(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6240232
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】電磁開閉器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/16 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
H01H50/16 Y
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-9634(P2016-9634)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2016-207638(P2016-207638A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0057325
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100170380
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】パク チンイ
【審査官】
澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭40−004654(JP,Y1)
【文献】
実開昭53−011062(JP,U)
【文献】
特開2005−331104(JP,A)
【文献】
特開2011−204374(JP,A)
【文献】
特開2001−357767(JP,A)
【文献】
特開2005−277308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/16
H01H 50/20
H01H 50/36
H01H 50/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体及び複数のフランジから構成され、前記管体の外周面にコイルが巻回されるボビンと、
前記管体の内部に前記管体から所定間隔離隔して、固定設置される固定コアと、
前記管体の内部に摺動可能に設置されて、前記固定コアに接離する可動コアとを含み、
前記管体の下部において内周面に沿ってガイド部が突設されることにより、前記可動コアが前記固定コアの中心軸に沿って一直線状に移動可能になり、
開放状態において、前記ガイド部の上端の高さと前記可動コアの上端の高さとが一致する、電磁開閉器。
【請求項2】
前記可動コアの外周面は、長手方向に段差や傾斜が形成されずに一定に維持される、請求項1に記載の電磁開閉器。
【請求項3】
前記ガイド部の内径は、前記可動コアの外径と同一である、請求項1又は2に記載の電磁開閉器。
【請求項4】
前記ガイド部の内径は、前記固定コアの外径より小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁開閉器。
【請求項5】
前記ガイド部の長さは、前記可動コアの長さより短い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁開閉器。
【請求項6】
前記ガイド部には、長手方向に複数のスプライン溝が形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁開閉器に関し、特に、固定コアと可動コアの接触中心を一致させることにより磁力を最大限に活用して遮断性能の低下を防止するようにした電磁開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電磁開閉器(Magnetic Switch)又は直流リレー(Direct Current Relay)は、電磁石の原理を利用して機械的な駆動と電流信号を伝達する電気的な回路開閉装置の一種であって、各種産業用設備、機械や車両などに設けられる。
【0003】
特に、電気自動車用リレーの場合、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、ゴルフカート、電動フォークリフトなどの電気自動車のバッテリシステムに配置されて主電流の通電を開閉する役割を果たすこともある。
【0004】
図5は従来技術による電磁開閉器の縦断面図であり、
図6は
図5の電磁開閉器の分解斜視図である。
【0005】
従来技術による電磁開閉器の構成及び製造工程は次の通りである。上から固定接点1が設けられたアークチャンバ2、可動接点3が設けられた可動軸アセンブリ4、プレート5、固定コア6、可動コア7を順次積層し、可動コア7に可動軸8の下端部をレーザ溶接で完全に固定する。また、上部のアークチャンバ2をプレート5にレーザ溶接して固定接点1と可動接点3の作動空間を完全に密封する。さらに、固定コア6と可動コア7にシリンダ9を被せてプレート5の下部に気密溶接する。さらに、下部にはコイル5bが巻回されたコイルアセンブリ5aとヨーク5cを結合する。
【0006】
電磁開閉器は、コイル5bから発生する磁場によりプレート5、ヨーク5c、可動コア7、固定コア6を通る磁路が形成され、このとき固定コア6に発生する磁力により可動コア7が固定コア6に吸引されると共に可動コア7に固定された可動軸8が移動することによって、可動軸8の上部に結合された可動接点3が押し上げられて固定接点1に接触して通電が起こるようにする機構である。
【0007】
従来技術による電磁開閉器において、アークチャンバ2は、その内部に消弧用ガスが充填されるので、密閉構造にしなければならない。また、固定コア6と可動コア7とは、中心を正確に一致させることで磁力の損失が発生しないようにすることが重要である。
【0008】
さらに、シリンダ9は、深絞り(deep drawing)というプレス加工により製作される。しかし、プレス加工の特性上、原材料を厚さ方向に打ち抜いてシリンダ9構造を形成するので、シリンダ9部品は正確な直角をなすのではなく若干の勾配(傾斜)を有することになる。これにより、シリンダ9の下部に可動コア7との干渉が生じることがあり、これを避けるために、可動コア7の外径をシリンダ9の内径より若干小さくしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、可動コア7の外径をシリンダ9の内径より若干小さくした場合は、可動コア7とシリンダ9の間に遊びがあるので、長期間使用することにより摩擦による摩耗が生じることがある。よって、可動コア7とシリンダ9部品から発生した鉄粉が残留することになるという問題がある。また、可動コア7が一定の直線運動を行うことができないので、磁力を最大限に用いることができず、遮断時間が増加したり電圧損失が発生するなど遮断性能が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、固定コアと可動コアの接触中心を一致させることにより磁力を最大限に活用できるようにした電磁開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による電磁開閉器は、管体及び複数のフランジから構成され、前記管体の外周面にコイルが巻回されるボビンと、前記管体の内部に前記管体から所定間隔離隔して、固定設置される固定コアと、前記管体の内部に摺動可能に設置されて、前記固定コアに接離する可動コアとを含み、前記管体の下部において内周面に沿ってガイド部が突設されることにより、前記可動コアが前記固定コアの中心軸に沿って一直線状に移動可能になることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記可動コアの外周面は、長手方向に段差や傾斜が形成されずに一定に維持されるようにしてもよい。
【0013】
また、前記ガイド部の内径は、前記可動コアの外径と同一であってもよい。
【0014】
さらに、前記ガイド部の内径は、前記固定コアの外径より小さくしてもよい。
【0015】
さらに、前記ガイド部の長さは、前記可動コアの長さより短くしてもよい。
【0016】
さらに、開放状態において、前記ガイド部の上端の高さと前記可動コアの上端の高さとが一致するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記ガイド部には、長手方向に複数のスプライン溝が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の各実施形態による電磁開閉器においては、ボビンの内周面に可動コアガイド部が形成されることにより、可動コアが固定コアの中心軸に沿って一直線状に移動可能になる。よって、可動コアと固定コアとは中心軸が一致した状態で接離することになるので、電圧損失なく磁力を最大限に活用することができ、動作時間の損失をなくして最適化された遮断性能を発揮することができるという効果がある。
【0019】
また、シリンダを除去し、従来と同じ固定コアを用いることにより、部品点数を削減し、生産コストを低減し、組み立て工程を単純化することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による電磁開閉器の縦断面図である。
【
図4】
図1におけるA−A部の変形例の断面図である。
【
図5】従来技術による電磁開閉器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態による電磁開閉器について説明するが、これは本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するためのものであり、本発明の技術的思想や範囲を限定するものではない。
【0022】
図1は本発明の一実施形態による電磁開閉器の縦断面図であり、
図2は
図1の電磁開閉器の分解斜視図であり、
図3は
図1におけるA−A部の断面図である。
【0023】
本発明の一実施形態による電磁開閉器は、管体32と複数のフランジ33とから構成され、管体32の外周面にコイル35が巻回されるボビン31と、管体32の内部に固定設置される固定コア20と、管体32の内部に摺動可能に設置されて固定コア20に接離する可動コア25とを含み、管体32の下部において内周面に沿ってガイド部34が突設されることにより、可動コア25が固定コア20の中心軸に沿って一直線状に移動可能になる。
【0024】
上部フレーム10は、概して下面が開放された箱状に形成されてもよい。上部フレーム10は、プラスチックなどの合成樹脂で形成されてもよい。上部フレーム10は、射出成形物からなるようにしてもよい。
【0025】
上部フレーム10の上面には、一対の固定接点11が設置される一対の接点収容部13が形成される。
【0026】
上部フレーム10の前面には、固定接点11に接続されるターミナル15又はバスバーが挿入される。ターミナル15は、銀(Ag)などのように導電性のよい材質で形成されてもよい。また、ターミナル15の一部には、固定接点11が挿入設置される貫通孔15aが形成される。
【0027】
上部フレーム10の前面及び背面には永久磁石16が配置される。上部フレーム10の上部には、永久磁石16を固定する永久磁石ホルダ17が備えられてもよい。
【0028】
一対の固定接点11は、ターミナル15の貫通孔15aと上部フレーム10の接点収容部13に挿入されて上部フレーム10の外部に露出し、電源又は負荷に接続される端子である。一対の固定接点11は、銅(Au)などのように導電性のよい材質で形成されてもよい。一対の固定接点11は、上端部が電源又は負荷に接続され、下端部が可動接点12と接触するようになっている。
【0029】
可動接点12は、上部フレーム10の内部に設けられ、一対の固定接点11に接離する端子である。前述したように、可動接点12は一対の固定接点11の下端部に接触する。可動接点12は、所定の厚さを有するように平坦に形成される板状体と、一対の固定接点11に接触する一対の接点部とからなる。可動接点12は、コイルアセンブリ30の内部に設けられるシャフト23に固定され、シャフト23が軸方向に線形駆動することにより一対の固定接点11に接離する。可動接点12が一対の固定接点11に接触すると閉回路となって通電が行われ、可動接点12が一対の固定接点11から分離すると開回路となって電流が遮断される。
【0030】
コイルアセンブリ30は、制御電源により磁場を形成するように設けられる。コイルアセンブリ30は、磁力を供給して電磁石の原理を利用できるようにする。コイルアセンブリ30は、ボビン31、コイル35、コイルターミナル36などから構成されてもよい。
【0031】
ボビン31は、コイルアセンブリ30を支持及び形成する構造物である。ボビン31は、管体32と、管体32の周囲に形成される複数のフランジ33とから構成されてもよい。ボビン31は、プラスチックなどの合成樹脂で形成されてもよい。これにより、ボビン31が固定コア20及び可動コア25と接触しても、その摩擦が小さいので摩耗が抑制される。管体32の内部には固定コア20及び可動コア25が挿入され、管体32の外周面にはコイル35が巻回される。
【0032】
コイル35にはコイルターミナル36を介して外部の制御電源が供給される。コイル35に電源が供給されるとコイル35の周囲に磁場が形成される。
【0033】
固定コア20は、管体32の内部に固定設置される。固定コア20は、コイル35の周囲に形成される磁場中で磁化して磁束密度を増大させるために備えられる。固定コア20は、上部フレーム10とヨーク37との間に配置されるプレートと一体に構成されてもよい。すなわち、固定コア20の上面がフランジを形成するようにしてもよい。固定コア20は鉄材で形成されてもよい。ここで、固定コア20は、管体32から所定間隔離隔して設置される。よって、固定コア20は、管体32との摩擦が生じないので、開閉衝撃による摩耗などが生じない。また、従来のシリンダ部品が除去されているが、固定コア20の大きさを管体32に合わせる必要がなく、従来と同じ部品を用いることができるので、設計及び生産コストを低減することができる。
【0034】
可動コア25は、固定コア20の下方に摺動可能に設置される。可動コア25は、シャフト23の下端部23aに結合されてシャフト23と共に移動する。固定コア20と同様に、可動コア25は鉄材で形成されてもよい。
【0035】
シャフト23は、固定コア20及び可動コア25の中心を貫通して設けられる。下端部23aに可動コア25が固定結合されたシャフト23は、固定コア20に摺動可能に設置される。
【0036】
管体32の下部の内周面上にはガイド部34が突設される。ガイド部34は、後述する可動コア25を支持すると共にその移動をガイドするために備えられる。また、可動コア25の外周面は、長手方向に段差や傾斜が形成されずに一定に維持される。
【0037】
ガイド部34の内径は、可動コア25の外径と同一であってもよい。これにより、可動コア25が移動する際に、ガイド部34にガイドされて一定の直線運動を行うことになる。
【0038】
ガイド部34の内径は、固定コア20の外径より小さくしてもよい。これにより、ガイド部34が十分な厚さを有し、安定した支持力を有することになる。
【0039】
ガイド部34は、合成樹脂などで形成されてもよい。これにより、ガイド部34が可動コア25と接触しても、その摩擦が小さいので部品の摩耗が抑制される。
【0040】
ガイド部34により可動コア25が中心軸に沿って一直線状に移動するので、可動コア25が固定コア20に吸引される際に磁力損失が最小限に抑えられ、安定した遮断性能を維持することができる。
【0041】
ガイド部34の長さは、可動コア25の長さより短くしてもよい。これにより、ガイド部34と可動コア25の接触面積が小さくなり、摩擦が最小限に抑えられる。当然ながら、ガイド部34の長さは、ガイド部34による支持力を維持する範囲で定められることが好ましい。
【0042】
開放状態において、ガイド部34の上端の高さと可動コア25の上端の高さとが一致するようにしてもよい。これにより、遮断動作時におけるガイド部34と可動コア25の接触面積が小さくなり、摩擦が低減される。また、ガイド部34の上端部は、傾斜面となるように形成されてもよい。これにより、ガイド部34の支持力が向上し、上端部での接触抵抗が減少することになる。
【0043】
図4は
図1におけるA−A部の変形例の断面図である。
【0044】
本変形例において、ガイド部44には、長手方向に複数のスプライン溝45が形成される。これにより、ガイド部44は剛性が高くなると共に可動コア25との接触面積が小さくなり、摩擦が低減される。
【0045】
本発明の各実施形態による電磁開閉器においては、ボビンの内周面に可動コアガイド部が形成されることにより、可動コアが固定コアの中心軸に沿って一直線状に移動可能になる。よって、可動コアと固定コアとは中心軸が一致した状態で接離することになるので、電圧損失なく磁力を最大限に活用することができ、動作時間の損失をなくして最適化された遮断性能を発揮することができるという効果がある。
【0046】
また、シリンダを除去し、従来と同じ固定コアを用いることにより、部品点数を削減し、生産コストを低減し、組み立て工程を単純化することができるという効果がある。
【0047】
さらに、従来技術において可動コアとシリンダで生じていた鉄粉発生やねじれ結合などが生じなくなるという効果がある。
【0048】
前述した実施形態は例示的なものであり、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の基本的な特性を逸脱しない範囲で様々な修正や変形が可能であろう。つまり、前述した実施形態は本発明の技術思想を説明するためのものにすぎず、前述した実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の権利範囲は添付の特許請求の範囲により定められるべきであり、同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
10 上部フレーム
11 固定接点
12 可動接点
13 接点収容部
15 ターミナル
15a 貫通孔
16 永久磁石
17 永久磁石ホルダ
20 固定コア
23 シャフト
23a 下端部
25 可動コア
30 コイルアセンブリ
31 ボビン
32 管体
33 フランジ
34 ガイド部
35 コイル
36 コイルターミナル
37 ヨーク
44 ガイド部
45 スプライン溝