昭46−040710(JP,B1)
【文献】
米国特許第05440008(US,A)
【文献】
特開昭53−005290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 9/06
B29B 13/02
B29B 13/10
C08G 63/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合物溶融体の極限粘度を負圧下で高めるための方法であって、溶融体が、直径0.5mm未満の複数の開口(26)を備えた有孔板又は篩(16)を通って、20mbar未満の圧力が形成されたチャンバ(25)内へ進入し、前記溶融体が細い糸の形態で前記チャンバ(25)を自由落下して通過し、そして前記溶融体が前記チャンバ(25)の下方の捕集容器(19)内に滞留する方法において、
前記溶融体が前記捕集容器(19)内に少なくとも1分間にわたって滞留し、前記溶融体が前記捕集容器(19)内で、水平方向位置に向けられた混合・吐出部材(27)によって真空下で絶え間なく動かされること、そして前記混合・吐出部材(27)が前記捕集容器(19)内で前記溶融体によって完全には覆われることがなく、前記溶融体の表面が前記混合・吐出部材(27)の回転運動によって繰り返し分裂させられ、何回も新しくされること、そして前記細い糸のところで開始された重縮合が溶融浴内で滞留により、そして運動を維持しながら続けられ、こうしてポリマー鎖が成長し、ひいては極限粘度がさらに高められ、前記溶融体が前記混合・吐出部材(27)によって前記捕集容器(19)から吐出されること
を特徴とする、重縮合物溶融体の極限粘度を負圧下で高めるための方法。
【請求項2】
前記チャンバ(25)内に、10mbar未満の圧力が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャンバ(25)内に、乾燥したガス又は不活性ガスが存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶融体が、直径0.05mm以上、0.5mm未満の開口(26)を通って、前記チャンバ(25)内へ進入することを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記開口(26)は、0.1〜0.3mmの直径を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記捕集容器(19)内の前記溶融体の滞留時間は少なくとも1分間であることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記捕集容器(19)内の溶融体の滞留時間が12分間、14分間、又は16分間までであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
吐出押し出し機(27)の後で、前記溶融体のインライン粘度測定が行われ、負圧を変化させることにより前記溶融体の極限粘度が調整されることを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融体が相次いで少なくとも2つのチャンバ(25)を通過することを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融体が2つのチャンバ(25)の間で温度調整装置によって、所要の溶融温度に保持されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記混合・吐出部材(27)がスクリュ状である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重縮合物溶融体の極限粘度を負圧下で高めるための方法
であって、溶融体が、直径0.5mm未満の複数の開口を備えた有孔板又は篩を通って、20mbar未満の圧力が形成されたチャンバ内へ進入し、溶融体が細い糸の形態でチャンバを自由落下して通過し、そして溶融体がチャンバの下方の捕集容器内に滞留する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、重縮合物溶融体の極限粘度を高めるための装置であって、装置が、少なくとも1つの開口を備えた、負圧下にあるチャンバを有しており、開口を通って溶融体がチャンバ内へ進入するようになっており、チャンバを溶融体がチャンバ壁との接触なしに通過することができ
、直径0.5mm未満の複数の開口を備えた有孔板又は篩がチャンバの上方に配置されており、チャンバ内に20mbar未満の圧力が形成されており、そしてチャンバの下方に捕集容器が配置されており、捕集容器内にも真空が形成されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0003】
重縮合物(PET、PBT、PEN、PCなど)は、重縮合によって製造される熱可塑性物質である。重縮合時には、逐次反応を介して反応生成物(例えば水)を切り離すことによって、モノマーを互いに結合して重縮合物にする。したがって重縮合は鎖成長と結びついている。このような分子鎖長は生成物、ひいては重縮合物の機械特性を大きく決定する。このようなプロセスは例えばPET新品を製造する際に重要であるだけでなく、特にこのような製品のリサイクル時にも多大な役割を果たす。
【0004】
欧州特許出願公開第1302501(A2)号明細書には、重縮合製品の後重縮合を促進し、原産物中に存在する揮発性副産物を除去する方法が記載されている。押し出しプロセスによって、原産物を溶融温度よりも30℃〜40℃高い温度にもたらす。こうして処理された溶融体は続いて、複数の孔を備えた押し出し板を通して搬送され、これにより溶融体に糸形態がもたらされる。揮発性副産物を蒸発させるために、溶融体として加工しようとする生成物の体積に対する利用可能な自由表面積の比を少なくとも40で選択する。糸形態を有する溶融ストランドは、減圧されたチャンバ内に進入する。このチャンバ内では圧力は0.1bar未満である。チャンバの下方には、捕集容器が配置されている。捕集容器内では溶融糸から溶融浴が形成される。このような溶融浴から部分量が取り出されて、溶融済原産物の供給導管に供給される。原産物と、容器内で既に処理された溶融生成物とから成るこのような混合物は改めて、複数の孔を備えた押し出し板を通って減圧されたチャンバに供給される。
【0005】
国際公開第00/78524(A1)号パンフレットに記載された、溶融体脱ガス装置は溶融体ノズルを有しており、この溶融体ノズルは、溶融体供給部との接続のための入口接続部と溶融体出口とを有している。溶融体出口は、実質的にガス不透過性の壁によって形成された脱ガス室内に開口している。脱ガス室は真空源と接続しており、後続の溶融体加工システムと実質的に密に結合するための吐出開口を有している。脱ガス室の吐出開口に続いて、歯車ポンプとして形成された溶融ポンプが設けられている。溶融ポンプは溶融体をさらに先に送出する。溶融ポンプの歯車の噛み合い区分から上流側には、溶融体分配器が配置されている。脱ガス室内に進入する溶融体は連続したホースとして進入する。しかしホース状溶融体の代わりに溶融体は複数の「スパゲティ状」部分流に分割されていてもよい。脱ガス室内に形成される負圧は自由に選択することができる。
【0006】
独国特許出願公開第2243024(A1)号明細書に基づいて、高分子ポリエチレンテレフタレート(PET)を連続的に製造する装置が公知である。この装置は、上端部に溶融体入口を備えた、鉛直方向に配置された円筒形の容器から成っている。下端部には生成物出口が配置されている。さらに、円筒形容器内には揮発性物質のための抜き取り管片が開口している。さらに、容器の中心には軸が鉛直方向に配置されている。この軸の周りには鉛直方向に定置の物質交換薄板が配置されている。さらにこれらの物質交換薄板の上方にはそれぞれ分配室が設けられており、そして分配室の下方には捕集室が設けられている。1つの分配室とその上の段の捕集室との間には、結合管が取り付けられている。この結合管を通って軸が案内されている。軸は、結合管を通って突出する部分では、それぞれ分配室内への搬送を行う押し出し機軸として形成されている。
【0007】
国際公開第2012/119165(A1)号パンフレットには、負圧下でプラスチック溶融体から不純物を除去する方法及び装置が記載されている。このために、プラスチック溶融体は少なくとも1つの開口を通ってチャンバ内へ進入する。このチャンバ内には、負圧、好ましくは50mbar未満の圧力が形成されている。チャンバ内へのプラスチック溶融体の進入は、複数の開口を備えた多孔板又は篩を通して行われる。開口の直径は1.5mm未満から0.05mmまでであってよい。プラスチック溶融体が鉛直方向にチャンバを貫流した後、この溶融体は下端部で捕集漏斗内に捕集され、溶融ポンプの出口を介して更なる搬送のために導かれる。
【0008】
ポリエステルが吸湿性であり、湿分を吸収することが知られている。例えばPETを押し出し機で加工するときには、水が存在すると、いわゆる加水分解が生じ、すなわちポリマー鎖が解離され、これにより極限粘度が低くなってしまう。このような材料損傷をできる限り小さく保つために、押し出し機での加工の前にPETを乾燥させることが普通である。しかしながら、材料損傷を完全に阻止することはできない。
【0009】
また、ポリエステルを高温下で、そして真空下又は不活性ガス下で滞留させると重縮合がもたらされ、ひいてはポリエステルの粘度が高くなることも知られている。このような公知の溶融体重縮合法又は固相重縮合法又はこれら両者の組み合わせの方法は通常、低分子出発材料から高分子ポリエステルを製造するために用いられる。
【0010】
固相重縮合の場合、出発材料は充分な嵩密度を有するペレット又は清浄化済の粉砕材料として固形の形態で存在しなければならない。例えば繊維又はシートのような他の形態のPETは、固相縮合を実施できるように、材料損傷及び多大なエネルギー消費を招く押し出しプロセスを介してペレット形態にしなければならない。さらなる加工のために、出発材料を加熱しなければならない。結晶化温度(80℃〜120℃)でペレット粒の付着が生じる。これを阻止するために、材料を先ずいわゆる結晶化装置(Kristallisator)に供給し、この装置内で材料を、絶え間なく攪拌しながらいわゆる結晶化温度を上回る温度に加熱する。今や流動可能(rieselfaehig)な材料は次いで固相縮合容器へ供給することができる。ここでは材料を約190℃〜250℃までさらに加熱し、そして所望の極限粘度が得られるまで、数時間にわたって真空下又は不活性ガス下で滞留させる。このようなプロセスは不連続的、半連続的、及び連続的に行われる。
【0011】
現行の溶融体重縮合法では、ポリエステル溶融体を約265℃〜300℃の温度及び約1mbarの強い真空下でしばしば数時間にわたって滞留させることにより、所望の極限粘度を得る。このような方法は主として新品の製造に用いられ、ポリエステルのリサイクルには適していない。
【0012】
材料の再利用という意味におけるプラスチック・リサイクルの目的は、最も広い意味では、現存の廃棄物質から新しい製品を製造することである。熱可塑性物質に関しては一般に、先ず変形を施してリサイクレートにし、続いてさらに変形を施して最終製品にする。いずれの変形作業も通常、加熱プロセス及び冷却プロセスに結びついている。いずれの加熱も多くのプラスチックにおいてポリマーを不可逆的に損傷し、また、このような加熱・冷却プロセスはエネルギー使用量が高いことを意味する。高いエネルギー使用量は同時にポリマーの価値を低いものにしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の根底を成す課題は、ポリエステルのような重縮合物の再処理における省エネルギー型のプロセスであって、重縮合物の品質を改善することができ、ひいては低分子量の廃棄物質から高価値のポリマーを製造するのを可能にするプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題は、冒頭で述べたような方法において、
溶融体が捕集容器内に少なくとも1分間にわたって滞留し、溶融体が捕集容器内で、
水平方向位置に向けられた好ましくはスクリュ状の混合・吐出部材によって
真空下で絶え間なく動かされ
ること、そして混合・吐出部材が捕集容器内で溶融体によって完全には覆われることがなく、溶融体の表面が混合・吐出部材の回転運動によって繰り返し分裂させられ、何回も新しくされること、そして細い糸のところで開始された重縮合が溶融浴内で滞留により、そして運動を維持しながら続けられ、こうしてポリマー鎖が成長し、ひいては極限粘度がさらに高められ、溶融体が混合・吐出部材によって捕集容器から吐出されること、によって解決される。
【0015】
冒頭で述べた形式の装置において、このような課題は、
補修容器内に、水平方向位置に向けられた好ましくはスクリュ状の混合・吐出部材が配置されており、混合・吐出部材は、混合・吐出部材(27)の回転運動によって溶融体の表面を分裂させて何回も新しくするために、補修容器(19)内に配置されていること、そして捕集容器が溶融体のための反応室を形成していること、そして混合・吐出部材の搬送方向で見て捕集容器に続いて捕集導管が配置されていること、によって解決される。
【発明の効果】
【0016】
すなわち、重縮合物の極限粘度(Grenzviskositaet){固有粘度(intrinsische Viskositaet (iV)}を溶融体重縮合によって高めるための本発明による方法及び本発明による装置において、溶融体は多孔板又は多孔篩を介して、負圧下にある又は不活性ガスで充填された反応チャンバ内に導入され、この反応チャンバにおいて、溶融体が所望の極限粘度を有するまで所定の時間にわたって滞留させられ、続いて例えば多孔板又は成形用プラスチック型を介して吐出される。
【0017】
分子量の増大は、温度、真空圧、滞留時間のようなパラメータ、並びに溶融体の表面積によって、そして溶融体表面を絶え間なく新しくすることによって影響を与えられる。このような反応をできる限り経済的に構成するために、影響量の妥当な相互作用を伴う最適な方法技術的解決手段が有意義である。
【0018】
しかしながら、本発明による方法及び本発明による装置は、水のような不純物だけではなく、プラスチック材料の製造時又はリサイクリング時に発生する他の不純物、例えば溶剤、清浄剤、もしくは極めて一般的に言えば湿分及び蒸発成分、及び/又は空気をもプラスチック溶融体から分離することができる。
【0019】
一例としてPETのリサイクルに関して本発明の利点を以下に説明するが、しかしこのことは、本発明をリサイクル及び/又はPETに、もしくは具体的に記載される装置の構造に限定するものと理解するべきではない。
【0020】
PET材料はリサイクル時には先ず従来技術に基づいてよく知られているように破砕し、場合によっては精製し、溶融し、脱ガスし、そして濾過する。濾過後、温度調整された溶融導管を介して
、溶融体を例えば多孔板へ搬送する。最適な温度を調節することにより、そして形成された圧力により、溶融体は多孔板を押し通される。多孔板内には、処理量に応じて種々異なる数の孔が位置している。これらの孔はPETの場合、例えば0.3mmの直径を有している。しかし多孔板は例えば篩、格子、又は同種のものとして形成されていてもよい。所望の処理量及び結果に応じて、開口の直径が0.5mm未満、好ましくは0.05〜0.5mm、特に好ましくは0.1〜0.3mmであると、特に良好な結果が得られる。孔が非円形である場合、非円形の孔の面積は、前記直径を有する孔の面積に相当する。
【0021】
多孔板の後、重力によってさらに細くされる糸は、負圧下、好ましくは真空下にあるチャンバ内に達する。チャンバは、乾燥したガスで充填されていてもよく、又は乾燥したガスで貫流されてもよい。所望の極限粘度に応じて、室内の真空状態はより高く又はより低く選択することができる。0.5〜20mbarの圧力で作業することが好ましい。それというのも、このような圧力において一方では良好な結果を得ることができ、このような圧力は他方において市販の真空ポンプで形成できるからである。このようなチャンバ内で反応が生じる。水は真空によって溶融体の内部から表面へ拡散する。真空及び温度によって水は水蒸気に変化し、もしくは溶剤又は同種のものは蒸発することができ、且つ/又は空気を溶融体から逃し、次いでチャンバから導出することができる。本発明の装置を例えば押し出し機に後置すると、短縮された分子鎖を再び延長することができる。装置及び方法を適宜に設計することにより、結果としてのプラスチック品質に影響を与えることができる。
【0022】
例えば、負圧が3mbarである場合に、直径がそれぞれ0.3mmの3000個の孔を備えた多孔板が使用され、そしてチャンバ内の自由落下高さが2メートルとなるように、本発明によるPET処理装置を構成することができる。このような構成にすると、重力及び真空の作用によって、約0.2mmの溶融糸直径が得られる。この直径によって溶融体は極めて良好に精製もしくは脱ガスされる。
【0023】
なお、所望の処理量に応じて3000個よりも多い又は少ない孔、好ましくは1000〜5000個の孔、例えば2000又は4000個の孔を多孔板又は篩1つ当たりに使用することもできる。また、2メートルよりも大きい又は小さい高さを使用することもできる。1.5m〜4mの高さ、特に2m、2.5m、3m又は3.5mの高さが好ましい。
【0024】
溶融体は細い溶融糸の形態を成してチャンバを通って下方へ向かって落下し、水のような不純物は表面に拡散し、温度及び負圧によって蒸発する。細い溶融糸がチャンバ内で妨げなしに下方へ向かって運動することによって、有効溶融体表面積が著しく増大する。
【0025】
PET溶融体から水を除去することによって、短い分子鎖が結合してより長い鎖になる。このことは分子量を増大させ、ひいては極限粘度を高める。
【0026】
チャンバの下端部で溶融体は捕集容器内に集められ、好ましくは少なくとも1分間、好ましくは少なくとも3又は4分間の滞留時間後に、例えば吐出押し出し機によってペレット化装置、成形型、又は同じ又は類似の構成を有する別のチャンバへさらに導かれる。第1のチャンバの終端部又は次のチャンバの始端部、又はこれら両チャンバ間の途中のどこかの個所に、加熱装置が配置されていてよい。加熱装置によって、プラスチックを溶融温度、つまりプラスチックが塑性的に流動する温度に保持することができる。
【0027】
本発明による方法及び本発明による装置は簡単に個別に顧客の希望に合わせて製作もしくは構成することができる。既存のプラスチック製造設備又はプラスチック・リサイクル設備を装備拡張するか又は補完してもよい。
【0028】
本発明の別の好ましい実施態様が、残りのサブクレームの対象となる。
【0029】
添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施態様を以下に説明することによって、本発明の更なる特徴及び利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による装置を備えたプラスチック・リサイクル設備を示す正面図である。
【
図4】
図3の容器をIV−IV線に沿って示す断面図である。
【
図5】反応器内の滞留時間の、iV値に与える影響を示すダイアグラムである。
【
図6】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図7】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図8】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図9】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図10】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図11】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【
図12】スクリュ状の混合・吐出部材の選択的な実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び2にはリサイクル設備が一例として示されている。このリサイクル設備は符号1で示された構造群に、重縮合物、例えばPETから成る繊維、シート、深絞り用シート又は他の重縮合物を破砕して押し出す装置を有している。このような構造群は従来技術に基づいて知られている通りに構成されていてよく、本発明の対象ではない。リサイクル設備は一例としてPETのリサイクルに関して説明するが、このようなプラスチックに限定されるものではない。
【0032】
例えば、PETリサイクル品を、又はPET新品ペレットも、必要に応じて供給システム(一軸破砕機、カッター圧縮器、サイロ、ペレット定量供給装置など)によって、押し出し機に供給することができる。供給システムに応じて、出発材料(繊維、始動屑、ボトル粉砕材料、シート、ペレットなど)を一軸破砕機又はカッター圧縮器によって破砕し、圧縮し、そして任意には表面除湿し、或いは、ペレットを定量供給システムによって押し出し機に供給する。
【0033】
上記押し出し機が従来技術に基づいて知られている脱ガス装置を備えていると、極めて有利であることが判っている。予備乾燥していないPETに吸収された水は押し出し時に加水分解を引き起こすので、PETが溶融状態に達したらすぐにPETを除湿することが必要である。溶融プロセス中に既に生じている、加水分解による極限粘度の低減はもはや補償することはできないものの、まだ存在している水を溶融体から除去することによって更なるiV低下を充分に阻止することができる。押し出し機の脱ガス装置に別の脱ガス装置が後置されていると、そしてこれらの脱ガスゾーンに2〜5mbarの負圧が形成されているとさらに有利である。押し出しに続いて、濾過ユニットが設けられている。この濾過ユニットはPET溶融体を必要な純度及び均質性まで濾過する。
【0034】
これに続く溶融反応器への供給のために必要な溶融圧力は、溶融押し出し機又は溶融ポンプ9によって付与される。溶融ポンプは濾過ユニットに後置されていてよい。
【0035】
設備の前記構成部分は、たとえ本発明による方法及び本発明による装置の作用に好都合な影響を与えるとしても、本発明にとって絶対に必要というわけではない。
【0036】
押し出し機の出口2もしくは濾過ユニット、篩を備えた篩交換器8、及び溶融ポンプ9に続いて、供給導管4もしくは溶融体導管4を介して押し出し機から到来した溶融体から不純物を除去するための本発明による装置3が設けられている。溶融体導管4は、設備、要件、又は空間的条件に応じて、水平方向に1つ又は2つ以上の容器5へ直接に延びているか、又は先ず鉛直方向に1つの容器5に沿って上方へ向かって延びている。
【0037】
装置3は図示の実施例では、全部で2つの容器5から成っている。これらの容器は互いに並列に配置されている。供給導管4から、分配導管6、7がそれぞれ1つの容器5へ延びている。両容器5の後には、捕集導管10がペレット化装置12へ延びている。ペレット化装置12はやはり従来技術に基づいて知られている通りに構成されていてよく、本発明の対象ではない。
【0038】
容器5は例えば
図3に示されているように構成されており、好ましくは円筒形の管13から成っている。円筒形の管13の長さを変えることにより、容器5内の種々異なる落下高さを容易に形成することができる。管13の上端部にはヘッド部14が取り付けられており、管13の下端部には、反応チャンバを形成する捕集容器19を備えた基部15が取り付けられている。
【0039】
ヘッド部14の、管13との接続領域内には、複数の開口26を備えた多孔板又は篩16が配置されている。流れ方向で見て多孔板又は篩16の手前には、分配室17が位置している。分配室は、接続開口18を介して、分配導管の一方6又は7に結合されている。分配室17内では、多孔板又は篩16の手前に、図示されていない圧力分配篩を組み付けることによって、多孔板又は篩16の全体にわたって圧力をできる限り均一に分配することができる。
【0040】
溶融体、例えばPET溶融体は、押し出し機又は溶融ポンプ9の生成された圧力によって、多孔板又は篩16に押し通される。溶融体が多孔板又は篩16に押し通されると、細い溶融糸は自由に、そして管13内に形成されたチャンバ25の壁と接触することなしに重力によって下方へ向かって落下する。多孔板又は篩16は処理量に応じて種々異なる数の小さな開口を有している。約300μmの孔径及び約70kg/hの質量処理量の場合、良好な結果を得るためには、例えば約2000個の孔が必要である。
【0041】
容器5、そして特に捕集容器19の長さによって、チャンバ25内の溶融体の滞留時間に影響を与えることができる。重力によってさらに細くされる細い溶融糸の直径、ひいては糸の重量も、溶融体の粘度に影響を与える温度と同様に、滞留時間に影響を与える。温度は高ければ高いほど、迅速に重縮合が通常生じる。PETの場合、捕集容器19内の理想的温度は例えば好ましくは270℃〜300℃である。容器5の並列配置によって、本発明による装置の処理量を変化させることができる。溶融体の重縮合、ひいては精製の品質は、例えば互いに前後に接続された2つ又は3つ以上の容器5によって改善することもできる。
【0042】
小孔の数が多いことによって、溶融体の体積に対する表面積の比が著しく高くなる。重力によって、溶融糸は容器5の高さに応じてさらに細くなり、これにより体積に対する表面積の比がさらに著しく高くなる。広い溶融体表面積、滞留時間、高い温度、並びに真空が完全に相互作用することで、溶融体の顕著な精製だけでなく、溶融体の重縮合反応もうまくゆく。温度及び真空の作用により、糸は溶融状態で個々に容器5の捕集容器19まで下方へ向かって延びる。
【0043】
溶融体の体積に対する表面積の比が高いこと、反応器内が高真空及び高温であることによって、例えば水分子、他の反応生成物、又は揮発性物質が短時間で溶融糸の表面に拡散することができる。気体の状態でこれらの物質を、反応器に形成された真空によって迅速に除去することができる。
【0044】
ここで重縮合反応が行われると、反応生成物を取り除きながら分子鎖が長くなる。このことは極限粘度を高める。
【0045】
充分に高度な重縮合を達成するにはチャンバ25内の溶融糸の落下時間では充分でない場合があるので、基部15内に位置する捕集容器19内に糸は再び溶融浴へ集められる。溶融浴内には、モータ28によって駆動されるスクリュ状の混合・吐出部材、例えば吐出押し出し機27が位置している。吐出押し出し機は、更なる加工のための搬送機能及び圧力形成機能の他に、溶融体の表面を何回も新しくすることにより、良好な混合機能を発揮することができる。吐出押し出し機の代わりに、吐出スクリュ又は同種のものが設けられていてもよい。溶融体は絶え間なく運動しているので、溶融体の熱劣化は最小限に低減される。
【0046】
吐出押し出し機27から捕集導管10へ溶融体を送出する。後続のストランド・ペレット化装置12を用いて溶融体を高品質のペレットに加工することができる。吐出押し出し機27の後の順送り型(Folgewerkzueg)を用いて、結束バンド、繊維、シートなどのような同一の製品をすぐにリサイクル用PETから製造することもできる。このような用途は、予備乾燥なしに、そしてSSP(固体重合:solid state Polymerisation)なしに一回の溶融によって直接に、リサイクル用PETを高価値製品に加工し得るという大きい利点をもたらすことになる。
【0047】
ヘッド部14及び基部15は管13に例えばねじによって結合されている。管13にはさらに、図示していない真空ポンプとの接続部22、並びに場合によっては組み付け・保守点検用開口23及び/又は覗き窓24が位置している。
【0048】
真空ポンプの代わりに、これらの接続部には、場合によっては不活性の、乾燥したガスを連続的又は間欠的に導入・導出するための導管を接続することにより、分離された不純物を導出することができる。
【0049】
試験において、負圧が0.5〜5mbarであり、温度が好ましくは270〜300℃であると、PETの重縮合が最も迅速に行われることが確認された。いずれの場合にも、負圧は20mbar未満であるべきである。負圧は、形成されたPET溶融体の極限粘度に極めて強い影響を与えるので、吐出押し出し機27に後置されたインライン粘度測定装置11を介して、負圧を変化させることにより極限粘度を容易且つ迅速に調整することができる。
【0050】
基部15の特別な構成によって、捕集容器19内の充填レベルを介して、真空下での溶融体の滞留時間に影響を与えることができる。滞留時間が長ければ長いほど、ポリマー鎖成長は大きくなり、ひいては極限粘度がさらに高くなる。
【0051】
捕集容器19内の溶融浴の充填レベルは、吐出押し出し機27を制御する適宜なセンサによって調整される。高い真空及び温度によって細い溶融糸のところで開始された重縮合は続いて溶融浴内で、溶融体を滞留させることにより、そして溶融体の運動を維持しながら、混合・吐出部材27によって続けられる。溶融浴の高さは要件いかんでは、吐出押し出し機27が溶融体によって完全に又は一部だけ覆われるような大きさであってよい。しかしながら、吐出部材の回転運動によって溶融体を繰り返し分裂させて表面を新しくしようとするならば、スクリュ状の混合・吐出部材27を溶融体で完全には覆わないようにすると有利である。
【0052】
吐出押し出し機27の後に位置するインライン粘度測定装置11を経由して、上述のように捕集容器19内の相応の充填レベル及びその結果生じる滞留時間を介して、所望の極限粘度を調節もしくは調整することができる。
【0053】
溶融糸と溶融浴との組み合わせが極めて効率的な重縮合をもたらし、ひいては比較的極めて短い滞留時間で既に、極限粘度をかなり高めることができることを試験は示した。
【0054】
図5には、容器5内の滞留時間の、iV値に対する影響が示されている。iV出発値がこれよりも低い又は高い場合にも同等の改善がもたらされる。約1分間の滞留時間から極限粘度が既に高められていることが判る。数分後、特に3分又は4分後から、既にかなりの改善が得られる。iVの所望の結果もしくは改善に応じて、6分間、8分間、又は10分間以上から12分間、14分間又は16分間までの滞留時間が考えられ、もしくは有利である。これと比較して公知の溶融反応器は、類似の結果を得るために、30分間から数時間までの滞留時間で作業する。
【0055】
捕集容器19内のスクリュ状の混合・吐出部材27の特別な構成によって、反応プロセスをさらに最適化することができる。
【0056】
軸29のコア直径が全直径に対して小さく、また例えばチャンバ19の領域内でウェブ30に孔又は切欠き31を備えた状態で
図6に示されているようにスクリュのねじ山が特別に構成されていることにより、PET溶融体の表面積が大きくなり、ひいては溶融体の表面が新しくされる。これにより、分離生成物(例えば水)を導出するための拡散プロセスが著しく容易になり、ひいては重合プロセスが促進される。
【0057】
図7〜
図12には、軸の別の好ましい実施態様が示されている。
【0058】
図7及び8の実施態様では、ウェブ32、33が二重螺旋の形態を成して軸のコア34の周りに巻き付いており、スポーク35によってコアから所定の間隔を置いて保持される。軸線に対して平行に延びる付加的なウェブ36、37によって、軸が全体的に補強されるだけでなく、さらに溶融体の混合が改善され、表面積が大きくなる。
図7に示された軸が一貫して延びるウェブ32、33を有しているのに対して、
図7の実施態様におけるウェブ32、33は(図示の実施態様では2回)中断されている。これにより形成された、好ましくはほぼ半径方向に向いたスリット38内には、外方から、例えばスクリュ管から、図示されていないピン又は同種のものが突入する。このようなピンは溶融体の混合をさらに改善する。
【0059】
図9及び10の実施態様は、
図7及び8のものと同様に構成されてはいるものの、二重螺旋の形態で軸のコア41の周りに巻き付けられたウェブ39、40は、軸のコア41まで延びており、部分円状の貫通部42、43を有している。
図9の実施態様における軸線に対して平行に延びるウェブ44、45の代わりに、
図10の実施態様では、中断されたウェブ39、40の間に外方から突入するピン又は同種のもののためのスリット46が設けられている。
【0060】
図11及び12に示された、コアを備えていない軸の場合、二重螺旋の形態を成すウェブ47、48が配置されており、これらのウェブは、軸線に対して平行に延びるウェブ49、50によって互いに、そして端面ディスク51、52と結合されている。これらのディスク51、52には、溶融体の貫通のための貫通部53が配置されており、また軸ピン54、55が取り付けられている。これらの軸ピンで軸を支持し、もしくは後続の軸と結合することができる。
【0061】
図3及び4の実施態様に基づく捕集容器19内のスクリュ状の混合・吐出部材27は専ら、
図6〜12にそれぞれ示された軸の実施態様のように構成されていてよいが、しかしこのような実施態様の任意の組み合わせを有していてもよい。例えば
図7及び9の実施態様はそれぞれスクリュ状の混合・吐出部材27の始端部及び終端部で、引き込みエレメント及び搬送エレメントとして使用できるのに対して、
図8及び10の実施態様はスクリュ状の混合・吐出部材27の中央部分で混合セグメントとして使用することができる。
【0062】
本発明による、下記の利点の一つ一つ又は全てを達成することができる:
− 種々多様な入口側材料(繊維、シート、ボトル粉砕材料、結束バンド、始動屑など)の再処理;
− ペレットの他に、成形型を使用することによって、品質的に高価値のプラスチック製品を直接に製造することもできる。
− 例えばポリエステルのための極限粘度を調節することができる;
− 出口側製品の極限粘度及び純度を入口側製品のものよりも高くすることができる(「アップリサイクル」);
− ポリエステル入口側材料の結晶化及び予備乾燥が必要でない;
− SSPによるポリエステル材料の後処理が必要でない;
− 設備コストが比較的低い;
− 材料の処理時間が極めて短い;
− 加熱が一回しか必要でないため、公知のプロセスと比較して出発材料品質に対するプロセス全体のエネルギー効率が高い;
− 既存のリサイクル設備を大きい変更なしにさらに使用して、この設備に本発明による装置を追加することができる。