(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240198
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】低動的表面張力を有する界面活性剤組成物
(51)【国際特許分類】
B01F 17/10 20060101AFI20171120BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20171120BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20171120BHJP
B01F 17/42 20060101ALI20171120BHJP
B01F 17/38 20060101ALI20171120BHJP
C07C 43/11 20060101ALN20171120BHJP
C07C 41/03 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
B01F17/10
C09J201/00
C09J11/06
B01F17/42
B01F17/38
!C07C43/11
!C07C41/03
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-531414(P2015-531414)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公表番号】特表2015-535727(P2015-535727A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】CN2012081382
(87)【国際公開番号】WO2014040265
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】シャオフア・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ワンリン・ユー
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04097390(US,A)
【文献】
特表2002−540244(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/064858(WO,A1)
【文献】
Low-temperature microemulsions for the in situ extraction of contaminants from soil,Physicochemical and Engineering Aspects,1998年 3月11日,141,p.217-225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/10
B01F 17/38
B01F 17/42
C09J 11/06
C09J 201/00
C07C 41/03
C07C 43/11
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式I:
【化1】
のスルホコハク酸ジアルキル化合物であって、式中、Rは
それぞれ独立してC
7−C
9アルキルであり、M
+は1価または2価の陽イオンであるスルホコハク酸ジアルキル化合物;ならびに
(b)式II−A:
【化2】
の第2級アルコールアルコキシレート化合物であって、式中、R
3はHまたはイソプロピルであり、nは2、3、5又は8である第2級アルコールアルコキシレート化合物、
を含み、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が9:1〜1:9である組成物。
【請求項2】
R3がイソプロピルであり、nが3であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が9:1から1:1であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
R3がイソプロピルであり、nが5であり、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
R3がイソプロピルであり、nが8であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が1:1から1:9であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
R3がHであり、nが2〜3であり、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記スルホコハク酸ジアルキル化合物および前記第2級アルコールアルコキシレート化合物の水溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、30mN/m以下の平衡表面張力を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
調合物における表面張力を減少させる方法であって、該方法が該調合物に該調合物の全重量に基づく重量で0.1〜2パーセントの請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を添加することを含む方法。
【請求項8】
表面張力を減少させる界面活性剤を含有する調合物であって、該調合物が接着剤調合物、農薬調合物、コーティング調合物、インク調合物、織物または皮革において使用するための調合物、ロールコーティング調合物、カーテンコーティング調合物、印刷調合物、およびスプレーコーティング調合物から選択される調合物であって、前記界面活性剤が請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物を含む調合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、水性調合物において湿潤剤として有用な界面活性剤組成物に関する。この組成物はスルホコハク酸ジアルキル化合物および分岐第2級アルコールエトキシレート化合物を含む。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、水性調合物において湿潤剤として幅広く使用されている。最近の界面活性剤は、それらが使用される特定の用途の性能要件に特に適合した特性をしばしば有する。
【0003】
界面活性剤を使用するいくつかの産業プロセスは、新しい表面の形成速度が大きい動的表面条件を必要とし、例えば印刷、ロールコーティング、カーテンコーティング、インクジェット、スプレーコーティング等の用途において必要とする。このようなプロセスは、使用される調合物に含まれる界面活性剤が表面張力を下げる能力や基材を素早く濡らす能力を示すことを通常必要とする。通常、動的表面張力(DST)を使用して、ある溶液の、高速度プロセス条件下で表面張力を下げる性能や基材を濡らす性能を測定する。しかしながら、多くの公知の界面活性剤は素早い濡れを提供することが不可能であり、したがってこのような特性を要求する産業の要件を満たすのに不十分である。
【0004】
本発明が取り組む問題は、動的表面条件下での使用に適した特性を示す新規界面活性剤組成物の提供である。
【発明の概要】
【0005】
以下に記載するように、スルホコハク酸ジアルキル化合物および分岐第2級アルコールエトキシレート化合物を含有する組成物が、著しく減少した動的表面張力を示すことを我々は現在見出している。さらに、この組成物は、発泡の増加なしで、平衡表面張力(EST)の減少を示してもよい。低ESTや泡がより少なくなることは、上記の動的表面形成を必要とする用途を含む多くの用途で望まれている。
【0006】
一態様においては、
(a)下記の式Iのスルホコハク酸ジアルキル化合物であって、式Iの式中、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐C
6−C
10アルキルであり、M
+は1価または2価の陽イオンであるスルホコハク酸ジアルキル化合物;ならびに、
(b)下記の式IIの第2級アルコールアルコキシレート化合物であって、式IIの式中、R
1およびR
2は独立して直鎖または分岐C
1−C
14アルキルであり、R
1、R
2およびそれらが結合する炭素により形成される基は7〜16個の炭素原子を含有し、nは1〜20である第2級アルコールアルコキシレート化合物、
を含む組成物を提供する。
【0009】
他の態様においては、有効量の本明細書において記載される組成物を調合物に添加することを含む、調合物において表面張力を減少させる方法を提供する。
【0010】
さらなる態様においては、表面張力を減少させる界面活性剤を含有する調合物であって、この調合物が接着剤調合物、農薬調合物、コーティング調合物、インク調合物、織物または皮革において使用するための調合物、ロールコーティング調合物、カーテンコーティング調合物、印刷調合物、およびスプレーコーティング調合物から選択される調合物であって、この界面活性剤が本明細書において記載される組成物を含む調合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は積層接着調合物と多様な界面活性剤の動的表面張力のプロットである(室温)。
【
図2】
図2は、調合物を50℃で10日間保管後の、積層接着調合物と多様な界面活性剤の動的表面張力のプロットである(試験は室温で行う)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
他に指定されない限り、数の範囲(例えば、「2〜10」)は、範囲を規定する数(例えば、2および10)を包含する。
【0013】
他に指定されない限り、比、百分率および部等は重量による。
【0014】
上述の通り、本発明は、(a)式Iのスルホコハク酸ジアルキル化合物、および(b)式IIの第2級アルコールアルコキシレート化合物を含む組成物を提供する。この組成物は、小さい動的表面張力を有利に提供する。さらにこの組成物は、望ましい低平衡表面張力、低発泡性特性、低エネルギー表面上での低接触角を含むさらなる利点を提供してもよく、好ましい濡れ特性を示す。
【0015】
この組成物のスルホコハク酸ジアルキル化合物は、下記の式Iにより表されてもよく、式Iの式中、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐C
6−C
10アルキルであり、M
+は1価または2価の陽イオンである。
【0017】
いくつかの実施形態においては、式IにおけるRはそれぞれ同一である。
【0018】
いくつかの実施形態においては、式IにおけるRは、直鎖または分岐C
7−C
9アルキルである。いくつかの実施形態においては、Rは2−エチルヘキシル(CH
3CH
2CH
2CH
2CH(CH
2CH
3)CH
2−)である。
【0019】
いくつかの実施形態においては、式IにおけるM
+は1価の陽イオンである。いくつかの実施形態においては、M
+はナトリウムまたはカリウムまたはアンモニウムイオンである。いくつかの実施形態においては、M
+はナトリウムイオンである。
【0020】
本発明の組成物の第2級アルコールアルコキシレート化合物は、下記の式IIにより表されてもよく、式IIの式中、R
1およびR
2は独立して直鎖または分岐C
1−C
14アルキルであり、R
1、R
2およびそれらが結合する炭素により形成される基は7〜16個の炭素原子を含有し、nは1〜20である。
【0022】
いくつかの実施形態においては、R
1、R
2およびそれらが結合する炭素により形成される基は9〜12個の炭素原子を含有する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態においては、R
1はC
3−C
12アルキルであり、あるいはC
3−C
8アルキルであり、あるいはC
4−C
6アルキルである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態においては、R
2はC
3−C
12アルキルであり、あるいはC
4−C
10アルキルであり、あるいはC
6−C
8アルキルである。
【0025】
式IIの化合物における変数「n」は、この化合物の作製において使用するアルコール出発物1モルに対する、荷電エチレンオキシドの平均モル量を表す。いくつかの実施形態においては、nは2以上であり、あるいは3以上であり、あるいは4以上である。いくつかの実施形態においては、nは18以下であり、あるいは15以下であり、あるいは12以下である。いくつかの実施形態においては、nは2〜15の範囲にあり、あるいは2〜10の範囲にある。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態においては、式IIの第2級アルコールアルコキシレートは、下記の式II−Aの第2級アルコールアルコキシレートであり、式中、R
3はHまたはイソプロピルであり、nは上記で規定するとおりである。
【0028】
いくつかの実施形態においては、第2級アルコールアルコキシレートは、下記の式の第2級アルコールアルコキシレートであり、式中、nは上記で規定するとおりである。いくつかの実施形態においては、nは2〜3である。
【0030】
いくつかの実施形態においては、第2級アルコールアルコキシレートは、下記の式の第2級アルコールアルコキシレートであり、式中、nは上記で規定するとおりである。いくつかの実施形態においては、nは3〜8である。
【0032】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物における式Iのスルホコハク酸ジアルキル化合物と式IIの第2級アルコールアルコキシレート化合物の重量比は、99:1から1:99であり、あるいは9:1から1:9であり、あるいは9:1から1:1であり、あるいは1:1から1:9である。
【0033】
いくつかの実施形態においては、式IIにおけるR
3はイソプロピルであり、nは3であり、第2級アルコールアルコキシレート化合物に対するスルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比は9:1から1:1である。
【0034】
いくつかの実施形態においては、R
3はイソプロピルであり、nは5であり、第2級アルコールアルコキシレート化合物に対するスルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比は9:1から1:9である。
【0035】
いくつかの実施形態においては、R
3はイソプロピルであり、nは8であり、第2級アルコールアルコキシレート化合物に対するスルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比は1:1から1:9である。
【0036】
いくつかの実施形態においては、R
3はHであり、nは2〜3(好ましくは2.5)であり、第2級アルコールアルコキシレート化合物に対するスルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比は9:1から1:9であり、あるいは1:3から1:9である。
【0037】
本発明の組成物は、小さい動的表面張力を有利に示す。いくつかの実施形態においては、0.1wt%の濃度で温度21〜22℃において測定し、かつ最大泡圧法(実施例を参照のこと)にしたがって15泡/秒で測定する場合、スルホコハク酸ジアルキル化合物と第2級アルコールアルコキシレート化合物の水溶液における動的表面張力は、45mN/m以下であり、あるいは43mN/m以下であり、あるいは40mN/m以下であり、あるいは38mN/m以下である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、スルホコハク酸ジアルキル化合物と第2級アルコールアルコキシレート化合物の水溶液は、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、ウィルヘルミー板法にしたがって、30mN/m以下の平衡表面張力を有する。
【0039】
本発明の組成物は、幅広い種類の水性調合物における湿潤剤として有用である。この組成物の有利な動的表面張力特性に起因して、この組成物は動的表面条件に付される調合物における使用に特に適している。例としては、接着剤調合物、農薬調合物、コーティング調合物、インク調合物、織物または皮革加工において使用するための調合物、ロールコーティング調合物、カーテンコーティング調合物、印刷調合物、およびスプレーコーティング調合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
当業者は、特定の調合物において使用するべき本発明の調合物の有効量を容易に決定することができる。非限定的な例では、適切な量として、調合物の全重量に基づく重量で0.01〜5パーセント、好ましくは0.1〜2パーセントが挙げられる。
【0041】
式Iのスルホコハク酸ジアルキル化合物および式IIの第2級アルコールアルコキシレート化合物は、民間製造業者から購入してもよく、または文献方法を使用して当業者が調製してもよい(例えば国際特許公報第WO2012/071149号および米国特許第2,870,220号を参照のこと。参照によりそれぞれが本明細書に取り込まれる。)。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に記載する。
【実施例】
【0043】
物質
DOSS:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム
TMN−(EO)n:エトキシ化2,6,8−トリメチル−4−ノナノール(TMN)(式II−A、R
3はイソプロピルである)。この物質は、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー(The Dow Chemical Company)から市販されており、または米国特許第2,870,220号において記載されるとおり2段階エトキシ化法を使用して作製する。
DIBC−(EO)n:下記の通り調製するエトキシ化ジイソブチルカルビノール(DIBC)(式II−A、R
3はHである)試料。
AEROSOL(登録商標)WA−300界面活性剤、スルホコハク酸ジオクチルとC12−16アルコールエトキシレートのブレンド:Cytec Chemicalから入手可能。
SURFYNOL(登録商標)PSA336界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS)とエトキシ化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのブレンド:Air Productsから入手可能。
【0044】
試験方法
動的表面張力。動的表面張力を、Kruss BP−2泡圧張力計で測定する。高純度窒素ガスを使用して泡を発生させる。内径0.238mmを有するSH2031疎水性コーティングガラスキャピラリー(Kruss製)を使用する。表面張力を、10〜2000msの表面寿命範囲で測定する。表面張力を泡表面寿命の関数として、msおよび泡発生頻度(泡/秒)で報告する。測定は室温(21−22℃)で行う。
【0045】
平衡表面圧。界面活性剤溶液の表面張力を、ウィルヘルミー白金板を装着したKruss K100表面張力計を使用して、室温(21〜22℃)で測定する。脱イオン水を使用して溶液を作製し、水の表面張力を測定すると72〜73mN/mである。結果を標準偏差0.1mN/m未満の5回繰返し試験値の平均として報告する。
【0046】
ロスマイルス泡試験。ロスマイルス泡試験を、ASTM法D1173「表面活性剤の発泡特性用標準試験法」により記載されるとおりに行う。ガラスピペット(「泡ピペット」)を200mlの0.1%界面活性剤水溶液で充填し、ID=5.0cmを有する目盛付ガラス管(「泡レシーバ」)を50mlの同一溶液で満たす。泡レシーバ上にピペットをセンタリングした後、ピペット内の水溶液を、空気を通して90cm排出させ、泡レシーバ内の溶液にはねかけ、それにより泡を形成させる。泡層の高さ、泡に取り込まれた空気量の測定値を0秒および5分において記録する。各系について室温で2回測定し、結果を平均として報告する。
【0047】
接触角。接触角測定を、Kruss DSA−100液滴形状分析計を使用して、室温で行う。この装置は可動性の試料ステージを有する。Krussソフトウェア(DSA3.exe)を使用して装置の操作を制御し、データ解析を行う。接触角測定を静的固着(すなわち、置かれている)液滴で行う。顕微鏡スライドの各端に少量の接着剤を使用して、TEFLON(登録商標)テープ、パラフィルム、またはシリコーン剥離紙をガラス顕微鏡スライドに注意深く置き、表面にテフロン(登録商標)テープを保持する。基材を試料ステージに置き、DSAソフトウェアによりあらかじめ規定された方法を使用して、プログラムで基材上に5液滴を置く。自動化方法を使用する。この研究においては、液滴体積は5μLであり、液滴付着速度は6μL/分であり、液滴を置いた後すぐに測定を行う。液滴像を取得したら、ベースラインを決定し、左および右接触角をソフトウェアにより決定し、左および右接触角の相加平均を各液滴について算出する。合計15液滴を試験する3グループからの平均値として結果を報告する。
【0048】
実施例1 DIBC−(EO)nの合成
ジイソブチルカルビノール(2000.6g、水含有量450.5ppm)および三フッ化ホウ素のジエチルエーテル複合体(3.08g)をあらかじめ窒素でパージした9L反応器に充填する。混合物を窒素下で、55℃において撹拌しながら加熱する。エチレンオキシド(EO、全量740.2g)を、55℃で約2時間にわたり、計量しながら反応器に供給する。EOの供給完了後、反応器内容物を反応温度においてさらに2時間撹拌し、未反応酸化物を消費させ(温浸)、次に室温に冷却する。反応器内容物(819.3g)の一部を、粗製物1として反応容器から取り出す。反応器を窒素で16〜20psiaに加圧し、残りの1925.5gの反応器内容物を撹拌しながら55℃に加熱する。エチレンオキシド(全量345g)を約1時間にわたり、計量しながら反応器に供給する。EOの供給完了後、反応器内容物を反応温度において4.5時間撹拌し、未反応酸化物を消費させ、次に室温に冷却する。生成物を粗製物2として反応器から出す。
【0049】
粗製物1および2をまず5%NaOH溶液で、次に水で洗浄する。
【0050】
500mL丸底フラスコ(RBF)に、洗浄した粗製物1を176グラム秤量して入れる。油ポンプおよび窒素ラインを備えたロータリエバポレーターで、4トールの減圧下、温度115℃で1時間、粗製物から軽質分を除去する。フラスコ内の残留物を試料1として回収する(77.1g)。水酸基価解析(ASTM D4274)は、EO付加の平均量が3.01であることを示す。この試料をDIBC−3EOと表記する。
【0051】
同様に、83.7グラムの洗浄した粗製物1を500mLのRBFに入れ、3トールの減圧下、温度70℃で1.5時間、軽質分を除去する。残留物(47.7グラム)を試料2として回収する。水酸基価解析(ASTM D4274)は、EO付加の平均量が2.31であることを示す。この試料をDIBC−2.5EOと表記する。
【0052】
同様に、420グラムの洗浄した粗製物2を1Lのフラスコに入れ、3トールの減圧下、温度115℃で1時間、軽質分を除去する。残留物(236.5グラム)を試料3として回収する。水酸基価解析(ASTM D4274)は、EO付加の平均量が3.98であることを示す。この試料をDIBC−4EOと表記する。
【0053】
低EO付加生成物を出発物として使用して、より多くのEOを加え、高EO付加生成物を得ることができる。
【0054】
DIBCエトキシレートは、WO2012/071149において記載されるように、複金属シアン化物(DMC)を触媒として使用して、1段階法により作製することもできる。
【0055】
実施例2
平衡表面張力、動的表面張力、ロスマイルス泡高度、および低エネルギー表面上の接触角を、DOSSと多様なエトキシレートTMN試料の、異なるブレンド比でのブレンドについて試験する。DOSS、サーフィノールPSA336、およびエアロゾルWA−300を比較に含める。全試料を0.1wt%の全活性濃度で、室温(21〜22℃)において試験する。結果を表1〜2においてまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1および2において見られるとおり、DOSSを幅広い範囲のブレンド比でエトキシ化TMNとブレンドすることにより、平衡表面張力、動的表面張力、および接触角値はDOSS自身と比較して著しく減少する。全てのブレンドは、DOSSと比較して同様の発泡特性もしくは低い発泡特性を示す。サーフィノールPSA336と比較して、本発明のブレンドの実施例の多くは、より小さい動的表面張力を示す。重要なことに、本発明の組成物は、著しく小さい平衡表面張力および低エネルギー表面上の接触角を提供し、これより本発明の組成物はサーフィノールPSA336よりも優れた湿潤剤であることが示される。エアロゾルWA−300と比較すると、エアロゾルWA−300により示される極めて低い平衡表面張力は、本発明のブレンドの多くと良く競合することができる。しかしながら、本発明の組成物の動的表面張力特性および低エネルギー表面上での濡れは、エアロゾルWA−300よりもはるかに有利であり、これにより本発明のブレンドは特に動的条件においてより優れた湿潤剤であることが示される。
【0059】
実施例3
約2.5の平均EO数を有するDIBCエトキシレート(DIBC−2.5EO)を、0.1wt%の全活性濃度でDOSSと混合し、混合した溶液の動的表面張力を室温(21〜22℃)において測定する。結果を表3にまとめる。見られるとおり、DIBC−2.5EOの含有量が50%以上の場合、DIBC−2.5EOとブレンドすることにより、DOSSの15泡/秒での動的表面張力は約45mN/mから40mN/m未満へ減少する。これらの結果は、DIBCエトキシレート/DOSSブレンドを使用して動的表面張力減少特性を改善することができることを実証している。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例4:接着剤調合物における湿潤剤としての使用
湿潤剤が添加されていない水性アクリル積層接着剤基剤調合物を中国のBeijing Decang Chemical Co. Ltd.より得る。基剤調合物に、0.5wt%の添加量で、異なる濡れ界面活性剤を添加して、最終調合生成物を得る。サーフィノール420(エトキシ化(1.3)2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)、サーフィノールPSA−336(両方ともにAir Productsより)、およびDOSSとDIBC−2.5EOの活性重量比1:1でのブレンドを湿潤剤として使用する。最終調合生成物を、ポリプロピレン(PP)上でのフィルム形成特性および動的表面張力特性について評価する。包装フィルム作製においては、コーティング工程速度はしばしば大きく、小さい動的表面張力が重要である。いずれの湿潤剤も添加していない基剤調合物も参照として評価に含める。
【0062】
PP上のフィルムコーティングをK制御コーティング機(RK Print)により行い、フィルム重量を2gsmで制御する。調合物からのフィルム形成特性を表4にまとめる。
【0063】
【表4】
【0064】
異なる表面寿命時間での試料の動的表面張力値を
図1にプロットする。
【0065】
図1から見られるように、湿潤剤を添加していない試料は大きい表面張力を有し、これより動的条件下での不十分な濡れが示唆される。サーフィノール420およびサーフィノールPSA336の両方は動的表面張力を減少させることができるが、本発明のブレンド(DIBC−2.5EOおよびDOSS)を使用する調合物は最も小さい動的表面張力を実証する。
【0066】
実施例5 熱安定性
実施例4からの調合試料を密封し、50℃で10日間、オーブン内に設置する。加熱後の試料を、フィルム形成特性および動的表面張力について再度試験する。本発明のブレンド(DIBC−2.5EO+DOSS)を湿潤剤として有する試料は良好なフィルム形成を示し、コーティングしたフィルムは縮小欠損を示すことがわかる。サーフィノール40またはサーフィノールPSA336のいずれかを湿潤剤として使用した試料からコーティングしたフィルムにおいて、いくつかの縮小欠損を認める。湿潤剤を含有しない参照調合物からコーティングしたフィルムは、重度の縮小欠損を有する。動的表面張力試験においては、DIBC−2.5EO+DOSSを湿潤剤として使用する調合物は小さい動的表面張力を示し、非加熱試料で得られる測定値と比較して、ほとんど変化しないことがわかる。対照的に、サーフィノール420またはサーフィノールPSA336を湿潤剤として使用する試料は、参照調合物で観測されるレベルに近い大きな動的表面張力を示す(
図2を参照のこと)。この結果より、本発明のブレンド界面活性剤を添加物として使用する場合、水性接着剤調合物は優れた熱安定性を有することが示唆される。
本開示は以下も包含する。
[1]
(a)式I:
のスルホコハク酸ジアルキル化合物であって、式中、Rはそれぞれ独立して直鎖または分岐C6−C10アルキルであり、M+は1価または2価の陽イオンであるスルホコハク酸ジアルキル化合物;ならびに
(b)式II:
の第2級アルコールアルコキシレート化合物であって、式中、R1およびR2は独立して直鎖または分岐C1−C14アルキルであり、R1、R2およびそれらが結合する炭素により形成される基は7〜16個の炭素原子を含有し、nは1〜20である第2級アルコールアルコキシレート化合物、
を含む組成物。
[2]
RがC7−C9アルキルである上記態様1記載の組成物。
[3]
前記第2級アルコールアルコキシレートが式II−A:
の第2級アルコールアルコキシレートであって、式中、R3はHまたはイソプロピルであり、nは2〜20である、上記態様1〜2のいずれかに記載の組成物。
[4]
R3がイソプロピルであり、nが3であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が9:1から1:1であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、上記態様3記載の組成物。
[5]
R3がイソプロピルであり、nが5であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が9:1から1:9であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、上記態様3記載の組成物。
[6]
R3がイソプロピルであり、nが8であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が1:1から1:9であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、上記態様3記載の組成物。
[7]
R3がHであり、nが2〜3であり、前記第2級アルコールアルコキシレート化合物に対する前記スルホコハク酸ジアルキル化合物の重量比が9:1から1:9であって、該スルホコハク酸ジアルキル化合物および該第2級アルコールアルコキシレート化合物の水性溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、前記最大泡圧法にしたがって15泡/秒で、45mN/m以下の動的表面張力を有する、上記態様3記載の組成物。
[8]
前記スルホコハク酸ジアルキル化合物および前記第2級アルコールアルコキシレート化合物の水溶液が、0.1wt%の濃度で、温度21〜22℃において、30mN/m以下の平衡表面張力を有する、上記態様1〜7のいずれかに記載の組成物。
[9]
調合物における表面張力を減少させる方法であって、該方法が該調合物に有効量の上記態様1〜8のいずれかに記載の組成物を添加することを含む方法。
[10]
表面張力を減少させる界面活性剤を含有する調合物であって、該調合物が接着剤調合物、農薬調合物、コーティング調合物、インク調合物、農薬調合物、織物または皮革において使用するための調合物、ロールコーティング調合物、カーテンコーティング調合物、印刷調合物、およびスプレーコーティング調合物から選択される調合物であって、前記界面活性剤が上記態様1〜8のいずれかに記載の組成物を含む調合物。